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特許7588753硬化性組成物、硬化物、接着剤および封止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、接着剤および封止剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/22 20060101AFI20241115BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20241115BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241115BHJP
   C07D 407/14 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C08G59/22
C08G59/68
C09J163/00
C07D407/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024126468
(22)【出願日】2024-08-02
【審査請求日】2024-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2023207547
(32)【優先日】2023-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722013405
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩入 僚祐
(72)【発明者】
【氏名】安藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】柏原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】青木 和徳
(72)【発明者】
【氏名】熊野 岳
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-2191(JP,A)
【文献】特開2019-77674(JP,A)
【文献】特開2019-189769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/22
C08G 59/68
C09J 163/00
C07D 407/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物。
【化1】
(式中、Rは、同一または異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【請求項2】
カチオン重合開始剤を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項4】
請求項1~2のいずれかに記載の硬化性組成物を含有する接着剤。
【請求項5】
請求項1~2のいずれかに記載の硬化性組成物を含有する封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物、接着剤および封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ・オキセタン化合物は、光硬化および熱硬化が可能なモノマーとして、近年注目されており、これを成分として含有する硬化性組成物は、硬化時の収縮が小さく、また、その硬化物(樹脂)は、靱性、機械的特性(機械強度)、耐熱性、電気的特性、耐水性(耐湿性)、耐候性、透明性、他材料との密着性(接着性)、等に優れている。
このような優れた特徴から、エポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物は、コーティング材料、塗料、インク、接着材料(接着剤)、粘着材料、フィルム、ペースト、光学材料、封止材料(封止剤)、レジスト材料等の原料としての利用が進められている。
【0003】
本発明に関連する従来技術について、文献を引用して以下に述べる。
特許文献1に記載された発明は、分子量が600以下であり、且つカチオン重合性基を分子内に3個以上含む重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物に関するものである。
この文献には、重合性化合物として、化学式(Ref-1)で示されるエポキシ化合物と、化学式(Ref-2)で示されるエポキシ・オキセタン化合物が記載されている。
【0004】
【化1】
【0005】
【化2】
【0006】
特許文献2に記載された発明は、エポキシ基とオキセタニル基とを有する環状エーテル化合物を含有する薄膜用接着剤組成物に関するものである。
この文献には、エポキシ基とオキセタニル基とを有する環状エーテル化合物の例として、化学式(Ref-3)で示されるエポキシ・オキセタン化合物が記載されている。
【0007】
【化3】
【0008】
様々な用途で使用されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物は、その特性として硬化により硬化物が得られること、並びに硬化性組成物の調製時及び該硬化性組成物を使用する際の作業性の観点から低粘度であることが求められている。また、硬化性組成物を硬化させた硬化物は、その特性として、高弾性で剛性に優れること、曲げ強度が大きいこと、及び硬化物中の構造欠陥が少なく均一な三次元ネットワークを形成していることにより優れた機械強度を有していることが求められている。化学式(Ref-1)~(Ref-3)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物では、それらの特性を高い水準で兼ね備えておらず、硬化性、粘度、及び/又は機械強度に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-111713号公報
【文献】特開2019-189789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、硬化性、低粘度、及び機械強度を高い水準で兼ね備えた硬化性組成物及びその硬化物、接着剤および封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記の硬化性組成物として、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物を採用することにより、所期の目的を達成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物である。
【0013】
【化4】
(式中、Rは、同一または異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
【0014】
また、カチオン重合開始剤を含有していてもよい。
【0015】
第2の発明は、第1の発明の硬化性組成物が硬化した硬化物である。
【0016】
第3の発明は、第1の発明の硬化性組成物を含有する接着剤である。
【0017】
第4の発明は、第1の発明の硬化性組成物を含有する封止剤である。
【発明の効果】
【0018】
化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する硬化性組成物は、硬化性に優れ、粘度が低く作業性に優れた硬化性組成物とすることができる。また、該硬化性組成物が硬化した硬化物は、高弾性で剛性に優れ、曲げ強度が大きく、硬化物中の構造欠陥が少なく均一な3次元ネットワークを形成していることにより優れた機械強度を有する硬化物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】合成例3において得られた淡黄色透明液体のIRスペクトルチャートである。
図2】合成例4において得られた無色透明液体のIRスペクトルチャートである。
図3】合成例7において得られた淡黄色透明液体のIRスペクトルチャートである。
図4】合成例10において得られた無色透明液体のIRスペクトルチャートである。
図5】合成例12において得られた淡黄色透明液体のIRスペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の硬化性化合物は、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する。化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物は、エチル基を備えるオキセタン環1個に対し2つのエポキシ基が対称に配置し、且つオキセタン環および2つのエポキシ基の各々がエーテル結合を1つ有する接続子を介して結合した構造を有する。
【0021】
【化5】
【0022】
前記の化学式(I)中、Rは、同一または異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。アルキル基は、鎖状でも分岐状でもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。原料入手の容易性および合成プロセスの簡略化の見地から、Rは同一で、水素原子、メチル基であることが好ましい。
【0023】
化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物としては、例えば、化学式(I-1)~化学式(I-6)で示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】
【0025】
化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物は、原料入手の容易性および合成プロセスの簡略化の見地から、化学式(I-1)~化学式(I-6)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であることが好ましく、化学式(I-1)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であることがより好ましい。化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物は、単独であってもよく、または2種以上が混合したものであってもよい。
【0026】
<化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物の合成方法について>
化学式(II)で示されるヒドロキシ基を有する二官能オレフィン化合物と、化学式(III)で示される脱離基を有するオキセタン化合物とを反応させて、化学式(Ia)で示されるオレフィン・オキセタン化合物を生成させ、次いで、この化合物が有する二重結合をエポキシ化することにより、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を合成することができる(反応スキーム(A)参照)。
【0027】
【化7】
【0028】
化学式(III)中、Xは脱離基であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシルオキシ基(OMs)、トシルオキシ基(OTs)またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(OTf)を表す。また、化学式(II)、(Ia)中、Rは、化学式(I)のRと同義であり、波線は、トランス体、シス体又はそれらの混合物であることを表す。
