(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】中電圧交流給電方式のネットワーク側及び中電圧直流給電方式のネットワーク側への接続が可能な変流器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20241118BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241118BHJP
B60L 9/14 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M3/155 U
B60L9/14 A
(21)【出願番号】P 2024076177
(22)【出願日】2024-05-08
【審査請求日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】202310768235.4
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 路帆
(72)【発明者】
【氏名】童 逆寒
(72)【発明者】
【氏名】胡 成宝
(72)【発明者】
【氏名】呉 熙
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-203604(JP,A)
【文献】特開平05-111108(JP,A)
【文献】実開昭48-022304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00-7/98
H02M 3/00-3/44
B60L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中電圧交流給電方式のネットワーク側及び中電圧直流
給電方式
のネットワーク側
への接続が可能な変流器の制御方法であって、
前記変流器は、中電圧交流給電方式又は中電圧直流給電方式で電力機車に給電するシステムに用いられ、
前記システムは、中電圧交流給電方式のネットワークに接続される交流グリッド接続状態と、中電圧交流給電方式のネットワークから遮断される交流オフグリッド状態と、中電圧直流給電方式のネットワークに接続される直流グリッド接続状態と、中電圧直流給電方式のネットワークから遮断される直流オフグリッド状態と、を切り替え、
前記システムは、
S1、
交流給電エリア開始信号を識別し、
前記交流グリッド接続
状態とするための制御
を実行するステップと、
S2、システムが中電圧交流定常運行状態に入るステップと、
S3、
交流給電エリア終了信号を識別し、
前記交流オフグリッド
状態とするための制御
を実行し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S4、
直流給電エリア開始信号を識別し、
前記直流グリッド接続
状態とするための制御
を実行するステップと、
S5、システムが中電圧直流定常運行状態に入るステップと、
S6、
直流給電エリア終了信号を識別し、
前記直流オフグリッド
状態とするための制御
を実行し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S7、S1~S6を繰り返すステップとを含む、ことを特徴とする
制御方法。
【請求項2】
S1において、前記交流グリッド接続
状態とするための制御
は、
S101、交流遮断信号Sacを1に設定するステップと、
S102、
前記電力機車におけるモータの電磁トルクを増加させるステップと、
S103、中性点クランプ3レベル4象限整流回路制御を起動するステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の
制御方法。
【請求項3】
S3において、前記交流オフグリッド
状態とするための制御
は、
S301、
前記電力機車におけるモータの電磁トルクを低減させるステップと、
S302、中性点クランプ3レベル4象限整流回路制御を停止させるステップと、
S303、交流遮断信号Sacを0に設定するステップとを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の
制御方法。
【請求項4】
S4において、前記直流グリッド接続
状態とするための制御
は、
S401、直流遮断信号Sdcを1に設定するステップと、
S402、
前記電力機車におけるモータの電磁トルクを増加させるステップと、
S403、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を起動するステップとを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の
制御方法。
【請求項5】
S6において、前記直流オフグリッド
状態とするための制御
は、
S601、
前記電力機車におけるモータの電磁トルクを低減させるステップと、
S602、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を停止させるステップと、
S603、直流遮断信号Sdcを0に設定するステップとを含む、ことを特徴とする請求項4に
制御方法。
【請求項6】
