(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ダーツ
(51)【国際特許分類】
A63B 65/02 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
A63B65/02 A
(21)【出願番号】P 2023571226
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2023021205
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】711013483
【氏名又は名称】株式会社フェリックス
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】福永 正和
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121368(JP,A)
【文献】特開2012-239635(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先側から基側へかけて、チップ、バレル、及び、シャフトを、順次備えたダーツにおいて、
前記シャフトは先側から基側へかけて徐々に縮径し、該シャフトの基側には、該シャフトの軸心を中心として等角度位置に3枚のフライトが取付け固定され、しかも、該フライトの基側は前記シャフトから突出して互いに連接し、
前記シャフトには、該シャフトの周方向に隣り合う前記フライトの間に溝が形成され、該溝の内幅が、前記フライト側から前記シャフトの軸心方向中央へかけて徐々に広くなり、かつ、該シャフトの軸心方向中央から前記バレル側へかけて徐々に狭くなることを特徴とするダーツ。
【請求項2】
請求項1記載のダーツにおいて、前記溝の深さは、前記フライト側から前記シャフトの軸心方向中央へかけて徐々に深くなり、かつ、該シャフトの軸心方向中央から前記バレル側へかけて徐々に浅くなることを特徴とするダーツ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のダーツにおいて、3つの前記溝は、同一形状であり、しかも、前記シャフトの軸心を中心として等角度位置に形成されていることを特徴とするダーツ。
【請求項4】
請求項3記載のダーツにおいて、前記シャフトが前記バレルに取付け取外し可能となっていることを特徴とするダーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁等に設置された的(ダーツボード)に投擲して得点等を競うスポーツ遊具に使用されるダーツに関する。
【背景技術】
【0002】
ダーツ競技は、得点を競うスポーツ競技としてプロ競技も行なわれ広く発展している。具体的には、ダーツ(矢、ダート)を的に投擲して、その中心部の高得点を競う競技であり、いかに多くのダーツを的の中心部に投げることができるかが競われる。そのため、ダーツを的の中心にできるだけ集中して刺すことが要求される競技である。
従来、例えば、特許文献1~3に開示されたダーツが知られているが、このようなダーツを投擲した場合、先に投げたダーツが的に刺さった状態で、続けて次のダーツを投げるため、既に的に刺さったダーツに後から投げたダーツが衝突して弾かれ、同じ位置にダーツが刺さらないことがある。また、既に的に刺さったダーツが弾かれて的より離脱することがある。
そこで、本発明者らは、特許文献4に開示されたダーツを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-110413号公報
【文献】特許第5432785号公報
【文献】実用新案登録第3160281号公報
【文献】特許第5748345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したダーツにより、後から投げたダーツが的に刺さったダーツに衝突して弾かれたり、また、後から投げたダーツにより的に刺さったダーツが弾き飛ばされたりすることを、従来よりも抑制できるが、更なる改善が望まれている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、後から投げたダーツが的に刺さったダーツに衝突して弾かれたり、また、後から投げたダーツにより的に刺さったダーツが弾き飛ばされたりすることを、従来よりも抑制、更には防止可能なダーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るダーツは、先側から基側へかけて、チップ、バレル、及び、シャフトを、順次備えたダーツにおいて、
