(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】回転機械のフランジ変位量推定方法、この方法を実行するためのプログラム、及び、この方法を実行する装置
(51)【国際特許分類】
F01D 25/24 20060101AFI20241115BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F01D25/24 S
F01D25/00 V
(21)【出願番号】P 2024502837
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2022044204
(87)【国際公開番号】W WO2023162386
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022027442
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 理
(72)【発明者】
【氏名】水見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光司
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-206303(JP,A)
【文献】特表2004-516415(JP,A)
【文献】特開2016-211382(JP,A)
【文献】特開2018-84169(JP,A)
【文献】特開2022-37334(JP,A)
【文献】国際公開第2021/086208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周を覆うケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、
前記ケーシングを下側から支える架台と、
を備え、
前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有し、
前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有し、
前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有し、
前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている、
回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程と、
前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程と、
前記有効座標把握工程で把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程で把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程と、
前記座標変更工程で変更された、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程と、
前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算工程と、
を実行し、
前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置であり、
前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置であり、
前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記変位量演算工程では、
前記座標変更工程で変更された前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更工程で変更された前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記下対象位置は、前記軸線方向で前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面中の内側縁の位置である、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記下対象中点位置における実測三次元座標データをそのまま前記下対象中点位置における有効三次元座標データとして把握し、前記実測座標受付工程で取得した前記上対象中点位置における実測三次元座標データをそのまま前記上対象中点位置における有効三次元座標データとして把握する、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下対象中点位置を通り且つフランジ幅方向に延びる下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上対象中点位置を通り且つフランジ幅方向に延びる上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項5】
請求項1に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面中で前記下対象中点位置を含む下中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面で前記上対象中点位置を含む上中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記実測座標受付工程で受け付けた前記下中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程で受け付けた前記上中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の下中点位置と、前記上フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の上中点位置と、における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記複数の下中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下第一位置及び前記下第二位置の実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記実測座標受付工程で取得した前記下第一位置及び前記下第二位置における実測三次元座標データをそのまま前記下第一位置及び前記下第二位置における有効三次元座標データとして把握する、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記第一被支持部の上面中の複数の位置における実測三次元座標データ、及び前記第二被支持部の上面中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記実測座標受付工程で取得した前記第一被支持部の上面中の複数の位置における実測三次元座標データから前記下第一位置における有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程で取得した前記第二被支持部の上面中の複数の位置における実測三次元座標データから前記下第二位置の有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項9】
請求項6に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記有効座標把握工程では、前記複数の下中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置及び前記下第二位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置及び前記上第二位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下対象位置及び前記上対象位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記下対象位置における実測三次元座標データをそのまま前記下対象位置における有効三次元座標データとして把握し、前記実測座標受付工程で取得した前記上対象位置における実測三次元座標データをそのまま前記上対象位置における有効三次元座標データとして把握する、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下対象位置を通り且つフランジ幅方向に延びる下仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上対象位置を通り且つフランジ幅方向に延びる上仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記下仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記下対象位置における有効三次元座標データを求め、前記上仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記上対象位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面中で前記下対象位置を含む下計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面で前記上対象位置を含む上計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記実測座標受付工程で受け付けた前記下計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下対象位置における有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程で受け付けた前記上計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上対象位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面の全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、
前記実測座標受付工程で受け付けた前記下フランジ面の全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下フランジ面全体の三次元形状を示す下フランジ面の形状データを求めると共に、前記実測座標受付工程で受け付けた前記上フランジ面の全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上フランジ面全体の三次元形状を示す上フランジ面の形状データを求め、
前記下フランジ面の形状データを用いて、前記下対象中点位置の有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面の形状データを用いて、前記上対象中点位置の有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記有効座標把握工程では、前記下フランジ面の形状データを用いて、前記下第一位置及び前記下第二位置における有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面の形状データを用いて、前記上第一位置及び前記上第二位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項15】
請求項13に記載の回転機械のフランジ変位量推定方法において、
前記有効座標把握工程では、前記下フランジ面の形状データを用いて、前記下対象位置における有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面の形状データを用いて、前記上対象位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定方法。
【請求項16】
水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周を覆うケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、
前記ケーシングを下側から支える架台と、
を備え、
前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有し、
前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有し、
前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有し、
前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている、
回転機械のフランジ変位量推定プログラムにおいて、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程と、
前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程と、
前記有効座標把握工程で把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程で把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程と、
前記座標変更工程で変更された、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程と、
前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算工程と、
をコンピュータに実行させ、
前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置であり、
前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置であり、
前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記変位量演算工程では、
前記座標変更工程で変更された前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更工程で変更された前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする、
回転機械のフランジ変位量推定プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の回転機械のフランジ変位量推定プログラムにおいて、
前記下対象位置は、前記軸線方向で前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面中の内側縁の位置である、
回転機械のフランジ変位量推定プログラム。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の回転機械のフランジ変位量推定プログラムにおいて、
前記実測座標受付工程では、前記下フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の下中点位置と、前記上フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の上中点位置と、における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握工程では、前記複数の下中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定プログラム。
【請求項19】
請求項18に記載の回転機械のフランジ変位量推定プログラムにおいて、
前記有効座標把握工程では、前記複数の下中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置及び前記下第二位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置及び前記上第二位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定プログラム。
【請求項20】
水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの外周を覆うケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、
前記ケーシングを下側から支える架台と、
を備え、
前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有し、
前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有し、
前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有し、
前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている、
回転機械のフランジ変位量推定装置において、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付部と、
前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握部と、
前記有効座標把握部が把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握部が把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握部が把握した有効三次元座標データを変更する座標変更部と、
前記座標変更部が変更した、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定部と、
前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算部と、
を備え、
前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置であり、
前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置であり、
