IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人東京女子医科大学の特許一覧

<>
  • 特許-手術支援装置 図1
  • 特許-手術支援装置 図2
  • 特許-手術支援装置 図3
  • 特許-手術支援装置 図4
  • 特許-手術支援装置 図5
  • 特許-手術支援装置 図6
  • 特許-手術支援装置 図7
  • 特許-手術支援装置 図8
  • 特許-手術支援装置 図9
  • 特許-手術支援装置 図10
  • 特許-手術支援装置 図11
  • 特許-手術支援装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】手術支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/50 20160101AFI20241118BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20241118BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61B90/50
A61B17/29
A61B17/94
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553651
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040423
(87)【国際公開番号】W WO2021085471
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019196522
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】堀瀬 友貴
(72)【発明者】
【氏名】正宗 賢
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325936(JP,A)
【文献】特表2013-529978(JP,A)
【文献】特表2017-528299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0185212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
A61B 17/29
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側直線部と、先端側直線部と、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の間に設けられた側面視で円弧状の湾曲部と、を備えたスリーブと、
前記湾曲部を当該湾曲部の前記円弧状に沿った方向に摺動可能に保持する円弧軌道レールと、
前記円弧軌道レールを保持するレール保持アームと、
前記レール保持アームの回動を許容しながら当該レール保持アームを支持する回動軸受と、
前記スリーブ内に延在する操作アームと、
を備え、
前記基端側直線部と前記先端側直線部とは、一直線上に配置されており、
前記湾曲部の曲率中心は、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の延長線上にあり、且つ、前記回動軸受の回動軸線上にある
ことを特徴とする手術支援装置。
【請求項2】
基端側直線部と、先端側直線部と、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の間に設けられた湾曲部と、を備えたスリーブと、
前記スリーブに取り付けられた側面視で円弧状の摺動部と、
前記摺動部を当該摺動部の前記円弧状に沿った方向に摺動可能に保持する円弧軌道レールと、
前記円弧軌道レールを保持するレール保持アームと、
前記レール保持アームの回動を許容しながら当該レール保持アームを支持する回動軸受と、
前記スリーブ内に延在する操作アームと、
を備え、
前記基端側直線部と前記先端側直線部とは、一直線上に配置されており、
前記基端側直線部及び前記先端側直線部の延長線であって両者の間に位置する延長線は、前記回動軸受の回動軸線と直交しており、
前記摺動部の曲率中心は、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の前記延長線及び前記回動軸受の前記回動軸線の交点から、当該延長線及び当該回動軸線に垂直な方向にオフセットされた位置にある
ことを特徴とする手術支援装置。
【請求項3】
前記円弧軌道レールは、互いに対向して前記湾曲部を摺動可能に挟む一側レール部材及び他側レール部材を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項4】
前記一側レール部材及び前記他側レール部材は、前記湾曲部を摺動可能に挟んだ状態と前記湾曲部を取り外し可能な状態との間で変位するように、互いに結合されている
ことを特徴とする請求項3に記載の手術支援装置。
【請求項5】
前記円弧軌道レールは、互いに対向して前記摺動部を摺動可能に挟む一側レール部材及び他側レール部材を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の手術支援装置。
