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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20241118BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241118BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 33/70 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241118BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H01L21/56 T
H01L23/30 R
B29C33/10
B29C33/12
B29C33/70
B29C45/02
B29C45/14
B29C45/27
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024073801
(22)【出願日】2024-04-30
【審査請求日】2024-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正明
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072576(JP,A)
【文献】特開2004-050822(JP,A)
【文献】特開2012-143937(JP,A)
【文献】特開2009-238897(JP,A)
【文献】特開2017-056739(JP,A)
【文献】特開2015-211185(JP,A)
【文献】特開2001-300975(JP,A)
【文献】特開2003-133348(JP,A)
【文献】特開平09-312309(JP,A)
【文献】特開2014-218038(JP,A)
【文献】特開2005-026267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28-23/31
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを含む金型を備え、基板上に半導体チップが搭載された電子部品を樹脂封止成型する樹脂封止装置であって、
前記上型と前記下型との間に挟持される中間プレートを備え、
前記中間プレートを保持する中間プレート保持部を有して前記金型の内外を進退するローダーを備え、
前記下型は、樹脂を加熱溶融するポットと、前記電子部品が載置される載置部とを備え、
前記中間プレートは、前記ポットから樹脂が供給されるカルであり、上下に貫通するカルと、上面に前記カルに連通する第1ランナーと、下面に前記電子部品の樹脂封止成型空間を形成する成型キャビティと、上面に前記成型キャビティに連通するゲートであり、前記成型キャビティに向かって先細りとなるゲートとを備え、
前記上型は、下面に前記中間プレートの前記第1ランナーおよび前記ゲートに連通する第2ランナーであり、前記カル、前記第1ランナー、前記第2ランナーおよび前記ゲートに充填された不要樹脂を保持するための係止部を有する第2ランナーと、前記中間プレートを下型方向に押圧する第1押圧部材であり、前記中間プレートを下型方向に押圧して前記中間プレートと前記下型とで前記電子部品の樹脂封止成型品を保持した状態で型開きすることにより前記電子部品の樹脂封止成型品および前記中間プレートから前記不要樹脂を分離するための第1押圧部材を備え
前記下型は、前記中間プレートを上型方向に押圧する第2押圧部材であり、成型後の型開き状態において前記電子部品の樹脂封止成型品が保持された前記中間プレートを押し上げ、前記電子部品の樹脂封止成型品が保持された前記中間プレートを前記下型から分離して前記ローダーに受け渡す第2押圧部材を備え、
前記ローダーは、昇降可能なローダーピンであり、前記中間プレート保持部に前記中間プレートを保持した状態で前記中間プレートに形成された貫通孔を通して前記電子部品の樹脂封止成型品の非成形部を押圧することにより前記電子部品の樹脂封止成型品を前記中間プレートから離型するローダーピンを備え、前記電子部品の樹脂封止成型品を離型後の前記中間プレートを、前記金型外に搬出するものであ
樹脂封止装置。
【請求項2】
前記上型は、前記第2ランナーに向かって型開閉方向に設けられた第1貫通孔と、前記第1貫通孔内をスライドする第1可動ピンであり、下端部に前記係止部を構成するZ状の切込みが形成された第1可動ピンと、前記第1ランナーまたは前記第2ランナーに充填された樹脂を押圧する位置に型開閉方向に設けられた第2貫通孔と、前記第2貫通孔内をスライドする第2可動ピンとを備え、