前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置であり、
前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置であり、
前記変位量演算部は、前記座標変更部が変更した前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更部が変更した前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする、
回転機械のフランジ変位量推定装置。
【請求項21】
請求項20に記載の回転機械のフランジ変位量推定装置において、
前記下対象位置は、前記軸線方向で前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面中の内側縁の位置である、
回転機械のフランジ変位量推定装置。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の回転機械のフランジ変位量推定装置において、
前記実測座標受付部は、前記下フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の下中点位置と、前記上フランジ面中で前記横方向における中点の位置であって、前記軸線方向における位置が互いに異なる複数の上中点位置と、における実測三次元座標データを受け付け、
前記有効座標把握部は、前記複数の下中点位置における実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定装置。
【請求項23】
請求項22に記載の回転機械のフランジ変位量推定装置において、
前記有効座標把握部は、前記複数の下中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置及び前記下第二位置における有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置における有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置及び前記上第二位置における有効三次元座標データを求める、
回転機械のフランジ変位量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械で、ロータの外周を覆う上半ケーシング及び下半ケーシングのフランジ面における変位量を推定する、フランジ変位量推定方法、この方法を実行するためのプログラム、及び、この方法を実行する装置に関する。
本願は、2022年2月25日に、日本国に出願された特願2022-027442号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン等の回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、ロータの外周を覆うケーシングと、ケーシング内に配置され、このケーシングに取り付けられているダイヤフラム等の静止部品と、を備える。ケーシングは、一般的に、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、上半ケーシングと下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有する。上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有する。下半ケーシングは、上側を向き、上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジを有する。
【0003】
回転機械の点検時には、下半ケーシングから上半ケーシングを外した開放状態にして、回転機械を構成する複数の部品を点検、必要に応じて修理する。蒸気タービン等の回転機械におけるケーシングは、運転中の熱等の影響でクリープ変形等の非弾性変形が発生することがある。このため、一旦運転した後における開放状態での下半ケーシング及び上半ケーシングは、工場出荷時から厳密には変形している。点検が終了すると、複数の部品を組み立てる。この組立の工程には、複数のボルトを用いて、下半ケーシングに上半ケーシングを締結して締結状態にする工程が含まれる。下半ケーシング及び上半ケーシングを開放状態から締結状態にする過程で、下半ケーシング及び上半ケーシングはさらに変形する。
【0004】
ケーシングに取り付けられる静止部品とロータとの間の径方向の間隔は、予め定められた許容寸法の範囲内に収める必要がある。しかしながら、ケーシングが開放状態から締結状態になって、下半ケーシング及び上半ケーシングの形状が変わってしまうと、ケーシングに取り付けられた静止部品とロータとの間の径方向の間隔が変わり、この間隔が許容寸法の範囲から外れることがある。
【0005】
そこで、以下の特許文献1に記載の技術では、以下の手順で、開放状態から締結状態になった際の下半ケーシング及び上半ケーシングの変形量を推定している。まず、下半ケーシング及び上半ケーシングの三次元形状に関する有限要素モデルを取得する。続いて、開放状態における下半ケーシング及び上半ケーシングの三次元形状データを実測により取得する。次に、有限要素モデルが実測三次元形状データに合うよう、実測三次元形状データを用いて有限要素モデルを補正する。次に、開放状態を示す補正後の有限要素モデルを用いて、締結状態をシミュレーションして、締結状態を示す有限要素モデルを作成する。そして、開放状態を示す有限要素モデルと締結状態を示す有限要素モデルとの差から、下半ケーシング及び上半ケーシングにおける所定部位の変形量を推定する。なお、下半ケーシング及び上半ケーシングにおける所定部位とは、下半ケーシングの下フランジ面及び上半ケーシングの上フランジ面である。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の技術では、開放状態を示す有限要素モデルを用いて、締結状態をシミュレーションし、このシミュレーションで得られた締結状態を示す有限要素モデルから、下半ケーシングの下フランジ面及び上半ケーシングの上フランジ面の変位量を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術では、開放状態を示す有限要素モデルを用いて、締結状態をシミュレーションするため、このシミュレーションを実行するための計算負荷が大きい、という問題点がある。このため、特許文献1に記載の技術では、準備期間が長期化する上に、フランジ面の変位量の推定コストが嵩む、という問題点も内在している。
【0009】
そこで、本開示は、上半ケーシング及び下半ケーシングのフランジ面の変位量を推定するにあたり、計算負荷を抑えることで、フランジ面の推定の準備期間を短縮し且つその推定コストを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための一態様としての回転機械のフランジ変位量推定方法は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周を覆うケーシングと、前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、前記ケーシングを下側から支える架台と、を備える。前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有する。前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有する。前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有する。前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定方法では、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程と、前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程と、前記有効座標把握工程で把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程で把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程と、前記座標変更工程で変更された、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程と、前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算工程と、を実行する。前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記変位量演算工程では、前記座標変更工程で変更された前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更工程で変更された前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする。
【0011】
本態様では、上フランジ面中の上対象中点位置と、下フランジ面中の下対象中点位置との上下方向の中点を対象接触位置とする。そして、本態様では、上フランジ面中で上下方向の変位量を得たい上対象位置と対象接触位置との上下方向の差を上対象位置の変位量とする。さらに、本態様では、下フランジ面中で上下方向の変位量を得たい下対象位置と対象接触位置との上下方向の差を下対象位置の変位量とする。このため、本態様では、下半ケーシング及び上半ケーシングの有限要素モデルを用いて、下半ケーシング及び上半ケーシングの変形をシミュレートしなくても、上対象位置及び下対象位置の上下方向の変位量を求めることができる。よって、本態様では、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【0012】
ところで、上フランジ面中の上対象位置と、下フランジ面中の下対象位置との上下方向の中点を対象接触位置とすることも可能である。フランジ面の変形には、軸線方向の変化に伴う上下方向の変形のみならず、横方向の変化に伴う上下方向の変形も含まれる。仮に、下対象位置や上対象位置がフランジ面中の内側縁の位置であるとし、前述したように、上対象位置及び下対象位置を用いて対象接触位置を求めるとする。この場合、フランジ面における横方向の変化に伴う上下方向の変形が、求める対象接触位置に極端に反映されて、対象接触位置の上下方向の誤差が大きくなり、結果として、上対象位置及び下対象位置の変位量の誤差が大きくなる場合がある。一方、本態様では、上フランジ面中で横方向における中点である上対象中点位置と下フランジ面中で横方向における中点である下対象中点位置との上下方向の中点を対象接触位置にしている。このため、本態様では、フランジ面における横方向の変化に伴う上下方向の変形が、求める対象接触位置に極端に反映されることがなく、対象接触位置の上下方向の誤差を小さくでき、結果として、上対象位置及び下対象位置の変位量の誤差を小さくすることができる。
【0013】
前記目的を達成するための一態様としての回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周を覆うケーシングと、前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、前記ケーシングを下側から支える架台と、を備える。前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有する。前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有する。前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有する。前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程と、前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程と、前記有効座標把握工程で把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程で把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程と、前記座標変更工程で変更された、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程と、前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算工程と、をコンピュータに実行させる。前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記変位量演算工程では、前記座標変更工程で変更された前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更工程で変更された前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする。
【0014】
本態様では、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、前記一態様におけるフランジ変位量推定方法と同様に、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【0015】
前記目的を達成するための一態様としての回転機械のフランジ変位量装置は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの外周を覆うケーシングと、前記ケーシング内に配置され、前記ケーシングに取り付けられている静止部品と、前記ケーシングを下側から支える架台と、を備える。前記ケーシングは、上側の上半ケーシングと、下側の下半ケーシングと、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとを締結する複数のボルトと、を有する。前記上半ケーシングは、下側を向く上フランジ面が形成されている上フランジを有する。前記下半ケーシングは、上側を向き、前記上フランジ面と上下方向で対向する下フランジ面が形成されている下フランジと、前記下フランジに連なり、前記架台により下側から支えられ、前記軸線が延びる軸線方向で互いに離れた第一被支持部及び第二被支持部と、を有する。前記上フランジ及び前記下フランジには、上下方向に貫通して、前記複数のボルトのそれぞれが挿通可能なボルト孔が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定装置は、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結されていない開放状態における、前記上フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付部と、前記下フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置と、下第二位置と、下対象位置と、下対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置と、上第二位置と、上対象位置と、上対象中点位置と、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握部と、前記有効座標把握部が把握した前記下第一位置の有効三次元座標データと前記上第一位置の有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握部が把握した前記下第二位置の有効三次元座標データと前記上第二位置の有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握部が把握した有効三次元座標データを変更する座標変更部と、前記座標変更部が変更した、前記下対象中点位置及び前記上対象中点位置における有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置と前記上対象中点位置との上下方向における中間位置である対象接触位置の有効三次元座標データを求める接触位置推定部と、前記開放状態から前記上半ケーシングと前記下半ケーシングとが前記複数のボルトで締結された締結状態になったときの前記上対象位置及び前記下対象位置の上下方向の変位量を求める変位量演算部と、を備える。前記下第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置は、前記下フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置は、前記下フランジ面中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向の変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置は、前記下フランジ面中で、水平方向で前記軸線方向に垂直な方向である横方向における中点の位置であって、前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記上第一位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第一被支持部の前記第一代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置は、前記上フランジ面に連なる面中で前記第二被支持部の前記第二代表位置と水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置は、前記上フランジ面中で前記下対象位置と水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置は、前記上フランジ面中で前記横方向における中点であって前記下対象位置と前記軸線方向の位置が一致している位置である。前記変位量演算部は、前記座標変更部が変更した前記下対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記下対象位置の上下方向の変位量とし、前記座標変更部が変更した前記上対象位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置と前記対象接触位置の有効三次元座標データが示す上下方向の位置との差を前記上対象位置の上下方向の変位量とする。