前記シャフトは先側から基側へかけて徐々に縮径し、該シャフトの基側には、該シャフトの軸心を中心として等角度位置に3枚のフライトが取付け固定され、しかも、該フライトの基側は前記シャフトから突出して互いに連接し、
前記シャフトには、該シャフトの周方向に隣り合う前記フライトの間に溝が形成され、該溝の内幅が、前記フライト側から前記シャフトの軸心方向中央へかけて徐々に広くなり、かつ、該シャフトの軸心方向中央から前記バレル側へかけて徐々に狭くなる。
【0007】
このように、フライトは、枚数が3枚であり、シャフトにその軸心を中心として等角度位置(120度間隔位置)に取付け固定されているので、シャフトの周方向に隣り合うフライトの間隔を、フライトの枚数が4枚の場合(90度間隔位置)よりも広くできるため、ダーツを続けて投げる際に、後から投げたダーツが、既に的に刺さったダーツのフライトに衝突しにくくなる。
また、シャフトは、先側から基側へかけて徐々に縮径した形状であり、フライトの基側は、シャフトから突出して互いに連接しているので、後から投げたダーツが、既に的に刺さったダーツのシャフトに衝突しにくくなり、衝突した場合でもスムーズにすり抜けることができる。
更に、シャフトには、その周方向に隣り合うフライトの間に溝を形成しているが、フライトの枚数を3枚とすることで、フライトの枚数が4枚の場合よりも、溝1つ当たりの断面積(シャフトの軸心方向に直交する面での面積)を大きくできるため、上記した作用効果が更に高められる。なお、溝の内幅は、シャフトの軸心方向にフライト側からバレル側へかけて、徐々に広くした後に徐々に狭くしているので、シャフトの強度を損なうことなく、また、後から投げたダーツのチップ先端が、既に的に刺さったダーツに衝突した場合でも、スムーズにすり抜けることができる。
【0008】
ここで、前記溝の深さは、前記フライト側から前記シャフトの軸心方向中央へかけて徐々に深くなり、かつ、該シャフトの軸心方向中央から前記バレル側へかけて徐々に浅くなることが好ましい。
また、3つの前記溝は、同一形状であり、しかも、前記シャフトの軸心を中心として等角度位置に形成されていることが好ましい。
更に、前記シャフトを前記バレルに取付け取外し可能とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るダーツは、例えば、複数本のダーツを続けて投げる際に、後から投げたダーツが、的に刺さったダーツのフライトに衝突しにくくなり、また、後から投げたダーツのチップ先端が、的に刺さったダーツに衝突した場合でも、スムーズにすり抜けることができる。
従って、従来のダーツと比較して、後から投げたダーツは、的に刺さったダーツによって大きく弾き飛ばされることなく、このダーツに近い位置で的に刺さることができるため、又は、後から投げたダーツにより的に刺さったダーツが弾き飛ばされて的から離脱することを従来よりも抑制、更には防止できるため、競技等では高得点を挙げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係るダーツの平面図である。
【
図2】同ダーツのシャフト及びフライトの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1~
図4に示すように、本発明の一実施例に係るダーツ10は、先側(前側)から基側(後ろ側)へかけて、チップ(ポイントとも称す)11、バレル12、及び、シャフト13を順次備え、シャフト13の基側には、フライト14が取付け固定されたものであり、複数のダーツ10を続けて投げる際に、後から投げたダーツ10が、先に投げて的(標的:図示しない)に刺さったダーツ10に衝突して弾かれたり、また、後から投げたダーツ10により、的に刺さったダーツ10が弾き飛ばされたりすることを、従来よりも抑制、更には防止可能なものである。
以下、詳しく説明する。
【0012】
チップ11は、
図1に示すように、ダーツ10の軸心方向先部に設けられ、的に突き刺さる部分である。
このチップ11は、例えば、金属製やプラスチック製であり、ねじ部等(図示しない)により、バレル12に取付け取外し可能(交換可能)にすることができる。
【0013】
バレル12は、
図1に示すように、ダーツ10の軸心方向中央部に設けられ、ダーツ10を投げる場合は、このバレル12を持つことが一般的である。
