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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】スニーカー
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/14 20060101AFI20241118BHJP
   A43B 23/16 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A43B23/14
A43B23/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022073396
(22)【出願日】2022-04-27
(65)【公開番号】P2023162772
(43)【公開日】2023-11-09
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512241324
【氏名又は名称】有限会社アクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 記子
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第213550023(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0289880(US,A1)
【文献】特開2018-166881(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211094(JP,U)
【文献】特開平09-206107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/14
A43B 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1から第5の中足骨が形成する横アーチを保持するように、第1中足骨頭の外側に位置する足部分Aと第5中足骨頭の外側に位置する足部分Bとの間の幅が設定され、
該横アーチの位置を支点として第1趾から第5趾が上下に動くための空間を保持できるトゥボックスを備えることを特徴とするスニーカー。
【請求項2】
請求項1に記載のスニーカーにおいて、距骨、立方骨、舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、及び外側楔状骨を覆う部分は、上方から見た場合の踵から内側楔状骨を通過するラインが最も高くなるよう構成されていることを特徴とするスニーカー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスニーカーにおいて、踵骨を包み込むように保持するための踵部分を細くしたカウンターを有することを特徴とするスニーカー。
【請求項4】
請求項3に記載のスニーカーにおいて、トゥボックスを構成する先芯、内側楔状骨を覆う部分又はカウンターの少なくとも1つには、型で成形され形状維持が可能な素材を使用することを特徴とするスニーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スニーカーに関し、特に、足の骨格の配置を適正な状態に矯正することが可能なスニーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用されている靴の中でも、スニーカーは極めて多くの利用者があり、メーカーも多種多様なスニーカーを提供している。
「スニーカー」は、国語辞典では「ゴム底の布製又は皮製のスポーツシューズ」と定義され、ウィキペディア(登録商標)では、「足を覆う上層部を柔らかい皮革や人工素材で覆い、靴底は地面との摩擦を最適に保つためにラバーを使用、足首や甲を補強するヒモやストラップが装備されているもの」という説明もある。
本発明では、これらを包含する概念であり、上層部の硬さは、柔らかいものに限定されないし、補強手段はヒモ等に限らず、マジックテープ(登録商標)やワイヤーを使用しても良い。
【0003】
現在販売されている多くのスニーカーは、履き心地が重視され、足の大きさに比較し、ゆったりとしたサイズのものが多く選ばれている。
【0004】
他方、現代人には、「浮き指」や踵骨が倒れている「外反足」など足に関するトラブルが発生している。「浮き指」は、趾(あし先の部分、あしの指)が地面から浮いており、足全体で体を支えていない状態で、前傾姿勢や猫背等の原因となる。
【0005】
また、「外反足」は、踵骨が体の内側方向に倒れている状態であり、歩行姿勢が不安定で、膝痛の原因となる。「外反足」は、足裏の三つのアーチ(横アーチ(拇趾球と小指球との間の窪み)、内側縦アーチ(拇趾球と踵との間の窪み)、外側縦アーチ(小指球と踵との間の窪み))が崩れていることが原因の1つと言われている。
【0006】
このような足裏のアーチの崩れに対応するため、靴の中にインソールを挿入することが、特許文献1等で提案されている。
