(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】旋光計及びその校正方法、並びに旋光計校正プログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 4/04 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
G01J4/04 D
(21)【出願番号】P 2024087003
(22)【出願日】2024-05-29
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】中司 龍太
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106871(JP,A)
【文献】特開2007-139722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236306(US,A1)
【文献】米国特許第5247176(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0066853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
G01N 21/03-21/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を回転させて測定した前記偏光子の回転角度を用いて校正を行うことができる旋光計であって、
光源と、
前記光源からの入射光を単一の透過軸に平行な直線偏光に変換する偏光子と、
前記旋光計の校正時において、前記偏光子を前記透過軸回りに回転させる偏光子回転手段と、
前記偏光子に取付けられ、前記偏光子が回転した角度を測定する角度エンコーダと、
前記偏光子から生じる直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な直線偏光を透過させる検光子と、
前記透過軸の方向を変更するために前記検光子を回転させる検光子回転手段と、
前記検光子を透過した直線偏光を受光し、検出する検出手段と、
前記旋光計の校正時において、試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、前記検光子の初期回転位置と、前記検出手段が受光した受光量が最小になる前記偏光子の初期回転位置とを決定し、前記検光子の透過軸と前記偏光子の透過軸とを直交させた状態で、
前記偏光子の初期回転位置から、前記偏光子回転手段により前記偏光子を回転させ、前記角度エンコーダにより測定した前記偏光子の回転角度を標準回転角度とし、
前記偏光子から生じる前記標準回転角度に回転した直線偏光が前記検光子に入射する状態で、前記検光子の初期回転位置から、前記検出手段が受光した受光量が最小になる前記検光子の回転位置まで前記検光子回転手段により前記検光子を回転させた角度を検光子回転角度とし、
前記標準回転角度と前記検光子回転角度とを比較
し、前記検光子回転角度が前記標準回転角度と一致することを確認する校正処理を行う制御手段と、
を有することを特徴とする旋光計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記標準回転角度と前記検光子回転角度との差分を補正データとして算出し、前記補正データが閾値を超える場合には、前記補正データで旋光度の補正を行う、請求項1に記載の旋光計。
【請求項3】
前記標準回転角度は、特定標準器として認証されている角度測定装置で校正された角度エンコーダを用いて測定した偏光子の回転角度である、請求項1に記載の旋光計。
【請求項4】
前記角度エンコーダは、トレーサビリティが保証されたロータリーエンコーダである、請求項1に記載の旋光計。
【請求項5】
250nm~900nmの波長範囲での校正に用いられる、請求項1に記載の旋光計。
【請求項6】
前記光源の近傍に配された第2光源と、
前記光源からの入射光を前記偏光子で変換した第1直線偏光、及び前記第2光源からの入射光を前記偏光子で変換した第3直線偏光を変調する変調手段と、
前記第3直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な第3直線偏光を透過させる第2検光子と、
前記第2検光子を透過した前記第3直線偏光を受光し、検出する第2検出手段と、
前記第1直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段と、
を備え、
前記偏光面変動補正手段は、前記第3直線偏光が、前記変調手段、前記試料設置部以外の試料室、及び前記第2検光子を通過し、前記第2検出手段で検出したAC成分と前記第3直線偏光の偏光面の変動分を含む検出信号から前記変動分を打ち消すような信号を前記制御手段によりDC成分として生成し、該DC成分をドライバによりAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分により前記変調手段を駆動させて前記第1直線偏光の偏光面の変動を補正するように構成されている、請求項1に記載の旋光計。
【請求項7】
前記偏光子の代りに配され、前記光源からの入射光を第1直線偏光と第2直線偏光に分光する第2偏光子と、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光を変調する変調手段と、
前記第2直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な第2直線偏光を透過させる第2検光子と、
