(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
A47J37/12 321
(21)【出願番号】P 2021118183
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 雄大
(72)【発明者】
【氏名】木内 直樹
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119995(JP,A)
【文献】特開2005-253481(JP,A)
【文献】特開2002-276928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理油を収容する油槽と、
調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽への補給用の固形油が収納されたオイル缶が載置されるオイル缶収納部と、
前記油槽と前記オイル缶とを接続してポンプを有し、前記オイル缶内の固形油を前記油槽に供給可能な補給経路と、を備え、
前記オイル缶に接続される前記補給経路が、前記オイル缶に差し込まれる差込管となっているフライヤーであって、
前記差込管は、本体部と、前記本体部よりも先端側の吸込部とを有し、
前記吸込部の先端面には、前記吸込部の内径よりも小径の吸込口が、前記吸込部の軸線と同心で形成され、
前記本体部の内径は、前記吸込部の内径よりも大径となっていることを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
前記吸込部の先端面は、先端側へ向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
前記吸込部の前記先端面を除く外周に、前記吸込部の径方向を軸線とする複数の横孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理油を油槽内で加熱し、当該油槽に被調理物を投入して加熱調理する業務用のフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤーは、調理油を収容する油槽内に、パルス燃焼器等の加熱手段を設け、調理油を加熱することで被調理物の加熱調理が可能となっている。
この加熱調理の時間や回数が増加すると、調理中に蓄積される不純物の量が増加して調理油が劣化し、調理品質の低下を招く。また、食材に吸収される油によって調理油の量が減少する。よって、調理時間や調理回数に応じて定期的に調理油をフィルタリングしたり、新しい調理油を補給(足し油)したりする必要が生じる。
そこで、特許文献1には、ラード等の固形油を収容した一斗缶を器体内に配置して、一斗缶から油槽まで繋がる配管によって補給経路を形成した発明が開示されている。ここでのコントローラは、一斗缶の底面に設けた電気ヒータを制御して一斗缶の温度を所定温度(例えば80℃)に維持し、油槽での油面の低下をセンサで確認すると、配管に設けたバルブを開いてポンプを運転し、一斗缶から補給経路を介して液化した調理油を足し油可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一斗缶等のオイル缶に対する補給経路の接続は、差込管をオイル缶に差し込んで先端から調理油を吸い込む態様となる。しかし、オイル缶内の固形油は、冬季には固くなってしまうため、差込管が差し込みにくくなる。差込管の先端部に開口を設ければ、固形油との接触面積が小さくなり、差し込みやすくなるが、開口から差込管内に入り込んだ固形油が差込管の内部通路を閉塞してしまい、電気ヒータで加熱しても液化するのに時間がかかるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、オイル缶内の固形油へ差込管を容易に差し込むことができると共に、差込管内に入り込んだ固形油による内部通路の閉塞も防止できるフライヤーを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、調理油を収容する油槽と、
調理油を加熱する加熱手段と、
前記油槽への補給用の固形油が収納されたオイル缶が載置されるオイル缶収納部と、
前記油槽と前記オイル缶とを接続してポンプを有し、前記オイル缶内の固形油を前記油槽に供給可能な補給経路と、を備え、
前記オイル缶に接続される前記補給経路が、前記オイル缶に差し込まれる差込管となっているフライヤーであって、
前記差込管は、本体部と、前記本体部よりも先端側の吸込部とを有し、