【0029】
前記の化学式(III)で示される脱離基を有するオキセタン化合物としては、3-エチル-3-メタンスルホニルオキシメチルオキセタン、3-ブロモメチル-3-エチルオキセタン等が挙げられる。
【0030】
前記の化学式(II)で示されるヒドロキシ基を有する二官能オレフィン化合物としては、例えば、化学式(II-1)~化学式(II-15)で示される化合物が挙げられる。該二官能オレフィン化合物は、単独または2種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
【化8】
【0032】
前記の化学式(II)で示されるヒドロキシ基を有する二官能オレフィン化合物は、例えば、中国特許公開公報102267878号に記載の方法等により合成することができる。該二官能オレフィン化合物の合成には、バイオマス由来の原料を使用することもでき、環境負荷の低減の観点からは、バイオマス由来の原料により合成した該二官能オレフィン化合物を用いることが好ましい。具体的には、バイオマス由来の2-クロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリン)と、バイオマス由来の末端ヒドロキシ基を有するオレフィン化合物とを原料として使用することで、バイオマス由来の該二官能オレフィン化合物を合成することができる。
【0033】
前記の化学式(III)で示される脱離基を有するオキセタン化合物は、例えば、特開2007-332294号公報に記載の方法等により合成することができる。該オキセタン化合物の合成には、バイオマス由来の原料を使用することもでき、環境負荷の低減の観点からは、バイオマス由来の原料により合成した該オキセタン化合物を用いることが好ましい。バイオマス由来の化学式(II)で示されるヒドロキシ基を有する二官能オレフィン化合物及び/又はバイオマス由来の化学式(III)で示される脱離基を有するオキセタン化合物を原料として用いることで、バイオマス由来の化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を合成することができる。
【0034】
前記の化学式(II)で示されるヒドロキシ基を有する二官能オレフィン化合物の使用量(仕込み量)としては、前記の化学式(III)で示される脱離基を有するオキセタン化合物の使用量(仕込み量)に対して、0.8~2倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0035】
なお、該二官能オレフィン化合物として、化学式(II-1)で示される二官能オレフィン化合物、化学式(II-2)で示される二官能オレフィン化合物をそれぞれ単独で反応に用いた場合では、それぞれ化学式(I-1)で示されるエポキシ・オキセタン化合物、化学式(I-2)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を得ることができる。
【0036】
化学式(Ia)で示されるオレフィン・オキセタン化合物は、塩基(i)の存在下で合成することができ、反応を促進させる為の触媒(ii)を用いてもよい。また、反応を阻害しない限りにおいて、反応溶媒(iii)を用いてもよい。
また、同化合物が有する二重結合をエポキシ化する反応においては、一般的なエポキシ化(酸化)の方法を採用することが可能であり、例えば、過酸を用いる方法、タングステン酸ナトリウムを触媒として過酸化水素を用いる方法、アセトニトリル-アルコール溶媒中において、塩基と共に過酸化水素を用いる方法等を挙げることができる。
【0037】
前記の塩基(i)としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシドまたは有機アミン化合物が挙げられる。
例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド(例えば、t-ブトキシカリウム等)、トリエチルアミン等が挙げられる。
塩基の使用量(仕込み量)としては、脱離基を有するオキセタン化合物の使用量(仕込み量)に対して、通常、1.1~20倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0038】
前記の触媒(ii)としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、オクチルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等の塩が挙げられる。
【0039】
第四級ホスホニウム塩の例としては、テトラブチルホスホニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラデシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリエチルオクタデシルホスホニウム、トリオクチルエチルホスホニウム、ヘキサデシルトリエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムのハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等の塩が挙げられる。
【0040】
これらの物質を組み合わせて、触媒(ii)として用いてもよい。
触媒(ii)の使用量(仕込み量)としては、脱離基を有するオキセタン化合物の使用量(仕込み量)に対して、0.0001~1.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0041】
前記の反応溶媒(iii)としては、反応を阻害しない限りにおいて特に制限はなく、例えば、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の溶剤が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて、その適宜量を用いることができる。
【0042】
化学式(Ia)で示されるオレフィン・オキセタン化合物を合成する際の反応温度は、0~150℃の範囲に設定することが好ましく、20~120℃の範囲に設定することがより好ましい。また、反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜設定されるが、1~48時間の範囲に設定することが好ましい。
【0043】
この反応の終了後、得られた反応液から、例えば、溶媒抽出法等の手段によって、目的物の前駆体であるオレフィン・オキセタン化合物を分離して取り出すことができる。
更に必要により、水等による洗浄や、活性炭処理、シリカゲルクロマトグラフィー等の手段を利用して精製することができる。
【0044】
前記の過酸を用いてオレフィン・オキセタン化合物をエポキシ化する反応においては、オキソン試薬、過酢酸、メタクロロ過安息香酸(3-クロロ過安息香酸)等の過酸を用いることができる。過酸の使用量(仕込み量)は、該オレフィン・オキセタン化合物の有する二重結合に対して、1.0~5.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0045】
このエポキシ化の反応において、反応溶媒は、反応を阻害しない限り特に制限されることはないが、例えば、水、メタノール、エタノール、2-プロパノールのようなアルコール類、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類、アセトン、2-ブタノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム、四塩化炭素、クロロトリフルオロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジノン、ヘキサメチルホスホロトリアミドのようなアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類等を挙げることができる。これらの反応溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて、適宜量が用いられる。
【0046】
このエポキシ化の反応における反応温度は、通常、-10~150℃の範囲であり、好ましくは、0~100℃の範囲に設定される。また、反応時間は、反応温度に応じて適宜設定されるが、通常、1~48時間の範囲、好ましくは、1~24時間の範囲内に設定される。
【0047】
この反応の終了後、得られた反応液から、例えば、溶媒抽出法等の手段によって、目的物である化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を分離して取り出すことができる。
更に必要により、水等による洗浄や、活性炭処理、シリカゲルクロマトグラフィー等の手段を利用して精製することができる。
【0048】
前記のタングステン酸ナトリウムを触媒とし、過酸化水素を用いて、オレフィン・オキセタン化合物をエポキシ化する反応において、過酸化水素は、該オレフィン・オキセタン化合物の有する二重結合に対して、1.0~5.0倍モルの割合で用いられる。また、タングステン酸ナトリウムの使用量(仕込み量)は、該オレフィン・オキセタン化合物の有する二重結合に対して、0.001~0.5倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0049】
このエポキシ化の反応においては、反応を阻害しない限り特に制限されることはないが、例えば、前記の過酸を用いるエポキシ化の場合と同様の反応溶媒を用いることができる。
【0050】
また、このエポキシ化の反応における反応温度は、前記の過酸を用いるエポキシ化の場合と同様に、通常、-10~150℃の範囲であり、好ましくは、0~100℃の範囲に設定される。反応時間は、反応温度に応じて適宜設定されるが、通常、1~48時間の範囲、好ましくは、1~24時間の範囲内に設定される。
【0051】
反応終了後は、前記の過酸によるエポキシ化の場合と同様に、得られた反応液から、例えば、溶媒抽出法等の手段によって、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を分離して取り出すことができる。また、必要により精製してもよい。
【0052】
前記のアセトニトリル-アルコール溶媒中で塩基と共に過酸化水素を用いて、オレフィン・オキセタン化合物をエポキシ化する反応において、過酸化水素の使用量(仕込み量)は、オレフィン・オキセタン化合物の有する二重結合に対して、1.0~5.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
また、アセトニトリルの使用量(仕込み量)は、該オレフィン・オキセタン化合物に対して、0.5~5.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
アルコールの使用量(仕込み量)は、過酸化水素添加前の状態で10~80重量%の範囲における適宜の割合とすることが好ましい。また、塩基を用いて、pHを7~13の範囲内に設定することが好ましい。
【0053】
このエポキシ化に用いるアルコールは、炭素数1~4の飽和アルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、イソブタノール(2-メチル-1-プロパノール)が挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上を組み合わせて、適宜量が用いられる。