前記第2検光子を透過した前記第2直線偏光を受光し、検出する第2検出手段と、
前記第1直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段と、
を備え、
前記偏光面変動補正手段は、前記第2直線偏光が前記変調手段、前記試料設置部以外の試料室、及び前記第2検光子を通過し、前記第2検出手段で検出したAC成分と前記第2直線偏光の偏光面の変動分を含む検出信号から前記変動分を打ち消すような信号を前記制御手段によりDC成分として生成し、該DC成分をドライバによりAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分により前記変調手段を駆動させて前記第1直線偏光の偏光面の変動を補正するように構成されている、請求項1に記載の旋光計。
【請求項8】
前記第2偏光子がローションプリズムである、請求項7に記載の旋光計。
【請求項9】
偏光子を回転させて測定した前記偏光子の回転角度を用いて校正を行う旋光計の校正方法であって、
試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定する工程と、
前記偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により前記偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した前記偏光子の回転角度である標準回転角度を取得する標準回転角度取得工程と、
前記偏光子から生じる前記標準回転角度に回転した直線偏光が前記検光子に入射する状態で、前記検光子の初期回転位置から、前記検出手段が受光した受光量が最小になる前記検光子の回転位置まで前記検光子を回転させた角度である検光子回転角度を取得する検光子回転角度取得工程と、
前記標準回転角度と前記検光子回転角度とを比較
し、前記検光子回転角度が前記標準回転角度と一致することを確認する校正工程と、
を含むことを特徴とする旋光計の校正方法。
【請求項10】
前記標準回転角度と前記検光子回転角度との差分を補正データとして算出し、前記補正データが閾値を超える場合には、前記補正データによって旋光度の補正を行う、請求項9に記載の旋光計の校正方法。
【請求項11】
偏光子を回転させて測定した前記偏光子の回転角度を用いて校正を行うための旋光計校正プログラムであって、
試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定する処理と、
前記偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により前記偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した前記偏光子の回転角度である標準回転角度を取得する標準回転角度取得処理と、
前記偏光子から生じる前記標準回転角度に回転した直線偏光が前記検光子に入射する状態で、前記検光子の初期回転位置から、前記検出手段が受光した受光量が最小になる前記検光子の回転位置まで前記検光子を回転させた角度である検光子回転角度を取得する検光子回転角度取得処理と、
前記標準回転角度と前記検光子回転角度とを比較
し、前記検光子回転角度が前記標準回転角度と一致することを確認する校正処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする旋光計校正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いて校正を行うことができる旋光計及び旋光計の校正方法、並びに旋光計校正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
旋光計は、旋光度等の測定データの精度を適正に保つため、定期的に校正が行われている。前記校正は、通常、546nm~900nmの波長範囲で標準試料としてスクロース水溶液又は石英旋光板を用いて行われる。具体的には、標準試料としてスクロース水溶液又は石英旋光板を用い、例えば波長589nmの旋光度を測定し、得られた旋光度を一般に公開されている規格(例えば「日本産業規格」(Japanese Industrial Standards;JIS)又は「砂糖分析の統一方法のための国際委員会」(International Commission for Uniform Methods of Sugar Analysis;ICUMSA))に記載の基準値と比較する。その結果、実測したスクロース水溶液又は石英旋光板の旋光度が前記基準値の許容範囲内であれば校正は合格となる。例えば、非特許文献1には、5質量%~50質量%スクロース水溶液の比旋光度の基準値が記載されている。また、非特許文献2には、26質量%スクロース水溶液の旋光度及び石英旋光板の旋光度の基準値が記載されている。
【0003】
前記スクロース水溶液を用いた校正は、旋光度が異なる複数のスクロース水溶液を調製するのに手間と時間がかかってしまう。また、スクロース水溶液を調製する際に旋光度にある程度の誤差が発生してしまうという問題がある。
一方、前記石英旋光板を用いた校正は、上記スクロース水溶液の調製に起因する問題点は回避できるものの、石英旋光板は高価でありかつ厚みの調整が困難であるという問題がある。
このように従来の旋光計は、標準試料としてスクロース水溶液又は石英旋光板を用いて校正を行っていることから、充分満足できる校正を行うことができているとは言えず、ある程度以上に旋光度の精度を向上させることができないという問題があった。