このバレル12は、主として金属製であり、重量があってダーツ10を遠くに投げるための効果がある。バレル12の材質としては、例えば、真鍮(しんちゅう)、ニッケル合金、タングステン合金など様々であるが、比重の重いタングステン合金やニッケル合金で造られたものの方がより細くなり、的に当たった際に干渉しにくい。
なお、バレル12は、形状、滑り止めの刻み、重量等が様々である。
【0014】
シャフト13は、
図1~
図5に示すように、ダーツ10の軸心方向基部に設けられ、シャフト13の基側にフライト14が取付け固定され、ダーツ10が真直ぐ飛ぶための効果を発揮する部分である。即ち、フライト14は翼となる部分である。
このシャフト13は、断面円形状であり、その軸心方向に先側から基側へかけて徐々に縮径し(テーパ状となっており)、その先端部に設けられたねじ部(雄ねじ)15により、バレル12の基端部にねじ込んで取付け固定できる(交換可能にできる)。なお、シャフト13の最大径(ねじ部15を除いた先端の径)Dは、例えば、4.5mm~6.5mm程度であり、シャフト13の軸心方向の長さ(ねじ部15を除いた長さ)L1は、例えば、45mm~60mm程度であるが、特に限定されるものではない。
【0015】
シャフト13の材質には、例えば、金属、樹脂(プラスチック)、ポリカーボネイト、カーボンコンポジットなど様々なものを使用でき、上記効果を発揮できれば、特に限定されるものではない。
ここで、シャフト13とフライト14は、同じ材質の樹脂を用いて射出成形することにより、一体成形する(一体構造とする)ことが好ましいが、シャフトとフライトを別々に成形して組合せることもできる。この場合、シャフトの基側に切れ込みを入れ、この切れ込みにフライトを差し込むことで取付け固定できる。なお、シャフトとフライトの材質は、同じでもよく、また、異なってもよい。
【0016】
シャフト13の基側には、3枚のフライト14が、シャフト13の軸心を中心として等角度位置に取付け固定されている(形成されている)。ここで、等角度位置とは、シャフト13の軸心を中心として120度間隔の位置であるが、製造上の誤差等により、例えば、±1度程度の範囲(119度~121度の範囲)でずれる場合も等角度位置に含まれる。
フライト14の先側は、シャフト13の軸心方向中央から基側にかけての外周に取付け固定され、フライト14の基側は、シャフト13からその軸心方向基側外方(後方)へ突出して互いに連接している。このため、
図4に示すように、ダーツ10の後方からダーツ10を視ると、3枚のフライト14は、ダーツ10の軸心を中心として放射状に配置される。
なお、シャフト13に対するフライト14の取付け長さは、例えば、シャフト13の軸心方向に沿うフライト14の長さL2の50%以上80%以下(好ましくは、60%以上)程度であり、シャフト13の軸心に対するフライト14の高さHは15mm~25mm程度であり、また、フライト14が取付けられていないシャフト13の軸心方向の長さL3は20mm~30mm程度であるが、特に限定されるものではない。
【0017】
3枚のフライト14は同一形状であり、例えば、スタンダード、シェイプ(ハローズ・シェイプ)、カイト、ティアドロップ、スリム等の形状にでき、各フライト14の外周輪郭は、
図2に示すように、シャフト13の軸心方向に沿って、その先側から基側へかけて、緩やかな傾斜角度の先側斜面16と、この先側斜面16よりも急な傾斜角度の基側斜面17が連接した曲面で構成されている。具体的には、先側斜面16を構成する立上がり部の曲率半径R1は8mm~13mm程度であり、基側斜面17は軸心に対して58度~65度程度で立ち上がり、先側斜面16から基側斜面17にかけての曲率半径R2、R3、R4はそれぞれ、R2が17mm~21mm程度、R3がR2より大きく27mm~33mm程度、R4がR2より小さく4mm~7mm程度であるが、特に限定されるものではない。
また、フライト14の厚みは通常0.3mm~0.5mm程度であり、シャフト13の長さL1も含めたフライト14基端までの長さL4は、例えば、65mm~75mm程度であるが、特に限定されるものではない。
【0018】
シャフト13には、シャフト13の周方向に隣り合うフライト14とフライト14の間に、溝18が形成されている(合計3つ)。各溝18は、シャフト13の軸心を中心として等角度位置に形成されている。ここで、等角度位置とは、シャフト13の軸心を中心として120度間隔の位置であるが、製造上の誤差等により、例えば、±1度程度の範囲(119度~121度の範囲)でずれる場合も等角度位置に含まれる。
