(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】走査型測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20241115BHJP
G01S 17/04 20200101ALI20241115BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/481 A
G01S17/04
G01C3/06 120Q
G01C3/06 120P
(21)【出願番号】P 2024535609
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2022033841
(87)【国際公開番号】W WO2024053081
(87)【国際公開日】2024-03-14
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】大牧 正幸
(72)【発明者】
【氏名】高川 菜月
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-003111(JP,A)
【文献】特開2012-093256(JP,A)
【文献】特開平07-167958(JP,A)
【文献】特開平08-278441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を放射するレーザ光源と、
測定対象物で反射した前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズの光軸と交差する位置に配置されており、前記集光レンズによって集光された前記レーザ光を検出する第1の受光素子と、
前記光軸から予め定められた距離だけ離れた位置に配置された第2の受光素子と、
前記第2の受光素子に前記レーザ光が入射したか否かに基づいて、前記レーザ光源から前記測定対象物までの間の前記レーザ光が走査される3次元空間内に前記測定対象物が存在するかを判定する処理回路と、
前記第1の受光素子を有する第1の受光回路
と
を備え、
前記第1の受光回路に入射する前記レーザ光の直径をDとしたとき、前記第2の受光素子は、前記光軸からD/2だけ離れた位置に配置されている
走査型測距装置。
【請求項2】
レーザ光を放射するレーザ光源と、
測定対象物で反射した前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズの光軸と交差する位置に配置されており、前記集光レンズによって集光された前記レーザ光を検出する第1の受光素子と、
前記光軸から予め定められた距離だけ離れた位置に配置された第2の受光素子と、
前記第2の受光素子に前記レーザ光が入射したか否かに基づいて、前記レーザ光源から前記測定対象物までの間の前記レーザ光が走査される3次元空間内に前記測定対象物が存在するかを判定する処理回路と
を備え、
前記レーザ光を反射させて前記測定対象物に向けて案内し、前記測定対象物で反射した前記レーザ光を透過させて前記集光レンズに向けて案内する光制御素子をさらに備え、
前記光制御素子は、前記集光レンズの前記光軸と直交する方向にずれた位置に配置されている
走査型測距装置。
【請求項3】
前記第2の受光素子は、前記光軸に対して前記光制御素子とは反対側に位置している請求項
2に記載の走査型測距装置。
【請求項4】
前記光制御素子は、前記集光レンズの前記光軸から、前記レーザ光源から放射された前記レーザ光のファスト軸に平行な方向にずれた位置に配置されている請求項
2に記載の走査型測距装置。
【請求項5】
前記第2の受光素子に入射した光量に応じて変換された電圧に対応する信号が閾値電圧以上である場合、前記処理回路は、前記
3次元空間内に前記測定対象物が存在すると判定する請求項1から
4のいずれか1項に記載の走査型測距装置。
【請求項6】
前記第2の受光素子は、前記第1の受光素子に対して前記集光レンズとは反対側に位置している請求項1から
4のいずれか1項に記載の走査型測距装置。
【請求項7】
前記
3次元空間内に前記測定対象物が存在する場合、前記処理回路は、前記レーザ光の光量が低下するように前記レーザ光源を制御する請求項1から
4のいずれか1項に記載の走査型測距装置。
【請求項8】
前記
3次元空間内に前記測定対象物が存在する場合、前記処理回路は、前記レーザ光の放射密度が低下するように前記レーザ光源を制御する請求項1から
