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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ベースプレート
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/02 F
H01L23/34 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024083483
(22)【出願日】2024-05-22
【審査請求日】2024-05-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度 国立研究開発法人情報通信研究機構 「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gにおける超広域・大容量モバイルネットワークを実現するHAPS通信技術の研究開発 HAPS移動通信の高速大容量化技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-547138(JP,A)
【文献】特開2003-273310(JP,A)
【文献】特開2015-185741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 3/46
H01L 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に重畳してグラウンドとして用いられるベースプレートであって、
前記基板に設けられ、前記基板から前記ベースプレートに向かって突出する電子部品に対向する位置に前記電子部品を平面視した場合の外形に沿い、前記電子部品との間に隙間がないように設けられた開口部を有する板金と、
前記開口部に対向する前記開口部と同形状の開口を有し、所定の厚みを有する1以上の枠体と、
前記枠体に設けられた開口を覆う底部と、を備え、
前記板金、前記1以上の枠体、前記底部の順に重畳されて成るベースプレート。
【請求項2】
前記電子部品が前記基板から突出している長さが、前記板金の厚み及び前記枠体の前記所定の厚みに基づく長さ以下となる数の前記1以上の枠体が重畳されている
ことを特徴とする請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
前記ベースプレートは、アルミニウム製である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のベースプレート。
【請求項4】
前記基板は、通信基板である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のベースプレート。
【請求項5】
前記通信基板及びベースプレートは、HAPS(High Altitude Platform Station)の無人飛行機に搭載される
ことを特徴とする請求項4に記載のベースプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板のベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信の基地局を高高度に配することにより、基地局一つ当たりの通信エリアは広くなることから、高高度に滞空する航空機に無線局を搭載する高高度プラットフォームとして知られるHAPS(High Altitude Platform Station)を用いた通信システムが開発されている。HAPSに用いられる航空機は、滞空するためになるべく軽量化されることが望まれるものであり、その軽量化は、例えば、回路基板やヒートシンクにおいても成されることが好ましい。
【0003】
特許文献1においては、ヒートシンク内にベースプレートを設けて小型化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/132425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回路基板に設けられる電子回路部品と相対する箇所においては、凹部が設けられる必要があるが、その実現手法としてベースプレートとして用いる金属ブロックから削り出し加工により実現することが考えられる。しかしながら、削り出し加工により実現されるベースプレートは、かねてより、その重量と加工コストが問題視されている。削り出し加工以外の手法としては、薄い板金をプレス加工により凹部を形成することも考えられるが、この場合の凹部はプレス加工の性質上、凹部と電子回路部品との間に隙間ができるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて成されたものであり、従来よりも軽量かつ凹部と電子回路部品との間の隙間がないベースプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るベースプレートは、基板に重畳してグラウンドとして用いられるベースプレートであって、基板に設けられ、基板からベースプレートに向かって突出する電子部品に対向する位置に電子部品を平面視した場合の外形に沿うように設けられた開口部を有する板金と、開口部に対向する開口部と同形状の開口を有し、所定の厚みを有する1以上の枠体と、枠体に設けられた開口を覆う基底部と、を備え、板金、1以上の枠体、基底部の順に重畳されて成る。
