(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】重合体の硬化に用いる硬化触媒及びその製造方法、湿気硬化型組成物、硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20241118BHJP
C07F 7/28 20060101ALI20241118BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20241118BHJP
C08K 5/19 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
C08L101/10
C07F7/28 B
C07F7/28 F
C08K5/057
C08K5/19
(21)【出願番号】P 2022533906
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023728
(87)【国際公開番号】W WO2022004510
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020111530
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中川 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】難波 和則
(72)【発明者】
【氏名】吉山 春香
(72)【発明者】
【氏名】今田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】菊井 奈那恵
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-256505(JP,A)
【文献】特開2005-314616(JP,A)
【文献】特表2007-500775(JP,A)
【文献】特開2009-132762(JP,A)
【文献】特開2012-219184(JP,A)
【文献】特開2015-044886(JP,A)
【文献】特開2018-108677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/10
C07F 7/28
C08K 5/057
C08K 5/19
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]の硬化に用いる硬化触媒[B]であって、
前記硬化触媒[B]は、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]を含有し、
前記チタン化合物[B1]は、化学式(1)で表され、
前記アンモニウムヒドロキシド[B2]は、化学式(2)で表される、硬化触媒[B]。
(R
1-O)
nTi-A
4-n (1)
(式中R
1は、置換又は非置換の炭化水素基、nは1~4であり、Aはβジケトン基であり、且つ、R
1の少なくとも1つは、炭素数8以上のアルキル基、または、化学式(3)で表されるオキシアルキレン基を表す)
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、相互に同一または異なって、炭素原子数1~8の置換又は非置換の炭化水素基を表す。Xは、水酸基を表す。)
R
6-(O-R
7)
m- (3)
(式中R
6は炭素原子数1~10の置換または非置換の炭化水素基、R
7は炭素原子数2~10の置換または非置換の炭化水素基、mは1~10の整数を表す)
【請求項2】
請求項1に記載の硬化触媒[B]と、前記重合体[A]を含む湿気硬化型組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の湿気硬化型組成物を湿気と接触させる工程を備える、硬化物の製造方法。
【請求項4】
反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]の硬化に用いる硬化触媒[B]の製造方法であって、
チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]を反応させることによって、その反応
生成物として前記硬化触媒[B]を得る工程を備え、
前記チタン化合物[B1]は、化学式(1)で表され、
前記アンモニウムヒドロキシド[B2]は、化学式(2)で表される、硬化触媒[B]の製造方法。
(R
1-O)
nTi-A
4-n (1)
(式中R
1は、置換又は非置換の炭化水素基、nは1~4であり、Aはβジケトン基であり、且つ、R
1の少なくとも1つは、炭素数8以上のアルキル基、または、化学式(3)で表されるオキシアルキレン基を表す)
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、相互に同一または異なって、炭素原子数1~8の置換又は非置換の炭化水素基を表す。Xは、水酸基を表す。)
R
6-(O-R
7)
m- (3)
(式中R
6は炭素原子数1~10の置換または非置換の炭化水素基、R
7は炭素原子数2~10の置換または非置換の炭化水素基、mは1~10の整数を表す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の硬化に用いる硬化触媒及びその製造方法、湿気硬化型組成物、硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1液型の湿気硬化型ゴム組成物は、一般に硬化速度が速く、また使用前にベースポリマー、架橋剤および触媒等の各種添加剤を秤量して混合する必要がないため、2液型のものに比べ作業性の点で優れている。
【0003】
これらの1液型の湿気硬化型ゴム組成物としては、シリコーン系ゴム、変成シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、ポリサルファイド系ゴム等のものが知られている。
シリコーン系ゴムの1液型の湿気硬化型ゴム組成物として、オルガノポリシロキサン組成物が広範囲に使用されており、室温で硬化してゴム弾性体を生成する。オルガノシロキサンが架橋重合した-Si-O-結合を主鎖とするシロキサンの高分子化合物は、撥水性、耐熱性、耐候性、耐寒性、電気絶縁性等の性質に優れていることから建築、土木工業、電気、電子工業、自動車工業等の分野で広く使用されている。
【0004】
変成シリコーン系ゴムの1液型の湿気硬化型ゴム組成物としては、ポリエーテルを主鎖とする架橋可能な反応性加水分解性ケイ素官能基を有する重合体を含む組成物がある。この重合体の硬化型組成物は、ポリウレタン系ゴムのものに比べて貯蔵安定性、耐候性、耐発泡性および変色性が良好であり、ポリサルファイド系のものに比べて硬化性に優れ、周囲への汚染性が少なく毒性がない。
【0005】
前記シリコーン系ゴムおよび変成シリコーン系ゴムが、硬化物となる過程における反応機構は、水共存下における反応性加水分解性ケイ素含有基の縮合反応もしくは付加反応によるとされており、ポリマー化が進行し3次元網目構造のポリマー硬化体が形成されるものと考えられている。この反応において硬化を速やかに進行させるために、硬化触媒が使用される(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-41358号公報
【文献】特開昭60-161457号公報
【文献】特公昭63-42942号公報
【文献】特開2003-147220号公報
【文献】特許5446265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この反応性加水分解性ケイ素含有基を有するシリコーン系ゴムおよび変成シリコーン系ゴムの硬化組成物の硬化触媒として、従来から錫カルボン酸塩化合物、アルキル錫塩化合物などが使用されてきたが、内分泌撹乱物質として生体への影響が懸念されていることから、こうした物質を使用しない湿気硬化型組成物として、カルボン酸とアミンの併用触媒(特許文献1)が提案されているが、施工時に充分な硬化速度が得られないという問題点がある。
【0008】
特許文献2および特許文献3では、ジイソプロポキシチタンビス(アルキルアセトアセトネート)等のチタン酸エステル化合物を触媒として使用することが提案されているが、組成物中の添加剤や充填剤中に含まれる水分で分解されやすく、また、施工時の湿度により、硬化速度にばらつきが生じるため、安定した硬化物が得られない等の問題点がある。
【0009】
特許文献4では、テトラカルボン酸チタン化合物を触媒として使用することが提案されているが、硬化速度について実用的な満足度は得られないという問題点がある。
特許文献5では、第4級アンモニウム塩を触媒として使用することが提案されているが、施工時に充分な硬化速度が得られないという問題点がある。
