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特許7588745コークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】コークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造
(51)【国際特許分類】
   C10B 39/02 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
C10B39/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024077031
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】江口 和也
(72)【発明者】
【氏名】山田 智輝
(72)【発明者】
【氏名】益山 明日登
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277665(JP,A)
【文献】特開平10-017870(JP,A)
【文献】実公昭62-034975(JP,Y2)
【文献】特開昭56-143290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈する予備室と、前記予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトと、スローピングフリュー部とを含む冷却塔と、
前記スローピングフリュー部は、
前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、
耐火レンガによって構成され、前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面を接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、
前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを含み、
前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて前記冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含み、
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する、コークス乾式消火設備。
【請求項2】
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線とがなす角度θは、70°以下である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項3】
予備室と、前記予備室の下方に配置された冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトとを含む冷却塔とを備えるコークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造であって、
前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、
耐火レンガによって構成され、前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面を接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、
前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを備え、
前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて外方に拡がる傾斜面を含み、
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する、コークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造。
【請求項4】
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線とがなす角度θは、70°以下である、請求項3に記載のスローピングフリュー部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コークス炉から取り出された赤熱コークスを冷却ガス(例えば、不活性ガスなど)等で消火しつつ、赤熱コークスとの熱交換後の冷却ガスの熱を利用して発電するコークス乾式消火(CDQ:Coke Dry Quenching)設備を開示している。当該コークス乾式消火設備は、赤熱コークスが貯留される予備室と、予備室の下方に配置された冷却室とを含む冷却塔を備える。予備室及び冷却室は、上下方向に延びる円筒形状を呈している。冷却室の下部には、赤熱コークスを乾式冷却するための冷却ガスが供給される供給部が設けられている。冷却室の上部には、赤熱コークスと熱交換して高温となった冷却ガスを冷却塔の外部に排気するための複数の排気口(スローピングフリュー部)が設けられている。複数の排気口は、冷却室の周方向において所定間隔をもって並ぶように配置されている。各排気口は、上方に向かうにつれて冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面(スロープ面)を含む。