(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20241115BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241115BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20241115BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/023
(21)【出願番号】P 2024041656
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 嘉貴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悠太
(72)【発明者】
【氏名】浦下 靖崇
(72)【発明者】
【氏名】弦巻 茂
(72)【発明者】
【氏名】向井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】祐延 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大輔
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508629(JP,A)
【文献】特開2024-035778(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069083(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第117070963(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/04
C25B 15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、前記陰極と前記陽極との間に配置されたイオン交換膜、
前記陰極を前記イオン交換膜と挟むように配置された第一セパレータ、および前記陽極を前記イオン交換膜と挟むように配置された第二セパレータを備え、前記
第一セパレータと前記イオン交換膜との間の陰極室に供給された電解液から、水素および水酸化物イオンを生成し、前記
第二セパレータと前記イオン交換膜との間の陽極室に供給された電解液、および前記イオン交換膜を通過した前記水酸化物イオンから、酸素を生成する水電解セルと、
前記水電解セルの前記陰極室側および前記陽極室側のそれぞれの電解液の供給ラインに接続され、前記陰極室と前記陽極室との差圧を検出する差圧検出部と、
前記差圧検出部で検出された差圧に基づいて、前記陰極室と前記陽極室との差圧を調整する差圧調整部と、
を備える水電解システム。
【請求項2】
前記陰極室で生成された水素ガスを前記電解液から気液分離する陰極側気液分離器と、
前記陽極室で生成された酸素ガスを前記電解液から気液分離する陽極側気液分離器と、をさらに備え、
前記差圧調整部は、
前記陰極側気液分離器から送出される水素ガスの流量を調整する陰極側ガス流量調整弁と、
前記陽極側気液分離器から送出される酸素ガスの流量を調整する陽極側ガス流量調整弁と、の少なくとも一方の開度を、前記差圧検出部で検出された差圧に基づいて調整する
請求項1に記載の水電解システム。
【請求項3】
前記差圧調整部は、
前記陰極室から送出される前記水素を含む電解液の流量を調整する陰極側電解液流量調整弁と、
前記陽極室から送出される前記酸素を含む電解液の流量を調整する陽極側電解液流量調整弁と、の少なくとも一方の開度を、前記差圧検出部で検出された差圧に基づいて調整する
請求項1に記載の水電解システム。
【請求項4】
前記陰極室で生成された水素ガスを前記電解液から気液分離する陰極側気液分離器と、
前記陽極室で生成された酸素ガスを前記電解液から気液分離する陽極側気液分離器と、をさらに備え、
前記差圧調整部は、
前記陰極側気液分離器から前記陰極室に前記電解液を供給する陰極側ポンプと、
前記陽極側気液分離器から前記陽極室に前記電解液を供給する陽極側ポンプと、の少なくとも一方の回転数を、前記差圧検出部で検出された差圧に基づいて調整する
請求項1に記載の水電解システム。
【請求項5】
前記差圧調整部は、
前記差圧検出部で検出された差圧が、予め設定された
上限閾値に達した場合に、前記陰極室と前記陽極室との差圧を調整し、
前記上限閾値に達した後に、予め設定された下限閾値に達したときに差圧の調整を終了するように制御する、
請求項1または2に記載の水電解システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法であって、
前記陰極室と前記陽極室との差圧を検出するステップと、
検出された差圧に基づいて、前記陰極室と前記陽極室との差圧を調整するステップと、を含む、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、陽イオン交換膜として固体高分子電解質膜を用いた水電解槽で純水の電気分解を行う水電解装置が開示されている。この水電解装置では、電気分解により、水電解槽の陰極室で水素と純水の混合物が生じ、陽極室で酸素と純水の混合物とが生じる。固体高分子電解質膜を用いた水電解装置においては、固体高分子電解質膜の破損を防止するために、固体高分子電解質膜で隔てられた陰極室と陽極室との差圧を小さく抑える必要がある。このため、特許文献1に開示された水電解装置では、水素、および酸素の圧力を圧力計で検出し、圧力制御弁の開度を制御することによって、水素、および酸素の圧力を所定の圧力に調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水電解装置では、圧力計、および圧力制御弁が、水素と純水の混合物を水素ガスと純水とに分離する陰極側気液分離器、酸素と純水の混合物を酸素ガスと純水とに分離する陽極側気液分離器の下流側に、それぞれ設けられている。このため、水電解装置の陰極室、陽極室内で、水素、および酸素の圧力変動が生じてから、陰極側気液分離器、陽極側気液分離器の下流側に設けられた圧力計で、圧力変動が検出されるまでのタイムラグが大きくなってしまう。その結果、圧力計で、水素、および酸素の圧力の変動を圧力計で検出してから、水電解セルの差圧を調整するまでの応答性が低い、という問題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セルにおける、水電解セルの差圧調整を、高い応答性で実施することができる水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る水電解システムは、陰極、陽極、および前記陰極と前記陽極との間に配置されたイオン交換膜を備え、前記陰極と前記イオン交換膜との間の陰極室に供給された電解液から、水素および水酸化物イオンを生成し、前記陽極と前記イオン交換膜との間の陽極室に供給された電解液、および前記イオン交換膜を通過した前記水酸化物イオンから、酸素を生成する水電解セルと、前記陰極室と前記陽極室との差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧検出部で検出された差圧に基づいて、前記陰極室と前記陽極室との差圧を調整する差圧調整部と、を備える。