【0010】
そこで、安全性が高く(毒性、環境汚染性が低く)、実用的な硬化速度を有する硬化触媒の開発が望まれていた。
【0011】
前記従来技術に鑑みて、本発明は、安全性が高く、実用的な硬化速度を有する硬化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]の硬化に用いる硬化触媒[B]であって、
前記硬化触媒[B]は、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]を含有し、
前記チタン化合物[B1]は、化学式(1)で表され、
前記アンモニウムヒドロキシド[B2]は、化学式(2)で表される、硬化触媒[B]が提供される。
【0013】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]を含有する硬化触媒[B]を用いた場合には、重合体[A]の硬化速度が大幅に高まることを見出し、本発明の完成に到った。この触媒は、錫を含まないので、安全性が高い。また、廉価に製造が可能である。さらに、複合体[C]は、結晶析出されにくいので、硬化触媒[B]は、貯蔵安定性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の硬化触媒[B]は、反応性加水分解性ケイ素含有基を有する重合体[A]の硬化に用いられる。重合体[A]は、室温で液状のものが好ましい。
【0016】
1.重合体[A]
重合体[A]は、反応性加水分解性ケイ素含有基を、分子末端または側鎖に1分子当たり少なくとも1個有する。反応性加水分解性ケイ素含有基は、重合体[A]分子の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、さらに末端と側鎖の両方に存在していてもよい。反応性加水分解性ケイ素含有基は、重合体[A]の1分子当たり少なくとも1個あればよいが、硬化速度、硬化物性の点からは、1分子当たり平均して1.5個以上あるのが好ましい。反応性加水分解性ケイ素含有基を前記主鎖重合体に結合させる方法としては公知の方法が採用できる。
【0017】
反応性加水分解性ケイ素含有基は、加水分解性基(例:ハロゲン、アルコキシ、アルケニルオキシ、アシロキシ、アミノ、アミノオキシ、オキシム、アミド)又は水酸基からなる反応性基と結合したケイ素原子を有する基であり、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより縮合反応を起こす性質を有する。具体的には、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基などが挙げられる。
【0018】
ここで、1つのケイ素原子に結合した反応性加水分解性基の数は1~3の範囲から選択される。また、1つのケイ素原子に結合した反応性加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。さらに反応性加水分解性基と非反応性加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していてもよく、加水分解性基と水酸基が1つのケイ素原子に結合していてもよい。反応性加水分解性ケイ素含有基としては、取り扱いが容易である点で、特にアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基を含む)が好ましい。
【0019】
また上記のアルコキシシリル基のうち、トリアルコキシシリル基は、活性が高く良好な硬化性が得られること、また、得られる硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性に優れることから好ましい。一方、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基は、貯蔵安定性に優れ、また、得られる硬化物が高伸び、高強度であることから好ましい。
反応性加水分解性ケイ素含有基がジアルコキシシリル基である重合体[A]と、トリアルコキシシリル基である重合体[A]を併用すると、硬化物の物性と硬化性とのバランスが取れ好ましい。
【0020】
重合体[A]としては、有機重合体[A1]、オルガノポリシロキサン[A2]が例示される。
【0021】
(有機重合体[A1])
本発明に用いる有機重合体[A1]の主鎖としては炭素原子を有するもの、例えば、アルキレンオキシド重合体、ポリエステル重合体、エーテル・エステルブロック共重合体、エチレン性不飽和化合物の重合体、ジエン系化合物の重合体などが挙げられる。
【0022】
前記アルキレンオキシド重合体としては、
〔CH2CH2O〕n
〔CH(CH3)CH2O〕n
〔CH(C2H5)CH2O〕n
〔CH2CH2CH2CH2O〕n
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここで、nは同一又は異なって2以上の整数である。これらアルキレンオキシド重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記の繰り返し単位を2種以上含む共重合体も使用できる。
【0023】
ポリエステル重合体としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸等のカルボン酸およびその無水物ならびにそれらの分子内および/または分子間エステルおよびそれらの置換体等を繰返し単位として有するものが例示される。
【0024】
エーテル・エステルブロック共重合体としては、上述したアルキレンオキシド重合体に用いられる繰り返し単位および上述したポリエステル重合体に用いられる繰り返し単位の両方を繰返し単位として有するものが例示される。
【0025】
また、エチレン性不飽和化合物及びジエン系化合物の重合体としては、エチレン、プロピレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの単独重合体、またはこれらの2種以上の共重合体が挙げられる。より具体的にはポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン-クロロプレン共重合体、アクリロニトリル-クロロプレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0026】
有機重合体[A1]としては、分子内に含窒素特性基等の極性基を有する有機重合体を用いることもできる。上記含窒素特性基の具体例としては(チオ)ウレタン基,アロファネート基,その他のN-置換ウレタン基,N-置換アロファネート基等の(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア基,ビウレット基,それ以外のN-置換ウレア基,N,N'-置換ウレア基、N-置換ビウレット基,N,N'-置換ビウレット基等の(チオ)ウレア基由来の結合基、アミド基、N-置換アミド基等のアミド基由来の結合基、イミノ基由来の結合基に代表される含窒素特性基や、(チオ)エステル基、(チオ)エーテル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、硬化性の高さから含窒素特性基が好ましく、合成の容易さから、(チオ)ウレタン基由来の結合基、(チオ)ウレア由来の結合基がより好ましい。また、該含窒素特性基は、上記有機重合体[A1]中に1個だけ含まれていてもよく、さらに1種又は2種以上の含窒素特性基が複数含まれていてもよい。ここで「(チオ)」及び「N-置換」の表記は上記と同様である。
【0027】
有機重合体[A1]中に上記含窒素特性基等の極性基が含まれると、硬化物の強靱性が向上するうえ、硬化性及び接着強さが高まる。特に、上記架橋性ケイ素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、より硬化性が高まる。その理由としては、該含窒素特性基の極性基同士が、水素結合等の相互作用により強く引き合うことが挙げられる。該含窒素特性基の極性基同士が強く引き合うことにより、硬化性樹脂の分子同士も強く結びつく(ドメイン形成する)ことで硬化物に強靱性が発現すると考えられるのである。また、上記架橋性ケイ素基が含窒素特性基等の極性基を介して主鎖に連結されている場合、該含窒素特性基同士ドメイン形成に際し、それに伴って該架橋性ケイ素基同士も近接することによって、該架橋性ケイ素基同士の接触確率も向上し、さらに、該含窒素特性基中の極性基による触媒硬化によって該架橋性ケイ素基同士の縮合反応性が向上することが考えられる。
【0028】