前記第2可動ピンは、前記第1可動ピンが前記第1貫通孔内から進出して前記不要樹脂を押し出した状態でさらに進出することにより前記不要樹脂を前記係止部から離脱させるものである
請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記ローダーは、前記中間プレートを前記下型へ受け渡す中間プレート保持部と、前記ポットに供給する樹脂を保持する樹脂保持部であり、前記中間プレート保持部から前記下型に受け渡された前記中間プレートを前記下型に押し付け、樹脂を前記中間プレートのカルを通して前記ポットへ供給する樹脂保持部とを有す
請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
型開き後の上型と下型との間に進退して前記上型および前記下型の表面をクリーニングする第1クリーナーと、
型開き後の上型と下型との間から搬出された前記中間プレートの上面および下面をクリーニングする第2クリーナーとを備える
請求項1からのいずれか1項に記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記第1クリーナーは、前記上型および前記下型の表面を吸引する吸引部と、前記載置部の表面に圧接されて回転しながら前記載置部の表面を移動する粘着ローラーとを備える
請求項記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記載置部を前記上型方向に付勢する弾性部材を備える
請求項1からのいずれか1項に記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記上型の前記第2ランナー周辺表面、または前記中間プレート上面の前記第2ランナー周辺表面と対向する当接面のいずれか一方にエアベントを備える
請求項1からのいずれか1項に記載の樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半導体チップが搭載された電子部品を樹脂封止成型する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどが搭載された電子部品を金属製のリードフレームなどの基板上に樹脂封止する場合、通常トランスファ方式により基板の側面側から成型キャビティに樹脂を注入するサイドゲート方式が一般的に行われている。成型後のカル、ランナー、ゲートなどの不要樹脂の除去は、打ち抜きやレーザ光照射などの方法により行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、BGA(ボールグリッドアレイ)などの用途で樹脂製のプリント基板が使用されている。また、近年のICカードやスマートフォンなどの小型精密電子機器の普及により、これらの用途として特に要求される高周波数動作や高信頼性に対応する回路基板としてガラスエポキシ基板などの需要が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-111465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成型後の不要樹脂の除去において、従来の打ち抜きによる方法ではリードフレームなどの基板にダメージを与える可能性がある。一方、レーザ光照射による方法ではコストアップになる。また、いずれの方法も、金型の外に別ステージを設けて不要樹脂の除去を行うので、これもコストアップの要因となる。
【0006】
また、ガラスエポキシ基板などのプリント基板は金属製のリードフレームと比較して脆く、加圧や衝撃などにより割れなどの破損を起こしやすい。そのため、上記のような不要樹脂の除去工程において、基板に大きな負荷がかかり、基板を破損する虞がある。また、不要樹脂の除去時に樹脂カスを除去しきれずに基板に付着したまま次工程に送ると、基板を破損する虞がある。
【0007】
また、ガラスエポキシ基板は、布状にガラス繊維を重ねてエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ材で作られており、リードフレームに比べ厚みのバラツキが大きい。基板の厚みが薄い場合は、樹脂封止成型中に基板と金型との隙間から樹脂漏れしてバリの発生などの成型不良が出やすい。一方、厚い場合は、金型で基板をクランプしたときに大きな圧力がかかり、基板を破損する虞がある。
【0008】