【0016】
本態様では、前記一態様におけるフランジ変位量推定方法と同様に、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様では、上半ケーシング及び下半ケーシングのフランジ面の変位量を推定するにあたり、計算負荷を抑えることで、フランジ面の推定の準備期間を短縮し且つその推定コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示に係る一実施形態における回転機械としての蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本開示に係る一実施形態における回転機械としての蒸気タービンの概略外形を示す模式図である。
【
図3】本開示に係る一実施形態における上半ケーシングの要部、及び下半ケーシングの要部の平面図である。
【
図4】本開示に係る一実施形態における開放状態のケーシングの断面図である。
【
図5】本開示に係る一実施形態における締結状態のケーシングの断面図である。
【
図6】本開示に係る一実施形態におけるフランジ変位量推定装置の機能ブロック図である。
【
図7】本開示に係る一実施形態におけるフランジ変位量推定方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】本開示に係る一実施形態におけるフランジ面中で、有効三次元座標データを把握する位置を示す説明図である。
【
図9】本開示に係る一実施形態における接触位置推定工程及び変位量演算工程での処理内容を示す説明図である。
【
図10】本開示に係る一実施形態における座標変更工程S3での処理内容を示す説明図である。
【
図11】本開示に係る一実施形態における第一把握方法を実行する場合に必要な実測三次元形状データの位置を示す説明図である。
【
図12】本開示に係る一実施形態における第一把握方法を実行する場合の有効三次元座標データの求め方を示す説明図である。
【
図13】本開示に係る一実施形態における第一把握方法を実行する場合の有効三次元座標データの他の求め方を示す説明図である。
【
図14】本開示に係る一実施形態における第二把握方法を実行する場合に必要な実測三次元座標データの位置を示す説明図である。
【
図15】本開示に係る一実施形態における第二把握方法を実行する場合の有効三次元座標データの求め方を示す説明図である。
【
図16】本開示に係る一実施形態における第三把握方法を実行する場合に必要な実測三次元座標データの位置を示す説明図である。
【
図17】本開示に係る一実施形態における第三把握方法を実行する場合の、基準三次元形状データが示すフランジ面と、実際のフランジ面の複数の位置における実測三次元座標データが示す点との相対位置関係を示すイメージ図である。
【
図18】本開示に係る一実施形態における複数のポリゴンデータを説明するための説明図である。
【
図19】本開示に係る一実施形態における複数のポリゴンデータから特定の複数のポリゴンデータの抽出を説明するための説明図である。
【
図20】本開示に係る一実施形態における第三把握方法を実行する場合の、基準三次元形状データが示すフランジ面と、実際のフランジ面の複数の位置のうち、ポリゴンデータ抽出後の複数の位置における実測三次元座標データが示す点との相対位置関係を示すイメージ図である。
【
図21】本開示に係る一実施形態における第三把握方法を実行する場合の、参照位置の求め方を示す説明図である。
【
図22】本開示に係る一実施形態における第四把握方法を実行する場合に必要な実測三次元座標データの位置を示す説明図である。
【
図23】本開示に係る一実施形態における第四把握方法を実行する場合の、基準三次元形状データが示すフランジ面と、実際のフランジ面の複数の位置における実測三次元座標データが示す点との相対位置関係を示すイメージ図である。
【
図24】本開示に係る一実施形態における第四把握方法を実行する場合の、基準三次元形状データが示すフランジ面と、実際のフランジ面の複数の位置のうち、ポリゴンデータ抽出後の複数の位置における実測三次元座標データが示す点との相対位置関係を示すイメージ図である。
【
図25】本開示に係る一実施形態における第四把握方法を実行する場合の、参照位置の求め方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る回転機械のフランジ変位量推定方法、この方法を実行するためのプログラム、及び、この方法を実行する装置の実施形態について説明する。
「回転機械の実施形態」
本実施形態における回転機械について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0020】
図1~
図3に示すように、本実施形態の回転機械は、蒸気タービン10である。この蒸気タービン10は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転するロータ15と、ロータ15の外周側を覆うケーシング30と、ロータ15を回転可能に支持する第一軸受装置12a及び第二軸受装置12bと、複数のダイヤフラム20と、ケーシング30とロータ15との隙間を封止する第一軸封装置13a及び第二軸封装置13bと、ケーシング30を下側から支持する架台11と、を備える。
【0021】
ここで、軸線Arが延びる方向を軸線方向Dy、水平方向で軸線方向Dyに垂直な方向を横方向Dx、軸線Arに対する周方向を単に周方向Dc、軸線Arに対する径方向を単に径方向Dr、とする。また、この径方向Drで、軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、軸線Arから遠ざかる側を径方向外側Droとする。また、図中の符号で用いているUは上半を意味し、Lは下半を意味する。
【0022】
ロータ15は、軸線方向Dyに延びるロータ軸16と、軸線方向Dyに並んでロータ軸16に取り付けられている複数の動翼列17と、を有する。複数の動翼列17は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並ぶ複数の動翼を有する。ロータ軸16の両端部は、ケーシング30から軸線方向Dyに突出している。ロータ軸16で、軸線方向Dyにおける一方の端部は、架台11に取り付けられている第一軸受装置12aにより、回転可能に支持されている。ロータ軸16で、軸線方向Dyにおける他方の端部は、架台11に取り付けられている第二軸受装置12bにより、回転可能に支持されている。
【0023】
第一軸封装置13aは、ケーシング30の軸線方向Dyにおける一方の端部に設けられている。第二軸封装置13bは、ケーシング30の軸線方向Dyにおける他方の端部に設けられている。第一軸封装置13a及び第二軸封装置13bは、いずれも、ロータ軸16とケーシング30との隙間を封止する装置である。
【0024】
複数のダイヤフラム20は、ケーシング30内で軸線方向Dyに並んでいる。複数のダイヤフラム20は、いずれも、軸線Arよりも下側の部分を構成する下半ダイヤフラム20Lと、軸線Arよりも上側の部分を構成する上半ダイヤフラム20Uと、を有する。下半ダイヤフラム20L及び上半ダイヤフラム20Uは、いずれも、周方向Dcに並ぶ複数の静翼22と、複数の静翼22の径方向内側Driの部分を相互に連結するダイヤフラム内輪23と、複数の静翼22の径方向外側Droの部分を相互に連結するダイヤフラム外輪24と、ダイヤフラム内輪23の径方向内側Driに取り付けられているシール装置25と、を有する。このシール装置25は、ダイヤフラム内輪23とロータ軸16との間の隙間をシールするシール装置である。
【0025】
以上で説明した第一軸封装置13a及び第二軸封装置13b、さらに、複数のダイヤフラム20は、いずれも、軸線Arに対する周方向に延びて、ケーシング30に取り付けられている静止部品である。
【0026】
ケーシング30は、
図2に示すように、軸線Arよりも下側の部分を構成する下半ケーシング30Lと、軸線Arよりも上側の部分を構成する上半ケーシング30Uと、下半ケーシング30Lに対して上半ケーシング30Uを締結するための複数のボルト39と、を有する。下半ケーシング30Lは、周方向Dcに延びる下半ケーシング本体31Lと、下半ケーシング本体31Lの周方向Dcの両端部から径方向外側Droに突出する下フランジ32Lと、下フランジ32Lに連なり架台11により下側から支えられる第一被支持部35a及び第二被支持部35bと、を有する。また、上半ケーシング30Uは、周方向Dcに延びる上半ケーシング本体31Uと、上半ケーシング本体31Uの周方向Dcの両端部から径方向外側Droに突出する上フランジ32Uと、を有する。なお、上フランジ32Uには、下フランジ32Lにおける第一被支持部35a及び第二被支持部35bに対向する部分が設けられていない。但し、上フランジ32Uに、下フランジ32Lにおける第一被支持部35a及び第二被支持部35bに対向する部分が設けられていてもよい。
【0027】
図2~
図5に示すように、下フランジ32Lで上側を向く面が下フランジ面33Lを成す。また、上フランジ32Uで下側を向く面が上フランジ面33Uを成す。下フランジ面33Lと上フランジ面33Uとは、上下方向Dzで互いに対向している。
【0028】
第一被支持部35aは、下フランジ32Lの軸線方向Dyにおける両側のうちの一方側から一方側に突出している。第二被支持部35bは、下フランジ32Lの軸線方向Dyにおける両側のうちの他方側から他方側に突出している。よって、第一被支持部35aに対して、第二被支持部35bは、軸線方向Dyに離れている。本実施形態において、第一被支持部35aの上面35ap及び第二被支持部35bの上面35bpは、下フランジ面33Lに連なる面である。すなわち、第一被支持部35aの上面35ap及び第二被支持部35bの上面35bpは、下フランジ面33Lと連続しており、下フランジ面33Lに対して段差がない。
【0029】
下フランジ32L及び上フランジ32Uには、上下方向Dzに貫通して、複数のボルト39のそれぞれが挿通可能なボルト孔34が形成されている。下半ケーシング30Lと上半ケーシング30Uとは、下フランジ32Lのボルト孔34及び上フランジ32Uのボルト孔34に挿通されたボルト39により締結される。
【0030】
下半ケーシング本体31Lの内周面、及び上半ケーシング30Uの内周面には、前述した複数の静止部品がそれぞれ格納される複数の静止部品格納部36が形成されている。下半ケーシング本体31Lの各静止部品格納部36は、下半ケーシング本体31Lの内周面から径方向外側Droに凹み、周方向Dcに延びる溝である。また、上半ケーシング本体31Uの各静止部品格納部36は、上半ケーシング本体31Uの内周面から径方向外側Droに凹み、周方向Dcに延びる溝である。なお、静止部品の一種であるダイヤフラム20は、周方向Dcに延びる静止部品格納部36のうち、フランジ面近傍の部分で支持されている。
【0031】
ケーシング30の内周面は、蒸気タービン10の運転により、高温の蒸気に晒される。このため、ケーシング30は、蒸気タービン10の運転により、クリープ変形等の非弾性変形が発生することがある。この変形の結果、下半ケーシング30Lに対して上半ケーシング30Uが締結されていない開放状態では、
図4に示すように、下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの上下方向Dzの位置が、軸線方向Dyの位置に応じて変わる。
【0032】
以上のように変形した下半ケーシング30Lに、以上のように変形した上半ケーシング30Uを締結して、ケーシング30を締結状態にすると、
図5に示すように、下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの上下方向Dzの位置が、軸線方向Dyの位置に応じてさらに変わる。
【0033】
ケーシング30に取り付けられる静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔は、予め定められた許容寸法の範囲内に収める必要がある。具体的に、例えば、静止部品の一種である第一軸封装置13a及び第二軸封装置13bとロータ軸16との間の間隔や、ダイヤフラム20のシール装置25とロータ軸16との間の間隔は、予め定められた許容寸法の範囲内に収める必要がある。しかしながら、開放状態の下半ケーシング30Lの形状データ及び上半ケーシング30Uの形状データがあったとしても、ケーシング30が開放状態から締結状態になって、下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの形状が変わってしまうと、静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔が変わり、この間隔が許容寸法の範囲から外れることがある。
【0034】
発明者は、開放状態から締結状態にしたことによる下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの変形に伴う静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔の変化は、下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの変形に対して支配的であることを見出した。そこで、発明者は、開放状態から締結状態にしたことによる下フランジ面33Lの変位量及び上フランジ面33Uの変位量の推定し、これらの変位量に基づき、締結状態のときの静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔を把握するようにした。
【0035】
以下、下フランジ面33Lの変位量及び上フランジ面33Uの変位量を推定するフランジ変位量推定装置、及びフランジ変位量推定方法について説明する。
【0036】
「フランジ変位量推定装置の実施形態」
本実施形態におけるフランジ変位量推定装置について、
図6を参照して説明する。
【0037】
フランジ変位量推定装置50は、コンピュータである。このフランジ変位量推定装置50は、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)60と、CPU60のワークエリア等になるメモリ57と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置58と、キーボードやマウス等の手入力装置(入力装置)51と、表示装置(出力装置)52と、手入力装置51及び表示装置52の入出力インタフェース53と、三次元レーザ計測器等の三次元形状測定装置69との間でデータの受送信を行うための装置インタフェース(入力装置)54と、ネットワークNを介して外部と通信するための通信インタフェース(入出力装置)55と、非一時的な記憶媒体の一種であるディスク型記憶媒体Dに対してデータの記憶処理や再生処理を行う記憶・再生装置(入出力装置)56と、を備えている。
【0038】
補助記憶装置58には、フランジ変位量推定プログラム58pや、蒸気タービン10を構成する複数の部品毎の基準三次元形状データ58dが予め格納されている。この基準三次元形状データ58dは、三次元設計データであってもよいし、例えば、蒸気タービン10を工場から出荷する前に実測で得た三次元データであってもよい。すなわち、この基準三次元形状データ58dは、定期検査前の運転よりも前に得られた三次元データであればよい。基準三次元形状データ58dからは、複数の部品毎の各位置における三次元座標データを得ることができる。フランジ変位量推定プログラム58pは、例えば、記憶・再生装置56を介して、非一時的記憶媒体の一種であるディスク型記憶媒体Dから補助記憶装置58に取り込まれる。なお、このフランジ変位量推定プログラム58pは、通信インタフェース55を介して外部の装置から補助記憶装置58に取り込まれてもよい。
【0039】
CPU60は、機能的に、実測座標受付部61と、有効座標把握部62と、座標変更部63と、接触位置推定部64と、変位量演算部65と、を有する。これらの各機能部61~65は、いずれも、CPU60が補助記憶装置58に格納されているフランジ変位量推定プログラム58pを実行することで機能する。これらの各機能部61~65における動作については、後述する。
【0040】
「フランジ変位量推定方法の実施形態」
本実施形態におけるフランジ変位量推定方法について、
図7に示すフローチャートに従って説明する。なお、このフランジ変位量推定方法は、前述したフランジ変位量推定装置により実行される。
【0041】
蒸気タービン10は、点検等を行う毎に、分解、組立が行われる。蒸気タービン10は、分解が完了した時点では、
図4に示すように、上半ケーシング30Uが下半ケーシング30Lから外される。この結果、ケーシング30は、上半ケーシング30Uと下半ケーシング30Lとがボルト39により締結されていない開放状態になる。さらに、ロータ15、複数のダイヤフラム20、第一軸封装置13a及び第二軸封装置13bは、ケーシング30から外され、このケーシング30外に配置される。なお、蒸気タービン10の分解が完了した時点で、下半ケーシング30Lが架台11から外されていてもよいが、ここでは、下半ケーシング30Lが架台11に支持されているとする。
【0042】
作業者は、以上のように蒸気タービン10を分解し、ケーシング30が開放状態になると、三次元レーザ計測器等の三次元形状測定装置69を用いて、上フランジ面33U中の複数位置における三次元座標値及び下フランジ面33L中の複数位置における三次元座標値を測定する。そして、作業者は、上フランジ面33U中の複数位置における三次元座標値及び下フランジ面33L中の複数位置における三次元座標値を実測三次元座標データとして、三次元形状測定装置69からフランジ変位量推定装置50に転送させる。フランジ変位量推定装置50の実測座標受付部61は、上フランジ面33U中の複数位置における実測三次元座標データ及び下フランジ面33L中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける(実測座標受付工程S1)。
【0043】
本実施形態における三次元座標データは、水平方向に延びる軸線方向Dyの位置を示す座標値と、軸線方向Dyに垂直な上下方向Dzの位置を示す座標値と、軸線方向Dyに垂直で水平方向に延びる横方向Dxの位置を示す座標値と、を含む。
【0044】
実測座標受付部61が複数の実測三次元座標データを受け付けると、フランジ変位量推定装置50の有効座標把握部62は、複数の実測三次元座標データを用いて、