このようなインソールは、現状を改善するには一定の効果を奏するが、その靴を脱ぐと、元の形状に戻りやすく、結果的には、足の抱える問題を根本的に治療することには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-89833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、足の骨格の配置を適正な状態に矯正し、足指が動くことで筋肉が育ち、靴を脱いだ状態でもその状態を維持可能にするスニーカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のスニーカーは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 第1から第5の中足骨が形成する横アーチを保持するように、第1中足骨頭の外側に位置する足部分Aと第5中足骨頭の外側に位置する足部分Bとの間の幅が設定され、該横アーチの位置を支点として第1趾から第5趾が上下に動くための空間を保持できるトゥボックスを備えることを特徴とするスニーカーである。
【0010】
(2) 上記(1)に記載のスニーカーにおいて、距骨、立方骨、舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、及び外側楔状骨を覆う部分は、上方から見た場合の踵から内側楔状骨を通過するラインが最も高くなるよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のスニーカーにおいて、踵骨を包み込むように保持するための踵部分を細くしたカウンターを有することを特徴とする。
【0012】
(4) 上記(3)に記載のスニーカーにおいて、トゥボックスを構成する先芯、内側楔状骨を覆う部分又はカウンターの少なくとも1つには、型で成形された形状維持が可能な素材を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、第1から第5の中足骨が形成する横アーチを保持するように、第1中足骨頭の外側に位置する足部分Aと第5中足骨頭の外側に位置する足部分Bとの間の幅が設定され、該横アーチの位置を支点として第1趾から第5趾が上下に動くための空間を保持できるトゥボックスを備えていることを特徴とするスニーカーであるため、各足指に力を入れる動作や、各足指で踏ん張る動作を行う習慣が身に付き、「浮き指」を解消することが可能となる。
【0014】
また、距骨、立方骨、舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、及び外側楔状骨を覆う部分は、上方から見た場合の踵から内側楔状骨を通過するラインが最も高くなるよう構成されているため、足の甲を覆う部分が骨格に沿って形成され、足の甲を適正な状態で押圧し、各足指に加わる力を増加させることが可能となる。
【0015】
また、踵骨を包み込むように保持するための踵部分を細くしたカウンターを有することにより、踵まわりが小さめであり、内側楔状骨を覆う部分のアッパーの形状も相まって、履き口が小さいデザインとなり、足首まわりが細めなスニーカーを実現できる。これにより、踵の位置が安定化し、横アーチ部分と踵との距離を適正に保持することで、内側縦アーチや外側縦アーチも形成でき、「外反足」を抑制することも可能となる。
【0016】
さらに、トゥボックスを構成する先芯、内側楔状骨を覆う部分又はカウンターの少なくとも1つには、型で成形され形状維持が可能な素材を使用することで、木型を用いる革靴と同じ手法でスニーカーを制作することで、足の骨格に沿った形状を実現でき、フィット感があり、骨格を支える機能を持ち、歩きやすいスニーカーが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】足の骨を上面から見た平面図である。
図2図1の骨のレイアウトを用いて、各骨の配置を説明する図である。
図3図2の各線(α、β、γ)における断面図を示す。
図4図1の骨のレイアウトを用いて、足裏のアーチを説明する図である。
図5図4のアーチYを説明する側面図である。
図6】スニーカーで押圧(保持)する部分を説明する図である。
図7】足の甲における稜線(上方か見た場合、内側楔状骨と踵を結ぶライン)の一部を説明する図であり、先芯、足の甲を覆う部分、カウンターの配置を示す図である。
図8】趾の動きと足の甲部分の押さえとの関係を説明する図であり、先芯、足の甲を覆う部分、カウンターの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のスニーカーについて、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、図6が示すように、第1から第5の中足骨が形成する横アーチを保持するように、第1中足骨頭の外側に位置する足部分Aと第5中足骨頭の外側に位置する足部分Bとの間の幅が設定され、第1趾から第5趾が動くための空間を保持できるトゥボックスを備えていることを特徴とするスニーカーである。特に、第2趾から第4趾の少なくとも1つは、第1趾よりもより大きく上下に動くことを可能としている。
【0019】
ここで、足の骨格について簡単に説明する。図1は、足の骨格を上方から見た状態を示している。図2に示すように、曲線αからγの位置で骨格の並びを観察すると、図3に示すような配置が形成される。曲線αは、第1~第5中足骨の頭骨付近を通る曲線(横アーチ)である。曲線βは、第1~第中足骨の底骨付近を通る線である。曲線γは、内側楔状骨から立方骨付近を通る線である。
図3を見ると、曲線α、β及びγではアーチ形状となっていることが分かる。図3の各曲線の形状、特に、骨格の上側のラインは、左右対称な曲線ではなく、足の内側が少し高くなるような「へ」字状を形成している。
【0020】