そこで、本発明においては、成型品から不要樹脂を分離する際の基板へのダメージを削減し、不要樹脂を確実に除去することが可能な樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂封止装置は、上型と下型とを含む金型を備え、基板上に半導体チップが搭載された電子部品を樹脂封止成型する樹脂封止装置であって、上型と下型との間に挟持される中間プレートを備え、下型は、樹脂を加熱溶融するポットと、電子部品が載置される載置部とを備え、中間プレートは、ポットから樹脂が供給されるカルであり、上下に貫通するカルと、上面にカルに連通する第1ランナーと、下面に電子部品の樹脂封止成型空間を形成する成型キャビティと、上面に成型キャビティに連通するゲートであり、成型キャビティに向かって先細りとなるゲートとを備え、上型は、下面に中間プレートの第1ランナーおよびゲートに連通する第2ランナーであり、カル、第1ランナー、第2ランナーおよびゲートに充填された不要樹脂を保持するための係止部を有する第2ランナーを備え、さらに、中間プレートを下型方向に押圧する第1押圧部材であり、中間プレートを下型方向に押圧して中間プレートと下型とで電子部品の樹脂封止成型品を保持した状態で型開きすることにより中間プレートから不要樹脂を分離するための第1押圧部材を備えるものである。
【0010】
本発明の樹脂封止装置によれば、成型後の型開きにおいて、第1押圧部材により中間プレートを下型方向に押圧して中間プレートと下型とで電子部品の樹脂封止成型品が保持され、第2ランナーの係止部によって不要樹脂が上型に保持され、不要樹脂はゲートの先細りの先端部で分離される。
【0011】
上型は、第2ランナーに向かって型開閉方向に設けられた第1貫通孔と、第1貫通孔内をスライドする第1可動ピンであり、下端部に前記係止部を構成するZ状の切込みが形成された第1可動ピンと、第1ランナーまたは第2ランナーに充填された樹脂を押圧する位置に型開閉方向に設けられた第2貫通孔と、第2貫通孔内をスライドする第2可動ピンとを備え、第2可動ピンは、第1可動ピンが第1貫通孔内から進出して不要樹脂を押し出した状態でさらに進出することにより不要樹脂を係止部から離脱させるものであることが望ましい。これにより、第1可動ピンが第1貫通孔内から進出して不要樹脂を押し出した後、第2可動ピンがさら進出することにより不要樹脂を押し出し、第1可動ピンのZ状の切込みで構成された係止部から不要樹脂が分離される。
【0012】
本発明の樹脂封止装置は、金型の内外を進退するローダーであり、中間プレートを保持する中間プレート保持部であり、中間プレートを下型へ受け渡す中間プレート保持部と、ポットに供給する樹脂を保持する樹脂保持部であり、中間プレート保持部から下型に受け渡された中間プレートを下型に押し付け、樹脂を中間プレートのカルを通してポットへ供給する樹脂保持部とを有するローダーを備えることが望ましい。これにより、ローダーの中間プレート保持部から中間プレートが下型に受け渡された後、樹脂保持部により中間プレートが下型に押し付けられ、樹脂が中間プレートのカルを通してポットへ供給される。
【0013】
下型は、中間プレートを上型方向に押圧する第2押圧部材であり、成型後の型開き状態において中間プレートを押し上げ、中間プレートを下型から分離してローダーに受け渡す第2押圧部材を備えることが望ましい。これにより、成型後の型開き状態において第2押圧部材により中間プレートが押し上げられ、下型から分離されてローダーに引き渡される。
【0014】
ローダーは、昇降可能なローダーピンであり、中間プレート保持部に中間プレートを保持した状態で中間プレートに形成された貫通孔を通して成型品の非成型部を押圧することにより成型品を中間プレートから離型するローダーピンを備えることが望ましい。これにより、中間プレート保持部に中間プレートが保持された状態で中間プレートの貫通孔を通してローダーピンにより成型品の非成型部が押圧されて、成型品が中間プレートから離型される。
【0015】
本発明の樹脂封止装置は、型開き後の上型と下型との間に進退して上型および下型の表面をクリーニングする第1クリーナーと、型開き後の上型と下型との間から搬出された中間プレートの上面および下面をクリーニングする第2クリーナーとを備えることが望ましい。これにより、型開き後、第1クリーナーにより上型および下型の表面がクリーニングされ、第2クリーナーにより中間プレートの上面および下面がクリーニングされる。
【0016】
第1クリーナーは、上型および下型の表面を吸引する吸引部と、載置部の表面に圧接されて回転しながら載置部の表面を移動する粘着ローラーとを備えることが望ましい。これにより、上型および下型の表面の樹脂カスが吸引部により吸引され、載置部の表面の樹脂カスが粘着ローラーに付着され、除去される。
【0017】
本発明の樹脂封止装置は、載置部を上型方向に付勢する弾性部材を備えることが望ましい。これにより、載置部に基板が載置され、さらに中間プレートが基板上に載置され、型締めされると、基板は弾性部材の弾性力により中間プレートの底面に押圧され、基板上面と下型上面とが面一となる。
【0018】
本発明の樹脂封止装置は、上型の第2ランナー周辺表面、または中間プレート上面の第2ランナー周辺表面と対向する当接面のいずれか一方にエアベントを備えることが望ましい。これにより、カル、第1ランナーおよび第2ランナー内の残存エアがエアベントから排出される。