【0004】
前記課題を解決するため、校正時に、サンプルセルを1/2波長板及びその回転手段に取換え、前記1/2波長板を回転させて測定した該1/2波長板の回転角度を用いて校正を行うことができる旋光計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図1は、特許文献1に記載の旋光計を示す概略斜視図である。この
図1の旋光計は、光源31、干渉フィルタ32、レンズ33、偏光子11、ファラデーセル12、サンプルセル13、検光子14、中空モータ15、レンズ34、及び受光素子16を備えている。
【0005】
試料を測定時には、
図1において旋光性を有する試料がサンプルセル13に入れられ、この試料によって直線偏光の偏光面が回転し、検光子14の透過軸に平行な直線偏光が検光子14を透過し、受光素子16が直線偏光を検出する。検光子14を透過した光量を検出しながら検光子14を回転させ、検光子14を透過する光量が最小となる検光子14の回転角度を求めることにより、直線偏光が試料を透過する際に偏光面が回転した角度、即ち試料の旋光度を求めることができる。
【0006】
一方、校正時には、
図2に示すように、サンプルセル13の換わりに1/2波長板17及び該1/2波長板の回転手段(高精度中空モータ18)が設けられ、高精度中空モータ18の回転によって1/2波長板17が回転され、入射された直線偏光の偏光面を回転する。この回転した角度を1/2波長板17の回転角度とする。検光子14には、1/2波長板17によって偏光面が回転された直線偏光が入射され、検光子14を透過した光量を検出しながら検光子14を回転させ、検光子14を透過する光量が最小となる検光子14の回転角度を測定することにより旋光度を求め、この旋光度と1/2波長板17の回転角度とを比較することによって校正を行っている。
【0007】
また近年、旋光計における光源等の技術進展によって、波長546nmよりも短波長側(例えば250nm~545nm)でも、信頼性を有するデータが測定可能となっている。それに伴って、特に医薬品業界では、品質管理の証拠データとして使用できるのは校正が行われている波長範囲の測定データであることから、波長546nmよりも短波長側でも旋光計の校正を行えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】JIS K0063-1992「化学製品の旋光度測定方法」(1992年)
【文献】ICUMSA Specification and Standard SPS-1(2017)-Polarimetry and the International Sugar Scale-Official、International Commission for Uniform Methods of Sugar Analysis発行(2017年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記スクロース水溶液を用いた校正は、上述したとおり、スクロース水溶液の調製に関する問題がある。一方、上記石英旋光板は、波長546nmよりも短波長側での校正に適した精度の旋光度を得るためには、石英旋光板の厚みを薄く加工しなければならないが、このような厚みが薄い石英旋光板を安定かつ安価に加工することは困難であった。更に、スクロース水溶液及び石英旋光板は、いずれも波長546nmよりも短波長側での基準値がJIS又はICUMSA等の規格に記載されておらず、波長546nmよりも短波長側で用いる標準試料としては適したものではなかった。
【0011】
上記特許文献1の旋光計は、校正を行う際に、サンプルセル13を取外して高精度中空モータ18及び1/2波長板17を設け、校正終了後に、高精度中空モータ18及び1/2波長板17を取外し、サンプルセル13を元に戻して動作を確認してからでなければ試料の測定を行うことができなかった。そのため、校正作業に時間と手間がかかる上に、高精度中空モータ18及び1/2波長板17等の高価な取換部品を校正の前に準備しておく必要があり、部品数が多くなって管理が煩雑となるという課題がある。
また、上記特許文献1で用いる1/2波長板は波長依存性があり、波長を少し変更するだけで狙った位相差が得られず、楕円偏光となってしまうことから、校正したい波長に適した1/2波長板を使用しないと適正な偏光状態が得られないという問題がある。そのため、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲で校正を行うには、1/2波長板を多数用意して波長毎に1/2波長板を選定して校正を行わなければならず、時間と手間と費用がかかるという課題がある。
【0012】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、校正を行う際に部品の取換が不要であり、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いることによって、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において迅速、簡便かつ精密に校正を行うことができる旋光計及び旋光計の校正方法、並びに旋光計校正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明が開示する旋光計は、偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正を行うことができる旋光計である。