(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】皿ばね部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/32 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
F16F1/32
(21)【出願番号】P 2024114042
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2023572546の分割
【原出願日】2023-03-10
【審査請求日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2022041658
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田島 典拓
(72)【発明者】
【氏名】米岡 篤志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1852632(EP,A2)
【文献】特公昭37-10353(JP,B1)
【文献】中国実用新案第205401566(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向で互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧した状態で設けられ、
第1部材および第2部材を備え、
前記第2部材は、前記第1被押圧体と前記第2被押圧体との間に設けられた状態で、前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い拡径しており、
前記第1部材は、周方向に間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記第1部材は、周方向に延びる接続板を介して連結され、
複数の前記第1部材、および前記接続板は、同一の材質で一体に形成され、
前記第1方向に沿う断面視で、前記第1部材若しくは前記接続板が、前記第2部材のうちの少なくとも、径方向の外側を向く外周面における径方向の内端部、および径方向の内側を向く内周面における径方向の外端部に位置するように、前記第1部材が、前記第2部材を前記第1方向に跨ぎ、
前記第2部材は、前記第1部材若しくは前記接続板を介して前記第1被押圧体を押圧するとともに、前記第1部材若しくは前記接続板を介して前記第2被押圧体を押圧している、皿ばね部材。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、
前記第2部材は、前記第1部材を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成される、請求項1に記載の皿ばね部材。
【請求項3】
前記第1部材若しくは前記接続板は、前記第1被押圧体と、前記第2部材の外周面における径方向の内端部と、により前記第1方向に挟まれるとともに、前記第2被押圧体と、前記第2部材の内周面における径方向の外端部と、により前記第1方向に挟まれる、請求項1または2に記載の皿ばね部材。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材のうちのいずれか一方に、前記第1方向に貫く貫通孔が形成されており、前記第1部材および前記第2部材のうちのいずれか他方が、前記貫通孔に挿入されることで、前記第1部材が、前記第2部材を前記第1方向に跨いでいる、請求項1から3のいずれか1項に記載の皿ばね部材。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い縮径し、かつ前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い拡径するように逆反り変形可能に形成され、
前記第2部材は、逆反り変形したときに、この変形前と比べて前記第1方向の大きさが増大する、請求項1から4のいずれか1項に記載の皿ばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿ばね部材に関するものである。
本願は、2022年03月16日に、日本に出願された特願2022-041658号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、第1方向で互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に、第1被押圧体および第2被押圧体を、互いが第1方向に離反する向きに押圧した状態で設けられるばね部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のばね部材では、例えば第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか一方から他方に向けて、電流を流したり、熱を伝えたりするのに用いようとすると、ばね部材の荷重特性を優先させた場合、ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることが困難である。