前記吸込部の先端面には、前記吸込部の内径よりも小径の吸込口が、前記吸込部の軸線と同心で形成され、
前記本体部の内径は、前記吸込部の内径よりも大径となっていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記吸込部の先端面は、先端側へ向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記吸込部の前記先端面を除く外周に、前記吸込部の径方向を軸線とする複数の横孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、吸込部の先端と固形油との接触面積が小さくなり、比較的小さい力で差込管をオイル缶内の固形油へ容易に差し込むことができる。また、小径の吸込口を介して吸込部内に入り込んだ固形油が吸込部内を閉塞しにくくなると共に、吸込部内から本体部内に入り込んだ固形油が本体部内を閉塞しにくくなる。よって、差込管内に入り込んだ固形油による内部通路の閉塞が防止可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、吸込部の先端面は、先端側へ向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されているので、固形油に差し込む際の抵抗を効果的に低減でき、より容易に差し込み可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、吸込部の先端面を除く外周に、吸込部の径方向を軸線とする複数の横孔が形成されているので、吸込口から吸込部内に吸い込まれた固形油が残った状態であっても、吸込口よりも内径が大きい吸込部の内周面との間に隙間が形成される。よって、液化した固形油を横孔から隙間を介して吸込口内に吸い込むことができ、差込管内での固形油による閉塞がより効果的に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図9】支持台車の出し入れの説明図で、(A)は引き出し位置、(B)は載置位置の手前の位置をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、フライヤーの一例を示す斜視図である。
図2はフライヤーの正面図、
図3は側面図、
図4は平面図である。
フライヤー1は、フレーム3に図示しない外板を取り付けてなる四角箱状の器体2を有する。器体2内の上部には、左右一対の油槽4,4が設けられている。器体2の下面には、複数のキャスタ5,5・・が設けられている。
フライヤー1の構成は、各油槽4に対して左右略同じであるため、特に言及する場合を除いて主に右側の油槽4について説明する。
油槽4では、左右方向の中央で前後方向に延びる仕切板6により、一対の分割油槽4a,4aに仕切形成されている。各分割油槽4aには、パルス燃焼器7が設置されている。パルス燃焼器7は、燃焼室8とテールパイプ9とをそれぞれ備えている。テールパイプ9の一端は、燃焼室8の側面に接続されている。テールパイプ9の他端は、油槽4の正面側外部に引き出されている。各分割油槽4aの前壁には、油面温度センサ10が設けられている。各分割油槽4aの後壁には、調理用温度センサ11が設けられている。
【0010】
油槽4の正面側外部には、エアチャンバ12が設けられている。エアチャンバ12内には、各燃焼室8とそれぞれ連通する図示しない混合室が設けられている。各混合室には、ガス電磁弁14を備えたガス導管13が接続されて、燃料ガスが供給される。
また、各混合室には、給気管15がそれぞれ接続されている。給気管15は、器体2の後側底部に設けられたファン16に接続されて、燃焼用空気が供給される。
油槽4の外部へ引き出されたテールパイプ9,9は、エアチャンバ12内で左右一対の排気管17,17に接続されている。排気管17,17は、エアチャンバ12から引き出されて器体2の後部へ引き回された後、油槽4の後方で上向きに延びて、燃焼排気を排出可能となっている。排気管17,17における上向きの下流端部には、円筒形のマフラー18,18がそれぞれ設けられている。マフラー18,18の上部は、排気管カバー19に上方から覆われて、排気管17,17の上端を排気アダプタ20内に突出させている。
【0011】
右側の油槽4の下方には、一斗缶50の置き台25が設けられている。置き台25は、フレーム3の下面よりも下方に突出して前方及び上方を開口した箱状となっている。置き台25は、
図5及び
