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特許7588878電動モビリティおよび施設内におけるシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電動モビリティおよび施設内におけるシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241118BHJP
   B62K 17/00 20060101ALI20241118BHJP
   B62K 5/01 20130101ALI20241118BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G05D1/43
B62K17/00
B62K5/01
G08G1/00 X
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022501619
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038167
(87)【国際公開番号】W WO2021166317
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020027256
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512250902
【氏名又は名称】WHILL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】清水 星矢
(72)【発明者】
【氏名】河原 圭佑
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/013043(WO,A1)
【文献】特許第5035802(JP,B2)
【文献】特許第4576445(JP,B2)
【文献】特開2019-144167(JP,A)
【文献】特開2003-024390(JP,A)
【文献】特開2018-160270(JP,A)
【文献】特開2018-169787(JP,A)
【文献】特開2016-027456(JP,A)
【文献】特開平11-231935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 ~ 1/87
B62K 17/00
B62K 5/01
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座して乗る電動モビリティであって、
車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記利用者が着座する座席とを有するモビリティ本体と、
前記モビリティ本体に設けられたセンサと、を備え、
前記モビリティ本体は、自動運転および自動停止の少なくとも一方のために前記センサの検出データを用いて前記駆動装置を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記センサの前記検出データにおいて、前記座席に着座した前記利用者の前方の範囲に、前記利用者の身体の一部、衣服の一部、又は所持品の一部が存在し得る範囲である検出キャンセル範囲を設定可能に構成され、
前記電動モビリティは、前記利用者の足載せ面の下方、前記利用者の足載せ部の前端部、又は、前記モビリティ本体の下方から、前記検出キャンセル範囲の下側範囲の回避対象を検出する下側センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記下側センサによって前記下側範囲に前記回避対象が検出されると、前記駆動装置を回避動作のために制御する、電動モビリティ。
【請求項2】
前記検出キャンセル範囲を前記モビリティ本体の前後方向に調節可能である、請求項1に記載の電動モビリティ。
【請求項3】
施設内におけるシステムであって、
請求項1又は2に記載の複数の電動モビリティと、
前記複数の電動モビリティの各々の車体情報を受信する管理コンピュータと、
受信した前記車体情報を表示する表示装置と、を備え、
前記管理コンピュータは、前記複数の電動モビリティの各々について、前記下側センサによって前記回避対象が検出されていること、又は、前記回避動作が行われていることを示す情報を受信し、
前記表示装置は、前記情報に基づき、前記複数の電動モビリティの各々について、前記下側センサによって前記回避対象が検出されていること、又は、前記回避動作が行われていることを表示する、システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記センサの前記検出データに基づき、当該電動モビリティの走行中に当該電動モビリティの荷物載置部に置かれている荷物が前記センサの検出範囲であって前記検出キャンセル範囲外の前記検出範囲に入っている侵入状態であるとの判断処理を行い、
前記制御装置は、前記侵入状態であると判断した時に、当該電動モビリティに設けられた報知装置を用いた報知処理および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更処理の少なくとも一方を行う、請求項1又は2に記載の電動モビリティ。
【請求項5】
前記走行状態の変更として、前記制御装置は、前記駆動装置の制御によって当該電動モビリティを減速走行状態とする、請求項4に記載の電動モビリティ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記報知処理として、前記荷物の前記検出範囲への侵入の程度を前記報知装置としての表示装置に示す、請求項4又は5に記載の電動モビリティ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記判断処理において前記侵入状態でないと判断された時に、前記報知装置によって前記侵入状態でないことを示す、請求項4~6の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記センサの前記検出データに基づき、当該電動モビリティの走行中に、前記利用者の身体の一部、前記利用者が持っている保持品、前記利用者が身に付けている物、又は当該電動モビリティの荷物載置部に置かれている荷物が、前記センサの検出範囲であって前記検出キャンセル範囲外の前記検出範囲に入っている侵入状態であるとの判断処理を行い、
前記制御装置は、前記侵入状態であると判断した時に、当該電動モビリティに設けられた報知装置を用いた報知処理および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更処理の少なくとも一方を行い、
前記制御装置は、所定のコンピュータへの入力又は前記モビリティ本体に設けられた入力装置への入力に基づき、当該電動モビリティが停止している状態で前記侵入状態であるか否かの停止状態判断処理を行い、
前記制御装置は、前記停止状態判断処理において前記侵入状態であると判断した時に、前記報知装置によって前記侵入状態であることを示し、前記停止状態判断処理において前記侵入状態でないと判断した時に、前記報知装置によって前記侵入状態でないことを示す、請求項1又は2に記載の電動モビリティ。
【請求項9】
前記報知装置は表示装置又は音声発生装置であり、
前記制御装置は、前記利用者に対して、前記利用者の膝を幅方向外側に徐々に移動させるための指示を前記表示装置又は前記音声発生装置を用いて行う、請求項8に記載の電動モビリティ。
【請求項10】
前記制御装置は、前記モビリティ本体に設けられた表示装置又は所定の端末の表示装置に、前記検出キャンセル範囲を調節するための1つ又は複数の変更候補範囲を表示させる表示処理を行い、
前記制御装置は、前記所定の端末又は入力装置に前記変更候補範囲のうち一つを選択する入力があると、当該入力に対応した前記変更候補範囲に前記検出キャンセル範囲を変更する、請求項1、2、および4~9の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項11】
施設内におけるシステムであって、
請求項4~9の何れかに記載の複数の電動モビリティと、
前記複数の電動モビリティの各々の車体情報を受信する管理コンピュータと、
受信した前記車体情報を表示する表示装置と、を備え、 前記管理コンピュータは、前記複数の電動モビリティについて、前記侵入状態であること、又は、前記侵入状態であることによって前記電動モビリティの前記走行状態の変更が行われていることを示す情報を受信し、
前記表示装置は、前記情報に基づき、前記複数の電動モビリティの各々について、前記侵入状態であること、又は、前記走行状態の変更が行われていることを表示する、システム。
【請求項12】
前記表示装置は、前記侵入状態となってからの経過時間に応じた表示、又は、前記走行状態の変更が行われてからの経過時間に応じた表示を行う、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記表示装置は、前記複数の電動モビリティの各々について、前記座席に設けられた着座センサの検出結果と共に、前記侵入状態であること、又は、前記走行状態の変更が行われていることを表示する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記表示装置は、前記複数の電動モビリティの各々について、前記モビリティ本体に設けられた前記荷物載置部における荷物の有無を検出する利用センサの検出結果と共に、前記侵入状態であること、又は、前記走行状態の変更が行われていることを表示する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項15】
利用者が着座して乗る電動モビリティであって、
車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記利用者が着座する座席とを有するモビリティ本体と、
前記モビリティ本体に設けられたセンサと、を備え、
前記モビリティ本体は、自動運転および自動停止の少なくとも一方のために前記センサの検出データを用いて前記駆動装置を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記センサの前記検出データにおいて回避対象を検出し、
前記センサは、前記モビリティ本体の下方、前記利用者の足載せ面の下方、又は、前記利用者の足載せ部の前端部から、前記回避対象を検出するセンサであり、
前記制御装置は、前記センサによって前記回避対象が検出されると、前記駆動装置を回避動作のために制御する、電動モビリティ。
【請求項16】
前記センサの位置は、平面視において前記モビリティ本体の車両幅方向の中心線が前記センサを通る位置である、請求項15に記載の電動モビリティ。
【請求項17】
一対の前輪を備え、