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる皿ばね部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の皿ばね部材は、第1方向で互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧した状態で設けられ、第1部材および第2部材を備え、前記第2部材は、前記第1被押圧体と前記第2被押圧体との間に設けられた状態で、前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い拡径しており、前記第1部材は、周方向に間隔をあけて複数設けられ、複数の前記第1部材は、周方向に延びる接続板を介して連結され、複数の前記第1部材、および前記接続板は、同一の材質で一体に形成され、前記第1方向に沿う断面視で、前記第1部材若しくは前記接続板が、前記第2部材のうちの少なくとも、径方向の外側を向く外周面における径方向の内端部、および径方向の内側を向く内周面における径方向の外端部に位置するように、前記第1部材が、前記第2部材を前記第1方向に跨ぎ、前記第2部材は、前記第1部材若しくは前記接続板を介して前記第1被押圧体を押圧するとともに、前記第1部材若しくは前記接続板を介して前記第2被押圧体を押圧している。
【0007】
第1被押圧体および第2被押圧体に当接する第1部材と、第1部材を第1被押圧体および第2被押圧体に当接させる第2部材と、が分けて設けられる。したがって、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
また、皿ばね部材が、第1部材および第2部材を備え、第1方向に沿う断面視で、第1部材が、第2部材のうちの少なくとも、外周面の径方向の内端部、および内周面の径方向の外端部に位置するように、第2部材を第1方向に跨いでいる。したがって、第2部材を、第1被押圧体と第2被押圧体との間に設け、第2部材を、第1被押圧体および第2被押圧体により第1方向に弾性変形させることで、第1部材を、第1被押圧体および第2被押圧体のそれぞれに強く当接させることが可能になり、主に第1部材が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0008】
複数の第1部材が、周方向に間隔をあけて設けられているので、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを確実に高く確保することができる。
複数の第1部材、およびこれらの第1部材を周方向に接続する接続板が、同一の材質で一体に形成されているので、部品点数の増大を防ぎ、皿ばね部材を容易に組み立てることができる。
【0009】
前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、前記第2部材は、前記第1部材を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成されていてもよい。
【0010】
皿ばね部材が第1部材を備えていて、第2部材の表面に、第1部材と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの前述した特性を、長期にわたって発揮させることができる。
【0011】
前記第1部材若しくは前記接続板は、前記第1被押圧体と、前記第2部材の外周面における径方向の内端部と、により前記第1方向に挟まれるとともに、前記第2被押圧体と、前記第2部材の内周面における径方向の外端部と、により前記第1方向に挟まれていてもよい。
【0012】
前記第1部材および前記第2部材のうちのいずれか一方に、前記第1方向に貫く貫通孔が形成されており、前記第1部材および前記第2部材のうちのいずれか他方が、前記貫通孔に挿入されることで、前記第1部材が、前記第2部材を前記第1方向に跨いでもよい。
【0013】
第1部材および第2部材のうちのいずれか他方が、第1部材および第2部材のうちのいずれか一方に形成された貫通孔に挿入されることで、第1部材が、第2部材を第1方向に跨いでいる。したがって、前述の作用効果を有する皿ばね部材を容易に形成することができる。
【0014】
前記第2部材は、前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い縮径し、かつ前記第1被押圧体側から前記第2被押圧体側に向かうに従い拡径するように逆反り変形可能に形成され、前記第2部材は、逆反り変形したときに、この変形前と比べて前記第1方向の大きさが増大してもよい。
【0015】
第2部材が、逆反り変形可能に形成され、かつ逆反り変形したときに、この変形前と比べて第1方向の大きさが増大するように形成されている。
したがって、皿ばね部材を、第1被押圧体と第2被押圧体との間に配置した後に、第1被押圧体および第2被押圧体を第1方向に互いに接近移動させ、第2部材が、第1被押圧体および第2被押圧体により第1方向に押込まれることにより、第1被押圧体側から第2被押圧体側に向かうに従い拡径するように逆反り変形し、かつ第1被押圧体および第2被押圧体により第1方向に挟み込まれて圧縮変形する。
これにより、第1被押圧体および第2被押圧体による第1方向の押込み量を小さく抑えても、第2部材の第1方向の圧縮変形量を大きく確保することができる。また、皿ばね部材を、第1被押圧体と第2被押圧体との間に配置する際に、第1部材が、第1被押圧体および第2被押圧体に強く摺接することがなく、第1部材が、第2部材に対して位置ずれするのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、皿ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】第1実施形態の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【