図8に示すように、複数の下対象位置71Lと、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、複数の下対象中点位置75Lと、複数の上対象位置71Uと、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、複数の上対象中点位置75Uと、における有効三次元座標データを把握する(有効座標把握工程S2)。ここで、有効三次元座標データとは、受け付けた複数の実測三次元座標データを元に算出された、仮想上の面も含めた下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの面上の点の三次元座標データである。このデータは開放状態から締結状態にしたことによる下フランジ面33Lの変位量及び上フランジ面33Uの変位量を推定するために必要なデータである。この有効三次元座標データの把握方法については、後ほど、詳細に説明する。
【0045】
ここで、下第一位置72Laは、下フランジ面33Lに連なる面中で第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。第一代表位置74aは、第一被支持部35a中で最も大きな荷重がかかる位置である。下第二位置72Lbは、下フランジ面33Lに連なる面中で第二被支持部35bの第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。第二代表位置74bは、第二被支持部35b中で最も大きな荷重がかかる位置である。なお、「下フランジ面33Lに連なる面」は、実際に存在する面でも、仮想上の面であってもよい。本実施形態では、第一被支持部35aの上面35ap及び第二被支持部35bの上面35bpは、下フランジ面33Lに連なる面である。複数の下対象位置71Lは、下フランジ面33L中でケーシング30が開放状態から締結状態になったときの上下方向Dzの変位量を得たい位置である。ここで、下フランジ面33L中で上下方向Dzの変位量を得たい位置とは、下フランジ面33L中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって、下フランジ面33L中の内側縁の位置である。下対象中点位置75Lは、
図8及び
図9に示すように、下フランジ面33L中で横方向Dxにおける中点の位置であって、下対象位置71Lと軸線方向Dyの位置が一致している位置である。上第一位置72Uaは、上フランジ面33Uに連なる面中で第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。上第二位置72Ubは、上フランジ面33Uに連なる面中で第二被支持部35bの第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。なお、「上フランジ面33Uに連なる面」は、実際に存在する面でも、仮想上の面であってもよい。複数の上対象位置71Uは、上フランジ面33U中でケーシング30が開放状態から締結状態になったときの上下方向Dzの変位量を得たい位置である。ここで、上フランジ面33U中で上下方向Dzの変位量を得たい位置とは、上フランジ面33U中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって、上フランジ面33U中の内側縁の位置である。上対象中点位置75Uは、
図8及び
図9に示すように、上フランジ面33U中で横方向Dxにおける中点の位置であって、上対象位置と軸線方向Dyの位置が一致している位置である。なお、各位置における有効三次元座標データの把握方法については、後ほど、詳細に説明する。
【0046】
複数の上対象位置71Uは、いずれも、複数の下対象位置71Lのうちのいずれか一の下対象位置71Lと水平方向の位置が一致している。従って、上対象中点位置75Uは、上フランジ面33U中で横方向Dxにおける中点の位置であって、下対象位置71Lと軸線方向Dyの位置が一致している位置でもある。ここで、XX方向の位置が一致しているとは、XX方向の位置が完全に一致している場合のみならず、XX方向の位置が実質的に一致している場合も含まれる。例えば、水平方向の位置が一致しているとは、軸線方向Dyの位置を示す座標値が同じで且つ横方向Dxの位置を示す座標値も同じであるという意味でのみならず、軸線方向Dyの位置を示す座標値が実質的に同じで且つ横方向Dxの位置を示す座標値も実質的に同じであるという意味も含まれる。
【0047】
開放状態から締結状態にしたことによる下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの変形に伴う静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔の変化は、下フランジ面33L中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって下フランジ面33L中の内側縁の位置の変形、及び、上フランジ面33U中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって上フランジ面33U中の内側縁の位置の変形に対して支配的である。このため、上下方向Dzの変位量を得たい下対象位置71Lを前述の位置にし、上下方向Dzの変位量を得たい上対象位置71Uを前述の位置にしている。
【0048】
なお、下対象位置71Lは、下フランジ面33Lの内側縁の位置でなくてもよく、例えば、フランジ幅方向Dwで、下フランジ面33Lの内側縁からフランジ幅の1/3の位置までの範囲内の、いずれかの位置であってもよい。同様に、上対象位置71Uは、上フランジ面33Uの内側縁の位置でなくてもよく、例えば、フランジ幅方向Dwで、上フランジ面33Uの内側縁からフランジ幅の1/3の位置までの範囲内の、いずれかの位置であってもよい。ここで、フランジ幅方向Dwとは、フランジ面に沿って、フランジ面の外縁と内縁とを結ぶ方向であって、参照位置からフランジ面の外縁又は内縁までの距離が最も短くなる方向である。なお、参照位置とは、上対象位置71U、及び下対象位置71Lのそれぞれである。
【0049】
次に、フランジ変位量推定装置50の座標変更部63が、有効座標把握部62で把握された有効三次元座標データを変更する(座標変更工程S3)。具体的に、座標変更部63は、
図10に示すように、下第一位置72Laの有効三次元座標データと上第一位置72Uaの有効三次元座標データとが一致し、下第二位置72Lbの有効三次元座標データと上第二位置72Ubの有効三次元座標データとが一致するよう、平行移動及び/又は回転移動などの座標変換により、有効座標把握部62で把握された有効三次元座標データを変更する。
【0050】
次に、フランジ変位量推定装置50の接触位置推定部64が、座標変更部63により変更された下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、下対象中点位置75Lと上対象中点位置75Uとの上下方向における中間位置である対象接触位置73の有効三次元座標データを求める(接触位置推定工程S4)。
【0051】
次に、フランジ変位量推定装置50の変位量演算部65が、ケーシング30が開放状態から締結状態になったときの上対象位置71U及び下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求め、外部からの要求に応じて、これらの変位量を出力する(変位量演算工程S5)。具体的に、変位量演算部65は、
図9及び以下の式に示すように、座標変更後の下対象位置71Lの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZLと、この下対象位置71Lに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量ZdLとする。さらに、変位量演算部65は、座標変更後の上対象位置71Uの有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZUと、この上対象位置71Uに対する対象接触位置73の有効三次元座標データに含まれる上下方向Dzの座標値ZCと差を上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量ZdUとする。
ZdL=ZL-ZC
ZdU=ZU-ZC
【0052】
以上で、フランジ変位量推定装置50による、下フランジ32Lの下対象位置71L、及び上対象位置71Uの下対象位置71Lにおける上下方向Dzの変位量の推定が終了する。
【0053】
次に、有効座標把握部62における有効三次元座標データの複数種類の把握方法について説明する。
【0054】
「第一把握方法」
有効座標把握工程S2で第一把握方法を実行する場合、実測座標受付工程S1では、
図11に示すように、複数の下対象位置71Lと、複数の下中点位置75Lxと、複数の上対象位置71Uと、複数の上中点位置75Uxと、における実測三次元座標データを受け付ける。ここで、下中点位置75Lxは、下フランジ面33L中で横方向Dxにおける中点の位置である。複数の下中点位置75Lxは、軸線方向Dyにおける位置が互いに異なっている。複数の下中点位置75Lxのうち、いずれかは、下対象中点位置75Lである。上中点位置75Uxは、上フランジ面33U中で横方向Dxにおける中点の位置である。複数の上中点位置75Uxは、軸線方向Dyにおける位置が互いに異なっている。複数の上中点位置75Uxのうち、いずれかは、上対象中点位置75Uである。
【0055】
第一把握方法における有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、実測座標受付工程S1で受け付けた複数の下対象位置71L、及び複数の上対象位置71Uにおける実測三次元座標データを、そのまま、複数の下対象位置71L、及び複数の上対象位置71Uにおける有効三次元座標データとする。
【0056】
有効座標把握部62は、補助記憶装置58に記憶されている基準三次元形状データ58dから、このデータが作成された時点における複数の下対象位置71L、及び複数の上対象位置71Uの三次元座標データを得ることができる。そこで、有効座標把握部62は、例えば、以下のようにして、実測座標受付部61が受け付けた複数の位置における実測三次元座標データのうちから、一の下対象位置71Lの実測三次元座標データを認識する。有効座標把握部62は、実測座標受付部61が受け付けた複数の位置における実測三次元座標データのうちから、基準三次元形状データ58dが示す一の下対象位置71Lの三次元座標データと水平方向の座標値が一致している実測三次元座標データを抽出し、この実測三次元座標データを一の下対象位置71Lの実測三次元座標データを認識する。
【0057】
有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求める。有効座標把握部62は、さらに、複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。有効座標把握部62が下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求める場合、
図12に示すように、複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データを用いて、下フランジ面33L中で複数の下中点位置75Lxに沿った領域における面形状を近似的に示す二次関数等の高次関数Fを求める。有効座標把握部62は、この高次関数Fを用いて、基準三次元形状データ58dが示す下対象中点位置75Lの水平方向の座標値に対する、上下方向Dzの座標値を求める。そして、有効座標把握部62は、基準三次元形状データ58dが示す下対象中点位置75Lに関する各方向の座標値のうち、上下方向Dzの座標値を、先に求めた上下方向Dzの座標値に置き換えて、これを下対象中点位置75Lの有効三次元座標データとする。
【0058】
実測座標受付部61が、複数の下対象中点位置75Lの全てにおける実測三次元座標データ、及び複数の上対象中点位置75Uの全てにおける実測三次元座標データを受け付けることができれば、これらの実測三次元座標データをそのまま有効三次元座標データにしてもよい。しかしながら、現実には、例えば、複数の下対象中点位置75Lのうち、いずれかの下対象中点位置75Lが、ボルト孔34等の位置である場合がある。この場合には、この下対象中点位置75Lの実測三次元座標データを得ることができない。このため、ここでは、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求めるようにしている。
【0059】
さらに、有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向を示す前述の高次関数Fを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを外挿により求める。有効座標把握部62が、さらに、複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向を示す高次関数を用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを外挿により求める。
【0060】
以上では、高次関数Fで下フランジ面33L及び上フランジ面33Uの面形状を近似する。しかしながら、
図13に示すように、一次関数で、下フランジ面33Lの一部の面形状や、上フランジ面33Uの一部の面形状を近似してもよい。この場合、有効座標把握部62は、複数の下中点位置75Lxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lに近い複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データを用いて、有効三次元座標データを把握すべき下対象中点位置75Lを一次関数Fa,Fbで近似する。そして、この一次関数Fa,Fbを用いて、この下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データの上下方向Dzの座標値を求める。また、有効座標把握部62は、複数の上中点位置75Uxのうちで、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uに近い複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データを用いて、有効三次元座標データを把握すべき上対象中点位置75Uを一次関数で近似する。そして、この一次関数を用いて、この上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データの上下方向Dzの座標値を求める。さらに、有効座標把握部62は、前述の一次関数Fa,Fbを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを外挿により求めると共に、一次関数を用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを外挿により求める。
【0061】
以上で、複数の下対象位置71Lと、複数の下対象中点位置75Lと、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、複数の上対象位置71Uと、複数の上対象中点位置75Uと、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、における有効三次元座標データが把握される。
【0062】
以上のように、第一把握方法では、取り扱う三次元座標データの数を少なくすることができるため、作業者が三次元座標値を測定する手間を軽減することができる上に、コンピュータによる計算負荷を軽減することができる。
【0063】
以上では、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの上下方向Dzの座標値を推定する。しかしながら、実測座標受付工程S1で、下フランジ面33Lと連なっている第一被支持部35aの上面35apにおける下第一位置72Laの実測三次元座標データ、さらに、下フランジ面33Lと連なっている第二被支持部35bの上面35bpにおける下第二位置72Lbの実測三次元座標データを受け付けた場合には、これらの実測三次元データのそれぞれを、そのまま、下第一位置72Laの有効三次元座標データ、下第二位置72Lbの有効三次元座標データとしてもよい。
【0064】
前述したように、上半ケーシング30Uも、上フランジ32Uに連なる第一被支持部及び第二被支持部を有する場合がある。この場合に、実測座標受付工程S1で、上フランジ面33Uと連なっている第一被支持部の下面における上第一位置72Uaの実測三次元座標データ、さらに、上フランジ面33Uと連なっている第二被支持部の下面における上第二位置72Ubの実測三次元座標データを受け付けると、これらの実測三次元データのそれぞれを、そのまま、上第一位置72Uaの有効三次元座標データ、上第二位置72Ubの有効三次元座標データとしてもよい。
【0065】
「第二把握方法」
有効座標把握工程S2で第二把握方法を実行する場合、実測座標受付工程S1では、
図14に示す以下の位置における実測三次元座標データを受け付ける。
a.複数の下対象位置71L毎に、下対象位置71Lを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる下仮想線76L上の複数の位置78における実測三次元座標データ
b.複数の上対象位置71U毎に、上対象位置71Uを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる上仮想線76U上の複数の位置78における実測三次元座標データ
ここで、「YY位置を通り且つフランジ幅方向に延びるZ仮想緯線」における「YY位置」は、基準三次元形状データ58dが示す「YY位置」である。また、実測座標受付工程S1で実測三次元座標データを受け付ける仮想線上の位置の数は、例えば、2以上で10未満である。
【0066】
第二把握方法における有効座標把握工程S2では、実測座標受付工程S1で受け付けた複数の実測三次元座標データを用いて、有効座標把握部62が、複数の下対象位置71L及び複数の上対象位置71Uにおける有効三次元座標データを把握する。
【0067】
有効座標把握部62は、
