(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】前照灯装置
(51)【国際特許分類】
F21S 41/24 20180101AFI20241115BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20241115BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20241115BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20241115BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20241115BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20241115BHJP
F21W 102/14 20180101ALN20241115BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20241115BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241115BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241115BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/147
F21S41/25
F21S41/151
F21S41/663
F21S41/20
F21W102:14
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2024520198
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2022020161
(87)【国際公開番号】W WO2023218624
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】西村 将利
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509647(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006138(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003888(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019118051(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21W 102/14
F21W 102/155
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム用の第1の光源と、
ハイビーム用の第2の光源と、
前記第1の光源から出射された光及び前記第2の光源から出射された光が入射し、これらの光を出射する出射面を有する投射光学部材と
を備え、
前記投射光学部材は、
前記第1の光源から光が入射する第1の入射面と、
前記第2の光源から光が入射
し、集光部を有する第2の入射面と、
前記第1の入射面から入射した光を前記出射面に向けて反射する第1の反射面と、
前記第2の入射面から入射した光を前記出射面に向けて反射する第2の反射面と
を有し、
前記第2の入射面は、前記第2の光源から出射された光を上下に2以上の光路に分割する2以上の光路分割面を有し、
前記第2の光源は、水平方向に配列された複数の第2の光源であり、
前記複数の第2の光源のうち、個々の第2の光源から出射された光が、前記2以上の光路を進んで前記出射面から出射され、照射面において上下に連続した配光パターンを形成する
前照灯装置。
【請求項2】
前記2以上の光路分割面は、第1の光路分割面と第2の光路分割面とを有し、
前記第1の光路分割面及び前記第2の光路分割面のうち、前記第1の光路分割面は前記出射面の焦点位置により近い
請求項
1に記載の前照灯装置。
【請求項3】
前記第1の光源と前記投射光学部材の前記第1の入射面との間に、前記第1の光源から出射された光を前記第1の反射面に向かって集光する集光光学素子を備える
請求項1
に記載の前照灯装置。
【請求項4】
前記投射光学部材は、前記第1の光源から出射された光を前記第1の反射面に向かって集光する集光部を有する
請求項1から
3までの何れか1項に記載の前照灯装置。
【請求項5】
前記投射光学部材は、前記第1の反射面と前記第2の反射面との間に、ロービームの配光を形成するためのカットオフライン形成部を有する
請求項1から
3までの何れか1項に記載の前照灯装置。
【請求項6】
前記カットオフライン形成部は、前記出射面の焦点位置に近接した位置に配置されている
請求項
5に記載の前照灯装置。
【請求項7】
前記第1の反射面と前記第2の反射面とは、稜線を挟んで隣接しており、
前記稜線が前記カットオフライン形成部を構成する
請求項
5に記載の前照灯装置。
【請求項8】
前記第2の反射面は、正のパワーを有する
請求項1から
3までの何れか1項に記載の前照灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロービーム及びハイビーム機能を有する前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロービーム用の光源とハイビーム用の光源とを備えた前照灯装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された前照灯装置は、投影レンズと、ロービーム用の光源と、ハイビーム用の光源と、リフレクタと、シェードとを備えている。リフレクタは、ロービーム用の光源から出射された光を投影レンズに向けて反射する。
【0003】
リフレクタで反射された光は、シェードの上面で反射されて投影レンズに入射する。その際、光の一部がシェードによって遮断されてカットオフラインを形成する。また、ハイビーム用の光源から出射された光は、シェードの下面で反射されて投影レンズに入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2016/021698(例えば、