4のいずれか1項に記載の走査型測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走査型測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転における安全確保のため、光ビームなどのレーザ光を用いた測距装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、遠距離測距用と近距離測距用とで別々の受光素子及び別々の投光素子を必要とする。そのため、従来の技術では、簡易な構成で、数メートル以上の距離から測定対象物の検出を行うとともにインターロックを実行するためのレーザ光源の制御を行うことが困難であるという課題がある。
【0005】
本開示の目的は、簡易な構成で、測定対象物から数メートル以上離れた位置であっても、測定対象物を検出可能であり、かつ、インターロックを実行可能である走査型測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る走査型測距装置は、
レーザ光を放射するレーザ光源と、
測定対象物で反射した前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズの光軸と交差する位置に配置されており、前記集光レンズによって集光された前記レーザ光を検出する第1の受光素子と、
前記光軸から予め定められた距離だけ離れた位置に配置された第2の受光素子と、
前記第2の受光素子に前記レーザ光が入射したか否かに基づいて、前記レーザ光源から前記測定対象物までの間の前記レーザ光が走査される3次元空間内に前記測定対象物が存在するかを判定する処理回路と、
前記第1の受光素子を有する第1の受光回路と
を備え、
前記第1の受光回路に入射する前記レーザ光の直径をDとしたとき、前記第2の受光素子は、前記光軸からD/2だけ離れた位置に配置されている。
本開示の他の態様に係る走査型測距装置は、
レーザ光を放射するレーザ光源と、
測定対象物で反射した前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズの光軸と交差する位置に配置されており、前記集光レンズによって集光された前記レーザ光を検出する第1の受光素子と、
前記光軸から予め定められた距離だけ離れた位置に配置された第2の受光素子と、
前記第2の受光素子に前記レーザ光が入射したか否かに基づいて、前記レーザ光源から前記測定対象物までの間の前記レーザ光が走査される3次元空間内に前記測定対象物が存在するかを判定する処理回路と
を備え、
前記レーザ光を反射させて前記測定対象物に向けて案内し、前記測定対象物で反射した前記レーザ光を透過させて前記集光レンズに向けて案内する光制御素子をさらに備え、
前記光制御素子は、前記集光レンズの前記光軸と直交する方向にずれた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、測定対象物から数メートル以上離れた位置であっても、測定対象物を検出可能であり、かつ、インターロックを実行可能である走査型測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る走査型測距装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】走査型測距装置におけるレーザ光の光路を概略的に示す斜視図である。
【
図3】走査型測距装置におけるレーザ光の光路を概略的に示す上面図である。
【
図4】第1の受光素子の位置及び第2の受光素子の位置の一例を示す斜視図である。
【
図5】第1の受光素子の位置及び第2の受光素子の位置の一例を示す側面図である。
【
図6】
図1に示される例に比べて遠距離にある測定対象物で反射したレーザ光を概略的に示す図である。
【
図7】走査型測距装置の他の例を概略的に示す図である。
【
図8】走査型測距装置の他の例を概略的に示す図である。
【
図9】レーザ光が放射される領域であるレーザ光走査領域を示す図である。
【
図10】レーザ光が放射される領域であるレーザ光走査領域を示す図である。
【
図11】レーザ光が放射される領域であるレーザ光走査領域を示す図である。
【
図12】走査型測距装置における光学系を概略的に示す図である。
【
図13】第1の受光素子の位置及び第2の受光素子の位置の一例を示す斜視図である。
【
図14】第1の受光素子の位置及び第2の受光素子の位置の一例を示す側面図である。
【
図16】
図4及び