溝18は、シャフト13の強度を損なうことなく、後から投げたダーツ10が的に刺さったダーツ10に衝突してもスムーズにすり抜けられるように、その形状、内幅、及び、深さを設定している。
3つの溝18は同一形状であり、その内幅が、フライト14側(3枚のフライト14が互いに連接する位置)からシャフト13の軸心方向中央へかけて徐々に広く(逆テーパ状に)なり、かつ、シャフト13の軸心方向中央からバレル12側へかけて(シャフト13の軸心方向でフライト14が存在しない領域で)徐々に狭く(テーパ状に)なっている。また、各溝18の深さは、フライト14側からシャフト13の軸心方向中央へかけて徐々に深くなり、かつ、シャフト13の軸心方向中央からバレル12側へかけて(シャフト13の軸心方向でフライト14が存在しない領域で)徐々に浅くなっている。
【0019】
上記した溝18のバレル12側端部とフライト14側端部はそれぞれ、鋭角状(V字状)となっている。この溝18の内幅が最大となる位置は、シャフト13の軸心方向中央でバレル12側(シャフト13の軸心方向でフライト14が存在しない領域)であるため、溝18のフライト14側端部はバレル12側端部よりも、より尖っている(より鋭角状になっている)。なお、溝18の最大内幅は、例えば、3mm~5mm程度であるが、特に限定されるものではない。
また、溝18の底面は、
図4、5に示すように、断面円弧状(曲線:例えば、曲率半径が0.4mm~0.6mm程度)になっている。この溝18の深さが最大となる位置は、シャフト13の軸心方向中央でバレル12側(シャフト13の軸心方向でフライト14が存在しない領域)である。
なお、上記した溝18の内幅が最大となる位置と、深さが最大となる位置は、同じであるが、異なってもよい。
【0020】
上記したように、ダーツ10は、フライト14の枚数を3枚とし、シャフト13を先側から基側へかけて徐々に縮径した形状とし、更に、シャフト13の周方向に隣り合うフライト14とフライト14の間に上記した構成の溝18を形成している。このため、複数のダーツ10を続けて投げる際に、後から投げたダーツ10のチップ11先端が、的に刺さったダーツ10のシャフト13の基端に衝突して、後から投げたダーツ10が弾き飛ばされるということがなく、的に刺さったダーツ10の近くに刺さることになる。また、的に刺さったダーツ10が、後から投げたダーツ10によって弾き飛ばされることを、従来よりも抑制、更には防止できる。
【0021】
以上、本発明を、一実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例の形態に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実例や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のダーツを構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施例においては、シャフトが、その先端部に設けられたねじ部により、バレルの基端部に取付け取外し可能となっている場合について説明したが、シャフトがバレルから取り外せない構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のダーツによれば、複数本のダーツを続けて投げる際に、後から投げたダーツが的に刺さったダーツに衝突して弾かれたりすること、また、後から投げたダーツにより的に刺さったダーツが弾き飛ばされたりすることを、従来よりも抑制、更には防止でき、競技等では高得点を挙げることが可能となるため、例えば、ダーツの製造販売の向上に寄与できるといった産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0023】
10:ダーツ、11:チップ、12:バレル、13:シャフト、14:フライト、15:ねじ部、16:先側斜面、17:基側斜面、18:溝
【要約】
先側から基側へかけて、チップ11、バレル12、及び、シャフト13を、順次備えたダーツ10であり、シャフト13は先側から基側へかけて徐々に縮径し、シャフト13の基側には、シャフト13の軸心を中心として等角度位置に3枚のフライト14が取付け固定され、しかも、フライト14の基側はシャフト13から突出して互いに連接し、シャフト13には、シャフト13の周方向に隣り合うフライト14の間に溝18が形成され、溝18の内幅が、フライト14側からシャフト13の軸心方向中央へかけて徐々に広くなり、かつ、シャフト13の軸心方向中央からバレル12側へかけて徐々に狭くなっている。