各排気口の間には、予備室の環状壁を支持するために、予備室の下部と冷却室の上部の内周面とを接続する支持壁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭62-034975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該コークス乾式消火設備の運転中、冷却塔で冷却された赤熱コークスは、冷却塔の下部から外部に排出されるため、この排出に応じて、予備室に貯留されている赤熱コークスが冷却室に流下する。この際、予備室に貯留されている赤熱コークスは、排気口内にも流入する。一方、上述のとおり、排気口からは冷却ガスが冷却塔の外部に向けて排気される。そのため、赤熱コークスが冷却ガスによって吹き上げられて排気口内に滞留していき、排気口が赤熱コークスによって閉塞されてしまう懸念がある。この場合、冷却室内を流れる冷却ガスの風量を赤熱コークスの処理量に適した大きさに調整し難い傾向にある。
【0005】
そのため、特許文献1では、排気口において、傾斜角が互いに異なる背面が連接された傾斜面を採用している。この場合、排気口から流出する赤熱コークスの量が、排気口に流入する赤熱コークスの量よりも大きくなり、排気口の閉塞が抑制されるとされている。また、予備室と冷却室との直径差を大きくすることなく、当該直径差が維持された状態で排気口の閉塞が抑制されるので、予備室の小径化を補うための予備室の高さ方向への拡大や、支持壁が長大化することによるコストアップが抑制されるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、排気口において、傾斜角が互いに異なる背面が連接された傾斜面を採用した場合、排気口の大きさが拡大すると共に、当該傾斜面の面積が大きくなる。そのため、予備室から排気口内に流入する赤熱コークスの量が増加することに加え、当該赤熱コークスが傾斜面から受ける摩擦抵抗も増加する。したがって、特許文献1の排気口の構造では、実際には、赤熱コークスの排気口における滞留が十分に解消することができない。
【0007】
そこで、本開示は、スローピングフリュー部からの赤熱コークスの排出を促進することが可能なコークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コークス乾式消火設備の一例は、筒状を呈する予備室と、予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、予備室の周囲に形成された環状ダクトと、スローピングフリュー部とを含む冷却塔を備える。スローピングフリュー部は、予備室の下端部を外側から取り囲むように冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、耐火レンガによって構成され、予備室の下端部と冷却室の上端部及び環状壁との間において冷却室の径方向に延び、且つ、冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、複数の支持壁のうち周方向において隣り合う支持壁と、予備室の下端部と、環状壁とによって画定され、且つ、冷却室と環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを含む。環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含む。複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、傾斜面と冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、一の支持壁の下端と冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るコークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造によれば、スローピングフリュー部からの赤熱コークスの排出を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、コークス乾式消火設備の一例を概略的に示す図である。
図2図2は、図1のII部を拡大して、スローピングフリュー部の近傍を冷却塔の内側から見た様子を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、従来のコークス乾式消火設備において赤熱コークスが排気流路を閉塞するメカニズムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0012】
[コークス乾式消火設備]
まず、図1を参照して、コークス乾式消火設備100の構成について説明する。コークス乾式消火設備100は、コークス炉(図示せず)から導入された赤熱コークスC1を冷却ガスG1により冷却し、消火された(冷却された)コークスC2を得るように構成されている。コークス乾式消火設備100は、冷却塔101(チャンバ)と、集塵機102と、ボイラ103と、集塵機104と、ブロア105と、給水予熱器106と、ロータリバルブ107とを備える。
【0013】