図5に示される例における、第2の受光素子の位置と第2の受光素子の位置と測定対象物が存在するか否かの判定が可能な走査型測距装置から測定対象物までの最大の距離との関係を示すグラフである。
【
図17】
図13及び
図14に示される例における、第2の受光素子の位置と第2の受光素子の位置と測定対象物が存在するか否かの判定が可能な走査型測距装置から測定対象物までの最大の距離との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面において、同一又は対応する構成要素は、同一の符号によって示される。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る走査型測距装置1の構成を概略的に示す図である。
図2は、走査型測距装置1におけるレーザ光の光路を概略的に示す斜視図である。
図3は、走査型測距装置1におけるレーザ光の光路を概略的に示す上面図である。
図4は、第1の受光素子411の位置及び第2の受光素子421の位置の一例を示す斜視図である。
図5は、第1の受光素子411の位置及び第2の受光素子421の位置の一例を示す側面図である。
【0010】
〈走査型測距装置1〉
走査型測距装置1は、レーザ光を放射するレーザ光源101と、測定対象物2で反射したレーザ光を集光する集光レンズ301と、集光レンズ301によって集光されたレーザ光を検出する第1の受光素子411と、集光レンズ301の光軸302から予め定められた距離だけ離れた位置に配置された第2の受光素子421と、処理回路440とを有する。本出願において、「レーザ光」とは、送信レーザ光510又は受信レーザ光520を意味する。
【0011】
〈第1の受光回路410〉
第1の受光回路410は、第1の受光素子411を有する。
図1に示されるように、第1の受光素子411は、集光レンズ301の光軸302上に配置されている。第1の受光素子411は、集光レンズ301によって集光された受信レーザ光520を検出する。言い換えると、第1の受光素子411は、集光レンズ301の光軸302と交差する位置に配置されている。これにより、集光レンズ301から第1の受光素子411までの距離を長くすることができる。第1の受光素子411によって検出されたレーザ光に対応する信号は、処理回路440に送られる。
【0012】
〈第2の受光回路420〉
第2の受光回路420は、第1の受光素子411とは異なる第2の受光素子421を有する。第2の受光素子421は、集光レンズ301の光軸302上に配置されていない。言い換えると、第2の受光素子421は、集光レンズ301の光軸302と交差しない位置に配置されている。すなわち、第2の受光素子421は、光軸302から予め定められた距離だけ離れた位置に配置されている。この場合、光軸302と第2の受光素子421との間の距離が「予め定められた距離」である。第2の受光素子421によって検出されたレーザ光に対応する信号は、処理回路440に送られる。
【0013】
〈集光レンズ301〉
送信レーザ光510が測定対象物2に到達した場合、レーザ光(すなわち、送信レーザ光510)は測定対象物2において散乱又は反射し、レーザ光の一部(すなわち、受信レーザ光520)が走査型測距装置1に入射する。走査型測距装置1において、受信レーザ光520は、集光レンズ301によって集光し、第1の受光素子411に入射する。これにより、第1の受光素子411は、受信レーザ光520を検出する。
【0014】
図1に示される例では、測定対象物2で散乱して走査型測距装置1に入射する受信レーザ光520は、走査型測距装置1から見て発散角を成す。これは、走査型測距装置1から測定対象物2までの距離に対し、受信レーザ光520の、測定対象物2上における半径(楕円の場合、長径)と集光レンズ301で受光される半径(楕円の場合、長径)との差が無視できない大きさである場合を示している。
【0015】
図6は、
図1に示される例に比べて遠距離にある測定対象物2で反射したレーザ光を概略的に示す図である。
図6に示される例では、測定対象物2で散乱して走査型測距装置1に入射する受信レーザ光520は、走査型測距装置1から見て平行である。これは、走査型測距装置1から測定対象物2までの距離に対し、受信レーザ光520、測定対象物2上における半径(楕円の場合、長径)と集光レンズ301で受光される半径(楕円の場合、長径)との差が無視できる大きさである場合を示している。
【0016】
受光光量は測距距離の自乗に反比例するため、遠距離になるほど第1の受光素子411に集光するように走査型測距装置1を設計することが望ましい。
【0017】