このような有機重合体[A1](変成シリコーン系ポリマー)は、例えば、特公昭61-18569号公報に記載されている方法等の公知の方法によって製造することができるか、或いは市販されている。市販品としては、例えば、株式会社 カネカ製のカネカMSポリマーシリーズ(MSポリマーS203、MSポリマーS303、MSポリマーS903、MSポリマーS911、MSポリマーSAX520等)、サイリルシリーズ(サイリルポリマーSAT200、サイリルポリマーMA430、サイリルポリマーMAX447等)、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ(ES-GX3440ST等),ESGXシリーズ等、が例示される。
【0029】
本発明で用いる有機重合体[A1]の数平均分子量は、特に制限はないが、過度に高分子のものは高粘度であり、硬化性組成物とした場合、使用上困難となる為、30000以下が望ましい。このような有機重合体は、公知の方法によって製造することができるが、上記した株式会社カネカ製のカネカMSポリマー等の市販品を使用してもよい。
【0030】
(オルガノポリシロキサン[A2])
本発明に用いるオルガノポリシロキサン[A2]は、主鎖がSi-Oで表されるシロキサン結合で構成されたものであり、さらにシロキサン結合を構成するケイ素原子に有機基が結合している。このような有機基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル基;ビニル、イソプロペニル、置換ビニル等のアルケニル基;アリル基、クロチル、メタリル等の置換アリル基;フェニル、トルイル、キシリル等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基;及びこれら有機基の水素原子の全部もしくは一部がハロゲン原子で置換された基、例えばクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0031】
オルガノポリシロキサン[A2]としては、
(-Si(R)2-O-)m
(式中、Rは同一又は異なって有機基、mは2以上の整数を示す。)
で表される繰り返し単位を有するものが例示される。具体例としては、
(-Si(CH3)2-O-)m
(-Si(C2H5)2-O-)m
(-Si(Ph)2-O-)m
(-Si(-CH=CH2)2-O-)m
などの繰り返し単位の1種または2種以上を有するものが例示される。ここでmは同一又は異なって2以上の整数である。オルガノポリシロキサン[A2]は単独の主鎖から構成されていてもよく、あるいは2種以上の主鎖から構成されていてもよい。
【0032】
オルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、3官能形(R'SiO1.5)または4官能形(SiO2)を含む分岐状のものであってもよい。また、硬化物の物性や用途により、必要に応じて2官能形(R'2SiO)や1官能形(R'3SiO0.5)を組み合わせてもよい(ここで、R'は有機基)。さらに加水分解性ケイ素含有基は分子末端、分子鎖の途中の何れに結合していてもよい。
なお、オルガノポリシロキサンは一般的に平均組成式としてRaSiO4-a/2で示される(例えば、特開2005-194399号や特開平8-151521号公報等)。上記の表記はこれに従った。
【0033】
本発明で用いるオルガノポリシロキサン[A2]の粘度は特に制約はないが過度に高粘度のものは、作業性が低下したり、得られる硬化物の物性が損なわれたりするおそれがあるので、25℃における粘度が0.025~100Pa・sの範囲にあるのが望ましい。このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造することができるが、GE東芝シリコーン(株)製のトスシールシリーズ、信越化学工業(株)製のシーラントシリーズ、東レダウコーニング(株)製のSHシリーズ等の市販品を使用することができる。
【0034】
2.硬化触媒[B]
硬化触媒[B]は、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]を含有する。複合体[C]は、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]を反応させることによって得ることができる反応生成物である。
【0035】
<チタン化合物[B1]>
チタン化合物[B1]は、化学式(1)で表される。
(R1-O)nTi-A4-n (1)
(式中R1は、置換又は非置換の炭化水素基、nは1~4であり、Aはβジケトン基であり、且つ、R1の少なくとも1つは、炭素数8以上のアルキル基、または、化学式(3)で表されるオキシアルキレン基を表す)
R6-(O-R7)m- (3)
(式中R6は炭素原子数1~10の置換または非置換の炭化水素基、R7は炭素原子数2~10の置換または非置換の炭化水素基、mは1~10の整数を表す)
【0036】
nは、例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
R1の少なくとも1つは、炭素数8以上のアルキル基、または、オキシアルキレン基である。R1の少なくとも1つは、炭素数8以上のアルキル基とオキシアルキレン基のどちらでもない炭化水素基(その他炭化水素基)であることが好ましい。その他炭化水素基の炭素数は、例えば1~7であり、1~5が好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。その他炭化水素基は、アルキル基であることが好ましく、分岐アルキル基であることがさらに好ましい。その他炭化水素基の数は、0、1,2,3又は4である。
【0038】
炭素数8以上アルキル基は、例えば、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル等が好ましい。このアルキル基の炭素数は、例えば8~20であり、8~15が好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
化学式(3)で表されるオキシアルキレン基の主鎖の原子数は、例えば、4~20であり、6~14がさらに好ましい。この原子数は、具体的には例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
式(3)中、R6は炭素原子数1~10の置換または非置換の炭化水素基であり、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。R6の炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
【0041】
式(3)中、R7は炭素原子数2~10の置換または非置換の炭化水素基であり、2~6が好ましく、2~3がより好ましい。式中、mは1~10の整数であり、1~6が好ましく、1~2がより好ましい。R7の炭化水素基は、アルキレン基が好ましい。
【0042】
前記オキシアルキレン基としては、例えば、以下に示すアルコールから末端の水酸基を除いて得られる基が挙げられる。このようなアルコールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノt-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル及びプロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル及びジプロピレングリコールモノt-ブチルエーテル等が挙げられる。例えば、アルコールがブチルカルビトール(別名:2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)の場合、前記オキシアルキレン基は、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルとなり、アルコールがブチルセロソルブ(別名:2-ブトキシエタノール)の場合、オキシアルキレン基は、2-ブトキシエチルとなる。
【0043】
その他のR1で示される置換又は非置換の炭化水素基は、置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基としては、飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられる。飽和炭化水素基としては、直鎖又は分岐アルキル基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、1~10であり、1~6が好ましく、1~4がさらに好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシルが挙げられる。
【0044】