前記中電圧交流給電方式は、25kV/50Hz方式又は15kV/16.7Hz方式であり、前記中電圧直流給電方式は、6~20kVの間のいずれかの電圧レベルの直流給電方式である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の
制御方法を使用する、
中電圧交流給電方式のネットワーク側及び中電圧直流
給電方式
のネットワーク側
への接続が可能な変流器であって、交流デバイス板(1)、交流遮断板(2)、スイッチデバイス板(3)、直流遮断板(4)及び直流デバイス板(5)を含み、前記交流デバイス板(1)は、交流遮断板(2)を介してスイッチデバイス板(3)に電気的に接続され、前記直流デバイス板(5)は、直流遮断板(4)を介して前記スイッチデバイス板(3)に電気的に接続される、ことを特徴とする
変流器。
【請求項8】
中電圧交流給電方式で、前記交流遮断板(2)は、交流遮断信号Sacを受信することで、前記交流デバイス板(1)と前記スイッチデバイス板(3)との間の電気的接続を導通することによって、前記
変流器を中性点クランプ3レベル4象限整流回路として
構築するために用いられる、ことを特徴とする請求項7に記載の
変流器。
【請求項9】
中電圧直流給電方式で、前記直流遮断板(4)は、直流遮断信号Sdcを受信することで、前記直流デバイス板(5)と前記スイッチデバイス板(3)との間の電気的接続を導通することによって、前記
変流器をカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として
構築するために用いられる、ことを特徴とする請求項7に記載の
変流器。
【請求項10】
前記中電圧交流給電方式は、25kV/50Hz方式又は15kV/16.7Hz方式であり、
前記中電圧直流給電方式は、6~20kVの間のいずれかの電圧レベルの直流給電方式である、ことを特徴とする請求項
7に記載の
変流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変流器の技術分野に関し、より正確には、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の幹線鉄道の多くは、25kV/50Hzの中電圧交流トラクション給電システムを採用して列車に給電する。交流方式で、導体の容量とインダクタ効果のため、比較的高い送電塔の高さとより大きなケーブルサイズが必要となり、建設コストが増加してしまう。中電圧直流配電ネットワークは、従来の中電圧交流配電ネットワークに比べて電気エネルギーの品質が高く、新エネルギーのアクセス能力が強く、フロー制御が簡単であるという特徴がある。近年、電力電子技術の発展に伴い、新エネルギー及びエネルギー貯蔵機器の電力システムにおけるアクセス比例が急速に上昇し、中電圧直流配電ネットワークは、異なる工業分野に広く応用されている。
【0003】
世界範囲内において、従来の技術路線が軌道交通運営企業の技術規格と異なるため、現在の主なトラクション給電方式は、25kV/50Hz、15kV/16.7Hz中電圧交流給電方式及び1.5kV、3kV低電圧直流給電方式がある。技術的特性から見ると、中電圧交流給電方式は、給電システムを建設する時にさらなる無効補償、三相パワー平衡と高調波抑制機器を導入する必要がある。低電圧直流給電方式は、給電電圧により制限され、給電区間が比較的短く、給電電流が比較的大きい。
【0004】
従来のトラクション給電方式の技術的欠陥に対応し、現代社会の軌道交通システムに対するより高い要求に応えるため、電圧レベルが6kV~20kVの間の中電圧直流トラクション給電システムは、研究者に提案され、従来の給電方式のすべての利点を組み合わせ、低コスト、高品質、低排出のトラクション配電を実現するとともに、従来の給電方式に代えて、統一的なトラクション給電方式を形成することを目的としている。
【0005】
しかしながら、現在、中電圧直流方式の車載給電システムに対する研究が比較的少なく、且つ従来の研究には従来の給電方式と中電圧直流給電方式の互換性の問題が考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の技術の不足に対して、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器及びその制御方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様によれば、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の制御方法を提供し、この中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の制御方法は、
S1、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが交流給電エリア開始信号を識別し、交流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、
S2、システムが中電圧交流定常運行状態に入るステップと、