〈処理回路440〉
第1の受光素子411に入射した受信レーザ光520は、入射光量に応じて電流に変換され、更に、第1の受光回路410のTrans Impedance Amplifier(TIA)によって電圧に変換される。この信号が処理回路440に送られ、ダイレクト Time of Flight(ToF)方式により測距が行われる。ダイレクトToF方式は、走査型測距装置1から放射された光(パルス変調された光)が測定対象物2で反射されて走査型測距装置1によって受光されるまでの時間を計測する方式である。
【0018】
処理回路440は、レーザ光源101を制御する。例えば、処理回路440は、放射密度又は光量などのレーザ光源101の出力を制御する。処理回路440は、第1の受光素子411によって検出されたレーザ光に対応する信号を受信する。例えば、処理回路440は、第1の受光素子411によって検出されたレーザ光に基づいて、レーザ光源101の出力を制御する。
【0019】
処理回路440は、第2の受光素子421によって検出されたレーザ光に対応する信号を受信する。例えば、処理回路440は、第2の受光素子421によって検出されたレーザ光に基づいて、測距領域3内に測定対象物2が存在するかを判定する。処理回路440は、単一の中央処理装置で構成されていても良く、複数の中央処理装置を有していても良い。
【0020】
測距領域3は、安全基準を満たすためにインターロックが必要な領域として設定される領域である(後述する
図10及び
図11)。インターロックとは、送信レーザ光510の送信を停止すること、又は、送信レーザ光510の出力を低下させることである。測距領域3は、走査型測距装置1から測定対象物2までの間の送信レーザ光510が走査される3次元空間である。例えば、測距領域3は、安全基準を満たすためにインターロックが必要となる走査型測距装置1からの距離として設定される。
【0021】
〈その他の構成要素、及び、走査型測距装置1の動作〉
図2に示されるように、走査型測距装置1は、第1のシリンドリカルレンズ102と、ミラー103(例えば、折り曲げミラー)と、第2のシリンドリカルレンズ104と、光制御素子としての分離ミラー201とを有してもよい。この場合、ミラー103は、第1のシリンドリカルレンズ102と第2のシリンドリカルレンズ104との間に設けられている。ミラー103は、第1のシリンドリカルレンズ102からの光の光路を変換することができる。したがって、走査型測距装置1がミラー103を有する場合、走査型測距装置1の全体の寸法、例えば、筐体の寸法を低減することができる。
【0022】
レーザ光源101から放射された送信レーザ光510のうちの、ファスト軸に平行な方向(「ファスト軸方向」又は「ファスト方向」ともいう)に放射されている光は、第1のシリンドリカルレンズ102によって、略平行な光に変換される。第1のシリンドリカルレンズ102の形状は、ファスト方向に曲率を持つ形状である。送信レーザ光510のうちの、スロー軸に平行な方向(「スロー軸方向」又は「スロー方向」ともいう)に放射されている光は、第1のシリンドリカルレンズ102の曲率の影響を受けないので、レーザ光源101から放射された送信レーザ光510のうちの、スロー方向に放射された光は、スロー方向に広がり続ける。
【0023】
第1のシリンドリカルレンズ102の代わりに、スロー方向にも曲率を持つトロイダルレンズ又はクロスシリンドリカルレンズを用いても良い。スロー方向に負の曲率を持つレンズを用いた場合、送信レーザ光510のスロー方向の広がり角が大きくなり、第1のシリンドリカルレンズ102と第2のシリンドリカルレンズ104との間隔を狭めることができる。
【0024】
送信レーザ光510が第1のシリンドリカルレンズ102を透過した後、送信レーザ光510のうちの、スロー方向に広がっている光は、第2のシリンドリカルレンズ104によって、略平行な光に変換される。これにより、第2のシリンドリカルレンズ104を透過した送信レーザ光510は、大きく広がることなく、より遠くに照射される。
【0025】
第1のシリンドリカルレンズ102及び第2のシリンドリカルレンズ104は、レーザ光のスロー方向の幅がファスト方向の幅より大きい場合に有効である。一般的には、第1のシリンドリカルレンズ102及び第2のシリンドリカルレンズ104は、高出力なレーザ光源を用いる場合に有効である。これは、光源幅が大きいほど、平行光に変換するレンズを透過した後の光の拡がり角が大きくなるためである。
【0026】
