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特許7588905繊維強化物品を製造するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】繊維強化物品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/42 20060101AFI20241118BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20241118BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20241118BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C70/10
B29C70/46
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023532820
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2020083887
(87)【国際公開番号】W WO2022111826
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520132403
【氏名又は名称】アークティック・バイオマテリアルズ・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Arctic Biomaterials Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】フットゥネン,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴオリサロ,ヴェサ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイノ,ハッリ
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003091(JP,A)
【文献】特開昭49-044068(JP,A)
【文献】特開平02-016040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0244006(US,A1)
【文献】米国特許第04208174(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243732(US,A1)
【文献】米国特許第08043553(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29K 101/12
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化物品を形成するための方法であって、以下の工程101~105:
工程101 熱可塑性のポリマーマトリクスおよび強化繊維から構成されるコンポジット・プリフォーム(1)を提供する工程であって、前記コンポジット・プリフォーム(1)が、イニシャル・ボリュームと、イニシャル繊維オリエンテーションとを含む、工程、
工程102 少なくとも3つの隣接するダイ・セグメント(2)から構成されるラジアル・モールディング装置の内部に前記コンポジット・プリフォーム(1)をロードする工程であって、前記ダイ・セグメント(2)は、イニシャル・ボリュームを有するイニシャル・ポジションにおいて、互いに隣り合って、モールド・キャビティ(3)を形成する、工程、
工程103 前記ダイ・セグメント(2)を運動させることによって、前記コンポジット・プリフォーム(1)を成形する工程であって、前記ダイ・セグメント(2)は、前記イニシャル・ポジションと運動と圧縮ポジションとの間において、互いに直接的に接触しており、前記ダイ・セグメント(2)は、前記コンポジット・プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に対して垂直方向にあり、前記モールド・キャビティ(3)のイニシャル・ボリュームが減少し、前記ダイ・セグメント(2)は、前記圧縮ポジションにおいて、前記モールド・キャビティ(3)によって規定される形態まで前記コンポジット・プリフォーム(1)を圧縮し、前記圧縮ポジションでは、ファイナル・ボリュームが前記コンポジット・プリフォーム(1)のイニシャル・ボリューム以下であり、
前記成形する工程の前または前記成形する工程の後において、前記コンポジット・プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に沿って、少なくとも1つのピストン(4,5)を前記モールド・キャビティ(3)の内部で前記コンポジット・プリフォーム(1)に向けてスライドさせて、少なくとも一方の端部から前記モールド・キャビティ(3)をシールすることによって、前記コンポジット・プリフォーム(1)の圧縮をさらに促進させる、工程、
工程104 前記モールド・キャビティ(3)を解放する工程、および
工程105 得られる繊維強化物品(6)を前記モールド・キャビティ(3)から除去する工程であって、繊維強化物品(6)は、調整された繊維オリエンテーションを含み、連続強化繊維を前記繊維強化物品(6)の表面コンタに追従させる、工程
を含むことを特徴とする、繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項2】
前記成形する工程が、ラジアル・コンプレッション・モールディングを含む、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項3】
前記成形する工程の前または前記成形する工程の間あるいは前記ラジアル・モールディング装置の内部で前記コンポジット・プリフォーム(1)をロードする前に前記ラジアル・モールディング装置の内部でマトリクス・ポリマーのガラス転移温度(Tg)または融解温度(Tm)を超える温度まで前記コンポジット・プリフォーム(1)を加熱し、前記成形する工程の間または前記成形する工程の後に前記コンポジット・プリフォーム(1)を冷却する、請求項2に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項4】
前記成形する工程が、インジェクション・モールディングを含み、前記インジェクション・モールディングにおいて、得られる繊維強化物品(6)は、ファイバーインサートであり、前記ファイバーインサートは、オーバーモールディング・プロセスにおけるインサートとして使用される、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項5】
前記ピストン(4)の遠位の端部がモールドを含み、前記モールドは、インバース・デザインを有し、得られる繊維強化物品(6)のエンド・ポーション(6a)において前記インバース・デザインが再現される、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項6】
前記ピストン(4,5)が、前記モールド・キャビティ(3)のインターフェースにおいて、シーリング・フィーチャ(7)をさらに含み、前記シーリング・フィーチャ(7)は、前記圧縮ポジションにおいて、および/または前記成形する工程の間、前記モールド・キャビティ(3)をシールするように配置されている、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項7】
前記コンポジット・プリフォーム(1)のイニシャル・ボリュームは、前記イニシャル・ポジションにおける前記モールド・キャビティ(3)のボリュームよりも小さく、前記イニシャル・ポジションにおける前記コンポジット・プリフォーム(1)の横方向の寸法は、前記圧縮ポジションにおいて得られる繊維強化物品(6)の横方向の寸法よりも大きい、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項8】
前記圧縮する工程の間において、前記ダイ・セグメント(2)は、隣接するダイ・セグメント(2)に沿う同一の直線または湾曲した変位の長さに沿って運動し、前記運動は、少なくとも1つのアクチュエータによって同調されており、前記ダイ・セグメント(2)は、互いに直接的に接触している、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項9】
前記コンポジット・プリフォーム(1)の繊維オリエンテーションは、予め調節することができ、前記コンポジット・プリフォーム(1)は、ファイバーインサート(11)と、複数の周囲ファイバーレイヤー(12)とを含んで成り、前記ファイバーインサート(11)は、一軸性の繊維オリエンテーションを有し、前記複数の周囲ファイバーレイヤー(12)は、所望の繊維の角度を伴う螺旋状のオリエンテーションを有する、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項10】
