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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】情報発信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20241118BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20241118BHJP
【FI】
H04B1/59
H04B5/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023089493
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2019505089の分割
【原出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2023115020
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2018003873
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192635(JP,A)
【文献】特開2000-230208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
H04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象となる長尺体に設けられる受電型情報発信装置と、
上記受電型情報発信装置に対して相対移動可能な駆動装置を有する移動体と、を有する情報発信システムであって、
上記移動体は、
進行方向前方に配され、上記受電型情報発信装置に無線で電力を供給する電力供給手段と、
上記電力供給手段に離間した進行方向後方に配され、上記受電型情報発信装置から無線で情報を受信する受信手段と、を有し、
上記受電型情報発信装置は、
上記移動体から電力供給を無線で受ける受電手段と、
上記受電手段が得た電力を消費して上記長尺体に生じる物理変化に関する情報を取得する情報取得手段と、
上記受電手段が得た電力を消費して無線で上記移動体に上記物理変化に関する情報を発信する発信手段と、を有することを特徴とする情報発信システム。
【請求項2】
前記受電型情報発信装置は、識別子を記憶する記憶手段を有し、
前記発信手段によって前記物理変化に関する情報とともに、上記識別子を発信することを特徴とする請求項1記載の情報発信システム。
【請求項3】
前記情報取得手段は、前記長尺体の所定状態を基準とした物理変化量の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報発信システム。
【請求項4】
前記移動体は、遠隔操作によって移動し得、
前記情報取得手段が、移動経路に沿って配されている前記受電型情報発信装置から前記物理変化に関する情報を収集することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の情報発信システム。
【請求項5】
前記移動体は、車両、船舶、無人航空機又はロボットであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報発信システム。
【請求項6】
前記長尺体は、締結部材及び/又は剛性体であって、
前記長尺体が上記締結部材の場合、ループアンテナは上記締結部材の頭部及び/又は先端部の外表面に配設されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の情報発信システム。
【請求項7】
前記電力供給手段は、第一の移動体側ループアンテナにより電磁誘導方式で電力の供給を行い、
前記受信手段は、第二の移動体側ループアンテナにより電磁誘導方式で情報の受信を行うことを特徴とする請求項1乃至6に記載の情報発信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から電力を得て、情報を発信する情報発信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の通電路付部材に受電型情報取得発信装置を設置し、通電路付部材に作用する応力を定期的に取得する情報取得システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-065754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の情報取得システムでは、例えばパッシブ型のICタグのような近距離(周波数帯によって数mm~数m)の無線通信を利用して、受電型情報取得発信装置に電力供給を行うと共に、通電路付部材に作用する応力を収集していく方法が無かった。
【0005】