【0007】
本開示に係る水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法は、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法であって、前記陰極室と前記陽極室との差圧を検出するステップと、検出された差圧に基づいて、前記陰極室と前記陽極室との差圧を調整するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法によれば、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セルにおける、水電解セルの差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る水電解システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る水電解システムの水電解セルの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る水電解システムで、水電解セルの差圧調整を行った場合の、水電解セルの差圧の変化と、陰極側ガス流量調整弁の開度との関係の一例を示す図である。
【
図5】本開示の第二実施形態に係る水電解システムの構成を示す図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係る水電解システムで、水電解セルの差圧調整を行った場合の、水電解セルの差圧の変化と、陰極側電解液流量調整弁の開度との関係の一例を示す図である。
【
図7】本開示の第三実施形態に係る水電解システムの構成を示す図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係る水電解システムで、水電解セルの差圧調整を行った場合の、水電解セルの差圧の変化と、陰極側ポンプの回転数との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(水電解システムの構成)
図1に示すように、水電解システム1Aは、水電解セル2と、陰極側気液分離器3Aと、陽極側気液分離器3Bと、差圧検出部5と、差圧調整部6Aと、を少なくとも備えている。
【0011】
(水電解セルの構成)
水電解セル2は、例えば、電解液に含まれる水を電気分解することで水素を生成する装置である。水電解セル2は、例えば、アニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)式の電解装置である。
図2に示すように、水電解セル2は、第一セパレータ21と、第二セパレータ22と、イオン交換膜23と、陰極触媒層24と、陰極給電体25と、陽極触媒層26と、陽極給電体27と、を備える。
【0012】
第一セパレータ21と第二セパレータ22とは、所定の間隔をあけて配置されている。第一セパレータ21と第二セパレータ22との間には、後述する陰極室Saおよび陽極室Sbを含む、水電解セル2の内部空間Sが形成される。第一セパレータ21は、水電解セル2の内部空間Sの一方の面を規定する部材である。第一セパレータ21は、例えば、矩形の板状であり、金属部材で形成される。第一セパレータ21は、後述する陰極室Saに面する第一面21aを有する。第一セパレータ21は、例えば、直流電源30からマイナス電圧が印加される。
【0013】
第二セパレータ22は、内部空間Sの他方の面を規定する部材である。第二セパレータ22は、例えば、矩形の板状であり、金属部材で形成される。第二セパレータ22は、後述する陽極室Sbに面する第二面22aを有する。第二セパレータ22は、直流電源30からプラス電圧が印加される。これにより、第一セパレータ21と第二セパレータ22との間の内部空間Sには、所定の電位差を有した電圧が印加される。第一セパレータ21と第二セパレータ22とは、一対のセパレータとして水電解セル2の電解槽を形成する。
【0014】
図2に示すように、第一セパレータ21の下端部は、供給ライン101Aを介して、後述の陰極側気液分離器3Aに接続されている。第一セパレータ21の上端部は、排出ライン102Aを介して、陰極側気液分離器3Aに接続されている。
【0015】
第二セパレータ22の下端部は、供給ライン101Bを介して、後述の陽極側気液分離器3Bに接続されている。第二セパレータ22の上端部は、排出ライン102Bを介して、陽極側気液分離器3Bに接続されている。
【0016】
図2に示すように、イオン交換膜23は、イオンを選択透過させる膜である。イオン交換膜23は、例えば、固体高分子電解質膜である。イオン交換膜23は、例えば、水酸化物イオン伝導性のあるアニオン(陰イオン)交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)である。ただし、イオン交換膜23は、上記例に限定されず、上記例とは異なるタイプのイオン交換膜でもよい。イオン交換膜23は、例えば、矩形のシート状である。イオン交換膜23は、第一セパレータ21と第二セパレータ22との間に配置され、上述した内部空間Sに位置する。内部空間Sにおいて、イオン交換膜23と第一セパレータ21の第一面21aとの間には、陰極室Saが形成される。内部空間Sにおいて、イオン交換膜23と第二セパレータ22の第二面22aとの間には、陽極室Sbが形成される。
【0017】
陰極触媒層24は、陰極室Saでの化学反応を促進する層である。陰極触媒層24は、例えば、矩形のシート状である。陰極触媒層24は、イオン交換膜23に対して、陰極室Sa側に配置されている。陰極触媒層24は、第一セパレータ21および陰極給電体25を介して直流電源30からマイナス電圧が印加される。陰極触媒層24の材質としては、陰極室Saでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。
【0018】