図6にも示すように、底板26と、左右の側板27,27と、後板28とを有している。底板26には、底板26よりも一回り小さい平面視四角形状の下ヒータケース29が設けられている。下ヒータケース29は、後述する一斗缶50の巻き締め部53の平面視形状よりも一回り小さいサイズで形成されている。下ヒータケース29の上側内面には、面状の電気ヒータ30が設けられている。下ヒータケース29の周囲で底板26には、前後左右に並ぶ4つの角孔31,31・・が形成されている。後板28にも、面状の電気ヒータ33を内蔵した後ヒータケース32が設けられている。後ヒータケース32の下方で後板28には、一斗缶温度センサ34が設けられている。
置き台25の上には、支持台車35が設けられている。支持台車35は、下台36と上台37とを上下に重ねて形成されている。下台36は、下ヒータケース29よりも大きい左右幅で前後方向に延びる平面視四角形状となっている。下台36の前端部及び左右端部には、下向きに折曲される下前辺部38及び下側辺部39,39が形成されている。
下台36の中央には、下ヒータケース29が貫通可能な平面視四角形状の下穴40が形成されている。下側辺部39,39の外側には、左右方向を軸とする前後一対の車輪41,41がそれぞれ設けられている。下台36の下面は、車輪41,41・・を底板26上に載せた状態で、下ヒータケース29の上面よりも高い位置となる。
【0012】
上台37は、下台36よりも前後長さが短く、且つ左右幅が大きく形成された平面視四角形状となっている。上台37の前後端部及び右端部には、上向きに折曲される上前辺部42、上後辺部43、上側辺部44が形成されている。上台37の中央には、下台36と同様に下ヒータケース29が貫通可能な平面視四角形状の上穴45が、下穴40と重なる位置に形成されている。
下台36の4つの車輪41,41・・は、底板26に設けた角孔31,31・・に対応している。各車輪41が各角孔31にそれぞれ到達すると、各車輪41の下部が各角孔31に嵌合して、
図6及び
図7に示すように、支持台車35が下方へ沈むようになっている。この嵌合位置では、相対的に下ヒータケース29が上方へ突出して下台36の下穴40と上台37の上穴45とを貫通する。よって、下ヒータケース29の上面は、上台37の上面よりも上方へ突出することになる。
【0013】
支持台車35の上台37に、一斗缶50が載置される。一斗缶50は、平面視正方形状の胴体部51と、胴体部51の底面を閉塞する底面部52とを備えている。胴体部51の下端と底面部52の周縁とは、巻き締め加工によって接合されている。よって、底面部52の周縁には、底面部52よりも下方へ突出する巻き締め部53が全周に亘って形成される。前述した嵌合位置での下ヒータケース29の上台37からの突出量は、巻き締め部53の下方への突出量よりも大きく設定されている。
一方、上台37は、巻き締め部53の平面視形状よりも一回り大きいサイズで形成されている。下台36の下穴40及び上台37の上穴45は、下ヒータケース29と同様に、巻き締め部53の平面視形状よりも一回り小さいサイズで形成されている。
よって、一斗缶50を上台37に載置した状態で、巻き締め部53は、上穴45の外側で上台37の上面に当接することになる。
【0014】
一斗缶50の胴体部51には、蓋体55が上方から被せられている。蓋体55は、下面を開口した浅箱状で、胴体部51よりも一回り大きい平面視正方形状となっている。蓋体55の上面前部には、取っ手56が設けられている。蓋体55の右寄り部分で前後方向の中央部には、差込穴57が形成されている。差込穴57の下側で蓋体55の裏面には、差込穴57の真下に四角穴59を形成した倒コ字状の金具58が取り付けられている。
差込穴57の周囲で蓋体55の上面には、後述する吸込パイプ65の支持部60が設けられている。支持部60は、差込穴57の上方を左右方向に跨ぐ格好で蓋体55に固定される逆U字状の金具により形成されている。支持部60の上面には、左右方向にスリット61が形成されている。支持部60の左右の側面には、スリット61と連通する側面視U字状の切込み62A,62Bが形成されている。右側の切込み62Bの前後縁には、上下方向に延びる一対の係止片63,63が対向状に形成されている。よって、切込み62Bの前後幅は、左側の切込み62Aの前後幅よりも小さくなっている。
【0015】
吸込パイプ65は、上下方向に延びる差込管66と、差込管66の上端と接続されて左右方向に延びる延設管67と、延設管67の右端と接続されて後方へ延びる接続管68とを備えている。