前記コンポジット・プリフォーム(1)は、インターミングルまたはインターロックの層構造を含む、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項11】
前記繊維強化物品が医療器具である、請求項1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
【請求項12】
熱可塑性のポリマーマトリクスおよび強化繊維を含む繊維強化物品を形成するためのラジアル・コンプレッション・モールディング装置であって、当該ラジアル・コンプレッション・モールディング装置は、少なくとも3つの隣接するダイ・セグメント(2)を含み、前記ダイ・セグメント(2)は、互いに隣り合って、プリフォーム(1)のためのモールド・キャビティ(3)を形成し、前記ダイ・セグメント(2)は、圧縮の間において、隣接するダイ・セグメント(2)に沿う同一の直線または湾曲した変位の長さに沿って運動し、前記ダイ・セグメント(2)は、イニシャル・ポジションと運動と圧縮ポジションとの間において、互いに直接的に接触するように配置されており、前記運動は、少なくとも1つのアクチュエータによって同調されていることを特徴とし、さらに、当該ラジアル・コンプレッション・モールディング装置は、少なくとも1つのピストン(4,5)をさらに含み、前記ピストン(4,5)は、前記モールド・キャビティ(3)の端部に配置されていて、圧縮の前または圧縮の後において、前記プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に沿って、前記モールド・キャビティ(3)の内部で前記プリフォーム(1)に向けてスライドするように配置されていることを特徴とする、ラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
【請求項13】
前記ピストン(4)の遠位の端部がモールドを含み、前記モールドが、インバース・デザインを有する、請求項12に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
【請求項14】
前記ピストン(5)は、金属またはセラミックのティップをさらに含み、前記ティップが前記圧縮の間に前記プリフォーム(1)の端部に取り付けられる、請求項12に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
【請求項15】
前記ピストン(4,5)は、前記モールド・キャビティ(3)のインターフェースにシーリング・フィーチャ(7)をさらに含み、前記シーリング・フィーチャ(7)は、圧縮ポジションにおいて、前記モールド・キャビティ(3)をシールするために配置されている、請求項12に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
【請求項16】
前記シーリング・フィーチャ(7)は、前記ピストン(4,5)の幾何学的な特徴であり、前記ピストン(4,5)と一体化しているか、前記ピストン(4,5)にシームレスに結合している、請求項15に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、繊維強化物品を製造するための装置および繊維強化物品を製造するための方法に関する。本発明は、より詳細には、調整(又は調節)された複数の方向性を有する(又は多方向又はマルチディレクション)の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)(又はテーラード・マルチディレクション・ファイバー・オリエンテーション)を有する繊維強化物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
コンポジット材料(又は複合材料又は複合材又はコンポジット・マテリアル)は、コンポジット(又は複合材)とも呼ばれるものであり、2以上の材料を組み合わせたものであり(又はコンビネーション)、2以上の材料が肉眼で見えるレベルで混合または結合されているものである。コンポジット材料は、工学への応用において使用されている。工学への応用において、純粋な材料は、要求される具体的な特性(又はプロパティ)のセット(又は組み合わせ)を提供することができない。コンポジット材料は、別の材料を添加することによって性能が高められた単一の材料(又はシングル・マテリアル)と考えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
補強の手段として繊維(又はファイバー)を添加する。このような繊維によって、強度(又はストレングス)、剛性(又はスティフネス)または任意の他の所望の特性(又はプロパティ)がコンポジット(又は複合材)にもたらされる。上記の配置(又はアレンジメント)に関連する問題の1つは、製造段階(又は製造フェーズ)において、複雑な形状の物品の所望の複数の方向性を有する繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)(又は多方向(又はマルチディレクション)の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向))を如何に保存(又は維持)するかということである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
従って、本発明の目的は、所望の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)を有する物品の製造に関する上記問題を解決するための方法を提供することである。所望の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)は、最終製品(又はエンド・プロダクト)の要求に応じて、単に単純(又はシンプル)な一軸性(又はユニアキシャル)のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)であっても、複雑な多層の複数の方向性を有するオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)(又は多方向(又はマルチディレクション)のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向))であってもよい。本発明の目的は、独立請求項に記載される事項によって特徴付けられる方法および装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態を従属請求項に記載する。
【0005】
本発明は、ラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)を使用することと、モールド・キャビティ(又は型のキャビティ)から繊維強化物品を形成(又は成形又は製造)するという思想(又はアイデア)に基づくものである。このような繊維強化物品は、調整(又は調節)された繊維のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)(又はテーラード・ファイバー・オリエンテーション)を含むものである。補強繊維は連続して物品の表面の設計(又は意匠又はデザイン)に追従している(又は物品の表面の設計に沿って配置されている)。
【0006】
以下、本発明について、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態によって、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に従う方法のフローチャートである。
図2図2は、例示のダイ・セグメントを示す。
図3図3は、例示のダイ・セグメントを示す。
図4図4は、例示のコンポジット・プリフォーム(又はコンポジット予備成形体)を示す。
図5a図5aは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図5b図5bは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図5c図5cは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図5d図5dは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図5e図5eは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図5f図5fは、ピストンを用いる一連の例示の製造工程を示す。
図6図6は、例示の製造工程の代替の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態の詳細な説明)
本発明は、繊維強化熱可塑性ポリマーコンポジットにフォーカスしている(又は焦点が当てられている)。これらは、骨のスクリュー(又はネジ)およびファスナ(又は固定具)などの医療器具(又は医療デバイス又はメディカル・デバイス)として特に使用することができるものである。このような医療器具は、通常、ステンレス鋼またはチタン合金から作製されている。しかし、このような材料は、骨組織の力学的特性との力学的な不一致(又はメカニカル・ミスマッチ)や、応力遮蔽(又はストレス・シールディング)などのさらなる問題を引き起こす可能性があるなど、ある種の課題(又はチャレンジ)を抱えている傾向がある。また、金属製のインプラントは、MRIなどの画像診断(又はイメージング)に支障をきたす場合がある。そのため、技術者(又はエンジニア)たちは、望ましい効果や特性(又はプロパティ)を満たすことができる代替の材料を探している。