陰極給電体25は、第一セパレータ21に印加された電圧を陰極触媒層24に伝える電気接続部である。陰極給電体25は、陰極室Saに配置されている。陰極給電体25は、第一セパレータ21の第一面21aと陰極触媒層24との間に挟み込まれている。陰極給電体25は、内部を電解液(に含まれる水)とガスが通過可能な構造を有する。陰極給電体25は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体(多孔質体)、またはファイバーなどにより形成される。本開示では、陰極触媒層24、および陰極給電体25により、水電解セル2の陰極20Aが形成されている。
【0019】
陽極触媒層26は、陽極室Sbでの化学反応を促進する層である。陽極触媒層26は、例えば、矩形のシート状である。陽極触媒層26は、イオン交換膜23に対して陽極室Sb側に配置されている。陽極触媒層26は、第二セパレータ22および陽極給電体27を介して直流電源30からプラス電圧が印加される。陽極触媒層26の材質としては、陽極室Sbでの化学反応を促進する材質であればよく、種々の材質が利用可能である。
【0020】
陽極給電体27は、第二セパレータ22に印加された電圧を陽極触媒層26に伝える電気接続部である。陽極給電体27は、陽極室Sbに配置されている。陽極給電体27は、第二セパレータ22の第二面22aと陽極触媒層26との間に挟み込まれている。陽極給電体27は、内部を電解液(に含まれる水)とガスが通過可能な構造を有する。陽極給電体27は、例えば、金属製のメッシュ構造体、焼結体(多孔質体)、またはファイバーなどにより形成される。本開示では、陽極触媒層26、および陽極給電体27により、水電解セル2の陽極20Bが形成されている。
なお、水電解セル2は、上記したような構成を複数組備えたユニットとしてもよい。
【0021】
(水電解セルにおける化学反応)
図1に示すように、陰極室Saには、供給ライン101Aを介して、陰極側気液分離器3Aの液相から電解液Esが供給される。電解液Esは、例えば、純水、あるいはアルカリ水溶液である。本開示では、アルカリ水溶液として水酸化カリウム(KOH)水溶液が採用される。つまり、電解液Esは、水酸化カリウムと、水(H
2O)と、を含んでいる。陰極室Saでは、直流電源30から電圧が印加されることで、電解液Esから、下式(1)のようにして、水素(H
2)、および水酸化物イオン(OH
-)が生成される。
2H
2O+2e
-→H
2+2OH
- …(1)
陰極室Saで生成された水酸化物イオンは、イオン交換膜23を通過して陰極室Saから陽極室Sbに移動する。陰極室Saで生成された水素(水素ガス)は、残留した電解液Esとともに、排出ライン102Aを介して、陰極側気液分離器3Aの液相に戻される。
【0022】
陽極室Sbには、供給ライン101Bを介して、陽極側気液分離器3Bの液相から電解液Esとして水酸化カリウム(KOH)水溶液が供給される。陽極室Sbでは、直流電源30から電圧が印加されることで、陰極室Saから陽極室Sbに移動した水酸化イオンの化学反応により、下式(2)のようにして、酸素(O2)と水(H2O)が生成される。
2OH-→1/2O2+H2O+2e- …(2)
水電解セル2では、上式(1)、(2)に基づき、下式(3)のような化学反応が生じている。
H2O→H2+1/2O2 …(3)
陽極室Sbで生成された酸素(酸素ガス)は、残留した電解液Esとともに、排出ライン102Bを介して、陽極側気液分離器3Bの液相に戻される。
【0023】
(気液分離器の構成)
陰極側気液分離器3Aは、電解液Esを貯留している。陰極側気液分離器3Aは、陰極室Saで生成された水素ガスを電解液Esから分離する。陰極室Saで生成された水素ガスと電解液Esとの混合物は、排出ライン102Aを介して、陰極側気液分離器3Aに送り込まれる。陰極側気液分離器3Aの液相内で、気体である水素ガスが、液体である電解液Esから分離される。陰極側気液分離器3Aで分離された水素ガスは、回収ライン103Aを通して、不図示の水素回収部に送り込まれる。一方、陰極側気液分離器3Aで分離された電解液Esは、陰極側ポンプ4Aにより、供給ライン101Aを介して、水電解セル2へと送り込まれる。また、陰極側気液分離器3Aには、必要に応じて、不図示の電解液供給部から電解液Esが補充される。
【0024】
陽極側気液分離器3Bは、電解液Esを貯留している。陽極側気液分離器3Bは、陽極室Sbで生成された酸素ガスを電解液Esから分離する。陽極室Sbで生成された酸素ガスと電解液Esとの混合物は、排出ライン102Bを介して、陽極側気液分離器3Bに送り込まれる。陽極側気液分離器3Bの液相内で、気体である酸素ガスが、液体である電解液Esから分離される。陽極側気液分離器3Bで分離された酸素ガスは、回収ライン103Bを通して、不図示の酸素回収部に送り込まれる。一方、陽極側気液分離器3Bで分離された電解液Esは、陽極側ポンプ4Bにより、供給ライン101Bを介して、水電解セル2へと送り込まれる。また、陽極側気液分離器3Bには、必要に応じて、不図示の電解液供給部から電解液Esが補充される。
【0025】
(差圧検出部の構成)
差圧検出部5は、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を検出する。本開示の実施形態では、差圧検出部5は、水電解セル2の入口側における、陰極側の電解液と陽極側の電解液との差圧を検出する。すなわち、差圧検出部5は、供給ライン101Aにおける水電解セル2への入口近傍と、供給ライン101Bにおける水電解セル2への入口近傍との差圧を検出する。なお、差圧検出部5は、水電解セル2の出口側における、陰極側の電解液と陽極側の電解液との差圧を検出するようにしてもよい。
【0026】
(差圧調整部の構成)
差圧調整部6Aは、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態において、差圧調整部6Aは、陰極側ガス流量調整弁7Aと、陽極側ガス流量調整弁7Bと、差圧制御部60と、を備えている。
【0027】
陰極側ガス流量調整弁7Aは、陰極側気液分離器3Aから送出される水素ガスの流量を調整可能に構成されている。陰極側ガス流量調整弁7Aは、回収ライン103Aに設けられている。陰極側ガス流量調整弁7Aは、回収ライン103A内の流路を開閉することで、陰極側気液分離器3Aから送出される水素ガスの流量を調整する。
【0028】
陽極側ガス流量調整弁7Bは、陽極側気液分離器3Bから送出される酸素ガスの流量を調整可能に構成されている。陽極側ガス流量調整弁7Bは、回収ライン103Bに設けられている。陽極側ガス流量調整弁7Bは、回収ライン103B内の流路を開閉することで、陽極側気液分離器3Bから送出される酸素ガスの流量を調整する。
【0029】
