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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】路面切削機
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/12 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
E01C23/12 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024019198
(22)【出願日】2024-02-13
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000235163
【氏名又は名称】範多機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】徳田 憲作
(72)【発明者】
【氏名】小西 剛
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0333116(US,A1)
【文献】特開2010-174520(JP,A)
【文献】実開平04-097913(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2023/0151562(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0316333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、負荷が所定値以上となった場合に、アシストモードに移行して、前記駆動装置及び前記電動モータの両方によって、前記切削ドラムを回転させるように制御することを特徴とする、路面切削機。
【請求項2】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え
前記制御装置は、充電のみモードの場合には、前記駆動装置の回転力を前記電動モータに伝達し、
前記電動モータによって発電された電力が前記バッテリに充電されるように制御することを特徴とする、路面切削機。
【請求項3】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え
前記制御装置は、作業&充電モードの場合には、前記駆動装置に前記切削ドラムを回転させるとともに、前記電動モータを回転させて前記バッテリに充電させるように制御することを特徴とする、路面切削機。
【請求項4】
前記制御装置は、通常モードの場合には、前記駆動装置のみによって、前記切削ドラムを回転させように制御することを特徴とする、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の路面切削機。
【請求項5】
前記制御装置は、整備モードの場合には、前記電動モータのみに前記切削ドラムを回転させるように制御することを特徴とする、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の路面切削機。
【請求項6】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え
前記切替手段は、
前記電動モータに直接又は間接的に接続される第1のクラッチと、
前記切削ドラムに直接又は間接的に接続される第2のクラッチと、
前記油圧モータに直接又は間接的に第3のクラッチとを含み、
前記制御装置は、作業モードに応じて、前記第1~第3のクラッチを制御することを特徴とする、路面切削機。
【請求項7】
前記制御装置は、通常モードの場合には、前記第1のクラッチをオフにして、前記電動モータからの回転力が前記切削ドラムに伝達しないように制御することを特徴とする、請求項に記載の路面切削機。
【請求項8】
前記制御装置は、アシストモードの場合には、前記第1~第3のクラッチをオンにして、前記電動モータ及び前記駆動装置からの回転力が前記切削ドラムに伝達するように制御することを特徴とする、請求項に記載の路面切削機。
【請求項9】
前記制御装置は、充電のみモードの場合には、前記第2のクラッチをオフにして、前記駆動装置からの回転力を前記電動モータに伝達させて発電及び充電するように制御することを特徴とする、請求項に記載の路面切削機。
【請求項10】
前記制御装置は、整備モードの場合には、前記第3のクラッチをオフにして、前記電動モータからの回転力が前記切削ドラムに伝達するように制御することを特徴とする、請求項に記載の路面切削機。
【請求項11】
前記制御装置は、作業&充電モードの場合には、前記第1~第3のクラッチをオンにしつ、かつ、前記駆動装置で前記切削ドラムを駆動し、その動力で前記電動モータを回転させて前記バッテリに充電させるように制御することを特徴とする、請求項に記載の路面切削機。