冷却塔101は、赤熱コークスC1及びコークスC2を収容する容器である。冷却塔101は、耐火レンガによって構成されている。冷却塔101内において、赤熱コークスC1及びコークスC2が上方から下方に向けて流れており、赤熱コークスC1を冷却するための冷却ガスG1が下方から上方に向けて流れている。冷却ガスG1は、例えば、窒素ガスを主成分とする不活性ガスであってもよい。冷却ガスG1は、一酸化炭素、水素などの未燃成分を含んでいてもよい。
【0014】
冷却塔101は、予備室101Aと、冷却室101Bと、環状ダクト101Cと、スローピングフリュー部1とを含む。
【0015】
予備室101A(プレチャンバ)は、赤熱コークスC1を一時的に貯留するように構成されている。予備室101Aは、筒状(例えば、略円筒形状)を呈している。予備室101Aの上部には、入口部101a1が設けられている。予備室101Aの下部は、下方(冷却室101B)に向けて開放されている。予備室101Aの下端部101a2は、上下方向から見たときに、冷却室101Bの上端部101bと部分的に重なり合っていてもよいし、冷却室101Bの上端部101bの内側に位置していてもよい。
【0016】
赤熱コークスC1は、搬送装置200によって冷却塔101の塔頂部へと搬送され、予備室101Aの上部に設けられている入口部101a1から予備室101A内に投入される。搬送装置200は、クレーン201と、搬送ベルト202とを含む。クレーン201は、赤熱コークスC1を収容するバケット203を把持して上下方向に移動可能に構成されている。搬送ベルト202は、バケット203を把持しているクレーン201を水平方向に搬送可能に構成されている。
【0017】
冷却室101B(クーリングチャンバ)は、予備室101Aの下方に配置されている。冷却室101Bは、筒状(例えば、略円筒形状)を呈している。予備室101Aの上部は、上方(予備室101A)に向けて開放されている。冷却室101Bの上端部101bは、上下方向から見たときに、予備室101Aと部分的に重なり合っていてもよいし、予備室101Aの外側に位置していてもよい。換言すれば、上下方向から見たときに、冷却室101Bの内周面は、予備室101Aの内周面よりも外側に位置していてもよいし、予備室101Aの外周面よりも外側に位置していてもよい。
【0018】
冷却室101Bの下部には、配管D6(後述する)が接続されている。冷却室101Bは、予備室101A内から流下してきた赤熱コークスC1を、配管D6を介して冷却室101Bの下部に供給されて冷却室101B内を上昇する冷却ガスG1によって冷却するように構成されている。
【0019】
冷却ガスG1は、冷却室101B内で赤熱コークスC1と熱交換することにより約800℃に昇温し、高温ガスG2となる。一方、赤熱コークスC1は、冷却ガスG1と熱交換することにより約200℃に冷却され、コークスC2となる。
【0020】
環状ダクト101Cは、予備室101Aの外周を取り囲むように予備室101Aの周囲に形成されている。環状ダクト101Cは、筒状(例えば、略円筒形状)を呈している。環状ダクト101Cの一部の側壁には、出口部101cが設けられている。
【0021】
スローピングフリュー部1は、冷却室101Bと環状ダクト101Cとを流体的に接続するように、冷却室101Bの上端部と、予備室101Aの下端部及び環状ダクト101Cの下端部との間に配置されている。冷却室101Bにおいて赤熱コークスC1と熱交換された後の高温ガスG2は、スローピングフリュー部1、環状ダクト101C及び出口部101cを通じて、冷却塔101の外部に排出される。スローピングフリュー部1の詳細な構成(スローピングフリュー部構造)については、後述する。
【0022】
集塵機102は、高温ガスG2に随伴されるコークスダストの少なくとも一部を回収するように構成されている。集塵機102の入口側(上流側)は、配管D1を介して環状ダクト101Cの出口部101cと接続されている。
【0023】
ボイラ103は、集塵機102を通過した高温ガスG2から熱エネルギーを回収するように構成されている。ボイラ103の入口側(上部)は、配管D2を介して集塵機102の出口側(下流側)と接続されている。ボイラ103は、回収した熱エネルギーを用いて水蒸気を生成させるように構成されていてもよい。生成された水蒸気は、発電設備、製鉄所、化学プラントなどで利用されてもよい。高温ガスG2は、ボイラ103において熱回収されることにより冷却され、低温ガスG3となる。
【0024】
集塵機104は、ボイラ103において熱交換された後の低温ガスG3に随伴されるコークスダストの少なくとも一部を回収するように構成されている。集塵機104の入口側(上流側)は、配管D3を介してボイラ103の出口側(下部)と接続されている。
【0025】
ブロア105(供給部)は、集塵機104を通過した低温ガスG3を冷却室101Bに向けて送り出すように構成されている。ブロア105の入口側(上流側)は、配管D4を介して集塵機104の下流側(出口側)と接続されている。
【0026】
給水予熱器106(供給部)は、ブロア105によって送り出された低温ガスG3を水(温水)との間で熱交換して約130℃程度まで冷却し、冷却された冷却ガスG1を冷却室101Bに供給するように構成されている。冷却室101Bに供給された冷却ガスG1は、赤熱コークスC1と熱交換して、コークス乾式消火設備100内を循環した後に、再び冷却ガスG1として冷却室101Bに供給される。そのため、冷却ガスG1は、循環ガスでもある。
【0027】
給水予熱器106の入口側(上流側)は、配管D5(供給部)を介してブロア105の出口側(下流側)と接続されている。給水予熱器106の出口側(下流側)は、配管D6(供給部)を介して冷却室101Bの下部と接続されている。すなわち、ブロア105、給水予熱器106及び配管D5,D6は、冷却ガスGを冷却室101Bに供給する供給部を構成している。