差圧制御部60は、は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータである。差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態における差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bの少なくとも一方の開度を調整する。
【0030】
水電解セル2においては、水(H2O)から、水素(H2)と酸素(O2)とを生成する。水素と酸素のうち、水素の方がモル比で多く生成されるため、陰極室Saにおける水素の圧力が、陽極室Sbにおける酸素の圧力よりも高くなりやすい。そこで、本開示の実施形態では、差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の上限閾値に達した場合、陰極側ガス流量調整弁7Aの開度が、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度よりも大きくなるように、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bの少なくとも一方の開度を調整する。具体的には、例えば、差圧制御部60は、陰極側ガス流量調整弁7Aの開度が、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度よりも大きくなるように、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bの双方の開度を増大させるようにしてもよい。また、例えば、差圧制御部60は、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を固定したまま、陰極側ガス流量調整弁7Aの開度を増大させてもよい。
差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の下限閾値に達した場合に、上記したような陰極室Saと陽極室Sbとの差圧の調整を、終了してもよい。
【0031】
(水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法の手順)
図3に示すように、本開示の実施形態に係る水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法は、差圧を検出するステップS11、差圧が上限閾値に達したか否かを判定するステップS12、差圧を調整するステップS13、差圧を確認するステップS14、および差圧の調整を終了するステップS15を含む。
【0032】
差圧を検出するステップS11では、予め設定された時間間隔が経過するごとに、差圧検出部5で、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を検出する。
【0033】
差圧が上限閾値に達した否かを判定するステップS12では、差圧制御部60において、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の上限閾値に達したか否かを判定する。その結果、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された上限閾値に達していなければ(ステップS12:No)、ステップS11に戻り、予め設定された時間間隔が経過するごとに、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧の検出を繰り返す。一方、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された上限閾値に達していた場合(ステップS12:Yse)、ステップS13に進む。
【0034】
差圧を調整するステップS13では、差圧制御部60で、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bの少なくとも一方の開度を調整する。本開示の実施形態では、差圧制御部60では、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を固定したまま、陰極側ガス流量調整弁7Aの開度を、予め設定された開度幅だけ増大させる。これにより、水電解システム1Aの系内から、水素ガスがより多く排出される。その結果、水素ガスの圧力が低下し、水電解セル2における陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が小さくなっていく。
【0035】
差圧を確認するステップS14では、差圧を調整するステップS13を終え、予め設定された時間が経過した後に、差圧検出部5で、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を検出する。差圧を確認するステップS14では、ステップS13で差圧を調整したことにより、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が、予め設定された範囲の下限閾値に到達したか否かを判定する。その結果、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された下限閾値まで低下していなければ(ステップS14:No)、ステップS13の実施を継続する。一方、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された下限閾値まで低下していた場合(ステップS14:Yes)、ステップS15に進む。
【0036】
差圧の調整を終了するステップS15では、差圧を調整するステップS13の実施を終了する。つまり、差圧を調整するステップS13で行っていた、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bの少なくとも一方の開度の調整を終了する。本開示の実施形態では、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を固定したまま、予め設定された開度幅だけ増大させていた陰極側ガス流量調整弁7Aの開度を、元の開度に戻す。
【0037】
図4は、上記したような水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法により、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧に応じて、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を調整した場合の一例である。
この