Aで示されるβジケトン基としては、2,4-ペンタンジオン、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ペンタデカンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、1-(4-メトキシフェニル)-1,3-ブタンジオン等の1-アリール-1,3-ブタンジオン、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、1,3-ビス(2-ピリジル)-1,3-プロパンジオン、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン等の1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオン、3-ベンジル-2,4-ペンタンジオン等のジケトン類、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、t-ブチルアセトアセテート、エチル-3-オキソヘキサノエート等のケトエステル類、N,N-ジメチルアセトアセタミド、N,N-ジエチルアセトアセタミド、アセトアセトアニリド等のケトアミド類、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジフェニルマロネート等のマロン酸エステル類、N,N,N',N'-テトラメチルマロンアミド、N,N,N',N'-テトラエチルマロンアミド等のマロン酸アミド類が挙げられ、2,4-ペンタンジオン、1-アリール-1,3-ブタンジオン、1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオン等のジケトン類が特に好ましい
【0045】
化学式(1)で表されるチタン化合物のうち、触媒活性、化合物の安定性、取扱い性の点から、テトライソプロポキシチタン、トリイソプロポキシオクトキシチタン、トリイソプロポキシ2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシチタン、トリイソプロポキシ2-ブトキシエトキシチタン等が好ましい。
上記のチタン化合物[B1]は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
<アンモニウムヒドロキシド[B2]>
アンモニウムヒドロキシド[B2]は、下記式で表される。
【0047】
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5は、相互に同一または異なって、炭素原子数1~8の置換又は非置換の炭化水素基を表す。Xは、水酸基を表す。)
【0048】
R2、R3、R4、R5で示される置換又は非置換の炭化水素基は、置換又は非置換の、脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐アルキル基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、1~8であり、1~6が好ましく、1~4がさらに好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの飽和炭化水素基、ビニル基、アリル基、プレニル基、クロチル基、シクロペンタジエニル基などの不飽和炭化水素基が挙げられ、メチル基、エチル基、ブチル基が好ましい。
【0049】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0050】
炭化水素基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基、アセトキシ基などが挙げられる。置換されている、脂肪族又は芳香族の炭化水素基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基、2-アセトキシエチル基などが挙げられる。
【0051】
化学式(2)で表されるアンモニウムヒドロキシドの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられ、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0052】
<チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の反応>
チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]は、例えば透明液体であり、両者の混合物を例えば40~100℃で反応させることによって得ることができる。この温度は、具体的には例えば、40、50、60、70、80、90、100℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。混合物中での、アンモニウムヒドロキシド[B2]に対するチタン化合物[B1]のモル比は、例えば0.1~100であり、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0053】
<複合体[C]以外の複合体>
硬化触媒[B]は、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[C]以外に、チタン化合物[B1]以外のチタン化合物[Ba]とアンモニウムヒドロキシド[B2]の複合体[Ca]を含んでもよい。
【0054】
チタン化合物[Ba]としては、化学式(4)で表されるものが挙げられる。
(R1-O)nTi-A4-n (4)
(式中R1、置換又は非置換の炭化水素基、nは1~4であり、Aはβジケトン基であり、R1は、炭素数8以上のアルキル基と、化学式(3)で表されるオキシアルキレン基の何れでもない。)
【0055】
R1の炭素数は、7以下であることが好ましく、5以下であることがさらに好ましい。R1は、アルキル基であることが好ましく、分岐アルキル基であることがさらに好ましい。化学式(4)についてのその他の説明は、化学式(1)での説明と同様である。
【0056】
チタン化合物[Ba]としては、テトラメトキシチタン、トリメトキシエトキシチタン、トリメトキシイソプロポキシチタン、トリメトキシブトキシチタン、ジメトキシジエトキシチタン、ジメトキシジイソプロポキシチタン、ジメトキシジブトキシチタン、メトキシトリエトキシチタン、メトキシトリイソプロポキシチタン、メトキシトリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、トリエトキシイソプロポキシチタン、トリエトキシブトキシチタン、ジエトキシジイソプロポキシチタン、ジエトキシジブトキシチタン、エトキシトリイソプロポキシチタン、エトキシトリブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、トリイソプロポキシブトキシチタン、ジイソプロポキシジブトキシチタン、テトラブトキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)などがあげられ、触媒活性、化合物の安定性、取扱い性の点から、テトライソプロポキシチタンが更に好ましい。
【0057】
複合体[C]は、複合体[Ca]に比べて、結晶析出しにくいという特徴を有する一方で、触媒性能が落ちる場合がある。このため、触媒性能に優れた複合体[Ca]と、複合体[C]を併用することによって、結晶析出しにくく、且つ触媒性能に優れる硬化触媒[B]を得ることができる。
【0058】
複合体[C]と複合体[Ca]の合計に対する複合体[C]の割合は、例えば10~90mol%であり、30~80mol%が好ましい。この割合は、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0059】
複合体[C]と複合体[Ca]を含む硬化触媒[B]は、チタン化合物[B1]及びチタン化合物[Ba]をそれぞれアンモニウムヒドロキシド[B2]と反応させることによって得ることができる。チタン化合物[B1]とチタン化合物[Ba]の合計に対するチタン化合物[B1]の割合は、例えば10~90mol%であり、30~80mol%が好ましい。この割合は、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0060】
チタン化合物[B1]は、アルコキシ交換反応によって、チタン化合物[Ba]の配位子の少なくとも1つを炭素数8以上のアルキル基又はオキシアルキレン基に置換することによって得ることができる。
【0061】
3.湿気硬化型組成物