【0009】
代替の材料の1つは、繊維強化ポリマーコンポジット(又は繊維強化ポリマー複合材)である。このタイプのコンポジット(又は複合材)は、強化繊維と、熱可塑性のポリマーマトリクス材料との組み合わせ(又はコンビネーション)から構成される。熱可塑性のポリマーマトリクス材料は、繊維を覆う(又は囲む)ものである。繊維は、粘弾性ポリマーに強度(又はストレングス)と剛性(又はスティフネス)とを与えるものである。そうでなければ、補強しないと、特定の用途で必要とされる機械的な特性(又はメカニカル・プロパティ)に欠ける。繊維とマトリクスとが一緒になって相乗効果を発揮することで、コンポジット材料は、両者の寄与から得られる特徴的な特性(又はプロパティ)の利点を備えることになる。
【0010】
補強の手段として繊維を添加する。繊維によって、コンポジット(又は複合材)に強度(又はストレングス)、剛性(又はスティフネス)または任意の他の所望の特性(又はプロパティ)を提供する。マトリクスは、繊維と一緒に結合して、繊維をダメージ(又は損傷)から保護し、ある繊維から別の繊維に負荷(又はロード)を分配させる。コンポジットの特性(又はプロパティ)は、繊維の特性(又はプロパティ)、繊維の長さ、径(又は直径)、オリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)および量ならびにマトリクスの特性(又はプロパティ)およびマトリクスと繊維との間の結合(又はボンド又はボンディング)によって決定される。補強繊維を使用する場合、繊維は、切断されていてもよく、そして/または連続していてもよい。
【0011】
連続した繊維が整列(又は配列又はアライメント)している場合、整列(又は配列又はアライメント)の方向に沿って、最大の強度(又はストレングス)が繊維に提供される。コンポジット(又は複合材)は、他の方向に沿って、比較的により弱くてよい。従って、コンポジット(又は複合材)は、高度に異方性を示すことができる。所望の方向に整列した繊維(すなわち、繊維オリエンテーション又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)によって、この異方性を克服することができる。
【0012】
上記の配置に関連する問題の1つは、製造段階(又は製造フェーズ)において、複雑な形状の物品の所望の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)を如何に保存(又は維持)するかということである。これは、積層された平面構造では、それぞれの層において所望の繊維オリエンテーションで繊維を整列(又は配列又はアライメント)させることによって、あるいは、所望の繊維オリエンテーションを有する予め製造されたシートを選択することによって、簡単に解決することができる。製造されている繊維強化物品が単純(又はシンプル)な回転対称の物体である場合、所望の繊維オリエンテーションは、フィラメント・ワインディング(又はフィラメント・ワインド又はフィラメント巻き)によって達成することができる。より複雑な形状(又はシェイプ)では、所望の繊維オリエンテーションは、自動的なコンポジット製造技術(又は自動複合材製造技術)によって製造することができる(例えば、オートマチック・テープ・プレイスメント(又は自動テープ配置)および/またはオートマティック・ファイバー・プレイスメント(又は自動繊維配置))。しかし、複雑な繊維オリエンテーションを伴う製品を小型で製造し、なおかつ工業的なスケールで大量にマス生産する必要がある場合、好ましい製造技術として、コンプレッション・モールディング(又は圧縮成形)およびインジェクション・モールディング(又は射出成形)が挙げられる。
【0013】
従来のコンプレッション・モールディングにおいて、プリフォーム(又は予備成形体)の繊維オリエンテーションは変化する。あるいは、物品において特定のジオメトリ(又は形状又は配置)を保存(又は維持)することは、かなり困難なことである。平面構造において所望の繊維オリエンテーションを保存(又は維持)することは、ある程度、簡単である。しかし、より複雑なジオメトリ(又は形状又は配置)について、予測可能な繊維オリエンテーションを伴って再生(又は再現)することは簡単なことではない。例えば、回転対称の中実の物体(又は物品)をコンプレッション・モールディング(又は圧縮成形)に付す場合、物品(又は物体)の最終的な形状(又はシェイプ)を規定するモールド(又は型)にプリフォームを圧縮するとき、プリフォームの形状(又はシェイプ)の変形(又はトランスフォーメーション)は、物体(又は物品)の表面に沿って、均一ではない。従って、プリフォームのイニシャル繊維オリエンテーション(又はイニシャル・ファイバー・オリエンテーション又は初期繊維配向又は最初の繊維配向)は、均一でない形状(又はシェイプ)の変形(又はトランスフォーメーション)に起因して、様々な部位(又はセクション)において、様々な量で歪み、混ざり、および/または乱れることになる。
【0014】
インジェクション・モールディング(又は射出成形)では、製造されている物品の所望の繊維オリエンテーションは、インサート(又は挿入物又は差込物)を使用することによって達成することができる。このようなインサートは、所望の繊維オリエンテーションを有する繊維を含むものである。物品の最終的な形状(又はシェイプ)を規定するモールド(又は型)の内部(又は内側)にインサートを配置する。その後、マトリクス・ポリマーを注入(又は射出又はインジェクション)することによってモールド(又は型)を充填する。インサートの最も大きな外側の寸法は、モールド(又は型)の最小の外側の寸法よりも小さい寸法でなければならない。なぜなら、そうでなければ、モールドが閉じたときに繊維のインサートがモールドパーツ(又は型部品)の間で圧迫されて、インジェクション・モールディング(又は射出成形)が不可能になるからである。
【0015】
本発明は、連続繊維強化構造を形成(又は製造)する方法に関する。当該方法は、ラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)を利用するものである。特定の製品(又は生成物又はプロダクト)のジオメトリ(又は形状又は配置)のために当該方法によって得られる連続繊維強化構造は、層構造を含むことができる。各層において、繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)が規定されており、所望の特性(又はプロパティ)を有する。繊維オリエンテーションは、調整(又は調節)することができるものである。コンプレッション・モールディング(又は圧縮成形)などの従来の方法を用いると、かかる層構造および/または繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)は、モールディングの間に混ざって乱れる傾向にある。このことによって、場合によっては、完成品の所望の特性(又はプロパティ)の低下が引き起こされる。さらには、役に立たない場合もある。ラジアル・モールディングを用いる場合には、最終製品(又はファイナル・プロダクト)の所望の繊維オリエンテーションの構築(又はコンストラクション)/構造(又はストラクチャ)は、調整(又は調節)することができる/予測することができる。モールド(又は型)を閉じる間において、形状(又はシェイプ)の変形(又はトランスフォーメーション)が均一になるからである。このときプリフォームの最大の寸法を放射状に囲む(又は覆う)ことになる。理想的には、完成品において、繊維オリエンテーションの構造は、変化していないままであってよい。それにより、所望の特性(又はプロパティ)の利点(又はベネフィット)が最大になる。例えば、このような特性(又はプロパティ)は、靭性(又はタフネス)、剛性(又はスティフネス)、または任意の他の所望の機械的な特性(又はメカニカル・プロパティ)であってよい。
【0016】