図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された前照灯装置では、投影レンズ、リフレクタ及びシェードがそれぞれ別々の部材として構成されている。そのため、組立誤差により各部材の相互の位置精度が低下すると、リフレクタあるいは投影レンズに取り込まれない光が発生し、光利用効率が低下する。この課題は、前照灯装置の小型化が進むと、より顕著になる。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ロービーム及びハイビームを照射可能で、光利用効率が高く、小型化に適した前照灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の前照灯装置は、ロービーム用の第1の光源と、ハイビーム用の第2の光源と、 第1の光源から出射された光及び第2の光源から出射された光が入射し、これらの光を出射面から出射する投射光学部材とを備える。投射光学部材は、第1の光源から光が入射する第1の入射面と、第2の光源から光が入射し、集光部を有する第2の入射面と、第1の入射面から入射した光を出射面に向けて反射する第1の反射面と、第2の入射面から入射した光を出射面に向けて反射する第2の反射面とを有する。第2の入射面は、第2の光源から出射された光を上下に2以上の光路に分割する2以上の光路分割面を有する。第2の光源は、水平方向に配列された複数の第2の光源であり、当該複数の第2の光源のうち、個々の第2の光源から出射された光が、当該2以上の光路を進んで出射面から出射され、照射面において上下に連続した配光パターンを形成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ロービーム及びハイビームの照射が可能で、光利用効率が高く、小型化に適した前照灯装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の前照灯装置の構成を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1の前照灯装置の構成を示す背面図である。
【
図3】(A)及び(B)は、実施の形態1の集光光学素子の構成例を示す側面図である。
【
図4】実施の形態1の前照灯装置の投射光学部材を示す側面図である。
【
図5】(A)及び(B)は、実施の形態1の投射光学部材のハイビーム用の光の入射面を含む部分を示す図である。
【
図6】実施の形態1の前照灯装置により形成される自動二輪車用の配光パターンを示す図である。
【
図7】四輪車用の配光パターンを形成するカットオフライン形成部を備えた、実施の形態1の前照灯装置の一例を示す背面図である。
【
図8】
図7の前照灯装置により形成される四輪車用の配光パターンを示す図である。
【
図10】実施の形態2の前照灯装置の構成を示す側面図である。
【
図11】実施の形態2の投射光学部材のハイビーム用の光の入射面を含む部分を示す図である。
【
図12】実施の形態2の投射光学部材内のロービーム用及びハイビーム用の光路を示す図である。
【
図13】(A)及び(B)は、実施の形態2の前照灯装置により形成される配光パターンの例を示す図である。
【
図14】実施の形態2のハイビーム用の光源及び投射光学部材の入射面を示す斜視図である。
【
図15】実施の形態1,2の投射光学部材の出射面の形状の例を示す図である。
【
図16】実施の形態1,2の光源の取付構造の例を示す側面図である。
【
図17】実施の形態1,2の投射光学部材の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る前照灯装置を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
【0011】
車両の前照灯装置は、道路交通規則などによって定められる配光パターンを満たさなければならない。「配光」とは、光源の空間に対する光度分布をいう。つまり、配光は、光源から出る光の空間的分布である。また、「光度」とは、発光体の放つ光の強さの程度を示すものである。光度は、ある方向の微小な立体角内を通る光束を、その立体角で割ったものである。
【0012】
「配光パターン」とは、光源から放射される光の方向に起因する光束の形状及び光の強度分布を示す。「配光パターン」は、照射面上での照度分布パターンの意味としても使用される。「照度」とは、平面状の物体に照射された光の明るさを表す物理量のことであり、単位面積当たりに照射された光束に等しい。
【0013】
道路交通規則において自動車用ロービームに関して規定された配光パターンは、上下方向が狭い横長の形状を有する。対向車を眩惑させないために、配光パターンの上側の境界線であるカットオフラインは明瞭であることが要求される。つまり、カットオフラインより上側(すなわち、配光パターンの外側)が暗く、カットオフラインより下側(すなわち、配光パターンの内側)が明るいこと、すなわち、カットオフラインが明瞭であることが要求される。
【0014】
ここで、「カットオフライン」とは、前照灯装置から出射された光を壁又はスクリーンに照射した場合にできる光の明暗の区切り線のことで、配光パターンの上側の区切り線のことである。つまり、「カットオフライン」とは、配光パターンの上側の光の明暗の境界線のことである。つまり、カットオフラインは、配光パターン内における上側の光の明るい領域と配光パターン外における光の暗い領域との間の境界線のことである。カットオフラインは、車両がすれ違う際に前照灯装置から出射される光の照射方向を調節する機能を説明するために用いられる用語である。
【0015】
そして、カットオフラインより下側の領域、すなわち、配光パターンの内側であってカットオフラインより少し下の領域が最大照度の領域となることが要求される。この最大照度の領域は、「高照度領域」と呼ばれる。ここで、「カットオフラインより下側の領域」とは、配光パターン内における上部の領域を意味し、前照灯装置では遠方を照射する部分に相当する。このような明瞭なカットオフラインを実現するためには、カットオフラインに大きな色収差及びぼやけなどが生じないことが望ましい。「カットオフラインにぼやけが生じる」とは、カットオフラインが不鮮明になることである。
【0016】
カットオフラインの形状は各国の法規によって定められている。一般に、自動車用の前照灯装置のロービームでは、カットオフラインは立ち上がりラインを有する段違い形状を有する。
【0017】
また、前照灯装置は自動車の前面に配置されるため意匠性が重要である。特に、従来の前照灯装置は円形の開口を有するものが多くみられたが、更に意匠の自由度を高めた前照灯装置が求められている。例えば、車両の垂直方向に縦長の開口(すなわち、光を出射する出射面)を有する前照灯装置は、これまでにほとんど見られず、意匠性を高めることができると考えられる。
【0018】
本開示の前照灯装置は、車両の前照灯装置のロービーム又はハイビームなどに適用される。また、本開示の前照灯装置は、自動二輪車用の前照灯装置のロービーム又はハイビームなどにも適用される。また、本開示の前照灯装置は、三輪又は四輪などのその他の車両の前照灯装置のロービーム又はハイビームなどにも適用される。