S3、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが交流給電エリア終了信号を識別し、交流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S4、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが直流給電エリア開始信号を識別し、直流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、
S5、システムが中電圧直流定常運行状態に入るステップと、
S6、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが直流給電エリア終了信号を識別し、直流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S7、S1~S6を繰り返すステップとを含む。
【0008】
好ましくは、S1において、前記交流グリッド接続制御プログレスは、
S101、交流遮断信号Sacを1に設定するステップと、
S102、電磁トルクを増加させるステップと、
S103、中性点クランプ3レベル4象限整流回路(Neutral Point Clamped Converter、NPC)制御を起動するステップとを含む。
【0009】
好ましくは、S3において、前記交流オフグリッド制御プログレスは、
S301、電磁トルクを低減させるステップと、
S302、NPC制御を停止させるステップと、
S303、交流遮断信号Sacを0に設定するステップとを含む。
【0010】
好ましくは、S4において、前記直流グリッド接続制御プログレスは、
S401、直流遮断信号Sdcを1に設定するステップと、
S402、電磁トルクを増加させるステップと、
S403、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を起動するステップとを含む。
【0011】
好ましくは、S6において、前記直流オフグリッド制御プログレスは、
S601、電磁トルクを低減させるステップと、
S602、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を停止させるステップと、
S603、直流遮断信号Sdcを0に設定するステップとを含む。
【0012】
好ましくは、S103において、前記NPC制御は、単一相dqデカップリングのネットワーク側電流直流側電圧二重閉ループ制御アルゴリズムを採用し、S403において、前記カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御は、入力電圧平衡付きのネットワーク側電流直流側電圧二重閉ループ制御アルゴリズムを採用する。
【0013】
第二の態様によれば、第一の態様のいずれか1項に記載の、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の制御方法を使用する、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器を提供し、この中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器は、交流デバイス板、交流遮断板、スイッチデバイス板、直流遮断板及び直流デバイス板を含み、前記交流デバイス板は、交流遮断板を介してスイッチデバイス板に電気的に接続され、前記直流デバイス板は、直流遮断板を介して前記スイッチデバイス板に電気的に接続される。
【0014】
好ましくは、中電圧交流給電方式で、前記交流遮断板は、交流遮断信号Sacを受信することで、前記交流デバイス板と前記スイッチデバイス板との間の電気的接続を導通することによって、前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器を中性点クランプ3レベル4象限整流回路として再構築するために用いられる。
【0015】
好ましくは、中電圧直流給電方式で、前記直流遮断板は、直流遮断信号Sdcを受信することで、前記直流デバイス板と前記スイッチデバイス板との間の電気的接続を導通することによって、前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器をカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として再構築するために用いられる。
【0016】
好ましくは、前記中電圧交流給電方式は、25kV/50Hz方式又は15kV/16.7Hz方式であり、中電圧直流給電方式は、6~20kVの間のいずれかの電圧レベルの直流給電方式である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0018】
1.本発明は、機器多重化の思想に基づいて、少量のスイッチデバイスを用いてネットワーク側変流器の、中電圧交流方式及び中電圧直流方式トラクション給電システムへの互換性を実現し、製造コストと機器体積に顕著な優位性がある。
【0019】
2.本発明では、中電圧直流給電方式で、変流器を入力段が直列接続される2セットのBuckチョッパ回路として再構築し、且つ各回路におけるチョッパスイッチとチョッパダイオードがいずれも直列接続形式であり、電力電子デバイスの作動電圧及び電流値を減少させ、比較的に長い耐用年数を有する。