旋光計は、光源と、光源からの入射光を単一の透過軸に平行な直線偏光に変換する偏光子と、旋光計の校正時において、偏光子を透過軸回りに回転させる偏光子回転手段と、偏光子に取付けられ、偏光子が回転した角度を測定する角度エンコーダと、偏光子から生じる直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な直線偏光を透過させる検光子と、透過軸の方向を変更するために検光子を回転させる検光子回転手段と、検光子を透過した直線偏光を受光し、検出する検出手段と、旋光計の校正時において、試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定し、検光子の透過軸と偏光子の透過軸とを直交させた状態で、偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した偏光子の回転角度を標準回転角度とし、偏光子から生じる標準回転角度に回転した直線偏光が検光子に入射する状態で、検光子の初期回転位置から、検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子回転手段により検光子を回転させた角度を検光子回転角度とし、標準回転角度と検光子回転角度とを比較し、検光子回転角度が標準回転角度と一致することを確認する校正処理を行う制御手段と、を有する。
【0014】
本発明の旋光計によると、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いることによって、波長546nmよりも短波長側(例えば250nm~545nm)を含む幅広い波長範囲において簡便かつ精密に校正を行うことができる。
また、本発明の旋光計は、校正を行う際に、特許文献1(特開2010-117163号公報)に記載の旋光計のようにサンプルセルを装置外に取外して高精度中空モータ及び1/2波長板を取り付けるという部品の取換が不要であり、試料測定時と同じ装置構成で迅速かつ簡便に校正を行うことができる。
【0015】
本発明の一態様において、制御手段は、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、補正データが閾値を超える場合には、補正データによって旋光度の補正を行う。この態様によると、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして求め、この補正データが閾値を超える場合には、補正データで旋光度を補正することによって、より正確な測定が実現できる。
【0016】
本発明の一態様において、標準回転角度は、特定標準器として認証されている角度測定装置で校正された角度エンコーダを用いて測定した偏光子の回転角度である。標準回転角度は、計量法に基づく角度標準を満たしており、標準試料に代えて旋光計の校正に用いることができるものである。
【0017】
本発明の一態様において、角度エンコーダは、トレーサビリティが保証されたロータリーエンコーダである。この態様によると、偏光子の回転角度は、偏光子に角度エンコーダを取り付けることによって正確に旋光度を測定可能である。角度エンコーダとしてトレーサビリティの保証されたロータリーエンコーダを使用することによって、偏光子の回転角度もトレーサビリティが保証されることになる。
【0018】
本発明の一態様においては、250nm~900nmの波長範囲での校正に用いられる。この態様によると、本発明の旋光計における校正は、偏光子を回転させて測定した前記偏光子の回転角度を用いて行うものであるため、波長依存性がなく波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において簡便かつ精密に校正を行うことができる。
本発明の旋光計は、幅広い波長範囲で使用でき、仮に任意の波長で偏光面の変化量が生じたとしても、ゼロ位置を基準とした校正を行った瞬間にその変化量をクリアすることができるので、波長依存性が生じない。
【0019】
本発明の一態様においては、光源の近傍に配された第2光源と、光源からの入射光を偏光子で変換した第1直線偏光、及び第2光源からの入射光を偏光子で変換した第3直線偏光を変調する変調手段と、第3直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な第3直線偏光を透過させる第2検光子と、第2検光子を透過した第3直線偏光を受光し、検出する第2検出手段と、第1直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段と、を備え、偏光面変動補正手段は、第3直線偏光が、変調手段、試料設置部以外の試料室、及び第2検光子を通過し、第2検出手段で検出したAC成分と第3直線偏光の偏光面の変動分を含む検出信号から変動分を打ち消すような信号を制御手段によりDC成分として生成し、該DC成分をドライバによりAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分により変調手段を駆動させて第1直線偏光の偏光面の変動を補正するように構成されている。この態様によると、直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段を有することによって、バランス位置(検出手段における受光量が最小になる位置)の変動を補正することができ、より正確な旋光度を測定することが可能になる。
【0020】
