(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】運搬台車用キャスター脱輪防止用ストッパーおよびこれを用いたキャスター部の取付方法
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20241118BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B62B5/00 K
F16B5/06 A
(21)【出願番号】P 2022087281
(22)【出願日】2022-05-27
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】398075851
【氏名又は名称】株式会社ホシプラ
(74)【代理人】
【識別番号】100104581
【氏名又は名称】宮崎 伊章
(74)【代理人】
【識別番号】100126549
【氏名又は名称】中川 信治
(72)【発明者】
【氏名】星川 翔太
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120889(JP,A)
【文献】特開2020-015449(JP,A)
【文献】特開2009-248954(JP,A)
【文献】特開2006-062429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
B65D 19/00-19/44
F15B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬台車のキャスター脱輪防止用ストッパーにおいて、
そのキャスター脱輪防止用ストッパーに、長手方向と短手方向、および天面と底面を定義したとき、
長手方向の一方端に取手が設けられ、これを取手端とし、
その底面に、前記取手端から他方端である差込端まで長手方向に沿って直進して伸び、両端を貫通する底面貫通溝が設けられ、
その天面に、前記差込端から長手方向に伸びる天面溝が設けられ、
前記天面溝は、前記差込端を貫通し、取手端方向に伸びて取手端の少なくとも5mm手前で終端をむかえ、
前記天面溝の取手端側終端と取手の間に指置き凹部が設けられ、
前記天面溝を分断して係止片が設けられ、
前記係止片は、その差込端側から取手端側に向かって高さを高くしながら伸び、前記差込端側においては前記天面溝の溝高さより低いが、前記差込端側の係止端においては前記天面溝より高さが高いものであり、
前記係止片は、その素材の弾性により、天面側からの押圧を受けたときに底面側に向かって変形することができるとともに、その押圧が失われたときに元形状に戻ることができるものである
キャスター脱輪防止用ストッパー。
【請求項2】
請求項1記載のキャスター脱輪防止用ストッパーを用いた運搬台車の載置台底面におけるキャスター部の取付方法であって、
前記キャスター部は、キャスターとキャスター支持具とから構成され、前記キャスター支持
具は、前記キャスターの回転軸を中心に回転自在に保持する保持部位と、載置台底面にスライド挿入させるキャスターガイドとから構成され、
前記載置台底面には、少なくとも運搬台車の進行方向に沿って補強リブ
が設けられ、
前記キャスターガイドをスライド挿入させうるキャスター固定溝と、前記キャスターガイドを前記キャスター固定溝に挿入した状態で前記ストッパーを囲んで差し込みうるストッパー差込部とを有し、
前記ストッパー差込部の載置台側は、前記補強リブの一部であって、前記ストッパーの前記底面貫通溝にスライド嵌合するオス形状のストッパーレールを設け、
前記ストッパー差込部の載置台反対側は、前記ストッパーの天面溝が、スライド摺動自在に嵌合するオス形状のストッパーゲートを設け、
前記キャスター固定溝において、前記キャスターガイドを前記キャスター固定溝に挿入して、前記キャスターを前記載置台底面に仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定工程に続き、前記ストッパー差込部において、前記ストッパーの差込端から、前記ストッパーレールに前記底面貫通溝をスライド嵌合させ、かつ前記ストッパーゲートに前記天面溝をスライド摺動自在に嵌合
させた状態でスライド移動させ、
前記ストッパーの係止片が、前記ストッパーゲートに達した後のスライド移動において、前記ストッパーゲートからの押圧により前記係止片が載置台側に押されて変形し、
前記ストッパーをさらにスライド移動させ、前記係止片が前記ストッパーゲートを通過した時点で、前記係止片の形状が復元することで、前記係止片と前記ストッパーゲートとが係止めすることにより、前記キャスターを前記載置台底面に本固定する本固定工程とを含む、
キャスター部の取付方法。
【請求項3】