【0028】
ロータリバルブ107は、冷却塔101の塔底部に設けられている。冷却室101Bにおいて冷却されたコークスC2は、ロータリバルブ107を通じて、コークス乾式消火設備100の外部に排出される。この際、冷却室101B内の冷却ガスG1(一酸化炭素、水素などの未燃成分を含む)も、ロータリバルブ107に向かう。ロータリバルブ107は、コークスC2をコークス乾式消火設備100の外部に排出する一方で、冷却ガスG1を下流側にできる限り流出させないように構成されている。
【0029】
[スローピングフリュー部の構成]
続いて、図2及び図3を参照して、スローピングフリュー部1の構成について説明する。スローピングフリュー部1は、耐火レンガによって構成されている。スローピングフリュー部1は、環状壁10と、複数の支持壁20とを含む。
【0030】
環状壁10は、図2及び図3に例示されるように、予備室101Aの下端部101a2を外側から取り囲むように冷却室101Bの上端部101bから上方に向けて延びている。そのため、環状壁10は、環状壁10の径方向から見たときに、予備室101Aの下端部101a2と部分的に重なり合っている。
【0031】
環状壁10の内周面は、傾斜面S1を含んでいる。傾斜面S1は、冷却室101Bの上端部101bから上方に向けて延びており、上方に向かうにつれて冷却室101Bの径方向外方に拡がっている。すなわち、傾斜面S1は、スローピングフリュー部1から複数の支持壁20を除いて環状壁10を単体で見た場合、全体として、円錐台面を呈している。図3に例示されるように、傾斜面S1の傾斜角α(水平面Hに対する傾斜面S1の角度)は、例えば、50°~70°程度であってもよい。図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、傾斜面S1と、冷却室101Bの上端部101bの内周面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P1」(第1の交差部)と称する。交差部P1は、後述する交差部P2よりも上方に位置している。
【0032】
複数の支持壁20は、予備室101Aの下端部101a2と、冷却室101Bの上端部101b及び環状壁10との間に配置されている。複数の支持壁20はそれぞれ、冷却室101B(環状壁10)の径方向に沿って延びている。複数の支持壁20は、冷却室101B(環状壁10)の周方向に沿って、所定間隔をもって並ぶように配置されている。そのため、複数の支持壁20のうち当該周方向において隣り合う一対の支持壁20と、予備室101Aの下端部101a2と、環状壁10とで画定された空間によって、排気流路30が構成される。排気流路30は、冷却室101Bと環状ダクト101Cとを流体的に接続しており、熱交換後の高温ガスG2が冷却室101Bから環状ダクト101Cへと流れる流路である。
【0033】
支持壁20は、図2及び図3に例示されるように、上部21と、中間部22と、下部23とを含む。上部21は、環状壁10の径方向から見たときに、冷却室101Bの上端部101bとは重なり合っておらず、予備室101Aの下端部101a2及び環状壁10と重なり合っている。
【0034】
中間部22は、環状壁10の径方向から見たときに、予備室101Aの下端部101a2及び冷却室101Bの上端部101bとは重なり合っておらず、環状壁10と重なり合っている。中間部22は、環状壁10の周方向から見たときに、略台形状を呈している(図3参照)。図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、支持壁20(中間部22)の内周面と、予備室101Aの下端部101a2の下端面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P0」(第3の交差部)と称する。
【0035】
複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P1を通る仮想直線L1とがなす角度θは、例えば、70°以下であってもよいし、60°以下であってもよいし、50°以下であってもよい。角度θは、例えば、0°よりも大きくてもよいし、40°以上であってもよいし、50°以上であってもよい。角度θは、排気流路30内における赤熱コークスC1の安息角βよりも大きくてもよいし、安息角βと同等であってもよいし、安息角βよりも小さくてもよい。すなわち、仮想直線L1は、赤熱コークスC1の安息面S2の下側を延びていてもよいし、安息面S2内を延びていてもよいし、安息面S2の上側を延びていてもよい。なお、安息角βは、例えば35°程度であってもよい。
【0036】
下部23は、環状壁10の径方向から見たときに、予備室101Aの下端部101a2及び環状壁10とは重なり合っておらず、冷却室101Bの上端部101bと重なり合っている。下部23は、環状壁10の周方向から見たときに、略三角形状を呈している(図3参照)。図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、支持壁20(下部23)の下端と、冷却室101Bの上端部101bの内周面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P2」(第2の交差部)と称する。
【0037】