【請求項12】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え
前記駆動装置は、前記切削ドラムに内蔵されている油圧モータであり、
前記切替手段は、
前記油圧モータの動作を制御する制御弁と、
前記電動モータの回転軸に直接又は間接的に接続されたクラッチとを含み、
前記制御装置は、作業モードに応じて、前記制御弁及び前記クラッチを制御することを特徴とする、路面切削機。
【請求項13】
前記制御装置は、通常モードの場合には、前記クラッチをオフにして、前記電動モータからの回転力が前記切削ドラムに伝達しないように制御することを特徴とする、請求項1に記載の路面切削機。
【請求項14】
前記制御装置は、アシストモードの場合には、前記クラッチをオンにし、かつ、前記制御弁を制御して前記油圧モータを回転させるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の路面切削機。
【請求項15】
前記制御装置は、充電のみモードの場合には、前記クラッチをオンにし、かつ、前記制御弁を制御して前記油圧モータを回転させるようにして、前記電動モータが発電機として機能するように制御することで、前記バッテリが充電されるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の路面切削機。
【請求項16】
前記制御装置は、整備モードの場合には、前記クラッチをオンにし、かつ、前記制御弁を制御して前記油圧モータを回転させないようにして、前記電動モータの回転力で前記切削ドラムが回転するように制御することを特徴とする、請求項1に記載の路面切削機。
【請求項17】
前記制御装置は、作業&充電モードの場合には、前記クラッチをオンにし、かつ、前記制御弁を制御して前記油圧モータを回転させるようにして、さらに、前記電動モータが発電機として機能するように制御することで、前記バッテリを充電させつつ、かつ、前記切削ドラムを回転させるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の路面切削機。
【請求項18】
路面を切削するための切削ドラムと、
前記切削ドラムを回転させるための油圧モータからなる駆動装置と、
バッテリの電力で動作する電動モータと、
前記切削ドラムの回転を、前記駆動装置によって回転させるか、若しくは、前記電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、
前記切替手段、前記駆動装置、及び前記電動モータの動作を制御する制御装置と
前記バッテリの電力を利用する投光器とを備えることを特徴とする、路面切削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面切削機に関する。
【背景技術】
【0002】
路面切削機は、表面に多数のビットを備えた切削ドラムを回転させて、路面を切削し、切削した路面をコンベア等で回収して、別のダンプカーに積載する装置である。
従来の路面切削機の切削ドラムは、油圧モータで回転させるのがほとんどであったが、特許文献1~6に記載のように、電動モータで、切削ドラムを回転させる装置についても提案されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-023755号公報
【文献】特開2022-186972号公報
【文献】特許6690854号公報
【文献】特許7168737号公報
【文献】特許7169317号公報
【文献】実用新案登録第3115763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電動モータと油圧モータとを組み合わせて、切削ドラムを回転させる路面切削機は、存在しなかった。
【0005】
それゆえ、本発明は、電動モータと油圧モータとを組みあせて、切削ドラムを回転させる路面切削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、路面を切削するための切削ドラムと、切削ドラムを回転させるための油圧モータ又はエンジンからなる駆動装置と、バッテリの電力で動作する電動モータと、切削ドラムの回転を、駆動装置によって回転させるか、若しくは、電動モータによって回転させるかを切り替えるための切替手段と、切替手段、駆動装置、及び電動モータの動作を制御する制御装置とを備えることを特徴とする、路面切削機である。
【0007】
好ましくは、制御装置は、通常モードの場合には、駆動装置のみによって、切削ドラムを回転させるように制御するとよい。
【0008】
好ましくは、制御装置は、アシストモードの場合には、駆動装置及び電動モータの両方によって、切削ドラムを回転させるように制御するとよい。
【0009】
好ましくは、制御装置は、負荷が所定値以上となった場合に、アシストモードに移行するように制御するとよい。
【0010】