図1は、一実施形態に係る繊維強化物品を形成(又は製造)するための方法を示すフローチャートである。第1の工程(又はステップ)101は、熱可塑性のポリマーマトリクスおよび強化繊維から構成されるコンポジット・プリフォーム(又は複合材プリフォーム又は複合プリフォーム)を提供することを含む。第1の工程101において、プリフォームは、イニシャル・ボリューム(又は初期体積又は最初の体積)と、イニシャル繊維オリエンテーション(又はイニシャル繊維配向又は初期繊維配向又は最初の繊維配向)とを含む。プリフォームは、回転対称であってよい。また、プリフォームは、インターミングル(又は混合)またはインターロック(又は結合)の層構造(又はレイヤー構造又はレイヤー・ストラクチャ)を含んでよい。このような層構造は、完成品において保存(又は維持)されていてよい。また、プリフォームは、調整(又は調節)された繊維構造(又はテーラード・ファイバー・ストラクチャ)を含んでいてもよい。このような構造において、繊維は、まず、別々の重ねられた層に位置している。ここで、このような繊維構造には、デザイン(又は設計)されたギャップ(又は間隙)がある(最内層(又は最下層))。ギャップ(又は間隙)を有する層の外側(又は上側)の層には、余分な繊維が存在している。この最外層(又は最上層)の余分な繊維は、最内層(又は最下層)のギャップ(又は間隙)と同じ位置(又はポジション)に配置されてよい。したがって、半径方向(又は放射状)にプリフォームを圧縮する場合、最外層(又は最上層)の余分な繊維がコアの方向に移動し、ギャップ(又は隙間)を充填する。そして、最終製品の繊維構造は、3Dのインターミングル(又は混合)またはインターロック(又は結合)の構造となる。このような構造は、ラジアル・モールディング(又はラジアル成形)の段階(又はフェーズ)で作製(又は製造又は形成)されるものである。各層は、同一または異なる材料から構成されてよい。さらに、所望の角度(例えば、90°、45°または30°など)を有する螺旋状のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)(又はヘリックス・オリエンテーション)を含むことができる。プリフォームは、様々な螺旋状(又はヘリックス)、一軸性(又はユニアキシャル)などのオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)を有する多層(又はマルチ層又はマルチプル・レイヤー)のまわりに覆われた(又は被覆又はラッピングされた)インサートまたはコアから構成されてよい。いくつかの構造において、様々な層の間にギャップ(又は間隙)が存在してよい。様々な層は、完成品において、繊維のインターロック(又は結合)をさらに促進させるものである。
【0017】
熱可塑性の材料は、それらを材料の具体的な特定の温度(例えば、ガラス転移温度、融解温度など)に加熱すると、その形状(又はシェイプ)が変形(又はトランスフォーム)できる材料である。また、熱可塑性ポリマーの特定の材料特性(例えば、結晶化度(又はクリスタリニティ)、強度(又はストレングス)の特性(又はプロパティ)など)は、温度と時間の関数として変更することができる。熱可塑性ポリマーを特定の温度(ガラス転移温度(Tg))まで加熱すると、熱可塑性ポリマーは軟化し、熱可塑性ポリマーの形状(又はシェイプ)は、変形することができる。半結晶性(又はセミクリスタル)および結晶性(又はクリスタル)の熱可塑性ポリマーは、それらをその融点(Tm)以上の温度に加熱すると、融解する。非晶質(又はアモルファス)の熱可塑性のポリマーは、融点を有していない。通常は、熱可塑性ポリマーは、Tgを超える温度またはTmを超える温度で成形(又はモールディング)される。熱可塑性ポリマーは、そのガラス転移温度よりも低い温度まで冷却すると、ガラス状態まで固化する。多くの様々な種類(又はタイプ)の繊維(又はファイバー)が存在し、これらは、ポリマー・マトリクス・コンポジットを強化(又は補強)するために使用することができるものである。最も一般的なものは、炭素繊維(又はカーボン・ファイバー)(AS4、IM7など)および繊維ガラス(又はファイバーグラス)(Sガラス(S-glass)、Eガラス(E-glass)など)である。繊維プリフォームは、しばしば、シート状、連続マット状、管状構造(又はチューブ構造)、あるいは連続フィラメントやマトリクス・ポリマーを用いて含浸させた連続フィラメント/テープとして製造される。
【0018】
第2の工程(又はステップ)102は、ラジアル・モールディング装置(又はラジアル成形装置)の内部(又は内側)にプリフォームをロード(又は充填又は装填)することを含む。この工程は、手動または機械(又はマシン)による自動のいずれかによるものである。このようなラジアル・モールディング装置は、少なくとも3つの隣接するダイ・セグメントを含む。ダイ・セグメントは、互いに隣り合って、モールド・キャビティ(又は型のキャビティ)を形成するものである。モールド・キャビティは、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)において、イニシャル・ボリューム(又は初期容量(もしくは最初の容量)又は初期容積(もしくは最初の容積)又は初期体積(もしくは最初の体積))を有し、圧縮ポジション(又は圧縮位置又は圧縮された位置)において、ファイナル・ボリューム(又は最終容量又は最終容積又は最終体積)を有する。ファイナル・ボリュームは、イニシャル・ボリュームよりも小さい。また、モールド・キャビティのファイナル・ボリュームは、完成した繊維強化物品(又は仕上げられた繊維強化物品)のファイナル・ボリューム(又は最終容量又は最終容積又は最終体積)および最終の形状(又はシェイプ)を規定(又は定義)する。
【0019】
ダイ・セグメントは、それぞれ、同一であってよい(例えば、ウェッジ形(又はくさび形)の平面))。ダイ・セグメントを配置して、ほぼ円筒形(又はシリンダ形)の中央キャビティ(又はセントラル・キャビティ)を形成(又は成形又は製造)する。しかし、キャビティ表面のデザイン(又は意匠又は設計)に応じて、他の形状(又はシェイプ)も形成(又は成形又は製造)することができる。ウェッジをヒンジで固定することができ、一体的(又はユニゾン)で駆動させることができる。それによって、キャビティの径(又は直径)、ひいては容量(又は容積又は体積)を変化させることができる。ダイ・セグメントは、隣接する2辺が成す角度が120°以下であれば、どのようなデザイン(又は意匠又は設計)であってもよい。
【0020】
第3の工程(又はステップ)103は、上記のダイ・セグメントを運動(又は移動)させることによって、プリフォームを成形(又はモールディング)することを含む。ダイ・セグメントは、それぞれ、エンド・ポジションおよびモールド(又は型)の運動(又は移動)(モールドを開けるとき、およびモールドを閉じるときなど)において、ならびにイニシャル・ポジションおよび圧縮ポジションにおいて、互いに直接的に接触している。この工程(又はステップ)において、圧縮(又はコンプレッション)は、プリフォームの長手軸に対して、同様または同一の半径方向の力(又はラジアル・フォース)および変形(又はデフォーメーション)を付与する。
【0021】
ラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)とは、複数の半径方向に沿って、イニシャル・ボリュームからファイナル・ボリュームまで、成形可能な連続繊維強化プリフォーム材料によって、成形物品を形成(又は成形又は製造)する技術である。このような半径方向は、共通の長手軸に対して、実質的に垂直方向であり、様々な面に存在するように配置されている。この文脈において、共通の長手軸とは、プリフォームがロード(又は充填又は装填)される方向であって、圧縮方向に対して垂直方向の軸を指す。
【0022】
このような運動可能(又は移動可能)なラジアル・ダイ・セグメントは、イニシャル・ポジションとファイナル圧縮ポジションとの間で同時に運動可能(又は移動可能)である。運動可能(又は移動可能)なラジアル・ダイ・セグメントによって、上記のイニシャル・ボリュームおよびファイナル・ボリュームをそれぞれ規定(又は定義)する。圧縮ポジションにおけるモールド・キャビティのボリューム(又は容量又は容積又は体積)は、プリフォームのボリューム(又は容量又は容積又は体積)以下であってよい。さらに、プリフォームのボリューム(又は容量又は容積又は体積)は、イニシャル・ポジションにおけるモールド・キャビティのボリューム(又は容量又は容積又は体積)以下であってよい。そして、イニシャル・ポジションにおけるプリフォームの横方向の寸法(又はトランスバース・ディメンション)は、圧縮ポジションにおける完成品の横方向の寸法(又はトランスバース・ディメンション)以上であってよい。また、イニシャル・ポジションのプリフォームの横方向の寸法(又はトランスバース・ディメンション)は、圧縮ポジションにおける完成品の横方向の寸法(又はトランスバース・ディメンション)以下であってよい。この場合、プリフォームの共通の長手軸に沿って、プリフォームは、端部(又はエンド部)から、さらに圧縮される。
【0023】
ダイ・セグメントのイニシャル・ポジションと圧縮ポジションとの間において、ダイ・セグメントを運動(又は移動)させるために、リニア(又は直線)またはカーブ(又は湾曲)・パス・アクチュエータを使用することができる。このようなラジアル・ダイ・セグメントは、リニア(又は直線)・パスまたはカーブ(又は湾曲)・パスのいずれかに沿って運動(又は移動)することができる。その間、隣接するラジアル・ダイ・セグメントの間でのインターフェースの表面は、このとき、リニア(又は直線)またはカーブ(又は湾曲)のいずれであってもよい。
【0024】