【0020】
3.本発明が提案した交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、このネットワーク側変流器を装備した電力機車が異なる給電方式の間で無停車運行することができ、既存の鉄道施設を最大限に利用することができる。
【0021】
4.本発明で再構築される回路は、いずれも一般的で成熟した回路であり、制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の回路トポロジ概略図である。
【
図2】変流器回路トポロジをNPCとして再構築する回路概略図である。
【
図3】変流器回路トポロジをカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として再構築する回路概略図である。
【
図4】交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を併せて本発明をさらに記述する。下記実施例の説明は、本発明の理解を支援するためだけのものである。指摘すべきこととして、当業者にとって、本発明原理を逸脱することなく、本発明をいくつか修飾することもでき、これらの改良と修飾も本発明特許請求の保護範囲内に属する。
【0024】
<実施例1>
図1に示すように、本出願の実施例は、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器を提供し、このネットワーク側変流器は、中電圧交流方式又は中電圧直流方式のトラクション給電システムに適応するために、NPC又はカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として再構築することができる。
【0025】
中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器は、交流デバイス板1、交流遮断板2、スイッチデバイス板3、直流遮断板4及び直流デバイス板5を含み、前記交流デバイス板1は、交流遮断板2を介してスイッチデバイス板3に電気的に接続され、前記直流デバイス板5は、直流遮断板4を介して前記スイッチデバイス板3に電気的に接続される。
【0026】
具体的には、交流デバイス板1は、9つの接線端子(J1~J9)、及び4つの電力ダイオードaを含み、交流遮断板2は、9つの交流遮断器b及び若干の接線端子を含み、交流遮断器bは、交流遮断信号Sacにより制御されてオンオフになることができ、スイッチデバイス板3は、16個の接線端子(K1~K16)、逆並列接続ダイオード付きの8つの完全制御型スイッチデバイスc、4つの定電圧容量d及び2つのトラクション逆変器eを含み、直流遮断板4は、7つの直流遮断器f及び若干の接線端子を含み、直流遮断器fは、直流遮断信号Sdcにより制御されてオンオフになることができ、直流デバイス板5は、7つの接線端子(L1~L7)、2つの均圧容量g、及び2つのチョッパインダクタhを含み、均圧容量gとチョッパインダクタhは、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路を構成するために用いられる。
【0027】
ここで、接線端子は、交流デバイス板1、交流遮断板2、スイッチデバイス板3、直流遮断板4と直流デバイス板5との間の電気的接続を行うために用いられる。電気的接続の方式は、以下のとおりである。交流デバイス板1における接線端子(J1~J9)は、交流遮断板2における交流遮断器bの接線端子を介してスイッチデバイス板3における接線端子(K1~K16)に接続され、直流デバイス板5における接線端子(L1~L7)は、直流遮断板4における直流遮断器fの接線端子を介してスイッチデバイス板3における接線端子(K1~K16)に接続される。
【0028】
具体的には、J1は、K3に接続され、J2は、K2に接続され、J3は、K4に接続され、J4は、K8に接続され、J5は、K1、K6、K10、K13、K15に接続され、J6は、K7に接続され、J7は、K11、K12に接続され、J8は、K9に接続され、J9は、K5、K14、K16に接続され、L1は、K1に接続され、L2は、K5、K6、K11、K14に接続され、L3は、K16に接続され、L4は、K3に接続され、L5は、K10、K13に接続され、L6は、K8に接続され、L7は、K12、K15に接続される。
【0029】
交流デバイス板1の作用は、NPCのために必要な素子を提供することである。
【0030】
交流遮断板2の作用は、以下のとおりである。中電圧交流給電方式で、交流遮断板2は、交流遮断信号Sacを受信することで、前記交流デバイス板1と前記スイッチデバイス板3との間の電気的接続を導通することによって、前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器をNPCとして再構築するために用いられる。具体的には、中電圧交流給電方式で、トラクションネットワーク側電気エネルギーは、車載トラクション変圧器により降圧された後に接線端子J1とJ4により前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器に導入される。
【0031】