好ましくは、制御装置は、充電のみモードの場合には、駆動装置の回転力を電動モータに伝達し、電動モータによって発電された電力がバッテリに充電されるように制御するとよい。
【0011】
好ましくは、制御装置は、整備モードの場合には、電動モータのみに切削ドラムを回転させるように制御するとよい。
【0012】
好ましくは、制御装置は、作業&充電モードの場合には、駆動装置に切削ドラムを回転させるとともに、電動モータを回転させてバッテリに充電させるように制御するとよい。
【0013】
一実施形態として、切替手段は、電動モータに直接又は間接的に接続される第1のクラッチと、切削ドラムに直接又は間接的に接続される第2のクラッチと、油圧モータに直接又は間接的に第3のクラッチとを含む。制御装置は、作業モードに応じて、第1~第3のクラッチを制御するとよい。
【0014】
このとき、制御装置は、通常モードの場合には、第1のクラッチをオフにして、電動モータからの回転力が切削ドラムに伝達しないように制御するとよい。
【0015】
また、制御装置は、アシストモードの場合には、第1~第3のクラッチをオンにして、電動モータ及び駆動装置からの回転力が切削ドラムに伝達するように制御するとよい。
【0016】
また、制御装置は、充電のみモードの場合には、第2のクラッチをオフにして、駆動装置からの回転力を電動モータに伝達させて発電及び充電するように制御するとよい。
【0017】
また、制御装置は、整備モードの場合には、第3のクラッチをオフにして、電動モータからの回転力が切削ドラムに伝達するように制御するとよい。
【0018】
また、制御装置は、作業&充電モードの場合には、第1~第3のクラッチをオンにしつ、かつ、駆動装置で切削ドラムを駆動し、その動力で電動モータを回転させてバッテリに充電させるように制御するとよい。
【0019】
一実施形態として、駆動装置は、切削ドラムに内蔵されている油圧モータであり、切替手段は、油圧モータの動作を制御する制御弁と、電動モータの回転軸に直接又は間接的に接続されたクラッチとを含む。制御装置は、作業モードに応じて、制御弁及びクラッチを制御するとよい。
【0020】
このとき、制御装置は、通常モードの場合には、クラッチをオフにして、電動モータからの回転力が切削ドラムに伝達しないように制御するとよい。
【0021】
また、制御装置は、アシストモードの場合には、クラッチをオンにし、かつ、制御弁を制御して油圧モータを回転させるようにするとよい。
【0022】
また、制御装置は、充電のみモードの場合には、クラッチをオンにし、かつ、制御弁を制御して油圧モータを回転させるようにして、電動モータが発電機として機能するように制御することで、バッテリが充電されるように制御するとよい。
【0023】
また、制御装置は、整備モードの場合には、クラッチをオンにし、かつ、制御弁を制御して油圧モータを回転させないようにして、電動モータの回転力で切削ドラムが回転するように制御するとよい。
【0024】
また、制御装置は、作業&充電モードの場合には、クラッチをオンにし、かつ、制御弁を制御して油圧モータを回転させるようにして、さらに、電動モータが発電機として機能するように制御することで、バッテリを充電させつつ、かつ、切削ドラムを回転させるように制御するとよい。
【0025】
また、バッテリの電力を利用する投光器をさらに備えるとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電動モータと油圧モータとを組みあせて、切削ドラムを回転させる路面切削機を提供することができる。
【0027】
これは、路面切削機のHV(ハイブリッド)化を意味する。
【0028】
通常モードであれば、馬力を必要とするので、従来通り、油圧モータなどの駆動装置で、切削ドラムを回転させることができ、施工性能は従来よりも劣化しない。
【0029】
さらに、HV化によって、アシストモードが導入可能となる。アシストモードの場合には、電動モータによるアシストが期待出来るので、切削能力(トルク)を油圧モータなどの駆動装置で切削していたときよりも向上させることができ、より高い能力を有する路面切削機の提供が可能となる。
【0030】
エンジンや油圧ポンプの負荷が大きくなっている場合には、制御装置は、自動的にアシストモードに移行するので、エンジンや油圧ポンプの負荷を下げることができる。
【0031】
充電のみモードを利用すれば、油圧モータなどの駆動装置の回転によって電動モータを発電機として機能させるので、充電設備があるところでは、充電時間を短縮できることになるし、充電設備がないところでも、充電ができる(自己完結できる)。
【0032】
整備モードを利用すれば、エンジンを駆動させなくても、切削ドラムを回転させて、整備が可能であるので、作業環境が向上する。また、整備モードは、軽負担作業やビット交換作業のときなどにも、エンジン運転を不要にすることができるので、静粛性、作業環境向上、対環境性能向上、燃費向上といった利点もある。
【0033】