図4に示すように、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が上限閾値P1に達した時点T1で、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を増大させることで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下している。その後、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を増大させた状態を維持することで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下し続けている。陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が、下限閾値P2に達した時点T2で、陽極側ガス流量調整弁7Bの開度を元の開度に戻している。ここで、本開示の実施形態では、下限閾値P2を、負の値に設定している。つまり、陰極室Saの圧力が、陽極室Sbの圧力よりも低くなるように、下限閾値P2を設定している。これにより、差圧の調整を終了するステップS15の後に、再び、酸素ガスによる陽極室Sbの圧力の変化(上昇)に対して、水素ガスによる陰極室Saの圧力の変化(上昇)が大きくなっても、差圧が上限閾値P1に達するまでに要する時間を長くすることができる。
なお、上限閾値P1、および下限閾値P2は、イオン交換膜23の破損が生じないように設定されている。
【0038】
(作用効果)
上記構成の水電解システム1Aでは、差圧検出部5により、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧をダイレクトに検出する。そして、差圧調整部6Aでは、差圧検出部5で差圧の変化を検出した場合、直ちに、検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整することができる。その結果、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0039】
また、差圧調整部6Aで、陰極側ガス流量調整弁7Aと、陽極側ガス流量調整弁7Bと、の少なくとも一方の開度を、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて調整する。これにより、差圧検出部5で検出された差圧に応じて、水電解セル2の差圧調整を容易に行うことができる。
【0040】
また、差圧制御部60では、水電解セル2の差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。これにより、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、検出された差圧に基づいて自動的に行うことができる。
【0041】
上記実施形態の水電解システム1Aにおける水電解セル2の差圧調整方法は、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を検出し、検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。このような構成によれば、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、本開示に係る水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法の第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、差圧調整部6Bとして、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bを備える点で第一実施形態と異なっている。
【0043】
図5に示すように、水電解システム1Bは、水電解セル2と、陰極側気液分離器3Aと、陽極側気液分離器3Bと、差圧検出部5と、差圧調整部6Bと、を少なくとも備えている。
【0044】
(差圧調整部の構成)
差圧調整部6Bは、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態において、差圧調整部6Bは、陰極側電解液流量調整弁8Aと、陽極側電解液流量調整弁8Bと、差圧制御部60と、を備えている。
【0045】
陰極側電解液流量調整弁8Aは、陰極室Saから送出される水素を含む電解液Esの流量を調整可能に構成されている。陰極側電解液流量調整弁8Aは、排出ライン102Aに設けられている。陰極側電解液流量調整弁8Aは、排出ライン102A内の流路を開閉することで、陰極室Saから送出される水素ガスの流量を調整する。
【0046】
陽極側電解液流量調整弁8Bは、陽極室Sbから送出される酸素を含む電解液Esの流量を調整可能に構成されている。陽極側電解液流量調整弁8Bは、排出ライン102Bに設けられている。陽極側電解液流量調整弁8Bは、排出ライン102B内の流路を開閉することで、陽極室Sbから送出される酸素ガスの流量を調整する。
【0047】
差圧制御部60は、上記第一実施形態で示した水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法(
図3参照)と同様にして、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態における差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bの少なくとも一方の開度を調整する。
【0048】
差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の上限閾値P1に達した場合、陰極側電解液流量調整弁8Aの開度が、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度よりも大きくなるように、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bの少なくとも一方の開度を調整する。具体的には、例えば、差圧制御部60は、陰極側電解液流量調整弁8Aの開度が、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度よりも大きくなるように、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bの双方の開度を増大させるようにしてもよい。また、例えば、差圧制御部60は、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を固定したまま、陰極側電解液流量調整弁8Aの開度を増大させてもよい。