本発明の湿気硬化型組成物は、上記の硬化触媒[B]と重合体[A]を含み、必要に応じ後述する他の添加剤を含めても良い。本発明の湿気硬化型組成物の調製は、乾燥条件下で両者を混合すればよく、その混合形態は特に限定はない。通常、温度15~30℃程度、60%RH以下の雰囲気下で混合すればよい。
【0062】
本発明の湿気硬化型組成物中において、硬化触媒[B]の含有量は、重合体[A]100重量部に対して0.1~20重量部、さらに0.5~10重量部、特に3~8重量部が好ましい。硬化触媒[B]の含有量が0.1重量部未満では硬化性能が不十分であり、20重量部を超えると硬化後の硬化物の復元率、耐候性などの物性、貯蔵中の安定性が悪くなることがある。硬化触媒[B]の含有量は、具体的には例えば、重合体[A]100重量部に対して、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0063】
本発明の湿気硬化型組成物には、さらに充填剤[C]を配合しても良い。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタン等があげられる。充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。充填剤を加えることにより、湿気硬化型組成物のハンドリングが良くなる。また、硬化物のゴム補強剤としても働く。最大のメリットは、増量剤として添加することで使用する樹脂の量を減らす事が出来るためコストダウンが出来ることである。
【0064】
中でも、硬化後の硬化性組成物の優れた表面ノンタック、50%モジュラス、作業性および耐候性等を維持する点から、炭酸カルシウム、酸化チタンが好ましい。炭酸カルシウムを使用する場合は、その割合を、重合体[A]100重量部に対して、1~200重量部とするのが好ましく、50~200質量部とするのがさらに好ましい。上記範囲であると、硬化後の特性を損なわない。
【0065】
本発明の湿気硬化型組成物には、さらに他の硬化触媒、硬化促進剤、着色剤、可塑剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤、溶剤等、硬化性組成物に通常添加される添加剤を加えてもよい。
【0066】
他の硬化触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)等の有機スズ化合物、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物、等の金属硬化触媒、1-アミノ-2-エチルヘキサン、3-(トリメトキシシリル)プロピルアミン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,N',N'-テトラメチル-N''-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ-[4,4,0]デカ-5-エン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン等のアミン化合物等が挙げられる。
【0067】
硬化促進剤としては、例えば、公知の種々のアミノ基置換アルコキシシラン化合物、またはその縮合物を使用することが出来る。具体的に例示すると、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、δ―アミノブチル(メチル)ジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンおよび、これらの部分加水分解等があげられ、これらは基材への密着性を向上させる効果もある。
【0068】
着色剤としては、具体的には、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が使用される。
【0069】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、オレイン酸ブチル等の脂肪酸カルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールエステル類等のグリコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン等が使用される。
【0070】
タレ防止剤としては、具体的には、水添ヒマシ油、無水ケイ酸、有機ベントナイト、コロイド状シリカ等が使用される。
【0071】
また、他の添加剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の接着付与剤、紫外線吸収剤、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤、各種の老化防止剤等が使用される。
【0072】
本発明の硬化型組成物は、室温で十分に安定であるため貯蔵性に優れ、かつ、湿気に接触すると配合された硬化触媒[B]により硬化反応が自発的に進行する。また、スナップタイム(半ゲル化し流動性が無くなるまでの時間)やタックフリータイム(表面タックの無くなるまでの時間)も短く作業性に優れる。
【0073】
上記の特性から、本発明の硬化型組成物は1液型シーリング材として用いることができる。具体的には、建築物、船舶、自動車等の車両のシーリング材、接着剤、密封剤、防水用の目止め材等の用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0074】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0075】
<製造例1(複合体1)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:17.05g(0.06mol)、1-オクタノール:7.97g(0.06mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール3.61g(0.06mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体21.12gを得た。
【0076】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液14.0g(0.02mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度16mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体1)を22.56g得た。
【0077】
複合体1のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.42-3.37 (m, 8H), 1.73-1.65 (m, 8H), 1.47 (q, J = 7.4 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0078】
また、TBAHのNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): δ=3.35-3.31 (m, 8H), δ=1.70-1.64(m, 8H), δ=1.46 (q, 7.4Hz,8H), δ=1.02 (t, 7.4Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0079】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体1の3.42-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体1では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.07ppmシフトしていることが確認された。
【0080】
<製造例2(複合体2)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:17.04g(0.06mol)、1-オクタノール:4.40g(0.034mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール2.04g(0.034mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体19.06gを得た。
【0081】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液14.0g(0.02mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度14mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体2)を19.95g得た。