また、本発明に記載の少なくとも3つのモールド・ダイ・セグメントから構成されるラジアル・モールドは、インジェクション・モールディング(又はインジェクション成形又は射出成形)のためのモールド(又は型)として使用することができる。インジェクション・モールディングにおいて、半径方向(又は放射状)に開くモールド(又は型)は、本発明において説明する通り、連続繊維インサート(又は連続ファイバー・インサート)を使用することができる。インサートは、成形された最終製品よりも、さらに大きなイニシャル径(又は初期径又は初期直径)を有するものである。従来のモールド(又は型)では、モールド(又は型)が開いているとき、モールド・パーツ(又は型部品)(また、ダイとして知られているもの)の間にギャップ(又は間隙)が常に存在している。従って、モールド(又は型)を閉じるとき、モールド・パーツ(又は型部品)の間にインサートが圧迫される(又はスクイーズされる)ので、このようなより大きな径(又は直径)のインサートを使用することは不可能となる。本発明において説明する通り、モールド(又は型)が放射状(又は半径方向)に開閉する場合、このような圧迫は発生しない。これにより、オーバーモールド射出成形において、このような連続繊維強化インサートを使用することができる。インジェクション・モールディング(又は射出成形)において、任意の他の種類(又はタイプ)のモールド(又は型)を使用する場合、このようなインサートは、使用することができない。
【0025】
第4の工程(又はステップ)104は、モールド・キャビティを解放することを含む。この工程は、ダイ・セグメントをイニシャル・ポジションに戻すことによるものである。この工程では、ダイ・セグメントは、それぞれ、運動(又は移動)の間において、隣接するダイ・セグメントと直接的に接触している。アクチュエータによって、圧縮運動(又はコンプレッション・ムーブメント)および解放運動(又はリリース・ムーブメント)の両方を行うことができる。それにより、ダイ・セグメントのイニシャル・ポジションと圧縮ポジションとの間において、ダイ・セグメントを強制的に運動させることができる。このようなアクチュエータは、油圧式のパワー・シリンダであってよい。例えば、ダイ・セグメントに取り付けられていてよい。ダイ・セグメントの操作(又は作動又は運転又はオペレーション)は、バルブによって制御(又は調整又は調節又はコントロール)することができる。パワー・シリンダは、同時に接続されてよい。それにより、圧縮し、圧縮後にバルブを通してフロー(又は流れ)を逆流(又はリバース)させることができる。
【0026】
第5の工程(又はステップ)105は、得られる繊維強化物品をモールド・キャビティから除去する(又は取り出す)ことを含む。この工程は、手動または機械(又はマシン)による自動のいずれかによるものである。完成品は、調整(又は調節)されたオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)(又はテーラード・オリエンテーション)と、層構造(又はレイヤー構造又はレイヤー・ストラクチャ)とを含む。連続強化繊維(又は連続した強化繊維)は、得られる物品の表面コンタに追従または一致している。イニシャル繊維オリエンテーション構造(又は初期繊維配向構造又は最初の繊維配向構造)は、完成品において、変化していない状態を維持(又は保持)していてよい。これにより、所望の特性(又はプロパティ)の利点(又はベネフィット)を最大化している。得られる物品は、所望の特性(又はプロパティ)(例えば、より良好な靭性(又はタフネス))、ならびに圧縮(又はコンプレッション)、ねじれ(又はトーション)、衝撃(又はインパクト)に対する耐性(又はレジスタンス)、または任意の他の所望の特性(又はプロパティ)を含む。
【0027】
別の実施形態において、当該方法は、加熱する工程(又はステップ)をさらに含む。加熱工程において、マトリクス・ポリマーのガラス転移温度または融解温度よりも高い温度までプリフォームを加熱する。プリフォームを加熱することによって、プリフォームの成形性(又はフォルマビリティ)が促進される。このような加熱工程は、ラジアル・モールディング装置の内部に配置されてよい。その後、成形する工程(又はステップ)を行うか、あるいは、ラジアル・モールディング装置の内部にプリフォームをロード(又は充填又は装填)する。いくつかの実施形態において、ダイ・セグメントは、加熱エレメント(又は加熱要素)を使用して加熱することができる。加熱エレメントは、圧縮ダイ本体の所望の位置(又はロケーション)の内部に配置されるものである。そして、ダイ・セグメントは、モールド・キャビティに配置されるプリフォームに熱を移動させることができる。次いで、コンダクション(又は熱の伝導)によって、モールド・キャビティの内部でプリフォームを冷却する。あるいは、成形工程の後、任意の適切な冷却手段(例えば、空冷(又はエア・クーリング))によって、完成品を冷却する。
【0028】
さらに別の実施形態において、当該方法は、成形工程の前または成形工程の後または成形工程の間において、プリフォームの共通の長手軸に沿って、モールド・キャビティの内部(又は内側)において、少なくとも1つのピストンをスライド(又はスライディング又は滑走)させる工程をさらに含む。それにより、少なくとも1つの端部(又はエンド部)から、モールド・キャビティをシール(又はシーリング又は封止又は密封)することによって、プリフォームの圧縮をさらに促進させる。このような文脈において、ピストンとは、モールディング装置の内部(又は内側)に適合(又はフィット)して運動(又は移動)するように配置される任意のロッドまたはスティックまたは同様のものを指す。例えば、モールド・キャビティのそれぞれの長手方向の端部(又はエンド部)にピストン(1つ)を提供することができる。そして、成形工程の間において、このようなピストンがプリフォームに向かってスライドする。そうすることで、両方の端部(又はエンド部)からプリフォームをさらに圧縮する。モールド・セグメントとピストンとの組み合わせによって、製品(又は生成物又はプロダクト)の全ての側面(又はサイド)を形成することができる。好ましくは、ダイ・セグメントがファイナル圧縮ポジションに運動(又は移動)した後、プリフォームに向けてピストンがスライド(又はスライディング又は滑走)する。別々のアクチュエータが片側のピストンまたは両側のピストンを運動(又は移動)させることができる。1つのピストンから別のピストンまで、モールド・キャビティを全体的に通過する特徴(又はフィーチャ)をピストンは含んでよい。このような実施形態は、中空の開口部を有するモールディング・パーツ(又は成形部品)(開口部がこのようなパーツ(又は部品)の最も長い寸法(又はディメンション)を通るもの)の場合に特に有益である。このようなパーツ(又は部品)の例は、カニューレ付きスクリュー(又はカニュレイテッド・スクリュー(cannulated screw))である。
【0029】
ピストンの遠位の端部(又は遠位端)は、モールド(又は型)を含んでいてよい。モールド(又は型)は、インバース・デザイン(又は逆のデザイン又は逆の意匠又は又は逆設計)を有する。インバース・デザインは、得られる繊維強化物品のエンド・ポーション(又は端部)において再現(又は再生)されるものである。モールド(又は型)は、プラスチック(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))から作製することができる。モールド(又は型)は、優れた機械的(又はメカニカル)および化学的(又はケミカル)な抵抗特性(又はレジスタンス・プロパティ)を有する。このような抵抗特性は、高温においても維持されるものである。この文脈において、遠位の端部(又は遠位端)とは、プリフォームと接触する端部(又はエンド部)を指す。デザイン(又は意匠又は設計)とは、例えば、スクリューヘッド(又はネジ頭又はネジの頭部(screw head))および/またはスクリューティップ(又はネジ先又はネジの先端部(screw tip))であってよい。別の実施形態において、ピストンは、別のパート(又は部品)を含んでよい。別のパート(又は部品)は、インサート(又は挿入物又は差込物)として使用されるものであり、ラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)の段階(又はフェーズ)において製造されるパート(又は部品又は一部)に結合されるものである。このようなインサートは、圧縮成形段階の前にピストンに一時的に取り付けられ、成形段階においてラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)されるパート(又は部品又は一部)にいつまでも取り付けられるものである。このようなインサートは、製造されるパート(又は部品又は一部)と同じ材料から構成されてよい。あるいは、このようなインサートは、様々な材料から構成されてよい(例えば、金属、セラミックなど)。このようなインサートは、製造されるパート(又は部品又は一部)のティップ(又は先端部)(全体)を含んでよい。このようなティップ(又は先端部)は、例えば、ねじ切りされていてよい(又はネジ山が形成されていてよい)。そして、2以上の材料の混合物がより有利となる用途において使用されてよい。
【0030】
さらに別の実施形態では、プリフォームと、得られる繊維強化物品とが互いに分離することなく、共通の長手軸の方向において、モールド・キャビティの長さ以下の長さでプリフォームが運動(又は移動)するようにして、プリフォームをロードすること(又はローディング又は充填又は装填)および圧縮(又はコンプレッション)すること、ダイ・セグメントを戻すこと、得られる繊維強化物品を除去すること(又は取り出すこと)によって、連続的なマナー(又は方法又は様式)でプリフォームを提供する。ローディングは、自動または手動で行うことができる。自動の場合、以下に説明する連続的なマナー(又は方法又は様式)でアクチュエータによってプリフォームをモールド・キャビティまで運動(又は移動)させることができる。