図1B】
図1Aの皿ばね部材を径方向の外側から見た図である。
【
図2A】第2実施形態の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【
図2B】
図2Aの皿ばね部材を径方向の外側から見た図である。
【
図3】第3実施形態の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【
図4】第4実施形態の皿ばね部材を径方向の外側から見た図である。
【
図5】第5実施形態の皿ばね部材を径方向の外側から見た図である。
【
図6】第6実施形態の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【
図7】第6実施形態の変形例の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【
図8】第6実施形態の他の変形例の皿ばね部材の第1方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る皿ばね部材の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の皿ばね部材1は、
図1Aおよび
図1Bに示されるように、第1方向Zで互いに対向する第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧した状態で設けられる。なお、皿ばね部材1と、第1被押圧体W1と、の間に他の部材を配置してもよく、皿ばね部材1と、第2被押圧体W2と、の間に他の部材を配置してもよい。
なお、以下の説明において、皿ばね部材が、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧するとは、以下の場合(1)および(2)を含む。すなわち、場合(1)では、皿ばね部材が、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2に第1方向Zに当接することで、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧する。場合(2)では、皿ばね部材が、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2に、第1方向Zまたは第1方向Zとは異なる方向に当接することで、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧する。
以下、第1方向Zに沿う第1被押圧体W1側を一方側といい、第1方向Zに沿う第2被押圧体W2側を他方側という。
【0019】
皿ばね部材1は、伝導板11(第1部材)およびばね本体12(第2部材)を備えている。伝導板11およびばね本体12は、全域にわたって互いに接合されていない状態で設けられている。
【0020】
伝導板11は、ばね本体12を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成されている。伝導板11は、例えば銅、若しくはアルミニウム等で形成されている。伝導板11の板厚は、例えば50μm~100μm程度となっている。
ばね本体12は、伝導板11を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成されている。ばね本体12は、例えば炭素鋼、若しくはステンレス鋼等で形成されている。ばね本体12は、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けられた状態で、一方側から他方側に向かうに従い拡径する皿ばねとなっている。ばね本体12は、環状に形成されており、第1方向Zに沿って延びる中心軸線Oと同軸に配設されている。
以下、第1方向Zから見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
第1方向Zに沿う断面視で、伝導板11は、ばね本体12のうちの少なくとも、径方向の外側を向く外周面12aにおける径方向の内端部、および径方向の内側を向く内周面12bにおける径方向の外端部に位置するように、ばね本体12を第1方向Zに跨いでいる。これにより、皿ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けると、伝導板11が、第1被押圧体W1と、ばね本体12の外周面12aにおける径方向の内端部と、により第1方向Zに挟まれるとともに、第2被押圧体W2と、ばね本体12の内周面12bにおける径方向の外端部と、により第1方向Zに挟まれる。ばね本体12は、伝導板11を介して第1被押圧体W1を押圧するとともに、伝導板11を介して第2被押圧体W2を押圧する。
【0022】
本実施形態では、ばね本体12に、第1方向Zに貫く貫通孔12cが形成されており、伝導板11は、貫通孔12cに挿入されることで、ばね本体12を第1方向Zに跨いでいる。伝導板11は、第1方向Zから見て径方向に長い長方形状を呈する。伝導板11は、一方側から他方側に向かうに従い、径方向の内側から外側に向けて延びている。伝導板11において、径方向の内側部分は、ばね本体12の外周面12aに位置し、径方向の中間部分は、貫通孔12cに挿入され、径方向の外側部分は、ばね本体12の内周面12bに位置している。
【0023】
図示の例では、伝導板11の径方向の外端部は、一方側に向けて折り曲げられ、ばね本体12における径方向の外端面12dの少なくとも一部を覆っている。