前記センサは、前記一対の前輪の前端よりも後方に配置されている、請求項16に記載の電動モビリティ。
【請求項18】
一対の前輪を備え、
前記センサは、前記一対の前輪の間から前記回避対象を検出する、請求項15に記載の電動モビリティ。
【請求項19】
施設内におけるシステムであって、
請求項15~18の何れかに記載の複数の電動モビリティと、
前記複数の電動モビリティの各々の車体情報を受信する管理コンピュータと、
受信した前記車体情報を表示する表示装置と、を備え、
前記管理コンピュータは、前記複数の電動モビリティの各々について、前記センサによって前記回避対象が検出されていること、又は、前記回避動作が行われていることを示す情報を受信し、
前記表示装置は、前記情報に基づき、前記複数の電動モビリティの各々について、前記センサによって前記回避対象が検出されていること、又は、前記回避動作が行われていることを表示する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モビリティおよび施設内におけるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような施設内におけるシステムとして、複数の電動モビリティを用い、利用者が前記複数の電動モビリティのうち一つの電動モビリティを施設内において手動運転によって移動させ、利用者による前記電動モビリティの利用が終了すると前記電動モビリティが自動運転によって待機場所まで移動するものが知られている。例えば特許文献1を参照されたい。
【0003】
また、自動運転可能な一人乗りモビリティを用いたサービスが知られている。例えば特許文献2~6を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-144167号公報
【文献】特開2003-024390号公報
【文献】特開2018-160270号公報
【文献】特開2018-169787号公報
【文献】特開2016-027456号公報
【文献】特開平11-231935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるサービスのコンセプトはあるが、電動モビリティを利用する利用者の年齢、身体状態、言語、常識等は様々である。このため、実際にこのようなサービスを安定して提供することは難しい。
例えば、一人乗り等の小型電動モビリティのシェアリングサービスを提供する場面では、利用者の体格、手荷物等が互いに大きく異なる。また、このようなシェアリングサービスでは、比較的短い説明を受けた後に電動モビリティを操作する場合が多い。
【0006】
このような説明だけでは、利用者の身体の一部、衣服、荷物等が電動モビリティのセンサの検出範囲に侵入し、これによりセンサのセンシングに影響を与える場合がある。当該現象は、センサを用いた障害物の認識精度に影響を与え、自動停止、自動走行の精度にも影響を与える。一方、例えば利用者の身長、利用者の姿勢等によって、利用者の膝等の身体の一部がどうしてもセンサの検出範囲に侵入してしまう場合がある。特に、利用者の腰が曲がっており利用者の脚が長い場合は、利用者の膝が一人乗りの小型電動モビリティの前端よりも前方に突出する場合もある。また、利用者の衣服がどうしてもセンサの検出範囲に侵入してしまう場合がある。シェアリングサービスを安定して提供するためには、センサの検出範囲のうち利用者の前方の検出範囲に検出キャンセル範囲を設定し、検出キャンセル範囲の前後方向の範囲を利用者の身長等に応じて変更可能とすることが好ましい。しかし、この場合、利用者の衣服の形状によっては、衣服の下端が電動モビリティの前輪に巻き込まれる可能性が高くなる場合がある。
【0007】
上記の事情に鑑み、シェアリングサービスを安定して提供することができる電動モビリティ、施設内におけるシステム、および貸出ステーションが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、利用者が着座して乗る電動モビリティであって、車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記利用者が着座する座席とを有するモビリティ本体と、前記モビリティ本体に設けられたセンサと、を備え、前記モビリティ本体は、自動運転および自動停止の少なくとも一方のために前記センサの検出データを用いて前記駆動装置を制御する制御装置を有し、前記制御装置は、前記センサの検出データにおいて、前記座席に着座した前記利用者の前方の範囲に、前記利用者の身体の一部、衣服の一部、又は所持品の一部が存在し得る範囲である検出キャンセル範囲を設定可能に構成され、前記電動モビリティは、前記利用者の足載せ面の下方、又は、前記利用者の足載せ部の前端部から、前記検出キャンセル範囲の下側範囲の回避対象を検出する下側センサをさらに備え、前記制御装置は、前記下側センサによって前記下側範囲に前記回避対象が検出されると、前記駆動装置を回避動作のために制御する。
【0009】
本発明の第2の態様は、利用者が乗る電動モビリティであって、車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置とを有するモビリティ本体と、前記モビリティ本体に設けられたセンサと、を備え、前記モビリティ本体は、自動運転および自動停止の少なくとも一方のために前記センサの検出データを用いて前記駆動装置を制御する制御装置を有し、前記制御装置は、前記センサの前記検出データに基づき、当該電動モビリティの走行中に、前記利用者の身体の一部、前記利用者が持っている保持品、前記利用者が身に付けている物、又は当該電動モビリティの荷物載置部に置かれている荷物が、前記センサの検出範囲に入っている侵入状態であるとの判断処理を行い、前記制御装置は、前記侵入状態であると判断した時に、当該電動モビリティに設けられた報知装置を用いた報知処理および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更処理の少なくとも一方を行う。
【0010】
本発明の第3の態様は、施設内におけるシステムであって、前記電動モビリティと、前記電動モビリティの車体情報を受信する管理コンピュータと、受信した前記車体情報を表示する表示装置と、を備え、前記管理コンピュータは、前記電動モビリティについて、前記侵入状態であること、又は、前記侵入状態であることによって前記電動モビリティの前記走行状態の変更が行われていることを示す情報を受信し、前記表示装置は、前記情報に基づき、前記電動モビリティが前記侵入状態であること、又は、前記走行状態の変更が行われていることを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電動モビリティの斜視図である。
図2】本実施形態の電動モビリティの一部分解断面図である。
図3】本実施形態の電動モビリティの座席ユニット、カバー部等を取り外した状態の底面図である。
図4】本実施形態の電動モビリティの平面図である。
図5】本実施形態の旅客ターミナルT内のシステムの概略図である。
図6】本実施形態の電動モビリティの制御ユニットのブロック図である。
図7】本実施形態の電動モビリティの座席ユニットの斜視図である。
図8】本実施形態に用いられる管理コンピュータのブロック図である。
図9】本実施形態の管理データの一例を示すテーブルである。
図10】本実施形態の電動モビリティの平面図である。
図11】本実施形態の電動モビリティの制御装置の処理の例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態の電動モビリティの表示装置の表示例を示す図である。
図13】本実施形態の電動モビリティの表示装置の表示例を示す図である。
図14】本実施形態の第1の変形例の電動モビリティの断面図である。
図15】本実施形態の第2の変形例の電動モビリティの断面図である。
図16】本実施形態の第3の変形例の電動モビリティの断面図である。
図17】本実施形態の第4の変形例の電動モビリティの斜視図である。
図18】本実施形態の第5の変形例の電動モビリティの側面図である。
図19】本実施形態の電動モビリティの平面図である。
図20】本実施形態の電動モビリティの平面図である。
図21】本実施形態の電動モビリティの一部分解断面図である。
図22】本実施形態の電動モビリティの一部分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る空港(施設)におけるシステムが、図面を参照しながら以下に説明される。
当該システムは、図5に示されるように、空港の旅客ターミナルT内に配置された複数台の電動モビリティMと、複数の電動モビリティMを管理する管理コンピュータ100と、を備えている。管理コンピュータ100は空港内に配置されていなくてもよい。
【0013】
先ず、本実施形態の電動モビリティMについて簡単に説明する。なお、当該システムにおいて、本実施形態の電動モビリティMとは異なる電動モビリティを用いることも可能である。
この電動モビリティMは、図1図4に示されるように、一対の前輪(車輪)10および一対の後輪(車輪)20を有するモビリティ本体30を備える。また、モビリティ本体30は、座席ユニット(座席)Sを備える。前輪10および後輪20の他に車輪が設けられてもよく、前輪10および後輪20の数が前記以外であってもよい。また、前輪10および後輪20の一方が無くてもよい。本実施形態の電動モビリティMは、一人の利用者Uが座席ユニットSに着座して乗る電動車椅子の一種である。
モビリティ本体30は、一対の前輪10および一対の後輪20の少なくとも一方を駆動するためのモータ(駆動装置)MTを有する。
【0014】
本実施形態の説明では、図3および図4に示す車両前後方向は以下の説明で前後方向と称される場合があり、図3および図4に示す車両幅方向は以下の説明で幅方向又は左右方向と称される場合がある。なお、車両前後方向と電動モビリティMおよびモビリティ本体30の前後方向は一致しており、車両幅方向と電動モビリティMおよびモビリティ本体30の幅方向は一致している。
【0015】
本実施形態では、図3に示すように、一対の後輪20はそれぞれモータMTと接続され、各モータMTは対応する後輪20を駆動する。各モータMTの駆動力が対応する前輪10に動力伝達手段によって伝達されてもよい。動力伝達部材はベルト、ギヤ等である。
【0016】
各前輪10は、車軸11に取付けられたハブ14と、ハブ14に支持された複数のローラ支軸(図示せず)とを備え、複数のローラ13はそれぞれローラ支軸に回転可能に支持されている。なお、ハブ14が車軸11にベアリング等を用いて取付けられていてもよく、ハブ14が車軸11に緩衝部材、中間部材等を用いて取付けられていてもよい。
【0017】