作業&充電モードの場合には、切削に使われなかった物理的な仕事量を充電に置き換えることができるので、エネルギー効率を高めることができる。
【0034】
バッテリーを電源とした投光器を用いれば夜間の作業がし易くなる。
【0035】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る路面切削機100のブロック図である。
図2図2は、路面切削機100で用いられる制御テーブルを示す図である。
図3図3は、制御装置113の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係る路面切削機200のブロック図である。
図5図5は、路面切削機200で用いられる制御テーブルを示す図である。
図6図6は、制御装置213の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1の実施形態)
図1において、本発明の第1の実施形態に係る路面切削機100は、切削ドラム101と、各種油圧アクチュエータ102と、エンジン103と、油圧ポンプ104と、制御弁105と、油圧モータ106と、第1のクラッチ107と、第2のクラッチ108と、第3のクラッチ109と、第1の伝達手段110と、第2の伝達手段111と、電動モータ112と、制御装置113と、入力表示装置114と、バッテリ115と、電動モータ116と、各種アクチュエータ117とを備える。
なお、図1において、破線で示した矢印は、回転軸やドラムの回転方向を意味する(図4においても同様)。
【0038】
エンジン103の駆動による回転軸の回転で、油圧ポンプ104が作動する。図1において、作動油タンクの図示を省略している(第2の実施形態についても同様)。油圧ポンプ104からの作動油は、制御弁105を介して、油圧モータ106に供給される。制御弁105は、制御装置113からの油圧指令信号によって、作動する。制御弁105の作動に合せて、油圧モータ106の回転数や回転方向、回転の有無が制御される。
【0039】
電動モータ112は、「オフ」、「駆動モード」、及び「充電モード」の3つの制御モードを有する。
このような制御モードは、電動モータ112の状態を意味している。
本明細書において、電動モータ112の回転軸が回転していない場合の状態を、制御モードが「オフ」であるということにする。
電動モータ112に電力が供給されていて、電動モータ112に電力が供給されて回転している場合を、制御モードが「駆動モード」であるということにする。
電動モータ112に電力が供給されていない場合に回転軸が回転している場合を、制御モードが「充電モード」であるということにする。充電モードの場合、電動モータ112は、交流を発電する。
なお、図1の矢印に示したように、電動モータ112の回転軸の回転方向は、駆動モードの場合も、充電モードの場合も、同じ方向である。ただし、限定されるものではない。
【0040】
制御装置113には、以下の機能が含まれる。
(1)電動モータ112を駆動モードにする場合、バッテリ115の直流を交流に変換して電動モータ112に電力を供給して回転させる。
(2)電動モータ112を充電モードにする場合、バッテリ115の電力を電動モータ112に供給せずに、電動モータ112が発電した交流を直流に変換してバッテリ115を充電する。
(3)電動モータ112がオフの場合、バッテリ115の電力の供給及び充電のいずれも行わない。
(4)入力表示装置114で指定された作業モードに応じた制御内容を記憶している。
(5)作業モードに応じたクラッチ切替信号及び油圧指令信号を出力する。
(6)油圧ポンプ104におけるポンプ吐出圧や、エンジン103におけるエンジン負荷率を認識し、ポンプ吐出圧やエンジン負荷率で表される負荷が所定値以上となっているか否かを判断して、作業モードを自動で変更する。
【0041】
油圧モータ106の回転軸には、第1のクラッチ107、第2のクラッチ108、及び第3のクラッチ109が直接又は間接的に取付けられている。第2のクラッチ108には、第1の伝達手段110によって、切削ドラム101の回転軸と直接又は間接的に接続されている。
第1のクラッチ107は、第2の伝達手段111によって、電動モータ112の回転軸と直接又は間接的に接続されている。
第1のクラッチ107,第2のクラッチ108,及び第3のクラッチ109は、制御装置113からのクラッチ切替信号によって、切り替えられるようになっており、油圧モータ106によって切削ドラム101を回転させるか、電動モータ112によって切削ドラム101を回転させるかの切替手段となっている。
【0042】
入力表示装置114は、タッチパネルなどであり、制御装置113に対して、作業者が指示を行う入力装置であると共に、制御内容を表示する表示装置である。
【0043】
電動モータ116は、各種アクチュエータ117を駆動するための電動モータである。同じく、バッテリ115の電力によって回転する。なお、電動モータ116は、本発明において、必須の構成ではない。