なお、伝導板11の径方向の外端部は、一方側に向けて折り曲げられなくてもよい。また、伝導板11の径方向の内端部を、他方側に向けて折り曲げ、ばね本体12における径方向の内端面12eの少なくとも一部を覆ってもよい。
【0024】
複数の伝導板11が、周方向に間隔をあけて設けられている。複数の伝導板11は、周方向に延びる接続板13を介して連結されている。複数の伝導板11、および接続板13は、同一の材質で一体に形成されている。
図示の例では、接続板13は、周方向に延びる帯状(環状)に形成されている。接続板13は、周方向で互いに隣り合う伝導板11の径方向の内端部同士を連結している。
なお、接続板13は、例えば、中心軸線Oと同軸に配設された円板状等に形成されてもよい。接続板13は、周方向で互いに隣り合う伝導板11の、径方向の中間部同士、または径方向の外端部同士を連結してもよい。接続板13を有さず、複数の伝導板11が独立して設けられてもよい。
【0025】
皿ばね部材1の第1方向Zの大きさは、皿ばね部材1を組み付ける前における第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間の第1方向Zの距離より大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
【0026】
この距離が皿ばね部材1より大きい場合には、皿ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に配置した後に、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を第1方向Zに互いに接近移動させ、ばね本体12を、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに挟み込んで圧縮変形させる。
なお、ばね本体12を、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに挟み込んで圧縮変形させる際、皿ばね部材1と、第1被押圧体W1と、の間に他の部材を配置してもよく、皿ばね部材1と、第2被押圧体W2と、の間に他の部材を配置してもよい。
【0027】
前述の距離が皿ばね部材1より小さい場合には、皿ばね部材1を、治具を用いて予め第1方向Zに押し込んだ状態で、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に配置する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態による皿ばね部材1によれば、伝導板11およびばね本体12を備え、第1方向Zに沿う断面視で、伝導板11が、ばね本体12のうちの少なくとも、外周面12aの径方向の内端部、および内周面12bの径方向の外端部に位置するように、ばね本体12を第1方向Zに跨いでいる。皿ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設け、ばね本体12を、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに弾性変形させることで、伝導板11を、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2のそれぞれに強く当接させることが可能になり、主に伝導板11が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0029】
皿ばね部材1が伝導板11を備えていて、ばね本体12の表面に、伝導板11と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの前述した特性を、長期にわたって発揮させることができる。
【0030】
複数の伝導板11が、周方向に間隔をあけて設けられているので、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを確実に高く確保することができる。
複数の伝導板11、およびこれらの伝導板11を周方向に接続する接続板13が、同一の材質で一体に形成されているので、部品点数の増大を防ぎ、皿ばね部材1を容易に組み立てることができる。
【0031】
伝導板11が、ばね本体12に形成された貫通孔12cに挿入されることで、ばね本体12を第1方向Zに跨いでいるので、前述の作用効果を有する皿ばね部材1を容易に形成することができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態に係る皿ばね部材2を、
図2Aおよび
図2Bを参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0033】
本実施形態の皿ばね部材2では、ばね本体22(第2部材)に貫通孔12cが形成されておらず、伝導板21(第1部材)に貫通孔21aが形成されている。ばね本体22における径方向の外端部に、径方向の外側に向けて突出し、貫通孔21aに挿入された板状の係止突片22cが形成されている。係止突片22cの表裏面は、ばね本体22における外周面12aおよび内周面12bそれぞれの径方向の外端部を構成している。
【0034】
伝導板21のうち、貫通孔21aより径方向の内側に位置する部分は、ばね本体22の外周面12aに位置している。伝導板21は、貫通孔21aにばね本体22の係止突片22cが挿入されることで、第1方向Zに沿う断面視で、ばね本体22のうちの少なくとも、外周面12aにおける径方向の内端部、および内周面12bにおける径方向の外端部に位置するように、ばね本体22を第1方向Zに跨いでいる。