差込管66は、横断面円形で、蓋体55の差込穴57及び金具58の四角穴59を通して一斗缶50内に差し込まれる。差込管66は、上側の本体部69と、下側の吸込部70とを備えている。本体部69と吸込部70とは、外径は略同じであるが、内径は、
図8に示すように、本体部69の内径D1の方が吸込部70の内径D2よりも大径となっている。
吸込部70の下端面71は、吸込部70の軸線方向で下方へ向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されている。下端面71の中央には、吸込部70の軸線と同軸で開口する円形の吸込口72が形成されている。この吸込口72の直径D3は、吸込部70の内径D2よりも小さくなっている。
下端面71よりも上方で吸込部70の周面には、吸込部70の径方向を軸線とする複数の横孔73,73・・が、吸込部70の周方向に等間隔で形成されている。この横孔73の径は、吸込口72よりも小径となっている。
【0016】
延設管67は、左端を閉塞した横断面円形の管体で、蓋体55の上側で支持部60に支持される。延設管67は、支持部60のスリット61及び切込み62A,62Bに上方から嵌合させることで左右方向に支持される。延設管67の右端部寄りの外周には、嵌合状態で切込み62Bの係止片63,63が係合するリング状の係止溝74が形成されている。よって、支持部60上での延設管67は、係止片63,63によって左右方向への移動が規制される。但し、延設管67は、切込み62A,62B内で上下方向へ移動可能である。
接続管68は、前端を閉塞した横断面円形の管体で、左側面に延設管67が接続されている。接続管68の後端には、後述する足し油ポンプ80との接続部75が後ろ向きに設けられている。
【0017】
一斗缶50は、胴体部51に蓋体55を被せて、吸込パイプ65の差込管66を差込穴57及び四角穴59に上方から差し込み、延設管67を支持部60に支持させた状態とする。すると、差込管66が胴体部51内で下方へ垂下し、吸込部70が胴体部51の下部に位置する。接続管68は、接続部75を後方へ突出させた姿勢となる。
ここで、一斗缶50が調理油としてラード等の固形油を収容していても、差込管66は、吸込部70の下端面71に吸込口72を有しているので、固形油との接触面積が小さくなり、比較的小さい力で差込管66を差し込むことができる。特に、下端面71は、テーパ状であるため、固形油に差し込む際の抵抗が低減され、容易に差し込み可能となる。また、吸込口72の直径D3は、吸込部70の内径D2よりも小径であるため、吸込口72を通って吸込部70内に進入した固形油が吸込部70内で詰まりを起こすおそれが小さくなる。特に、差込管66を固形油に差し込んだ直後は、吸込口72から進入した固形油が吸込部70内に残留しているが、吸込口72よりも大径の吸込部70内では残留した固形油の周囲に隙間が生じている。よって、続いて液化して吸込口72から吸い込まれた固形油は、当該隙間を通って本体部69側へ流れることができる。さらに、本体部69の内径D1は、吸込部70の内径D2よりも大きいので、吸込部70を通過した固形油は大径の本体部69内をスムーズに通過できる。
【0018】
接続管68の右側には、足し油ポンプ80が設けられている。足し油ポンプ80は、左側に吸込ブロック81を、右側に吐出ブロック82を備えている。吸込ブロック81の前面には、接続口83が設けられている。接続口83に接続管68の接続部75が前方から差し込み接続可能となっている。吐出ブロック82には、足し油管84が接続されている。足し油管84は、器体2内で上方へ引き回されて分割油槽4aごとに分岐し、各分割油槽4aの前壁に設けた足し油口85(
図3)に、足し油電磁弁86を介してそれぞれ接続されている。
こうして器体2には、各分割油槽4aと一斗缶50とを接続し、一斗缶50内の調理油を各分割油槽4aに供給可能な補給経路Rが形成される。
但し、補給経路Rは、第1経路R1と第2経路R2とに分離されている。第1経路R1は、
図5及び
図7に二点鎖線で示すように、一斗缶50に差し込まれる差込管66から、延設管67を介して接続管68の接続部75に至る経路、すなわち吸込パイプ65内に形成される経路である。第2経路R2は、吸込ブロック81の接続口83から、
図3及び
図5に二点鎖線で示すように、足し油ポンプ80、足し油管84を介して各分割油槽4aの足し油口85に至る経路である。
【0019】
吸込パイプ65をセットした一斗缶50は、置き台25から前方へ引き出した支持台車35の上台37に載置される。この支持台車35の引き出し位置は、