【0019】
以下では、自動二輪車用及び四輪車用に適用される前照灯のロービーム及びハイビームの配光パターンを形成する場合を例として説明する。自動二輪車用の前照灯のロービームの配光パターンは、カットオフラインが車両の左右方向に伸びており、配光パターンの内側であってカットオフラインの少し下側の領域が最も明るい。また、四輪車用の前照灯のロービームの配光パターンは、対向車両や前方の車両に与える眩輝を考慮して、配光パターンに複数の段差を有するものが、欧州のECE(Economic
Commission for Europe)によって定義されている。
【0020】
前照灯のハイビームは、車両の左右方向に伸びており、水平線の中央領域が最も明るい。これは自動二輪車用及び四輪車用ともに同様である。
【0021】
さらに、前照灯のハイビームには複数の光源、又は、複数の前照灯モジュールを用いて選択的に複数箇所を動的に照射する技術が提案されている。本開示に係る前照灯装置はそのような用途の前照灯装置にも適用することができる。
【0022】
三輪の車両としては、例えば、ジャイロと呼ばれる自動三輪車が挙げられる。「ジャイロと呼ばれる自動三輪車」とは、前輪が一輪で、後輪が一軸二輪の三輪でできたスクーターである。日本では、自動三輪車は原動機付自転車に該当する。自動三輪車は、車体中央付近に回転軸を持ち、前輪及び運転席を含む車体のほとんどを左右方向に傾けることができる。この機構によって、自動三輪車は、自動二輪車と同様に旋回の際に内側へ重心を移動することができる。
【0023】
以下の実施の形態の説明では、説明を容易にするためにXYZ座標系の座標軸及び座標平面を用いる。車両の左右方向をX軸方向とする。車両の前方を向いたときの右側を+X軸方向とし、車両の前方を向いたときの左側を-X軸方向とする。「前方」とは、車両の前進時の進行方向をいう。つまり、「前方」とは、前照灯が光を照射する方向である。また、車両の上下方向をY軸方向とする。上側を+Y軸方向とし、下側を-Y軸方向とする。「上側」とは空の方向であり、「下側」とは地面(すなわち、路面)の方向である。また、車両の進行方向をZ軸方向とする。車両の前進時の進行方向を+Z軸方向とし、その反対の方向を-Z軸方向とする。+Z軸方向を「前方」と呼び、-Z軸方向を「後方」と呼ぶ。+Z軸方向は、車両に搭載された前照灯装置が光を照射する方向である。
【0024】
また、ZX平面は、路面に平行な面である。通常、路面は「水平面」とみなせる。このため、ZX平面は、「水平面」とも呼ぶ。「水平面」とは、重力の方向に直交する平面である。しかし、路面は、車両の走行方向に対して傾くことがある。つまり、登り坂又は下り坂などでは、路面は水平面に対して傾く。これらの場合には、「水平面」は、路面に平行な面とみなす。つまり、この場合には、「水平面」は、重力の方向に対して垂直な平面ではないものとみなす。
【0025】
一方、一般的な路面が車両の走行方向に対して左右方向に傾いていることは稀である。「左右方向」とは、走路の幅方向である。これらの場合には、「水平面」は、重力方向に対して直交する面として考える。例えば、路面が左右方向に傾き、車両が路面の左右方向に対して垂直であったとしても、車両が「水平面」に対して左右方向に傾いた状態と同等として考える。以下では、理解を容易にするために、「水平面」は、重力方向に垂直は平面とみなして説明を行う。つまり、ZX平面は、重力方向に垂直は平面とみなして説明を行う。
【0026】
《実施の形態1》
〈前照灯装置100〉
図1は、実施の形態1の前照灯装置100の構成例を示す側面図である。
図2は、実施の形態1の前照灯装置100を-Z軸側から見た図、すなわち背面図である。前照灯装置100は、車両用の装置である。実施の形態1に係る前照灯装置100は、第1の光源としてのロービーム用の光源1と、第2の光源としてのハイビーム用の光源2と、投射光学部材3とを備える。
【0027】
〈光源1〉
光源1は、白熱電球、ハロゲンランプ、又は蛍光ランプなどのランプ光源であってもよく、発光ダイオード(Light Emitting Diode(LED))又はレーザーダイオード(Laser Diode(LD))などの半導体光源であってもよい。二酸化炭素(CO2)の排出と燃料の消費を抑えるといった環境への負荷を軽減する観点から、半導体光源が望ましい。半導体光源は、ランプ光源に比べて発光効率が高い観点でも望ましい。また、半導体光源は、ランプ光源に比べて指向性が高く、光学系を小型化及び軽量化できる観点でも望ましい。
【0028】
光源1は、投射光学部材3の光軸C3に対して上方(すなわち+Y軸方向)に位置している。光源1は、第1の光としてのロービーム用の光を発する。光源1は、投射光学部材3に向けてロービーム用の光を発する。光源1の光軸C1は、Y軸方向に対して角度αだけ傾斜している。
【0029】
図1及び
図2に示した例では、前照灯装置100は、1つの光源1を有している。しかしながら、前照灯装置100は、X軸方向に並ぶ複数の光源1を有していてもよい。
【0030】
〈光源2〉
光源2は、白熱電球、ハロゲンランプ、又は蛍光ランプなどのランプ光源であってもよく、LED又はLDなどの半導体光源であってもよい。光源1と同様、環境への負荷を軽減する観点から、半導体光源が望ましい。半導体光源は、ランプ光源に比べて発光効率が高い観点でも望ましく、また、ランプ光源に比べて指向性が高く、光学系を小型化及び軽量化できる観点でも望ましい。
【0031】
光源2は、光源1に対して下方(すなわち-Y軸方向)に位置している。また、光源2は、投射光学部材3の光軸C3に対して下方に位置している。光源2は、第2の光としてのハイビーム用の光を発する。光源2は、ハイビーム用の光を投射光学部材3に向けて出射する。光源2の光軸C2は、Y軸方向に対して角度βだけ傾斜している。
【0032】
図2に示すように、複数の光源2がX軸方向に配列されている。それぞれの光源2は、個別に点灯可能である。光源2の数は、ここでは17個である。但し、光源2の数は17個より多くても少なくても良い。また、これらの光源2は、基板21に実装されている。X軸方向に配列された複数の光源2をまとめて、光源部20と称する。
【0033】
〈集光光学素子12〉
前照灯装置100は、集光光学系としての集光光学素子12を備えていてもよい。集光光学素子12は、集光機能を有する光学素子であり、光源1から出射された光を投射光学部材3の後述する反射面33に集光する。これにより、光源1から等方的に放射される光を効率良く利用することができ、前照灯装置100の光利用効率が向上する。
【0034】
集光光学素子12は、例えば、透明樹脂、光透過性を有する硝子又はシリコーン(silicone)材で製作されていることが好ましい。光利用効率を高めるために、集光光学素子12の材料は、光透過性の高い材料であることが好ましい。また、集光光学素子12が光源1の直後に配置されることから、耐熱性に優れた材料が好ましい。