【0054】
このエポキシ化に用いる塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩、または有機アミン化合物が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムを用いることが好ましく、1種または2種以上を組み合わせて、適宜量が用いられる。
【0055】
また、このエポキシ化の反応温度は、前記の過酸を用いるエポキシ化の場合と同様に、通常、-10~150℃の範囲、好ましくは、0~100℃の範囲に設定される。反応時間は、反応温度に応じて適宜設定されるが、通常、1~48時間の範囲、好ましくは、1~24時間の範囲内に設定される。
【0056】
反応終了後は、前記の過酸によるエポキシ化の場合と同様に、得られた反応液から、例えば、溶媒抽出法等の手段によって、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を分離して取り出すことができる。また、必要により精製してもよい。
【0057】
<本発明の硬化性組成物について>
化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物は優れた硬化性能を発揮する。
即ち、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物(以下、「第1の硬化性化合物」と云うことがある)を含有する硬化性組成物については、硬化させることにより、優れた特性の発現が期待される硬化物(樹脂)を得ることができる。
なお、本発明の硬化性組成物においては、第1の硬化性化合物と、これとは別の他の硬化性化合物(以下、「第2の硬化性化合物」と云うことがある)を併用することも可能である。
【0058】
本発明の硬化性組成物の硬化(重合)時に、第1の硬化性化合物とは別に、第2の硬化性化合物を共存させることにより、第1の硬化性化合物と、第2の硬化性化合物が共重合した硬化物を得ることができる。
なお、第2の硬化性化合物は、重合性モノマーと、重合性モノマーが重合した構造を有する重合性オリゴマー(半硬化物)の両者を包含する。
【0059】
この重合性モノマーの例としては、公知のエポキシ化合物(注:エポキシ樹脂と称されることがある)、オキセタン化合物、エポキシ・オキセタン化合物(分子内にオキシラン環とオキセタン環を有する)、アクリル化合物(注:アクリル樹脂と称されることがある)等が挙げられる。
【0060】
エポキシ化合物としては、分子内にオキシラン環(エポキシ基/グリシジル基)を有するものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノールまたはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル類;
p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル類;
フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル類;
1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル等の分子内に2つ以上のエポキシ基を有するグリシジルグリコールウリル化合物;
3′,4′-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物;
トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ化合物等の含窒素環状エポキシ化合物;
更に、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂の他、炭素-炭素二重結合およびグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応によるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004-99751号公報や特開2006-282988号公報に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)等が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0061】
オキセタン化合物としては、分子内にオキセタン環(オキセタニル基/オキセタン基)を有するものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、
3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、
(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、
4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、
4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、
[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、
イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、
3,3′-[1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン)]ビス-(3-エチルオキセタン)、
1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、
1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、
1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、
エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、
1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、
ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0062】
エポキシ・オキセタン化合物としては、分子内にオキシラン環(同上)とオキセタン環(同上)を有するものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、前述の特許文献1~2に記載されているものが挙げられる。これらの文献に記載されたエポキシ・オキセタン化合物を参照することにより、本明細書の開示に含む。
【0063】
アクリル化合物の例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「デナコールアクリレートDA111(商品名)」)、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、(メタ)アクリレート基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0064】
本発明の硬化性組成物においては、第2の硬化性化合物として、前述の重合性モノマーと重合性オリゴマーを組み合わせて用いてよく、重合性モノマーとしては、先に例示した重合性モノマーを組み合わせて用いてよく(種類の異なる重合性モノマーを組み合わせて用いてよく)、重合性オリゴマーについても、種類の異なる重合性オリゴマーを組み合わせて用いてよい。
【0065】
本発明の硬化性組成物中における、第1の硬化性化合物の含有量と、第2の硬化性化合物の含有量の比率については、第2の硬化性化合物の含有量が、第1の硬化性化合物の含有量に対して、0~1000倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることが好ましく、0.01~100倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることがより好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物を硬化(重合)させる方法としては、光硬化および熱硬化させる方法が挙げられる。
光硬化させる方法として、活性エネルギー線を照射する方法、光重合開始剤を併用する方法が挙げられる。活性エネルギー線は、光、放射線、電磁波や電子線等を包含するが、代表的には、光、特に紫外線を表すものとする。
光重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤または光アニオン重合開始剤を採用することができ、必要に応じて、光ラジカル重合開始剤を併用することができ、これらを硬化性組成物中に含有させればよい。なお、光硬化においては、生産効率や硬化物の特性を高める為に、熱硬化の手段を併用してもよい。
【0067】
光カチオン重合開始剤としては、一般に用いられるものであれば特に制限無く用いることができ、オニウム塩類や有機金属錯体類等が挙げられる。
オニウム塩類の例としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられ、有機金属錯体類の例としては、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体およびアリールシラノール-アルミニウム錯体等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤として市販されている工業薬品の例としては、ADEKA社製の「オプトマーSP-150(商品名)」、同「オプトマーSP-170(商品名)」や、サンアプロ社製の「CPI-100P(商品名)」、ゼネラルエレクトロニクス社製の「UVE-1014(商品名)」、サートマー社製の「CD-1012(商品名)」等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤の対アニオンとしては、SbF 、AsF 、B(C 、PF 等が挙げられる。
【0068】
光アニオン重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、オニウム塩類やカーバメート類等が挙げられる。
オニウム塩類としては、例えば、1,2-ジイソプロピル-3-(ビス(ジメチルアミノ)メチレン)グアニジウム 2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム n-ブチルトリフェニルボレート等が挙げられる。
カーバメート類としては、例えば、2-ニトロフェニルメチルピペリジン-1-カルボキシレート、1-(アントラキノン-2-イル)エチルイミダゾールカルボキシレート、1-(3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペノイル)ピペリジン、9-アントラニルメチルジエチルカーバメート等が挙げられる。
【0069】
本発明の硬化性組成物中における光カチオン重合開始剤または光アニオン重合開始剤の含有量は、0.001~20重量%の割合であることが好ましく、0.01~10重量%の割合であることがより好ましい。
【0070】
光ラジカル重合開始剤としては、