これに対し、平行光に変換するレンズの焦点距離が長いほど、拡がり角を小さくすることができるので、スロー方向におけるレーザ光については、光源からの距離が遠い第2のシリンドリカルレンズ104によって略平行光に変換することができる。すなわち、スロー方向におけるレーザ光については、焦点距離の長い第2のシリンドリカルレンズ104によって略平行光に変換することができる。
【0027】
同様の理由で、中出力のレーザ光源で足りる場合又はファイバに結合された光源の場合等、スロー方向とファスト方向とで光源幅の差異が小さい場合は、必ずしもこの形態とする必要はない。例えば、第1のシリンドリカルレンズ102及び第2のシリンドリカルレンズ104は、同じ焦点距離でもよい。例えば、第1のシリンドリカルレンズ102及び第2のシリンドリカルレンズ104の代わりに、1つのコリメータレンズを用いても良い。
【0028】
走査型測距装置1は、第1の走査ミラー202と、第2の走査ミラー203とを有してもよい。この場合、略平行光に変換された送信レーザ光510は、分離ミラー201によって、受信レーザ光520と同じ光路に案内され、第1の走査ミラー202に向けて案内される。さらに、送信レーザ光510は、第1の走査ミラー202によって第2の走査ミラー203に向けて案内され、第2の走査ミラー203によって走査型測距装置1から測距領域3へ放射される。
【0029】
図2に示されるように、第1の走査ミラー202及び第2の走査ミラー203は、送信レーザ光510と受信レーザ光520との共通光路に配置されている。第1の走査ミラー202及び第2の走査ミラー203は、互いに直交する軸と中心として回転できる構造を持っている。これにより、走査型測距装置1からの送信レーザ光510の放射角度を制御することができる。
【0030】
第1の走査ミラー202及び第2の走査ミラー203の形状及び位置は、本実施の形態で説明された例に限定されない。
【0031】
第1のシリンドリカルレンズ102の焦点距離は第2のシリンドリカルレンズ104の焦点距離と大きく異なっている。これにより、ファスト方向とスロー方向とで送信レーザ光510の光束径が異なっている。
図1及び
図2に示される例では、スロー方向の送信レーザ光510の光束径は、ファスト方向の送信レーザ光510の光束径の3倍以上である。そのため、分離ミラー201の形状は、例えば、スロー方向に長い長方形である。
【0032】
スロー方向とファスト方向とで光源幅の差異が小さくなるにつれて、スロー方向とファスト方向とで送信レーザ光510の光束径の差異が小さくなるため、分離ミラー201の形状は必ずしも長方形である必要はなく、円形でも良く、正方形でも良い。
【0033】
分離ミラー201は、例えば、測定対象物2で反射したレーザ光を集光レンズ301に向けて案内する。分離ミラー201は受信レーザ光520と同じ光路に導くための部品であるが、分離ミラー201は必ずしも小片ミラーである必要はない。例えば、光制御素子として、分離ミラー201の代わりに、直交する偏光方向に従って反射と透過とを切り替えることができる偏光ビームスプリッタなどの部品を用いても良い。受信レーザ光520の偏光方向は決まっていないため、分離ミラー201の代わりに偏光ビームスプリッタを用いた場合でも、受信レーザ光520の全光量を減衰させることはない。
【0034】
図7及び
図8は、走査型測距装置1の他の例を概略的に示す図である。
図7及び
図8に示されるように、分離ミラー201は、集光レンズ301の光軸302上に必ずしも配置されている必要はない。
図7に示される例では、分離ミラー201は、集光レンズ301の光軸302と直交する方向にずれた位置に配置されている。これにより、レーザ光源101の出力を上げることができ、測距領域3をより広げることができる。
【0035】
例えば、分離ミラー201は、集光レンズ301の光軸302から、レーザ光源101から放射されたレーザ光のファスト軸に平行な方向にずれた位置に配置されていてもよい。この場合、分離ミラー201を小型化することができ、受光効率を高めることができる。その結果、走査型測距装置1を小型化することができる。
【0036】
図8に示される例では、第2の受光素子421及び第2の受光回路420は、第1の受光回路410から離れて位置している。この場合、第2の受光回路420(具体的には、第2の受光素子421)は、例えば、第1の受光回路410(具体的には、第1の受光素子411)に対して集光レンズ301とは反対側に位置していればよい。
【0037】
図7及び
図8に示されるように、第2の受光素子421は、集光レンズ301の光軸302に対して分離ミラー201とは反対側に位置していてもよい。