各ローラ13は対応するローラ支軸の軸線周りに回転する。つまり、各前輪10の外周面は複数のローラ13によって形成され、各前輪10は走行面に対して全方向に移動する全方向車輪である。なお、図3および図4では、各ローラ13の溝の図示が省略されている。
本実施形態では、各後輪20は、図示しない車軸と、車軸に取付けられたハブ21と、ハブ21の外周側に設けられ、外周面がゴム状弾性を有する材料を用いて形成された外周部材22とを有するが、前輪10と同様に全方向車輪を用いてもよい。この場合、前輪10が全方向車輪ではなく通常の車輪となる。後輪20の車軸はモータMTの主軸と共通でもよい。
【0018】
モビリティ本体30の構造は適宜変更可能である。本実施形態のモビリティ本体30は、地面に沿って延びるベース部32と、ベース部32の後端側又は中央部から上方に延びている座席支持部33とを有する。座席支持部33の上端側に座席ユニットSが取付けられている。
本実施形態のベース部32は、図3に示される金属製のベースフレーム32aを少なくとも部分的に覆うプラスチック製のカバー部32bを有する。カバー部32bは、座席ユニットSに座る利用者Uの足を載せる部分、荷物を載置する部分等として使用される。
【0019】
本実施形態では、座席ユニットSは、背凭れ部40と、座面部50とを有する。背凭れ部40は座面部50の後端から上方に延びている。座面部50のクッション51は取外し可能であり、クッション51が取り外されると、座席支持部33の上面および/又は座面部50の下部構造52が露出する。
座席支持部33には、上下方向に延びるバッテリ収容部34が形成され、上下方向に長手を有するバッテリBAがバッテリ収容部34に収容される。
【0020】
座席支持部33の上端部には、図2に示されるように、座面部50の下部構造52の一部として、着座センサ53が設けられている。本実施形態の着座センサ53は、座席支持部33の上端部に支持された可撓性部材54と、可撓性部材54の下方に配置された検出機器55とを有する。検出機器55は、スイッチ、圧力センサ等である。本実施形態では検出機器55はスイッチである。なお、検出機器55が、可撓性部材54に取付けられた撓みセンサであってもよい。このように、検出機器55は、可撓性部材54の撓みを検出できる機器であればよい。なお、着座センサ53は、クッション51の下方、下面、中等に設けられた検出機器55であってもよい。この場合は可撓性部材54を設ける必要はない。また、着座センサ53として、クッション50に利用者Uが乗ったことを検出する他の態様の公知のセンサが用いられてもよい。
【0021】
本実施形態では、クッション51上に利用者Uが乗ると、可撓性部材54の一部、例えば中央側が下方に弾性変形することによって検出機器55が押され、検出機器55が押されることによって所定の信号(電流)等が検出機器55から後述の制御装置80に送信される。つまり、利用者Uが座面部51に乗っていることが制御装置80によって認識される。
【0022】
座席ユニットSは、右のコントロールアーム43と左のコントロールアーム43とを有する。
各コントロールアーム43の上面にはアームレスト43aが固定されている。例えば、利用者U(運転者)は一対のコントロールアーム43のアームレスト43aに両腕をそれぞれ置く。また、利用者Uは一対のコントロールアーム43の上端に両手をそれぞれ置く。本実施形態ではコントロールアーム43とアームレスト43aの両方が設けられているが、コントロールアーム43又はアームレスト43aのみが設けられていてもよい。この場合、利用者Uは、コントロールアーム43の上に腕および手の少なくとも一方を置き、又は、アームレスト43aの上に腕および手の少なくとも一方を置くことができる。
【0023】
右側のコントロールアーム43又はアームレスト43aの上端には操作部(ジョイスティック)44aを有するコントローラ44が設けられている。力が加えられていない状態では、コントローラ44内に配置された付勢部材(図示せず)によって操作部44aは中立位置に配置される。
【0024】
なお、コントローラ44がモビリティ本体30から分離していてもよい。この場合、コントローラ44は、例えば、利用者のタブレットコンピュータ、ゲーム用コントローラに類似するコントローラ等であり得る。タブレットコンピュータの場合、操作部44aは設けられず、利用者はタブレットコンピュータの画面のタッチスクリーン機能を用いて電動モビリティMの走行方向、走行速度等を入力する。コントローラ44がモビリティ本体30から分離している場合、利用者Uではなく他の者が利用者Uが乗っている電動モビリティMの走行を操作することも可能である。
【0025】
操作部44aの変位方向および変位量に応じた信号がコントローラ44から後述する制御ユニット60に送信され、受信する信号に応じて制御ユニット60が各モータMTを制御する。
【0026】
左側のコントロールアーム43又はアームレスト43aの上端には、電動モビリティに関する各種設定を行うための設定部(入力装置)45が設けられている。各種設定の例として、最高速度の設定、運転モードの設定、電動モビリティのロックの設定がある。設定部45には複数の操作ボタン、表示部等が設けられている。
図1に示されるように、電動モビリティMは、左のコントロールアーム43の上端面から上方に突出している表示装置200を備えている。表示装置200は、左のコントロールアーム43の上端面から上方に向かって延びている支持部材210によって、左のコントロールアーム43に支持されている。なお、図4では、表示装置200の図示が省略されている。
【0027】
表示装置200には有線又は無線によって後述の制御装置80から情報が送信され、表示装置200は受信した情報を表示する。当該情報は、例えば、電動モビリティMの走行速度の情報、バッテリBAの状態に関する情報、ステレオカメラ(第1センサ)90等のセンサによって検出された障害物の位置の情報、当該障害物が走行の障害になるか否かの判断結果の情報、地図情報、および走行経路の情報等を含む。また、表示装置200は例えばタッチスクリーン機能等の入力手段を備えており、表示装置200に入力された情報は制御装置80に送信される。
【0028】
なお、表示装置200がプロセッサ、記憶装置等を有する制御装置を備え、当該制御装置が制御装置80の機能の一部又は全てを担ってもよい。また、表示装置200が支持部材210に取外し可能に取付けられていてもよい。
【0029】
制御ユニット60は、図6に示すように、各モータMTを駆動するモータドライバ70と、制御装置80とを有する。
モータドライバ70はバッテリBAに接続されている。また、モータドライバ70は各モータMTにも接続されており、モータドライバ70は各モータMTに駆動電力を供給する。
【0030】
制御装置80は、図6に示されるように、CPU等のプロセッサ81と、不揮発性メモリ、ROM、RAM等を有する記憶装置82と、無線通信および有線通信で情報の送受信を行う送受信部83とを有する。記憶装置82には電動モビリティMを制御するための走行制御プログラム82aが格納されている。プロセッサ81は走行制御プログラム82aに基づき作動し、コントローラ44および設定部45からの信号に基づき、各モータMTを駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信する。
【0031】
三次元カメラであるステレオカメラ(センサ)90が右のコントロールアーム43の上端側および左のコントロールアーム43の上端側にそれぞれ取付けられている。コントロールアーム43が設けられない場合はアームレスト43aの前端側にステレオカメラ90が設けられてもよい。図7に示されるように、各ステレオカメラ90は、一対のレンズユニット91と、一対のレンズユニット91を支持するカメラ本体92とを備えている。なお、図7では、ステレオカメラ90の内部構造を示すためにカバーが取り外され、座席ユニットS等も概略的に描かれている。
【0032】
カメラ本体92の内部には一対の撮像素子93(図6)が設けられ、一対の撮像素子93は一対のレンズユニット91にそれぞれ対応している。各撮像素子93はCMOSセンサ等の周知のセンサである。各撮像素子93は制御装置80に接続されている。一例として、各ステレオカメラ90の検出範囲(第1の侵入検出範囲)DA1は、電動モビリティの前方および前輪10の幅方向外側である(図4)。
【0033】
モビリティ本体30は荷物ラックである荷物載置部42を有し、荷物載置部42はモビリティ本体30における後端部又は座席ユニットSの背面側に設けられている。本実施形態では、荷物載置部42は、図1および図2に示されるように、モビリティ本体30の後端部および座席ユニットSの背面によって支持されている。荷物載置部42は、背凭れ部40に沿って上下方向に延びる一対のフレーム46を有する。一対のフレーム46は背凭れ部40の支持も行っている。当該構造は、電動モビリティを前後方向にコンパクトにする上で有用である。
【0034】
荷物載置部42は、フレーム46の下端からそれぞれ車両後方に延びる一対の下面フレーム47と、一対の下面フレーム47を互いに接続し、一対の下面フレーム47から上方に延びる背面フレーム48とを有する。また、荷物載置部42は、一対の下面フレーム47によって支持された下面プレート47aと、下面プレート47aの後端から背面フレーム48の上端の近傍まで延びている背面プレート48aとを有している。
【0035】
一対の下面フレーム47、一対の背面フレーム48、および下面プレート47aが荷物載置部42の底面部および背面部を構成しているので、荷物載置部42自体は小さいが、機内持ち込み用のスーツケース等の少し大きな荷物も荷物載置部42に安定して載せることがでる。
【0036】
図2に示されるように、モビリティ本体30における座席支持部33若しくは座席ユニットSの後端部又は荷物載置部42の下方には、第2センサであるLiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)95が取付けられている。本実施形態では、図4の検出範囲(第2の侵入検出範囲)DA2に亘ってLiDAR95がレーザ光を走査し、物体に当たって跳ね返るレーザ光をLiDAR95が検出する。当該検出結果(検出データ)を用いて、制御装置80は、電動モビリティの幅方向外側および後方である検出範囲DA2の障害物を検出する。障害物は、例えば、人、動物、植物、人の衣服、人の所持品である。障害物は、例えば、壁、比較的大きな物体、段差等である。他の例では、LiDAR95は、後輪20が落下する又は嵌る可能性のある段差、穴、溝等の障害物を検出してもよい。また、図4の検出範囲DA1に亘って、各ステレオカメラ90による前記障害物の検出が行われる。
【0037】
なお、電動モビリティMの後方および側方の障害物を検出するための他のステレオカメラが設けられてもよく、障害物を検出できる公知のレーダー、ミリ波センサ等の他のセンサが設けられてもよい。また、電動モビリティの前輪10の幅方向外側および前方の障害物を検出するために、ステレオカメラ90の代わりにLiDAR、レーダー、ミリ波センサ等の他のセンサが設けられてもよい。