図15に示すように、参照位置71を通り且つフランジ幅方向Dwに延びる仮想線76上の複数の位置78における実測三次元座標データを用いて、仮想線76上の複数の位置78における上下方向Dzの座標値を近似的に示す関数F2を求める。有効座標把握部62は、この関数F2を用いて、参照位置71における上下方向Dzの座標値を外挿により求める。そして、有効座標把握部62は、基準三次元形状データ58dが示す参照位置71に関する各方向の座標値のうち、上下方向Dzの座標値を、先に求めた上下方向Dzの座標値に置き換えて、これを参照位置71の有効三次元座標データとする。
【0068】
さらに、有効座標把握工程S2で第二把握方法を実行する場合、実測座標受付工程S1では、以下の位置における実測三次元座標データを受け付ける。
c.複数の下対象中点位置75L毎に、下対象中点位置75Lを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
d.複数の上対象中点位置75U毎に、上対象中点位置75Uを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
【0069】
有効座標把握工程S2では、実測座標受付工程S1で受け付けた、下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ及び上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、有効座標把握部62が、前述の方法と同様の方法で、前述の参照位置としての、複数の下対象中点位置75L及び複数の上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを把握する。
【0070】
さらに、有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、複数の下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを推定する。さらに、有効座標把握部62は、複数の上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを推定する。有効座標把握部62が下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを推定する際、有効座標把握部62は、第一把握方法で説明した方法と同様、複数の下対象中点位置75Lにおける実測三次元座標データの変化傾向から、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを求める。また、有効座標把握部62が上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを推定する際、有効座標把握部62は、第一把握方法で説明した方法と同様、複数の上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データの変化傾向から、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。
【0071】
以上で、複数の下対象位置71Lと、複数の下対象中点位置75Lと、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、複数の上対象位置71Uと、複数の上対象中点位置75Uと、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、における有効三次元座標データが把握される。
【0072】
第一把握方法では、参照位置の実測三次元座標データをそのままこの参照位置の有効三次元座標データにしている。このため、参照位置の有効三次元座標データには、局所的な形状変化の影響を受け易い上に、大きな計測誤差が含まれる可能性がある。例えば、三次元形状測定装置69が三次元レーザ計測器である場合、計測対象と三次元レーザ計測器との間に、微小な浮遊物が存在すると、この三次元レーザ計測器で計測された三次元位置データには誤差が含まれることになる。一方、第二把握方法では、複数の位置における実測三次元座標データから参照位置71の三次元座標データを推定し、この三次元座標データを有効三次元座標データにしている。このため、第二把握方法では、第一把握方法よりも、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0073】
以上では、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの上下方向Dzの座標値を推定する。しかしながら、実測座標受付工程S1で、以下の実測三次元座標データを受け付けた場合には、前述した参照位置71の有効三次元座標データを求めた方法と同様の方法で、この実測三次元座標データを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求めてもよい。
a.下第一位置72Laを通り且つ第一被支持部35aの突出方向に延びる仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
b.下第二位置72Lbを通り且つ第二被支持部35bの突出方向に延びる仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
ここで、被支持部35a,35bの突出方向とは、被支持部35a,35bの上面35ap,35bpに沿って、フランジから被支持部35a,35bが突出する方向である。
【0074】
前述したように、上半ケーシング30Uも、上フランジ32Uに連なる第一被支持部及び第二被支持部を有する場合がある。この場合に、実測座標受付工程S1で、以下の実測三次元座標データを受け付けた場合には、前述した参照位置の有効三次元座標データを求めた方法と同様の方法で、この実測三次元座標データを用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubの有効三次元座標データを求めてもよい。
a.上第一位置72Uaを通り且つ第一被支持部の突出方向に延びる仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
b.上第二位置72Ubを通り且つ第二被支持部の突出方向に延びる仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データ
【0075】
「第三把握方法」
有効座標把握工程S2で第三把握方法を実行する場合、
図16及び
図17に示すように、実測座標受付工程S1では、下フランジ面33Lの全体に渡る複数の位置78における実測三次元座標データ、及び上フランジ面33Uの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。なお、
図17は、基準三次元形状データ58dが示すフランジ面80及び参照位置81と、実際のフランジ面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データが示す点85との相対位置関係を示すイメージ図である。
【0076】
第三把握方法における有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、まず、
図18に示すように、フランジ面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、複数のポリゴンデータを作成する。ポリゴンデータとは、多角形の平面を規定するデータである。有効座標把握部62は、複数の位置における実測三次元座標データが示す点85のうち、互に近接する複数の点85を線分で結び、これらの線分で囲まれた多角形平面をポリゴン86とする。
【0077】
有効座標把握部62は、次に、複数のポリゴンデータのうちから、
図19に示すように、ある条件を満たす複数のポリゴンデータを抽出する。なお、
図19では、抽出するポリゴンデータで特定されるポリゴン86aに模様を施し、抽出しないポリゴンデータで特定されるポリゴン86bには模様を施していない。また、
図19中のXY平面は、基準三次元形状データ58dが示すフランジ面80に平行な面である。ここで、前述の条件とは、基準三次元形状データ58dが示すフランジ面80に対する、ポリゴンデータで特定されるポリゴン86の傾きが所定の傾き以内である、である。有効座標把握部62は、まず、複数のポリゴン86毎に、ポリゴン86の法線nを求める。次に、有効座標把握部62は、複数のポリゴン86毎に、基準三次元形状データ58dが示すフランジ面80に対する垂線pとポリゴン86の法線nとの角度αを求める。そして、有効座標把握部62は、複数のポリゴンデータのうちから、フランジ面80に対する垂線pとポリゴン86の法線nとの角度αが所定の角度(所定の傾き)以内の複数のポリゴンデータを抽出する。
【0078】
このデータの抽出処理は、実測座標受付工程S1で受け付けた複数の点85における実測三次元座標データから、フランジ面の縁の壁中の点や、フランジ面を貫通するボルト孔34の内周面中の点における実測三次元座標データを除くために実行される。このため、この抽出処理後の点85の数は、
図20に示すように、その前の点85の数より少なくなる。特に、基準三次元形状データ58dが示す基準形状モデル中で、フランジ面80に対して傾斜している面82に関して、抽出処理後の点85の数は、その前の点85の数より著しく少なくなる。
【0079】
有効座標把握部62は、次に、
図21に示すように、フランジ面80を含む仮想三次元空間を複数の三次元ブロック83に分割する。そして、有効座標把握部62は、複数の三次元ブロック83毎に、対象とする三次元ブロック83中の代表点87を定める。具体的に、有効座標把握部62は、抽出処理で抽出された複数のポリゴンデータで特定されるポリゴン86aに含まれる複数の点85のうち、対象とする三次元ブロック83中に含まれる複数の点85の中央値となる点を、対象とする三次元ブロック83中の代表点87とする。
【0080】
なお、代表点87は、抽出処理で抽出された複数のポリゴンデータで特定されるポリゴン86aに含まれる複数の点85のローレンツ分布に基づくロバスト推定やバイウェイト推定により定めてもよい。
【0081】
有効座標把握部62は、複数の三次元ブロック83毎の代表点87を相互に補完面としての平面又は曲面で接続して、複数の三次元ブロック83毎の代表点87を含む補完面の面形状データを作成する。この面形状データは、フランジ面全体の形状を示す関数F3で表される。有効座標把握部62は、関数F3で表されるフランジ面全体の面形状データを用いて、前述の参照位置71における有効三次元座標データを求める。なお、第三把握方法における参照位置71は、複数の下対象位置71L、複数の下対象中点位置75L、複数の上対象位置71U、複数の上対象中点位置75Uのそれぞれである。
【0082】
第三把握方法における有効座標把握工程S2でも、第一把握方法及び第二把握方法と同様に、有効座標把握部62が、複数の下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを推定する。さらに、有効座標把握部62は、複数の上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを推定する。
【0083】
以上で、複数の下対象位置71Lと、複数の下対象中点位置75Lと、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、複数の上対象位置71Uと、複数の上対象中点位置75Uと、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、における有効三次元座標データが把握される。
【0084】
第三把握方法では、第二把握方法よりも、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。さらに、第三把握方法では、障害物等に起因した広範囲なデータ欠損がある場合でも、参照位置における有効三次元座標データを把握できる。
【0085】
以上では、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの上下方向Dzの座標値を推定する。しかしながら、実測座標受付工程S1で、第一被支持部35aの上面35apの全体に渡る複数の位置及び第二被支持部35bの上面35bpの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付けた場合には、以下の方法で、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求めてもよい。具体的に、まず、第一被支持部35aの上面35apの全体に渡る複数の位置及び第二被支持部35bの上面35bpの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを含めて、第一被支持部35aの上面35ap、第二被支持部35bの上面35bp、及び下フランジ面33Lの全体の面形状データを求める。そして、関数で表される面全体の面形状データを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求める。
【0086】
前述したように、上半ケーシング30Uも、上フランジ32Uに連なる第一被支持部及び第二被支持部を有する場合がある。この場合に、実測座標受付工程S1で、上フランジ32Uに連なる第一被支持部の下面の全体に渡る複数の位置及び上フランジ32Uに連なる第二被支持部の下面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付け、以下の方法で、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubの有効三次元座標データを求めてもよい。具体的に、まず、第一被支持部の下面の全体に渡る複数の位置及び第二被支持部の下面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを含めて、第一被支持部の下面、第二被支持部の下面、及び上フランジ面33Uの全体の面形状データを求める。そして、関数で表される面全体の面形状データを用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubの有効三次元座標データを求める。
【0087】
「第四把握方法」
有効座標把握工程S2で第四把握方法を実行する場合、
図22及び
図23に示すように、実測座標受付工程S1では、フランジ面中で、前述の参照位置71を含む参照計測領域79中の複数の位置78における実測三次元座標データを受け付ける。なお、
図23は、基準三次元形状データ58dが示すフランジ面80と、実際のフランジ面中で参照計測領域79中の複数の位置における実測三次元座標データが示す点85との相対位置関係を示すイメージ図である。ここで、参照計測領域79とは、
図22に示すように、例えば、参照位置71を起点として、この参照位置71におけるフランジ幅の1/20~1/2の距離の範囲内の領域である。よって、この参照計測領域79は、下フランジ面33L中で下対象位置71Lを含む下計測領域でもあり、上フランジ面33U中で上対象位置71Uを含む上計測領域でもある。さらに、この参照計測領域79は、下フランジ面33L中で下対象中点位置75Lを含む下中点計測領域でもあり、上フランジ面33U中で上対象中点位置75Uを含む上中点計測領域でもある。なお、ここでの参照位置71の三次元座標データは、基準三次元形状データ58dが示す参照位置の三次元座標データである。また、実測座標受付工程S1で受け付ける参照計測領域79内の実測三次元座標データの数は、例えば、10以上である。よって、第四把握方法の実測座標受付工程S1で受け付ける参照計測領域79内の実測三次元座標データの数は、第二把握方法の実測座標受付工程S1で受け付ける仮想線上の位置の実測三次元座標データの数より多い。
【0088】
第四把握方法における有効座標把握工程S2では、有効座標把握部62が、まず、第三把握方法で説明した方法と同様に、複数の位置78における実測三次元座標データを用いて、複数のポリゴンデータを作成し、複数のポリゴンデータのうちから、ある条件を満たす複数のポリゴンデータを抽出する。この結果、この抽出処理後の実測三次元座標データが示す点85の数は、
図24に示すように、その前の点85の数より少なくなる。
【0089】
有効座標把握部62は、次に、第三把握方法で説明した方法と同様に、
図25に示すように、フランジ面80を含む仮想三次元空間を複数の三次元ブロック83に分割する。そして、有効座標把握部62が、複数の三次元ブロック83毎に、対象とする三次元ブロック83中の代表点87を定める。
【0090】
有効座標把握部62は、複数の三次元ブロック83毎の代表点87を相互に補完面としての平面又は曲面で接続して、複数の三次元ブロック83毎の代表点87を含む補完面の面形状データを作成する。この面形状データは、フランジ面中の参照計測領域79内の形状を示す関数F4で表される。有効座標把握部62は、関数F4で表される面形状データを用いて、前述の参照位置71における有効三次元座標データを求める。
【0091】
第四把握方法における二次処理工程でも、第一把握方法及び第二把握方法における二次処理工程と同様に、有効座標把握部62が、複数の下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを用いて、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを推定する。さらに、有効座標把握部62は、複数の上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを推定する。
【0092】
以上で、複数の下対象位置71Lと、複数の下対象中点位置75Lと、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、複数の上対象位置71Uと、複数の上対象中点位置75Uと、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、における有効三次元座標データが把握される。
【0093】
第四把握方法では、第二把握方法よりも、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。さらに、第四把握方法では、障害物等に起因した広範囲なデータ欠損がある場合でも、参照位置における有効三次元座標データを把握できる。