請求項2記載の取付方法によってキャスターが固定された運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車の組立てにおいて用いるキャスター脱輪防止用ストッパーと、このストッパーを用いるキャスター部取付方法、並びにこの取付方法によってキャスターが取り付けられた運搬台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運搬台車は、製造現場で多く利用されている重量物の運搬に用いる用具であるが、近年では一般家庭用途にも普及し始めている。運搬台車は輸送コストを含む輸送の容易さから、台車のパーツの状態で輸送して、輸送先のユーザー側で組み立てるタイプのものが多い。組立てにはボルトを用いるものが多いが、最近では組立てにボルトによる固定を行わない、ドライバー不要のボルトレスタイプの運搬台車も現れてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これら従来のボルトレスタイプの運搬台車では、特にキャスター部分の固定が不十分で、運搬台車使用中にキャスターの脱輪が発生することがあった。またキャスターの脱輪を防止するためにキャスター固定の手段が複雑なものになってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情に鑑みて、本発明では、ボルトレスの組立て方法ながら、キャスターの部分の固定が容易であり、かつキャスターの脱輪を確実に防止できる脱輪防止用ストッパーと、これを用いた運搬台車の取付方法、並びにその取付方法を用いた運搬台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、運搬台車のキャスター脱輪防止用ストッパーの構造に特に着目し、
そのキャスター脱輪防止用ストッパーに、長手方向と短手方向、および天面と底面を定義したとき、
長手方向の一方端に取手が設けられ、これを取手端とし、
その底面に、前記取手端から他方端である差込端まで長手方向に沿って直進して伸び、両端を貫通する底面貫通溝が設けられ、
その天面に、前記差込端から長手方向に伸びる天面溝が設けられ、
前記天面溝は、前記差込端を貫通し、取手端方向に伸びて取手端の少なくとも5mm手前で終端をむかえ、
前記天面溝の取手端側終端と取手の間に指置き凹部が設けられ、
前記天面溝を分断して係止片が設けられ、
前記係止片は、その差込端側から取手端側に向かって高さを高くしながら伸び、前記差込端側においては前記天面溝の溝高さより低いが、前記差込端側の係止端においては前記天面溝より高さが高いものであり、
前記係止片は、その素材の弾性により、天面側からの押圧を受けたときに底面側に向かって変形することができるとともに、その押圧が失われたときに元形状に戻ることができるものであることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキャスター脱輪防止用ストッパーを用いた運搬用台車の組立方法は、ボルトの締め付けによる固定を必要としない、いわゆるボルトレスタイプであるので、ユーザーでの組み立て時にドライバーを用意する必要がない。またこのキャスター脱輪防止用ストッパーは、樹脂製載置台を有する運搬台車への取り付けにおいては、載置台裏面に設けられる補強リブの一部を利用して、スライド嵌合で固定するので、載置台強度に影響を与えることなく取り付けることができる。
【0008】
本発明のキャスター部の取付方法によれば、ストッパーの天面と底面の両方で載置台底面と接触しているので、上下方向、進行方向および進行方向に垂直方向のいずれの振動を受けてもストッパーが外れにくい構造になっている。このため従来のいわゆるボルトレスの組立て運搬台車と比べても、その脱輪防止効果は高い。
【0009】
加えて連結具としてのボルトを持たないので、経年劣化によるねじのサビやねじ頭のつぶれがない。その反面、キャスター部の分離作業が容易であるので、キャスター部を取り外すして場所を取らずに保管することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】底面側から見た運搬台車の概要斜視図である。
【
図3】ストッパーの概要斜視図である。(a)差込端があらわれる側、(b)取手端があらわれる側
【
図5】キャスター部取付前の載置台底面の概要図である。(a)高角度斜視(b)低角度斜視
【
図6】キャスターガイド挿入の様子を示す図である。(a)挿入直前、(b)挿入途中
【
図7】ストッパー差し入れの様子を示す図である。(a)差入れ途中(b)差入れ完了
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を用いて説明するが、本発明は図面に示された様態のみに限られるものではない。
【0012】
〔運搬台車〕
図1に本発明よりキャスター31が取り付けられた運搬台車10の概要斜視図を示す。