図9(A)に示すように、下台36の前側の左右の車輪41,41が置き台25の底板26から前方へ降りて、後側の左右の車輪41,41が底板26の前端際に残った状態である。一斗缶50は、上台37に、上側辺部がない左側から載置される。すると、巻き締め部53は、前述のように上穴45の外側で上台37の上面に当接する。
ここから支持台車35の前端を持ち上げて支持台車35を後方へ押し込む。すると、
図9(B)に示すように、前側の車輪41,41が底板26に再び載置して、水平姿勢となった支持台車35は底板26上を後方へ移動する。このとき、下台36は、下ヒータケース29の上面よりも高い位置となっているので、下ヒータケース29と干渉することなく支持台車35は移動できる。
そして、前後の車輪41,41・・が底板26の角孔31,31・・の位置まで達すると、そのまま各車輪41の下部が各角孔31に嵌合して支持台車35は下方へ沈む。この嵌合位置(載置位置)で一斗缶50は、下ヒータケース29の真上に達している。
支持台車35の載置位置への到着と同時に、下ヒータケース29は、相対的に下台36の下穴40及び上台37の上穴45を貫通して下台36の上面から上方へ突出する。前述のように下ヒータケース29の突出量は、巻き締め部53の突出量よりも大きいので、そのまま一斗缶50の底面部52は、
図6及び
図7に示すように、下ヒータケース29の上面に直接載置される。このとき巻き締め部53は、上台37から浮いた状態となる。この載置位置で、後ヒータケース32及び一斗缶温度センサ34は、胴体部51の背面に当接する。
【0020】
一方、支持台車35の移動と共に、蓋体55に取り付けた吸込パイプ65も一斗缶50と共に後方へ移動する。すると、吸込パイプ65の接続管68も接続部75を後方へ向けた状態で足し油ポンプ80の吸込ブロック81に接近する。但し、底板26上に4つの車輪41,41・・が載置する
図9(B)の状態では、接続部75も吸込ブロック81への差し込み位置より若干高い位置にある。
そして、各車輪41が各角孔31に達して支持台車35が沈み始めると、そのまま接続部75も下降し、支持台車35の嵌合位置で接続部75が吸込ブロック81の接続口83に差し込まれる。なお、接続部75の差込がスムーズに行かなくても、吸込パイプ65は支持部60上で上方に移動できるため、一旦吸込パイプ65を支持部60から持ち上げて吸込ブロック81と干渉しない状態とし、支持台車35を先に嵌合位置に嵌合させる。その後、接続部75を接続口83に差し込みながら吸込パイプ65を支持部60に支持させればよい。
こうして第1経路R1と第2経路R2とが接続された補給経路Rが形成され、吸込パイプ65の差込管66から吸い込まれた調理油は、延設管67、接続管68、足し油ポンプ80、足し油管84、足し油電磁弁86を介して足し油口85に供給可能となる。
【0021】
図1及び
図2に示すように、器体2の底部で左側の油槽4の下方には、底部にフィルタを備えたフィルタリングタンク90が設けられている。フィルタリングタンク90の上方には、各分割油槽4aの底部に設けた排油管91(
図2,
図7)とそれぞれ接続される集合管92が左右方向に設けられている。集合管92の下流端がフィルタリングタンク90に接続されて、集合管92を介して各分割油槽4a内の調理油をフィルタリングタンク90に排出可能となっている。各排油管91には、常閉弁である排油バルブがそれぞれ設けられて、各排油バルブは、正面側に設けた排油レバー93の手動操作で開弁可能となっている。
器体2の下部には、フィルタリングポンプ95(
図3)が設けられている。フィルタリングポンプ95の吸込側は、フィルタリングタンク90の底部に吸込管を介して接続されている。フィルタリングポンプ95の吐出側は、各分割油槽4aごとに分岐した給油管96に接続されている。各給油管96には、常閉弁である給油バルブが設けられて、各給油バルブも、正面側に設けた給油レバー97の手動操作で開弁可能となっている。
【0022】
器体2の正面上部には、各分割油槽4aごとにフライコントローラ100が設けられている。フライコントローラ100の前面には、表示部や操作ボタン等を備えた操作パネル101が設けられている。操作パネル101では、所定の調理モード及びメンテナンスメニューの設定等が可能となっている。
器体2の下部には、バーナコントローラ102が設けられている。バーナコントローラ102には、各センサ等の検出信号が入力される。バーナコントローラ102は、フライコントローラ100からの指示に従い、パルス燃焼器7、ファン16、各ポンプ、保温ヒータ、各電磁弁を制御して被調理物の調理や調理油のフィルタリング等を行う。
【0023】