【0008】
また、上記ベースプレートにおいて、電子部品が基板から突出している長さが、板金の厚み及び枠体の所定の厚みに基づく長さ以下となる数の1以上の枠体が重畳されていることとしてもよい。
【0009】
また、上記ベースプレートにおいて、ベースプレートは、アルミニウム製であることとしてもよい。
【0010】
また、上記ベースプレートにおいて、基板は通信基板であることとしてもよい。
【0011】
また、上記ベースプレートにおいて、通信基板及びベースプレートは、HAPS(High Altitude Platform Station)の無人飛行機に搭載されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るベースプレートによると、枠体部分及び底部部分において、その周囲に部材がない状態にすることができるので、削り出し加工により形成されたベースプレートよりも軽量なベースプレートを提供することができる。また、本発明に係るベースプレートによると、枠体と基板との間に隙間ができないので、プレス加工により形成されたベースプレートよりも、グラウンド電流の回り込みを抑制できるベースプレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)ベースプレートを上部から見た外観を示す斜視図である。(b)ベースプレートを下部から見た外観を示す斜視図である。
図2】ベースプレートの分解斜視図である。
図3】(a)ベースプレートの上面図である。(b)ベースプレートの正面図である。(c)ベースプレートの側面図である。(d)下面図である。
図4】(a)通信基板とベースプレートとを接合した状態を示す斜視図である。(b)通信基板とベースプレートとを接合した状態のAA線における断面図である。
図5】(a)ベースプレートにヒートシンクを接合した状態を示す断面図である。(b)ヒートシンクの斜視図である。
図6】(a)通信基板とベースプレートとを接合した状態を示す断面図である。(b)通信基板と削り出し加工したベースプレートとを接合した状態を示す断面図である。(c)通信基板とプレス加工したベースプレートとを接合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るベースプレートについて図面を参照しながら説明する。
【0015】
<構成>
<ベースプレート100の構成>
図1(a)は、ベースプレート100を上面から見た斜視図であり、図1(b)は、ベースプレート100を下面から見た斜視図である。図2は、図1(a)に示すベースプレート100の分解斜視図である。また、図3(a)は、ベースプレート100の上面図であり、図3(b)は、ベースプレート100の正面図であり、図3(c)は、ベースプレート100の側面図であり、図3(d)は、ベースプレート100の下面図である。
【0016】
ベースプレート100は、回路基板のグラウンド(接地層)として利用されるものであってよい。ベースプレート100は、図2に示されるように、板金10と、1以上の枠体13と、底部14とが、この順に積層されて成る。
【0017】
板金10は、回路基板に重畳する際に、回路基板に設置される電子部品であってベースプレート100に向かって突出する電子部品に対向する位置に開口部16を備える。
【0018】
開口部16は、対向する回路基板(プリント基板、半導体基板、誘電体基板)に設けられる電子部品の平面視した際の外形に沿う、即ち、電子部品の外形と同形状の開口である。また、開口部16は、当該電子部品を平面視した際の外形と略同一の大きさ(開口部16に電子部品を挿入可能な程度には開口部16の方が電子部品よりも大きくてもよい)を有する。換言すれば、電子部品の大きさは、開口部16の大きさ以下である。ただし、開口部16と挿入される電子部品との間の隙間はなるべくない方が好ましい。
【0019】
枠体13は、板金10の開口部16に対向する位置に、同形状かつ同じ大きさの開口部17が設けられた板材である。枠体13全体の大きさ(面積)は、板金10よりも小さい(狭い)方が好ましく、小さくした分だけ、ベースプレート100全体としての重量を軽くすることができる。枠体13は、挿入される電子部品の高さに応じて用いる数が決定される。即ち、電子部品のベースプレート100に向かって突出している長さが、板金10の厚み+枠体13の1枚当たりの厚み×枠体13の個数以下となるように、重ねる枠体13の個数を定める。