【発明の効果】
【0019】
(1)上型と下型との間に挟持される中間プレートを備え、下型は、樹脂を加熱溶融するポットと、電子部品が載置される載置部とを備え、中間プレートは、ポットから樹脂が供給されるカルであり、上下に貫通するカルと、上面にカルに連通する第1ランナーと、下面に電子部品の樹脂封止成型空間を形成する成型キャビティと、上面に成型キャビティに連通するゲートであり、成型キャビティに向かって先細りとなるゲートとを備え、上型は、下面に中間プレートの第1ランナーおよびゲートに連通する第2ランナーであり、カル、第1ランナー、第2ランナーおよびゲートに充填された不要樹脂を保持するための係止部を有する第2ランナーを備え、さらに、中間プレートを下型方向に押圧する第1押圧部材であり、中間プレートを下型方向に押圧して中間プレートと下型とで電子部品の樹脂封止成型品を保持した状態で型開きすることにより中間プレートから不要樹脂を分離するための第1押圧部材を備える構成により、成型後の型開きにおいて不要樹脂はゲートの先細りの先端部で成型品から分離されるので、成型品から不要樹脂を分離する際の基板へのダメージを削減し、不要樹脂を確実に除去することが可能となる。
【0020】
(2)上型が、第2ランナーに向かって型開閉方向に設けられた第1貫通孔と、第1貫通孔内をスライドする第1可動ピンであり、下端部に前記係止部を構成するZ状の切込みが形成された第1可動ピンと、第1ランナーまたは第2ランナーに充填された樹脂を押圧する位置に型開閉方向に設けられた第2貫通孔と、第2貫通孔内をスライドする第2可動ピンとを備え、第2可動ピンが、第1可動ピンが第1貫通孔内から進出して不要樹脂を押し出した状態でさらに進出することにより不要樹脂を係止部から離脱させるものであることにより、不要樹脂を金型から確実に除去することが可能となる。
【0021】
(3)金型の内外を進退するローダーであり、中間プレートを保持する中間プレート保持部であり、中間プレートを下型へ受け渡す中間プレート保持部と、ポットに供給する樹脂を保持する樹脂保持部であり、中間プレート保持部から下型に受け渡された中間プレートを下型に押し付け、樹脂を中間プレートのカルを通してポットへ供給する樹脂保持部とを有するローダーを備えることにより、中間プレートを隙間なく確実に下型に載置し、樹脂を確実にポットに投入することが可能となる。
【0022】
(4)下型が、中間プレートを上型方向に押圧する第2押圧部材であり、成型後の型開き状態において中間プレートを押し上げ、中間プレートを下型から分離してローダーに受け渡す第2押圧部材を備えることにより、中間プレートを下型からローダーへ確実に受け渡しすることが可能となる。
【0023】
(5)ローダーは、昇降可能なローダーピンであり、中間プレート保持部に中間プレートを保持した状態で中間プレートに形成された貫通孔を通して成型品の非成型部を押圧することにより成型品を中間プレートから離型するローダーピンを備えることにより、成型品を中間プレートから確実に離型することができる。また、ローダーピンは成型品の非成型部を押圧するので、成型部にピン跡を残すことがない。
【0024】
(6)型開き後の上型と下型との間に進退して上型および下型の表面をクリーニングする第1クリーナーと、型開き後の上型と下型との間から搬出された中間プレートの上面および下面をクリーニングする第2クリーナーとを備えることにより、型開き後、上型および下型の表面と、中間プレートの上面および下面とを個別に同時にクリーニングすることができ、金型を短時間で確実にクリーニングすることが可能となる。
【0025】
(7)第1クリーナーが、上型および下型の表面を吸引する吸引部と、載置部の表面に圧接されて回転しながら載置部の表面を移動する粘着ローラーとを備えることにより、金型の樹脂カス残りが削減され、成型品への樹脂カスの付着が防止される。
【0026】
(8)載置部を上型方向に付勢する弾性部材を備えることにより、基板表面と下型表面とが面一となり、基板の厚みのバラツキが吸収され、適正な圧力で基板がクランプされるので、樹脂漏れや基板へのダメージを削減することができる。
【0027】
(9)上型の第2ランナー周辺表面、または中間プレート上面の第2ランナー周辺表面と対向する当接面のいずれか一方にエアベントを備えることにより、カル、第1ランナーおよび第2ランナー内の残存エアが成型キャビティ内に進入する量を削減することができ、ボイドを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態における樹脂封止装置の概略平面図である。
図2図1の金型の断面図である。