本発明の一態様においては、偏光子の代りに配され、光源からの入射光を第1直線偏光と第2直線偏光に分光する第2偏光子と、第1直線偏光及び第2直線偏光を変調する変調手段と、第2直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な第2直線偏光を透過させる第2検光子と、第2検光子を透過した第2直線偏光を受光し、検出する第2検出手段と、第1直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段と、を備え、偏光面変動補正手段は、第2直線偏光が変調手段、試料設置部以外の試料室、及び第2検光子を通過し、第2検出手段で検出したAC成分と第2直線偏光の偏光面の変動分を含む検出信号から変動分を打ち消すような信号を制御手段によりDC成分として生成し、該DC成分をドライバによりAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分により変調手段を駆動させて第1直線偏光の偏光面の変動を補正するように構成されている。この態様によると、直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段を有することによって、バランス位置(検出手段における受光量が最小になる位置)の変動を補正することができ、より正確に旋光度を測定することが可能になる。
【0021】
本発明の一態様においては、第2偏光子がローションプリズムである。第2偏光子としてローションプリズムを用いることによって光源からの入射光を、異なる光軸の第1の直線偏光と第2の直線偏光に分光することができる。
【0022】
本発明が開示する旋光計の校正方法は、偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正を行う。旋光計の校正方法は、試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定する工程と、偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した偏光子の回転角度である標準回転角度を取得する標準回転角度取得工程と、偏光子から生じる標準回転角度に回転した直線偏光が検光子に入射する状態で、検光子の初期回転位置から、検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子を回転させた角度である検光子回転角度を取得する検光子回転角度取得工程と、標準回転角度と検光子回転角度とを比較し、検光子回転角度が標準回転角度と一致することを確認する校正工程と、を含む。
【0023】
本発明の旋光計の校正方法によると、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いることによって、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において簡便かつ精密に校正を行うことができる。また、本発明の旋光計は、校正を行う際に部品の取換が不要であり、試料測定時と同じ装置構成で校正を行うことができるので、迅速かつ簡便に校正を行うことができる。
【0024】
本発明の一態様においては、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、前記補正データが閾値を超える場合には、補正データによって旋光度の補正を行う。この態様によると、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして求め、この補正データが閾値を超える場合には、補正データによって、旋光度を補正することによって、より正確な旋光度の測定が実現できる。
【0025】
本発明が開示する旋光計校正プログラムは、偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正を行うための旋光計の校正プログラムである。旋光計の校正プログラムは、試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定する処理と、偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した偏光子の回転角度である標準回転角度を取得する標準回転角度取得処理と、偏光子から生じる標準回転角度に回転した直線偏光が検光子に入射する状態で、検光子の初期回転位置から、検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子を回転させた角度である検光子回転角度を取得する検光子回転角度取得処理と、標準回転角度と検光子回転角度とを比較し、検光子回転角度が標準回転角度と一致することを確認する校正処理と、をコンピュータに実行させる。
【0026】
本発明の旋光計校正プログラムによると、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いることによって、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において簡便かつ精密に校正を行うことができる。また、本発明の旋光計は、校正を行う際に部品の取換が不要であり、試料測定時と同じ装置構成で校正を行うことができるので、迅速かつ簡便に校正を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、校正を行う際に部品の取換が不要であり、標準試料の代りに偏光子を回転させて測定した偏光子の標準回転角度を用いることによって、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において迅速、簡便かつ精密に校正を行うことができる旋光計及び旋光計の校正方法、並びに旋光計校正プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、従来の旋光計の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、従来の旋光計の校正時における一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の旋光計の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、試料の旋光度により直線偏光の偏光面が回転する状態を示す図である。