そこで本発明は、通信距離にかかわらず、定期的又は定常的に、長尺体に生じる物理変化に関する情報を取得可能とし、且つ取得した情報を安定的に外部に発信するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の情報発信システムは、計測対象となる長尺体に設けられる受電型情報発信装置と、上記受電型情報発信装置に対して相対移動可能な駆動装置を有する移動体と、を有する情報発信システムであって、上記移動体は、進行方向前方に配され、上記受電型情報発信装置に無線で電力を供給する電力供給手段と、上記電力供給手段に離間した進行方向後方に配され、上記受電型情報発信装置から無線で情報を受信する受信手段と、を有し、上記受電型情報発信装置は、上記移動体から電力供給を無線で受ける受電手段と、上記受電手段が得た電力を消費して上記長尺体に生じる物理変化に関する情報を取得する情報取得手段と、上記受電手段が得た電力を消費して無線で上記移動体に上記物理変化に関する情報を発信する発信手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の情報発信システムは、前記受電型情報発信装置が識別子を記憶する記憶手段を有し、前記発信手段によって前記物理変化に関する情報とともに、上記識別子を発信することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の情報発信システムは、前記情報取得手段が前記長尺体の所定状態を基準とした物理変化量の情報を取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の情報発信システムは、前記移動体が遠隔操作によって移動し得、前記情報取得手段が、移動経路に沿って配されている前記受電型情報発信装置から前記物理変化に関する情報を収集することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の情報発信システムは、前記移動体が車両、船舶、無人航空機又はロボットであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の情報発信システムは、前記長尺体が締結部材及び/又は剛性体であって、前記長尺体が上記締結部材の場合、前記ループアンテナは上記締結部材の頭部及び/又は先端部の外表面に配設されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の情報発信システムは、前記電力供給手段が第一の移動体側ループアンテナにより電磁誘導方式で電力の供給を行い、前記受信手段は、第二の移動体側ループアンテナにより電磁誘導方式で情報の受信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信距離にかかわらず、定期的又は定常的に、長尺体に生じる物理変化に関する情報を取得可能とし、且つ取得した情報を安定的に外部に発信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る情報発信システムを示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る受電型情報発信装置を適用した締結部材の外観を示す図である。
図3】本実施形態に係る情報発信システムにおける情報発信処理を示すフローチャートである。
図4】線路を走行する車両とボルトとによって情報発信処理を行う際の位置関係を示す図である。
図5】受電型情報発信装置の他の配設例を示す図である。
図6】複数のアンテナを配設した車両を示す図である。
図7】受電型情報発信装置を有する鉄筋を埋設したコンクリート床版上を通過する車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の情報発信システムの実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る情報発信システム1を示すブロック図である。本発明の情報発信システム1は、計測対象となる長尺体に設けられる受電型情報発信装置10と、受電型情報発信装置10に対して相対移動し得、軌道に沿って移動可能な車両20(移動体)とを有し、無線(非接触)で受電型情報発信装置10と車両20間で電力の授受や、情報の送受信を実行し得るように構成される。
【0016】
なお、無線による電力の授受や、情報の送受信を行う方式としては、静電誘導、電磁結合、マイクロ波等の如何なる方式を用いてもよい。しかし屋外で利用する場合は、雨、雪、雹、霰、霰、氷、塵埃、鉄粉等の影響を受けにくい電磁誘導方式(周波数が125kHz~135kHz、13.56MHz)を用いることが好ましい。
【0017】