図3】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図4】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図5】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図6】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図7】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図8】成型工程を示す図1のX-X断面図である。
図9】不要樹脂の分離排出工程を示すX-X断面図である。
図10】中間プレートを下型から離隔する様子を示すX-X断面図である。
図11】中間プレートをローダーにより保持する様子を示すX-X断面図である。
図12】成型品を中間プレートから分離する様子を示すX-X断面図である。
図13】第1クリーナーを示す図1のX-X断面図である。
図14】第1クリーナーを示す図1のX-X断面図である。
図15】第1クリーナーを示す図1のX-X断面図である。
図16】第1クリーナーを示す図1のX-X断面図である。
図17】第1クリーナーを示す図1のX-X断面図である。
図18】第2クリーナーを示す図1のY-Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の実施の形態における樹脂封止装置の概略平面図、図2図1の金型の断面図、図3図8は成型工程を示す図1のX-X断面図である。
【0030】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態における樹脂封止装置1は、基板10上に半導体チップ11が搭載された電子部品12を樹脂封止成型するものである。樹脂封止装置1は、上型20、中間プレート30および下型40から構成される金型2を備える。金型2はプレス部3に搭載され、型締め等の駆動が行われる。また、樹脂封止装置1は、中間プレートホルダー4、ローダー5、樹脂供給部6、第1クリーナー7および第2クリーナー8を備える。
【0031】
下型40は、電子部品12が載置される載置部41と、樹脂を加熱溶融するポット42と、ポット42において加熱溶融された樹脂を圧送するプランジャ43とを備える。載置部41は、弾性部材としてのバネ44により上型20へ向かって付勢されている。載置部41には電子部品12の基板10側が載置される。
【0032】
中間プレート30は、上型20と下型40との間に挟持される。中間プレート30は、金型2に対して着脱自在となっている。中間プレート30は、上下に貫通するカル31と、カル31に連通する第1ランナー32と、電子部品12の樹脂封止成型空間を形成する成型キャビティ33と、成型キャビティ33に連通するゲート34とを備える。
【0033】
カル31は下型40のポット42に対応する位置に形成されている。カル31には下型40のポット42から樹脂が供給される。第1ランナー32およびゲート34は上面30Aに設けられている。成型キャビティ33は下面30Bに設けられている。成型キャビティ33は電子部品12の半導体チップ11に対応する位置に設けられている。ゲート34は成型キャビティ33に向かって先細り形状となっている。ゲート34の先細り形状の先端部の内径は、例えばφ0.2~0.5mmである。
【0034】
上型20は、下面に第2ランナー21を備える。第2ランナー21は、中間プレート30の第1ランナー32およびゲート34に連通する。下型40のポット42から中間プレート30のカル31に供給される樹脂は、第1ランナー32、第2ランナー21およびゲート34を通じて成型キャビティ33へ充填される。カル31、第1ランナー32、第2ランナー21およびゲート34の部分に充填された樹脂は不要樹脂14(図6参照。)となる。第2ランナー21には、この不要樹脂を上型20に保持するための係止部22が形成されている。
【0035】
上型20は、第2ランナー21に向かって型開閉方向に設けられた第1貫通孔23および第2貫通孔24と、第1貫通孔23および第2貫通孔24内をそれぞれ上下に摺動する第1可動ピン25および第2可動ピン26と、中間プレート30を下型40に向かって押圧する第1押圧部材27とを備える。一方、下型40には、中間プレート30を上型20へ向かって押圧する第2押圧部材45を備える。
【0036】
上型20の第1貫通孔23は、平面視でゲート34と重なる位置に設けられている。第1可動ピン25の下端(先端)部には、係止部22を構成するZ状の切込みが形成されている。すなわち、第1貫通孔23内を摺動する第1可動ピン25に形成されている係止部22は、平面視でゲート34と重なる位置にある。なお、係止部22は、中間プレート30を上型20から分離した際に不要樹脂が上型20に保持される構造であれば良い。