また、各種油圧アクチュエータ102についても、本発明においては必須の構成ではない。
【0044】
以上のように構成されている路面切削機100について、図2及び図3を参照しながら、どのようなに動作するかを説明する。
【0045】
作業者が指示する、もしくは、制御装置113が状況に応じて自動で判断する作業モードとしては、「通常モード」、「アシストモード」、「充電のみモード」、「整備モード」、「作業&充電モード」がある。制御装置113は、作業者又は自らの判断で、作業モードの指示内容を受領する(S101)。
なお、各モードはどれか一つが本発明においてあればよく、全てのモードが備わっている必要はない。
【0046】
そして、作業モードに応じて、ここでは、作業テーブルが制御装置113の内部に記憶されており、第1のクラッチ107,第2のクラッチ108,及び第3のクラッチ109へのクラッチ切替信号、制御モード、並びに、油圧指令信号の内容を決められている。
【0047】
なお、このような制御テーブルを用いずに、フローチャート上で、場合分けして、処理が行われるようにしてもよいことは、言うまでもない。
【0048】
制御装置113は、指示されている作業モードに応じた制御テーブルを参照して(S102)、対応するクラッチ切替信号、及び、油圧指令信号を、第1のクラッチ107,第2のクラッチ108,及び第3のクラッチ109、制御弁105に送信し、かつ、制御モードに応じた電力の供給又は充電を行う(S103)。そして、制御が開始する(S104)。作業モードが変更されれば、S101から動作が再開する。
【0049】
制御を行っている間、制御装置113は、負荷が所定値以上となっているか否かを判断する(S105)。負荷が所定値以上でない場合、そのままの作業モードを維持する(S106)。負荷が所定値以上である場合、制御装置113は、アシストモードに移行し(S107)、アシストモードに対応する制御テーブルを参照して(S102)、制御を行う。
【0050】
次に、各モードでの動作について説明する。
(通常モード)
通常モードは、切削ドラム101を油圧の力だけで回転させて、路面を切削するモードである。通常モードの場合、第1のクラッチ107をオフにすることで、電動モータ112からの動力は、切削ドラム101には伝わらないようにする。このとき、電動モータ112の制御モードは「オフ」であり、電動モータ112の回転軸は回転しないので、制御装置113は、電動モータ112に対して電力の供給も行わないし、バッテリ115への充電も行わない。
油圧指令信号をオンにし、第2のクラッチ108及び第3のクラッチ109をオンにすることで、油圧モータの回転が、第1の伝達手段110を伝って、切削ドラム101を回転させることができる。
【0051】
(アシストモード)
アシストモードでは、切削ドラム101を油圧の力に加えて、電動の力でも回転させて、路面を切削するというモードである。アシストモードの場合、第1のクラッチ107をオンにして、かつ、電動モータ112に電力を供給することで、電動モータ112を回転させる。その他は、通常モードと同じである。
この場合、電動モータ112の回転力が第2の伝達手段111を通じて、第1の伝達手段110にまで伝わり、切削ドラム101が油圧の力と電動の力で回転することとなる。
電動モータ112の力で油圧の力がアシストされているので、回転力(トルク)がさらにアップする。
【0052】
(充電のみモード)
充電のみモードでは、油圧指令信号をオンにし、第2のクラッチ108をオフにして、油圧モータ106の回転力が切削ドラム101に伝達しないようにする。第3のクラッチ109と第1のクラッチ107をオンにして、第2の伝達手段111を介して、電動モータ112を回転させる。このとき、電動モータ112の制御モードは「充電モード」であるので、制御装置113は、電動モータ112が発電した交流を直流に変換して、バッテリ115に充電する。
【0053】
(整備モード)
整備モードでは、第3のクラッチ109をオフにして、油圧指令信号をオフにしておく。これにより、油圧モータ106が切削ドラム101を回転させることはない。整備モードでは、第1のクラッチ107をオン、第2のクラッチ108をオンにする。
そして、電動モータ112の制御モードは「駆動モード」であるので、制御装置113は、電動モータ112にバッテリ115からの電力を供給する。
これによって、電動モータ112の回転力によって、切削ドラム101を回転させて、油圧モータ106を駆動させずに、切削ドラム101の整備が可能となる。
もちろん、油圧モータ106を駆動させて整備してもよいことは言うまでもない。
【0054】
(作業&充電モード)
作業&充電モードでは、油圧指令信号をオンにし、第1のクラッチ107、第2のクラッチ108、及び第3のクラッチ109を全てオンにしておく。電動モータ112の制御モードは「充電モード」であるので、制御装置113は、電動モータ112が発電した交流を直流に変換してバッテリ115に充電する。