炭素数16~17のケタール化合物(例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、
炭素数8~18のアセトフェノン化合物(例えば、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等)、
炭素数13~21のベンゾフェノン化合物(例えば、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、4,4′-ビスメチルアミノベンゾフェノン等)、炭素数14~18のベンゾイン化合物(例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、
炭素数14~19のアントラキノン化合物(例えば、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等)、
炭素数13~17のチオキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等)、
炭素数22~28のアシルフォスフィンオキサイド化合物(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等)等が挙げられる。
【0071】
本発明の硬化性組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、0.001~20重量%の割合であることが好ましく、0.01~10重量%の割合であることがより好ましい。
【0072】
また、本発明の硬化性組成物を光硬化させる際には、例えば、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、ペンゾフラビン等の増感剤を用いることができる。
【0073】
一方、本発明の硬化性組成物を熱硬化させる際には、熱重合開始剤を用いることができる。熱重合開始剤としては、熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤または熱アニオン重合開始剤を採用することができ、これを硬化性組成物中に含有させればよい。
【0074】
熱カチオン重合開始剤としては、一般に用いられるものであれば特に制限無く用いることができ、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の各種オニウム塩類、ならびに有機金属錯体類等を例示することができる。
工業薬品として市販されているオニウム塩類の例として、ADEKA社製の「アデカオプトンCP-66(商品名)」、同「アデカオプトンCP-77(商品名)」、三新化学工業社製の「サンエイドSI-60L(商品名)」、同「サンエイドSI-80L(商品名)」、同「サンエイドSI-100L(商品名)」や、日本曹達社製の「CIシリーズ(商品名)」等が挙げられる。
また、有機金属錯体類としては、アルコキシシラン-アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0075】
熱ラジカル重合開始剤としては、一般に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系化合物が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0076】
熱アニオン重合開始剤としては、一般に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、アミン類、イミダゾール類等が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0077】
熱硬化の条件については、加熱温度/加熱時間を適宜設定することができるが、60~200℃/30~240分間の範囲に設定することが好ましく、70~180℃/30~120分間の範囲に設定することがより好ましい。
【0078】
本発明の硬化性組成物中における熱重合開始剤の含有量は、0.001~20重量%の割合であることが好ましく、0.01~10重量%の割合であることがより好ましい。
【0079】
なお、本発明において、カチオン重合開始剤は、前記の光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤を指し、アニオン重合開始剤は、前記の光アニオン重合開始剤及び/又は熱アニオン重合開始剤を指し、ラジカル重合開始剤は、前記の光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を指す。
【0080】
また、本発明の硬化性組成物を硬化(重合)させる別の方法としては、硬化剤を含有し光硬化および熱硬化させる方法が挙げられる。熱硬化させる際には、熱重合開始剤を併用することができる。
【0081】
硬化剤としては、酸無水物化合物、チオール化合物、アミン化合物等が挙げられる。
【0082】
酸無水物化合物としては、例えば、
メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルナジック酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。
【0083】
チオール化合物としては、例えば、
エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン-2,4-ジチオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、2-(メルカプトメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジチオール、2-エチル-2-(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等の脂肪族チオール化合物;
式(XIV)で示される1,4-ジチアン環含有ポリチオール化合物等の環状スルフィド化合物;
3-チアペンタン-1,5-ジチオール、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール等のメルカプトアルキルスルフィド化合物;
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等のメルカプトプロピオン酸エステル;
エポキシ樹脂末端メルカプト化合物;
3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、式(XV)で示されるメルカプトアルキルエーテルジスルフィド化合物、
2,2′-[[2,2-ビス[(2-メルカプトエトキシ)メチル]-1,3-プロパンジイル]ビス(オキシ)]ビスエタンチオール、
3,3′-[[2,2-ビス[(3-メルカプトプロポキシ)メチル]-1,3-プロパンジイル]ビス(オキシ)]ビス-1-プロパンチオール、
3-[2,2-ビス[(3-メルカプトプロポキシ)メチル]ブトキシ]-1-プロパンチオール、
3-(3-メルカプトプロポキシ)-2,2-ビス[(3-メルカプトプロポキシ)メチル]-1-プロパノール、
2,2-ビス[(3-メルカプトプロポキシ)メチル]-1-ブタノール等のメルカプトアルキルエーテル化合物;
1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、
1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等が挙げられ、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリルおよび1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリルが好ましい。
これらの他のチオール化合物は、1つ又は2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
【化9】
(式中、pは、1~5の整数を表す。)
【0085】
【化10】
(式中、qは、1~20の整数を表す。)
【0086】
アミン化合物としては、従来から知られているように、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選択される少なくとも1つのアミノ基を分子内に有するものであればよい。
【0087】
このようなアミン化合物の例としては、
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、1,3,4,6-テトラキス(3-アミノプロピル)グリコールウリル、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルベンジルアミン等の脂肪族アミン類;
4,4′-ジアミノジフェニルメタン、o-メチルアニリン等の芳香族アミン類;
2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン等の窒素含有複素環化合物等が挙げられる。
【0088】
本発明の硬化性組成物中における硬化剤の含有量は、エポキシ・オキセタン化合物100重量部に対して、0.1~50重量部であることが好ましく、1~40重量部であることがより好ましい。
【0089】
エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物または分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物との反応生成物は、室温ではエポキシ樹脂に難溶性の固体であって、加熱することによって可溶化(易溶化)して、硬化促進剤として機能するので、潜在性硬化促進剤とも云われている(以下、これらの反応生成物を「潜在性硬化促進剤」と云う場合がある)。
【0090】
エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の原料として使用するエポキシ化合物としては、前記のエポキシ化合物の他、4,4′-ジアミノジフェニルメタンや、m-アミノフェノール等とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;
ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の単官能性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の原料として使用するアミン化合物としては、前記のアミン化合物を挙げることができる。また、これらのアミン化合物の内、分子内に第3級アミノ基を有するアミン化合物は、優れた硬化促進性を有する潜在性硬化促進剤を与える原料である。そのようなアミン化合物としては、例えば、
ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジン等のアミン類;
2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物等のような分子内に第3級アミノ基を有するアミン類;
2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のような、分子内に第3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類、ヒドラジド類等が挙げられる。
【0092】