受電型情報発信装置10は、各部を統括的に制御する装置側制御部12を具え、装置側制御部12には、記憶部13、受電部14、コンデンサ15、情報取得部16、通信部17が接続される。記憶部13は、所謂メモリであって、所定のプログラムや受電型情報発信装置10の個体を識別する識別子を予め記憶する。なお記憶部13は、受電型情報発信装置10の初期状態における設定情報等を記憶するように構成され、また受電型情報発信装置10の各部でなされた演算結果等を記憶可能に構成してもよい。
【0018】
受電部14は、ループアンテナ等のアンテナ18を介して車両20から供給された電力を受け、その電力を各部に伝送する。コンデンサ15は、受電部14が得た電力を蓄積する。なおコンデンサ15は、様々な構造を採用でき、例えば単板型、旋回型、積層型、貫通型、電解型、電気二重層型等が採用できる。勿論、コンデンサ15の代わりに蓄電手段としての化学電池系や物理電池系等各種の蓄電池(二次電池)等の充電可能なバッテリを採用することも可能である。
【0019】
情報取得部16は、ひずみ計測センサ(ひずみゲージ及び/又はひずみ計測用パターン)、該センサから出力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するA/D変換器等を具え、長尺体に生じる物理変化を検知し、物理変化に関する情報を取得する。ひずみ計測センサは、電圧(又は抵抗値)の変化に基づいてひずみを計測する。また物理変化に関する情報は、設定情報に含まれる長尺体の初期状態(所定状態)を基準とした変化量であり、情報取得部16は、設置初期に計測されたひずみを基準としたときのひずみの変化量を取得する。
【0020】
また情報取得部16は、ジャイロセンサ、温度センサ等を具えてもよく、その場合の物理変化に関する情報は、ジャイロセンサにおいては設置初期の姿勢(傾き、方角)を基準としたときの姿勢の変化量であり、温度センサにおいては設置初期の温度を基準としたときの温度の変化量である。
【0021】
なお、ひずみ計測センサと温度センサとを併用すれば、ひずみ計測センサによって計測されたひずみの内、温度によるひずみの影響を排除できる。即ち、ひずみ計測センサによって計測したひずみに対し、温度センサによって計測した温度に基づく補正処理を行うことで、温度による影響を排除したひずみを取得することができる。なお補正処理は、情報取得部16において回路補正により実行又は装置側制御部12において演算処理により実行してもよく、情報取得部16及び装置側制御部12の両方で実行してもよい。
【0022】
また、情報取得部16は、上記のセンサ以外に、例えば加速度センサ、圧力センサ、臭気センサ、特定粒子官能センサ、放射線センサ、濡れセンサ、位置センサ(GPS)、人感センサ、光センサ、音センサ、磁気センサ、電流センサ、電圧センサ、回転角センサ、イメージセンサ等を有してもよい。
【0023】
通信部17は、アンテナ18を介して車両20に各種情報を発信する。なお装置側制御部12は、受電部14によって得た電力の一部を消費して情報取得部16による情報取得処理を行うと共に、電力の一部をコンデンサ15に蓄積する。また装置側制御部12は、コンデンサ15に蓄積した電力を消費し、通信部17による発信処理を行うことができる。
更に受電型情報発信装置10は、受電部14が得た電力を整流する整流手段を有してもよい。
【0024】
なお、上記軌道とは、道路の路面に鉄道車両を走らせるために敷設した構造物に限定されるものではなく、移動体が移動する道筋を意味するものである。従って、鉄道車両の軌条や各種車両が通行する道等の概念を含むものである。
【0025】
また、車両20は、所謂鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両、軍用車両、及び、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス等であって、ループアンテナ等のアンテナ28(移動体側アンテナ)を介した電力供給処理や情報受信等の各種処理を制御するための車両側制御部22を具える。車両側制御部22には、受電型情報発信装置10に電力供給を行う電力供給部24と、受電型情報発信装置10から情報の送受信を行う車両通信部26等が接続される。
【0026】
次に受電型情報発信装置10を搭載した締結部材としてのボルトについて説明する。図2は本実施形態に係る受電型情報発信装置10を搭載したボルト40であって、(a)は外観を示す図、(b)は断面図である。ボルト40は、図2(a)に示すように頭部42、軸部44を有する。頭部42は、軸部44の一端に設けられ、軸部44と比較して大径の外径形状を有する。軸部44は、他端側に形成された雄ねじ溝を有するねじ部44aと、一端部から中途部分に亘って形成される無ねじ山領域の円柱部44bとを有してもよい。
【0027】
またボルト40には、頭部42から空洞部46が開設される。空洞部46は、図2(b)に示すように頭部42及び円柱部44b内に延伸する。空洞部46は、一端側が頭部42内においてアンテナ18を配置し得る空間を形成し、他端側が円柱部44bの外周面に形成された開口部48と連通する。開口部48は、円柱部44bの外周面から径方向に延びるように形成される。即ち、開口部48は、空洞部46に直交する方向に延びて空洞部46に連通する。またボルト40の頭部42には、空洞部46の開口を塞ぐキャップが配設される。