以上の如く構成されたフライヤー1では、分割油槽4aに所定量の調理油を収容した状態で、ユーザが操作パネル101の運転スイッチをONする。すると、バーナコントローラ102は、燃焼室8内で混合ガスを断続的に燃焼させてパルス燃焼器7をON/OFF動作させる。すなわち、燃焼室8内で混合ガスに点火して燃焼室8内で爆発燃焼させ、その燃焼に伴う燃焼室8内の圧力上昇によって燃焼排気をテールパイプ9へ強制的に排出する。そして、その燃焼排気の排出により負圧となる燃焼室8内に燃料ガスと燃焼用空気とを吸入する。このON/OFF動作が繰り返されることで、分割油槽4aに貯留された調理油が加熱される。
バーナコントローラ102は、調理用温度センサ11から得られる検出温度を監視する。検出温度が所定の調理温度(例えば180~182℃)に到達すると、フライコントローラ100は、操作パネル101に調理OKの表示を出力する等して報知する。この報知がなされたら、調理者は被調理物を入れたバスケットを分割油槽4aに投入する。
【0024】
そして、操作パネル101の操作で調理モードを選択し、調理開始ボタンを押し操作すると、バーナコントローラ102は、予め設定された調理時間とパルス燃焼器7の熱量とで被調理物の加熱調理を行う。タイムアップしたら、フライコントローラ100は、アラームを鳴らして調理終了を報知する。
このとき、パルス燃焼器7から発生する燃焼排気は、排気管17,17を通って油槽4の後側に移動し、マフラー18,18を介して排気アダプタ20内に排出され、排気アダプタ20から前方へ排出される。
なお、調理中は、足し油電磁弁86は閉弁している。よって、被調理物を分割油槽4aに投入した際に油面が足し油口85に達することがあっても、足し油管84側へ逆流することはない。
【0025】
一方、バーナコントローラ102は、運転中は、置き台25に設けた一斗缶温度センサ34から得られる検出温度を監視する。そして、一斗缶50で所定の保温温度が維持されるように下ヒータケース29の電気ヒータ30及び後ヒータケース32の電気ヒータ33をON/OFF制御する。よって、一斗缶50内の固形油は液化状態となる。
そして、バーナコントローラ102は、油面温度センサ10によって必要な調理油の減少を検知するか、或いは所定の調理回数に達するかすると、足し油ポンプ80を駆動させて該当する分割油槽4aの足し油電磁弁86を開弁させる。
すると、一斗缶50内で液化された調理油が、吸込パイプ65の差込管66の吸込口72及び横孔73から吸い込まれる。吸い込まれた調理油は、前述のように、補給経路Rを流れて足し油口85まで供給される。よって、調理油は、足し油口85から前壁の上面を伝って分割油槽4a内に供給されることになる。
【0026】
(一斗缶と下ヒータケースとに係る開示の効果)
上記形態のフライヤー1は、調理油を収容する分割油槽4a(油槽)と、調理油を加熱するパルス燃焼器7(加熱手段)と、分割油槽4aへの補給用の固形油が収納され、底面部52の外周縁に下向きの巻き締め部53が形成された一斗缶50(オイル缶)が載置される置き台25(オイル缶収納部)と、置き台25の底板26(内底面)上に設けられて一斗缶50を加熱する電気ヒータ30と、を備えている。
そして、電気ヒータ30は、平面視で一斗缶50の巻き締め部53の内側に納まる形状を有して底板26上に設けられる下ヒータケース29(ケース)に収容されており、一斗缶50を置き台25に載置した状態では、下ヒータケース29の上面が巻き締め部53の内側で底面部52に直接当接する。
この構成によれば、巻き締め部53を有する一斗缶50内の固形油を効率的に加熱して速やかに液化させることができる。
【0027】
置き台25には、一斗缶50を載置して置き台25に出し入れ可能な支持台車35が設けられ、支持台車35は、巻き締め部53が載置可能な下台36及び上台37(載置台)と、下台36及び上台37を下ヒータケース29の上面より高い位置で支持する車輪41とを有すると共に、下台36及び上台37には、下ヒータケース29が貫通可能な下穴40及び上穴45(開口部)が形成されている。また、底板26には、一斗缶50を載置した支持台車35が一斗缶50の載置位置に到達した際に、車輪41が嵌合する角孔31(孔部)が形成されている。そして、載置位置で車輪41が角孔31に嵌合した状態では、下台36及び上台37が下ヒータケース29の上面より下方に沈み込んで下穴40及び上穴45に下ヒータケース29を相対的に貫通させ、下穴40及び上穴45から上方へ突出した下ヒータケース29の上面を巻き締め部53の内側で底面部52に直接当接させる。