【0035】
本実施形態の皿ばね部材2においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
ばね本体22に形成された係止突片22cが、伝導板21に形成された貫通孔21aに挿入されることで、伝導板21が、ばね本体22を第1方向Zに跨いでいるので、前述の作用効果を有する皿ばね部材2を容易に形成することができる。
なお、係止突片22cとして、ばね本体22における径方向の内端部に形成され、径方向の内側に向けて突出した構成を採用してもよい。
【0036】
次に、本発明の第3実施形態に係る皿ばね部材3を、
図3を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0037】
本実施形態の皿ばね部材3では、伝導板31(第1部材)およびばね本体32(第2部材)に貫通孔12c、21aが形成されていない。第1方向Zに沿う断面視で、伝導板31が、ばね本体32の外周面12aにおける全域にわたって位置する。第1方向Zに沿う断面視で、伝導板31の径方向の内端部が、他方側に向けて折り曲げられ、ばね本体32における径方向の内端面12eの少なくとも一部を覆う。第1方向Zに沿う断面視で、伝導板31の径方向の外端部が、他方側に向けて折り曲げられ、ばね本体32における径方向の外端面12dを全域にわたって覆い、かつばね本体32の内周面12bにおける径方向の外端部に位置している。なお、伝導板31の径方向の内端部は、他方側に向けて折り曲げられなくてもよい。
【0038】
すなわち、本実施形態では、第1方向Zに沿う断面視で、ばね本体32の外周面12aにおける全域にわたって位置した伝導板31の径方向の外端部が、他方側に向けて折り曲げられ、ばね本体32における径方向の外端面12dを全域にわたって覆い、かつばね本体32の内周面12bにおける径方向の外端部に位置する。これにより、伝導板21は、第1方向Zに沿う断面視で、ばね本体22のうちの少なくとも、外周面12aにおける径方向の内端部、および内周面12bにおける径方向の外端部に位置するように、ばね本体32を第1方向Zに跨いでいる。
【0039】
本実施形態の皿ばね部材3においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
なお、第1方向Zに沿う断面視で、伝導板31が、ばね本体32の内周面12bにおける全域にわたって位置し、伝導板31の径方向の外端部が、一方側に向けて折り曲げられ、ばね本体32における径方向の外端面12dの少なくとも一部を覆い、伝導板31の径方向の内端部が、一方側に向けて折り曲げられ、ばね本体32における径方向の内端面12eを全域にわたって覆い、かつばね本体32の外周面12aにおける径方向の内端部に位置した構成を採用してもよい。
この構成において、伝導板31の径方向の外端部は、一方側に向けて折り曲げられなくてもよい。
【0040】
次に、本発明の第4実施形態に係る皿ばね部材4を、
図4を参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態の皿ばね部材4では、ばね本体12に、貫通孔12cから径方向の外側に向けて延び、ばね本体12の径方向の外端面12dに開口したスリット41が形成されている。スリット41の周方向の大きさは、貫通孔12cの周方向の大きさより小さくなっている。スリット41、および貫通孔12cそれぞれの周方向の中央部は互いに一致している。
伝導板11の径方向の外端部は、一方側に向けて折り曲げられておらず、ばね本体12における径方向の外端面12dは、伝導板11に覆われていない。
【0042】
本実施形態の皿ばね部材4においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
なお、スリット41は、貫通孔12cから径方向の内側に向けて延び、ばね本体12の径方向の内端面12eに開口してもよい。スリット41の周方向の大きさは、径方向の外側から内側に向かうに従い大きくしてもよいし小さくしてもよい。
【0043】
次に、本発明の第5実施形態に係る皿ばね部材5を、
図5を参照しながら説明する。
なお、この第5実施形態においては、第4実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0044】
本実施形態の皿ばね部材5では、スリット41の周方向の大きさが、貫通孔12cの周方向の大きさと同じになっている。伝導板11の径方向の外端部に、周方向の両側に突出した一対の張出突片51が形成されている。張出突片51は、貫通孔12cおよびスリット41より周方向の外側に張り出し、ばね本体12の内周面12bにおける径方向の外端部に位置している。
本実施形態の皿ばね部材5においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0045】
次に、本発明の第6実施形態に係る皿ばね部材6を、
図6を参照しながら説明する。
なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態では、第1被押圧体W1が、第2被押圧体W2に向けて第1方向Zに突出する軸部101を有する。軸部101は、第1方向Zの他方側に延び、中心軸線Oと同軸に配設されている。軸部101は、環状のばね本体12に挿通されている。
【0047】