【
図5】
図5は、検出手段における回転角度と光強度の関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、試料室の試料設置部に試料又はセルがない状態での対称角振動方式の原理を説明する図である。
【
図7】
図7は、試料室の試料設置部に試料を設置した場合の対称角振動方式の原理を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の旋光計のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の旋光計の機能構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の旋光計の校正方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2実施形態の旋光計の一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の旋光計における直線偏光の偏光面の変動分を打ち消す処理を説明する図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の旋光計の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明の旋光計の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。なお、各図面において、同一の構成部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、各構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で、好ましい数、位置、形状等にすることができる。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0030】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係る旋光計の概略図である。この
図3の旋光計200は、光源101、干渉フィルタ102、偏光子103、偏光子回転手段104、角度エンコーダ105、変調手段106、試料室107、試料設置部107a、検光子108、検光子回転手段109、検出手段110、及び制御手段111を有する。なお、
図3中の矢印は光路であり、変調手段106と試料室107との位置は逆であっても構わない。
【0031】
光源101は、546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲、例えば250nm~900nmの波長の光を発光するLED(Light Emitting Diode)であり、点灯回路(不図示)から点灯用の電力が供給されて発光する。光源101としてLEDを用いることにより、光源の小型化及び省電力化を図ることが可能であり、旋光計における発熱量を抑制することができる。
なお、光源101は、LED以外にも、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、レーザー等の光源を使用することができる。
【0032】
干渉フィルタ102は、試料の旋光度の測定に用いる波長の光を通過させ、その他の波長の光を遮断するバンドパス光学フィルタである。
なお、干渉フィルタ102を設ける位置は、検光子108の前であれば特に制限はなく、偏光子103と変調手段106の間、又は試料室107の前後であってもよい。
【0033】
偏光子103は、単一の透過軸に平行な直線偏光成分のみを透過させる偏光板であり、光源101からの光を直線偏光に変換する。
偏光子103としては、例えば、ダイクローム又はグランテーラープリズムなどが挙げられる。
偏光子103は偏光子回転手段104に固定されており、校正時には、偏光子回転手段104により回転する。偏光子103の回転によって、偏光子103に固有の透過軸の方向も回転するので、偏光子103から生じる直線偏光の偏光面も回転する。
偏光子103を回転させる角度(偏光子の回転角度)は、特に制限はなく、測定する試料の旋光度等に応じて適宜選定することができる。偏光子103の回転角度は、偏光子に角度エンコーダが取付けられているので正確に測定可能である。角度エンコーダで測定された回転角度は高精度に角度標準化された標準回転角度となる。
偏光子回転手段104としては、例えば、回転ステージ、パルスモータ、中空モータ、などが挙げられ、偏光子回転手段を駆動制御するドライバも含まれる。
偏光子103には角度エンコーダ105が取付けられており、偏光子回転手段104及び角度エンコーダ105は制御手段111と接続されている。
【0034】
角度エンコーダ105は、偏光子103に取付けられ、偏光子103の回転角度(即ち、偏光子から生じる直線偏光の偏光面の回転角度)を測定し、測定した角度結果を示す信号を制御手段111へ入力する。