よって、支持台車35を用いても、載置位置では支持台車35を沈み込ませることで一斗缶50の底面部52に下ヒータケース29を直接当接させることができる。よって、一斗缶50の出し入れ作業を迅速に行うことができる。
【0028】
次に、一斗缶と下ヒータケースとに係る開示の変更例について説明する。
支持台車の下台及び上台の形状は適宜変更可能である。下台の左右幅を上台より大きくしてもよいし、下前辺部を省略したり、上側辺部を反対側に設けたりしてもよい。
但し、載置台は、上台と下台とで形成する必要はなく、上台に相当する部分のみを載置台として車輪を設けてもよい。
置き台の底板で車輪が嵌合する孔部は、凹部であってもよい。
支持台車自体を省略することもできる。この場合、調理者が置き台の下ヒータケースに対して一斗缶を直接載置させたり降ろしたりしてもよいし、置き台の底板上に、一斗缶を下ヒータケースの手前まで導くレールを設けたりしてもよい。置き台自体を出し入れ可能な構造としてもよい。
オイル缶は、巻き締め部を有する缶体であれば一斗缶に限らない。蓋体がなく、巻き締め加工された天板部を有するオイル缶でもよい。
後ヒータケースは、省略することができる。オイル缶の左右にヒータケースを設けることもできる。
【0029】
(補給経路の分離に係る開示の効果)
上記形態のフライヤー1は、調理油を収容する分割油槽4a(油槽)と、調理油を加熱するパルス燃焼器7(加熱手段)と、分割油槽4aへの補給用の調理油が収納された一斗缶50(オイル缶)が載置される置き台25(オイル缶収納部)と、分割油槽4aと一斗缶50とを接続し、一斗缶50内の調理油を分割油槽4aに供給可能な補給経路Rとを備える。そして、補給経路Rは、一斗缶50に差し込まれる差込管66と、差込管66と接続されて一斗缶50の外部に突出する接続部75(オイル缶側接続部)と、を含む第1経路R1と、下流端が分割油槽4aに接続され、上流端が、接続部75が挿脱可能に接続される接続口83(油槽側接続部)となる第2経路R2と、に分離して形成されている。
この構成によれば、金属製の差込管66を用いて耐久性を確保しつつ、金属製の差込管66であっても、一斗缶50に抜き差ししたり、差込管66を差し込んだ一斗缶50を置き台25に出し入れしたりする作業を容易に行うことができる。
【0030】
一斗缶50は、置き台25への載置位置と、載置位置からの引き出し位置との間で出し入れ可能となっていると共に、一斗缶50には、上面の開口を覆って差込管66が差し込まれる蓋体55が設けられ、蓋体55は、差込管66の差込状態で接続部75を支持する支持部60を有する。そして、一斗缶50の引き出し位置では、支持部60に支持された接続部75と接続口83とは、互いに対向しており、載置位置への一斗缶50の移動に伴い、接続部75も接続口83との接続位置へ移動する。
よって、一斗缶50を出し入れ可能としても、分離した第1経路R1の接続部75と第2経路R2の接続口83との接続を容易に行うことができる。
【0031】
差込管66と接続部75との間には、左右方向(一斗缶50の出し入れ方向との交差方向)に延びる延設管67が設けられ、延設管67の外周には、係止溝74が形成されており、支持部60は、延設管67を支持すると共に、延設管67の支持状態で係止溝74に係止して延設管67の左右方向の移動を規制する係止片63(係止部)を備えている。
よって、延設管67を介して接続部75の左右方向の移動を規制できるため、接続口83との接続をより容易に行うことができる。また、差込管66及び接続部75は一斗缶50に対して上下方向へ移動できるので、接続口83に接続する際の位置ずれを修正することができると共に、一斗缶50を出し入れする際の上下動を吸収して差込管66等へ加わる負荷を抑制することができる。
第2経路R2には、接続口83に隣接して足し油ポンプ80(ポンプ)が設けられている。よって、接続部75及び接続口83と足し油ポンプ80とが近接し、足し油ポンプ80に至るまでに調理油が固化することを防止して、分割油槽4aへ確実に足し油することができる。
【0032】
次に、補給経路の分離に係る開示の変更例について説明する。
上記形態では、第1経路側の接続部が凸(接続部75)、第2経路側の接続部が凹(接続口83)となっているが、凹凸が逆であってもよい。凹凸以外の接続構造も採用できる。
支持部の構造は、適宜変更可能である。例えば支持部は、延設管を受けるブロック体としてもよい。支持部及び足し油ポンプも、上記形態よりも前寄りに配置してもよい。支持部及び足し油ポンプを前寄りに配置すれば、目視での接続状態の確認が容易に行える。