【0094】
以上では、フランジ面中の参照計測領域79内の面形状データを用いて、前述の参照位置71における有効三次元座標データを求める。しかしながら、面形状データを作成せず、複数の三次元ブロックのうち、参照位置71を含む三次元ブロック83の代表点87における上下方向Dzの座標値を、参照位置71における上下方向Dzの座標値としてもよい。
【0095】
以上では、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの上下方向Dzの座標値を推定する。しかしながら、実測座標受付工程S1で、第一被支持部35aの上面35apの全体に渡る複数の位置及び第二被支持部35bの上面35bpの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付けた場合には、以下の方法で、下第一位置72La及び下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求めてもよい。具体的に、まず、第一被支持部35aの上面35apの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、複数のポリゴンデータを作成し、複数のポリゴンデータのうちから、ある条件を満たす複数のポリゴンデータを抽出する。そして、抽出したポリゴンデータが示す複数の点のうちから代表点を定め、この代表点における上下方向Dzの座標値を、下第一位置72Laにおける上下方向Dzの座標値とする。同様に、第二被支持部35bの上面35apの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、代表点を定め、この代表点における上下方向Dzの座標値を、下第二位置72Lbにおける上下方向Dzの座標値とする。
【0096】
前述したように、上半ケーシング30Uも、上フランジ32Uに連なる第一被支持部及び第二被支持部を有する場合がある。この場合に、実測座標受付工程S1で、上フランジ32Uに連なる第一被支持部の下面の全体に渡る複数の位置及び上フランジ32Uに連なる第二被支持部35bの下面の全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。そして、以上と同様に、受け付けた複数の位置における実測三次元座標データを用いて、各面上の代表点を定め、各面上の代表点における上下方向Dzの座標値を、それぞれ、上第一位置72Uaにおける上下方向Dzの座標値、上第二位置72Ubにおける上下方向Dzの座標値とする。
【0097】
なお、上対象中点位置75U及び下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを第一把握方法で把握し、上対象位置71U及び下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを第二把握方法又は第四把握方法で把握してもよい。また、上対象中点位置75U及び下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを第二把握方法で把握し、上対象位置71U及び下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを第一把握方法又は第四把握方法で把握してもよい。さらに、上対象中点位置75U及び下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを第四把握方法で把握し、上対象位置71U及び下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを第一把握方法又は第二把握方法で把握してもよい。
【0098】
以上のように、本実施形態では、上フランジ面33U中の上対象中点位置75Uと下フランジ面33L中の下対象中点位置75Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73とする。そして、本実施形態では、上フランジ面33U中で上下方向Dzの変位量を得たい上対象位置71Uと対象接触位置73との上下方向Dzの差を上対象位置71Uの変位量とする。さらに、本実施形態では、下フランジ面33L中で上下方向Dzの変位量を得たい下対象位置71Lと対象接触位置73との上下方向Dzの差を下対象位置71Lの変位量とする。このため、本実施形態では、下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの有限要素モデルを用いて、下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの変形をシミュレートしなくても、上対象位置71U及び下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求めることができる。よって、本実施形態では、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。このため、本実施形態では、フランジ面の推定の準備期間を短縮し且つその推定コストを抑えることができる。
【0099】
ところで、上フランジ面33U中の上対象位置71Uと、下フランジ面33L中の下対象位置71Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73とすることも可能である。フランジ面の変形には、軸線方向Dyの変化に伴う上下方向Dzの変形のみならず、
図9に示すように、横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形も含まれる。仮に、下対象位置71Lや上対象位置71Uがフランジ面中の内側縁の位置であるとし、前述したように、上対象位置71U及び下対象位置71Lを用いて対象接触位置73を求めるとする。この場合、フランジ面における横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形が、求める対象接触位置73に極端に反映されて、対象接触位置73の上下方向Dzの誤差が大きくなり、結果として、上対象位置71U及び下対象位置71Lの変位量の誤差が大きくなる場合がある。一方、本実施形態では、上フランジ面33U中で横方向Dxにおける中点である上対象中点位置75Uと下フランジ面33L中で横方向Dxにおける中点である下対象中点位置75Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73にしている。このため、本実施形態では、フランジ面における横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形が、求める対象接触位置73に極端に反映されることがなく、対象接触位置73の上下方向Dzの誤差を小さくでき、結果として、上対象位置71U及び下対象位置71Lの変位量の誤差を小さくすることができる。
【0100】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0101】
「付記」
以上の実施形態における回転機械のフランジ変位量推定方法は、例えば、以下のように把握される。
【0102】
(1)第一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ15と、前記ロータ15の外周を覆うケーシング30と、前記ケーシング30内に配置され、前記ケーシング30に取り付けられている静止部品と、前記ケーシング30を下側から支える架台11と、を備える。前記ケーシング30は、上側の上半ケーシング30Uと、下側の下半ケーシング30Lと、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとを締結する複数のボルト39と、を有する。前記上半ケーシング30Uは、下側を向く上フランジ面33Uが形成されている上フランジ32Uを有する。前記下半ケーシング30Lは、上側を向き、前記上フランジ面33Uと上下方向Dzで対向する下フランジ面33Lが形成されている下フランジ32Lと、前記下フランジ32Lに連なり、前記架台11により下側から支えられ、前記軸線Arが延びる軸線方向Dyで互いに離れた第一被支持部35a及び第二被支持部35bと、を有する。前記上フランジ32U及び前記下フランジ32Lには、上下方向Dzに貫通して、前記複数のボルト39のそれぞれが挿通可能なボルト孔34が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定方法では、
前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結されていない開放状態における、前記上フランジ面33U中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面33L中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程S1と、前記下フランジ面33L中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、下対象位置71Lと、下対象中点位置75Lと、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面33U中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、上対象位置71Uと、上対象中点位置75Uと、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程S2と、前記有効座標把握工程S2で把握した前記下第一位置72Laの有効三次元座標データと前記上第一位置72Uaの有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程S2で把握した前記下第二位置72Lbの有効三次元座標データと前記上第二位置72Ubの有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程S2で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程S3と、前記座標変更工程S3で変更された、前記下対象中点位置75L及び前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置75Lと前記上対象中点位置75Uとの上下方向Dzにおける中間位置である対象接触位置73の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程S4と、前記開放状態から前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結された締結状態になったときの前記上対象位置71U及び前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求める変位量演算工程S5と、を実行する。前記下第一位置72Laは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置72Lbは、前記下フランジ面33Lに連なる面中で前記第二被支持部35bの第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置71Lは、前記下フランジ面33L中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向Dzの変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置75Lは、前記下フランジ面33L中で、水平方向で前記軸線方向Dyに垂直な方向である横方向Dxにおける中点の位置であって、前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記上第一位置72Uaは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの前記第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置72Ubは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第二被支持部35bの前記第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置71Uは、前記上フランジ面33U中で前記下対象位置71Lと水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置75Uは、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点であって前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記変位量演算工程S5では、前記座標変更工程S3で変更された前記下対象位置71Lの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量とし、前記座標変更工程S3で変更された前記上対象位置71Uの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量とする。
【0103】
本態様では、上フランジ面33U中の上対象中点位置75Uと、下フランジ面33L中の下対象中点位置75Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73とする。そして、本態様では、上フランジ面33U中で上下方向Dzの変位量を得たい上対象位置71Uと対象接触位置73との上下方向Dzの差を上対象位置71Uの変位量とする。さらに、本態様では、下フランジ面33L中で上下方向Dzの変位量を得たい下対象位置71Lと対象接触位置73との上下方向Dzの差を下対象位置71Lの変位量とする。このため、本態様では、下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの有限要素モデルを用いて、下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの変形をシミュレートしなくても、上対象位置71U及び下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求めることができる。よって、本態様では、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【0104】
ところで、上フランジ面33U中の上対象位置71Uと、下フランジ面33L中の下対象位置71Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73とすることも可能である。フランジ面の変形には、軸線方向Dyの変化に伴う上下方向Dzの変形のみならず、横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形も含まれる。仮に、下対象位置71Lや上対象位置71Uがフランジ面中の内側縁の位置であるとし、前述したように、上対象位置71U及び下対象位置71Lを用いて対象接触位置73を求めるとする。この場合、フランジ面における横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形が、求める対象接触位置73に極端に反映されて、対象接触位置73の上下方向Dzの誤差が大きくなり、結果として、上対象位置71U及び下対象位置71Lの変位量の誤差が大きくなる場合がある。一方、本態様では、上フランジ面33U中で横方向Dxにおける中点である上対象中点位置75Uと下フランジ面33L中で横方向Dxにおける中点である下対象中点位置75Lとの上下方向Dzの中点を対象接触位置73にしている。このため、本態様では、フランジ面における横方向Dxの変化に伴う上下方向Dzの変形が、求める対象接触位置73に極端に反映されることがなく、対象接触位置73の上下方向Dzの誤差を小さくでき、結果として、上対象位置71U及び下対象位置71Lの変位量の誤差を小さくすることができる。
【0105】
(2)第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記下対象位置71Lは、前記軸線方向Dyで前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面33L中の内側縁の位置である。
【0106】
回転機械の性能等の観点から、静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔を管理する必要がある。発明者は、ケーシング30が開放状態から締結状態になったことによる下半ケーシング30L及び上半ケーシング30Uの変形に伴う静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔の変化は、下フランジ面33L中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって下フランジ面33L中の内側縁の位置の変形、及び、上フランジ面33U中で軸線方向Dyにおける静止部品格納部36が形成されている位置であって上フランジ面33U中の内側縁の位置の変形に対して支配的である、ことを見出した。よって、本態様では、ケーシング30が開放状態から締結状態になったときの静止部品とロータ15との間の径方向Drの間隔を高精度で管理することができる。
【0107】
(3)第三態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下対象中点位置75L及び前記上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記下対象中点位置75Lにおける実測三次元座標データをそのまま前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データとして把握し、前記実測座標受付工程S1で取得した前記上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データをそのまま前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データとして把握する。
【0108】