角度エンコーダ105としては、計量法に基づき特定標準器として認証されている角度測定装置(ロータリエンコーダ自己校正装置)により高精度に角度標準化され、トレーサビリティが保証されたロータリーエンコーダが用いられる(20 産総研 TODAY 2007-09.Techno-Infrastructure.「角度標準の供給と発展」;https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol07_09/vol07_09_p20.pdf;2024年5月1日検索)。これによって、角度エンコーダで測定された偏光子の回転角度もトレーサビリティが保証されることになる。
【0035】
変調手段106は、直線偏光の偏光面を変調するファラデーコイルである。このファラデーコイルは、内部を光路が通る位置に配置されており、交流電流を発信する発振器119に接続されている。
変調手段106としてのファラデーセルは、ファラデーコイル内にファラデーガラスが組み込まれた構成となっており、内部を光路が通る位置に配置されている。ファラデーセルは、発振器119から電流が供給されることによって内部に磁場を発生させ、磁場内を通過する直線偏光の偏光面がファラデー効果により回転する。この場合、ファラデーセル内を通過する直線偏光の偏光面は、振動磁場に応じて回転角度及び回転方向が変動し、交流電流に応じた振幅及び振動数で揺動振動する。
【0036】
変調手段106を通過した変調された直線偏光は、試料室107へ入射される。
試料室107内の試料設置部107aには、試料を充填するセルを設置する。試料設置部107aは光路が通る位置に設置されており、測定時には試料設置部107aのセルに充填された試料に直線偏光が入射される。校正時には試料設置部107aは試料又はセルのない状態となる。
試料設置部107aに設置するセルとしては、例えば、ガラス製セル、石英製セル、フローセル、ステンレス(SUS)製セルなどが挙げられる。
【0037】
試料室107を通過した直線偏光は、検光子108を通過する。
検光子108は、単一の透過軸を有する偏光板であり、偏光子103の透過軸と検光子108の透過軸とが直交するように検光子回転手段109により回転され、角度調節して設置されている。検光子108に入射された直線偏光のうち、検光子108の透過軸に平行な直線偏光のみが検光子108を透過する。
検光子108は検光子回転手段109に固定され、検光子回転手段109の回転によって検光子108が回転する。検光子108が回転することにより、検光子108に固有の透過軸の方向が変化し、検光子108を透過する直線偏光の強度が変化する。検光子回転手段109は制御手段111に接続されている。
検光子108の回転角度は、例えば、検光子に取付けた角度エンコーダで測定してもよいし、検光子回転手段109であるパルスモータのパルス信号の数により測定してもよい。
検光子回転手段109としては、例えば、回転ステージ、中空モータ、パルスモータなどが挙げられ、検光子回転手段を駆動制御するドライバも含まれる。
【0038】
検光子108を通過した直線偏光は、検出手段110へ入射される。
検出手段110としては、例えば、光電子増倍管(Photomultiplier Tube;PMT)、フォトダイオード等の受光素子から構成されており、直線偏光を検出した場合に、直線偏光の検出量を電圧で示す検出信号を出力する。検出手段110が出力する検出信号の強度は、検出手段110が受光した直線偏光の受光量に対応する。
検出手段110は制御手段111と接続されており、検出手段110で得られた検出信号に基づき、制御手段111によって試料の旋光度が求められる。
【0039】
制御手段111は、旋光計のすべての動作を制御し、各種の信号を入出力するための入出力インターフェイス、各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ又は集積回路等の演算部、信号処理に必要な一時的な情報を記憶するメモリ、信号処理に必要な処理プログラム又はデータを記憶する記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段などを含んで構成されている。
【0040】
本実施形態の旋光計は、偏光子103を回転させて角度エンコーダ105で測定した偏光子103の標準回転角度を用いて校正を行うことができる。
制御手段111は、旋光計を校正する際に、試料室107の試料設置部107aに試料又はセルのない状態で、偏光子回転手段104により偏光子103を回転させ、偏光子103が回転した角度(偏光子からの直線偏光の偏光面が回転した角度)を角度エンコーダ105で測定した標準回転角度と、検出手段110が受光した受光量が最小になる検光子108の回転位置から、直線偏光が回転し受光量が最小でなくなった状態で受光量が最小になる検光子108の回転位置まで検光子回転手段109が検光子108を回転させた角度である旋光度と、を比較する処理を行う。
比較の方法としては、例えば、標準回転角度と旋光度とが一致することを確認する方法、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、補正データが閾値を超える場合には、補正データによって旋光度の補正を行う方法などが挙げられる。
【0041】
制御手段111は、得られた標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、補正データが閾値を超える場合には、補正データによって旋光度の補正を行うことができる。