スイッチデバイス板3において、逆並列接続ダイオード付きの完全制御型スイッチデバイスcは、IGBT/Diode、MOSFET/Diode又はIGCT/Diodeであってもよく、定電圧容量dの作用は、容量器の特性を利用し、前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の出力電圧、即ち前記トラクション逆変器(e)の入力電圧、電圧幅値を安定化させることであり、トラクション逆変器eの作用は、制御方法の制御信号を受信することで、トラクションモータ、トラクション電力機車の運行を駆動することである。
【0032】
直流遮断板4の作用は、以下のとおりである。中電圧直流給電方式で、直流遮断板4は、直流遮断信号Sdcを受信することで、前記直流デバイス板5と前記スイッチデバイス板3との間の電気的接続を導通することによって、前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器をカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として再構築する。具体的には、中電圧直流給電方式で、トラクションネットワーク側電気エネルギーは、直流パンタグラフと継電保護装置を通過した後に接線端子L1とL3により前記中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器に導入される。
【0033】
直流デバイス板5の作用は、以下のとおりである。カスケード接続Buck降圧チョッパ回路のために必要な素子を提供する。
【0034】
ここで、交流遮断信号Sacが1、直流遮断信号Sdcが0である場合に、交流デバイス板とスイッチデバイス板との間の接続は、J1がK3に接続され、J2がK2に接続され、J3がK4に接続され、J4がK8に接続され、J5がK1、K6、K10、K13、K15に接続され、J6がK7に接続され、J7がK11、K12に接続され、J8がK9に接続され、J9がK5、K14、K16に接続されるとみなすことができる。
交流遮断信号Sacが0、直流遮断信号Sdcが1である場合に、直流デバイス板とスイッチデバイス板との間の接続は、L1がK1に接続され、L2がK5、K6、K11、K14に接続され、L3がK16に接続され、L4がK3に接続され、L5がK10、K13に接続され、L6がK8に接続され、L7がK12、K15に接続されるとみなすことができる。この時、このネットワーク側変流器は、
図3に示すカスケード接続Buck降圧チョッパ回路として再構築され、接線端子L1とL3との間の電圧は、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路の直流入力電圧に対応する。ここで、二つの均圧容量は、入力直流電圧をu
i1とu
i2の2つの部分に分圧する。Q
1a、Q
2aのスイッチデバイス部分とQ
3a、Q
4aの逆並列接続ダイオード部分は、一つのBuckチョッパ装置を構成し、入力電圧は、u
i1であり、出力電圧は、u
o1であり、Q
1b、Q
2bのスイッチデバイス部分とQ
3b、Q
4bの逆並列接続ダイオード部分は、別のBuckチョッパ装置を構成し、入力電圧は、出力電圧は、u
o2である。このような接続方式を採用すると、逆並列接続ダイオードつきの各完全制御型スイッチデバイスの受ける最大電圧は、ネットワーク側直流電圧の1/8だけである。
【0035】
なお、前記中電圧交流給電方式は、25kV/50Hz方式又は15kV/16.7Hz方式であり、前記中電圧直流給電方式は、6~20kVの間のいずれかの電圧レベルの直流給電方式である。そして、任意のトラクション給電方式で、変流器の直流出力ポートは、いずれも接線端子K13、K14とK15、K16である。
【0036】
<実施例2>
実施例1に基づいて、本出願の実施例2は、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の制御方法を提供し、この方法は、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンにより実現され、以下を含む。
【0037】
S1、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、交流給電エリア開始信号を識別し、交流グリッド接続制御プログレスを起動する。
【0038】
S1において、前記交流グリッド接続制御プログレスは、
S101、交流遮断信号Sacを1に設定するステップと、
S102、電磁トルクを増加させるステップと、
S103、NPC制御を起動するステップとを含む。
【0039】
S2、システムは、中電圧交流定常運行状態に入る。
【0040】
S3、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、交流給電エリア終了信号を識別し、交流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムは、惰行運行状態に入る。
【0041】
S3において、前記交流オフグリッド制御プログレスは、
S301、電磁トルクを低減させるステップと、
S302、NPC制御を停止させるステップと、