【0038】
制御装置80は、記憶装置82に格納されている回避制御プログラム82bおよび自動運転プログラム82cに基づき作動する。制御装置80はステレオカメラ(第1センサ)90の視差画像(検出データ)を処理して距離画像(検出データ)を作成する。そして、制御装置80は、距離画像中において前記障害物を検出する。
【0039】
制御装置80は、検出範囲DA1,DA2内でステレオカメラ90およびLiDAR95によって得られるデータ(検出データ)を二次元の平面視画像に変換して障害物の認識をしてもよいし、前記データを3次元空間内のデータとして扱って障害物の認識をしてもよい。制御装置80は、その他の方法で検出範囲DA1,DA2内において検出された障害物を認識してもよい。
【0040】
制御装置80は、記憶装置82に格納された自動運転プログラム82cに基づき、電動モビリティMに備えられたGPS受信機、オドメータ、ステレオカメラ90、LiDAR95等の検出結果を用いて公知の自己位置推定を行う。また、制御装置80は、自動運転プログラム82cに基づき、検出される障害物と、記憶装置82に格納されているマップデータと、自己位置推定の結果とを用いて、例えば出発地から目的地迄のルート設定および自動運転を行うことができる。
【0041】
一例では、利用者Uが表示装置200に設けられた入力装置201(図6)を用いて行き先(目的地)を指定し、制御装置80が現在の自己位置である出発地から当該行き先迄のルート設定および自動運転を行う。入力装置201は、例えば、表示装置200のタッチスクリーン機能、表示装置200に設けられたボタンであり得る。入力装置201の代わりに、コントローラ44、設定部45等に設けられたボタン等の入力装置が用いられてもよい。
【0042】
制御装置80は、記憶装置82に格納された回避制御プログラム82bに基づき、例えば検出範囲DA1およびDA2における所定の範囲に前記障害物が検出された時に、回避動作のための制御指令によって各モータMTを制御し、および/又は、報知装置を作動させる。回避動作の例は、回避対象を避けるための各モータMTの回転速度の低下又は停止(自動停止機能)、回避対象側への電動モビリティMの移動を制限するための各モータMTの制御等である。回避対象は、前記障害物のうち、センサ、電動モビリティM等に対して所定距離(1m、数十cm等)よりも近い距離に存在して電動モビリティMの走行の障害になる可能性が高い障害物である。
【0043】
当該システムは様々な旅客ターミナルTに適用可能である。一例として、当該システムを、図5に示される旅客ターミナルTの概略図を用いて説明する。なお、本実施形態では、一例として、旅客ターミナルTの保安検査後のスペースにおいて電動モビリティMが使用されるが、旅客ターミナルTのその他のスペースで電動モビリティMが使用されてもよい。
【0044】
旅客ターミナルTには、一例として、セキュリティースクリーニングエリア1の出口の近傍に管理場所である管理ステーション(貸出ステーション)2が設けられ、管理ステーション2には複数の電動モビリティMが配置されている。また、管理ステーション2は受付3を有し、受付3にはコンピュータ4が設置されている。コンピュータ4は、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ等の公知のコンピュータである。コンピュータ4は通信ネットワーク、通信回線等を介して、管理コンピュータ100と接続されている。
【0045】
管理コンピュータ100は、図8に示されように、CPU、RAM等を有するプロセッサ101と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置102と、表示装置103と、無線通信および有線通信で情報の送受信を行う送受信部104とを有する。記憶装置102には複数の電動モビリティMを管理するための管理データ102aが格納されている。管理データ102aは、コンピュータ4の表示装置5や管理コンピュータ100の表示装置103に管理テーブルを表示させるためのデータである。
【0046】
管理データ102aは、一例では図9に示される管理テーブルを表示装置5,103に表示させるデータである。図9に示される管理テーブルはタイムテーブルを含む態様である。当該管理テーブルの複数の行にはそれぞれ複数の電動モビリティMの識別情報(識別子)が記載され、各行には対応する電動モビリティMに関する車体情報、利用者による使用予定(利用情報)、利用者による使用状況(利用情報)、利用者の搭乗券に記載されているフライト情報等が表示される。フライト情報は、利用者の行き先の情報、当該行き先への希望到着時刻に関する時刻情報等を含む情報であるとも言える。
【0047】
また、図9において、番号1の電動モビリティMは8:00からユーザAによって使用されている。これが前記使用状況の一例として図9の管理テーブルに表示されている。図9において、番号3の電動モビリティMはユーザCによる利用が終わり、自動運転で管理ステーション2に戻っている途中である。この場合、前記使用状況の一例として、番号3の電動モビリティMは利用済であることが図9の管理テーブルに表示されている。
【0048】
また、図9に示すように、管理テーブルにおけるタイムテーブル以外のエリアに車体情報としてバッテリBAの充電状態、電動モビリティMの走行状態、電動モビリティMに装着された着座センサ53の検出状態、荷物載置部42上の荷物の検出状態等が表示される。走行状態として、手動運転で走行していること、手動運転で停止していること、自動運転で走行していること、自動運転で停止していること等が表示される。他の例として、走行状態として、手動運転又は自動運転であることが表示される。図9に示されていないが、管理テーブルに、フライト情報として、利用者の行き先の情報、当該行き先への希望到着時刻に関する時刻情報等が表示されてもよい。行き先の例はゲート番号であり、希望到着時刻はボーディング開始時刻等である。
【0049】
一例では、図2に示すように、荷物載置部42の上端部に荷物載置部42の載置面を少なくとも視野に収める利用センサ(視覚センサ)49が取付けられている。利用センサ49として、二次元カメラ、三次元カメラ、三次元距離センサ、LiDAR等を用いることができる。制御装置80には荷物有無判定プログラム82dが格納されている。制御装置80は、荷物有無判定プログラム82dに基づき動作し、利用センサ49で得られた画像データを用いて、荷物載置部42上における荷物の検出の有無を判定する。
【0050】
なお、視覚センサの代わりに、利用センサ49として、物体検出センサ、荷重センサ、公知のレーダーセンサ等の他のセンサが設けられてもよい。物体検出センサは公知の光電センサ等であり、荷重センサは公知の圧力センサ等である。これらの場合、制御装置80は、物体検出センサ、荷重センサ、レーダーセンサ等の検出結果に基づき、荷物載置部42上における荷物の検出の有無を判定する。そして、図9の管理テーブルには、荷物の検出状態が表示される。
【0051】
また、図9の管理テーブルには、図4に示されるように利用者Uの例えば膝等の身体の一部がステレオカメラ90の検出範囲DA1に入っている侵入状態であることが表示される。また、図9の管理テーブルには、図1に示されるように荷物載置部42に置かれている荷物Bの一部がLiDAR95の検出範囲DA2に入っている侵入状態であることが表示される。
【0052】
上記のように構成されたシステムは、一例では、以下の説明のように運用される。
大きく分けて、本実施形態のシステムでは、準備ステップ(ステップS1)、割り当てステップ(ステップS2)、教育ステップ(ステップS3)、走行ステップ(ステップS4)、自動帰還ステップ(ステップS5)、および後処理ステップ(ステップS6)を有する。状況や要求に応じて、ステップS1~S6を部分的に行わない運用もあり得る。
【0053】
ステップS1では、当該サービスを提供する者が、電動モビリティMの準備等を行う。
ステップS2では、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100が、電動モビリティMの使用を希望する利用者Uから、電動モビリティMを使用したいというリクエストと、情報を受付ける。ステップS2はステップS1の前であってもよく、ステップS1と同時であってもよい。当該利用者Uは、予め電動モビリティMを使用する日時を含む前記リクエスト(使用予約)を電話等の通信手段を使って当該サービスを提供する者に伝えてもよい。当該サービスを提供する者が前記情報を受付ける場合、前記情報はコンピュータ4の入力装置4a(図8)等を用いてコンピュータ4および/又は管理コンピュータ100に入力される。前記情報の例としては、搭乗券に記載されている情報、利用者Uの氏名、利用者Uの電話番号等がある。特に、利用者Uの搭乗券に記載されているフライト番号、搭乗口、および搭乗時間のうち少なくとも1つを含むフライト情報が受付けられる。前記情報として、利用者Uの身体に関する情報、利用者Uの性別に関する情報、利用者Uのパスポートに記載された情報等を受付けてもよいが、利用者Uから受付ける情報は少ない方が好ましい。
【0054】
なお、ステップS2では、上記使用する日時、上記情報等に基づき、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100が利用者Uに複数の電動モビリティMのうち一つを割り当てる。この時、管理コンピュータ100では、割り当てられた電動モビリティMに前記情報が対応付けられる。
【0055】
続いて、ステップS3では、当該サービスを提供する者が、電動モビリティMを利用してできる事、できない事、マナー、禁止事項等を教示し、利用者Uが同意するか否かを確認する。
【0056】
ステップS3では、当該サービスを提供する者が表示装置200、設定部45、コンピュータ4等に所定の操作を行うことによって、表示装置200に教育用のページが表示される。
【0057】
一例では、教育用のページを表示するプログラムが制御装置80の記憶装置82に格納されており、制御装置80が表示装置200に教育用のページを表示させる。代わりに、制御装置80又は表示装置200が管理コンピュータ100等のコンピュータから教育用のページを受信し、受信した教育用のページが表示装置200に表示されてもよい。
なお、受付3に配置されたコンピュータ4の表示装置5や他のコンピュータの表示装置に教育用のページが表示されてもよい。
【0058】