【0028】
本発明の受電型情報発信装置10は、空洞部46内に配置される。また円柱部44bの外周面に通電路を直接形成することでひずみ計測センサ(ひずみ計測用パターン)16aが配設される。そして、ひずみ計測センサ16aは、外周面、開口部48及び空洞部46を通る配線を介して受電型情報発信装置10の情報取得部16に接続される。
【0029】
またアンテナ18は、空洞部46の一端側の空間内に収容されるが、これに限定するものではなく、例えば頭部42の外周面を囲繞するように配設してもよい。その場合、頭部42を貫通するように空洞部46を形成し、空洞部46の開口を介してアンテナ18を引き出す。
【0030】
なお、ひずみ計測センサ16aを円柱部44bの外周面に直接形成する方法としては、例えば、外周面に積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷等によって電気絶縁層を直接形成し、この上にひずみ計測センサ16aを直接形成する方法がある。なお、電気絶縁層を形成する手法は上記の各手法に限定されるものではなく、例えば、所定のマスクを配置した状態で、絶縁材料をスパッタリングによって被膜形成したり、シリカ材料を塗布して加熱処理したり、ポリイミド系の有機絶縁材を塗布するなどの様々な手法を採用できる。
【0031】
また、ひずみ計測センサ16aは、導電性ペーストを利用した積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング等によって電気絶縁層に直接形成される。ひずみ計測センサ16aの両端には、電気接点対が形成され、この電気接点対には、それぞれ絶縁被覆された配線が接続されており、電気接点対間に電圧を印加できる。これにより電気接点対に電圧を印加したひずみ計測センサ16aの抵抗値変化により、円柱部44bに生じる歪みの検出及び円柱部44bの変形の検出を行うことができる。なお、軸部44(円柱部44b)が不導体の材料により成るものであれば、円柱部44bの外周面に直接ひずみ計測センサ16aを形成してもよい。
【0032】
また、ひずみ計測センサ16aを円柱部44bの外周面に形成する場合、円柱部44bに窪みを設けて窪みの底部にひずみ計測センサ16aを形成することで、被締結部材に対する摺接を防止するようにしてもよい。さらにひずみ計測センサ16aを覆うように耐摩耗性、耐熱性、水分遮断性、耐変形性(密着性)等に優れたコーティング層を形成してもよい。
【0033】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、実施の形態に係る情報発信システム1における情報発信処理について説明する。ここでは、車両20を鉄道車両とし、ボルト40は線路(軌条)の固定に用いるボルトとする。また車両20は、不図示のモータを駆動し線路に沿って走行する。これにより、図4に示すように、線路を走行する車両20のアンテナ28とボルト40のアンテナ18とが所定の間隔で近接している間に車両20側から受電型情報発信装置10側に電力を供給すると共に、受電型情報発信装置10からボルト40のひずみに関する情報を取得する情報発信処理を行うことができる。
【0034】
また、ここではアンテナ18、28をループアンテナとするが、勿論、これに限定されるものではなく、電磁誘導方式を実現可能であれば、ダイポールアンテナ等の他の線状アンテナ、板状アンテナ、平面アンテナ等を用いても好いことはいうまでもない。
【0035】
車両側制御部22は、車両20がボルト40の略上方に位置し、アンテナ28の交信領域内に受電型情報発信装置10のアンテナ18が入ったとき、電力供給部24によって受電型情報発信装置10に電力を供給する(ステップS1)。即ち、車両20がボルト40上を通過するとき、車両20のアンテナ28で発生した磁力線が受電型情報発信装置10のアンテナ18に到達し、アンテナ18に電流が流れて電力供給が行われる。
【0036】
装置側制御部12は、受電部14によってアンテナ18を介して受電する(ステップSA1)。そして装置側制御部12は、各部に電力の伝送する(ステップSA2)。ここでコンデンサ15において伝送された電力を利用した蓄電を行う。
【0037】
装置側制御部12は、情報取得部16によってボルト40の物理変化の変化量を取得する(ステップSA3)。例えば、情報取得部16は、ひずみ計測センサの電圧(又は抵抗値)を計測し、計測した電圧(又は抵抗値)と記憶部13に予め記憶した初期状態におけるひずみ計測センサの電圧(又は抵抗値)とを比較し、ひずみの変化量を算出して取得する。なお情報取得部16は、変化量を取得する代わりに、ひずみ計測センサによって検出されたひずみの値をそのまま用いるようにしてもよい。このようにすれば受電型情報発信装置10が実行する処理の負担を軽減することができる。