【0038】
図9は、送信レーザ光510が放射される領域であるレーザ光走査領域5を示す図である。
図9において、レーザ光走査領域5は、4本の実線で囲われた角度領域を示している。走査型測距装置1は、例えば、第1の走査ミラー202及び第2の走査ミラー203にって、送信レーザ光510を、レーザ光走査領域5内を自由に走査できる。走査型測距装置1は、第1の走査ミラー202及び第2の走査ミラー203以外の手段で送信レーザ光510を走査してもよい。
【0039】
一般的に、数nsのパルス幅であり、急峻な立ち上がり、あるいは、立ち下がりの時間を検出する必要があるため、受光素子も受光回路も処理回路も、数100MHzから数GHzオーダの帯域が必要となる。
【0040】
一般的に、レーザ製品の安全基準はエネルギーで規定されているため、パルス幅を狭くすればするほど同じ光のエネルギー量でもより高い光量に設定することができる。したがって、遠距離の測距方法として、ダイレクトToF方式を用いることが望ましい。ダイレクトToF方式の場合、受光回路で検知限界となるまでパルス幅を狭くすることで、その分光量を上げることが可能となり、より遠くまで測距できる。
【0041】
図10は、送信レーザ光510が放射される領域であるレーザ光走査領域5を示す図である。
図11は、送信レーザ光510が放射される領域であるレーザ光走査領域5を示す図である。
図11では、
図10に示される例に比べて、測定対象物2は走査型測距装置1の近くに存在している。
図10及び
図11において、測距領域3は、破線で囲まれた領域である。
図10及び11に示される例では、測距領域3に測定対象物2が存在している状態が示されている。
図10に示される例では、測定対象物2は送信レーザ光510を2点だけ受光している。
図11に示される例では、測定対象物2が存在している状態が示されており、測定対象物2は送信レーザ光510を5点で受光している。
【0042】
走査型測距装置1において、送信レーザ光510は、例えば、パルス変調される。この場合、レーザ光走査領域5内で送信レーザ光510は断続的に放射され、走査型測距装置1から同一距離における面(略球面)では、
図10及び
図11において点で示された部分が、送信レーザ光510が照射された部分であり、且つ、測定点である。
【0043】
図10に示されるように、走査型測距装置1から遠いほど測定点間の間隔は広くなる。これに対して、
図11に示されるように、走査型測距装置1に近いほど測定点間の間隔は狭くなる。
【0044】
図12は、走査型測距装置1における光学系を概略的に示す図である。
走査型測距装置1から測定対象物2までの距離が特定の距離よりも近い場合、受信レーザ光520は、第1の受光回路410の第1の受光素子411に完全に集光しない。
図12に示される例では、第1の受光回路410に入射する受信レーザ光520の直径がDで示されている。第1の受光回路410に入射する受信レーザ光520の直径は、「スポット径」とも称する。
【0045】
図12に示される例において、集光レンズ301を理想的な単レンズとした場合、第1の受光回路410上の直径D、集光レンズ301の焦点距離f、集光位置のシフト量df、レンズ開口径AP、及び集光レンズ301から測定対象物2までの距離zの関係は、次の式で示される。
D/AP=df/(df+f) ・・・(式1)
1/f=1/(df+f)+1/z ・・・(式2)
【0046】
式1及び式2より、下記のように式3が得られる。
D=AP×f/z ・・・(式3)
【0047】
式3に示されるように、第1の受光回路410上の直径Dは、集光レンズ301の焦点距離fに比例し、集光レンズ301から測定対象物2までの距離zに反比例する。したがって、集光レンズ301から測定対象物2までの距離zが短くなるにつれて第1の受光回路410上の直径Dは大きくなる。
【0048】
図13は、第1の受光素子411の位置及び第2の受光素子421の位置の一例を示す斜視図である。
図14は、第1の受光素子411の位置及び第2の受光素子421の位置の一例を示す側面図である。
図13及び