【0020】
底部14は、対向する枠体13の開口部17を覆う板材である。また、底部14の大きさ(面積)は、板金10よりも小さく(狭い)、枠体13全体の大きさと同等であってよい。
【0021】
板金10の開口部、枠体13の開口部、底部14により、凹部11が形成される。凹部11には、対向する回路基板の電子部品が挿入される。
【0022】
板金10と、1つ以上の枠体13と、底部14と、はそれぞれに設けられ、互いに対向する開口15を通して、積層方向において互いに隙間ができないように係止部材12により、係止される。
【0023】
係止部材12は、一例として、ボルトとナットとにより実現されてよい。なお、係止部材12に代えて、接着剤等を用いて、板金10と枠体13、枠体13と底部14とを互いに接着することとしてもよい。
【0024】
ベースプレート100、即ち、板金10、枠体13、底部14は、軽量かつグラウンドとして利用可能な金属により実現されてよく、基本的には、アルミニウムから成る。ただし、ベースプレートはアルミニウム以外から成ることとしてよく、例えば、熱伝導性の高い銅を用いることとしてもよいし、軽量という観点においてチタンを用いることとしてもよい。なお、アルミニウムの方が銅よりも比重が軽く、低コストで実現することができる。また、アルミニウムの方がチタンよりも熱伝導性が高く、低コストで実現することができる。板金10、枠体13、底部14それぞれは、図示の形状となるように、1枚のアルミニウム薄板を切り欠くことで形成してよい。ベースプレート100は、グラウンドとしての他、放熱板としても機能してよい。
【0025】
以上がベースプレート100の構成例である。
【0026】
<ベースプレート100の利用形態>
図4は、ベースプレート100の一利用形態を示す図であり、図4(a)は、ベースプレートに回路基板を重畳した状態を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(b)に示すAA線において切断した場合のその断面図である。
【0027】
図4(a)に示すように、ベースプレート100には、回路基板20が重畳して用いられる。回路基板20には、電子部品21が設けられている。電子部品21は、ベースプレート100に向けて、その高さの分だけ、回路基板20から突出しており、この突出部分は、図4(b)に示すように、ベースプレート100に形成される凹部11と嵌合する。
【0028】
回路基板は、一例として通信回路基板であってよく、電子部品21は、通信回路であってよいが、これらに限定するものではない。このように形成される部品は、例えば、HAPS(High Altitude Platform Station)において用いる無人飛行機に用いることができる。HAPSにおいて用いる無人飛行機は、超高空(成層圏)に長時間滞空して、空中に存在する無線基地局として機能するものであり、軽量であるに越したことはない。そこで、本実施形態に係るベースプレート100は、従来よりも軽量に実現できるので、無人飛行機の軽量化に貢献することができる。
【0029】
図5は、ベースプレート100の他の利用形態を示す図である。図5(a)は、ベースプレート100にヒートシンク50を接合した断面図を示しており、図5(b)は、ヒートシンク50の斜視図である。
【0030】
図5(a)に示すようにベースプレート100の下面にヒートシンク50を設けた例を示している。ベースプレート100の下面にヒートシンク50を設けることで、電子部品21において発生する熱を、放熱することができるので、電子部品21において熱暴走が発生する可能性を抑制することができる。
【0031】
図5(b)は、ヒートシンク50の一例を示す斜視図である。ヒートシンク50は、軽量化を目的として、ベースプレート100と同様にアルミニウムにより実現されてもよい。図5(b)に示すようにヒートシンク50は、一例として、アルミニウムの板金において、3方向を切り欠いて、その部分を押し倒すことで放熱フィン51を複数形成することで、ヒートシンク50を形成するようにしてもよい。これにより、軽量なヒートシンク50を用いて、電子部品21の放熱を行うことができる。なお、図5(b)においては、ヒートシンク50において放熱フィン51を形成する位置を、列によって変更している例を示しているが、これは、放熱フィン51の位置を揃えるよりも、異なるようにした方が放熱効率が向上する可能性があるためである。
【0032】
<ベースプレート100と従来のベースプレートとの比較>
図6を用いて、本実施形態に係るベースプレート100と、従来のベースプレートとを比較する。
【0033】