【0035】
図3(A)は、集光光学素子12の一構成例を示す図である。
図3(A)に示した集光光学素子12は、入射面12a、入射面12b、反射面12c、出射面12d及び出射面12eを有する。集光光学素子12は、光源1の出射側、すなわち光源1から光が発せられる側に配置されている。集光光学素子12の光軸は、光源1の光軸C1と共通である。
【0036】
集光光学素子12の説明では、理解を容易にするために、XYZ直交座標系とは異なるX
1Y
1Z
1直交座標系を用いる。X
1Y
1Z
1直交座標系は、XYZ直交座標系を+X軸側から見て、X軸を回転中心として時計回りに角度α(
図1)だけ回転させた座標系である。集光光学素子12の光軸C1は、Z
1軸に平行である。
【0037】
入射面12a,12bは、光源1からの光が入射する位置に配置されている。入射面12aは、光軸C1を中心とする回転体形状を有する。入射面12aは、例えば、光軸C1に直交する断面形状が円形であり、その円の直径が+Z1軸方向に小さくなる筒状である。入射面12aは、正のパワーを有する。
【0038】
入射面12bは、入射面12aの+Z1軸方向の端部の内周に接続され、光軸C1上に位置する。入射面12bは、-Z1軸方向に凸となる曲面であり、正のパワーを有する。光源1から出射された光のうち、出射角度の大きい光線は入射面12aに入射し、出射角度の小さい光線は入射面12bに入射する。
【0039】
反射面12cは、入射面12a,12bよりも外周側に配置されている。反射面12cは、入射面12aの-Z1軸方向の端部から、入射面12aの+Z1軸方向の端部よりもさらに+Z1軸方向に延在している。すなわち、反射面12cは、入射面12aで屈折した光が入射する位置に配置されている。反射面12cは、例えば、光軸C1に直交する断面形状が円形であり、その円の直径が+Z1軸方向に大きくなる筒状である。反射面12cは、正のパワーを有する。
【0040】
出射面12dは、反射面12cの+Z1軸方向の端部に接続されている。出射面12dは、光軸C1に直交する平面である。出射面12dは、例えば、光軸C1を中心とする環状である。
【0041】
出射面12eは、光軸C1上に配置されている。出射面12eは、+Z1軸方向に凸となる曲面であり、正のパワーを有する。出射面12eの外周は、例えば円形状を有し、出射面12dの内周に接続されている。
【0042】
上記の通り、光源1から出射された光のうち、出射角度の大きい光線は入射面12aに入射し、出射角度の小さい光線は入射面12bに入射する。入射面12aに入射した光線を光線R11とし、入射面12bに入射した光線を光線R12とする。
【0043】
光線R11は、入射面12aでの屈折作用を受けて反射面12cに向かい、反射面12cで反射された後、出射面12dから出射される。一方、光線R12は、入射面12bでの屈折作用を受けて出射面12eに向かい、出射面12eから出射される。
【0044】
これら入射面12a,12b、反射面12c及び出射面12eの作用により、光源1から出射された光を、以下で説明する投射光学部材3内で集光させることができる。
【0045】
ここでは入射面12a,12b、反射面12c及び出射面12d,12eの形状について具体的に説明したが、ここで説明した形状はあくまでも一例であり、これらの形状に限定されるものではない。例えば、出射面12dの面形状は、正のパワーを有する曲面であってもよい。また、入射面12a、入射面12b、反射面12c及び出射面12eは、正のパワーを有する曲面であるが、平面であってもよく、負のパワーを有する曲面であってもよい。
【0046】
また、
図3(A)に示した集光光学素子12の代わりに、
図3(B)に示した集光光学素子120を用いてもよい。
図3(B)に示した集光光学素子120は、正のパワーを有する光学レンズで構成されている。集光光学素子120は、入射面121と出射面122とを有する。
【0047】
例えば、入射面121は-Z1軸方向に凸となる曲面で構成され、出射面122は+Z1軸方向に凸となる曲面で構成される。入射面121の中心及び出射面122の中心は、光軸C1上に位置する。
【0048】
集光光学素子120を正のパワーを有する光学レンズで構成することにより、光源1から出射された光を集光し、出射することができる。集光光学素子120から出射される光線を、光線R13とする。集光光学素子120は、ここでは、正のパワーを有する単一の光学レンズで構成したが、各光学部材の合計が正のパワーとなるように組み合わせた複数の光学部材で構成してもよい。
【0049】
〈投射光学部材3〉
図4は、実施の形態1の光源1、光源2、集光光学素子12、及び投射光学部材3を示す側面図である。
図4に示すように、投射光学部材3には、光源1及び光源2から出射された光が入射する。投射光学部材3は、入射した光を前方(すなわち+Z軸方向)に出射する。また、投射光学部材3は、導光された光を後述する照明光として出射する機能を有する。
【0050】
投射光学部材3は、例えば、透明樹脂、光透過性の硝子又はシリコーン材などで形成されていることが望ましい。また、実施の形態1の投射光学部材3は、例えば、内部が光透過性の屈折材で満たされている。光利用効率を高めるために、投射光学部材3の材料は、光透過性の高い材料であることが好ましい。また、投射光学部材3は光源2の直後に配置されることから、耐熱性に優れた材料が好ましい。
【0051】
投射光学部材3は、第1の入射面としての入射面31と、第2の入射面としての入射面32と、第1の反射面としての反射面33と、第2の反射面としての反射面34と、カットオフライン形成部35と、出射面36とを有する。
【0052】
第1の入射面としての入射面31は、集光光学素子12の+Z
1軸方向に位置し、集光光学素子12の出射面12d,12eに対向している。すなわち、入射面31は、ロービーム用の光源1から発せられ、集光光学素子12を通過した光線R1が入射する位置に形成されている。光線R1は、
図3(A)に示した光線R11,R12を合わせたもの、又は
図3(B)に示した光線R13である。
【0053】
入射面31は、例えば、光源1の光軸C1に直交する平面である。但し、入射面31は、曲面で構成されていてもよい。入射面31は、また、投射光学部材3の光軸C3に対して上方(すなわち+Y軸方向)に位置している。
【0054】
第2の入射面としての入射面32は、ハイビーム用の光源2に対向するように配置されている。入射面32は、光源2の光軸C2上に形成されている。すなわち、入射面32は、光源2から出射された光線R2が入射する位置に形成されている。入射面32は、また、投射光学部材3の光軸C3に対して下方(すなわち-Y軸方向)に位置している。また、入射面32の後端部(すなわち-Z軸方向の端部)と、後述する反射面34の後端部とは、稜線Eで接続されている。