図14に示されるように、第2の受光素子421は、集光レンズ301の光軸302上に配置されていない。言い換えると、第2の受光素子421は、集光レンズ301の光軸302と交差しない位置に配置している。例えば、第2の受光素子421は、光軸302からD/2(すなわち、スポット径の半分)だけ離れた位置に配置されている。これにより、第2の受光素子421における受光量によって、第1の受光回路410に入射した受信レーザ光520の直径がD以上かどうかを判定することができる。その結果、走査型測距装置1から測定対象物2までの距離(例えば、集光レンズ301から測定対象物2までの距離z)が、式3を満たす値かどうかを判定することができる。例えば、走査型測距装置1から測定対象物2までの距離が、z以下であるかどうかを判定することができる。
【0049】
第2の受光素子421に入射した受信レーザ光520は、入射光量に応じて電流に変換され、更に、第2の受光回路420のTIAによって電圧に変換される。第2の受光素子421は測距を目的としていないため、パルス形状のまま受光できる必要はない。走査型測距装置1は、第2の受光素子421に受信レーザ光520が入射したか否かを判定できればよい。
【0050】
図15は、処理回路440の一例を概略的に示す図である。
処理回路440は、比較器441を有する。比較器441は、受光信号と閾値電圧とを比較する。受光信号は、第2の受光素子421に入射した光量に応じて変換された電圧に対応する信号である。受光信号が閾値電圧以上である場合、比較器441は、検出信号を出力する。例えば、第2の受光素子421に入射した光量に応じて変換された電圧に対応する信号が閾値電圧以上である場合、処理回路440は、測距領域3内に測定対象物2が存在すると判定する。処理回路440は、判定結果(例えば、検出信号)に応じてレーザ光源101を制御することができる。
【0051】
図15に示される例では、受光信号は、例えば、正理論の信号である。一方、受光信号が負理論の信号である場合でも、受光信号が正理論の信号である場合と同様に処理可能である。
【0052】
受光信号をアナログデジタルコンバータに入力し、受光信号を直接デジタル信号として処理し、デジタルの閾値と比較しても良い。
【0053】
一般的な走査型測距装置では、数nsのパルス幅の信号の急峻な立ち上がりの時間又は立ち下がりの時間を検出する必要があるため、受光素子、受光回路、及び処理回路のいずれも、数100MHzから数GHzオーダの帯域が必要である。
【0054】
これに対して、本実施の形態では、第2の受光素子421、第2の受光回路420、及び処理回路440のいずれも、数MHz以下の帯域で良く、走査型測距装置1を安価に構成することができる。そのため、第2の受光素子421の出力電流にTIAを用いる必要はなく、抵抗を直列に接続するだけでも良い。
【0055】
第2の受光回路420及び第2の受光素子421は近距離からの反射光を受光する必要があるため、第2の受光素子421の感度及び第2の受光回路420のゲインは、第1の受光素子411及び第1の受光回路410よりもそれぞれ低い必要がある。例えば、第2の受光回路420として安価なフォトダイオードを用いたり、TIAのゲインを決める帰還抵抗値を小さくしたりすれば良い。
【0056】
図16は、
図4及び
図5に示される例における、第2の受光素子421の位置と第2の受光素子421の位置と測定対象物2が存在するか否かの判定が可能な走査型測距装置1から測定対象物2までの最大の距離との関係を示すグラフである。具体的には、
図16は、第2の受光素子421によって検出された検出値(出力電圧)が、閾値電圧と一致する位置関係を示している。
図16の縦軸は、走査型測距装置1から測定対象物2までの距離を示しており、横軸は、集光レンズ301の光軸302から第2の受光素子421までの距離を示している。第2の受光素子421の位置を設定することによって、測定対象物2が存在するか否かの判定が可能となる走査型測距装置1から測定対象物2までの距離の限界を決めることができる。
【0057】
図16に示されるように、集光レンズ301の光軸302から第2の受光素子421までの位置を適切に設定することにより、測距領域3の範囲を適切に制御することができる。その結果、測距領域3内に測定対象物2が存在するか否かの判定が可能となる。
【0058】
一般的に、受光回路のダイナミックレンジは3桁から4桁程度が限界であるため、測距レンジは30倍から100倍程度である。例えば、300m以上を測距可能とすれば、3m以下は測距困難である。例えば、1000m以上を測距可能とすれば、10m以下は測距困難である。
【0059】
本実施の形態では、例えば、測距領域3が数m以上となるように走査型測距装置1が構成されている。この場合、
図16に示されるように、集光レンズ301の光軸302から第2の受光素子421までの距離に対して、測距領域3が敏感であり、測距領域3の範囲を制御することが難しい。さらに、受光素子の外形サイズは一般的に数mm前後であるため、受光素子の代わりに他の素子を用いることは困難である。