教育用のページには、ステレオカメラ90の検出範囲DA1に利用者Uの膝等の身体の一部、利用者Uが持っている保持品、利用者Uが身に付けている物等が入る侵入状態になると発生する不具合に関する説明が含まれる。当該不具合は、例えば、検出範囲DA1における障害物の検出への影響に関する。保持品はハンドバッグ、杖等である。利用者Uが身に付けているものは、例えば、スカート、マント、帽子、マフラー等の衣服、ヘルメット、および装飾品を含む。また、教育用のページには、検出範囲DA1において侵入状態が発生すると、侵入状態であることが表示装置200、音声発生装置300、発光部400等によって報知されるとの説明が含まれる。
【0059】
また、教育用ページには、LiDAR95の検出範囲DA2に荷物載置部42の荷物Bの一部である紐等が入る侵入状態になると発生する不具合に関する説明が含まれる。当該不具合は、例えば、検出範囲DA2における障害物の検出への影響に関する。荷物Bはバッグ、コート、マフラー、紙袋、プラスチック袋、段ボール箱、スーツケース等を含む。また、教育用のページには、検出範囲DA2において侵入状態が発生すると、侵入状態であることが表示装置200、音声発生装置300、発光部400等によって報知されるとの説明が含まれる。
【0060】
侵入状態であると判断される範囲を利用者Uに教示するために、一例では、電動モビリティMのモビリティ本体30に設けられた入力装置への入力に基づき、制御装置80は、電動モビリティMが停止している状態で前記侵入状態であるか否かの停止状態判断処理を行う。本実施形態では、利用者U又は当該サービスを提供する者に当該入力を行わせるための指示が教育用のページに表示される。制御装置80は、当該停止状態判断処理を、記憶装置82に格納されている侵入状態判断プログラム82eに基づき行う。一例では、当該入力装置は表示装置200における入力装置201である。
【0061】
例えば、利用者U又は当該サービスを提供する者が前記入力を行うと、制御装置80は停止状態判断処理を行う。そして、制御装置80は、侵入状態であれば表示装置200に侵入状態であることを表示し、侵入状態でなければ表示装置200に侵入状態でないことを表示する。当該表示は前記報知の一態様である。表示装置200への表示の代わりに、モビリティ本体30に設けられたスピーカ等の音声発生装置300を用いて侵入状態であることおよび侵入状態でないことが示されてもよい。一例では、音声発生装置300から、侵入状態であることを示す声又は音が出力され、侵入状態でないことを示す声又は音も出力される。侵入状態であることおよび侵入状態でないことが示されるので、利用者Uは侵入状態となる範囲を認識できる。
【0062】
制御装置80では、図4に示すように、侵入状態であるとの検出を行う侵入検出範囲AR1が検出範囲DA1内に設定されている。侵入検出範囲AR1は、利用者Uの前方の範囲であって、検出範囲DA1の利用者側の端から前後方向における距離Lの範囲である。一例では、距離Lは50cm以下であり、30cm以下であることがより好ましい。検出範囲DA2内にも同様に侵入検出範囲が設定されている。
【0063】
停止状態判断処理を行うための入力装置への入力が無い状態で、制御装置80が停止状態判断処理を行ってもよい。この場合、利用者Uの膝、足、衣服等が侵入検出範囲AR1内に配置されると、制御装置80は前記報知を行う。検出範囲DA2内の侵入検出範囲への荷物Bの一部の侵入があった場合も同様の報知が行われる。荷物載置部42は座席ユニットSの背面側に配置されており、座席ユニットSに座っている利用者Uは荷物載置部42上の荷物の状態を視認し難い。このため、検出範囲DA2内の侵入検出範囲への荷物Bの侵入の報知は、荷物Bの破損、荷物Bが荷物載置部42から出ていることによる電動モビリティMの走行上の不具合等を防止するために有利である。
【0064】
なお、教育用のページに、利用者Uの膝を幅方向の外側に移動させるための指示が含まれていてもよい。例えばこのような指示が表示装置200又は音声発生装置300を用いて行われる。これにより、利用者Uは侵入状態となる範囲を電動モビリティMの利用前に把握することができる。
【0065】
また、管理ステーション(貸出ステーション)2に教示アイテムIL(図5)が配置されていてもよい。教示アイテムILには、一例では、前述の様々な教示が記載されている。また、教示アイテムILには、電動モビリティMの検出範囲DA1,DA2が図示されている。教示アイテムILは、一例では、紙、プラスチック製のシート又は板から成る。当該サービスを提供する者は、教示アイテムILを利用者Uに見せながら前述の教示を行うことができる。これにより、検出範囲DA1,DA2への侵入状態になると電動モビリティMの報知装置によって報知が行われること、および、検出範囲DA1,DA2の存在について、利用者Uは限られた時間の中で効率的に理解できる。
【0066】
本実施形態では、図10に示すように、制御装置80に、侵入検出範囲AR1の他に、変更候補範囲AR2,AR3が設定されている。当該サービスを提供する者が電動モビリティMに設けられた入力装置201を操作すると、現在設定されている侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2、AR3が表示装置200に表示される。検出範囲DA2内の侵入検出範囲についても侵入検出範囲AR1と同様の表示が行われる。また、検出範囲DA2内の侵入検出範囲についても、以下、侵入検出範囲AR1と同様の処理が行われる。
【0067】
教育用のページの一部として侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2、AR3が表示装置200に表示されてもよい。また、当該サービスを提供する者のコンピュータ(所定のコンピュータ)への入力に基づき侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2,AR3が表示装置200に表示されてもよい。当該表示によって、利用者Uおよび当該サービスを提供する者は、侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2,AR3に対する利用者Uの膝、足、衣服等の位置を容易に認識できる。
【0068】
好ましくは、表示装置200に、電動モビリティMの機体の図と共に侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2,AR3が表示される。より好ましくは、表示装置200に、利用者Uの膝、足、衣服等のステレオカメラ90による検出結果も表示される。
なお、上記の場合に、表示装置200に変更候補範囲AR2、AR3が表示されずに侵入検出範囲AR1だけが表示されてもよい。この場合でも、利用者Uおよび当該サービスを提供する者は、侵入検出範囲AR1に対する利用者Uの膝、足、衣服等の位置を容易に認識できる。
【0069】
侵入検出範囲AR1および変更候補範囲AR2、AR3が表示装置200に表示された後、表示装置200の入力装置201において変更候補範囲AR2、AR3の何れかを選択する操作が行われると、制御装置80は侵入検出範囲AR1を変更候補範囲AR2、AR3のうち選択された方に変更する。当該構成は、利用者Uの体型、服装、コンディション等に応じた設定を容易にするために有用であり、利用者Uの快適性を向上するためにも有用である。
【0070】
なお、表示装置200の入力装置201又は当該サービスを提供する者のコンピュータ(所定のコンピュータ)への入力に基づき、制御装置80が侵入検出範囲AR1を変更してもよい。例えば、侵入検出範囲AR1の前方への移動量が入力装置201に入力されると、当該移動量に基づき侵入検出範囲AR1の少なくとも利用者Uに近い側の端が前方に移動する。当該構成は、利用者Uの快適性を向上するために有用である。
【0071】
続いて、ステップS4において、本実施形態では、利用者Uはコントローラ44の操作部44aを操作することによって電動モビリティMを走行させる。代わりに、利用者Uによる入力装置201の操作に基づき電動モビリティMが自動運転を開始してもよい。この場合、制御装置80は入力装置201に入力される行き先に向かうようにモータMTを制御し、これにより電動モビリティMが前記行き先に向かって自動運転で走行する。
【0072】
ステップS4では、制御装置80は、利用者Uの身体の一部、利用者Uの保持品、利用者Uの衣服、又は荷物載置部42に置かれている荷物Bが検出範囲DA1内および検出範囲DA2内の侵入検出範囲に侵入している侵入状態であるとの判断を行う判断処理を行う。また、制御装置80は、侵入状態であると判断した時に報知処理および走行状態の変更処理のうち少なくとも一方を行う。
【0073】
この場合の制御装置80の侵入状態判断プログラム82eに基づく処理の例を図を参照しながら説明する。
一例では、図11に示すように、制御装置80は、侵入検出範囲に物体の侵入があると侵入状態であるとの判断を行う侵入判断処理を開始する(ステップS4-1)。ステップS4-1では、検出範囲DA1内の侵入検出範囲に侵入する物体は利用者Uの身体の一部、利用者Uの保持品、又は利用者Uの衣服であるとみなされ、検出範囲DA2内の侵入検出範囲に侵入する物体は荷物載置部42に置かれている荷物Bであるとみなされる。
【0074】
ステップS4-1では、物体が侵入検出範囲に所定時間以上入っている時に、侵入状態であるとの判断を行う。所定時間は例えば数秒以上である。数秒は2秒、5秒等である。これにより、下記ステップS4-2の侵入対応処理が無用な程度で頻繁に行われることが無くなる。なお、ステップS4-1において、物体が侵入検出範囲に入ってすぐに侵入状態であるとの判断が行われてもよい。
【0075】
ステップS4-1において侵入状態であるとの判断がされると、制御装置80は侵入対応処理を行う(ステップS4-2)。侵入対応処理としては、電動モビリティMに設けられた報知装置を用いて報知を行う報知処理と、モータMTの制御による電動モビリティMの走行状態の変更処理がある。一例では、ステップS4-2において、報知処理および走行状態の変更処理の両方が行われる。
【0076】
報知の例は、表示装置200への所定の表示、音声発生装置300を用いた所定の音又は声の出力、モビリティ本体30に設けられた発光部400を用いた所定の発光等である。本実施形態では、図1に示すように、発光部400はコントロールアーム43の前端に設けられている。より具体的に、発光部400はコントロールアーム43の前端且つ上端側に設けられている。制御装置80は、電動モビリティMが回避動作等を行っていない通常走行を行っている時は発光部400を青、緑、白等の第1の色で発光させ、電動モビリティMが回避動作を行っている時は黄、赤等の第2の色で発光させる。前記報知の際、制御装置80は発光部400を通常走行時および回避動作時と異なる第3の色で発光させる。例えば、制御装置80は発光部400を紫色で発光させる。制御装置80が発光部400を通常走行時および回避動作時と異なる発光態様で発光させてもよい。例えば、制御装置80が発光部400を前記報知用に点滅させてもよい。