複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P2を通る仮想直線L2(一の支持壁20の内周面)とがなす角度γは、例えば、60°~80°程度であってもよい。ところで、支持壁20は耐火レンガを積み上げて構成されている。そして、複数の支持壁20によって予備室101Aが支持されている。そのため、各支持壁20には予備室101Aからの圧縮荷重が作用する。したがって、圧縮荷重による支持壁20の損傷を抑制しつつ予備室101Aを支持するためには、角度γを小さくすることに限界がある。その結果、支持壁20の下部23は、交差部P1よりも下方まで延びる場合がある。
【0038】
[作用]
ところで、図4に、交差部P1と交差部P2とが一致している、従来のスローピングフリュー部1の構成を示す(図3の二点鎖線で描かれた環状壁10及び冷却室101Bの上端部101bも参照)。図4(a)に例示されるように、排気流路30内に流入する高温のコークスC1は、安息角βにて排気流路30内で堆積する。排気流路30内には、高温ガスG2が、冷却室101Bから環状ダクト101Cに向けて流れる。高温ガスG2は、図4(a),(b)に例示されるように、圧力損失の少ない(赤熱コークスC1の堆積量の少ない)予備室101Aの下端部101a2近傍を流れやすい。そのため、図4(b)に例示されるように、排気流路30内において内側に堆積している赤熱コークスC1が、比較的高速の高温ガスG2によって、排気流路30の外側に吹き飛ばされる。コークス乾式消火設備100の運転中、図4(c)に例示されるように、高温ガスG2による赤熱コークスC1の吹き飛ばしが発生することで、赤熱コークスC1が排気流路30内に滞留していく。その結果、図4(d)に例示されるように、赤熱コークスC1によって排気流路30が閉塞される懸念がある。したがって、この閉塞現象を回避するために、冷却ガスG1の流量を大きくすることが制限されていた。
【0039】
しかしながら、以上の例によれば、交差部P1が交差部P2よりも上方に位置している。この場合、交差部P1と交差部P2とが一致している従来のスローピングフリュー部1と比較して、冷却室101Bの内周面が外方に位置する。そのため、冷却室101Bの上端部101bから上方に向けて延びる環状壁10の傾斜面S1の長さが比較的小さくなる。したがって、赤熱コークスC1が排気流路30に流入しても、赤熱コークスC1と傾斜面S1との接触面積が小さくなり、赤熱コークスC1が傾斜面S1から受ける摩擦抵抗が低下する。その結果、排気流路30から赤熱コークスC1が下方に流下しやすくなるので、スローピングフリュー部1からの赤熱コークスC1の排出を促進することが可能となる。このように、赤熱コークスC1による排気流路30の閉塞が抑制されるので、冷却室101Bに供給される冷却ガスG1の流量を高めることができる。加えて、冷却室101Bの内周面が比較的外方に位置するため、冷却室101Bの容量が比較的大きくなる。そのため、冷却ガスG1の流量増大と、冷却室101Bの容量増大とにより、冷却室101Bにおける赤熱コークスC1の処理能力(冷却能力)を大きく向上させることが可能となる。
【0040】
以上の例によれば、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、水平面Hと仮想直線L1とがなす角度θは、70°以下に設定されうる。この場合、角度θが赤熱コークスC1の安息角βに近づくか又は安息角βよりも小さくなる。そのため、赤熱コークスC1と傾斜面S1との接触面積がさらに小さくなる。したがって、スローピングフリュー部1からの赤熱コークスC1の排出をいっそう促進することが可能となる。
【0041】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0042】
[他の例]
例1.コークス乾式消火設備の一例は、筒状を呈する予備室と、予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、予備室の周囲に形成された環状ダクトとを含む冷却塔と、スローピングフリュー部とを備える。スローピングフリュー部は、予備室の下端部を外側から取り囲むように冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、耐火レンガによって構成され、予備室の下端部と冷却室の上端部及び環状壁との間において冷却室の径方向に延び、且つ、冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、複数の支持壁のうち周方向において隣り合う支持壁と、予備室の下端部と、環状壁とによって画定され、且つ、冷却室と環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを含む。環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含む。複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、傾斜面と冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、一の支持壁の下端と冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する。
【0043】