【0037】
第2貫通孔24は、第1ランナー32または第2ランナー21に充填された樹脂を押圧する位置に設けられている。第2可動ピン26の下端(先端)は平坦となっている。第2可動ピン26は第1可動ピン25より長い距離を摺動する。すなわち、第2可動ピン26は、第1可動ピン25が第1貫通孔23内から進出して不要樹脂を押し出した状態からさらに進出可能となっている。第1押圧部材27はバネ28により下型40へ向かって付勢されている。
【0038】
中間プレートホルダー4は、中間プレート30を所定の時間、所定の温度に予熱する予熱機構を備える。ローダー5は、中間プレートホルダー4から中間プレート30を受け取り、金型2の内外へ搬送するものである。
【0039】
図3に示すように、ローダー5は、樹脂保持部50と中間プレート保持部51とを備える。樹脂保持部50は、樹脂供給部6(図1参照。)から封止用の樹脂60を受け取って保持する。中間プレート保持部51は、中間プレート30を挟持する一対のアーム51A,51Bを備える。ローダー5は、中間プレートホルダー4(図1参照。)から予熱された中間プレート30を一対のアーム51A,51B間に受け取り、保持する。
【0040】
また、ローダー5は、昇降可能なローダーピン52を備える。ローダーピン52は、中間プレート30に形成された貫通孔35に対応する位置に設けられている。貫通孔35は、カル31、第1ランナー32、第2ランナー21およびゲート34の樹脂注入経路の範囲外かつ成型キャビティ33の範囲外であって、基板10を直接押圧可能な範囲内に設けられている。すなわち、ローダーピン52は成型品13の非成型部を押圧する。なお、貫通孔35は、成型キャビティ33に接近した位置に設けられていることが望ましい。
【0041】
次に、上記構成の樹脂封止装置1における成型工程について説明する。
図3に示すように、半導体チップ11が搭載された基板10(電子部品12)を下型40の載置部41に載置する。ローダー5は、樹脂保持部50が樹脂供給部6(図1参照。)から封止用の樹脂60を受け取る。ローダー5の中間プレート保持部51は中間プレートホルダー4(図1参照。)から予熱された中間プレート30を受け取る。ローダー5は金型2内へ進入し、図4に示すように、中間プレート保持部51から中間プレート30を下型40の所定位置に受け渡す。
【0042】
次に、図5に示すように、樹脂保持部50が中間プレート30のカル31を通して樹脂をポット42へ供給可能な位置までローダー5が退出する。樹脂保持部50は中間プレート30を下型40へ押圧しながら、樹脂60を中間プレート30のカル31を通してポット42へ供給する。これにより、中間プレート30は隙間なく確実に下型40に載置され、樹脂60も確実にポット42に投入される。
【0043】
次に、図6に示すように、下型40の上昇により中間プレート30が上型20に当接し、下型40、中間プレート30および上型20が所定の力で型締めされることにより基板10(図3参照。)はクランプされる。下型40は図示しない駆動部により上型20に対して昇降接離する。
【0044】
このとき、載置部41はバネ44により上型20の方向へ付勢されているため、基板10はバネ44の弾性力により中間プレート30の下面30Bに押圧される。そのため、基板10の厚みのバラツキに関わらず、基板10の上面10Aと下型40の上面40Aとが面一となり、基板10は中間プレート30との間で所定のバネ力により隙間無くクランプされる。これにより、基板10の厚みのバラツキが吸収され、適正な圧力で基板10がクランプされるので、樹脂漏れや基板10へのダメージを削減することができる。
【0045】
ポット42において加熱溶融された樹脂60は、プランジャ43により押し出され、中間プレート30のカル31に続く第1ランナー32、上型20の第2ランナー21、中間プレート30のゲート34を経由して成型キャビティ33内に注入され、成型キャビティ33内の半導体チップ11を樹脂封止する。このとき、係止部22にも樹脂60が充填される。
【0046】
そして、成型後の型開き開始において、中間プレート30が第1押圧部材27により下型40側へ押圧されていることにより、成型品13は載置部41と中間プレート30とで保持される。また、カル31、第1ランナー32、第2ランナー21およびゲート34の部分に充填された不要樹脂14は上型20の係止部22に充填された樹脂60により保持される。
【0047】
この状態において、図7に示すように、下型40が下降して上型20と離隔すると、成型品13と不要樹脂14とがゲート34の先細り形状の先端部で分離される。なお、本実施形態においては、係止部22が平面視でゲート34と重なる位置にあるため、成型後の成型品13と不要樹脂14との分離がより確実となる。その後、図8に示すように、下型40のさらなる下降により、第1押圧部材27は中間プレート30から離隔する。