本発明の硬化性組成物の保存安定性を更に向上させるため、エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の原料として、前記のエポキシ化合物とアミン化合物に加えて、第3成分として分子内に活性水素を2つ以上有する活性水素化合物を使用してもよい。
【0093】
活性水素化合物としては、例えば、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂等の多価フェノール類;
トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;
アジピン酸、フタル酸等の多価カルボン酸類;
1,2-ジメルカプトエタン、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-3-フェノキシ-2-プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられる。
【0094】
更に、エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤は、イソシアネート化合物や酸性化合物にて表面処理されていてもよい。イソシアネート化合物としては、例えば、
n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート等の単官能イソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物が挙げられる。
【0095】
この多官能イソシアネート化合物に代えて、多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる末端イソシアネート基含有化合物も多官能イソシアネート化合物と同様に使用することができる。このような末端イソシアネート基含有化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加反応物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加反応物等が挙げられる。
【0096】
また、エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の表面処理に使用する酸性化合物は、気体、液体又は固体の何れでもよく、無機酸もしくは有機酸の何れでもよい。このような酸性化合物としては、例えば、炭酸ガス、亜硫酸ガス、硫酸、塩酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アジピン酸、カプロン酸、乳酸、琥珀酸、酒石酸、セバシン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ホウ酸、タンニン酸、アルギン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、フェノール、ピロガロール、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂等が挙げられる。
【0097】
エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤は、エポキシ化合物とアミン化合物と、必要に応じて、活性水素化合物を混合し、室温から200℃の温度において反応させた後、固化、粉砕するか、又はメチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することによって容易に得ることができる。
【0098】
また、市販のエポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤を使用することもできる。市販品としては、例えば、
味の素ファインテクノ社製の「アミキュアPN-23(商品名)」、「アミキュアPN-H(商品名)」、「アミキュアPN-50(商品名)」、「アミキュアPN-23J(商品名)」、「アミキュアPN-40J(商品名)」、「アミキュアMY-24(商品名)」、旭化成社製の「ノバキュアHX-3088(商品名)」、「ノバキュアHX-3721(商品名)」、「ノバキュアHX-3722(商品名)」、「ノバキュアHX-3742(商品名)」、「ノバキュアHX-3941HP(商品名)」、「ノバキュアHXA3922HP(商品名)」、T&K TOKA社製の「フジキュアーFXR-1030(商品名)」、「フジキュアーFXR-1081(商品名)」、「フジキュアーFXR-1121(商品名)」等が挙げられる。
【0099】
本発明の硬化性組成物中における、エポキシ化合物とアミン化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の含有量は、エポキシ・オキセタン化合物100重量部に対して、0.1~100重量部であることが好ましく、1~90重量部であることがより好ましく、1~80重量部であることがさらに好ましい。
【0100】
分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の原料として使用する分子内に1つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、
n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-ブロモフェニルイソシアネート、m-クロロフェニルイソシアネート、o-クロロフェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、2,5-ジクロロフェニルイソシアネート、3,4-ジクロロフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、o-フルオロフェニルイソシアネート、p-フルオロフェニルイソシアネート、m-トリルイソシアネート、p-トリルイソシアネート、o-トリフルオロメチルフェニルイソシアネート、m-トリフルオロメチルフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、2,2-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、p-フェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス-(3-イソシアナト-4-メチルフェニル)イソシアヌレート、トリス-(6-イソシアナトヘキシル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0101】
分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の原料として使用する分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物としては、例えば、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-n-エタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、メタキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,1-ジメチルヒドラジン等が挙げられる。
【0102】
分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物との反応生成物は、両者をジクロロメタン等の有機溶剤中で反応させることによって得ることができる。
【0103】
本発明の硬化性組成物中における、分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基の少なくとも何れかを有する化合物との反応生成物からなる潜在性硬化促進剤の含有量については、エポキシ・オキセタン化合物100重量部に対して、1~10重量部であることが好ましい。
【0104】
本発明の硬化性組成物は、更に、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、
顔料(チタン白、シアニンブルー、ウォッチングレッド、ベンガラ、カーボンブラック、アニリンブラック、マンガンブルー、鉄黒、ウルトラマリンブルー、ハンザレッド、クロームイエロー、クロームグリーン等)、
無機充填剤(炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、硫酸バリウム、リトポン、石コウ、ステアリン酸亜鉛、パーライト、石英、石英ガラス、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ粉等、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系材料等)、
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(高密度、中密度、低密度の各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等の単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂(フェノール化合物)、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの各種エラストマー樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体などのグラフト共重合体等)、
補強剤(ガラス繊維、炭素繊維等)、
垂れ止め剤(水添ヒマシ油、微粒子無水硅酸等)、
艶消し剤(微粉シリカ、パラフィンワックス等)、
研削剤(ステアリン酸亜鉛等)、
内部離型剤(ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウムの脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイド等の脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等)、
界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整用希釈剤(有機溶剤)、カップリング剤、香料、難燃化剤などの添加剤(改質剤)を含有してもよい。
【0105】
本発明の硬化性組成物の調製に当たっては、その調製方法に特に制限はなく、前述の各成分を所定量計り取って撹拌混合することにより調製される。例えば、予備混合の後、ロール混練機、ニーダーや押出機等を用いて、混合あるいは溶融混練することにより調製することができる。必要により、有機溶剤(粘度調整用希釈剤)を用いてもよい。
【0106】
本発明の硬化性組成物は、紫外線の照射または加熱により重合(硬化)して、硬化物を与える。
紫外線の照射手段としては、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の光源を用いる方法が挙げられる。
紫外線の照射強度および照射時間については、所望の照射強度または所望の照射時間を考慮して、また、被照射物である硬化性組成物の組成や形状(厚み)を考慮して、適宜設定される。
加熱手段としては、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法が挙げられる。また、硬化装置としては、密閉式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等を用いることができる。