差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の下限閾値P2に達した場合に、上記したような陰極室Saと陽極室Sbとの差圧の調整を、終了してもよい。
【0049】
図6は、上記したような水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法により、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧に応じて、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を調整した場合の一例である。
この
図6に示すように、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が上限閾値P1に達した時点T1で、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を増大させることで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下している。その後、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を増大させた状態を維持することで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下し続けている。陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が、下限閾値P2に達した時点T2’で、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を元の開度に戻している。
ここで、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bは、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bに比較すると、水電解セル2に、より近い位置に配置されている。このため、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が上限閾値P1に達した時点T1で、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を増大させると、上記第一実施形態に比較し、陽極側電解液流量調整弁8Bの開度を増大させてから、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下する際の応答性が高まる。したがって、
図6において、上限閾値P1に達した時点T1から、下限閾値P2に達した時点T2’までの時間間隔が短縮される。
【0050】
(作用効果)
上記構成の水電解システム1B、水電解システム1Bにおける水電解セル2の差圧調整方法では、上記第一実施形態と同様、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0051】
また、差圧調整部6Bで、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極側電解液流量調整弁8Aと、陽極側電解液流量調整弁8Bと、の少なくとも一方の開度を調整する。上記第一実施形態のように、陰極側ガス流量調整弁7A、陽極側ガス流量調整弁7Bで、水電解セル2の差圧調整を行う構成に比較すれば、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、より水電解セル2に近い位置で実施することができる。したがって、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0052】
(第三実施形態)
次に、本開示に係る水電解システム、水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法の第三実施形態について説明する。なお、以下に説明する第三実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第三実施形態では、差圧調整部6Cとして、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bを用いる点で、第一、第二実施形態と異なっている。
【0053】
図7に示すように、水電解システム1Cは、水電解セル2と、陰極側気液分離器3Aと、陽極側気液分離器3Bと、差圧検出部5と、差圧調整部6Cと、を少なくとも備えている。
【0054】
(差圧調整部の構成)
差圧調整部6Cは、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態において、差圧調整部6Cは、陰極側ポンプ4Aと、陽極側ポンプ4Bと、差圧制御部60と、を備えている。
【0055】
陰極側ポンプ4Aは、陰極側気液分離器3Aからの電解液Esを水電解セル2へと送り込む。陰極側ポンプ4Aは、供給ライン101Aに設けられている。陰極側ポンプ4Aは、その回転数を調整することで、水電解セル2に送り込む電解液Esの流量を調整可能である。
【0056】
陽極側ポンプ4Bは、陽極側気液分離器3Bからの電解液Esを水電解セル2へと送り込む。陽極側ポンプ4Bは、供給ライン101Bに設けられている。陽極側ポンプ4Bは、その回転数を調整することで、水電解セル2に送り込む電解液Esの流量を調整可能である。
【0057】
差圧制御部60は、上記第一実施形態で示した水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法(
図3参照)と同様にして、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整する。本開示の実施形態における差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bの少なくとも一方の回転数を調整する。
【0058】