本態様では、実測座標受付工程S1で受け付けた下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データをそのまま下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データとして把握するので、計算負荷を抑えることができる。
【0109】
(4)第四態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下対象中点位置75Lを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上対象中点位置75Uを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、前記上中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0110】
本態様では、下中点仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから下対象中点位置75Lの有効三次元座標データを求め、上中点仮想線の複数の位置における実測三次元座標データから上対象中点位置75Uの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0111】
(5)第五態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下フランジ面33L中で前記下対象中点位置75Lを含む下中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面33Uで前記上対象中点位置75Uを含む上中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記下中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記上中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0112】
本態様では、下中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データから下対象中点位置75Lの有効三次元座標データを求め、上中点計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データから上対象中点位置75Uの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0113】
(6)第六態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下フランジ面33L中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の下中点位置75Lxと、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の上中点位置75Uxと、における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0114】
本態様で、複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、実測座標受付工程S1で、下対象中点位置75Lや上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【0115】
(7)第七態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbの実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記実測座標受付工程S1で取得した前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける実測三次元座標データをそのまま前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データとして把握する。
【0116】
本態様では、実測座標受付工程S1で受け付けた下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける実測三次元座標データをそのまま下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データとして把握するので、計算負荷を抑えることができる。
【0117】
(8)第八態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記第一被支持部35aの表面中の複数の位置における実測三次元座標データ、及び前記第二被支持部35bの表面中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記第一被支持部35aの前記表面及び前記第二被支持部35bの前記表面は、前記上フランジ面33Uと前記下フランジ面33Lとのうちで前記一方の半ケーシングが有するフランジ面に連なる面である。前記有効座標把握工程S2では、前記実測座標受付工程S1で取得した前記第一被支持部35aの前記表面中の複数の位置における実測三次元座標データから前記下第一位置72Laにおける有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程S1で取得した前記第二被支持部35bの前記表面中の複数の位置における実測三次元座標データから前記下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求める。
【0118】
本態様では、実測座標受付工程S1で受け付けた第一被支持部35aにおける上面35ap中の複数の実測三次元座標データから下第一位置72Laの有効三次元座標データを求め、実測座標受付工程S1で受け付けた第二被支持部35bにおける上面35bp中の複数の実測三次元座標データから下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0119】
(9)第九態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第六態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記有効座標把握工程S2では、前記複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置72Ua及び前記上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。
【0120】
本態様で、複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、下第一位置72La及び下第二位置72Lbにおける有効三次元座標を求め、複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、実測座標受付工程S1で、下第一位置72La、下第二位置72Lb、上第一位置72Ua、及び上第二位置72Ubにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【0121】
(10)第十態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下対象位置71L及び前記上対象位置71Uにおける実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記下対象位置71Lにおける実測三次元座標データをそのまま前記下対象位置71Lにおける有効三次元座標データとして把握し、前記実測座標受付工程S1で取得した前記上対象位置71Uにおける実測三次元座標データをそのまま前記上対象位置71Uにおける有効三次元座標データとして把握する。
【0122】
本態様では、実測座標受付工程S1で受け付けた下対象位置71L及び上対象位置71Uにおける実測三次元座標データをそのまま下対象位置71L及び上対象位置71Uにおける有効三次元座標データとして把握するので、計算負荷を抑えることができる。
【0123】
(11)第十一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下対象位置71Lを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる下仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上対象位置71Uを通り且つフランジ幅方向Dwに延びる上仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記下仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを求め、前記上仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから前記上対象位置71Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0124】
本態様では、下仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを求め、上仮想線上の複数の位置における実測三次元座標データから上対象位置71Uにおける有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象位置71L及び上対象位置71Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0125】
(12)第十二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下フランジ面33L中で前記下対象位置71Lを含む下計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面33Uで前記上対象位置71Uを含む上計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記下計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを求め、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記上計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上対象位置71Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0126】
本態様では、下計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データから下対象位置71Lの有効三次元座標データを求め、上計測領域中の複数の位置における実測三次元座標データから上対象位置71Uの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象位置71L及び上対象位置71Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。
【0127】
(13)第十三態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第一態様又は前記第二態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記実測座標受付工程S1では、前記下フランジ面33Lの全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付けると共に、前記上フランジ面33Uの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記下フランジ面33Lの全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記下フランジ面33L全体の三次元形状を示す下フランジ面33Lの形状データを求めると共に、前記実測座標受付工程S1で受け付けた前記上フランジ面33Uの全体渡る複数の位置における実測三次元座標データを用いて、前記上フランジ面33U全体の三次元形状を示す上フランジ面33Uの形状データを求める。前記有効座標把握工程S2では、さらに、前記下フランジ面33Lの形状データを用いて、前記下対象中点位置75Lの有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面33Uの形状データを用いて、前記上対象中点位置75Uの有効三次元座標データを求める。
【0128】
本態様では、下フランジ面33Lの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから下対象中点位置75Lの有効三次元座標データを求め、上フランジ面33Uの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから上対象中点位置75Uの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象中点位置75L及び上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。さらに、本態様では、さらに、障害物等に起因した広範囲なデータ欠損がある場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握できる。
【0129】
(14)第十四態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記第十三態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記有効座標把握工程S2では、前記下フランジ面33Lの形状データを用いて、前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面33Uの形状データを用いて、前記上第一位置72Ua及び前記上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。
【0130】
本態様では、下フランジ面33Lの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから下第一位置72La及び下第二位置72Lbの有効三次元座標データを求め、上フランジ面33Uの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから上第一位置72Ua及び上第二位置72Ubの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下第一位置72La、下第二位置72Lb、上第一位置72Ua、及び上第二位置72Ubにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。また、本態様では、下第一位置72La、下第二位置72Lb、上第一位置72Ua、及び上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。さらに、本態様では、さらに、障害物等に起因した広範囲なデータ欠損がある場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握できる。
【0131】
(15)第十五態様における回転機械のフランジ変位量推定方法は、
前記十三態様又は前記第十四態様における回転機械のフランジ変位量推定方法において、前記有効座標把握工程S2では、前記下フランジ面33Lの形状データを用いて、前記下対象位置71Lにおける有効三次元座標データを求めると共に、前記上フランジ面33Uの形状データを用いて、前記上対象位置71Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0132】
本態様では、下フランジ面33Lの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから下対象位置71Lの有効三次元座標データを求め、上フランジ面33Uの全体に渡る複数の位置における実測三次元座標データから上対象位置71Uの有効三次元座標データを求める。よって、本態様では、下対象位置71L及び上対象位置71Uにおける有効三次元座標データに関して、局所的な形状変化の影響を受けにくくなる上に、大きな計測誤差が含まれる可能性を抑えることができる。さらに、本態様では、さらに、障害物等に起因した広範囲なデータ欠損がある場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握できる。
【0133】
以上の実施形態における回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、例えば、以下のように把握される。
【0134】