加熱(硬化)温度および加熱(硬化)時間については、紫外線照射の場合と同様に、被照射物である硬化性組成物の組成や形状(厚み)を考慮して、適宜設定されればよい。
【0107】
本発明の硬化性組成物は、低粘度であることから、硬化性インク組成物として用いることができる。更に、本発明の硬化性組成物は粘度が低く吐出性に優れる。このため、インクジェット用硬化性インク組成物としても適している。インクジェット法を利用し、所定の対象物にインクジェット用硬化性インク組成物を塗布して硬化させることで、後述する各種の部品や部材等の製造に利用される。インクジェット法では、高速且つ均一に、また、広い面積に樹脂膜を形成することができるため、後述する各種の部品や部材等の製品精度の向上のほか製造コストの低下等の利点がある。
【0108】
硬化性インク組成物およびインクジェット用硬化性インク組成物は、揮発性の観点から示差熱熱重量測定装置を用いてサンプル重量10mg、昇温条件10℃/min、窒素フロー(200mL/min)の条件で測定される5%重量減少温度(℃)が185℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。
【0109】
インクジェット用硬化性インク組成物は、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製、「Rheosol-G5000」)を用いて25℃で測定される粘度が5mPa・s以上、150mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上、80mPa・s以下であることがより好ましく、10mPa・s以上、40mPa・s以下であることがさらに好ましい。なお、インクジェット法による塗布時にインクジェット用硬化性インク組成物を加熱し、粘度を低下させて塗布してもよい。
【0110】
また、インクジェット用硬化性インク組成物は、25℃において動的濡れ性試験機で測定される表面張力が15mN/m以上、35mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上、30mN/m以下であることがより好ましい。
【0111】
インクジェット用硬化性インク組成物の好適な例として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと記す)素子や有機薄膜太陽電池素子等の光学素子の封止剤として用いられる光学素子封止用硬化性組成物のほか、光学レンズの貼り合わせ等に用いられる光学部材用接着剤、3Dプリンターによって種々の部品や部材等の製造の際に用いられる光造形用硬化性組成物、半導体の超微細回路パターンの形成の際に用いられるナノインプリント用硬化性組成物などが挙げられる。
【0112】
一例として、本発明の硬化性組成物を光学素子封止用硬化性組成物として用い、光学素子を製造する方法として、光学素子封止用硬化性組成物を2枚の基材のうち少なくとも一方にインクジェット法で塗布する工程と、塗布した光学素子封止用硬化性組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程と、上記2枚の基材を貼り合わせる工程とを有する方法等が挙げられる。
【0113】
光学素子封止用硬化性組成物を2枚の基材のうち少なくとも一方に塗布する工程において、光学素子封止用硬化性組成物を基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。例えば、光学素子として有機EL素子を製造する場合、光学素子封止用硬化性組成物の塗布によって形成される封止剤部の形状は、2枚の基材に狭持される有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されない。即ち、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部を閉じたパターン形状であってもよい。
【0114】
上記光学素子封止用硬化性組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程は、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の後に行なってもよい。上記光学素子封止用硬化性組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程を、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の前に行なう場合、光照射及び/又は加熱してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間(例えば、1分)内に貼り合わせるようにすればよい。
【0115】
また、塗布した光学素子封止用硬化性組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程では、上述した紫外線照射手段及び/又は加熱手段により、行えばよい。
【0116】
本発明の硬化性組成物は、その用途に特に制限はなく、材質が樹脂であってよい様々な分野の製品(部品・部材)に適用可能であり、電気・電子、光学、建築、土木、自動車・航空機、医療の分野や、その他、日用・雑貨品等の材料の原料として用いることができる。
【0117】
例えば、電気・電子分野における部品・部材や材料の例としては、樹脂付銅箔、プリプレグ、銅張積層板、プリント配線板や、ソルダーレジストインク、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペースト、層間絶縁材、接着剤、粘着剤、シール材、封止剤(封止材)、封止シート、絶縁性の材料、熱伝導性の材料、ホットメルト用材料、塗料、ポッティング剤等が挙げられるが、より具体的には、
層間絶縁膜、配線被覆膜等のプリント配線板や電子部品の封止材料(封止剤)、画像表示装置用の封止材料(封止材)、画像表示装置用の封止シート、有機EL表示素子用の封止材料(封止材)、有機EL表示素子用の封止シート、層形成材料;
カラーフィルター、偏光板、ディスプレイ材料、レジスト材料、配向膜等の表示装置の形成材料;
レジスト材料、バッファーコート膜等の半導体装置の形成材料;
レンズ、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等の光学部品の形成材料;
半導体素子や有機薄膜素子(例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子)の表面保護膜、ハードコート剤、防汚膜および反射防止膜等のコーティング剤;
等が挙げられる。
また、有機EL素子、有機トランジスタや太陽電池等の有機エレクトロニクス素子用材料、半導体実装用のリジッド配線板やフレキシブルプリント配線板の形成材料、半導体実装用装着材料、フレキシブルプリント配線板用接着剤、半導体用封止材、太陽電池用封止材、半導体用絶縁膜、フレキシブルプリント回路保護用カバーレイフィルム、配線被覆用コーティング剤等が挙げられる。
【0118】
光学分野における材料の例としては、レンズ、プリズム、フィルム、光ファイバー用コア材、クラッド材、プラスチックレンズの耐摩耗性コーティング剤、光造形用材料、光導波路、フィルター、画像表示材料、レンズアレイ、光半導体素子の封止材やリフレクター材料、導光板、光拡散板、回折素子および光学用接着剤等が挙げられる。例えば、レンズ、プリズムは、表面での屈折を利用するものであれば特に限定されない。
また、
カメラモジュール、LiDARモジュール、スチールカメラのレンズ用材料;
ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの投射レンズ等の接着剤;
光通信システムでの光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料;
光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺等の封止材や接着剤;
等として用いることができる。カメラモジュールの接着箇所としては、CMOS、CCDなどのイメージセンサー(撮像素子)と基板との間、カットフィルターと基板との間、基板と筐体との間、筐体とカットフィルターとの間、筐体とレンズユニットとの間等が挙げられる。
【0119】
レンズやプリズムとして、両凸レンズ・平凸レンズ・凸メニスカスレンズのような凸レンズ、両凹レンズ・平凹レンズ・凹メニスカスレンズのような凹レンズなど、表面が球面でできている球面レンズ;
対称の放物面や楕円面や双曲面や多次曲面(例えば4次曲面)のような非球面を有するレンズや、対称軸のない自由曲面を有するレンズのような非球面レンズ;
蒲鉾状で円筒面レンズのようなシリンドリカルレンズ;
ドーナツの表面にように縦方向と横方向との曲率半径が異なるトロイダル面を持つトロイダルレンズ;
同心円状に、厚い凸レンズのカーブの傾斜と同じように傾斜し光の進行方向を変える反射面と光を透過する屈折面とを有する輪帯状のプリズムを、平面上で配置したもので、これら複数のプリズムが中心に向かうに連れ連続的に小さくなるか大きくなっている薄型のフレネルレンズ;
深さが光の波長程度の微細なレリーフを同心円状に形成したような回折レンズ;
光学的平面を2面以上有し少なくとも1組の面が実質的に非平行であるプリズムが挙げられる。
また、フィルムとして、MgFやSiOなどの無機化合物を真空蒸着法やスパッタ法やCVD法で処理したり、光吸収剤を共存させたりして、所望の波長域の光を透過させつつ所望外の波長域の光を反射させる反射フィルムが挙げられる。
【0120】
建築分野における材料の例としては、各種金属パネル・サイディングボード等の外装材の目地用シール材、コーティング材、プライマー;
外装材・下地材・天井材と内装材の間に用いるシール材、接着剤、注入材、制振材、防音材、電磁波遮蔽用導電性材料、パテ材;
外壁材・下地材へのタイル・石材接着用の接着剤;
各種床への木質フローリング材・高分子材料系床シート・床タイル接着用の接着剤、粘着剤;
各種外装材・内装材のクラック補修用注入材等が挙げられる。
【0121】
土木分野における材料の例としては、道路・橋梁・トンネル・防波堤などの各種コンクリート製品の目地用シール材、コーティング材、プライマー、塗料、パテ材、注入材、吹付材、型取材等が挙げられる。
【0122】
自動車・航空機分野における材料の例としては、構造材、繊維強化複合材、ボディーや部品の接着剤、シール材、コーティング材、緩衝材、制振材、防音材、吹付材;
自動車内装用の接着剤、粘着剤、コーティング材、発泡材;
鋼板継ぎ目用のシール材、接着剤、コーティング材等が挙げられる。
また、表面に本発明の硬化性組成物の硬化物からなるコーティング層を形成した基材の用途としては、例えば、輸送機(自動車や航空機等)、電子・電気機器等の各種産業機器の部材(例えば、シリンダー、ピストン、ベアリングなどの摺動部材等)等が挙げられる。
【0123】
医療分野における材料の例としては、人工骨、歯科印象材、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材等が挙げられる。
【0124】
その他の例としては、金属、樹脂フィルム、ガラス、紙、木材等の基材上に塗布する塗料等が挙げられる。
【実施例