【0055】
前照灯装置100のハイビームは、遠方を明るく照明するために高い光度が要求される。そのため、光源2から出射された光を、効率よく反射面34に向かって集光することが望ましい。
【0056】
図5(A)は、光源2と投射光学部材3の入射面32を含む部分とを示す図である。入射面32は、正のパワーを有する曲面で構成されている。より具体的には、入射面32は、光源2側に凸となる曲面で構成されている。入射面32には、光源2から入射した光線R2が入射する。入射面32は、入射した光線R2を反射面34に向かって集光する。
【0057】
すなわち、入射面32は、光源2からの光を集光する作用を有する。言い換えると、入射面32は、集光部を有する。入射面32の集光作用により、より多くのハイビーム用の光を反射面34に集めることができ、光度の高い配光パターンを形成することができる。なお、入射面32は、ここでは光源2側に凸となる曲面であるが、このような構成に限らず、正のパワーを有してればよい。また、入射面32は、集光面又は集光部とも称する。
【0058】
図4に示すように、第1の反射面としての反射面33は、入射面31の下方(すなわち-Y軸方向)に位置している。実施の形態1では、反射面33の下端部(すなわち-Z軸方向の端部)は、入射面31の後端部(すなわち-Y軸方向の端部)に接続している。反射面33は、入射面31からの光を出射面36に向けて前方(すなわち+Z軸方向)に反射する。
【0059】
反射面33は、概ね+Y軸方向を向く面である。つまり、反射面33は、ZX面に対して角度γ傾いた面である。角度γは0度であってもよいが、光利用効率の向上という観点から、0度より大きい方が望ましい。反射面33は、
図1では平面で示されている。しかしながら、反射面33は平面に限らず、曲面形状、又は複数の平面が連結された多面形状であってもよい。
【0060】
第2の反射面としての反射面34は、反射面33の下方(すなわち-Y軸方向)に隣接して配置されている。反射面34は、入射面32から入射した光が入射する位置に位置している。反射面33と反射面34との間に、カットオフライン形成部35が形成される。
【0061】
また、反射面34は、入射面32の上方(すなわち+Y軸方向)に配置されている。反射面34と入射面32との間には、稜線Eが形成されている。但し、このような構成に限らず、反射面34と入射面32とが離れていても良い。反射面34は、入射面32からの光を前方に反射する。
【0062】
反射面34は、概ね+Y軸方向を向く面である。反射面34は、ZX面に対して角度δ傾いた面である。角度δは0度であってもよいが、光利用効率の向上という観点から、0度より大きい方が望ましい。
【0063】
これらの反射面33,34はいずれも、金属などを用いたミラー蒸着により形成されたミラー面であってもよいが、ミラー蒸着をせずに全反射面として機能させることが望ましい。全反射面はミラー面よりも反射率が高く、光利用効率の向上に寄与するためである。また、ミラー蒸着の工程を無くすことで、投射光学部材3の製造工程を簡素化することができ、製造コストを低減できるためである。実施の形態1では、反射面33,34への光線の入射角が大きいため、ミラー蒸着をしなくても反射面33,34を全反射面とすることができる。
【0064】
また、入射面32から入射した光を反射する反射面34は、
図4及び
図5(A)などでは平面で示されているが、曲面であってもよい。例えば、
図5(B)に示すように、反射面34の代わりに、正のパワーを有する曲面で構成された反射面34Aを用いてもよい。
【0065】
このように構成すれば、入射面32の正のパワーと反射面34Aの正のパワーとを足し合わせることにより、より多くのハイビーム用の光を出射面36に集めることができる。すなわち、光度の高い配光パターンを形成することができる。
【0066】
カットオフライン形成部35は、反射面33と反射面34との間に形成される稜線である。カットオフライン形成部35は、X軸方向に伸びる直線で構成される。また、カットオフライン形成部35は、Z軸方向において出射面36の焦点位置Fに近接した位置にある。そのため、カットオフライン形成部35上で各光源1,2によって形成される照度分布が、出射面36により反転して投影され、前照灯装置100の配光パターンとなる。
【0067】
出射面36は、投射光学部材3の+Z軸方向の端部に設けられている。出射面36は、正のパワーを有する曲面である。より具体的には、出射面36は、+Z軸方向に凸となる曲面である。出射面36は、反射面33,34で反射された光線R1,R2を前方(すなわち+Z軸方向)の照射面4に出射する。投射光学部材3の光軸C3は、出射面36の面頂点を通る法線であり、ここではZ軸に平行である。
【0068】
照射面4(
図1)は、車両前方の規定位置に設定される仮想の面である。照射面4は、XY平面に平行な面すなわち鉛直面である。車両前方の規定位置は、前照灯装置の光度又は照度を計測する位置であり、道路交通規則などで規定されている。例えば、欧州のUNECE(United Nations Economic Commission for Europe)が定める自動車用の前照灯装置の光度の計測位置は、光源から25mの位置である。日本の日本工業標準調査会(JIS)が定める光度の計測位置は、光源から10mの位置である。
【0069】
なお、
図1では、図示の便宜上、前照灯装置100から照射面4までの距離を短く示しているが、実際の前照灯装置100から照射面4までの距離は、
図1に示したよりも長い。出射面36の光軸C3よりも下側から出射された光線は、照射面4上では上側に照射される。また、出射面36の光軸C3よりも上側から出射された光線は、照射面4では下側に照射される。
【0070】
〈作用〉
このように構成された前照灯装置100において、光源1から出射されたロービーム用の光線R1は、投射光学部材3の入射面31に入射し、反射面33で前方に反射され、出射面36から照射面4に照射される。また、光源2から出射されたハイビーム用の光線R2は、投射光学部材3の入射面32に入射し、反射面34で前方に反射され、出射面36から照射面4に照射される。
【0071】
例えば、従来の前照灯装置では、投影レンズ、リフレクタ、及びシェード等の部品がそれぞれ別部材として構成されている。そのため、組立誤差によって各部材の相互の位置精度が低下すると、迷光が生じて、光利用効率の低下が生じる。これに対し、実施の形態1では、投射光学部材3が、入射面31,32、反射面33,34及び出射面36を一体に有しているため、各部の相対位置が高精度に維持される。そのため、組立誤差による迷光の発生を抑制し、光利用効率を向上することができる。