【0048】
このように、本実施形態における樹脂封止装置1では、成型後の型開きにおいて、第1押圧部材27により中間プレート30を下型40の方向に押圧して中間プレート30と下型40とで電子部品12の成型品13が保持され、第2ランナー21の係止部22によって不要樹脂14が上型20に保持される。これにより、不要樹脂14はゲート34の先細りの先端部で分離されるので、成型品13から不要樹脂14を分離する際の基板10へのダメージを削減し、不要樹脂14を確実に除去することが可能である。
【0049】
図9は不要樹脂の分離排出工程を示すX-X断面図である。図9(A)に示すように、型開き状態で上型20に保持された不要樹脂14は、同図(B)に示すように第1貫通孔23内から進出する第1可動ピン25および第2貫通孔24内から進出する第2可動ピン26によって押し出される。さらに、この状態から同図(C)に示すように第2可動ピン26のみを進出させると、第1可動ピン25の係止部22から不要樹脂14が分離排出される。
【0050】
このように、本実施形態における樹脂封止装置1では、第1可動ピン25が第1貫通孔23内から進出して不要樹脂14を押し出した後、第2可動ピン26がさら進出することにより不要樹脂14を押し出し、第1可動ピン25のZ状の切込みで構成された係止部22から不要樹脂14が分離され、不要樹脂14を上型20から確実に除去することができる。
【0051】
一方、下型40においては、図10に示すように第2押圧部材45が中間プレート30を持ち上げて下型40から分離する。そして、図11に示すように中間プレート30はローダー5に引き渡され、中間プレート保持部51に保持される。このとき、成型品13が中間プレート30に保持されている場合がある。この場合、成型品13は、図12に示すように、ローダーピン52により中間プレート30の貫通孔35を通じて押圧することで、中間プレート30から分離する。
【0052】
このように、本実施形態における樹脂封止装置1では、中間プレート保持部51に中間プレート30が保持された状態で中間プレート30の貫通孔35を通してローダーピン52により成型品13の非成型部が押圧されて、成型品13が中間プレート30から離型される。したがって、成型品13にピン跡は残らない。ローダー5は、中間プレート30を金型2外に搬出する。
【0053】
なお、図示しないが、基板10の上面10Aと接する中間プレート30の基板クランプ面(下面30B(図2参照。))には、成型キャビティ33内の残存エアを樹脂注入圧で排出するためのエアベントが設けられている。また、中間プレート30と上型20のいずれか一方の接触面(上面30A、下面20A(図2参照。))にもエアベントが設けられており、カル31、第1ランナー32、第2ランナー21の残存エアをここから排出することにより、残存エアが成型キャビティ33内に進入する量を削減することができ、ボイドを減らし、基板クランプ面からの残存エア排出に伴う樹脂漏れも最小限に抑えることができる。
【0054】
ローダー5により金型2外へ搬出された中間プレート30は、中間プレートホルダー4に受け渡される。このとき、中間プレート30は、第2クリーナー8を通過することによりその上面30Aおよび下面30Bがクリーニングされる。
【0055】
図18は第2クリーナーを示す図1のY-Y断面図である。図18に示すように、第2クリーナー8は、回転ブラシ80と吸引部(図示せず。)を備えている。搬出された中間プレート30は、中間プレートホルダー4に受け渡され、金型2への搬出・搬入方向と交差する方向(図18の左右方向)へ移動しながら第2クリーナー8の回転ブラシ80間を通過する。これにより、中間プレート30は、上面30Aおよび下面30Bが回転ブラシ80による掻き取りおよび吸引部による吸引によりクリーニングされる。
【0056】
続いて、カル31およびゲート34の樹脂残りの検知が行われ、検知された場合はアラームが出される。なお、第2クリーナー8と樹脂残りの検知位置を逆にして、樹脂残りの検知は第2クリーナー8の通過前に行うこともできる。その後、中間プレート30は、所定位置において、樹脂残りを検知した場合や所定の期間ごとに残存樹脂除去などのメンテナンスの実施、または新たな中間プレートと交換することもできる。
【0057】
一方、型開き後の金型2は第1クリーナー7によりクリーニングされる。図13図17は第1クリーナー7を示す図1のX-X断面図である。第1クリーナー7は、下型40の表面を吸引する第1吸引部70と、上型20の表面を吸引する第2吸引部71と、載置部41の表面に圧接されて回転しながら移動する粘着ローラー72とを備える。第1吸引部70は、吸引口73Aを有するバキュームダクト73を備える。第2吸引部71は、上型20の表面をブラッシングするブラシ74と、吸引口75Aを有するバキュームダクト75とを備える。ブラシ74は吸引口75Aの近傍に設けられている。