【0038】
そして、アンテナ18の交信領域内において、受電型情報発信装置10と車両20間で情報の送受信が可能であるため、装置側制御部12は、記憶部13に格納している識別子と、ステップSA3で取得した変化量とを通信部17によってアンテナ18を介して発信する(ステップSA4)。
【0039】
一方、車両側制御部22は、車両通信部26によってアンテナ28を介して受電型情報発信装置10から識別子及び変化量を受信し(ステップS2)、情報発信処理を終了する。
【0040】
以上説明したように、受電型情報発信装置10を搭載したボルト40を線路に適用し、車両20を線路に沿って走行させることで、車両20から受電型情報発信装置10に電力が供給され、同時に受電型情報発信装置10はボルト40に生じるひずみの変化量を取得して車両20側に発信する。従って通信距離にかかわらず、受電型情報発信装置10は、定期的又は定常的に、ボルト40に生じるひずみの変化量を取得することができる。また取得されたひずみの変化量を安定的に車両20側に発信することができる。
【0041】
またひずみの変化量を収集することで、ボルト及びボルトを適用している線路(軌条)の状況や、ボルト及び線路(軌条)に作用する応力等を客観的に判断することができると共に、ボルトが適用されている線路(軌条)におけるメンテナンスを行う場所と時期を判断することができる。
なお、上述の実施形態においては、受電型情報発信装置を搭載したボルトを、軌条を固定する箇所に適用したが、勿論これに限定されるものではなく、例えば継目板の固定に適用するボルトとしてもよい等、その適用する箇所は適宜設定し得る。勿論、受電型情報発信装置が設けられる計測対象である長尺体としては、ボルトのようなねじ締結部材のみならず、軌条のような長尺体を計測対象として、直接的にひずみ計測手段や温度計測手段等の情報取得手段を設ける構成としてもよいことは言うまでもない。
【0042】
また、上述の実施形態においては、受電型情報発信装置をボルトに搭載した場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、ボルト以外の締結部材、例えばナット、ワッシャ、継目板等に搭載してもよい。また締結部材以外の部材、例えば線路(軌条及び/又は枕木)、梁、支柱、配管、鋼管、ガードレール、鉄筋、海底ケーブル、形鋼(H形鋼、I形鋼、T形鋼、山形鋼、平鋼、溝形鋼、Z形鋼、鋼矢板等)等のように、長尺で且つ金属製(鋼製)等の高い剛性を有する長尺体に受電型情報発信装置を搭載してもよい。
【0043】
また、アンテナ18を頭部42内の空洞部46に配設したが、これに限定するものではなく、軸部44内や軸部44の先端部に配設してもよい。またねじ部44aの先端側まで空洞部46を設け、ねじ部44a内に配設してもよい。またねじ部44aの雄ねじ溝の底部に沿って配設させてもよく、その場合アンテナ18が被締結部材の雌ねじ条に接触するのを防止するために、雄ねじ溝を深く作成することが好ましい。
【0044】
また、受電型情報発信装置10は、一つの長尺体に対して複数配設してもよい。この場合の情報発信システム1のアクセス方式は、FIFO(First In First Out)アクセスモード、マルチアクセスモード、セレクティブアクセスモードとする。
【0045】
なお、FIFOアクセスモードでは、車両20のアンテナ28の交信領域内に順番に入ってくる受電型情報発信装置10と順番に交信することができる。交信を終了した受電型情報発信装置10にはアクセス禁止処理を行なうので、交信終了した受電型情報発信装置10がアンテナ28の交信領域内に複数存在しても、新たな受電型情報発信装置10が一個だけアンテナ28の交信領域内に入ってくれば交信ができる。但し、同時に受電型情報発信装置10が交信領域内に入ると、交信エラーとなり交信できなくなる。アクセス禁止された受電型情報発信装置10は、交信領域外にでると再び交信が可能となる。
【0046】
マルチアクセスモードでは、アンテナ28の交信領域内に複数の受電型情報発信装置10が存在しても、全ての受電型情報発信装置10と交信可能となる。
【0047】
セレクティブアクセスモードでは、アンテナ28の交信領域内にある複数の受電型情報発信装置10のうち、特定の受電型情報発信装置10と交信ができるもので、交信領域内の受電型情報発信装置10の識別子に予め交信対象を示す番号を割り当てておき、割り当てた番号をもとに、特定の受電型情報発信装置10との交信を行なう。
【0048】
また、一つの長尺体に複数の受電型情報発信装置を配設した場合であっても、車両を走行させるだけで、各々のひずみの変化量が車両側に発信されるので、各受電型情報発信装置が取得したひずみの変化量を効率良く収集することができる。
【0049】