【請求項6】
前記一側レール部材及び前記他側レール部材は、前記摺動部を摺動可能に挟んだ状態と前記摺動部を取り外し可能な状態との間で変位するように、互いに結合されている
ことを特徴とする請求項5に記載の手術支援装置。
【請求項7】
前記操作アームは、前記スリーブに対して、伸縮機能と、軸回転機能と、を有している
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の手術支援装置。
【請求項8】
前記操作アームは、撮影機能、吸引機能、切除機能、または、治療機能を有している
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブ内に延在する操作アームを備えた手術支援装置に関し、特には、体壁に設けた実孔内にスリーブを挿入して各種の手術を行うことができる手術支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直線状のスリーブと、当該スリーブ内に延在する操作アームと、を備えた手術支援装置が広く利用されている。このような手術支援装置を用いるには、スリーブが貫通するための孔を腹壁や胸壁等に開孔する必要があるが、患部周りを広く切り開く手術(例えば開腹手術や開胸手術)と比較すれば、著しく低侵襲であるという利点がある。
【0003】
直線状のスリーブは、腹壁や胸壁等に開孔した孔回りに、当該孔を支点として、前後方向にも左右方向にも回動させることができる。操作者である医師は、スリーブに対する操作アームの伸縮機能及び軸回転機能に加えて、この回動機能を利用して、患者の患部に対して操作アームの先端を近づけて、所定の処置(撮影、吸引、切除等)を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-239975
【文献】特開2017-189571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の手術支援装置(内視鏡下手術用鉗子)を胸部の内視鏡下手術に利用する場合、鉗子が貫通するための孔は、肋骨を避けて開孔する必要がある。しかしながら、従来の手術支援装置を用いた手術は、医師による極めてデリケートな手技を伴うものであり、症例によっては、手術の成功率を高めるために、肋骨が存在する位置にスリーブ用の孔を設けたい、それが不可ならば肋骨が存在する位置を回動操作の支点にしたい、という強いニーズが存在する。
【0006】
特開2011-239975(特許文献1)には、略中央領域で屈曲したスリーブを備えた手術支援装置が開示されている。しかしながら、特開2011-239975(特許文献1)に開示された装置においても、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方は不可である。
【0007】
特開2017-189571(特許文献2)には、屈曲した先端部を有する手術支援装置が開示されている。しかしながら、特開2017-189571(特許文献2)に開示された装置においても、やはり肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方は不可である。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能な手術支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基端側直線部と、先端側直線部と、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の間に設けられた側面視で円弧状の湾曲部と、を備えたスリーブと、前記湾曲部を当該湾曲部の前記円弧状に沿った方向に摺動可能に保持する円弧軌道レールと、前記円弧軌道レールを保持するレール保持アームと、前記レール保持アームの回動を許容しながら当該レール保持アームを支持する回動軸受と、前記スリーブ内に延在する操作アームと、を備え、前記基端側直線部と前記先端側直線部とは、略一直線上に配置されており、前記湾曲部の曲率中心は、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の延長線上にあり、且つ、前記回動軸受の回動軸線上にあることを特徴とする手術支援装置である。
【0010】
本発明によれば、スリーブは、湾曲部の曲率中心を支点として円弧軌道レールに対して湾曲部が円弧状に摺動移動することと、円弧軌道レールを伴うレール保持アームが回動軸受の回動軸線回りに回動することと、が相俟って、前後方向にも左右方向にも回動することができる。このため、湾曲部の曲率中心を仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能となる。
【0011】