差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の上限閾値P1に達した場合、陽極側ポンプ4Bの回転数が、陰極側ポンプ4Aの回転数よりも高くなるように、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bの少なくとも一方の回転数を調整する。具体的には、例えば、差圧制御部60は、陽極側ポンプ4Bの回転数が、陰極側ポンプ4Aの回転数よりも高くなるように、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bの双方の回転数を増大させるようにしてもよい。また、例えば、差圧制御部60は、陰極側ポンプ4Aの回転数を固定したまま、陽極側ポンプ4Bの回転数を増大させてもよい。陽極側ポンプ4Bの回転数が、陰極側ポンプ4Aの回転数よりも高くなると、供給ライン101Bにおける圧力損失が、供給ライン101Aにおける圧力損失よりも大きくなる。すると、水電解セル2の陰極側に供給される電解液の流量が増大する。これにより、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が小さくなる。
【0059】
差圧制御部60は、差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された範囲の下限閾値P2に達した場合に、上記したような陰極室Saと陽極室Sbとの差圧の調整を、終了してもよい。
【0060】
図8は、上記したような水電解システムにおける水電解セルの差圧調整方法により、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧に応じて、陽極側ポンプ4Bの回転数を調整した場合の一例である。
この
図8に示すように、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が上限閾値P1に達した時点T1で、陽極側ポンプ4Bの回転数を増大させることで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下している。その後、陽極側ポンプ4Bの回転数を増大させた状態を維持することで、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下し続けている。陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が、下限閾値P2に達した時点T2”で、陽極側ポンプ4Bの回転数を元の回転数に戻している。
【0061】
ここで、差圧調整部6Cとして、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bを備えることで、上記第二実施形態のように、差圧調整部6Bとして、陰極側電解液流量調整弁8A、および陽極側電解液流量調整弁8Bを備える必要がない。このため、水電解システム1Cの部品点数の増加、およびコスト増加を抑えることができる。
また、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bを備えることで、陰極側ガス流量調整弁7A、および陽極側ガス流量調整弁7Bに比較すると、水電解セル2に、より近い位置に配置されている。このため、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が上限閾値P1に達した時点T1で、陽極側ポンプ4Bの回転数を増大させると、
上記第一実施形態に比較し、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧が低下する際の応答性が高まる。したがって、
図8において、上限閾値P1に達した時点T1から、下限閾値P2に達した時点T2”までの時間間隔が短縮される可能性がある。
【0062】
(作用効果)
上記構成の水電解システム1C、水電解システム1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法では、上記第一実施形態と同様、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0063】
また、差圧調整部6Cが、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bと、の少なくとも一方の回転数を調整する。陰極側ガス流量調整弁7A、陽極側ガス流量調整弁7Bで、水電解セル2の差圧調整を行う構成に比較すれば、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、より水電解セル2に近い位置で実施することができる。したがって、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、水電解システム1A~1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法の手順について説明したが、その手順、判定に用いる閾値等は、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、水電解セル2の構成について例示したが、水電解セル2の構成は、適宜変更可能である。
【0065】
なお、水電解システム1A~1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によって差圧制御部60に配信される場合、配信を受けた差圧制御部60が当該プログラムをストレージに展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0066】
<付記>
各実施形態に記載の水電解システム1A~1C、水電解システム1A~1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法は、例えば以下のように把握される。
【0067】
(1)第1の態様に係る水電解システム1A~1Cは、陰極20A、陽極20B、および前記陰極20Aと前記陽極20Bとの間に配置されたイオン交換膜23を備え、前記陰極20Aと前記イオン交換膜23との間の陰極室Saに供給された電解液Esから、水素および水酸化物イオンを生成し、前記陽極20Bと前記イオン交換膜23との間の陽極室Sbに供給された電解液Es、および前記イオン交換膜23を通過した前記水酸化物イオンから、酸素を生成する水電解セル2と、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を検出する差圧検出部5と、前記差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を調整する差圧調整部6A~6Cと、を備える。
【0068】
この水電解システム1A~1Cは、差圧検出部5により、水電解セル2の陰極室Saと陽極室Sbとの差圧をダイレクトに検出する。そして、差圧調整部6A~6Cでは、差圧検出部5で差圧の変化を検出した場合、直ちに、検出された差圧に基づいて、陰極室Saと陽極室Sbとの差圧を調整することができる。その結果、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0069】