図2は底面からみた斜視図である。本発明でいう運搬台車10は、載置台11の底面(載置台底面40)にキャスター31が取り付けられたものであって、載置台11に搭載した重量物を人力で移動させるものである。載置台11とキャスター31で構成されるものであってもよいし、さらに手押しハンドルが配されたものであってもよい。そのなかでもユーザー側で組み立てるタイプのものである。なかでもユーザー側での組み立てにおいてボルトによる固定を行わないタイプのもの(ボルトレス)である。
【0013】
載置台11の素材は問わないが、特に軽量化のために樹脂製であるものが本発明に適している。特に樹脂製の載置台11では、強度向上のため、載置台底面40に、台車進行方向とその直角方向に、(運搬台車使用状態で)下方に凸の補強リブ41が設けられるが、本発明では台車の進行方向に設けられた補強リブ41の一部を利用する。
【0014】
〔ストッパー〕
本発明のストッパー20は、ユーザー側で組み立てるタイプの上記運搬台車10において、載置台底面40にキャスター部30を取り付けた工程(仮固定)の後に、キャスター部30が脱輪しないように取り付ける工程(本固定)において取り付けるストッパー20である。
【0015】
本発明のストッパー20の形状は略直方体形状であり、長手方向と短手方向を持つ。また説明の便宜のために天面と底面を定義する。本発明のストッパー20は、載置台底面40に取り付ける。この載置台底面40が上方を向いた取付状態において、上方を向く方を天面とし、反対側を底面とする。すなわち実際に運搬台車10を使用する状態からみればストッパー20の天面は下方を向く。長手方向のそれぞれの端は、構造や作用にちなんで、取手21を取り付けられた側を取手端とし、その反対側を差込端とする。
【0016】
本発明のストッパー20の外観を
図3の斜視図で示した。天面が上方、底面が下方であり、
図3(a)は、差込端があらわれる側、
図3(b)は取手端があらわれる側である。
【0017】
長手方向の取手端には、天面側に凸する取手21が設けられる。取手21は、後述する本固定工程におけるストッパー差込部43でのスライド差し込み作業や、収納などのためのキャスター部30の分離作業において、ストッパー20のスライド移動を容易に行うために、指でつまむためのものである。
【0018】
底面には、取手端から差込端まで長手方向に沿って直進して伸び、取手端と差込端の両端を貫通する底面貫通溝22が設けられる。底面貫通溝22は後述の通り、載置台底面40に設けられたストッパーレール44でスライド移動するものであるから、ストッパーレール44の形状に対してスライド嵌合のメス形状である。
【0019】
その天面には、天面溝23、係止片25および指置き凹部24が設けられる。天面溝23は差込端を貫通して始まり、長手方向に伸び、取手端少なくとも5mm手前で取手端側の終端をむかえる。天面溝23は後述の通り、載置台底面40に設けられたストッパーゲート45を摺動しながらスライド移動するものであるから、ストッパーゲート45の形状に対して摺動自在なメス形状である。
【0020】
天面溝23の取手端側終端から取手21までの間には、取手21を指で容易につまめるようにするための指置き凹部24を設ける。キャスター部30分離作業の便宜から、
図1の通り、後述する係止片25に対して、少なくとも5mm以上、好ましくは指1-2本分程度(20-30mm程度)離して設けることが好ましい。
【0021】
係止片25は、天面溝23の途中に天面溝23を遮るように設けられる。係止片25の高さは、取手端に向かってその高さを高くする。差込端側においては天面溝23の溝高さより低いものであるが、取手端側の末端である係止端においては天面溝23よりも高さが高くなる。なお、
図3より分かる通り、係止端にむかってその高さを高くするとは一次関数的に高さが高くなることではない。加えて係止片25は、弾性力発揮できる素材、例えば弾性力のある樹脂などをその素材とする。このような素材を用いることで、係止片25は、天面側からの押圧を受けたときに底面側に向かって変形することができるとともに、その押圧が失われたときに元形状に戻ることができる。
【0022】
〔キャスター部〕
図4は、キャスター部30の概要を示す斜視図である。組立てできる運搬台車10において、キャスター31はそれ自体ではなく、載置台底面40に取り付け容易にするため、キャスター31とキャスター支持具のユニットとして存在する。これをキャスター部30と呼ぶ。キャスター支持具は、キャスター31の回転軸を中心に回転自在に保持する保持部位32と、載置台底面40にスライド挿入させるキャスターガイド33とから構成される。なおキャスター31は取り付け後、運搬台車10の進行方向に固定される固定キャスター、旋回可能な自在旋回キャスター、切替で自在旋回のロックができる切替キャスターのいずれであってもよい。
【0023】
〔載置台底面〕