あるいは、本発明は、基端側直線部と、先端側直線部と、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の間に設けられた湾曲部と、を備えたスリーブと、前記スリーブに取り付けられた側面視で円弧状の摺動部と、前記摺動部を当該摺動部の前記円弧状に沿った方向に摺動可能に保持する円弧軌道レールと、前記円弧軌道レールを保持するレール保持アームと、前記レール保持アームの回動を許容しながら当該レール保持アームを支持する回動軸受と、前記スリーブ内に延在する操作アームと、を備え、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の延長線は、前記回動軸受の回動軸線と直交しており、前記摺動部の曲率中心は、前記基端側直線部及び前記先端側直線部の前記延長線及び前記回動軸受の前記回動軸線の交点から、当該延長線及び当該回動軸線に垂直な方向にオフセットされた位置にあることを特徴とする手術支援装置である。
【0012】
当該発明によれば、スリーブは、摺動部の曲率中心を支点として円弧軌道レールに対して摺動部が円弧状に摺動移動することと、円弧軌道レールを伴うレール保持アームが回動軸受の回動軸線回りに回動することと、が相俟って、前後方向にも左右方向にも回動することができる。このため、摺動部の曲率中心を仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能となる。
【0013】
以上の各発明において、前記円弧軌道レールは、互いに対向して前記湾曲部を摺動可能に挟む一側レール部材及び他側レール部材を有していることが好ましい。
【0014】
この場合、湾曲部を摺動可能な態様で確実に保持することができる。
【0015】
また、この場合、更に、前記一側レール部材及び前記他側レール部材は、前記湾曲部を摺動可能に挟んだ状態と前記湾曲部を取り外し可能な状態との間で変位するように、互いに結合されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、円弧軌道レールと湾曲部との取り付け作業及び取り外し作業が容易である。
【0017】
前記操作アームは、前記スリーブに対して、伸縮機能と、軸回転機能と、を有していることが好ましい。
【0018】
更に、前記操作アームは、撮影機能、吸引機能、切除機能、または、治療機能を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スリーブは、湾曲部の曲率中心を支点として円弧軌道レールに対して湾曲部が円弧状に摺動移動することと、円弧軌道レールを伴うレール保持アームが回動軸受の回動軸線回りに回動することと、が相俟って、前後方向にも左右方向にも回動することができる。このため、湾曲部の曲率中心を仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能となる。
【0020】
あるいは、本発明によれば、スリーブは、摺動部の曲率中心を支点として円弧軌道レールに対して摺動部が円弧状に摺動移動することと、円弧軌道レールを伴うレール保持アームが回動軸受の回動軸線回りに回動することと、が相俟って、前後方向にも左右方向にも回動することができる。このため、摺動部の曲率中心を仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る手術支援装置の概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る手術支援装置の概略側面図である。
図3】本実施形態に係る手術支援装置の概略正面図である。
図4】本実施形態に係る手術支援装置の概略背面図である。
図5】本実施形態に係る手術支援装置の概略平面図である。
図6図1のVI部拡大図である。
図7】本実施形態に係る手術支援装置の一側レール部材の概略斜視図である。
図8】本実施形態に係る手術支援装置の他側レール部材の概略斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る手術支援装置の概略側面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る手術支援装置の概略平面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る手術支援装置の概略側面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る手術支援装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
(第1実施形態の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る手術支援装置100の概略斜視図であり、図2は、本実施形態に係る手術支援装置100の概略側面図であり、図3は、本実施形態に係る手術支援装置100の概略正面図であり、図4は、本実施形態に係る手術支援装置100の概略背面図であり、図5は、本実施形態に係る手術支援装置100の概略平面図であり、図6は、図1のVI部拡大図であり、図7は、本実施形態に係る手術支援装置100の一側レール部材30の概略斜視図であり、図8は、本実施形態に係る手術支援装置100の他側レール部材40の概略斜視図である。
【0024】
図1乃至図6に示すように、本実施形態の手術支援装置100は、基端側直線部11と、先端側直線部12と、基端側直線部11及び先端側直線部12の間に設けられた側面視で略半円弧状の湾曲部13と、を有するスリーブ10を備えている。
【0025】