【0077】
表示装置200への所定の表示として、制御装置80は、表示装置200に図12図13等に示す表示を行う。図12は、検出範囲DA1内の侵入検出範囲で侵入状態(第1の侵入状態)であると判断された場合に表示され、図13は、検出範囲DA2内の侵入検出範囲で侵入状態(第2の侵入状態)であると判断された場合に表示される。このようにセンサ毎に表示を変えることによって、利用者Uが状況を把握し易くなり、これは早期の状況の改善に繋がる。本実施形態では、図12が第1の報知として機能し、図13が第2の報知として機能するが、第1の報知と第2の報知の音又は声を変更することも可能である。
【0078】
また、図13に示すように、侵入状態であるとの報知の際に、表示装置200に利用者Uの操作を求めるボタン202が表示されてもよい。当該ボタン202が操作されることによって、利用者Uが侵入状態を認識したと制御装置80は判断する。
【0079】
走行状態の変更の例は、電動モビリティMを停止させること、電動モビリティMを減速走行状態とすること、電動モビリティMを所定時間だけ減速走行状態とした後に停止させること等である。
例えば、制御装置80は、電動モビリティMの最高走行速度を4km/h以下にすることによって、電動モビリティMを減速走行状態とする。最高走行速度を3.5km/h以下にすることがより好ましく、2km/h以下にすることが更に好ましい。制御装置80が、コントローラ44の操作部44aの操作量に対するモータMTの回転速度を所定の比率だけ低減することによって、電動モビリティMを減速走行状態とすることも可能である。これらの場合、操作部44aを大きく操作しても電動モビリティMが高速で動くことが無くなる。当該構成は電動モビリティMの周囲および利用者Uの安全を確保するために有利である。
【0080】
一例では、制御装置80は、ステップS4-2において、報知を行った後に走行状態の変更を行う。つまり、制御装置80は、報知を行ってから数秒後に走行状態の変更を行う。これにより、利用者Uは電動モビリティMの停止又は減速の前の準備時間を持つことができる。
他の例では、ステップS4-2において、報知処理および走行状態の変更処理の一方が行われる。
【0081】
ステップS4-2は以下の様々な処理例に従って実行可能である。
第1の処理例では、操作部44aの操作によって電動モビリティMが走行している時に、ステップS4-1において侵入状態であると判断されると、制御装置80は、ステップS4-2において前記報知を行うが、操作部44aの操作に基づく当該電動モビリティMの走行を維持する。この場合、利用者Uは、電動モビリティMが走行している状態で、検出範囲DA1,DA2への侵入状態を解消することが可能である。当該処理は利用者Uの乗り心地の向上を図るために有用である。
【0082】
第2の処理例では、操作部44aの操作によって電動モビリティMが走行している時に、ステップS4-1において侵入状態であると判断されると、制御装置80は、ステップS4-2において前記報知を行うと共に、操作部44aの操作に基づく当該電動モビリティMの走行を減速して維持する。この場合も、利用者Uは、電動モビリティMが減速して走行している状態で、検出範囲DA1,DA2への侵入状態を解消することが可能である。当該処理は利用者Uの乗り心地の向上を図るために有用であり、また、電動モビリティMの周囲および利用者Uの安全を確保するために有用である。
【0083】
第3の処理例では、前述のように自動運転によって電動モビリティMが走行している時に、ステップS4-1において侵入状態であると判断されると、制御装置80は、ステップS4-2において前記報知を行うが、操作部44aの操作に基づく当該電動モビリティMの走行を維持する。この場合、利用者Uは、手動運転の時に比べて侵入状態の解消のためにより多くの時間および注意を使うことができる。このため、当該処理は自動運転における利用者Uの乗り心地の向上を図るために有利である。
【0084】
第2の処理例では、前述のように自動運転によって電動モビリティMが走行している時に、ステップS4-1において侵入状態であると判断されると、制御装置80は、ステップS4-2において前記報知を行うと共に、操作部44aの操作に基づく当該電動モビリティMの走行を減速して維持する。この場合も、利用者Uは、手動運転の時に比べて侵入状態の解消のためにより多くの時間および注意を使うことができる。当該処理は自動運転における利用者Uの乗り心地の向上を図るために有利であり、また、電動モビリティMの周囲および利用者Uの安全を確保するために有利である。
【0085】
なお、第1~第4の処理例において、検出範囲DA1において侵入状態になった時と検出範囲DA2において侵入状態になった時で、ステップS4-2の報知を変えることが可能である。センサ毎に報知を変えることによって、利用者Uが状況を把握し易くなる。当該処理は、ステップS4-2の表示に応じた利用者Uの早い対応を実現するために有利である。
【0086】
なお、ステップS4-1において侵入状態となっていると判断されていない時に、制御装置80が侵入状態でないことを示す報知を行ってもよい。例えば、制御装置80は、表示装置200、音声発生装置300、発光部400等を用いて、侵入状態でないことを示す。当該報知によって、利用者Uは検出範囲DA1,DA2が遮られていないことを逐次又は定期的に知ることができる。
【0087】
また、ステップS4-2において侵入状態となっていることが報知される時に、制御装置80が侵入の程度を報知してもよい。例えば、制御装置80は、表示装置200、音声発生装置300、発光部400等を用いて、侵入量を報知する。侵入量はcm、インチ等の単位を用いて数値で示されてもよい。当該報知によって、利用者Uは侵入状態を解除するためにより適切な対応を取ることが可能となる。
【0088】
また、ステップS4-2において侵入状態となっていることが報知される時に、侵入状態を解消するための方法が報知されてもよい。例えば、制御装置80は、表示装置200、音声発生装置300等を用いて、膝を幅方向内側に向かって移動することを促す。
【0089】
また、ステップS4-1において、前記物体が侵入検出範囲の閾値以上の範囲を占めている時に侵入状態であると判断してもよい。例えば、前記物体が侵入検出範囲の20%以上の範囲を占めている時に侵入状態であると判断する。この場合、侵入の度合が少ない状態における無用な報知や走行状態の変更が無くなり、これは電動モビリティMの乗り心地の向上に繋がる。
【0090】
また、ステップS4-1において、検出される前記物体が電動モビリティMの走行に応じて移動しない場合に、当該物体が利用者Uの身体の一部、利用者Uの保持品、利用者Uの身に付けている物、又は荷物載置部42に載置された荷物Bであると制御装置80が認識してもよい。検出範囲DA1,DA2内で検出される電動モビリティMの周囲の物体は電動モビリティMの走行に応じて移動する。これに対し、利用者Uの身体の一部、利用者Uの保持品、利用者Uの身に付けている物、又は荷物載置部42に載置された荷物Bは、電動モビリティMの走行に応じて検出範囲DA1,DA2内で移動しない。当該構成は、無用な報知や走行状態の変更を低減するために有利であり、検出範囲DA1,DA2を遮っている物体を正確に認識するためにも有利である。
【0091】
また、制御装置80が、ステップS4-1において侵入検出範囲に侵入している物を推定し、ステップS4-2において推定された物を示すための文字、図形等を表示してもよい。例えば、記憶装置82に様々な利用者Uの膝の画像が格納されており、制御装置80が当該画像に基づき侵入検出範囲に侵入している物は膝であると判断することができる。当該画像は静止画、動画、特徴点の集合等の様々な画像であり得る。また、当該画像に基づく判断や、当該画像の収集および認識が、公知の学習機能、公知のセマンティックセグメンテーション(semantic segmentation)技術等を用いて行われてもよい。
【0092】
本実施形態では、図9の管理テーブルに、利用者Uの身体の一部、保持品、身に付けている物、又は荷物載置部42の荷物Bがステレオカメラ90又はLiDAR95の検出範囲DA1,DA2に入っている侵入状態であるか否かの情報が表示される。管理テーブルに表示される当該情報は、当該サービスを提供する者にとって、利用者Uの補助の要否を判断するために極めて有用である。
【0093】
また、本実施形態では、図9の管理テーブルにおいて、侵入状態であるか否かの情報が着座センサ53の検出結果と共に表示される。当該構成は、侵入状態であると表示されている時の利用者U又は電動モビリティMの状態を判断する上で有用である。一例では、ステップ5の自動帰還の時に、着座センサ53の検出結果がNOであり、検出範囲DA1で侵入状態であると判断されていると、当該サービスを提供する者は正常ではないと判断できる。例えば、座席ユニットSに紙製の箱又は袋が載置されていることによって着座センサ53の検出結果がNOとなり、当該箱又は袋が検出範囲DA1内に侵入している時に、上記の状態となる。ステレオカメラ90のレンズ等に異常がある場合も、上記の状態となる可能性がある。
【0094】
また、本実施形態では、図9の管理テーブルにおいて、侵入状態であるか否かの情報が利用センサ49の検出結果と共に表示される。当該構成は、侵入状態であると表示されている時の利用者U又は電動モビリティMの状態を判断するために有用である。一例では、利用者Uが荷物載置部42に荷物Bを置いていないが、利用者Uのマフラー等の衣服の一部がLiDAR95の検出範囲DA2に入っている場合に、利用センサ49の検出結果がNOとなり、検出範囲DA2で侵入状態であると判断される。当該状態が継続するとマフラーが後輪20に巻き込まれる可能性がある。当該サービスを提供する者はこのような異常を早期に発見することができる。利用センサ49又はLiDAR95に異常がある場合も、上記の状態となる可能性がある。
【0095】
また、図9の管理テーブルは、電動モビリティMの走行状態の情報又は前記利用情報も有する。当該情報は当該サービスを提供する者が異常の早期発見をするために有利である。
なお、図9において、侵入状態であるか否かの情報の代わりに、電動モビリティMの走行状態の変更が行われたか否かの情報が表示されてもよい。当該情報も、当該サービスを提供する者にとって、異常の早期発見のために極めて有用である。
【0096】
一例では、管理テーブルにおいて、操作部44aの操作によって電動モビリティMが走行している時に、電動モビリティMが減速走行状態となっており、走行状態が手動での走行中である場合が考えられる。当該情報から、検出範囲DA1,DA2への侵入のために電動モビリティMの速度が低減されていることがわかる。走行状態の情報に基づき、当該サービスを提供する者は、電動モビリティMが手動での走行状態であるか自動運転での走行状態であるか知ることができる。当該情報は、当該電動モビリティMに補助者を向かわせることに関する優先順位を決める上で有用である。