【0072】
また、光源2から出射された光を、集光作用を有する入射面32によって反射面34に向かって集光することにより、光源2から出射されたハイビーム用の光の利用効率を向上し、ハイビームの高い光度を得ることができる。
【0073】
さらに、光源1から出射された光を、集光光学素子12によって反射面33に向かって集光することにより、光源1から出射されたロービーム用の光の利用効率を向上し、ロービームの高い光度を得ることができる。
【0074】
また、投射光学部材3の入射面32が集光作用を発揮するため、光源2と投射光学部材3との間に別部材として集光素子を配置する必要がない。そのため、部品点数を増加させる必要がなく、前照灯装置100の小型化及び製造コストの低減が可能になる。
【0075】
図6は、前照灯装置100によって照射面4上に形成される配光パターン40を示す図である。
図6において、H線及びV線は、前照灯装置の法規で規定されるHV点を通る直線である。HV点は、照射面4と投射光学部材3の光軸C3との交点である。H線は水平方向の直線であり、水平線とも称する。V線は鉛直方向の直線であり、鉛直線とも称する。
【0076】
ロービーム用の光源1から出射され、集光光学素子12、入射面31及び反射面33を経て出射面36から出射された光線R1により、照射面4上にはロービーム用の配光パターン41が形成される。配光パターン41には、カットオフライン形成部35により、カットオフラインCLが形成される。
【0077】
また、ハイビーム用の光源2から出射され、入射面32及び反射面33を経て出射面36から出射された光線R2により、照射面4上にはハイビーム用の配光パターン42が形成される。ハイビーム用の配光パターン42は、ロービーム用の配光パターン41の上部に位置する。
【0078】
実施の形態1では、
図2に示したように、複数の光源2がX軸方向に配列され、出射面36の焦点位置Fに近接した位置に配置されている。この場合、配光パターン42は、光源2の像が拡大投影された配光パターン421がX軸方向に配列されたものとなる。複数の光源2を選択的に点灯及び消灯することで、動的に所望の照射箇所に光を照射することが可能になる。
【0079】
実施の形態1では、カットオフライン形成部35は反射面33と反射面34との間の稜線として形成されているが、これには限定されない。例えば、反射面33と反射面34とを離して形成してもよい。
【0080】
但し、上述した前照灯装置の法規では、配光パターンのカットオフラインの周辺により高い照度値が必要される。カットオフライン形成部35を反射面33と反射面34との間の稜線として形成すれば、配光パターンのカットオフラインの周辺での照度値を高めることができるため、特に望ましい。
【0081】
図6に示したように水平方向に一直線形状のカットオフラインを有する配光パターンは、主に自動二輪車用の配光に適している。一方、四輪車用の配光は、前照灯装置の法規適合性の観点からカットオフラインに段違い形状を有する配光パターンが望ましい。実施の形態1では、投射光学部材3のカットオフライン形成部35の形状を変更することで、このような段違い形状の配光パターンに容易に対応することができる。
【0082】
図7は、四輪車用の配光パターンを形成するカットオフライン形成部37を有する前照灯装置100を-Z軸側から見た図、すなわち背面図である。カットオフライン形成部37は、稜線部37aと、稜線部37bと、稜線部37cとからなる段違い形状を有する。
【0083】
稜線部37a,37b,37cは、+X軸方向の端部、X軸方向の中央部、及び-X軸方向の端部に位置している。また、稜線部37a,37b,37cのうち、稜線部37aの高さ(すなわちY軸方向位置)が最も低く、稜線部37bの高さは最も高い。また、稜線部37aと稜線部37bとは傾斜部を介して接続され、稜線部37bと稜線部37cとは傾斜部を介して接続されている。
【0084】
図8は、
図7に示した前照灯装置100によって照射面4上に形成される配光パターン40を示す図である。照射面4上には、カットオフライン形成部37の段違い形状が反転されて投影される。そのため、照射面4上に形成される配光パターンのカットオフラインCLは、稜線部37a,37b,37cに対向するライン部分CL1,CL2,CL3を有する。ライン部分CL1は、ライン部分CL3よりも段下がりに形成される。ライン部分CL1は対向車線側に位置し、ライン部分CL3は自車線側に位置する。
【0085】
なお、
図8に示したカットオフラインCLの形状はあくまでも一例である。カットオフライン形成部37の段違い形状に応じて、所望の段違い形状を有するカットオフラインCLを有する配光パターンを得ることができる。
【0086】
〈実施の形態1の効果〉
以上説明したように、実施の形態1の前照灯装置100は、ロービーム用の光を出射する光源1と、ハイビーム用の光を出射する光源2と、光源1,2からの光を投射する投射光学部材3とを備える。投射光学部材3は、光源1からの光が入射する入射面31と、光源2からの光が入射する入射面32と、入射面31から入射した光を反射する反射面33と、入射面32から入射した光を反射する反射面34と、反射面33で反射された光及び反射面34で反射された光を出射する出射面36とを有する。
【0087】
投射光学部材3が、入射面31、入射面32、反射面33、反射面34及び出射面36を有するため、各部の相互の位置精度を維持することができ、迷光の発生を抑制して高い光利用効率を実現することができる。また、前照灯装置100を小型化した場合でも、投射光学部材3の各部の相互の位置精度が維持され、高い光利用効率が得られる。すなわち、ロービーム及びハイビームを照射可能で、光利用効率が高く、小型化に適した前照灯装置100を実現することができる。
【0088】
加えて、投射光学部材3の入射面32が集光部を有する(すなわち光を集光する作用を有する)ため、部品点数を増加させずにハイビーム用の光の利用効率を向上し、ハイビームの高い光度を得ることができる。
【0089】
<<変形例>>
実施の形態1では、前照灯装置100が投射光学部材3と集光光学素子12とを別々に有する場合について説明した。しかしながら、投射光学部材3と集光光学素子12とが一体的に構成されていてもよい。
【0090】
図9は、光源1から出射された光を集光する作用を有する集光部301を一体的に備えた投射光学部材3Aを示す。投射光学部材3Aは、入射面12a,12b及び反射面12cを有する集光部301を有する。投射光学部材30は、また、入射面32、反射面33,34、カットオフライン形成部35及び出射面36を有する。
【0091】