図1乃至図6から明らかなように、本実施形態のスリーブ10の基端側直線部11と先端側直線部12とは、略一直線上に配置されている。また、湾曲部13の曲率中心Cは、基端側直線部11及び先端側直線部12の延長線上に位置している。
【0026】
スリーブ10内には、操作アーム70が延在するようになっている(操作アーム70の基端部及び先端部はスリーブ10から露出される)。操作アーム70は、スリーブ10に対して、伸縮機能(例えば先端側直線部12の先端に対して出没する機能)と、軸回転機能(自らの軸線回りに自転する機能)と、を有している。これらの機能は、スリーブ10が湾曲部13を有するにも拘わらず、朝日インテック株式会社が製造するワイヤを利用することで実現可能であることが確認されている。
【0027】
更に、操作アーム70は、内視鏡を有していて体内状況の撮影機能を実現していてもよいし、吸引器を有していて体内組織の吸引機能を実現していてもよいし、電気メス71を有していて体内組織の切除機能を実現していてもよいし、レーザ光や紫外線の照射器を有していて治療機能を実現していてもよい。
【0028】
また、図1乃至図6に示すように、本実施形態の手術支援装置100は、スリーブ10の湾曲部13を当該湾曲部13の円弧状に沿った方向に摺動可能に保持する円弧軌道レール20を備えている。
【0029】
より具体的には、図7及び図8にも示すように、本実施形態の円弧軌道レール20は、互いに対向する一側レール部材30及び他側レール部材40を有している。そして、本実施形態では、スリーブ10の管径は8mmとなっており(概ね5~12mmの範囲から選択される)、スリーブ10の湾曲部13の曲率半径rは50mm(管径中心に対しての測定値)となっており(概ね30~70mmの範囲から選択される)、これらの寸法に対応するように、一側レール部材30には一側溝部33が形成されており、他側レール部材40には他側溝部43が形成されている。
【0030】
更に、本実施形態では、一側レール部材30及び他側レール部材40は、湾曲部13を摺動可能に挟んだ状態と湾曲部13を取り外し可能な状態との間で変位するように、互いに対して結合可能(例えばネジ25等によって螺合可能)となっている。
【0031】
そして、円弧軌道レール20は、レール保持アーム50の先端部に固定されており、当該レール保持アーム50の基端部は、回動軸受60によって回動可能に支持されている。
【0032】
本実施形態のレール保持アーム50は、回動軸受60の回動軸線Xに対して垂直方向に延びる基端側アーム部51と、当該基端側アーム部51の先端側から回動軸受60の回動軸線Xに対して平行な方向に延びる中間アーム部52と、当該中間アーム部52の先端側から22.5°傾斜して延びる先端側アーム部53と、を有している。
【0033】
例えば、基端側アーム部51の長さは95mmであり、中間アーム部52の長さは73mmであり、先端側アーム部53の長さは105mmであり、回動軸受60の回動軸線Xの方向に見て基端側アーム部51から先端側アーム部53の先端部までの長さは、170mmである。
【0034】
そして、本実施形態において重要な特徴として、湾曲部13の曲率中心Cは、回動軸受60の回動軸線X上にある。
【0035】
その他、回動軸受60は、ハウジング61内に収容され、蓋62によって密閉され、それらのハウジング61ないし蓋62を介して、不図示の基台ないしアーム機構に支持されている。
【0036】
(第1実施形態の作用)
以上のような本実施形態の手術支援装置100は、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にしたい、という場合に極めて有効である。
【0037】
すなわち、回動操作の支点にしたい位置(肋骨が存在していても構わない)を仮想孔に見立てて、本実施形態の手術支援装置100の曲率中心C(基端側直線部11及び先端側直線部12の延長線と回動軸受60の回動軸線Xの交点でもある)が当該仮想孔に位置できるように、当該仮想孔から曲率半径rだけ離れた位置に実孔(直径3cm程度)を開孔する。
【0038】
続いて、当該実孔から、スリーブ10の先端側直線部12を体内に挿入し、更に、湾曲部13の先端側部分を体内に挿入する。
【0039】
この状態で、図1乃至図6に示すように、湾曲部13の基端側部分に、レール保持アーム50の先端部に固定された円弧軌道レール20を摺動可能に取り付ける。
【0040】
これにより、スリーブ10は、湾曲部13の曲率中心Cを支点として、円弧軌道レール20に対して湾曲部13が円弧状に摺動移動することによって、図2の紙面が示す平面内において自由に回動することができる(操作者である医師にとって前後方向に回動することができる)。
【0041】
そして、円弧軌道レール20を伴うレール保持アーム50が回動軸受60の回動軸線X回りに回動可能であることによって、スリーブ10は、当該回動軸線Xに対して垂直な平面内においても、湾曲部13の曲率中心Cを支点として自由に回動することができる(操作者である医師にとって左右方向に回動することができる)。
【0042】
以上の通り、本実施形態の手術支援装置100によれば、湾曲部13の曲率中心Cを仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能である。
【0043】