S303、交流遮断信号Sacを0に設定するステップとを含む。
【0042】
S4、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、直流給電エリア開始信号を識別し、直流グリッド接続制御プログレスを起動する。
【0043】
S4において、前記直流グリッド接続制御プログレスは、
S401、直流遮断信号Sdcを1に設定するステップと、
S402、電磁トルクを増加させるステップと、
S403、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を起動するステップとを含む。
【0044】
S5、システムは、中電圧直流定常運行状態に入る。
【0045】
S6、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、直流給電エリア終了信号を識別し、直流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムは、惰行運行状態に入る。
【0046】
S6において、前記直流オフグリッド制御プログレスは、
S601、電磁トルクを低減させるステップと、
S602、カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御を停止させるステップと、
S603、直流遮断信号Sdcを0に設定するステップとを含む。
【0047】
S7、S1~S6を繰り返す。
【0048】
図4に示すように、本出願の実施例ではグリッド接続・オフグリッドステートマシンに対して定義される運行状態は、オフグリッド動的状態、定常運行状態及びグリッド接続動的状態を含み、交流オフグリッド制御プログレス又は直流オフグリッド制御プログレスを実行する時、グリッド接続・オフグリッドステートマシンの運行状態は、オフグリッド動的状態であり、定常運行状態は、中電圧交流定常運行状態、惰行運行状態及び中電圧直流定常運行状態を含み、交流グリッド接続制御プログレス、交流オフグリッド制御、直流グリッド接続制御プログレス又は直流オフグリッド制御プログレスを実行した後、グリッド接続・オフグリッドステートマシンの運行状態は、定常運行状態であり、交流グリッド接続制御プログレス又は直流グリッド接続制御プログレスを実行する時、グリッド接続・オフグリッドステートマシンの運行状態は、グリッド接続動的状態である。
【0049】
なお、各状態の間の切り替えは、鉄道地面ビーコンの検出と制御システムの遅延リンクにより切り替えられる。ここで、鉄道地面ビーコンは、軌道交通において電力機車の前方の線路タイプを予告するための地面装置であり、制御システムの遅延リンクは、状態切り替えプロセスを人為的に制限する最短時間であり、システム故障を防止する。
【0050】
オフグリッド動的状態とグリッド接続動的状態において、該当する制御プロセスに従って交流遮断信号Sacと直流遮断信号Sdc及び該当する変流回路を制御すれば、列車の異なる給電区間の無停車運行を実現することができる。
【0051】
そして、S103において、前記NPC制御は、単一相dqデカップリングのネットワーク側電流直流側電圧二重閉ループ制御アルゴリズムを採用し、S403において、前記カスケード接続Buck降圧チョッパ回路制御は、入力電圧平衡付きのネットワーク側電流直流側電圧二重閉ループ制御アルゴリズムを採用する。
【0052】
<実施例3>
実施例2に基づいて、本出願の実施例3は、より具体的な中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器の制御方法を提供し、この方法は、FPGAリアルタイムシミュレーション回路とDSP制御回路で実現され、
図5は、それぞれトラクションネットワーク状態、再構築可能なネットワーク側変流器電気量及びトラクションモータ電気量の三つの部分の情報を示す。
【0053】
ここで、トラクションネットワーク状態は、システムオフ状態、25kV/50Hz中電圧交流給電方式状態、惰行(無電エリア)状態及び9kV中電圧直流給電方式状態を含み、再構築可能なネットワーク側変流器電気量は、変流器入力電圧、ネットワーク側電流及び2つの直流出力電圧を収集し、トラクションモータ電気量は、電磁トルク、モータ回転数及びモータa相固定子電流を収集する。
【0054】
この方法は、
S1、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが交流給電エリア開始信号を識別し、交流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、
S2、システムが中電圧交流定常運行状態に入るステップと、
S3、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが交流給電エリア終了信号を識別し、交流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S4、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが直流給電エリア開始信号を識別し、直流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、