投射光学部材3Aの集光部301の入射面12a,12b及び反射面12cの構成は、実施の形態1で説明した集光光学素子12の入射面12a,12b及び反射面12cと同様である。集光部301は、光源1から出射された光を、投射光学部材3Aの反射面33に向かって集光する。投射光学部材3Aの入射面32、反射面33,34、カットオフライン形成部35及び出射面36の構成は、実施の形態1で説明した通りである。
【0092】
ロービーム用の光源1から出射された光のうち、出射角度の大きい光線は集光部301の入射面12aに入射し、出射角度の小さい光線は入射面12bに入射する。光源1から入射面12aに入射した光線R11は、反射面12cで反射されて、反射面33に向かう。一方、光源1から入射面12aに入射した光線R12は、入射面12bを通過して反射面33に向かう。
【0093】
光線R11,R12を合わせた光線R1は、反射面33に入射し、反射面33で前方(すなわち+Z軸方向)に反射される。反射面33で反射された光線R1は、出射面36から照射面4に照射される。
【0094】
なお、ハイビーム用の光源2から出射された光線R2は、実施の形態1で説明したように、入射面32に入射して反射面34で反射され、出射面36から照射面4に照射される。入射面32が集光作用を有することは、実施の形態1で説明した通りである。
【0095】
変形例の投射光学部材3Aは、集光部301を一体に備えているため、集光光学系の設計自由度は低下するものの、各入射面及び各反射面の相対的な位置精度を向上することができ、また、部品点数が少なくなるため前照灯装置100をより小型化することができる。
【0096】
<<実施の形態2>>
〈前照灯装置200〉
上述した実施の形態1では、ハイビーム用の光源2の像を照射面4に向かって投影しているため、上方向(すなわち+Y軸方向)に配光が狭くなる傾向がある。前照灯装置100の法規適合性の観点では問題ではないが、視認性の更なる向上という観点では、上方向にも多くの光を照射できるハイビーム機能を備えることが望ましい。
【0097】
図10は、実施の形態2の前照灯装置200の構成を示す図である。実施の形態2の前照灯装置200は、ロービーム用の光源1と、ハイビーム用の光源2と、集光光学素子12と、投射光学部材30とを有する。実施の形態2の前照灯装置200は、投射光学部材30が、光源2からの光が入射する入射面38a,38bを有する点において、実施の形態1の前照灯装置100と異なる。
【0098】
〈投射光学部材30〉
図11は、光源2と投射光学部材30の入射面38a,38bを含む部分とを示す図である。投射光学部材30には、光源2に対向するように、第1の光路分割面としての入射面38aが形成されている。入射面38aの下方(-Y軸方向)に隣接して、第2の光路分割面としての入射面38bが形成されている。
【0099】
入射面38a,38bのうち、入射面38aは出射面36の焦点位置F(
図12)に近く、入射面38bは焦点位置Fから離れて形成されている。
【0100】
入射面38aは、正のパワーを有し、光源2から入射した光を反射面34に向かって集光する。入射面38aは、例えば、光源2側に凸となる曲面形状を有する。
【0101】
入射面38bは、正のパワーを有し、光源2から入射した光を出射面36に向かって集光する。入射面38bは、例えば、光源2側に凸となる曲面形状を有する。
【0102】
入射面38aと入射面38bとの間には、境界部Dが形成される。境界部Dは、稜線又は曲面部である。光源2から出射された光のうち、境界部Dよりも+Y軸方向に進んだ光は入射面38aに入射し、境界部Dよりも-Y軸方向に進んだ光は入射面38bに入射する。
【0103】
入射面38aの+Y軸方向には、実施の形態1で説明した反射面34が形成されている。反射面34は、入射面38aから入射した光が入射する位置に形成されている。入射面38aと反射面34とは、稜線Eで接続されている。反射面34は、入射面38aからの光を出射面36に向けて前方(すなわち+Z軸方向)に反射する。反射面34は、
図11では平面であるが、
図5(B)に示した反射面34Aのように正のパワーを有していてもよい。
【0104】
反射面34の+Y軸方向には、実施の形態1で説明した反射面33が形成されている。反射面33と反射面34との間には、カットオフライン形成部35が形成される。カットオフライン形成部35は、
図2に示したように直線状であってもよく、
図7に示したように段違い形状を有していてもよい。
【0105】
図12は、ハイビーム用の光源2から出射された光の光路を説明するための図である。光源2から出射された光のうち、入射面38aに入射した光線R21は、反射面34Aで前方に反射され、焦点位置Fに近い光路を通過し、出射面36から出射される。出射面36から出射された光線R21は、照射面4において水平線を含む領域に照射される。
【0106】
一方、光源2から出射された光のうち、入射面38bに入射した光線R22は、焦点位置Fから下方(すなわち-Y軸方向)に離れた光路を通過し、出射面36から出射される。出射面36から出射された光線R22は、照射面4において水平線から上方(すなわち+Y軸方向)に離れた領域に照射される。
【0107】
なお、ロービーム用の光源1から出射された光線R1は、実施の形態1と同様、投射光学部材30の入射面31から入射し、反射面33で前方に反射されて、出射面36から照射面4に照射される。
【0108】
図13(A)は、実施の形態2に係る前照灯装置200で形成される配光パターンを示す図である。なお、カットオフライン形成部35は、
図7に示した段違い形状を有しているものとする。
【0109】
光源2から入射面38aに入射した光線R21は、反射面34で反射され、焦点位置Fに近い光路を通過して出射面36から出射され、照射面4においてカットオフラインCLの上方の配光パターン42aを形成する。
【0110】
また、光源2から入射面38bに入射した光線R22は、焦点位置Fから離れた光路を通過して出射面36から出射され、照射面4において、配光パターン42aの上方の配光パターン42bを形成する。配光パターン42aと配光パターン42bとは上下方向に連続し、上下方向に長い配光パターンを形成する。
【0111】
ロービーム用の光源1から出射された光によって形成される配光パターン41は、実施の形態1で説明した通りである。なお、カットオフラインCLは、カットオフライン形成部35の段違い形状(
図7参照)に応じたライン部分CL1,CL2,CL3を有する。
【0112】
なお、ここではカットオフライン形成部35が段違い形状を有する場合について説明したが、カットオフライン形成部35が段違い形状を有さない場合(
図2参照)には、
図13(B)に示すように水平な直線状のカットオフラインCLが形成される。
【0113】
図14は、光源2と入射面38a,38bとの位置関係の一例を示す斜視図である。前照灯装置100は、水平方向(すなわちX軸方向)に配列された複数の光源2を有する。光源2の数はここでは17個であるが、これには限定されない。