また、上述した実施形態においては、ボルト40の空洞部46に受電型情報発信装置10を配置した場合を例に説明したが、図5に示すように、空洞部46を設ける代わりに、ボルト40の頭部に受電型情報発信装置10を配設してもよい。
このとき、円柱部44bの外周面に直接形成したひずみ計測センサ16aと受電型情報発信装置10とを接続する配線54は、円柱部44bの外周面、頭部42の座面、外周面及び頂面に沿わせて配設する。このような円柱部44b及び頭部42に沿って配線54を配する場合、配線54がボルト40を締結する時に被締結部材と接触して断線する虞があるので、配線54の経路に沿うように、円柱部44bの外周面、頭部42の座面、外周面及び頂面にかけて一連で断面凹状を成す配設路52を設けることが好ましい。
【0050】
また、ひずみ計測センサ16aと受電型情報発信装置10とを接続する配線54は、ひずみ計測センサ16aと同様にしてボルト40の表面に直接形成した通電路であってもよい。この場合の通電路は、導電性ペーストを利用した積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング等によって電気絶縁層上に直接形成し得るものとする。このようにすれば、ひずみ計測センサ16aと配線54(通電路)とを一連に形成することができる。
【0051】
また、上述した実施形態においては、一つのアンテナ28を介して電力供給部22が受電型情報発信装置10に電力を供給し、また車両通信部26が受電型情報発信装置10からボルト40の物理変化の変化量を受信したが、これに限定されるものではなく、電力供給用と、変化量受信用とで別々のアンテナを設けてもよい。即ち、図6に示すように、二つの移動体側アンテナ28a、28bを設け、一方の移動体側アンテナ28aを電力供給部22が受電型情報発信装置10に電力を供給するためのものとして用い、他方の移動体側アンテナ28bを車両通信部26が受電型情報発信装置10から変化量の情報を受信するためのものとして用いてもよい。
【0052】
その場合、車両20の進行方向に沿って移動体側アンテナ28a、28bを離間させて配置することが好ましい。具体的には、受電型情報発信装置10に電力を供給するための移動体側アンテナ28aを進行方向前方に、変化量の情報を受信するための移動体側アンテナ28bを進行方向後方に配置する。このようにすれば、受電型情報発信装置10が受電してから情報取得部16によってボルト40の物理変化の変化量を取得し、該変化量を発信するまでの間に、車両20の移動体側アンテナ28aが通信可能範囲外に出てしまっても、後方に位置する移動体側アンテナ28bが通信可能範囲に位置して確実に変化量の情報を受信することができる。
【0053】
なお、受電型情報発信装置10並びに、ひずみ計測センサや温度センサ等の情報取得手段を鉄筋に設ければ、鉄筋を埋設して成るコンクリート床版に係るひずみの変位量等の情報を取得することができる。具体的には道路橋におけるコンクリート床版に受電型情報発信装置10並びに、ひずみ計測センサや温度センサ等の情報取得手段を設けた鉄筋60を縦方向或いは横方向或いは鉛直方向等の所望の方向に向けて複数本配設し、当該道路橋上に検査車としての車両20を走行させる。
【0054】
これにより、図7に示すように車両20がコンクリート床版上を通過することで、鉄筋60の受電型情報発信装置10からひずみの変位量等を受信することができる。またコンクリート床版内において、鉄筋60が、車両20の走行経路上に複数埋設されていれば、車両側制御部22は、個々の鉄筋60の変位量を順次取得することができる。これにより車両20を走行させるだけでコンクリート床版全体或いは、コンクリート床版の部分的な損傷等の情報が収集可能となる。勿論、ここではコンクリート床版を例に説明しているが、必ずしもコンクリート床版でなければならないというものではなく、プレキャスト鉄筋コンクリート製品や現場打ち鉄筋コンクリート等の鉄筋コンクリートの他、鋼管をコンクリートや地面に埋設したものであってもよい。
【0055】
また、車両を適用した情報発信システムを例に説明したが、これに限定するものではなく、受電型情報発信装置を有する計測対象となる部材に対して軌道に沿って相対移動可能に構成された移動体であれば、例えばドローン等の無人航空機、遠隔操作可能なラジコン走行車、ラジコン船舶、海底ケーブル修理調査用ロボット等であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…情報発信システム、10…受電型情報発信装置、12…装置型制御部、13…記憶部、14…受電部、15…コンデンサ、16…情報取得部、16a…ひずみ計測センサ、17…通信部、18、28…アンテナ、20…車両、22…車両側制御部、24…電力供給部、26…車両通信部、40…締結部材、42…頭部、44…軸部、44a…ねじ部、44b…円柱部、46…空洞部、48…開口部。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7