【0031】
連続プロセス
(1)
冷たいモールド・キャビティに連続したプリフォーム(又は連続プリフォーム)をロード(又はローディング又は充填又は装填)することによってプロセスを開始(又はスタート)する工程
(2)
モールド(又は型)を加熱して、閉じて(又はクロージング)、プリフォームをラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)に付して、最終の形状(又はファイナル・シェイプ)を得る工程
(3)
モールド(又は型)を冷却する工程
(4)
モールド(又は型)を解放(又はオープニング)する工程
(5)
共通の長手軸の方向において、モールド・キャビティの長さ以下の長さで連続したプリフォーム(又は連続プリフォーム)を運動(又は移動)させる工程
(6)
モールド(又は型)を加熱して、閉じて(又はクロージング)、プリフォームをラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)に付して、最終の形状(又はファイナル・シェイプ)を得る工程
(7)
モールド(又は型)を冷却する工程
(8)
モールド(又は型)を解放(又はオープニング)する工程
(9)
上記の工程5~8を必要な回数に応じて繰り返して(又はリピートして)、プリフォームの全長にわたって圧縮する工程
【0032】
結果物(又はアウトカム)は、連続してラジアル・モールディング(又はラジアル成形又は半径方向の成形)に付された物品であって、所望の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)および形状(又はシェイプ)を有する物品である。
【0033】
さらに別の実施形態では、成形工程の前において、当該方法は、モールド(又は型)のシール(又はシーリング又は封止又は密封)(又はモールド・シーリング)をさらに促進するために、プリフォームの共通の長手軸に沿って、ピストンの遠位の端部(又は遠位端)において、具体的にデザイン(又は設計)されたモールドのシーリング・フィーチャ(又は封止機能又は封止要素)を有する少なくとも1つのピストンをスライド(又はスライディング又は滑走)させる工程をさらに含む。シーリング・フィーチャは、モールド・キャビティのエッジ(又は縁部)において停止(又はストップ)する。この文脈において、ピストンは、幾何学的な特徴(又はジオメトリカル・フィーチャ)を含む。このような幾何学的な特徴によって、モールド・キャビティが「解放(又はオープン)」している段階(又はステージ)において、モールド(又は型)をシールする(又はシーリング又は封止又は密封する)(図2)。その後、圧縮されたポジション(又は圧縮ポジションまたは圧縮位置)にダイ・セグメントを運動(又は移動)させる(図3)。このような実施形態において、別個のアクチュエータによって、片側のピストンまたは両側のピストンを運動(又は移動)させることができる。
【0034】
図2および図3は、イニシャル・ポジションおよび圧縮ポジションにおいて、それぞれ、長手軸から見たラジアル・モールディング装置の例示的なダイ・セグメント2を示す。図2および図3に示す通り、当該装置は、4つのダイ・セグメント2を含み、これら4つのダイ・セグメント2によって、モールド・キャビティ3が形成されている。ダイ・セグメント2は、製造される製品(又は生成物又はプロダクト)に応じて、同一であっても、異なっていてもよい。ダイ・セグメント2は、それぞれ、ウェッジ(又はくさび)を形成する2つのインターフェース表面(又は界面又は境界面)2aを含む。ダイ・セグメント2は、イニシャル・ポジションにある間(図2)、成形工程および圧縮ポジション(図3)、ならびに、かかるポジション間の運動(又は移動)の間において、隣接するダイ・セグメント2のインターフェース表面(又は界面又は境界面)2aと常に接触している。ダイ・セグメント2は、リニア・パス(又は直線的な経路)に沿って、運動(又は移動)することができる。ここで、隣接するダイ・セグメント2の間のインターフェース表面(又は界面又は境界面)2aはリニア(又は直線的)であってよい。
【0035】
図4は、例示のコンポジット・プリフォーム(又は複合材プリフォーム又は複合プリフォーム)1を示す。コンポジット・プリフォーム1は、熱可塑性のポリマーマトリクスおよび強化繊維を含む。プリフォーム1は、コア11と、複数の周囲ファイバーレイヤー(又は周囲繊維層)12とを含む。コア11は、一軸性(又はユニアキシャル)の繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)を有する。複数の周囲ファイバーレイヤー12は、実質的に45°の螺旋状のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)(又はヘリックス・オリエンテーション又は螺旋の配向(又は向き又は方向))を有する。螺旋状のオリエンテーションは、ライトハンド(又は右巻き又は時計回り)および/またはレフトハンド(又は左巻き又は反時計回り)のいずれかまたは両方であってよい。周囲ファイバーレイヤー12は、例えば、45°/-45°/45°/-45°/45°などの螺旋状のオリエンテーションで重なり合っていてよい。周囲ファイバーレイヤー12は、コア11から周囲ファイバーレイヤー12の表面まで、同一または異なる螺旋状のオリエンテーションで重なり合っていてよい。ここで、コア11の繊維(又はファイバー)は、長手軸に平行する(又はパラレルである)同一のオリエンテーション(又は配向又は向き又は方向)を含む。いくつかの例において、周囲ファイバーレイヤー12は、コア11に近い同一の螺旋状のオリエンテーションと、周囲ファイバーレイヤー12の表面に近い異なる螺旋状のオリエンテーションとを有してよい。連続強化繊維は、完成品(又は仕上げられた物品)の表面のデザイン(又は意匠又は設計)に追従または一致するように配置される。スクリュー(又はネジ)では、特に、トルクを決定するために、螺旋の角度(又はヘリックス・アングル)が必要となる。スクリュー効率(又はスクリュー・エフィシエンシ)は、螺旋の角度によってコントロール(又は調整又は調節)する。最大のスクリュー効率は、40度~45度である。しかし、いくつかの実施形態において、螺旋状のオリエンテーションは、実質的に15°または30°であってよい。あるいは、長手軸に平行(又はパラレル)であってよい。また、ファイバーインサート11は、異なる材料で置換されていてもよい。
【0036】
図5a~図5fは、例示の一連の製造工程を示す。図2および図3と同様のダイ・セグメントが挙げられる。これらは、ピストン4,5を備え、解放した状態(又はオープンの状態)で示されている。これらの図では、2つの正面側(又はフロント側)の隣接するダイ・セグメント2は、示していない(又は省略している)。
図5aは、ダイ・セグメント2を示し、ダイ・セグメント2は、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)にある。この図では、モールド・キャビティ3は、イニシャル・ボリューム(又は初期容量又は初期容積又は初期体積)を有している。この例において、モールド・キャビティ3は、ネジ山が形成されたスクリュー(又はネジ)の形状(又はシェイプ)を有している。モールド・キャビティ3の上方および下方は、ピストンが通過するためのパス(又は通路)である。
【0037】
図5bは、イニシャル・ポジションでのダイ・セグメント2およびピストン4,5を示す。図5bにおいて、プリフォーム1は、モールド・キャビティ3の内部にロード(又はローディング又は充填又は装填)されている。プリフォーム1は、イニシャル・シェイプとイニシャル・ボリュームとを有し、プリフォーム1は、熱可塑性のポリマーマトリクスと強化繊維とを含むものである。プリフォーム1は、共通の長手軸Aを有する。共通の長手軸Aは、圧縮方向に対して垂直方向である。プリフォーム1のイニシャル・ボリュームは、モールド・キャビティ3のイニシャル・ボリュームよりも小さくすることができる。そして、圧縮ポジションにおいて、モールド・キャビティ3と完成品(又は仕上げられた製品)とでは、ボリューム(又は容量又は容積又は体積)が一致している(又はマッチング又はマッチしている)。第1ピストン4と第2ピストン5は、互いに異なる径(又は直径)および形状(又はシェイプ)を有してよい。しかし、これらは、同一の径(又は直径)を有していてもよい(図6に示す通り)。ピストン4,5は、メタル(又は金属)から作製されていてよく、あるいはPEEKなどのプラスチックのティップ(又は先端部)を有するメタル(又は金属)から作製されてよい。
【0038】