(2)第2の態様に係る水電解システム1Aは、(1)の水電解システム1Aであって、前記陰極室Saで生成された水素ガスを電解液Esから気液分離する陰極側気液分離器3Aと、前記陽極室Sbで生成された酸素ガスを電解液Esから気液分離する陽極側気液分離器3Bと、をさらに備え、前記差圧調整部6Aは、前記陰極側気液分離器3Aから送出される水素ガスの流量を調整する陰極側ガス流量調整弁7Aと、前記陽極側気液分離器3Bから送出される酸素ガスの流量を調整する陽極側ガス流量調整弁7Bと、の少なくとも一方の開度を、前記差圧検出部5で検出された差圧に基づいて調整する。
【0070】
このような構成によれば、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、差圧調整部6Aで、陰極側ガス流量調整弁7Aと、陽極側ガス流量調整弁7Bと、の少なくとも一方の開度を、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて調整することで、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を行うことができる。
【0071】
(3)第3の態様に係る水電解システム1Bは、(1)の水電解システム1Bであって、前記差圧調整部6Bは、前記陰極室Saから送出される前記水素を含む電解液Esの流量を調整する陰極側電解液流量調整弁8Aと、前記陽極室Sbから送出される前記酸素を含む電解液Esの流量を調整する陽極側電解液流量調整弁8Bと、の少なくとも一方の開度を、前記差圧検出部5で検出された差圧に基づいて調整する。
【0072】
このような構成によれば、差圧調整部6Bが、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極側電解液流量調整弁8Aと、陽極側電解液流量調整弁8Bと、の少なくとも一方の開度を調整する。陰極側ガス流量調整弁7A、陽極側ガス流量調整弁7Bで、水電解セル2の差圧調整を行う構成に比較すれば、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、より水電解セル2に近い位置で実施することができる。したがって、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0073】
(4)第4の態様に係る水電解システム1Cは、(1)の水電解システム1Cであって、前記差圧調整部6Cは、前記陰極側気液分離器3Aから前記陰極室Saに前記電解液Esを供給する陰極側ポンプ4Aと、前記陽極側気液分離器3Bから前記陽極室Sbに前記電解液Esを供給する陽極側ポンプ4Bと、の少なくとも一方の回転数を、前記差圧検出部5で検出された差圧に基づいて調整する。
【0074】
このような構成によれば、差圧調整部6Cが、差圧検出部5で検出された差圧に基づいて、陰極側ポンプ4A、および陽極側ポンプ4Bと、の少なくとも一方の回転数を調整する。陰極側ガス流量調整弁7A、陽極側ガス流量調整弁7Bで、水電解セル2の差圧調整を行う構成に比較すれば、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、より水電解セル2に近い位置で実施することができる。したがって、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【0075】
(5)第5の態様に係る水電解システム1A~1Cは、(1)から(4)の何れか一つの水電解システム1A~1Cであって、前記差圧調整部6A~6Cは、前記差圧検出部5で検出された差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を調整する差圧制御部60、をさらに備える。
【0076】
このような構成によれば、差圧制御部60で、差圧が、予め設定された閾値に達した場合に、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を調整することで、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を自動的に行うことができる。
【0077】
(6)第6の態様に係る水電解システム1A~1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法は、(1)から(5)の何れか一つの水電解システム1A~1Cにおける水電解セル2の差圧調整方法であって、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を検出するステップS11と、検出された差圧に基づいて、前記陰極室Saと前記陽極室Sbとの差圧を調整するステップS13と、を含む。
【0078】
このような構成によれば、水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セル2における、水電解セル2の差圧調整を、高い応答性で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1A~1C…水電解システム
2…水電解セル
3A…陰極側気液分離器
3B…陽極側気液分離器
4A…陰極側ポンプ
4B…陽極側ポンプ
5…差圧検出部
6A~6C…差圧調整部
7A…陰極側ガス流量調整弁
7B…陽極側ガス流量調整弁
8A…陰極側電解液流量調整弁
8B…陽極側電解液流量調整弁
20A…陰極
20B…陽極
21…第一セパレータ
21a…第一面
22…第二セパレータ
22a…第二面
23…イオン交換膜
24…陰極触媒層
25…陰極給電体
26…陽極触媒層
27…陽極給電体
30…直流電源
60…差圧制御部
101A、101B…供給ライン
102A、102B…排出ライン
103A、103B…回収ライン
Es…電解液
S…内部空間
Sa…陰極室
Sb…陽極室
【要約】
【課題】水素と酸素の圧力変動を速やかに検出し、水電解セルにおける、水電解セルの差圧調整を、高い応答性で実施する。
【解決手段】水電解システムは、陰極、陽極、および陰極と陽極との間に配置されたイオン交換膜を備え、陰極とイオン交換膜との間の陰極室に供給された電解液から、水素および水酸化物イオンを生成し、陽極とイオン交換膜との間の陽極室に供給された電解液、およびイオン交換膜を通過した水酸化物イオンから、酸素を生成する水電解セルと、陰極室と陽極室との差圧を検出する差圧検出部と、差圧検出部で検出された差圧に基づいて、陰極室と陽極室との差圧を調整する差圧調整部と、を備える。
【選択図】
図1