【0097】
また、図9に示されるように、管理テーブルは、侵入状態になってからの経過時間の情報も有する。当該情報は、当該サービスを提供する者にとって、異常の早期発見のために極めて有用である。なお、管理テーブルが、走行状態の変更が行われてからの経過時間の情報を有する場合もある。当該情報も異常の早期発見のために極めて有用である。侵入状態又は走行状態の変更から長時間が経過している場合は、当該サービスを提供する者は、補助者を当該電動モビリティMの利用者Uの補助のために向かわせることができる。
【0098】
なお、管理テーブルに、利用者Uの行き先の情報および希望到着時刻に関する時刻情報の少なくとも一方が含まれていることが好ましい。当該情報は、当該サービスを提供する者が補助者を向かわせる判断を正確に行うために有用である。例えば、利用者Uの希望到着時刻が迫っている状況で、侵入状態が複数回発生している場合や、侵入状態が長時間に亘って発生している場合は、補助者を向かわせる必要性が高いと言える。
【0099】
自動帰還ステップであるステップS5では、管理コンピュータ100又は制御装置80は、自動運転モードで利用者Uが去った電動モビリティMの帰還動作を開始してよいか否かを判断する。当該サービスを提供する者が、管理コンピュータ100の表示装置103,5等を見ながら、当該電動モビリティMが運転モードで帰還動作を開始してよいか否かを判断し、当該判断を管理コンピュータ100に入力してもよい。
【0100】
前記判断に基づき自動運転での帰還動作が開始され、当該電動モビリティMが帰還目標位置である例えば管理ステーション2に到着する。
後処理ステップであるステップS6では、当該サービスを提供する者が、管理ステーション2にある複数の電動モビリティMを倉庫等の格納スペースに移動する。
【0101】
前記運用や、他の運用において、利用者Uは、電動モビリティMに乗っている時に、表示装置200又は設定部45を操作することによって、表示装置200等を介して当該サービスを提供する者との会話、チャット等を行うことができる。当該構成は、利用者Uの安心感、利用者Uによる電動モビリティMの誤った使用の防止等に寄与する。当該構成によって、当該サービスを提供する者は、ステップS4-2の報知が繰り返される等の不具合を抱える利用者Uに解消方法を伝えることができる。
【0102】
また、上記実施形態において、利用センサ49が、荷物載置部42上の物体を検出するだけではなく、電動モビリティMの他の荷物載置部の物体および座席ユニットS上の物体を検出してもよい。例えば、利用センサ49である視覚センサが荷物載置部42の上方にポール等の支持部材によって支持されていれば、視覚センサの検出範囲に荷物載置部42および座席ユニットSが入る。この場合、利用者Uが座席ユニットS上に置いた荷物についても、視覚センサによって撮像され、メモリに保存される。
なお、利用センサ49の検出範囲に座席ユニットSが入る場合、利用センサ49は着座センサ53としても機能する。
【0103】
なお、電動モビリティMを用いた前記サービスが旅客ターミナルT以外の施設内で提供されてもよい。例えば、病院、電車の駅等の施設内で前記サービスが提供され得る。また、前記サービスが、アミューズメントパーク、屋外美術館、大学、コンセプトタウン等の屋外の施設で提供されてもよい。
前記運用において、待機場所が複数設けられていてもよい。例えば、待機場所が各ゲートに対応した位置に設けられていてもよい。また、利用者Uによる利用が終わった時に、電動モビリティMが待機できる場所を見つけ、見つけた待機できる場所を待機場所として用いてもよい。このような待機できる場所として、壁の傍のスペース等がある。
【0104】
本実施形態では、コントロールアーム43又はアームレスト43aの前端にセンサとしてステレオカメラ90が設けられ、座席ユニットSの後端部又は荷物載置部42の下方にセンサとしてLiDAR95が設けられている。代わりに、図14に示すように、座席ユニットSの上方に公知の三次元LiDAR500が配置されてもよい。三次元LiDAR500は例えばモビリティ本体30に設けられたポール501の上端に固定される。制御装置80は、三次元LiDAR500の検出範囲DAについても、前述と同様の侵入状態の判断を実行可能である。つまり、報知および管理データの作成も前述と同様に行われ、図15図18の例においても同様である。なお、三次元LiDAR500の検出範囲には主に利用者Uの頭部、利用者Uが着用している帽子、フード、利用者Uの保持品等が侵入する場合が多いと考えられる。
【0105】
なお、本実施形態の電動モビリティMは、一人の利用者Uが座席ユニットSに着座して乗るものであるが、モビリティ本体30の後端部に例えば乗車ベースが設けられ、乗車ベースに利用者Uと異なる利用者が立って乗る場合も考えられる。この場合、例えば荷物載置部42が車両前後方向に小さくなり、LiDAR95は乗車ベースの下面等に取付けられる。また、乗車ベースに立って乗る利用者が、電動モビリティMのマニュアル走行や自動運転走行のために操作部44a又は表示装置200を操作することもできる。このように電動モビリティMに利用者Uおよび利用者が乗る場合であっても、制御装置80は、各センサ90,95の検出範囲DA1,DA2について、前述と同様の侵入状態の判断を実行可能である。また、制御装置80は、前述と同様の報知および運転状態の変更を実行でき、これにより得られる効果は前述と同様である。
【0106】
また、図15に示すように、コントロールアーム43から前方に延びるフレーム611に固定された前端側センサ610と、モビリティ本体30の後端部から後方に延びるフレーム621に固定された後端側センサ620とが設けられてもよい。図15では、座席ユニットSの背面にも背面側センサ630が設けられている。各センサ610,620,630は二次元カメラ、三次元カメラ、三次元距離センサ等であり得る。制御装置80は、各センサ610,620,630の検出範囲についても、前述と同様の侵入状態の判断を実行可能である。
【0107】
また、図16に示すように、一対のコントロールアーム43のそれぞれの側面にセンサ
710が設けられ、モビリティ本体30の前端部に幅方向一対のセンサ720が設けられてもよい。センサ710,720は三次元カメラ、三次元距離センサ、三次元LiDAR等であり得る。制御装置80は、各センサ710,720の検出範囲についても、前述と同様の侵入状態の判断を実行可能である。なお、図16に二点鎖線で示すように、一対のセンサ720が一対の前輪の上方に設けられていてもよい。この場合でも、制御装置80は、各センサ720の検出範囲についても、前述と同様の侵入状態の判断を実行可能である。
【0108】
なお、図17に示すように、上記実施形態とは異なるタイプの電動モビリティM1に設けられたセンサ800について、電動モビリティM1の制御装置が前述と同様の侵入状態の判断と、前述と同様の報知および運転状態の変更を実行してもよい。図17の電動モビリティM1は、一人の利用者が乗るものであり、利用者が立って乗る乗車ベース810と、乗車ベース810を支持する一対の車輪820と、乗車ベース810から上方に延び利用者が掴むグリップ部830と、を有する。また、図17の電動モビリティM1は、一対の車輪820をそれぞれ駆動するためのモータであって、上記実施形態のモータMTと同様のモータと、モータを駆動するための制御装置であって、上記実施形態の制御装置80と同様の制御装置とを備える。電動モビリティM1のモビリティ本体は、乗車ベース810、車輪820、グリップ部830、モータ、および制御装置を有する。
【0109】
図17の電動モビリティM1は、利用者が乗車ベース810を傾けると、制御装置は乗車ベース810が傾いた方向に電動モビリティM1が走行するように各モータを制御する。つまり、電動モビリティM1は、一人の利用者が乗ると共に操作するものである。
また、制御装置は、センサ800の検出結果に基づき、回避対象を避けるためのモータの回転速度の低下(回避動作)又は停止(自動停止)を行う。
センサ800は三次元カメラ、三次元距離センサ、LiDAR等であり得る。乗車ベース810、グリップ部830等に上記実施形態の音声発生装置300および表示装置200と同様の音声発生装置および表示装置である報知装置が設けられ、制御装置は報知装置を用いて上記実施形態と同様の報知を行う。
【0110】
また、図18に示すように、さらに異なるタイプの電動モビリティM2に設けられたセンサ900について、電動モビリティM2の制御装置が前述と同様の侵入状態の判断と、前述と同様の報知および運転状態の変更を実行してもよい。図18の電動モビリティM2は、基本的には一人の利用者Uが乗るものであり、利用者Uが乗るベッド部910と、ベッド部910から下方に延びる複数の脚部920と、複数の脚部920の下端にそれぞれ設けられた車輪930と、を有する。図18の電動モビリティM2は、上記実施形態のモータMTと同様の操作用のコントローラ940を有する。また、図18の電動モビリティM2は、いくつかの車輪930をそれぞれ駆動するためのモータであって、上記実施形態のモータMTと同様のモータと、各モータを駆動するための制御装置であって、上記実施形態の制御装置80と同様の制御装置とを備える。電動モビリティM2のモビリティ本体は、ベッド部910、脚部920、車輪930、コントローラ940、モータ、および制御装置を有する。電動モビリティM2は自動搬送機能付きベッドと称される場合もある。
【0111】
図18の電動モビリティM1は、ベッド部910上の利用者Uがコントローラ940の操作部940aを操作すると、制御装置は操作部940aの操作方向に電動モビリティM2が走行するように各モータを制御する。つまり、電動モビリティM2は、一人の利用者Uが乗ると共に操作できるものである。なお、ベッド部910上の利用者Uではなく他の操作者が操作部940aを操作してもよい。この場合、他の操作者の操作によって電動モビリティM2が移動する。また、制御装置が前述の自動運転プログラム82cを有する場合、制御装置は、利用者U又は他の操作者がコントローラ940等の入力装置を用いて入力する行き先に電動モビリティM2が自動運転で向かうように、各モータを制御する。
また、制御装置は、センサ900の検出結果に基づき、回避対象を避けるためのモータの回転速度の低下(回避動作)又は停止(自動停止)を行う。
【0112】
センサ900は三次元カメラ、三次元距離センサ、LiDAR等であり得る。ベッド部910、脚部920等に上記実施形態の音声発生装置300および表示装置200と同様の音声発生装置および表示装置である報知装置が設けられ、制御装置は報知装置を用いて上記実施形態と同様の報知を行う。
【0113】