図5cは、工程(又はステップ)を示すものである。図5cにおいて、ダイ・セグメント2は、圧縮ポジション(又は圧縮された位置)にある。その一方で、ピストン4,5は、まだ、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)にある。ラジアル・コンプレッション(又はラジアル成形又は半径方向の成形)の間において、プリフォーム1の長手方向の形状(又はシェイプ)が形成(又は成形)され、調整(又は調節)された繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)を有する。ここで、連続する強化繊維(又は連続強化繊維)は、その表面コンタ(又はサーフェス・コンタ(surface contour))に追従または一致する。図5cから理解できる通り、両側の端部セクション(又はエンド・セクション)が、突出部(又はプロトルージョン)を有する。このような突出部(又はプロトルージョン)は、コントロール(又は制御又は調整又は調節)されていない形状(又はシェイプ)を有するものである(図5cでは丸められた形状(又はラウンド・シェイプ)として示されている)。これは、所望のデザイン(又は意匠又は設計)でなくてもよい。
【0039】
図5dは、完全な圧縮ポジション(又は完全に圧縮された位置)を示す。図5dでは、ラジアル・コンプレッション(又はラジアル成形又は半径方向の成形)の後において、モールド・キャビティ3の内部(又は内側)で両側からピストン4,5がスライド(又はスライディング又は滑走)している。圧縮ポジションにおけるモールド・キャビティ3のボリューム(又は容量又は容積又は体積)は、完成品(又は仕上げられた物品)6のボリューム(又は容量又は容積又は体積)に等しくなる。第1ピストン4および/または第2ピストン5は、遠位の端部(又は遠位端)を有する。遠位の端部は、プリフォーム1または未完成の物品(又は未完成品)と接触する端部(又はエンド部)である。遠位の端部は、モールド(又は型)として機能するものである。モールド(又は型)は、インバース・デザイン(又は逆の意匠又は逆設計)を有する。インバース・デザインは、完成品6のエンド・ポーション(又はエンド部又は端部)において再現(又は再生)される。
【0040】
図5eは、工程(又はステップ)を示す。図5eにおいて、ダイ・セグメント2およびピストン4,5は、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)まで戻されている。そして、完成品6が除去され得る状態になる(又は取り出すことができる状態になる)。
【0041】
図5fは、完成品(又は仕上げられた物品)6を拡大した図を示す。完成品6は、エンド・ポーション(又は端部)6aと、ミドル・ポーション(中間部)6bと、ティップ・ポーション(又は先端部)6cとに区分することができる。エンド・ポーション(又は端部)6aは、トップ・シェイプ(又は頂部の形状)を有する。トップ・シェイプ(又は頂部の形状)は、第1ピストン4によって形成(又は成形)されるものである。ミドル・ポーション(又は中間部)6bは、螺旋状のネジ山(又はスレッド)を有する。ネジ山(又はスレッド)は、調整(又は調節)された繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)を有し、機械的な特性(又はメカニカル・プロパティ)が最適化されている。ティップ・ポーション(又は先端部)6cは、フラット(又は平坦)であってよい。あるいは、いくつかの場合において、ティップ・ポーション(又は先端部)6cは、プリフォーム1とは異なる材料から作製されたティップ(又は先端部)を含んでいてよい。ティップ・ポーション(又は先端部)6cは、完全にネジ山が形成されていてもよいし、部分的にネジ山が形成されていてもよいし、スムース(又は平滑又は滑らか)であってもよい。
【0042】
図6は、上記の例示の製造工程の代替の工程(又はステップ)を示す。図6の実施形態は、図5cに関して説明したものと非常によく似ている。したがって、図6の実施形態は、主として、以下にて、相違点を指摘することで説明する。
【0043】
図6は、ラジアル・コンプレッション(又はラジアル成形又は半径方向の成形)の前の工程(又はステップ)を示す。図6において、ピストン4,5は、圧縮ポジション(又は圧縮された位置)にある。その一方で、ダイ・セグメント2は、まだ、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)にある(すなわち、図5b)。ピストン4,5は、ラジアル・コンプレッション(又はラジアル圧縮又は半径方向の圧縮)の前に所望のデザイン(又は意匠又は設計)までプリフォーム1のエンド・ポーション(又は端部)を圧縮するか、あるいは、ラジアル・コンプレッション(又はラジアル圧縮又は半径方向の圧縮)の間にモールド・キャビティ3からプリフォーム1が流出することを持続させるかのいずれかであってよい。その一方で、ラジアル・コンプレッション(又はラジアル圧縮又は半径方向の圧縮)の圧力によって、ピストン4,5の一方に向けて、またはそれらの両方に向けて、プリフォーム1をプッシュするようになる(又は押し出すようになる)。両方の場合において、完成品(又は仕上げられた物品)は、調整(又は調節)された繊維オリエンテーション(又は繊維配向又は繊維の向き又は繊維の方向)(又はテーラード・ファイバー・オリエンテーション)を有するものとして得られる。ここで、連続した強化繊維(又は連続強化繊維)は、表面コンタ(又はサーフェス・コンタ(surface contour))に追従または一致している。
【0044】
さらに別の実施形態において、ピストン4,5は、プリフォーム1の共通の長手軸Aに沿って、モールド・キャビティ3のインターフェース(又は界面又は境界面)において、シーリング・フィーチャ(又は封止機能又は封止要素)7をさらに含んでよい。それにより、モールド(又は型)のシール(又はシーリング又は封止)(又はモールド・シール又はモールド・シーリング)をさらに促進させることができる。この文脈において、用語「モールド・キャビティ3のインターフェース(又は界面又は境界面)」とは、ファイナル・ボリューム(最終的な容量(又は容積又は体積))によってモールド・キャビティ3が規定(又は定義)されるボーダー(又は境目又は境界又は界面)を指す。シーリング・フィーチャ7を形成(又は成形)することによって、モールド・キャビティ3の近位の端部(又は近位端)および/または遠位の端部(又は遠位端)のインターフェース(又は界面又は境界面)をシール(又はシーリング又は封止)する。このとき、ダイ・セグメント2は、まだ、イニシャル・ポジション(又は初期位置又は最初の位置)にあり、圧縮ポジション(又は圧縮された位置)では、フォーカス(又は集中)して、ダイ・セグメント2の回転(又はローテーション)をロック(又は固定)するように配置される。したがって、モールド・キャビティ3の端部(又はエンド部)にあるシール(又はシーリング又は密封)されたインターフェース(又は界面又は境界面)によって、かかる方向への成形可能なプリフォーム1の漏れ(又はリーク又はリーケージ)を抑制(又は防止)する。したがって、このようにシール(又はシーリング又は密封)されたインターフェース(又は界面又は境界面)によって、成形段階(又は成形フェーズ)の間において、圧力の調節(又はプレッシャー・レギュレーション)を向上(又は改善)させる。シーリング・フィーチャ7を利用する場合、ピストン4,5の径(又は直径)は、圧縮された段階(又はステージ)でのモールド・キャビティ3の径(又は直径)よりも小さくてよい。シーリング・フィーチャ7は、任意の適切なシーラント材料(又はシーラント・マテリアル又はシール材又は密封材)から製造されてよい(例えば、ラバー(又はゴム)、メタル(又は金属)またはプラスチック類(例えば、PEEK))。また、シーリング・フィーチャ7は、ピストンのレスト(又は残りの部分)と同じ材料から構成されてよい。また、シーリング・フィーチャ7は、ピストン4,5の幾何学的な特徴(又は幾何形体又はジオメトリカル・フィーチャ)であってもよい。このような幾何学的な特徴は、ピストン4,5と一体化されているか、ピストン4,5にシームレスに結合(又は継ぎ目なく結合(又はジョイント))されている。また、このような幾何学的な特徴は、任意の適切な材料から構成されている。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
繊維強化物品を形成するための方法であって、以下の工程101~105:
工程101 熱可塑性のポリマーマトリクスおよび強化繊維から構成されるコンポジット・プリフォーム(1)を提供する工程であって、前記コンポジット・プリフォーム(1)が、イニシャル・ボリュームと、イニシャル繊維オリエンテーションとを含む、工程、
工程102 少なくとも3つの隣接するダイ・セグメント(2)から構成されるラジアル・モールディング装置の内部に前記コンポジット・プリフォーム(1)をロードする工程であって、前記ダイ・セグメント(2)は、イニシャル・ボリュームを有するイニシャル・ポジションにおいて、互いに隣り合って、モールド・キャビティ(3)を形成する、工程、
