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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20241118BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20241118BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241118BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D5/16
C09D7/65
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021027850
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129226
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松木 崇
(72)【発明者】
【氏名】北村 同
(72)【発明者】
【氏名】安井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】和久 英典
(72)【発明者】
【氏名】岡 永都
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基道
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045211(WO,A1)
【文献】特表2005-520912(JP,A)
【文献】特表平10-508639(JP,A)
【文献】特開2003-119420(JP,A)
【文献】特開平04-252209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0225230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体AおよびファイバーBを含有する防汚塗料組成物であって、
前記共重合体Aは、単量体(a)と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体であり、
前記単量体(a)は、一般式(1)で表される、防汚塗料組成物。
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは、水素、メチル基、フェニル基を示し、Rは、炭素数1~8のアルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であるか、又はフェニル基を示し、nは、2~10の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
【0003】
このような問題を防ぐために、船舶等に防汚塗料組成物を塗布して防汚塗膜を形成し、防汚塗膜から防汚薬剤を徐放させることによって、長期間に渡って防汚性能を発揮させる技術が知られている(特許文献1~4)。
【0004】
しかし、特許文献1~4に記載されている(メタ)アクリル酸アルコシキカルボニルメチルエステル基含有ポリマーからなる防汚塗膜は、塗膜溶解性が著しく低いため長期間に亘って防汚性を発揮することは困難であった。
これらの問題を解決するべく、長期間に渡って塗膜溶解し防汚性能を発揮させる技術が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭63-61989号公報
【文献】特開2003-119420号公報
【文献】特開2003-119419号公報
【文献】特許2002-3776号公報
【文献】WO2020/045211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5に記載されている防汚塗料組成物からなる防汚塗膜は、塗膜溶解性など改善されているものの、浸漬初期と長期間経過後の塗膜溶解性の均一性に乏しい傾向があり、また、クラックや剥がれ等の塗膜物性の面で改善余地が残されており、長期間に亘って優れた塗膜表面状態及び防汚性能が維持可能な防汚塗料組成物が望まれていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長期間に亘って優れた塗膜表面状態及び防汚性能が維持可能な防汚塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、共重合体AおよびファイバーBを含有する防汚塗料組成物であって、前記共重合体Aは、単量体(a)と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体であり、前記単量体(a)は、一般式(1)で表される、防汚塗料組成物が提供される。
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記防汚塗料組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0011】
1.防汚塗料組成物
本発明の防汚塗料組成物は、共重合体AおよびファイバーBを含有する。
【0012】
1-1.共重合体A
1-1-1.共重合体Aの組成
共重合体Aは、単量体(a)と、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との共重合体である。共重合体Aは、単量体(a)および(b)に由来する単量体単位を含む。単量体(a)と単量体(b)の合計に対する単量体(a)の含有量は、10~90質量%が好ましく、20~70質量%が更に好ましい。具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この場合に、塗膜溶解性が特に良好となる。
【0013】
<単量体(a)>
単量体(a)は、一般式(1)で表される。
【0014】
【化1】
【0015】
式中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは、水素、メチル基、フェニル基を示し、Rは、炭素数1~8のアルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であるか、又はフェニル基を示し、nは、2~10の整数を示す。
【0016】
は、好ましくは、水素、又はメチル基である。
【0017】
のアルコキシ基又はアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Rは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、2-メトキシエチル基、4-メトキシブチル基、ビニル基、又はアリル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はn-ブチル基である。
【0018】