S5、システムが中電圧直流定常運行状態に入るステップと、
S6、交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンが直流給電エリア終了信号を識別し、直流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、
S7、S1~S6を繰り返すステップとを含む。
【0055】
具体的には、時間が0~10sの間にあると、システム全体は、オフになり、各電気量は、いずれもゼロであり、
時間が10~45sの間にあると、S1とS2を実行し、前記交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、まず交流給電エリア開始信号を識別し、前記変流器Sacを1に設定し、Sdcを0に設定し、NPCとして再構築し、車載トラクション変圧器により降圧された後のネットワーク側交流電気を2つの安定した3kV直流電圧に整流し、二つの直流出力ポートK13、K14とK15、K16に出力し、電磁トルクを制御する、モータ回転数を定速作動状態まで絶えず上昇させ、
時間が45s~51sの間にあると、S3を実行し、前記交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、まず交流給電エリア終了信号を識別し、前記変流器Sacを0に設定し、Sdcを0に設定し、モータ回転数が低減し、慣性とトラクション逆変器のフィードバック作用により変流器の出力直流電圧を安定化させ、
時間が51s~73sの間にあると、S4とS5を実行し、前記交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、まず直流給電エリア開始信号を識別し、前記変流器Sacを0に設定し、Sdcを1に設定し、カスケード接続Buckチョッパ回路として再構築し、直流パンタグラフを通過したネットワーク側9kV直流電気降圧チョッパを2つの安定した3kV直流電圧に整流し、二つの直流出力ポートK13、K14とK15、K16に出力し、電磁トルクを制御してモータ回転数を定速作動状態まで絶えず上昇させ、
時間が73s~81sの間にあると、S6を実行し、前記交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、まず直流給電エリア終了信号を識別し、前記変流器Sacを0に設定し、Sdcを0に設定し、モータ回転数が低減し、慣性とトラクション逆変器のフィードバック作用により変流器の出力直流電圧を安定させ、
時間が81~100sの間にあると、S1とS2を再実行し、前記交直流グリッド接続・オフグリッドステートマシンは、まず交流給電エリア開始信号を識別し、前記変流器Sacを1に設定し、Sdcを0に設定し、NPCとして再構築し、車載トラクション変圧器により降圧された後のネットワーク側交流電気を2つの安定した3kV直流電圧に整流し、二つの直流出力ポートK13、K14とK15、K16に出力し、電磁トルクを制御してモータ回転数を定速作動状態まで絶えず上昇させる。
【0056】
説明すべきこととして、本実施例における実施例2と同一または類似の部分は、相互に参照すればよく、本出願ではこれ以上説明しない。
【0057】
以上をまとめると、本発明は、中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器及びその制御方法を提供し、中電圧交流給電方式及び前記中電圧直流給電方式の両方と互換性がある。本発明が提案した技術案は、既存のトラクション給電設施を最大限に利用することができ、電力機車が中電圧交流給電方式及び前記中電圧直流給電方式で同時に運行し、該当する制御アルゴリズムにより電力機車の無停車で異なる区間の運行を実現することができる。本発明は、機器多重化の思想に基づいて、ネットワーク側変流器のスイッチデバイスを多重化し、機器体積及び製造コストを顕著に減少させ、広い応用の将来性がある。
【符号の説明】
【0058】
1 交流デバイス板
2 交流遮断板
3 スイッチデバイス板
4 直流遮断板
5 直流デバイス板
J、K、L 接線端子
a 電力ダイオード
b 交流遮断器
c 逆並列接続ダイオード付きの完全制御型スイッチデバイス
d 定電圧容量
e トラクション逆変器
f 直流遮断器
g 均圧容量
h チョッパインダクタ
【要約】 (修正有)
【課題】中電圧直流方式と互換性がある2ストリーム再構築可能なネットワーク側変流器及びその制御方法を提供する。
【解決手段】交流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、システムが中電圧交流定常運行状態に入るステップと、交流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、直流グリッド接続制御プログレスを起動するステップと、システムが中電圧直流定常運行状態に入るステップと、直流オフグリッド制御プログレスを起動し、システムが惰行運行状態に入るステップと、以上のステップを繰り返して運行することで、少量のスイッチデバイスを用いてネットワーク側変流器の、中電圧交流方式及び中電圧直流方式トラクション給電システムへの互換性を実現し、製造コストと機器体積を抑制する。
【選択図】
図4