油圧モータ106の回転力が切削ドラム101に伝わり、切削ドラム101を回転させることができる。また、切削ドラム101の回転中にも、第2の伝達手段111を伝って電動モータ112を回転させることができるので、発電が可能となり、バッテリ115に充電されることとなる。
【0055】
このように、第1の実施形態によれば、電動モータと油圧モータとを組みあせて、切削ドラムを回転させる路面切削機が提供されることになる。
【0056】
各モードに応じて、電動モータ、油圧モータ、及び各クラッチを制御することで、第1の実施形態で示した5つのモードを実現できる。言うまでもないが、これらのモードは、どれか一つでもよいし、6つ以上のモードが存在してもよい。
【0057】
なお、切削ドラム106は、ここでは油圧モータ106の回転軸で回転するようにしたが、エンジン103の回転軸で回転するように構成してもよい。その場合は、エンジンのオンオフ(ニュートラルを含む)が油圧指定信号に相当することになる。すなわち、切削ドラム106を回転させるための装置は、油圧モータ又はエンジンとして、駆動装置と総称することとする。
【0058】
(第2の実施形態)
図4において、本発明の第2の実施形態に係る路面切削機200は、切削ドラム201と、各種油圧アクチュエータ202と、エンジン203と、油圧ポンプ204と、制御弁205と、油圧モータ206と、クラッチ207と、伝達手段211と、電動モータ212と、制御装置213と、入力表示装置214と、バッテリ215と、電動モータ216と、各種アクチュエータ217とを備える。
【0059】
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。使用する制御テーブルを図5に示す。また、動作フローを図6に示すが、図3と同様であるので、詳述を割愛する。
【0060】
切削ドラム201には、油圧モータ206が内蔵されている。油圧モータ206は、外径が外部のフレーム(図示せず)に固定されていると共に、回転軸が切削ドラム201に固定されている。そのため、油圧モータ206が回転すると、切削ドラム201が回転する仕組みになっている。
【0061】
制御装置213からの油圧指令信号には、駆動信号と、フリー信号とがある。駆動信号が制御弁205に入力されると、油圧モータ206が回転する。フリー信号が制御弁205に入力されると、油圧モータ206は、回転せずに、回転軸がフリーの自在状態となる。このような油圧モータは、たとえば、Poclain Hydraulics(ポクレン)の油圧モータで実現でき、実用化されており、油圧モータ206に供給するパイロット圧を制御することで実用化されている。もちろん、メーカ毎に、仕様が異なるのは、言うまでもない。
【0062】
このような実用化された油圧モータ206の内部には、油圧モータ内駆動力伝達機構206aが内蔵されている。油圧モータ内駆動力伝達機構206aは、油圧モータ206の回転軸の回転を外部に伝達するための機構であり、この機構はオンオフが可能である。
たとえば、油圧モータ内駆動力伝達機構206aとして、複数のピンが放射状に外側に飛び出すような機構を採用し、ピンが外側に飛び出て外側のカムと噛み合うことで、油圧モータ206の回転軸の回転が外部に伝達する。逆に、ピンが飛び出ないようにして、外側のカムと噛み合わないようにすることで、油圧モータ206の回転軸の回転が外部に伝達しないような機構を採用できる。
【0063】
図5に示す油圧指令信号の欄では、「駆動」の場合は、駆動信号によって、油圧モータ内駆動力伝達機構をオンにすることが示されており、「フリー」の場合は、フリー信号によって、油圧モータ内駆動力伝達機構をオフにすることが示されている。
【0064】
制御装置213は、クラッチ切替信号によって、クラッチ207のオンオフを切り替えることができる。クラッチ207は、伝達手段211によって、電動モータ212の回転軸と切削ドラム201の回転軸とが直接又は間接的に連結している。クラッチ207がオンの状態のときに、電動モータ212が回転すれば、伝達手段211を通じて、切削ドラム201に回転力が伝わる仕組みになっている。また、油圧モータ206が回転して、切削ドラム201が回転しているときに、クラッチ207がオンになっていれば、電動モータ212を回転させて、発電することができる。
【0065】
以上を踏まえて、第2の実施形態の作業モードでの動作について説明する。
【0066】
(通常モード)
通常モードは、切削ドラム201を油圧だけで回転させて、路面を切削するモードである。通常モードの場合、クラッチ207をオフにすることで、電動モータ212からの動力は、切削ドラム201に伝わらないようにする。このとき、電動モータ212の制御モードは「オフ」であり、電動モータ212の回転軸は回転しないので、制御装置213は、電動モータ212に対して電力の供給も行わないし、バッテリ215への充電も行わない。
このとき、油圧指令信号は、駆動信号となっている。
【0067】
(アシストモード)