【0082】
複合体2のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.35 (m, 8H), 1.78-1.65 (m, 8H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.3 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0083】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体2の3.41-3.35の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体2では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0084】
<製造例3(複合体3)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:8.52g(0.03mol)、1-オクタノール:2.20g(0.017mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール1.02g(0.017mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体9.57gを得た。
【0085】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液10.51g(0.015mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度15mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体3)を10.62g得た。
【0086】
複合体3のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): δ=3.42-3.38 (m, 8H), 1.72-1.68 (m, 8H), 1.50-1.44 (m, 8H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0087】
複合体3の3.42-3.38の化学シフトは、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。複合体3では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.07ppmシフトしていることが確認された。
【0088】
<製造例4(複合体4)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:6.00g(0.021mol)、1-オクタノール:2.20g(0.017mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール1.02g(0.017mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体6.86gを得た。
【0089】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液14.80g(0.021mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度8mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体4)を9.46g得た。
【0090】
複合体4のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): δ=3.42-3.38 (m, 8H), 1.71-1.68 (m, 8H), 1.50-1.44 (m, 8H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0091】
複合体4の3.42-3.38の化学シフトは、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。複合体4では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.07ppmシフトしていることが確認された。
【0092】
<製造例5(複合体5)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:17.05g(0.06mol)、ブチルセロソルブ:7.09g(0.06mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール3.61g(0.06mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体20.54gを得た。
【0093】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液14.0g(0.02mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度17mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体5)を22.08g得た。
【0094】
複合体5のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.37 (m, 8H), 1.73-1.65 (m, 8H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.5 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0095】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体5の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体5では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0096】
<製造例6(複合体6)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:17.05g(0.06mol)、ブチルセロソルブ:4.40g(0.037mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール2.24g(0.037mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体18.61gを得た。
【0097】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液14.0g(0.02mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度19mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体6)を19.71g得た。
【0098】
複合体6のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.37 (m, 8H), 1.71-1.67 (m, 8H), 1.47 (q, J = 7.3 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 12H),δ=0 (TMS)
【0099】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体6の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体6では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0100】
<製造例7(複合体7)>
100mLナスフラスコに、テトライソプロポキシチタン:8.52g(0.03mol)、メチルカルビトール:2.20g(0.018mol)の順に仕込み、窒素置換したのち、均一になるよう10分間攪拌した。その後、80℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度50mmHg)してイソプロパノール1.08g(0.018mol)を留出させて100mLナスフラスコ内に無色液体9.40gを得た。
【0101】