工程103 前記ダイ・セグメント(2)を運動させることによって、前記コンポジット・プリフォーム(1)を成形する工程であって、前記ダイ・セグメント(2)は、前記イニシャル・ポジションと運動と圧縮ポジションとの間において、互いに直接的に接触しており、前記ダイ・セグメント(2)は、前記コンポジット・プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に対して垂直方向にあり、前記モールド・キャビティ(3)のイニシャル・ボリュームが減少し、前記ダイ・セグメント(2)は、前記圧縮ポジションにおいて、前記モールド・キャビティ(3)によって規定される形態まで前記コンポジット・プリフォーム(1)を圧縮し、前記圧縮ポジションでは、ファイナル・ボリュームが前記コンポジット・プリフォーム(1)のイニシャル・ボリューム以下である、工程、
工程104 前記モールド・キャビティ(3)を解放する工程、および
工程105 得られる繊維強化物品(6)を前記モールド・キャビティ(3)から除去する工程であって、繊維強化物品(6)は、調整された繊維オリエンテーションを含み、連続強化繊維を前記繊維強化物品(6)の表面コンタに追従させる、工程
を含むことを特徴とする、繊維強化物品を形成するための方法。
(態様2)
前記成形する工程が、ラジアル・コンプレッション・モールディングを含む、態様1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様3)
前記成形する工程の前または前記成形する工程の間あるいは前記ラジアル・モールディング装置の内部で前記コンポジット・プリフォーム(1)をロードする前に前記ラジアル・モールディング装置の内部でマトリクス・ポリマーのガラス転移温度(Tg)または融解温度(Tm)を超える温度まで前記コンポジット・プリフォーム(1)を加熱し、前記成形する工程の間または前記成形する工程の後に前記コンポジット・プリフォーム(1)を冷却する、態様2に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様4)
前記成形する工程が、インジェクション・モールディングを含み、前記インジェクション・モールディングにおいて、得られる繊維強化物品(6)は、ファイバーインサートであり、前記ファイバーインサートは、オーバーモールディング・プロセスにおけるインサートとして使用される、態様1に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様5)
前記コンポジット・プリフォーム(1)と、得られる繊維強化物品(6)とが互いに分離することなく、前記共通の長手軸(A)の方向において、前記モールド・キャビティ(3)の長さ以下の長さで前記コンポジット・プリフォーム(1)を運動させるように、前記コンポジット・プリフォーム(1)をロードすること、圧縮すること、前記ダイ・セグメント(2)を戻すこと、そして、得られる繊維強化物品(6)を除去することによって、連続的なマナーで前記コンポジット・プリフォーム(1)を提供する、態様1~3のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様6)
前記成形する工程の前または前記成形する工程の後において、少なくとも1つのピストン(4,5)を前記コンポジット・プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に沿って、前記モールド・キャビティ(3)の内部にスライドさせて、少なくとも一方の端部から前記モールド・キャビティ(3)をシールすることによって、前記コンポジット・プリフォーム(1)の圧縮をさらに促進させる、態様1~4のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様7)
前記ピストン(4)の遠位の端部がモールドを含み、前記モールドは、インバース・デザインを有し、得られる繊維強化物品(6)のエンド・ポーション(6a)において前記インバース・デザインが再現される、態様6に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様8)
前記圧縮の間にインサートあるいは金属もしくはセラミックのティップを前記コンポジット・プリフォーム(1)に取り付けるように前記ピストン(5)を配置する、態様6または7に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様9)
前記ピストン(4,5)が、前記モールド・キャビティ(3)のインターフェースにおいて、シーリング・フィーチャ(7)をさらに含み、前記シーリング・フィーチャ(7)は、前記圧縮ポジションにおいて、および/または前記成形する工程の間、前記モールド・キャビティ(3)をシールするように配置されている、態様6~8のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様10)
前記コンポジット・プリフォーム(1)のイニシャル・ボリュームは、前記イニシャル・ポジションにおける前記モールド・キャビティ(3)のボリュームよりも小さく、前記イニシャル・ポジションにおける前記コンポジット・プリフォーム(1)の横方向の寸法は、前記圧縮ポジションにおいて得られる繊維強化物品(6)の横方向の寸法よりも大きい、態様1~9のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様11)
前記圧縮する工程の間において、前記ダイ・セグメント(2)は、隣接するダイ・セグメント(2)に沿う同一の直線または湾曲した変位の長さに沿って運動し、前記運動は、少なくとも1つのアクチュエータによって同調されており、前記ダイ・セグメント(2)は、互いに直接的に接触している、態様1~10のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様12)
前記コンポジット・プリフォーム(1)の繊維オリエンテーションは、予め調節することができ、前記コンポジット・プリフォーム(1)は、ファイバーインサート(11)と、複数の周囲ファイバーレイヤー(12)とを含んで成り、前記ファイバーインサート(11)は、一軸性の繊維オリエンテーションを有し、前記複数の周囲ファイバーレイヤー(12)は、所望の繊維の角度を伴う螺旋状のオリエンテーションを有する、態様1~11のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様13)
前記コンポジット・プリフォーム(1)は、インターミングルまたはインターロックの層構造を含む、態様1~12のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様14)
前記繊維強化物品が医療器具である、態様1~13のいずれか1項に記載の繊維強化物品を形成するための方法。
(態様15)
ラジアル・コンプレッション・モールディング装置であって、当該ラジアル・コンプレッション・モールディング装置は、少なくとも3つの隣接するダイ・セグメント(2)を含み、前記ダイ・セグメント(2)は、互いに隣り合って、プリフォーム(1)のためのモールド・キャビティ(3)を形成し、前記ダイ・セグメント(2)は、圧縮の間において、隣接するダイ・セグメント(2)に沿う同一の直線または湾曲した変位の長さに沿って運動し、前記運動は、少なくとも1つのアクチュエータによって同調されていることを特徴とし、さらに、当該ラジアル・コンプレッション・モールディング装置は、少なくとも1つのピストン(4,5)をさらに含み、前記ピストン(4,5)は、前記モールド・キャビティ(3)の端部に配置されていて、圧縮の前または圧縮の後において、前記プリフォーム(1)の共通の長手軸(A)に沿って、前記モールド・キャビティ(3)の内部で前記プリフォーム(1)に向けてスライドするように配置されていることを特徴とする、ラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
(態様16)
前記ピストン(4)の遠位の端部がモールドを含み、前記モールドが、インバース・デザインを有する、態様15に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
(態様17)
前記ピストン(5)は、金属またはセラミックのティップをさらに含み、前記ティップが前記圧縮の間に前記プリフォーム(1)の端部に取り付けられる、態様15または16に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
(態様18)
前記ピストン(4,5)は、前記モールド・キャビティ(3)のインターフェースにシーリング・フィーチャ(7)をさらに含み、前記シーリング・フィーチャ(7)は、圧縮ポジションにおいて、前記モールド・キャビティ(3)をシールするために配置されている、態様15~17のいずれか1項に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
(態様19)
前記シーリング・フィーチャ(7)は、前記ピストン(4,5)の幾何学的な特徴であり、前記ピストン(4,5)と一体化しているか、前記ピストン(4,5)にシームレスに結合している、態様18に記載のラジアル・コンプレッション・モールディング装置。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6