nは、2~10の整数を示し、長期防汚性の観点から2~6が好ましい。nは、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸t-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ベンジルポリオキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸フェニルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸アリルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ビニルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸t-ブチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕等が挙げられる。これらの単量体(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
単量体(a)としては、一般式(1)中のnが2であるものと、nが3~10であるものを含むことが好ましく、固形分換算で、質量比(n(2)/n(2~10))が0.4~0.8が好ましく、0.5~0.7が更に好ましい。この場合に、塗膜溶解性および塗膜物性の観点から好ましいである。この値は、具体的には例えば、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
<単量体(b)>
単量体(b)は、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物、芳香族化合物、二塩基酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又はメタアクリル酸エステルを意味する。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、N,N'-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸メトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸エトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ベンジルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸フェノキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸アリロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ビニロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸1-(メトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(エトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(n-プロポキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(イソプロポキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(n-ブトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(t-ブトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸α-(メトキシカルボニル)ベンジル、(メタ)アクリル酸α-(エトキシカルボニル)ベンジルの如き、(メタ)アクリル酸アルコシキカルボニルメチルエステル類;
(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソペンチルシリル、メタ(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソプチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ1,1-ジメチルペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2,2-ジメチルプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルメチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-プロピルペンチルシリル等の(メタ)アクリル酸シリルエステル類、等が挙げられる。
【0023】
ビニル化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルブチレート、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン等の官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0024】
芳香族化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
二塩基酸のジアルキルエステル化合物としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、これら単量体(b)を単独又は二種以上で用いることができる。特に、単量体(b)としては、塗膜溶解性および塗膜物性の観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に耐クラック性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等がより好ましく、また、塗膜溶解性の観点から、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-エチルヘキシルシリル等がより好ましい。
【0027】
1-1-2.共重合体Aの物性・製造方法
共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は5000~300000であることが望ましい。分子量が5000未満であれば、防汚塗料の塗膜が脆弱となり、剥離やクラックを起こし易く、また、300000を超えると、重合体溶液の粘度が上昇し、取扱いが困難となるからである。このMwは、具体的には例えば、5000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
Mwの測定方法としては、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)が挙げられる。
【0029】
共重合体Aは、単量体(a)と単量体(b)とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。
【0030】
共重合体Aは、例えば、重合開始剤の存在下、単量体(a)及び単量体(b)を重合させることにより得ることができる。