【0125】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
使用した主原料は、以下のとおりである。
・アリルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)
・アリルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)
・tert-ブトキシカリウム(東京化成工業社製)
・3-エチル-3-メタンスルホニルオキシメチルオキセタン(特開2007-332294号公報に記載の方法に準拠して合成した。)
・水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)
・メタクロロ過安息香酸(東京化成工業社製)
・1,2,3-グリシジルオキシプロパン(Anhui Xinyuan Technology Co., Ltd製、商品名「XY633」、化学式(IV)で示される化合物。)
・グリセリン(富士フイルム和光純薬社製)
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(宇部興産社製)
・塩化アリル(富士フイルム和光純薬社製)
・2-クロロメチルオキシラン(大阪ソーダ社製)
・塩化アリル(東京化成工業製)
・ヨウ化ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)
・ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬社製)
【0126】
【化11】
【0127】
(C)熱カチオン重合開始剤
・ジベンジルメチル-p-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(三新化学社製、「サンエイドSI-100L(商品名)」)
【0128】
実施例及び比較例において採用した評価試験である粘度、弾性率、損失正接、曲げ弾性率、及び曲げ強度の測定方法は、以下のとおりである。
【0129】
[粘度の測定]
後述する実施例及び比較例において使用したエポキシ・オキセタン化合物(エポキシ化合物およびオキセタン化合物を含む)について、動的粘弾性測定装置(UBM社製、「Rheosol-G5000」)を使用し、25℃での粘度を測定した。
粘度の値が小さい(低粘度)ほど、硬化性組成物の調製時及び該硬化性組成物を接着剤として使用する際の作業性に優れると判定される。
【0130】
[弾性率、損失正接の測定]
後述する実施例及び比較例において調製した硬化性組成物について、65℃/2時間の条件で硬化し、さらに150℃/2時間の条件で加熱して硬化させた。得られた硬化物(試験片:長さ30mm×幅10mm×厚み1mm)について、動的粘弾性測定装置(UBM社製、「Rheosol-G5000」)を使用して、25℃における貯蔵弾性率G′(MPa)及び損失正接tanδを測定した(周波数:1Hz)。
この貯蔵弾性率G′の値が大きい(高弾性)ほど、剛性に優れ、損失正接tanδの値が小さいほど、硬化物中の構造欠陥が少なく均一な三次元ネットワークを形成していると判定される。
【0131】
[曲げ弾性率、曲げ強度の測定]
後述する実施例及び比較例において調製した硬化性組成物について、65℃/2時間の条件で硬化し、さらに150℃/2時間の条件で加熱して硬化させた。得られた硬化物(試験片:長さ80mm×幅25mm×厚み1mm)について、曲げ弾性率(GPa)及び曲げ強度(MPa)を、JIS K7203に準拠して測定した。
この曲げ弾性率が大きい(高弾性)ほど、剛性に優れ、曲げ強度が大きいほど、優れた機械強度を有していると判定される。
【0132】
<化学式(I-1)で示されるエポキシ・オキセタン化合物の合成>
〔合成例1〕
容量5Lの3口フラスコに、アリルアルコール2178g(37500mmol)、tert-ブトキシカリウム308.58g(2750mmol)を仕込み、40℃に加温した後、アリルグリシジルエーテル285.35g(2500mmol)を滴下し、60℃で14時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却後、反応液を濾過し固形物を除去し、濾液を減圧留去した。得られた濃縮液を蒸留精製することで、無色透明液体として化学式(II-1)で示されるヒドロキシル基を有する二官能オレフィン化合物391.19gを得た(収率:91%)。
【0133】
【化12】
【0134】
〔合成例2〕
容量5Lの4口フラスコに、合成例1で得られた無色透明液体344.44g(2000mmol)、ジメチルスルホキシド1500g、水酸化ナトリウム114.96g(2874mmol)を仕込み、60℃に加温した後、3-エチル-3-メタンスルホニルオキシメチルオキセタン427.35g(2200mmol)を滴下し、70℃で8時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却し、固形物を慮去し、濾液を酢酸エチル2000mLで抽出した。続いて、水2000mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮液を蒸留精製することで、無色透明液体として化学式(Ia-1)で示されるオレフィン・オキセタン化合物336.92gを得た(収率:62%)。
【0135】
【化13】
【0136】
〔合成例3〕
容量1Lの3口フラスコに、合成例2で得られた無色透明液体54.07g(200.0mmol)、メタクロロ過安息香酸86.29g(500.0mmol)、クロロホルム500gを仕込み、30℃で12時間撹拌した。この反応液を濾過して固形物を除去し、10wt%炭酸カリウム水溶液500mLおよび水500mLで洗浄した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3(容量比))により精製し、淡黄色透明液体26.49gを得た(収率:44%)。
【0137】
この淡黄色透明液体のH-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR (CDCl) δ: 4.46 (d, 2H), 4.37 (d, 2H), 3.79 (m, 2H), 3.74(t, 2H), 3.61 (m, 5H), 3.41 (m, 2H), 3.13 (quin., 2H), 2.79 (t, 2H), 2.60 (m, 2H), 1.74 (q, 2H), 0.88 (t, 3H).
この淡黄色透明液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた淡黄色透明液体は、化学式(I-1)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であるものと同定した。
【0138】
【化14】
【0139】
<化学式(V)で示されるオキセタン化合物の合成>
〔合成例4〕
容量500mLの3口フラスコに、グリセリン18.42g(200.0mmol)、ジメチルスルホキシド180.0g、水酸化ナトリウム22.20g(555.0mmol)を仕込み、60℃に加温した後、3-エチル-3-メタンスルホニルオキシメチルオキセタン104.90g(540.0mmol)を滴下し、70℃で8時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却し、固形物を慮去し、濾液を酢酸エチル200mLで抽出した。続いて、水60mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮した。
得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/3(容量比))により精製し、無色透明液体8.50gを得た(収率:11%)。
【0140】
この無色透明液体のH-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR (CDCl) δ: 4.44 (d, 6H), 4.35 (d, 6H), 3.72 (s, 2H), 3.66(quin., 1H), 3.57 (m, 6H), 3.55 (d, 2H), 1.74 (q, 6H), 0.88 (t, 9H).
この無色透明液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた無色透明液体は、化学式(V)で示されるオキセタン化合物であるものと同定した。
【0141】
【化15】
【0142】
<化学式(VIII)で示されるエポキシ・オキセタン化合物の合成>
〔合成例5〕
容量1Lの3口フラスコに、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン174.24g(1500mmol)、水酸化ナトリウム8.00g(200.0mmol)を仕込み、45℃に加温した後、アリルグリシジルエーテル114.14g(1000mmol)を滴下し、50℃で12時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却後、クロロホルム750mLで抽出し、水500mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮し、淡黄色透明液体として化学式(VI)で示される化合物223.4gを得た(収率:97%)。
【0143】
【化16】
【0144】
〔合成例6〕
容量2Lの3口フラスコに、合成例5で得られた淡黄色透明液体184.73g(750.0mmol)、ジメチルスルホキシド750.00g、水酸化ナトリウム45.00g(1125.0mmol)、ヨウ化ナトリウム5.62g(37.5mmol)を仕込み、50℃に加温した後、塩化アリル86.10g(1125.0mmol)を滴下し、50℃で8時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却し、固形物を慮去し、濾液を酢酸エチル1500mLで抽出した。続いて、水1500mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮液を蒸留精製することで、無色透明液体として化学式(VII)で示される化合物121.67gを得た(収率:60%)。
【0145】
【化17】
【0146】
〔合成例7〕
容量500mLの3口フラスコに、合成例6で得られた無色透明液体27.03g(100.0mmol)、メタクロロ過安息香酸43.14g(250.0mmol)、クロロホルム250gを仕込み、30℃で12時間撹拌した。この反応液を濾過して固形物を除去し、10wt%炭酸カリウム水溶液250mLおよび水250mLで洗浄した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3(容量比))により精製し、淡黄色透明液体12.02gを得た(収率:40%)。
【0147】
この淡黄色透明液体のH-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR (CDCl) δ: 4.46 (d, 2H), 4.36 (d, 2H), 3.91 (m, 1H), 3.76(m, 2H), 3.60 (m, 7H), 3.41 (m, 1H), 3.15 (m, 2H), 2.78 (m, 2H), 2.61 (m, 2H), 1.74 (q, 2H), 0.89 (t, 3H).