延設管も、係止溝を右寄りでなく左寄りに形成したり、左右両側に形成したりしてもよい。係止溝を省略することもできる。延設管自体も省略して、差込管に接続管を直接接続することもできる。
【0033】
(差込管に係る開示の効果)
上記形態のフライヤー1は、調理油を収容する分割油槽4a(油槽)と、調理油を加熱するパルス燃焼器7(加熱手段)と、分割油槽4aへの補給用の固形油が収納された一斗缶50(オイル缶)が載置される置き台25(オイル缶収納部)と、分割油槽4aと一斗缶50とを接続して足し油ポンプ80(ポンプ)を有し、一斗缶50内の固形油を分割油槽4aに供給可能な補給経路Rと、を備え、一斗缶50に接続される補給経路Rが、一斗缶50に差し込まれる差込管66となっている。そして、差込管66は、本体部69と、本体部69よりも先端側の吸込部70とを有し、吸込部70の下端面71(先端面)には、吸込部70の内径D2よりも小径の吸込口72が、吸込部70の軸線と同心で形成され、本体部69の内径D1は、吸込部70の内径D2よりも大径となっている。
この構成によれば、吸込部70の先端と固形油との接触面積が小さくなり、比較的小さい力で差込管66を一斗缶50内の固形油へ容易に差し込むことができる。また、小径の吸込口72を介して吸込部70内に入り込んだ固形油が吸込部70内を閉塞しにくくなると共に、吸込部70内から本体部69内に入り込んだ固形油が本体部69内を閉塞しにくくなる。よって、差込管66内に入り込んだ固形油による内部通路の閉塞が防止可能となる。
【0034】
吸込部70の下端面71は、先端側へ向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されている。よって、固形油に差し込む際の抵抗を効果的に低減でき、より容易に差し込み可能となる。
吸込部70の下端面71を除く外周に、吸込部70の径方向を軸線とする複数の横孔73が形成されている。よって、吸込口72から吸込部70内に吸い込まれた固形油が残った状態であっても、吸込口72よりも内径が大きい吸込部70の内周面との間に隙間が形成される。よって、液化した固形油を横孔73から隙間を介して吸込口72内に吸い込むことができ、差込管66内での固形油による閉塞がより効果的に防止可能となる。
【0035】
次に、差込管に係る開示の変更例について説明する。
吸込部の下端面は、テーパ状でなくてもよい。
本体部と吸込部とは、別体でなく一体に形成してもよい。逆に、吸込部において、吸込口を有する下端部分と、横孔を有する上端部分とを分割して形成してもよい。
差込管は、軸線に沿った面で分割される半割構造とすることもできる。
吸込部の外周の横孔は、数や位置を適宜変更できる。横孔の大きさや形状も適宜変更可能で、互いに異なる径や異なる形状となる横孔を設けてもよい。横孔を省略することもできる。
【0036】
その他、各開示に共通する変更例について説明する。
上記形態では、2つの油槽が並設されてそれぞれ分割油槽が形成されるフライヤーを例示しているが、1つの油槽や3つ以上の油槽が並設されてそれぞれ分割油槽が形成されるフライヤーであっても、各開示は適用可能である。
また、各油槽内に仕切板が設けられず、分割油槽でない構造であっても、各開示は適用可能である。
加熱手段は、パルス燃焼器に限らず、バーナや電気ヒータも使用できる。
各開示は、圧力フライヤーにも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1・・フライヤー、2・・器体、3・・フレーム、4・・油槽、4a・・分割油槽、6・・仕切板、7・・パルス燃焼器、25・・置き台、26・・底板、27・・側板、28・・後板、29・・下ヒータケース、30,33・・電気ヒータ、31・・角孔、32・・後ヒータケース、34・・一斗缶温度センサ、35・・支持台車、36・・下台、37・・上台、40・・下穴、41・・車輪、45・・上穴、50・・一斗缶、51・・胴体部、52・・底面部、53・・巻き締め部、55・・蓋体、57・・差込穴、60・・支持部、61・・スリット、62A,62B・・切込み、63・・係止片、65・・吸込パイプ、66・・差込管、67・・延設管、68・・接続管、69・・本体部、70・・吸込部、71・・下端面、72・・吸込口、73・・横孔、74・・係止溝、75・・接続部、80・・足し油ポンプ、81・・吸込ブロック、82・・吐出ブロック、83・・接続口、84・・足し油管、85・・足し油口、86・・足し油電磁弁、100・・フライコントローラ、102・・バーナコントローラ、R・・補給経路、R1・・第1経路、R2・・第2経路。