【0031】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記重合開始剤としては、特に、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが好ましい。重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、共重合体Aの分子量を調整することができる。
【0032】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、非水分散重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、共重合体Aを得ることができる点で、溶液重合、又は非水分散重合が好ましい。
【0033】
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
その中でも、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、トルエン、キシレンが好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常50~160℃であり、好ましくは60~150℃である。
【0035】
重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0036】
1-2.ファイバーB
本発明のファイバーBは、天然無機繊維、合成無機繊維、天然有機繊維、合成有機繊維及び金属繊維又はその混合物の群におけるいずれかの繊維を含み、一つの長い寸法と二つの短い寸法を有することを特徴とするものをいう。
【0037】
例えば、鉱物ガラス繊維、珪灰石繊維、モンモリロナイト繊維、トベルモナイト繊維、アタパルガイト繊維、焼成ボーキサイト繊維、火山岩繊維、ボーキサイト繊維、ロックウール繊維、鉱物綿から加工した鉱物繊維等の鉱物繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、綿繊維、セルロース繊維、ポリアクリロニトリル繊維、予備酸化ポリアクリロニトリル繊維及びポリエステル繊維などが挙げられる。
【0038】
ファイバーBの表面は、化学的又は物理的方法によって改変(表面処理)されていてもよいし、又はされていなくてもよい。ファイバーの改変方法の例としては、炭化;シリル化;表面酸化;アルカリ金属水酸化物を用いた処理、フッ化水素酸を用いた処理等のエッチング;被覆;多孔質表面構造への高分子電解質の取り込み;吸着法;水素結合法;カチオン結合法;エステル化;アニオン結合法等、ならびにファイバーの製造工程などが挙げられる。
【0039】
これらのうち、特に好ましいのは鉱物ガラス繊維、珪灰石繊維、モンモリロナイト繊維、トベルモライト繊維、アタパルガイト繊維、焼成ボーキサイト繊維、火山岩繊維、ボーキサイト繊維、ロックウール繊維、及び鉱物綿から加工した鉱物繊維等の鉱物繊維である。
【0040】
ファイバーBの市販品としては、例えば、火山岩繊維MS600(無処理、平均繊維長125μm、平均繊維厚5μm)、火山岩繊維MS603(無処理、平均繊維長125μm、平均繊維厚5μm)(以上、Lapinus Fibers BV社製)、ロックウールF 554/1 SR(平均繊維長500μm、平均繊維厚5μm)、セラミックF 580/1 S(平均繊維長500μm、平均繊維厚2.8μm)、ポリアクリロニトリルF PAC 238/040(平均繊維長500μm)、ポリエステル/ポリアミドF PES 231/040(平均繊維長500μm、平均繊維厚10-20μm)、予備酸化(preoxidised)ポリアクリロニトリルF PAC O 245/040(平均繊維長500μm、平均繊維厚10-12μm)、ポリプロピレン繊維F PP 261/040(平均繊維長500μm、平均繊維厚21μm)、ポリアクリロニトリル繊維F PAC 235/040(平均繊維長500μm)(以上、Schwarzwalder Textil-Werke社製)、グラスファイバーPF E-001(無処理)、PF E-301(シラン系処理)、グラスファイバーSS 05C-404(シラン系処理、平均カット長0.1mm)、グラスファイバーSS 10-420(シラン系処理、平均カット長0.3mm)(以上、日東紡績株式会社製)、グラスファイバーEPH 80M-10A(シラン系処理、平均カット長80μm)、グラスファイバーEPH 80M-80A(シラン系処理、平均カット長80μm)(以上、日本電気硝子株式会社製)等の鉱物ファイバーが挙げられ、これら機械特性を向上させる点で好ましい。
【0041】
本発明の組成物中におけるファイバーBの含有量は特に制限されないが、固形分換算で、通常0.1~20質量%であり、好ましくは1~15質量%であり、特に好ましくは4~10質量%である。ファイバーBの含有量は、具体的には例えば0.1、1、2、4、5、6、7、8、9、10、15、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
1-3.防汚薬剤
防汚薬剤としては、例えば無機薬剤及び有機薬剤が挙げられる。
無機薬剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(一般名:ロダン銅)、銅粉等が挙げられる。この中でも特に、亜酸化銅とロダン銅が好ましく、亜酸化銅はグリセリン、ショ糖、ステアリン酸、ラウリン酸、リシチン、鉱物油などで表面処理されているものが、貯蔵時の長期安定性の点でより好ましい。
有機薬剤としては、例えば、2-メルカプトピリジン-N-オキシド銅(一般名:カッパーピリチオン)、2-メルカプトピリジン-N-オキシド亜鉛(一般名:ジンクピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾロン(一般名:シーナイン211)、3,4-ジクロロフェニル-N-N-ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(一般名:Econea28)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(一般名:メデトミジン)等が挙げられる。
これらの防汚薬剤のうち、耐候性試験後の浸漬試験における防汚性能の観点から特に2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(一般名:Econea28)が好ましい。これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0043】
本発明の組成物中における防汚薬剤の含有量は特に制限されないが、固形分換算で、通常0.1~60質量%であり、好ましくは1~50質量%である。防汚薬剤の含有量は、具体的には例えば、0.1、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
1-4.他の添加剤
さらに本発明の防汚塗料用樹脂には、必要に応じて、共重合体A以外の樹脂成分、溶出調整剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、脱水剤、揺変剤、有機溶剤等を添加して防汚塗料とすることができる。
【0045】