そこに37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液7.0g(0.01mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。75℃のウォーターバスで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度8mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、淡黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体7)を9.78g得た。
【0102】
複合体7のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): δ=3.42-3.38 (m, 8H), δ=1.74-1.66 (m, 8H), δ=1.47 (td, 7.4Hz,8H), δ=1.01 (t, 7.4Hz,12H), δ=0 (TMS)
【0103】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体7の3.42-3.38の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体7では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.07ppmシフトしていることが確認された。
【0104】
<製造例8(複合体8)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:48.26g(0.17mol)、ブチルカルビトール:27.55g(0.17mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度12mmHg)してイソプロパノール10.2g(0.17mol)を留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体65.10gを得た。
【0105】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液41.5g(0.056mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度10mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体8)を65.44g得た。
【0106】
複合体8のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.48-3.43 (m, 5H), 3.41-3.37 (m, 8H),1.74-1.66 (m, 8H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.4 Hz, 8H), 1.02 (t, J = 7.3 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0107】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体8の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体8では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0108】
<製造例9(複合体9)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:58.0g(0.20mol)、ブチルカルビトール:15.0g(0.092mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度7mmHg)してイソプロパノールを5.53g(0.092mol)留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体66.84gを得た。
【0109】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液50.0g(0.067mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度7mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体9)を62.96g得た。
【0110】
複合体9のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.42-3.37 (m, 8H), 1.73-1.65 (m, 8H), 1.61-1.41 (m, 1.5H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.5 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0111】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体9の3.42-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体9では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0112】
<製造例10(複合体10)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:50.0g(0.176mol)、ブチルカルビトール:57.08g(0.352mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度7mmHg)してイソプロパノール21.16g(0.352mol)を留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体85.92gを得た。
【0113】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液43.5g(0.059mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度7mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体10)を91.31g得た。
【0114】
複合体10のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.37 (m, 8H),1.74-1.66 (m, 8H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.4 Hz, 8H), 1.02 (t, J = 7.3 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0115】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体10の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体10では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0116】
<製造例11(複合体11)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:48.26g(0.17mol)、ブチルカルビトール:27.55g(0.17mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度12mmHg)してイソプロパノール10.22g(0.17mol)を留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体65.10gを得た。
【0117】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液50.0g(0.067mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度10mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体11)を67.15g得た。
【0118】