すなわち、操作者である医師は、従来の直線状の手術支援装置のスリーブがあたかも仮想孔を貫通しているかのような感覚で、手術を実施することができる。これにより、従来の直線状の手術支援装置において培った手技を有効に適用することができる。
【0044】
また、本実施形態の手術支援装置100によれば、1つの実孔に対して、それを取り囲む曲率半径rの円周上の任意の位置を仮想孔に見立てることができるため、複数の患部に対する手術を1つ(ないしより少数)の実孔のみで実現することも可能となり得る。
【0045】
(第2実施形態の構成)
図9は、本発明の第2実施形態に係る手術支援装置200の概略側面図であり、図10は、本発明の第2実施形態に係る手術支援装置200の概略平面図である。
【0046】
図9に示すように、本実施形態の手術支援装置200は、基端側直線部211と、先端側直線部212と、基端側直線部211及び先端側直線部212の間に設けられた側面視で略半円弧状の湾曲部213と、を有するスリーブ210を備えている。
【0047】
但し、第1実施形態のスリーブ10の湾曲部13よりも、第2実施形態のスリーブ210の湾曲部213の方が、曲率半径が小さくなっており(湾曲部213の曲率半径は0.4r)、迂回量が小さくなっている。
【0048】
一方で、本実施形態の手術支援装置200も、第1実施形態の手術支援装置100と同様の円弧軌道レール20を備えている。但し、当該円弧軌道レール20を支持するレール保持アーム250の先端側アーム部253は、中間アーム部252からクランク状に延びていて(図10参照)、中間アーム部252及びスリーブ210に対して、図9の紙面の手前側にオフセットされた位置にある。従って、円弧軌道レール20も、スリーブ210に対して、図9の紙面の手前側にオフセットされた位置にある。
【0049】
そして、円弧軌道レール20の一側溝部33及び他側溝部43に対応する管径(8mm)及び曲率半径(50mm)を有する略1/4円弧状の摺動部270が、円弧軌道レール20によって摺動可能に保持されており、当該摺動部270の両端が、当該摺動部270に一体的に結合された取付部280(対向する一対のL字状部280aと平行な一対の連絡部280bとを有する)を介して、スリーブ210の基端側直線部211に固定されている。
【0050】
本実施形態のその他の構成については、図1乃至図8を用いて説明した第1実施形態と略同様である。図9及び図10において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0051】
(第2実施形態の作用)
以上のような本実施形態の手術支援装置200も、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にしたい、という場合に極めて有効である。
【0052】
すなわち、回動操作の支点にしたい位置(肋骨が存在していても構わない)を仮想孔に見立てて、本実施形態の手術支援装置200の基端側直線部211及び先端側直線部212の延長線と回動軸受60の回動軸線Xとの交点Cが当該仮想孔に位置できるように、当該仮想孔から曲率半径rの0.4倍だけ離れた位置に実孔(直径3cm程度)を開孔する。
【0053】
続いて、当該実孔から、スリーブ210(予め摺動部270が固定されている)の先端側直線部212を体内に挿入し、更に、湾曲部213の先端側部分を体内に挿入する。
【0054】
この状態で、図9及び図10に示すように、スリーブ210に固定された摺動部270に、レール保持アーム250の先端部に固定された円弧軌道レール20を摺動可能に取り付ける。
【0055】
これにより、スリーブ210は、摺動部270の曲率中心を支点として円弧軌道レール20に対して摺動部270が円弧状に摺動移動することによって、図9の紙面が示す交点Cを含む平面に対して手前側に平行にオフセットされた平面内において自由に回動することができる(操作者である医師にとって前後方向に回動することができる)。
【0056】
そして、円弧軌道レール20を伴うレール保持アーム250が回動軸受60の回動軸線X回りに回動可能であることによって、スリーブ210は、当該回動軸線Xに対して垂直な平面内においても、基端側直線部211及び先端側直線部212の延長線と回動軸受60の回動軸線Xとの交点Cを支点として自由に回動することができる(操作者である医師にとって左右方向に回動することができる)。
【0057】
以上の通り、本実施形態の手術支援装置100によれば、基端側直線部211及び先端側直線部212の延長線と回動軸受60の回動軸線Xとの交点Cを仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能である。
【0058】
すなわち、操作者である医師は、従来の直線状の手術支援装置のスリーブがあたかも仮想孔を貫通しているかのような感覚で、手術を実施することができる。これにより、従来の直線状の手術支援装置において培った手技を有効に適用することができる。
【0059】
また、本実施形態の手術支援装置200によれば、1つの実孔に対して、それを取り囲む半径0.4r(図示例の場合)の円周上の任意の位置を仮想孔に見立てることができるため、複数の患部に対する手術を1つ(ないしより少数)の実孔のみで実現することも可能となり得る。