他の樹脂成分としては、例えば、重合体Pなどが挙げられる。
重合体Pは、前記単量体(b)を重合することにより得られる重合体である。単量体(b)は、単量体(a)以外の任意のエチレン性不飽和単量体である。重合体Pの重合に用いる単量体(b)は、共重合体Aの重合に用いる単量体(b)と同一の組成であっても異なる組成であってもよい。
本発明においては、単量体(b)を単独又は二種以上で用いることができ、特に、共重合体Aとの相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2一エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-エチルヘキシルシリル等が好ましい。
重合方法、開始剤、溶媒、温度、その他の条件、Mwの測定方法等は、共重合体Aで既記の手法が適用できる。
本発明の組成物中における重合体Pの含有量は特に制限されないが、共重合体Aとの含有割合が、固形分換算で、質量比(重合体P/共重合体A)は、通常0.1~0.5であり、好ましくは0.1~0.3である。
【0046】
溶出調整剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸、シクロアルケニルカルボン酸、ビシクロアルケニルカルボン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、及びこれらの金属塩等の、モノカルボン酸及びその塩、又は前記脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
前記ロジン誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等を例示できる。
前記脂環式炭化水素樹脂としては、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
この中でもロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、又はこれらの金属塩が好ましい。
【0047】
前記可塑剤としては、例えば、燐酸エステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、ポリエステル類、エポキシ化大豆油、アルキルビニルエーテル重合体、ポリアルキレングリコール類、t-ノニルペンタスルフィド、ワセリン、ポリブテン、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、シリコーンオイル、塩素化パラフィン、等が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
【0048】
脱水剤としては、例えば、硫酸カルシウム、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類、カルボジイミド類、カルボジイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
2.防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、共重合体A及びファイバーB、他の添加剤等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。また、共重合体A及び防汚薬剤、他の添加剤等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散した後に、ファイバーBを添加して製造することもできる。
【0050】
前記混合液としては、共重合体A及びファイバーB等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。前記溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものを使用できる。
【0051】
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル、ディスパー、ペイントシェーカー等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0052】
3.防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50~700μm、好ましくは100~600μmである。
【実施例
【0053】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
各製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
カラム・・・ TSKgel SuperHZM-M 2本
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
溶離液・・・ THF
加熱残分は、JIS K 5601-1-2:1999(ISO 3251:1993)「塗料成分試験方法-加熱残分」に準拠して測定した値である。
【0054】
<製造例1(単量体a1の製造)>
(第1反応)
温度計、冷却器、攪拌装置を備えた四ツ口フラスコに、モノクロロ酢酸ナトリウム:215g(1.85mol)、クロロ酢酸メチル:201g(1.85mol)、N-メチル-2-ピロリドン:300gを仕込み、70~80℃で6時間攪拌した。反応終了後、反応液にトルエン:500mlを仕込み、市水、塩酸水、重曹水の順に有機層を洗浄後、減圧濃縮により溶媒を留去することでクロロ酢酸メトキシカルボニルメチル:262gを得た。
【0055】
(第2反応)
次いで、温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、第1反応の生成物であるクロロ酢酸メトキシカルボニルメチル:200g(1.20mol)、アクリル酸:87g(1.20mol)、4-メトキシフェノール:0.1g、酢酸エチル:500gを仕込み、攪拌しながらトリエチルアミン:122g(1.20mol)を40℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、70~80℃で6時間攪拌した。反応終了後、市水、塩酸水、重曹水の順に有機層を洗浄後、減圧濃縮により溶媒を留去することで単量体a1:230.6gを得た。
【0056】
<製造例2~20(単量体a2~a20の製造)>
表1に示す原料を用いて、製造例1と同様の操作で反応を行うことにより単量体a2~a20を得た。製造例2~20の反応条件、収量を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1中の原料の詳細は、以下の通りである。
CANa:モノクロロ酢酸ナトリウム
CAMe:クロロ酢酸メチル
CAEt:クロロ酢酸エチル
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
TEA:トリエチルアミン
MEHQ:4-メトキシフェノール
【0059】