第1の交差部が第2の交差部よりも上方に位置する場合、第1及び第2の交差部が略一致している形態と比較して、冷却室の内周面が外方に位置する。そのため、冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁の傾斜面の長さが比較的小さくなる。したがって、赤熱コークスが排気流路に流入しても、赤熱コークスと傾斜面との接触面積が小さくなり、赤熱コークスが傾斜面から受ける摩擦抵抗が低下する。その結果、排気流路から赤熱コークスが下方に流下しやすくなるので、スローピングフリュー部からの赤熱コークスの排出を促進することが可能となる。このように、赤熱コークスによる排気流路の閉塞が抑制されるので、冷却室に供給される冷却ガスの流量を高めることができる。加えて、冷却室の内周面が比較的外方に位置するため、冷却室の容量が比較的大きくなる。そのため、冷却ガスの流量増大と、冷却室の容量増大とにより、冷却室における赤熱コークスの処理能力(冷却能力)を大きく向上させることが可能となる。
【0044】
例2.例1のコークス乾式消火設備において、複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、予備室の下端部と一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θは、70°以下であってもよい。この場合、角度θが赤熱コークスの安息角に近づくか又は安息角よりも小さくなる。そのため、赤熱コークスと傾斜面との接触面積がさらに小さくなる。したがって、スローピングフリュー部からの赤熱コークスの排出をいっそう促進することが可能となる。
【0045】
例3.スローピングフリュー部構造の一例は、予備室と、予備室の下方に配置された冷却室と、予備室の周囲に形成された環状ダクトとを含む冷却塔を備えるコークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造である。スローピングフリュー部構造の一例は、予備室の下端部を外側から取り囲むように冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、耐火レンガによって構成され、予備室の下端部と冷却室の上端部及び環状壁との間において冷却室の径方向に延び、且つ、冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、複数の支持壁のうち周方向において隣り合う支持壁と、予備室の下端部と、環状壁とによって画定され、且つ、冷却室と環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを備える。環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて外方に拡がる傾斜面を含む。複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、傾斜面と冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、一の支持壁の下端と冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する。この場合、例1のコークス乾式消火設備と同様の作用効果が得られる。
【0046】
例4.例3のスローピングフリュー部構造において、複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、予備室の下端部と一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θは、70°以下であってもよい。この場合、例2コークス乾式消火設備と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1…スローピングフリュー部(スローピングフリュー部構造)、10…環状壁、20…支持壁、30…排気流路、100…コークス乾式消火設備、101…冷却塔、101A…予備室、101B…冷却室、101C…環状ダクト、L1…仮想直線、P0…交差部(第3の交差部)、P1…交差部(第1の交差部)、P2…交差部(第2の交差部)、S1…傾斜面。
【要約】
【課題】本開示は、スローピングフリュー部からの赤熱コークスの排出を促進することが可能なコークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造を説明する。
【解決手段】コークス乾式消火設備は、予備室、冷却室、環状ダクト及びスローピングフリュー部を含む冷却塔を備える。スローピングフリュー部は、予備室の下端部を外側から取り囲むように冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、予備室の下端部と冷却室の上端部及び環状壁との間において冷却室の径方向に延び、且つ、冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁とを含む。環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含む。複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、傾斜面と冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、一の支持壁の下端と冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4