図4が示すように、足裏に形成される主なアーチは、第1~第5中足骨が形成する横アーチXだけでなく、第1中足骨と踵骨との間で、足の内側に位置する骨格の配列が形成する内側縦アーチYと、第5中足骨と踵骨との間で、足の外側に位置する骨格の配列が形成する外側縦アーチZがある。図5は、内側縦アーチYを示す足の骨格の配列を説明する側面図である。
【0021】
従来のように、足裏のアーチを維持するために、アーチ形状に沿って凸部を形成したインソールや凸状部を有する中底を用いることは、理にかなった方法である。しかしながら、凸部で足裏の一部を持ち上げ、骨格の配置を適正な位置に戻す場合、凸部を挟む両側の骨格は互いに離れる方向に移動し、その結果、隣接する骨格同士の間隔が広がることとなる。この状態で足を保持しても、アーチ形状を維持するための筋力をつけることができない。
【0022】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、足の先端(第1趾から第5趾)を積極的に動かすことでアーチ形状を保つ筋力が獲得できることを見出した。ただし、靴の中で足が自由に動く場合は、そもそも直立状態が安定しないだけでなく、歩行もし難くなる。特に、スニーカーのような運動することを前提とした靴においては、これは重要な問題となる。そこで、横アーチの形状を保持するように、第1中足骨の骨頭の外側に位置する足部分と第5中足骨の骨頭の外側に位置する足部分との間の幅(足幅)の位置を安定させ、この横アーチの位置を支点に各趾を自由に動かすことを可能にした。
【0023】
本発明で上記「足幅」は重要なパラメータであるが、この足幅に代わり、「ワイズ」(足囲。中足骨と基節骨との間の関節部分を通る足の外周。)で規定することも可能である。さらに、上記支点の上下動を抑える場合は、「足幅」だけでなく「ワイズ」も考慮してスニーカーの内側の形状を規定することが好ましい。
【0024】
本発明を適用したスニーカーの場合、従来の靴の足幅よりも5~10%程度、小さくなる。例えば、JIS規格のワイズBサイズ(長さ23.5cm)の場合、足幅は88mmであるが、本発明のスニーカーでは81mmとなり、JIS規格の足幅よりも約8%程度小さい。
【0025】
なお、従来のインソールでは、横アーチに対応した凸部を設けた場合、各趾は靴の先端方向かつ中底方向に押し付けられ、各趾の自由な動きがむしろ難しくなる。この点、本発明は、横アーチを形成して保持するように足部分A及びBの位置が決められ、横アーチの位置を安定させているため、各趾はむしろ自由に動くことが可能となる。特に、第2趾から第4趾の上下の可動域はより大きくなる。
【0026】
横アーチを安定化させるため、第1中足骨頭の外側に位置する足部分に当接する内側側面部分1と、第5中足骨頭の外側に位置する足部分に当接する外側側面部分2との間の足幅が変化しないよう、特に広がらないように、これらの側面部分1及び2を含むパーツの素材に、本革のような型で形成され形状維持が可能な素材を使用するのが好ましい。このような素材としては、本革に限らず、溶剤を漬けると硬化し、保形する素材や、硬い不織布、さらには、革と紙の重層的なものなど、種々のものが利用可能である。例えば、後述するカウンターには、床革と天然パルプ主体の低密度紙である含浸紙を張り合わせたもの、また、トゥボックスの先芯素材には、ポリエステル不織布に合成樹脂を含ませることで成形性と耐性に優れた、ヨーロッパ製でポリテックスなども利用可能である。そして、このような素材を成形する際に使用する木型を、JIS規格の立位荷重ワイズよりも小さい設計をすることで、横アーチを形成し易くしている。
【0027】
図8の矢印Mのように、各足指の動きを確保するため、第1趾から第5趾が動くための空間を保持できるトゥボックスを設けている。当該トゥボックスの形状を維持するためには、図7及び8に示すように、本革などで構成される先芯4を設けることが好ましい。
【0028】
また、各趾の動き(図8の矢印M)に伴い、足の甲側や裏側に配置される筋肉が収縮・弛緩を行う。このため、各足指の動きに合わせて、内側楔状骨を含む足の骨格も上下に移動する。図7及び8に示すように、足の甲を覆う部分5、特に、距骨、立方骨、舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、及び外側楔状骨を覆う部分については、骨格に沿った形状として、骨の特定部位を押さえるのではなく、骨格に沿った面状に、足の甲の部分を包み込むように抑えるのが好ましい。
【0029】
本発明のスニーカーでは、足の甲の部分5は、骨格(距骨、立方骨、舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、及び外側楔状骨)に沿って形成されており、図7に示すように、上方から見た場合の踵(足首の中心:T1)から内側楔状骨(内側楔状骨の頂部:T2)を通過するラインEが最も高い、甲の稜線となるよう構成されている。通常のスニーカーのアッパー(表甲)は、図7の中央ラインD(第2趾と中間楔状骨を通過するライン)に沿って稜線が形成されている。これは製造のし易さやシンメトリーな美観が影響している。しかしながら、本発明のスニーカーのアッパーの稜線はラインEに設定している。この結果、骨格の形状に沿って甲部分を包み込むように、全面的に押さえることができ、足への局所的な負荷も軽減される(図8の押圧力(矢印F4)の方向を参照)。
【0030】