この淡黄色透明液体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた淡黄色透明液体は、化学式(VIII)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であるものと同定した。
【0148】
【化18】
【0149】
<化学式(XI)で示されるエポキシ・オキセタン化合物の合成>
〔合成例8〕
容量1Lの3口フラスコに、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン278.78g(2400.0mmol)、水酸化ナトリウム38.40g(960.0mmol)を仕込み、47℃に加温した後、2-クロロメチルオキシラン74.02g(800.0mmol)を滴下し、60℃で4時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却後、クロロホルム900mLで抽出し、水500mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮した。濃縮液を蒸留精製することで、無色透明液体として化学式(IX)で示される化合物87.51gを得た(収率:38%)。
【0150】
【化19】
【0151】
〔合成例9〕
容量300mLの3口フラスコに、合成例8で得られた無色透明液体40.37g(140.0mmol)、水酸化ナトリウム8.12g(203.0mmol)、ヨウ化カリウム1.16g(7.0mmol)を仕込み、67℃に加温した後、塩化アリル13.93g(182.0mmol)を滴下し、70℃で2時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却し、固形物を慮去し、濾液を酢酸エチル80mLで抽出した。続いて、水40mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮し、無色透明液体として化学式(X)で示される化合物44.79gを得た(収率:97%)。
【0152】
【化20】
【0153】
〔合成例10〕
容量500mLの3口フラスコに、合成例9で得られた無色透明液体42.70g(130.0mmol)、メタクロロ過安息香酸22.43g(130.0mmol)、クロロホルム300gを仕込み、30℃で12時間攪拌した。続いて、この反応液を濾過して固形物を除去し、10wt%炭酸カリウム水溶液150mLおよび水150mLで洗浄した。有機層を減圧濃縮し、無色透明液体38.44gを得た(収率:86%)。
【0154】
この無色透明液体のH-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR (CDCl) δ: 4.44 (d, 4H), 4.35 (d, 4H), 3.89 (dd, 1H), 3.72 (quin., 1H), 3.56 (m, 9H), 3.12(quin, 1H), 2.77 (t, 1H), 2.60 (dd, 1H), 1.72 (q, 4H), 0.87 (t, 6H).
この無色透明液体のIRスペクトルデータは、図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた無色透明液体は、化学式(XI)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であるものと同定した。
【0155】
【化21】
【0156】
〔合成例11〕
容量1Lの3口ナスフラスコに、合成例5で得られた淡黄色透明液体49.26g(200.0mmol)、ジメチルスルホキシド200.00g、水酸化ナトリウム10.40g(260.0mmol)、ヨウ化ナトリウム1.50g(10.0mmol)を仕込み、50℃に加温した後、3-エチル-3-メタンスルホニルオキシメチルオキセタン50.51g(260.0mmol)を滴下し、50℃で8時間撹拌した。その後、反応液を25℃下まで冷却し、固形物を慮去し、濾液を酢酸エチル400mLで抽出した。続いて、水400mLにて水洗した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮液を蒸留精製することで、無色透明液体として化学式(XII)で示される化合物26.32gを得た(収率:40%)。
【0157】
【化22】
【0158】
〔合成例12〕
容量1Lの3口ナスフラスコに、合成例11で得られた無色透明液体26.28g(80.0mmol)、メタクロロ過安息香酸16.57g(96.0mmol)、クロロホルム500gを仕込み、30℃で12時間撹拌した。この反応液を濾過して固形物を除去し、10wt%炭酸カリウム水溶液100mLおよび水100mLで洗浄した後、有機層を減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/3(容量比))により精製し、淡黄色透明液体17.05gを得た(収率:62%)。
【0159】
この淡黄色透明液体のH-NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
H-NMR (CDCl) δ: 4.43 (d, 4H), 4.32 (d, 4H), 3.77 (dd, 1H), 3.72 (d, 2H), 3.56 (m, 7H), 3.39 (m, 1H), 3.12(quin., 1H), 2.78 (t, 1H), 2.59 (dd, 1H), 1.72 (q, 4H), 0.87 (t, 6H).
この淡黄色透明液体のIRスペクトルデータは、図5に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた淡黄色透明液体は、化学式(XIII)で示されるエポキシ・オキセタン化合物であるものと同定した。
【0160】
【化23】
【0161】
<硬化物の評価>
〔実施例1〕
合成例3において合成した化学式(I-1)で示されるエポキシ・オキセタン化合物100重量部と、熱カチオン重合開始剤0.2重量部を均一に混合し、硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物及び硬化性組成物を硬化させた硬化物について、上述の評価試験を行ったところ、得られた試験結果は表1に示したとおりであった。
【0162】
〔比較例1~5〕
実施例1の場合と同様にして、表1に示した組成を有する硬化性組成物を調製し、それらの硬化性組成物及び硬化性組成物を硬化させた硬化物について、上述の評価試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0163】
【表1】
【0164】
表1より、本発明の硬化性組成物に含有されるエポキシ・オキセタン化合物は、粘度が極めて小さいため、調製時及び硬化性接着剤として使用する際の作業性に優れることが確認された。また、本発明の硬化性組成物は、架橋機能が発揮されることから硬化により硬化物が得られ、低粘度にもかかわらず硬化物の貯蔵弾性率G'及び曲げ弾性率の値が大きく、かつ、曲げ強度の値が大きいことから、硬化物の機械強度に優れることが確認された。本発明の硬化性組成物を硬化させた硬化物は損失正接tanδの値が小さいことから、硬化物中の構造欠陥が少なく均一な三次元ネットワークを形成していると推定される。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の硬化性組成物によれば、従来の硬化性組成物に比べて、硬化性、低粘度、及び機械強度を兼ね備えた硬化性組成物及びその硬化物を提供することができ、本発明の産業上の利用可能性は多大である。
【要約】
【課題】硬化性、低粘度、及び機械強度を高い水準で兼ね備えた硬化性組成物及びその硬化物、接着剤および封止剤を提供する。
【解決手段】硬化性組成物は、化学式(I)で示されるエポキシ・オキセタン化合物を含有する。式中、Rは、同一または異なって、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。
【化1】
【選択図】 なし
図1
図2
図3
図4
図5