【0060】
なお、場合によっては、図9に二点鎖線で示すように、スリーブ210の湾曲部213の曲率半径を大きくしてもよい、二点鎖線で示された湾曲部213は、略1/4円弧状であって、その曲率半径は、1.41rである。
【0061】
湾曲部213の曲率半径が大きければ、操作アーム70の構成がより容易となり得る。但し、湾曲部213の曲率中心が交点Cからズレることになるため、操作者による前後方向の回動操作の際に、スリーブ210が実孔を伴って元の実孔の位置から僅かに前後方向(図9の左右方向)に移動する必要がある。このため、実質的に、前後方向の回動操作の範囲が制限され得る。
【0062】
(第3実施形態の構成)
図11は、本発明の第3実施形態に係る手術支援装置300の概略側面図であり、図12は、本発明の第3実施形態に係る手術支援装置300の概略平面図である。
【0063】
図11に示すように、本実施形態の手術支援装置300は、基端側直線部311と、先端側直線部312と、基端側直線部311及び先端側直線部312の間に設けられた側面視で略半円弧状の湾曲部313と、を有するスリーブ310を備えている。
【0064】
但し、第1実施形態のスリーブ10の湾曲部13よりも、第3実施形態のスリーブ310の湾曲部313の方が、曲率半径が大きくなっており(湾曲部313の曲率半径は1.5r)、迂回量が大きくなっている。
【0065】
一方で、本実施形態の手術支援装置300も、第2実施形態の手術支援装置200と同様の円弧軌道レール20を備えている。そして、第2実施形態の手術支援装置200と同様に、当該円弧軌道レール20を支持するレール保持アーム250の先端側アーム部253は、中間アーム部252からクランク状に延びていて(図12参照)、中間アーム部252及びスリーブ310に対して、図11の紙面の手前側にオフセットされた位置にある。従って、円弧軌道レール20も、スリーブ310に対して、図11の紙面の手前側にオフセットされた位置にある。
【0066】
そして、円弧軌道レール20の一側溝部33及び他側溝部43に対応する管径(8mm)及び曲率半径(50mm)を有する略1/4円弧状の摺動部270が、円弧軌道レール20によって摺動可能に保持されている。但し、本実施形態では、当該摺動部270の一端のみが、当該摺動部270に一体的に結合された取付部380(L字状部380aと連絡部380bとを有する)を介して、スリーブ310の基端側直線部311に固定されている。
【0067】
本実施形態のその他の構成については、図9及び図10を用いて説明した第2実施形態と略同様である。図11及び図12において、第2実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第2実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0068】
本実施形態の手術支援装置300によっても、基端側直線部311及び先端側直線部312の延長線と回動軸受60の回動軸線Xとの交点Cを仮想孔に見立てることができ、当該仮想孔を肋骨が存在する位置に位置合わせすることが可能である。これにより、肋骨が存在する位置を回動操作の支点にするような使われ方が可能である。
【0069】
すなわち、操作者である医師は、従来の直線状の手術支援装置のスリーブがあたかも仮想孔を貫通しているかのような感覚で、手術を実施することができる。これにより、従来の直線状の手術支援装置において培った手技を有効に適用することができる。
【0070】
また、本実施形態の手術支援装置300によれば、1つの実孔に対して、それを取り囲む半径1.5r(図示例の場合)の円周上の任意の位置を仮想孔に見立てることができるため、複数の患部に対する手術を1つ(ないしより少数)の実孔のみで実現することも可能となり得る。
【0071】
なお、場合によっては、図11に二点鎖線で示すように、スリーブ310の湾曲部313は略U字状に形成されてもよい、但し、実穴の近傍における湾曲部313の曲率中心が交点Cからズレる場合には、操作者による前後方向の回動操作の際に、スリーブ310が実孔を伴って元の実孔の位置から僅かに前後方向(図11の左右方向)に移動する必要があることに留意が必要である。
【符号の説明】
【0072】
10 スリーブ
11 基端側直線部
12 先端側直線部
13 湾曲部
20 円弧軌道レール
25 ネジ
30 一側レール部材
33 一側溝部
40 他側レール部材
43 他側溝部
50 レール保持アーム
51 基端側アーム部
52 中間アーム部
53 先端側アーム部
60 回動軸受
61 ハウジング
62 蓋
70 操作アーム
71 電気メス
100 手術支援装置
200 手術支援装置
210 スリーブ
211 基端側直線部
212 先端側直線部
213 湾曲部
250 レール保持アーム
251 基端側アーム部
252 中間アーム部
253 先端側アーム部
270 摺動部
280 取付部
280a L字状部
280b 連絡部
300 手術支援装置
310 スリーブ
311 基端側直線部
312 先端側直線部
313 湾曲部
380 取付部
380a L字状部
380b 連絡部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12