また、甲の骨格に沿った形状のアッパーを形成するため、少なくとも内側楔状骨を覆う部分については、上述したような「型で成形され形状維持が可能な素材」を用いることが好ましい。このような素材を使用することで、より足に馴染むアッパーとすることができる。さらに、クッション材をアッパーに付加することで、足を守るアッパー構造を実現できる。また、縫製方法も、従来のスニーカーのように途中でアッパーを裏返しにする縫製方法ではなく、木型を用いた革靴と同様な縫製方法が好ましい。
【0031】
本発明のスニーカーでは、図6乃至8に示すように、踵部分を細くしたカウンター3を有している。
本発明の「踵部分を細く」とは、外反足を抑制できる程度に細いことを意味している。踵の幅を規定するJIS規格は無いが、本発明のスニーカーに使用される木型は、通常に提供されるJIS規格の木型と比較しても、同じ足のサイズ(長さ)に対し、ワイズは小さく設計され、踵はさらに小さく設計されている。一般的なスニーカーは、ワイズE~EE程度で製作されているのに対し、本発明のスニーカーはワイズAA(AAはJIS規格のAよりもさらに細い)またはBで製作され、ワイズと連動して踵も細くなる。
【0032】
また、踵部分を細くしたカウンターと、内側楔状骨を覆う部分のアッパーの形状も相まって、本発明のスニーカーは履き口が小さいデザインとなる。具体的には、アッパーが深くなり足首近くの内径となることと、カウンターを形成する木型が細いため、履き口が小さくなる。これによりスニーカーが踵骨を保持する効果がより高くなる。このように、カウンター等で踵骨の位置が安定することで、内側縦アーチや外側縦アーチも形成でき、「外反足」を抑制することも可能となる。
【0033】
「踵部分を細くしたカウンター」を形成するには、素材に本革などの「型で成形され形状維持が可能な素材」を用いることが好ましい。本革で木型に沿って形状を整えることで、カウンターは木型に沿った楕円状に細くなり、通常のスニーカーより、踵まわりが小さくなり、また、足首まわりも細めとなり、踵をしっかり包み込み(図6の押圧力(矢印F3)の方向参照。なお、全ての矢印F3は同じ押圧力を意味するのではなく、抑える方向を意味し、場所によって押圧力も異なる。)、踵を立たせる働きをする。また、カウンターもロングカウンターを使用し、踵の包み込み効果をより高めることも可能である。ここで、「ロングカウンター」とは、図8に示すように、中足骨骨頭手前まで長さのあるカウンターを意味する。このロングカウンターにより、足の両脇から足を支え、横アーチの保持に貢献している。このロングカウンターは、従来のスニーカー製法では組み込むことが困難である。また、本発明のスニーカーでは、カウンターの内側の先端と外側の先端の位置とは同じではなく、例えば、10mm程度、内側の先端の方が外側の先端より長さCLだけ長くなっている。これは、内側アーチを形成する土踏まずは深いため、足を支える部分がより長くなるためである。
【0034】
また、縫製されたアッパー(製甲)に後からカウンターを入れ込んで(後入れカウンター)、木型に密着するように時間を掛けて固めることで、足がホールドされ、足が前にずれ難く、脱げ難くなるという効果も期待できる。
従来のスニーカー製法は、アッパーを裏返したままミシンで縫製され、そこにカウンターを入れ込んだ後、表面にひっくり返してしてセットし、靴底に熱で圧着して製造している。よって、物理的にロングカウンターをいれることは難しい。
一方、後入れカウンターは、本革の靴づくりの工程では通常行われていることであり、このように革靴製法と同じプロセス、釣り込みの段階でカウンターを入れるものである。本スニーカーには、そもそもカウンターを入れてから裏返すという発想も工程もない。
さらに本革の靴の場合、木型にアッパーをいれて2~3日は寝かせるのが通常であるが、スニーカーの場合は半日も入れていない。例えば、本革を使用した場合には、生地の上に木型の力を借りて成形するため、本革の靴と同様に、履き感は従来のスニーカーと大きく異なる。
【0035】
本発明のスニーカーでは、カウンターで踵の位置が安定するだけでなく、図6のように、横アーチ部分もしっかりと保持されているため、内側縦アーチや外側縦アーチも適正な距離で形成することが可能となる。その結果、「外反足」を抑制することも可能となる。
【0036】
本発明のスニーカーの特徴として、先芯を入れることにより、トゥボックスの高さの維持ができ、足指が自由に動くことを可能としている。さらに、硬いカウンターや、ロングカウンターを入れることで、踵まわりや3つのアーチの保持に貢献している。さらに、ワイズ幅が小さいため、特に、横アーチを効果的に維持している。
そして、本発明のスニーカーの製造に使用する木型は、ワイズBと細く、踵はさらに細い設計となっている。ロングカウンターの使用に加え、アッパーの設計においても、木型の細さからの密着性を高め、深さからの履き口を小さくし、踵の安定感を高めている。
【0037】
なお、本発明の実施に際しては、本発明の構成に加え、必要に応じて、横アーチ、内側縦アーチ、外側縦アーチなどの足裏の各種部位に対応する凸部、または、踵を保持する凹部などをスニーカーの中底やインソールに形成し、本発明の効果に加え、従来技術の効果を付加することも可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、足の骨格の配置を適正な状態に矯正し、靴を脱いだ状態でもその状態を維持可能にするスニーカーを提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8