図5は、キャスター部取付前の載置台底面の概要図である(a)高角度斜視(b)低角度斜視である。上記の通り、本発明のストッパー20は載置台底面40の所定箇所に差し込んで使用するものであるから、これを用いて本発明のキャスター31取り付け方法を実施するためには、載置台底面40に、キャスター部30をスライド挿入させることできる構造とともに、鍵と鍵穴の関係のごとく本発明のストッパー20を差し込むための構造が求められる。
【0024】
載置台底面40には、キャスター固定溝42とストッパー差込部43を設ける。キャスター固定溝42は、キャスター部30のキャスターガイド33をスライド挿入させるための部位である。ストッパー差込部43は、前述のキャスターガイド33を前記キャスター固定溝42に挿入した状態で、ストッパー20を囲んで差し込めるようにするための部位である。
【0025】
ストッパー差込部43は、載置台側のストッパーレール44と載置台11から遠い側(反対側)のストッパーゲート45で構成される。ストッパーレール44は、ストッパー20の底面貫通溝22にスライド嵌合できるオス形状である。ただし、ストッパーレール44は一定形状で延伸しているものだけでなく、
図5のように一定形状が複数個所で分断された状態で延伸している状態であってもよい。ストッパーゲート45は、ストッパー20の天面溝23が、スライド摺動自在に嵌合するオス形状である。またストッパーゲート45はストッパー20が完全に差し込まれたときに、その側面で係止片25からの係止を受ける部位でもある。
【0026】
〔キャスター部の取付方法〕
次に、上記構造を持つキャスター部30を、上記構造を持つ載置台底面40に固定し、脱輪防止のために上記構造を持つストッパー20を用いる、本発明のキャスター部30の取付方法を説明する。取付方法には、キャスター部30を載置台底面40に挿入固定する仮固定工程とこれに引き続き行われるストッパー20による本固定工程に分かれる。なお、もちろん上記2工程が含まれていれば、運搬台車組立のための他の工程を経てもよい。
【0027】
(仮固定工程)
図6は、仮固定工程において、キャスターガイド挿入の様子を示す図である。
図6(a)は挿入直前の様子を示し、
図6(b)は挿入途中の様子を示す。仮固定工程では、載置台底面40のキャスター固定溝42において、キャスターガイド33をキャスター固定溝42に挿入して、キャスター部30を載置台底面40に仮固定する。この工程はボルトレスタイプだけでなく、ボルトの締め付けで固定する組立てタイプの運搬台車におけるキャスター取付工程でもよく知られている工程である。
【0028】
(本固定工程)
図7では、本固定工程における、ストッパー20の差入れの様子を示す図である。
図7(a)は差入れ途中の様子を示し、
図7(b)は差入れ完了の様子を示す。前記仮固定工程に続き、ストッパー20を使ってキャスター31の脱輪防止を行う本固定工程を行う。本固定工程では、ストッパー差込部43にストッパー20を置いて、ストッパーレール44に底面貫通溝22をスライド嵌合させるとともに、ストッパーゲート45に前記天面溝23にスライド摺動自在に嵌合にさせる。この状態でストッパー20をスライド移動させる。ストッパー20の係止片25が、前記ストッパーゲート45に達すると、ストッパーゲート45が係止片25に当接し始め、さらにスライドさせると、ストッパーゲート45からの押圧を受けた係止片25が載置台側に押されて変形する。さらにスライド移動させると、係止片25がストッパーゲート45を通過する。すると係止片25が受けていたストッパーゲート45からの押圧がなくなるため、係止片25の形状が復元する。これによりストッパーゲート45の側面と係止片25とが係止めする。すると差しまれたストッパー20が抜けなくなり、キャスター部30がロックされることで、キャスター31の脱輪が防止される。
【0029】
(キャスター部分離工程)
キャスター部30を載置台底面40から分離させる際には、まずストッパー20の係止片25に指で押圧を与えながらストッパー20を引き抜く。その後上記仮固定工程の逆作業をおこなうことで、容易にキャスター部30を分離させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のストッパー20およびこれを用いたキャスター部30の取付方法で組み立てられた、いわゆるボルトレスの組立て運搬台車10では、組立が容易でありながら脱輪防止効果が高く、かつキャスター部30の分離も容易であるので、産業上の利用可能性が大きいものである。
【符号の説明】
【0031】
10 運搬台車
11 載置台
20 ストッパー
21 取手
22 底面貫通溝
23 天面溝
24 指置き凹部
25 係止片
30 キャスター部
31 キャスター
32 保持部位
33 キャスターガイド
40 載置台底面
41 補強リブ
42 キャスター固定溝
43 ストッパー差込部
44 ストッパーレール
45 ストッパーゲート