【0060】
そこで、
図8、
図13、及び
図14に示される例では、第2の受光素子421及び第2の受光回路420は、第1の受光回路410から離れて位置している。この場合、第2の受光回路420(具体的には、第2の受光素子421)は、例えば、第1の受光回路410(具体的には、第1の受光素子411)に対して集光レンズ301とは反対側に位置していればよい。これにより、測距領域3を精度良く設定することができる。
【0061】
図17は、
図13及び
図14に示される例における、第2の受光素子421の位置と第2の受光素子421の位置と測定対象物2が存在するか否かの判定が可能な走査型測距装置1から測定対象物2までの最大の距離との関係を示すグラフである。第2の受光素子421の位置を設定することによって、測定対象物2が存在するか否かの判定が可能となる走査型測距装置1から測定対象物2までの距離の限界を決めることができる。
図17に示されるデータは、
図16に示されるデータに比べて傾きが緩やかである。すなわち、
図13及び
図14に示される構成では、測距領域3の範囲を容易に制御することができる。その結果、第2の受光素子421の配置可能な範囲を広げることができる。
【0062】
図13及び
図14に示される構成により、測距領域3を自在に設定することできる。さらに、安全基準を満たすためにインターロックが必要な領域として測距領域3を設定することにより、測距領域3内に測定対象物2が存在する場合にレーザ光の放射を停止するなどのインターロックの機能を走査型測距装置1に搭載することができる。
【0063】
走査型測距装置1の連続運転を行う場合において、測距領域3内に測定対象物2が存在しなくなったとき、インターロックを自動的に解除することが望ましい。そのため、インターロックを自動的に解除する場合、送信レーザ光510の放射密度を低下させる。
【0064】
測距領域3内に測定対象物2が存在する場合、処理回路440は、送信レーザ光510の放射密度が低下するようにレーザ光源101を制御する。これにより、測定対象物2に照射される送信レーザ光510の放射密度が低下する。この場合、
図10に示される例では、測定対象物2は送信レーザ光510を2点だけ受光している。これにより、測定対象物2に対する単位時間内の積算光量を安全基準未満に抑えることができる。したがって、放射密度又は光量を制御することにより、測距領域3内に測定対象物2が存在しなくなった場合、インターロックを自動的に解除することができる。
【0065】
また、送信レーザ光510の光量を低下させることによりインターロックを実行しても良い。この場合、測距領域3内に測定対象物2が存在する場合、処理回路440は、送信レーザ光510の光量が低下するようにレーザ光源101を制御する。さらに、測距領域3を判定する閾値電圧も同様に低下させることが望ましい。
【0066】
以上に説明したように、本開示によれば、簡易な構成で、測定対象物から数メートル以上離れた位置であっても、測定対象物を検出可能であり、かつ、インターロックを実行可能である走査型測距装置を提供することができる。
【0067】
実施の形態2.
安全基準を満たすためにインターロックが必要な領域として測距領域3を設定し、測距領域3内に測定対象物2が存在する場合に発光を停止することにより、インターロックを実行してもよい。
【0068】
また、実施の形態1と同様に、測定対象物2に対する単位時間内の積算光量を安全基準未満に抑えられるよう、送信レーザ光510の放射密度又は光量を設定してもよい。これにより、測距領域3内に測定対象物2が存在しなくなった場合でも検出を行うことができ、インターロックの自動解除も可能となる。
【0069】
以上に説明した各実施の形態における特徴は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 走査型測距装置、 2 測定対象物、 3 測距領域、 5 レーザ光走査領域、 101 レーザ光源、 102 第1のシリンドリカルレンズ、 103 ミラー、 104 第2のシリンドリカルレンズ、 201 分離ミラー、 202 第1の走査ミラー、 203 第2の走査ミラー、 301 集光レンズ、 302 光軸、 410 第1の受光回路、 411 第1の受光素子、 420 第2の受光回路、 421 第2の受光素子、 440 処理回路、 510 送信レーザ光(レーザ光)、 520 受信レーザ光(レーザ光)。