図10では、前述のように、例えば変更候補範囲AR3が侵入検出範囲として設定されると、図19に元々の侵入検出範囲AR1と変更候補範囲AR3との差分範囲は、検出キャンセル範囲CAとなる。図19では、前記差分範囲は斜線で示されており、前記差分範囲は検出キャンセル範囲CAでもある。検出キャンセル範囲CAは、ステレオカメラ90の検出範囲DA1内であって、利用者Uの身体の一部、衣服の一部、又は所持品の一部が存在し得る範囲であるが、前記侵入状態とは判断されない範囲である。
【0114】
図19では、変更候補範囲AR3の利用者U側の端(車両後方の端)が図10の場合よりも前方に配置されている。変更候補範囲AR3を侵入検出範囲として設定することにより、座席ユニットSに着座している利用者Uの前方の範囲において、利用者Uの身体の一部、衣服の一部、又は所持品の一部が存在できる検出キャンセル範囲CAが広くなる。
【0115】
図10および図19では、ステレオカメラ90によって得られる前記検出データを前記2次元の平面視画像に変換した後に当該画像中で検出キャンセル範囲CAが非検出範囲として設定される。または、前記検出データである前記三次元空間内のデータ中で検出キャンセル範囲CAが非検出範囲として設定される。制御装置80がセンサ90の検出範囲DA1の一部を認識しない設定によって検出キャンセル範囲CAを設定することも可能である。その他の公知の方法によって検出キャンセル範囲CAを設定することもできる。
【0116】
図20のように検出キャンセル範囲CAを利用者Uの前方の範囲に設定することもできる。図20でも検出キャンセル範囲CAは斜線で示される範囲である。LiDAR95の検出範囲DA2についても検出範囲DA1の場合と同様に検出キャンセル範囲CAを設定できる。
【0117】
図10図19図20等のように設定される検出キャンセル範囲CAは、前述のようにモビリティ本体30の前後方向に調節可能である。例えば、前述のように複数の変更候補範囲AR2,AR3が表示装置200に表示され、変更候補範囲AR2が選択されると、検出キャンセル範囲CAがモビリティ本体30の前後方向に調節される。利用者Uの体型、身長、衣服等は様々である。利用者Uの腰が曲がっており利用者Uの脚が長い場合は、利用者Uの膝が電動モビリティMの前端よりも前方に突出する場合もある。また、利用者Uの衣服がどうしてもステレオカメラ90の検出範囲DA1に大きく侵入してしまう場合がある。前述のように検出キャンセル範囲CAを調節可能とすることは、電動モビリティMのシェアリングサービスを安定して提供するために極めて有用である。
【0118】
ここで、利用者Uの前方の範囲とは、例えば、図19および図20に示すように、モビリティ本体30又は座席ユニットSの幅方向の中心線CLと中心線が一致する幅20cm等の範囲である。図19図20等のように、利用者Uの前方の範囲に検出キャンセル範囲CAが設定されている。検出キャンセル範囲CAの全範囲が利用者Uの前方の範囲に含まれている必要はなく、検出キャンセル範囲CAの一部が利用者Uの前方の範囲の幅方向の外側に配置されていてもよい。
【0119】
図10図19図20等のように利用者Uの前方の範囲に検出キャンセル範囲CAが設定される場合、図21のように、電動モビリティMの下面に下側センサ96が取付けられる。図6に示すように、下側センサ96は制御装置80に接続されている。本実施形態では、下側センサ96は二次元LiDARであるが、三次元LiDAR、レーダー、ミリ波センサ等を用いることも可能である。本実施形態では、下側センサ96は、カバー部32bにおいて座席ユニットSに座る利用者Uの足を載せる足載せ面32cよりも下方に配置されている。
【0120】
例えば、下側センサ96は、図19および図20に示される検出範囲DA3に亘ってレーザ光を走査し、物体に当たって跳ね返るレーザ光を下側センサ96が検出する。つまり、下側センサ96は、検出キャンセル範囲CAの下側範囲LA(図21)において、下側センサ96に対して所定距離(1m、数十cm等)よりも近い距離に存在している前記回避対象を検出する。本実施形態では、図21に示すように、下側範囲LAは足載せ面32cよりも下側の範囲である。本実施形態と異なり、足載せ面32cの高さが変化している場合は、下側範囲LAが足載せ面32cの最も高い位置よりも下側の範囲であってもよい。下側センサ96が三次元LiDAR、ステレオカメラ等の場合、下側センサ96が、足載せ面32cよりも下側の範囲の前記回避対象の検出を行いつつ、足載せ面32cよりも上側の範囲の前記回避対象の検出を行う場合もある。また、下側センサ96が図19および図20に示される前方の範囲の幅方向外側の前記回避対象を検出してもよい。
【0121】
当該構成では、例えば、利用者Uのスカート等の衣服がどうしてもステレオカメラ90の検出範囲DA1内に入ってしまうので、利用者Uの前方に検出キャンセル範囲CAが設定されている状態で、下側センサ96によって足載せ面32cの下方から前記回避対象の検出が行われる。つまり、下側センサ96によって下側範囲LAにおける前記回避対象の検出が行われる。特に、図19および図20のように検出キャンセル範囲CAが電動モビリティM又は足載せ面32cよりも前方に存在している場合に、下側センサ96によって足載せ面32cの下方から下側範囲LAにおける前記回避対象の検出が行われる。
【0122】
また、制御装置80は、前記回避対象が検出されると、各モータMTを制御して電動モビリティMに回避動作を行わせる。回避動作の例は、回避対象を避けるための各モータMTの回転速度の低下又は停止(自動停止機能)、回避対象側への電動モビリティMの移動を制限するための各モータMTの制御等である。このため、スカート等の衣服が意図せず電動モビリティMの下側に入り込もうとする場合に、スカート等の衣服が前輪10等に巻き込まれることの防止、巻き込みによる衣服の損傷の低減等が可能となる。
【0123】
さらに、例えば、着座している利用者Uが電動モビリティMを手動運転で移動させることによって、電動モビリティMに着座している利用者Uをテーブルの前に配置する時に、テーブルの下の箱、荷物、テーブルの脚等が利用者Uによって認識されていなくても、これらが下側センサ96によって回避対象として検出される。このため、利用者Uの前方に検出キャンセル範囲CAが設定されている状態でも、電動モビリティM又は利用者Uが意図せずに机の下の物体に強く接触することが防止される。
【0124】
さらに、利用者Uの前方に検出キャンセル範囲CAが設定されている状態で電動モビリティMが旋回することによって、上下方向に延びるポール等が検出キャンセル範囲CAに配置された場合であっても、下側センサ96によって当該ポールが前記回避対象として検出される。これにより、電動モビリティM又は利用者Uが意図せず当該ポールに強く接触することが防止される。
【0125】
図22に示すように、足載せ部32dの前端部が上方に突出している場合等に、下側センサ95を電動モビリティMの例えば足載せ部32dの前端部に配置することも可能である。この場合でも、下側センサ96は、足載せ面32cの下方から、そして、足載せ部32dの前端部から、下側範囲LAとして足載せ面32cよりも下側の範囲の前記回避対象の検出を行うことになる。
なお、下側範囲LAを、検出キャンセル範囲CAであって、前輪10の接地面に対して高さ20cm以下の範囲とすることもできる。この下側範囲LAについて下側センサ90によって回避対象を検出する場合でも、前述と同様の作用効果を奏し得る。
【0126】
また、足載せ面32cが車両幅方向等に延びる単一又は複数のシャフト等の部材によって形成される場合がある。この場合は、シャフト等の部材の面において利用者Uの足の底面が載せられる部分が足載せ面32cである。
【0127】
また、一例では、着座センサ53がYESの時には、制御装置80が下側センサ96の検出データを用いて各モータMTを回避動作のために制御する。また、着座センサ53がNOの時に、制御装置80は検出キャンセル範囲CAを無くす、又は、検出キャンセル範囲CAを電動モビリティMの前端又は足載せ部の前端よりも後方に配置する。この時、例えば、制御装置80は、ステレオカメラ90による回避対象の検出データを下側センサ96の検出データよりも優先して用いて各モータMTを回避動作のために制御する。これにより、着座センサ53がNOの時の電動モビリティMの衝突リスクを低減することができる。
【0128】
また、図9の管理テーブルに、各電動モビリティMについて、下側センサ96により回避対象が検出されているか否か、又は、前記回避対象を回避するための回避動作が行われているか否かがさらに表示されてもよい。管理テーブルに表示されている電動モビリティMの位置情報と、回避対象が検出されており、又は、回避動作が行われているとの情報とに基づき、異常が発生しているか否かを判断できる場合が多い。管理テーブルに下側センサ96により回避対象が検出されている時間等が表示されてもよい。当該時間情報によって異常が発生しているか否かの適切な判断が可能となる。これら構成は、当該サービスを提供する者にとって、利用者Uの補助の要否を判断するために極めて有用である。
【0129】
なお、座席ユニットSに着座している利用者の身体の一部等の侵入を判断する侵入検出範囲を設けずに、検出キャンセル範囲CAを設けることも可能である。つまり、検出範囲DA1,DA2に検出キャンセル範囲CAが直接設けられることになる。この場合でも、利用者Uの前方の範囲に検出キャンセル範囲CAが設定されている状態で、下側センサ96によって下側範囲LAにおける前記回避対象の検出が行われると、前述と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0130】
2 管理ステーション(貸出ステーション)
3 受付
4 コンピュータ
5 表示装置
10 前輪
20 後輪
30 モビリティ本体
42 荷物載置部
44 コントローラ
44a 操作部
45 設定部(入力装置)
49 利用センサ(視覚センサ)
53 着座センサ
60 制御ユニット
80 制御装置
81 プロセッサ
82 記憶装置
82b 回避制御プログラム
82c 自動運転プログラム
82d 荷物有無判定プログラム
82e 侵入状態判断プログラム
90 ステレオカメラ(第1センサ)
95 LiDAR(第2センサ)
96 下側センサ
100 管理コンピュータ
102 記憶装置
102a 管理データ
200 表示装置
201 入力装置
300 音声発生装置
400 発光部
500 三次元LiDAR
610 前端側センサ
620 後端側センサ
630 背面側センサ
710,720,800,900 センサ
M,M1,M2 電動モビリティ
S 座席ユニット
T 旅客ターミナル
CA 検出キャンセル範囲
LA 下側範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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