複合体11のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.37 (m, 8H), 1.74-1.66 (m, 8H), 1.47 (td, J = 14.8, 7.4 Hz, 8H), 1.02 (t, J = 7.3 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0119】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体11の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体11では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0120】
<製造例12(複合体12)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:38.7g(0.136mol)、ブチルカルビトール:10.0g(0.062mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度7mmHg)してイソプロパノール3.73g(0.062mol)を留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体44.56gを得た。
【0121】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液40.0g(0.054mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度16mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体12)を44.12g得た。
【0122】
複合体12のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): 3.41-3.37 (m, 8H), 1.73-1.65 (m, 8H), 1.47 (q, J = 7.3 Hz, 8H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0123】
TBAHの3.35-3.31の化学シフト、及び複合体12の3.41-3.37の化学シフトは、それぞれ、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。このため、複合体12では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.06ppmシフトしていることが確認された。
【0124】
<製造例13(複合体13)>
窒素導入管を取り付けた200mL4つ口丸底フラスコに、テトライソプロポキシチタン:48.26g(0.17mol)、ブチルカルビトール:27.55g(0.17mol)の順に仕込み、油浴で加熱し内温80℃になるまで攪拌した。その後、減圧濃縮(最終減圧度12mmHg)してイソプロパノール10.22g(0.17mol)を留出させて200mL4つ口丸底フラスコ内に無色液体65.10gを得た。
【0125】
そこに35%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液62.5g(0.084mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温80℃になるまで加熱し、減圧濃縮(最終減圧度10mmHg)でイソプロパノールおよびメタノールを留去させて、黄色液体のテトラブチルアンモニウム塩(複合体13)を72.78g得た。
【0126】
複合体13のNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
1H NMR (400 MHz CDCl3): δ=3.42-3.38 (m, 8H), 1.74-1.66 (m, 8H), 1.52-1.42 (m, 8H), 1.01 (t, 7.4 Hz, 12H), δ=0 (TMS)
【0127】
複合体13の3.42-3.38の化学シフトは、TBAHのブチル基のα水素原子(N-CH2の水素原子)に帰属する。複合体13では、TBAHと比較して、α水素原子の化学シフトが+0.07ppmシフトしていることが確認された。
【0128】
(湿気硬化型組成物の調製)
上記製造例で得た各成分及び市販の成分を用い、表1に示す配合割合(質量部)で配合し、混練して湿気硬化型組成物を調製した。なお、材料の配合、混練、硬化までの操作は25±1℃、50~60%RHの雰囲気下で行った。
【0129】
<タックフリータイムの測定>
得られた湿気硬化型組成物について、タックフリータイム(エチルアルコールで清浄した指先で、表面の3箇所に軽く触れ、混練終了時から試料が指先に付着しなくなるまでに要した時間)を測定した。タックフリータイムの測定の結果を表1~表2に示す。
【0130】
実施例・および比較例に示すように、それぞれ単独の時よりも、チタン化合物[B1]とアンモニウムヒドロキシド[B2]を併用した時に、顕著な活性向上が認められる。
【0131】
また、製造例1では、テトライソプロポキシチタンと1-オクタノールの配合モル数が同じであるので、ほぼ全てのテトライソプロポキシチタンにおいてアルコキシ交換反応が起こって、チタン化合物のほぼ全量がチタン化合物[B1]になっている。このため、得られる複合体1はほぼ全量が複合体[C]となっている。一方、製造例2では、1-オクタノールの配合モル数がテトライソプロポキシチタンの配合モル数よりも少ないので、一部のテトライソプロポキシチタンのみにおいてアルコキシ交換反応が起こる。このため、系中にチタン化合物[B1]とチタン化合物[Ba]が共存した状態となり、この状態でアンモニウムヒドロキシド[B2]との反応を進行させると、複合体[C]と複合体[Ca]の両方が生成される。このため、複合体2は、複合体[C]と複合体[Ca]の混合物となっている。複合体[Ca]は、複合体[C]よりも触媒活性が高いので、実施例1よりも実施例2の方が、タックフリータイムが短くなっている。
【0132】
【0133】
【0134】
表中の材料の詳細は次のとおりである。
【0135】
(重合体[A])
MSポリマー SAX520:シリル基含有有機重合体((株)カネカ製)
MSポリマー S303:シリル基含有有機重合体((株)カネカ製)
STP-E15:シリル基含有有機重合体(WACKER Chemical Corporation製)
KE-66:オルガノポリシロキサン(信越化学工業(株)製)
【0136】
(硬化触媒[B])
複合体1:製造例1で製造したもの
複合体2:製造例2で製造したもの
複合体3:製造例3で製造したもの
複合体4:製造例4で製造したもの
複合体5:製造例5で製造したもの
複合体6:製造例6で製造したもの
複合体7:製造例7で製造したもの
複合体8:製造例8で製造したもの
複合体9:製造例9で製造したもの
複合体10:製造例10で製造したもの
複合体11:製造例11で製造したもの
複合体12:製造例12で製造したもの
複合体13:製造例13で製造したもの
【0137】
(その他の触媒)
テトライソプロポキシチタン:東京化成工業(株)製
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:37%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、東京化成工業(株)製
【0138】
(充填剤)
カーレックス300:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)
FR-41:酸化チタン(古河ケミカルズ(株)製)
REOLOSIL PM-20:ヒュームドシリカ((株)トクヤマ製)
【0139】
(その他添加剤)
DINP:可塑剤(ジェイプラス(株)製)
PPG1000:可塑剤(キシダ化学(株)製)
ディスパロン6500:タレ止め剤(楠本化学(株)製)
水添ひまし油:タレ止め剤(伊藤製油(株)製)
Songsorb 3260P:紫外線吸収剤(SONGWON製)
Sabostab UV70:光安定化剤(SONGWON製)
Irganox245:酸化防止剤(BASFジャパン(株)製)
KBM-1003:脱水剤(信越シリコーン工業(株)製)
KBM-903:接着付与剤(信越シリコーン工業(株)製)
KBM-603:接着付与剤(信越シリコーン工業(株)製)
ノクラックNS-6:老化防止剤(大内新興化学工業(株)製)
スモイルP-350:流動パラフィン(村松石油(株)製)
【0140】
<低温下での結晶析出有無の確認試験>
上記製造例の複合体と、テトライソプロポキシチタンを窒素雰囲気下にて、10℃1週間静置し、結晶析出の有無を確認した。その結果を表3に示す。
【0141】
表3に示すように、全ての実施例では、結晶が析出しなかったが、比較例3では、結晶が析出した。この結果は、本発明の複合体が結晶析出しにくく、貯蔵安定性に優れていることを示している。
【0142】