<製造例21(共重合体溶液A-1の製造)>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、溶媒として、キシレン:50g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:50gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら88℃を保持した。そこへ、表2に示す単量体(a)及び(b)と、重合開始剤である1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:2.0g(初期添加)を加えて得られた混合液を88℃で保持しながら3時間かけて滴下した。その後、88℃で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:0.1gを1時間毎に3回添加し、さらに同温度で2時間攪拌を行った後、室温に冷却し、共重合体溶液A-1を得た。A-1の加熱残分、Mwを表2に示す。
【0060】
<製造例22~27(共重合体溶液A-2~A-5、重合体溶液P-1、P-2の製造)>
表2に示す単量体及び溶剤を用いた以外は、製造例21と同様の操作で重合反応を行うことにより共重合体溶液A-2~A-5、重合体溶液P-1、P-2を得た。それぞれの加熱残分、Mwを表2に示す。表中の配合量の数値は質量%である。
【0061】
【表2】
【0062】
<製造例28(ガムロジン亜鉛塩溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、中国産ガムロジン(WW)240gとキシレン360gをフラスコに入れ、更に、前記ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70~80℃で3時間、減圧下で還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.2%であった。
【0063】
2.実施例及び比較例(塗料組成物の製造)
表3~表5に示す成分を当該表に示す割合(質量%)で配合し、直径1.5~2.5mmのガラスビーズと混合分散することにより塗料組成物を製造した。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
表3~表5中の各成分の詳細は、以下の通りである。
<ファイバーB>
PF E-001:無処理カットグラスファイバー、商品名「PF E-001」(日東紡績社株式会社製)
PF E-301:シラン系カットグラスファイバー、商品名「PF E-301」(日東紡績株式会社製)
SS 05C-404:シラン系カットグラスファイバー、商品名「SS 05C-404」、平均カット長0.1mm(日東紡績株式会社製)
MS600:ロックウール、商品名「MS600」、平均カット長125μm(Lapinus社製)
F PAC O 245/040:ポリアクリロニトリル、事前酸化ポリアクリロニトリル、商品名「F PAC O 245/040」、平均カット長0.5mm(Schwarzwalder Textil-Werke社製)
【0068】
<溶出調整剤>
ガムロジン亜鉛塩溶液:製造例28で製造したものを使用
ガムロジン溶液:中国産ガムロジン(WW)の固形分50%キシレン溶液
【0069】
<防汚薬剤>
亜酸化銅:商品名「NC-301」(日進ケムコ株式会社製)
銅ピリチオン:商品名「カッパーオマジン」(LONZA株式会社製)
亜鉛ピリチオン:商品名「ジンクオマジン」(LONZA株式会社製)
SEANINE 211N:4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾロン(R&H社製、有効成分30%キシレン溶液)
ECONEA 028:2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(ヤンセンPMP社製)
SELEKTOPE:商品名「Selektope」(アイテック社製)
【0070】
<その他の添加剤>
ベンガラ:商品名「ベンガラキンギョク」(森下弁柄工業株式会社製)
タルク:商品名「タルクMS」(日本タルク株式会社製)
酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」(正同化学工業株式会社製)
酸化チタン:商品名「FR-41」(古河機械金属株式会社製)
ディスパロンA603-20X:脂肪酸アマイド系揺変剤、商品名「ディスパロンA603-20X」(楠本化成株式会社製)
テトラエトキシシラン:商品名「エチルシリケート28」(コルコート株式会社製)
トリクレジルホスフェート:(大八化学工業株式会社製)
【0071】
3.評価
実施例・比較例の塗料組成物について、以下に示す試験を行った。試験結果を表3~表5に示す。表3~表5に示すように、全ての実施例では、比較例に比べて、24ヶ月後の塗膜状態が良好であり、塗膜溶解量の均一性が高かった。このような効果が奏されたのは、共重合体AとファイバーBの組み合わせによるものであり、共重合体Aを含むがファイバーBを含まない比較例1~4や、共重合体A以外の重合体PとファイバーBを含む比較例5~6では、上記効果が奏されなかった。また、重合体Pを含むがファイバーBを含まない比較例7~8の結果は、比較例5~6と同程度であった。このことは、ファイバーBの添加による塗膜状態の改善及び塗膜溶解量の均一化の効果は、共重合体Aに特有のものであることを示している。
【0072】
<試験例(ロータリー試験)>
水槽の中央に直径515mm及び高さ440mmの回転ドラムを取付け、これをモーターで回転できるようにした。また、海水の温度を一定に保つための冷却装置、及び海水のpHを一定に保つためのpH自動コントローラーを取付けた。
【0073】
試験板を下記の方法に従って作製した。
まず、チタン板(71×100×0.5mm)上に、防錆塗料(エポキシビニル系A/C)を乾燥後の厚みが約100μmとなるよう塗布し乾燥させることにより防錆塗膜を形成した。その後、実施例及び比較例で得られた塗料組成物を、乾燥膜厚が約300μmとなるように塗布し、40℃で3日乾燥させることにより、試験板を用意した。
【0074】
作製した試験板を上記装置の回転装置の回転ドラムに海水と接触するように固定して、20ノットの速度で回転ドラムを回転させた。その間、海水の温度を25℃、pHを8.0~8.2に保ち、二週間毎に海水を入れ換えた。
【0075】
各試験板のロータリー試験12ヶ月後、24ヶ月後の各塗膜表面を肉眼及びマイクロスコープで観察して塗膜の表面状態を評価した。
【0076】
塗膜表面状態の評価は以下の基準で行った。
◎:全く異常のない場合
○:塗膜表面全面積の1割未満、ヘアークラックが見られるもの
△:塗膜表面全面積の1~3割に、ヘアークラックが見られるもの
×:塗膜表面全面積の3割以上に、ヘアークラックが見られるもの
【0077】
また、各試験板の初期と試験開始後12ヶ月毎の残存膜厚を(株)キーエンス製の形状測定レーザーマイクロスコープVK-X100で測定し、その差から溶解した塗膜厚を計算することにより1ヶ月あたりの平均塗膜溶解量(μm/月)を得た。試験開始から0~12ヶ月の平均塗膜溶解量T1と、試験開始から12~24ヶ月の平均塗膜溶解量T2を算出し、塗膜溶解量の均一性を示す比率(T1/T2)を算出した。