図6(a)は、本実施形態に係るベースプレート100の断面図であり、図6(b)は、従来のベースプレートであって、削り出し加工により作成したベースプレートの断面図であり、図6(c)は、従来のベースプレートであって、プレス加工により作成したベースプレートの断面図を示している。図6(a)~(c)のいずれも回路基板20を搭載している例を示している。
【0034】
図6(b)に示すように、削り出し加工によりベースプレート60を作成する場合には、必要となる凹部の深さの分だけの厚みがあるブロック材を用意し、そのブロック材から凹部を削り出して形成する。その結果、図6(a)に示す本実施形態に係るベースプレート100と比較すると、領域61の部分に示す部材の分だけ、ベースプレート60は重くなるという問題がある。
【0035】
また、図6(c)に示すようにプレス加工によりベースプレート62を作成する場合には、凹部の部分をプレスして加工するので、図示するように、凹部の壁面がどうしても斜めになる。そうすると、図6(a)に示す本実施形態に係るベースプレート100と比較すると、図6(c)に示すように、電子部品21と、ベースプレート62との間に隙間63が生じる。この場合、隙間63があることによって、グラウンド電流の回り込みが発生することになる。ここで、電子部品21が通信回路であるような場合には、このグラウンド電流の回り込みは、無線信号の品質低下、特に、信号の変調精度(EVM:Error Vector Magnitude)の低下を招くという問題がある。
【0036】
図6(a)に示す本実施形態に係るベースプレート100であれば、これらの問題を解消することができる。
【0037】
<まとめ>
本実施形態に係るベースプレート100によれば、削り出し加工によりベースプレートを実現する場合に比して、その重量を軽減することができるとともに、加工コストも低減することができる。即ち、ベースプレート100は、図6(b)に示す領域61の分だけ軽量化することができ、かつ、板金10、枠体13、底部14のいずれも一枚のアルミニウム薄板から切り欠くだけで実現できるので、加工コストも低減することができる。また、ベースプレート100によれば、プレス加工により実現した場合に比して、図6(c)の隙間63が形成されないので、グラウンド電流の回り込みが発生せず、通信品質の低下を招かずに済む。
【0038】
<変形例>
上記実施形態に係るベースプレートは、上記実施形態に限定されるものではなく、他の手法により実現されてもよいことは言うまでもない。以下、各種変形例について説明する。
【0039】
(1) 上記実施形態においては、ベースプレート100には、一つの凹部が設けられている例を説明したが、凹部の個数は一つに限定するものではない。対向する回路基板に設けられ、ベースプレート100に向かって突出する電子部品の数だけ設けられてよい。また、この時の開口部の形状は、電子部品それぞれの形状、大きさに応じて作成されるとともに、枠体13の個数も電子部品の突出の度合いに応じて、設ける数を決定することとしてよい。このように、電子部品の突出の度合いに応じて、適切な数の枠体13を重ねる数を決定することができる。
【0040】
(2) 上記実施形態において、開口の形状として長方体形状の例を説明したが、これは前述の通り電子部品の形状に応じた形状である必要があり、例えば、電子部品が平面視で円形であれば、開口部も円形となる。
【0041】
(3) 上記実施形態並びに変形例に示す各実施形態は、適宜、組み合わせてもよい。
【0042】
(4) 以上説明した本開示の各態様によれば、軽量なグラウンド電流の回り込みのないベースプレートを提供することができ、ひいては、HAPSにおける無人航空機の軽量化、通信性能の向上が可能となることにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0043】
100 ベースプレート
10 板金
11 凹部
12 係止部材
13 枠体
14 底部
15 開口
16 開口部
17 開口部
20 基板
21 電子部品(MOSFET)
50 ヒートシンク
51 放熱フィン
【要約】      (修正有)
【課題】基板のグラウンドとして用いる軽量化された回路基板のベースプレートを提供する。
【解決手段】基板20に重畳してグラウンドとして用いられるベースプレート100であって、基板に設けられ、基板からベースプレート100に向かって突出する電子部品(MOSFET)21に対向する位置に電子部品を平面視した場合の外形に沿うように設けられた開口部を有する板金10と、開口部に対向する開口部と同形状の開口を有し、所定の厚みを有する1以上の枠体13と、枠体13に設けられた開口を覆う底部14と、を備え、板金10、1以上の枠体13、底部14の順に重畳されて成る。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6