【0058】
第1クリーナー7は、成型後、中間プレート30が金型2内から搬出された後、図13に示すように、第1クリーナー7が上型20と下型40との間に進入する。次に、図14に示すように、第1クリーナー7は、第1吸引部70の吸引口73Aが下型40のポット42の対面位置となるよう下降し、吸引口73Aからポット42内の樹脂カス等を吸引し、バキュームダクト73を通じて排出する。このとき、第1クリーナー7は上型20から離型された不要樹脂14を受け取ることもできる。
【0059】
その後、図15に示すように、第1クリーナー7は、第2吸引部71の吸引口75Aが上型20の下面20Aの対面位置となるように上昇し、金型2の後方(図15の右側)へ後退しながら、上型20の下面20Aをブラシ74によりブラッシングしつつ吸引口75Aから樹脂カス等を吸引し、バキュームダクト75を通じて排出する。
【0060】
このとき、粘着ローラー72は、図16に示すように、下型40の前側部分(図15の左側)の載置部41の表面に圧接されて回転しながら左右方向(図1の載置部41の長手方向)に移動して、載置部41の表面の樹脂カス等を粘着保持することによりクリーニングする。その後、粘着ローラー72は、図17に示すように、第1クリーナー7が後退して下型40の後側部分(図15の右側)の載置部41の表面に到達すると、その表面に圧接されて回転しながら左右方向(図15に表れる面に対して垂直方向)に移動して、載置部41の表面の樹脂カス等を粘着保持することによりクリーニングする。
【0061】
上記のように金型2のクリーニング後、第1クリーナー7は金型2から退出し、回収した不要樹脂を所定の廃棄位置9(図1参照。)に排出する。このように、本実施形態における樹脂封止装置1では、型開き後、上型20および下型40の表面(下面20A、上面40A)と、中間プレート30の上面30Aおよび下面30Bとを個別2に同時にクリーニングすることができ、金型2を短時間で確実にクリーニングすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の樹脂封止装置は、基板上に半導体チップが搭載された電子部品を樹脂封止成型する装置として有用であり、成型品から不要樹脂を分離する際の基板へのダメージを削減し、不要樹脂を確実に除去することが可能な樹脂封止装置として好適である。また、本発明の樹脂封止装置は、テープ状の基板に半導体チップを搭載した電子部品をリール・ツウ・リールで金型に搬送して樹脂封止する場合や、短冊状の基板を用いた電子部品を金型に搬送して樹脂封止する場合でも適用できる。さらに、基板の材質もガラスエポキシ樹脂に限らず、その他の樹脂基板や金属製のリードフレーム等にも適応できる。
【符号の説明】
【0063】
1 樹脂封止装置
2 金型
3 プレス部
4 中間プレートホルダー
5 ローダー
6 樹脂供給部
7 第1クリーナー
8 第2クリーナー
9 廃棄位置
10 基板
11 半導体チップ
12 電子部品
13 成型品
14 不要樹脂
20 上型
21 第2ランナー
22 係止部
23 第1貫通孔
24 第2貫通孔
25 第1可動ピン
26 第2可動ピン
27 第1押圧部材
28 バネ
30 中間プレート
31 カル
32 第1ランナー
33 成型キャビティ
34 ゲート
35 貫通孔
40 下型
41 載置部
42 ポット
43 プランジャ
44 バネ
45 第2押圧部材
50 樹脂保持部
51 中間プレート保持部
51A アーム
52 ローダーピン
60 樹脂
70 第1吸引部
71 第2吸引部
72 粘着ローラー
73 バキュームダクト
73A 吸引口
74 ブラシ
75 バキュームダクト
75A 吸引口
80 回転ブラシ
【要約】
【課題】成型品から不要樹脂を分離する際の基板へのダメージを削減し、不要樹脂を確実に除去すること。
【解決手段】下型40は樹脂を加熱溶融するポット42と、電子部品が載置される載置部41とを備え、中間プレート30は、ポット42から樹脂が供給され、上下に貫通するカル31と、カル31に連通する第1ランナー32と、電子部品12の樹脂封止成型空間を形成する成型キャビティ33と、成型キャビティ33に連通し、先細りとなるゲート34とを備え、上型20は、中間プレート30の第1ランナー32およびゲート34に連通する第2ランナー21であり、不要樹脂を保持するための係止部22を有する第2ランナー21を備え、さらに、中間プレート30を下型40方向に押圧して中間プレート30と下型40とで電子部品12の樹脂封止成型品を保持した状態で型開きすることにより中間プレート30から不要樹脂を分離するための第1押圧部材27を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18