アシストモードでは、切削ドラム201を油圧の力に加えて、電動の力でも回転させて、路面を切削するというモードである。アシストモードの場合、クラッチ207をオンにして、かつ、電動モータ212に電力を供給することで、電動モータ212を回転させる。油圧指令信号は、駆動信号となっている。
これによって、油圧モータ206によって切削ドラム201が回転し、かつ、電動モータ212の回転によって、切削ドラム201の回転がアシストされ、トルクがアップすることとなる。
【0068】
(充電のみモード)
充電のみモードでは、クラッチ207をオンにして、油圧指令信号を駆動信号にする。これによって、油圧モータ206を回転させることで、切削ドラム201が回転し、その回転力が伝達手段211を伝って電動モータ212の回転軸を回転させて、発電が行われる。電動モータ212の制御モードは「充電モード」であるので、制御装置213は、電動モータ212が発電した電力を、バッテリ215に充電する。
【0069】
(整備モード)
整備モードでは、クラッチ207をオンにして、油圧指令信号をフリー信号にする。電動モータ212の制御モードは「駆動モード」であるので、制御装置213は、バッテリ215の電力を電動モータ212に供給して回転させる。これによって、電動モータ212が回転して、伝達手段211を伝って、切削ドラム201を回転させることができる。
【0070】
(作業&充電モード)
作業&充電モードでは、クラッチ207をオンにし、油圧指令信号を駆動信号とする。電動モータ212の制御モードは「充電モード」であるので、制御装置213は、電動モータ212が発電した電力をバッテリ215に充電する。これによって、油圧モータ206が回転して、切削ドラム201が回転し、その回転力の一部が、伝達手段211を伝って、電動モータ212の回転軸を回転させる。電動モータ212の発電した電力がバッテリ215に充電されることとなる。
【0071】
このように、第2の実施形態によれば、電動モータと油圧モータとを組みあせて、切削ドラムを回転させる路面切削機が提供されることになる。
【0072】
各モードに応じて、電動モータ、油圧モータ、及び各クラッチを制御することで、第2の実施形態で示した5つのモードを実現できる。言うまでもないが、これらのモードは、どれか一つでもよいし、6つ以上のモードが存在してもよい。
【0073】
なお、各クラッチと回転軸との接続は、直接的に接続されたものでもよいし、伝達手段を介して間接的に接続されたものでもよく、周知のあらゆる手段で接続されていてよい。
【0074】
上記実施形態では、バッテリ215に蓄電されているので、バッテリ215の電力を作業中に投光器やその他の電気製品の電源として利用することも可能である。特に、路面切削作業は、夜中に行われることが多いので、バッテリ215の電力を投光器に利用することは、路面切削機にとって、特に有用である。
【0075】
その他、路面切削機を、災害等を含めた緊急時の電源車と使用することも想定して、電源取り出し口(コンセント)を設けておくとよい。
【0076】
なお、制御装置は、作業モードに合せて、電動モータの回転数などを制御するようにしてもよい。
【0077】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、路面切削機であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
100,200 路面切削機
101,201 切削ドラム
102,202 各種油圧アクチュエータ
103,203 エンジン(駆動装置)
104,204 油圧ポンプ
105,205 制御弁(切替手段)
106,206 油圧モータ(駆動装置)
206a 油圧モータ内駆動力伝達機構
107 第1のクラッチ(切替手段)
108 第2のクラッチ(切替手段)
109 第3のクラッチ(切替手段)
207 クラッチ(切替手段)
110 第1の伝達手段
111 第2の伝達手段
211 伝達手段
112,212 電動モータ
113,213 制御装置
114,214 入力表示装置
115,215 バッテリ
116,216 電動モータ
117,217 各種アクチュエータ
【要約】
【課題】電動モータと油圧モータとを組みあせて、切削ドラムを回転させる路面切削機を提供すること。
【解決手段】路面切削機100は、路面を切削するための切削ドラム101と、切削ドラム101を回転させるための油圧モータ106と、バッテリ115の電力で動作する電動モータ112と、切削ドラム101の回転を、油圧モータ106によって回転させるか、若しくは、電動モータ112によって回転させるかを切り替えるための第1~第3のクラッチ107,108,109と、各クラッチ107,108,109、油圧モータ106、及び電動モータ112の動作を制御する制御装置113とを備える。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4
図5
図6