本実施形態の皿ばね部材6では、伝導板61(第1部材)の径方向の内端部は、他方側に向けて折り曲げられ、ばね本体12における径方向の内端面12eの少なくとも一部を覆っている。なお、
図6に示される例では、伝導板61の径方向の内端部は、内端面12eを全域にわたって覆っている。
伝導板61の径方向の内端部は、軸部101の外周面と当接している。すなわち、伝導板61は、第1被押圧体W1と、第1方向Zにおいて当接しているとともに、径方向において当接している。なお、伝導板61の径方向の内端部は、他方側に向けて折り曲げられることで軸部101の外周面と当接していればよく、内端面12eの一部のみを覆っていてもよい。また、
図7に示されるように、伝導板61の径方向の内端部は、他方側に向けて折り曲げられ、ばね本体12における径方向の内端面12eを全域にわたって覆い、かつばね本体12の内周面12bにおける径方向の内端部に位置していてもよい。
【0048】
また、ばね本体12が圧縮変形される前には、伝導板61の径方向の内端部が軸部101の外周面と当接しておらず、ばね本体12が圧縮変形された後に、伝導板61の径方向の内端部が軸部101の外周面と当接してもよい。ばね本体12が圧縮変形される前においても、伝導板61の径方向の内端部が軸部101の外周面と当接していてもよい。
【0049】
本実施形態では、伝導板61を、第1被押圧体W1に、第1方向Zに加えて、径方向において当接させることができる。したがって、本実施形態の皿ばね部材6においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0050】
なお、
図8に示されるように、伝導板61の径方向の内端部が軸部101の外周面と当接した後に、第1被押圧体W1と、伝導板61とが、第1方向Zにおいて離間してもよい。この場合であっても、伝導板61が第1被押圧体W1と径方向に当接するとともに、第2被押圧体W2と第1方向Zに当接することで、皿ばね部材6は、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧する。
本変形例では、伝導板61を、第1被押圧体W1に、第1方向Zに代えて、径方向において当接させることができる。したがって、本変形例の皿ばね部材6においても、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、ばね本体として、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けられる前は、一方側から他方側に向かうに従い縮径していて、一方側から他方側に向かうに従い拡径するように逆反り(反転)変形したときには、この変形前と比べて第1方向Zの大きさが増大するように、外周面12a側の残留応力の分布と、内周面12b側の残留応力の分布と、が調整された構成を採用してもよい。
【0053】
このばね本体では、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に配置された後に、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を第1方向Zに互いに接近移動させ、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに押込まれることにより、一方側から他方側に向かうに従い拡径するように逆反り変形する。この構成においても、ばね本体が、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けられた状態で、一方側から他方側に向かうに従い拡径し、かつ第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに挟み込まれて圧縮変形する。
【0054】
このばね本体では、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2による第1方向Zの押込み量を小さく抑えても、ばね本体の第1方向Zの圧縮変形量を大きく確保することができる。
また、皿ばね部材を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に配置する際に、伝導板が、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2に強く摺接することがなく、伝導板が、ばね本体に対して位置ずれするのを抑制することができる。
【0055】
なお、この構成において、皿ばね部材と、第1被押圧体W1と、の間に他の部材を配置してもよく、皿ばね部材と、第2被押圧体W2と、の間に他の部材を配置してもよい。
皿ばね部材を、治具を用いて予め第1方向Zに押し込んで、ばね本体を逆反り変形させた状態で、皿ばね部材を第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に配置してもよい。
ばね本体を逆反り変形させる際、ばね本体を第1被押圧体W1および第2被押圧体W2により第1方向Zに押し込むのに代えて、ばね本体に、例えば振動および熱等を加えてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、皿ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1~6 皿ばね部材
11、21、31、61 伝導板(第1部材)
12、22、32 ばね本体(第2部材)
12a 外周面
12b 内周面
12c、21a 貫通孔
13 接続板
W1 第1被押圧体
W2 第2被押圧体
Z 第1方向