【0114】
入射面38a,38bはいずれも、例えば、母線方向をX軸方向とするシリンドリカル面である。この場合、入射面38a,38bはいずれも、YZ面において曲率を有し、X軸方向には曲率を有さない。但し、このような形状に限定されるものではなく、X軸方向に曲率を有していてもよい。
【0115】
図13(A),(B)に示したように、各光源2から入射面38aに入射した光線R21によって形成される配光パターン421aと、各光源2から入射面38bに入射した光線R22によって形成される配光パターン421bとは、上下方向に連続した配光パターン421を形成する。
【0116】
そのため、光源2を個別に点灯するADB(Adaptive Driving Beam)においても、照射面4において水平方向の広がりを抑えながら、上下方向に長い配光パターン421を得ることができる。
【0117】
上述した点を除き、実施の形態2の前照灯装置200は、実施の形態1の前照灯装置100と同様に構成されている。
【0118】
ここでは、ハイビーム用の光源2から出射された光を2つの光路に分割する場合について説明したが、光源2から出射された光を3つ以上の光路に分割してもよい。
【0119】
〈実施の形態2の効果〉
以上説明したように、実施の形態2の前照灯装置200では、投射光学部材30が、ハイビーム用の光源2からの光が入射する入射面38a,38bを有し、入射光を2以上の光路に分割する。また、入射面38a,38bを通過した光は、上下に連続した配光パターン421a,421bを形成する。これにより、照射面4上で上下方向に広い範囲に配光パターン42を形成し、ハイビームの視認性を向上することができる。
【0120】
特に、入射面38a,38bが投射光学部材30に形成されているため、これらを別部材とした場合のように組立誤差の影響を受けない。そのため、ハイビーム用の光の利用効率をさらに向上することができる。
【0121】
また、入射面38a,38bが、各光源2から出射された光を、出射面36の焦点位置Fに近い光路を進む光線R21と、焦点位置Fから下方に離れた光路を進む光線R22とに分割するため、上下方向に長い配光パターンを形成し、なお且つ水平線を含む領域の光度を高くすることができる。また、分割された光路を通過した光線R21,R22が、上下方向に連続した配光パターンを形成するため、ADBにおいて光源2に上下方向に長い配光パターンを形成することができる。
【0122】
<<他の構成例>>
図15は、投射光学部材30の出射面形状の一例を示す断面図である。
図15に示した出射面39は、ハイビームの配光を重畳させる形状を有している。出射面39において光軸C3の上側(すなわち+Y側)の面領域39aは、ロービーム用の光源1(
図10)からの光線R1を多く通過し、光軸C3の下側(すなわち-Y側)の面領域39bは、ハイビーム用の光源2(
図10)からの光線R2を多く通過させる。
【0123】
出射面39の面領域39bは、この面領域39bを通過する光線R2を下方に向ける役割を有する。これにより、照射面4上でハイビームの配光パターン42(
図13(A))を形成する光を重畳させることができ、前照灯装置の法規により求められるHV点での光度を達成し易くなる。
【0124】
なお、出射面39の面領域39bは、この面領域39bを通過する光線R1の一部も下方に向けるが、この一部はカットオフラインCL(
図13(A))の鮮明度には寄与しない。投射光学部材30がこのような出射面39を有することにより、カットオフラインCLの形状を崩さずに、ハイビームの法的適合性を高めることができる。
【0125】
また、出射面39の上端部には、ロービーム用の光源1からの光の一部をカットオフラインCLよりも上側に向ける面領域39cが形成されている。この面領域39cを通過した光により、照射面4のカットオフラインCL(
図13(A))の上方に、前照灯装置の法規に基づくオーバーヘッドサイン配光を形成することができる。
【0126】
図16は、ロービーム用の光源1及びハイビーム用の光源2の取付構造の一例を示す図である。
図16に示した例では、ロービーム用の光源1は、集光光学素子12の-Z
1軸方向の端部に取り付けられている。集光光学素子12の+Z
1軸方向の端部には、集光光学素子12を設置位置に固定するためのフランジ12fが形成されている。
【0127】
また、ハイビーム用の光源2を支持する基板21は、光源2が入射面38a,38bに対向するように投射光学部材30に取り付けられている。光源2は、出射面36の焦点位置Fに近接した位置に配置されている。
【0128】
図17は、投射光学部材30の他の構成例を示す斜視図である。
図17に示す投射光学部材30は、その外周に、投射光学部材30を設置位置に固定するためのリング状の取付リブ30fを有している。取付リブ30fは、例えば樹脂により、投射光学部材30と同じ材質で一体に形成されることが望ましい。
【0129】
取付リブ30fには、固定用のネジ穴等を加工することができる。取付リブ30fは投射光学部材30の外周に設けられているため、光線R1及び光線R2を遮ることはなく、従って光利用効率及び配光パターンには影響しない。
【0130】
図15~
図17の各構成については、実施の形態2の投射光学部材30に基づいて説明したが、実施の形態1の投射光学部材3にも適用可能である。
【0131】
また、上述した実施の形態1,2及び変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0132】
上記実施の形態1から2において、部品間の位置関係又は部品の形状を示す用語は、製造上の公差及び組立て上のばらつきなどを考慮した範囲を含むことを表している。
また、「平行」及び「垂直」などの部品間の位置関係又は部品の形状を示す用語は、製造上の公差や組立て上のばらつきなどを考慮した範囲を含むことを表している。このため、請求の範囲に部品間の位置関係もしくは部品の形状を示す記載した場合には、製造上の公差又は組立て上のばらつきなどを考慮した範囲を含むことを示している。
【符号の説明】
【0133】
1 光源(第1の光源)、 2 光源(第2の光源)、 3,3A,30 投射光学部材、 4 照射面、 12 集光光学部材、 31 入射面(第1の入射面)、 32 入射面(第2の入射面:集光部)、 33 反射面(第1の反射面)、 34 反射面(第2の反射面)、 35,37 カットオフライン形成部、 36,39 出射面、 38 入射面(第2の入射面:集光部)、 38a 入射面(第1の光路分割面)、 38b 入射面(第2の光路分割面)、40,41,42,42a,42b,421 配光パターン、 100,200 前照灯装置、 C1,C2,C3 光軸、 CL カットオフライン形成部、 F 焦点位置。