(16)第十六態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ15と、前記ロータ15の外周を覆うケーシング30と、前記ケーシング30内に配置され、前記ケーシング30に取り付けられている静止部品と、前記ケーシング30を下側から支える架台11と、を備える。前記ケーシング30は、上側の上半ケーシング30Uと、下側の下半ケーシング30Lと、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとを締結する複数のボルト39と、を有する。前記上半ケーシング30Uは、下側を向く上フランジ面33Uが形成されている上フランジ32Uを有する。前記下半ケーシング30Lは、上側を向き、前記上フランジ面33Uと上下方向Dzで対向する下フランジ面33Lが形成されている下フランジ32Lと、前記下フランジ32Lに連なり、前記架台11により下側から支えられ、前記軸線Arが延びる軸線方向Dyで互いに離れた第一被支持部35a及び第二被支持部35bと、を有する。前記上フランジ32U及び前記下フランジ32Lには、上下方向Dzに貫通して、前記複数のボルト39のそれぞれが挿通可能なボルト孔34が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定プログラム58pは、前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結されていない開放状態における、前記上フランジ面33U中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面33L中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付工程S1と、前記下フランジ面33L中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、下対象位置71Lと、下対象中点位置75Lと、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面33U中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、上対象位置71Uと、上対象中点位置75Uと、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握工程S2と、前記有効座標把握工程S2で把握した前記下第一位置72Laの有効三次元座標データと前記上第一位置72Uaの有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握工程S2で把握した前記下第二位置72Lbの有効三次元座標データと前記上第二位置72Ubの有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握工程S2で把握した有効三次元座標データを変更する座標変更工程S3と、前記座標変更工程S3で変更された、前記下対象中点位置75L及び前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置75Lと前記上対象中点位置75Uとの上下方向Dzにおける中間位置である対象接触位置73の有効三次元座標データを求める接触位置推定工程S4と、前記開放状態から前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結された締結状態になったときの前記上対象位置71U及び前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求める変位量演算工程S5と、をコンピュータに実行させる。前記下第一位置72Laは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置72Lbは、前記下フランジ面33Lに連なる面中で前記第二被支持部35bの第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置71Lは、前記下フランジ面33L中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向Dzの変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置75Lは、前記下フランジ面33L中で、水平方向で前記軸線方向Dyに垂直な方向である横方向Dxにおける中点の位置であって、前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記上第一位置72Uaは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの前記第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置72Ubは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第二被支持部35bの前記第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置71Uは、前記上フランジ面33U中で前記下対象位置71Lと水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置75Uは、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点であって前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記変位量演算工程S5では、前記座標変更工程S3で変更された前記下対象位置71Lの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量とし、前記座標変更工程S3で変更された前記上対象位置71Uの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量とする。
【0135】
本態様では、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、第一態様と同様に、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【0136】
(17)第十七態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、
前記第十六態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラム58pにおいて、前記下対象位置71Lは、前記軸線方向Dyで前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面33L中の内側縁の位置である。
【0137】
(18)第十八態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、
前記第十六態様又は前記第十七態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラム58pにおいて、前記実測座標受付工程S1では、前記下フランジ面33L中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の下中点位置75Lxと、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の上中点位置75Uxと、における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握工程S2では、前記複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0138】
本態様で、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、第六態様と同様に、実測座標受付工程S1で、下対象中点位置75Lや上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【0139】
(19)第十九態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラムは、
前記第十八態様における回転機械のフランジ変位量推定プログラム58pにおいて、前記有効座標把握工程S2では、前記複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置72Ua及び前記上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。
【0140】
本態様で、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、第九態様と同様に、実測座標受付工程S1で、下第一位置72La、下第二位置72Lb、上第一位置72Ua、及び上第二位置72Ubにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【0141】
以上の実施形態における回転機械のフランジ変位量推定装置は、例えば、以下のように把握される。
【0142】
(20)第二十態様における回転機械のフランジ変位量推定装置は、以下の回転機械に適用される。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ15と、前記ロータ15の外周を覆うケーシング30と、前記ケーシング30内に配置され、前記ケーシング30に取り付けられている静止部品と、前記ケーシング30を下側から支える架台11と、を備える。前記ケーシング30は、上側の上半ケーシング30Uと、下側の下半ケーシング30Lと、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとを締結する複数のボルト39と、を有する。前記上半ケーシング30Uは、下側を向く上フランジ面33Uが形成されている上フランジ32Uを有する。前記下半ケーシング30Lは、上側を向き、前記上フランジ面33Uと上下方向Dzで対向する下フランジ面33Lが形成されている下フランジ32Lと、前記下フランジ32Lに連なり、前記架台11により下側から支えられ、前記軸線Arが延びる軸線方向Dyで互いに離れた第一被支持部35a及び第二被支持部35bと、を有する。前記上フランジ32U及び前記下フランジ32Lには、上下方向Dzに貫通して、前記複数のボルト39のそれぞれが挿通可能なボルト孔34が形成されている。
以上の回転機械のフランジ変位量推定装置50において、前記回転機械を分解した後で、前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結されていない開放状態における、前記上フランジ面33U中の複数位置における実測三次元座標データ及び前記下フランジ面33L中の複数位置における実測三次元座標データを受け付ける実測座標受付部61と、前記下フランジ面33L中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、下第一位置72Laと、下第二位置72Lbと、下対象位置71Lと、下対象中点位置75Lと、における有効三次元座標データを把握すると共に、前記上フランジ面33U中の複数位置における前記実測三次元座標データを用いて、上第一位置72Uaと、上第二位置72Ubと、上対象位置71Uと、上対象中点位置75Uと、における有効三次元座標データを把握する有効座標把握部62と、前記有効座標把握部62が把握した前記下第一位置72Laの有効三次元座標データと前記上第一位置72Uaの有効三次元座標データとが一致し、前記有効座標把握部62が把握した前記下第二位置72Lbの有効三次元座標データと前記上第二位置72Ubの有効三次元座標データとが一致するよう、前記有効座標把握部62が把握した有効三次元座標データを変更する座標変更部63と、前記座標変更部63が変更した、前記下対象中点位置75L及び前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを用いて、前記下対象中点位置75Lと前記上対象中点位置75Uとの上下方向Dzにおける中間位置である対象接触位置73の有効三次元座標データを求める接触位置推定部64と、前記開放状態から前記上半ケーシング30Uと前記下半ケーシング30Lとが前記複数のボルト39で締結された締結状態になったときの前記上対象位置71U及び前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量を求める変位量演算部65と、を備える。前記下第一位置72Laは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記下第二位置72Lbは、前記下フランジ面33Lに連なる面中で前記第二被支持部35bの第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記下対象位置71Lは、前記下フランジ面33L中で、前記開放状態から前記締結状態になったときの上下方向Dzの変位量を得たい位置である。前記下対象中点位置75Lは、前記下フランジ面33L中で、水平方向で前記軸線方向Dyに垂直な方向である横方向Dxにおける中点の位置であって、前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記上第一位置72Uaは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第一被支持部35aの前記第一代表位置74aと水平方向における位置が一致している位置である。前記上第二位置72Ubは、前記上フランジ面33Uに連なる面中で前記第二被支持部35bの前記第二代表位置74bと水平方向における位置が一致している位置である。前記上対象位置71Uは、前記上フランジ面33U中で前記下対象位置71Lと水平方向の位置が一致している位置である。前記上対象中点位置75Uは、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点であって前記下対象位置71Lと前記軸線方向Dyの位置が一致している位置である。前記変位量演算部65は、前記座標変更部63が変更した前記下対象位置71Lの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記下対象位置71Lの上下方向Dzの変位量とし、前記座標変更部63が変更した前記上対象位置71Uの有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置と前記対象接触位置73の有効三次元座標データが示す上下方向Dzの位置との差を前記上対象位置71Uの上下方向Dzの変位量とする。
【0143】
本態様では、第一態様と同様に、変位量を求める際の計算負荷を抑えることができる。
【0144】
(21)第二十一態様における回転機械のフランジ変位量推定装置は、
前記第二十態様における回転機械のフランジ変位量推定装置50において、前記下対象位置71Lは、前記軸線方向Dyで前記静止部品が配置される位置で且つ前記下フランジ面33L中の内側縁の位置である。
【0145】
(22)第二十二態様における回転機械のフランジ変位量推定装置は、
前記第二十態様又は前記第二十一態様における回転機械のフランジ変位量推定装置50において、前記実測座標受付部61は、前記下フランジ面33L中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の下中点位置75Lxと、前記上フランジ面33U中で前記横方向Dxにおける中点の位置であって、前記軸線方向Dyにおける位置が互いに異なる複数の上中点位置75Uxと、における実測三次元座標データを受け付ける。前記有効座標把握部62は、前記複数の下中点位置75Lxにおける実測三次元座標データの変化傾向から、前記下対象中点位置75Lにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上対象中点位置75Uにおける有効三次元座標データを求める。
【0146】
本態様で、第六態様と同様に、実測座標受付部61が、下対象中点位置75Lや上対象中点位置75Uにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【0147】
(23)第二十三態様における回転機械のフランジ変位量推定装置は、
前記第二十二態様における回転機械のフランジ変位量推定装置50において、前記有効座標把握部62は、前記複数の下中点位置75Lxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記下第一位置72La及び前記下第二位置72Lbにおける有効三次元座標データを求め、前記複数の上中点位置75Uxにおける有効三次元座標データの変化傾向から、前記上第一位置72Ua及び前記上第二位置72Ubにおける有効三次元座標データを求める。
【0148】
本態様で、第九態様と同様に、実測座標受付部61が、下第一位置72La、下第二位置72Lb、上第一位置72Ua、及び上第二位置72Ubにおける実測三次元座標データを受け付けていない場合でも、これらの位置における有効三次元座標データを把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示の一態様では、上半ケーシング及び下半ケーシングのフランジ面の変位量を推定するにあたり、計算負荷を抑えることで、フランジ面の推定の準備期間を短縮し且つその推定コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0150】
10:蒸気タービン(回転機械)
11:架台
12a:第一軸受装置
12b:第二軸受装置
13a:第一軸封装置(静止部品)
13b:第二軸封装置(静止部品)
15:ロータ
16:ロータ軸
17:動翼列
20:ダイヤフラム(静止部品)
20L:下半ダイヤフラム
20U:上半ダイヤフラム
22:静翼
23:ダイヤフラム内輪
24:ダイヤフラム外輪
25:シール装置
30:ケーシング
30L:下半ケーシング
30U:上半ケーシング
31L:下半ケーシング本体
31U:上半ケーシング本体
32L:下フランジ
32U:上フランジ
33L:下フランジ面
33U:上フランジ面
34:ボルト孔
35a:第一被支持部
35ap:上面
35b:第二被支持部
35bp:上面
36:静止部品格納部
39:ボルト
50:フランジ変位量推定装置
51:手入力装置
52:表示装置
53:入出力インタフェース
54:装置インタフェース
55:通信インタフェース
56:記憶・再生装置
57:メモリ
58:補助記憶装置
58d:基準三次元形状データ
58p:フランジ変位量推定プログラム
60:CPU
61:実測座標受付部
62:有効座標把握部
63:座標変更部
64:接触位置推定部
65:変位量演算部
69:三次元形状測定装置
71:参照位置
71L:下対象位置
71U:上対象位置
72La:下第一位置
72Ua:上第一位置
72Lb:下第二位置
72Ub:上第二位置
73:対象接触位置
74a:第一代表位置
74b:第二代表位置
75L:下対象中点位置
75U:上対象中点位置
75Lx:下中点位置
75Ux:上中点位置
76:仮想線
76L:下仮想線
76U:上仮想線
77La:下第一仮想線
77Ua:上第一仮想線
77Lb:下第二仮想線
77Ub:上第二仮想線
79:参照計測領域
80:基準三次元形状データが示すフランジ面
81:基準三次元形状データが示す参照位置
82:基準三次元形状データが示す、フランジ面に対して傾斜している面
83:三次元ブロック
85:点
86,86a,86b:ポリゴン(多角形平面)
87:代表点
Ar:軸線
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dx:横方向
Dy:軸線方向
Dz:上下方向
Dw:フランジ幅方向