制御手段111は、予めスクロース水溶液又は石英旋光板等の標準試料で旋光計を校正して記憶している旋光度と、得られた標準回転角度とを対比する。波長500nm~800nmでは標準試料が存在するので、標準試料で旋光計を校正して記憶している旋光度と標準回転角度を対比することによって、標準試料を用いたデータの管理が行えるので、測定データの信頼性が更に向上する。
【0042】
第1実施形態の旋光計200では、偏光子103の透過軸と検光子108の透過軸とは互いに直交する(
図4の実線103及び108参照)。この状態では検出手段110が受光した受光量が最小になる。
まず、試料室107の試料設置部107aに旋光性を持つ物質を充填したセルを設置すると、偏光子103からの直線偏光の偏光面が試料の旋光度に対応してαだけ回転する。この状態は
図4の偏光子103’で示され、検出手段110は、αの回転角度分による光の明るさを感知する。検光子108をαだけ回転すると、再び検出手段110が受光した受光量が最小になる。この受光量が最小になる検光子108’の回転角度から、試料の旋光度を求めることができる。
【0043】
ここで、偏光子103をある方向に固定し検光子108を回転させたとき、偏光子103の透過軸と検光子108の透過軸とのなす回転角度をθとすると、光強度Iと回転角度θとの関係は
図5に示すようになり、次式、I=cos
2θ、で表される。
偏光子103の透過軸と検光子108の透過軸を直交状態とするとき、次式、I=cos
2θ、において回転角度θが90゜付近で変化した場合、光強度Iの変化は小さいため精度の高い測定は困難である。これを解決するために本実施形態の旋光計では、変調手段106としてのファラデーセルによる対称角振動方式光学零位法を採用している。この対称角振動方式は、偏光面を変調し、変調周波数に関係する信号を測定する方法であり、他の周波数信号成分のノイズを除去することができ、高感度測定が可能である。
【0044】
まず、試料室107の試料設置部107aに試料又はセルのない状態で、偏光子103の透過軸と検光子108の透過軸とは互いに直交しており、偏光子103から生じた直線偏光の偏光面は、変調手段106としてのファラデーセルによりサイン波形で左右に±δ度だけ時間とともに振動している(
図6(a))。これを直線偏光の偏光面の変調という。このときの光強度Iの変化は
図6(b)に示すようになる。変調の周波数をfHzとすると、光強度Iの信号は
図6(b)より2fHzの周波数になる。
【0045】
次に、試料室107の試料設置部107aに旋光性を持つ試料が充填されたセルが設置されている場合、偏光子103から生じた直線偏光の偏光面は試料の旋光度αだけ回転する((
図7(a))。このときの光強度Iの変化は
図7(b)に示すように、fHzと2fHzの信号が混じった状態になる。つまり、試料が旋光性を有する場合にはfHzの周波数の光信号が生じる。このfHz成分の光信号は、検出手段110としての光電子増倍管で光電変換の後、増幅されて位相検波され、検光子108を回転する検光子回転手段109に入力され、fHz信号がなくなるまで検光子108を回転する。したがって、検光子108は常にfHzが生じなくなる状態で停止し、その角度が旋光度となる。
【0046】
<旋光計の校正方法>
本発明の旋光計の校正方法は、偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正を行うものであり、標準回転角度取得工程と、旋光度取得工程と、比較工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0047】
-標準回転角度取得工程-
標準回転角度取得工程は、試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、偏光子を回転させ、偏光子が回転した角度を角度エンコーダで測定して標準回転角度を取得する。
偏光子の回転角度は、特に制限はなく、測定する試料の旋光度等に応じて適宜選定することができる。
偏光子の回転角度は、偏光子に角度エンコーダを取付けることにより正確に測定可能である。角度エンコーダは特定標準器によってトレーサビリティの保証されたロータリーエンコーダを使用する。これによって、偏光子の回転角度もトレーサビリティが保証されることになる。
【0048】
-旋光度取得工程-
旋光度取得工程は、検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置から、直線偏光が回転し受光量が最小でなくなった状態で受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子を回転させた角度を測定して旋光度を取得する。
検光子の回転角度の測定は、例えば、検光子に取付けたエンコーダで測定してもよいし、検光子回転手段であるパルスモータのパルス信号の数により測定してもよい。
【0049】
-比較工程-
比較工程は、標準回転角度取得工程で得られた標準回転角度と旋光度取得工程で得られた旋光度とを比較する。
比較の方法としては、標準回転角度と旋光度とが一致することを確認する方法、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、補正データが閾値を超える場合には、補正データによって旋光度の補正を行う方法などが挙げられる。
【0050】
-その他の工程-
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、管理工程、記憶工程、表示工程、出力工程などが挙げられる。
【0051】
(旋光計校正プログラム)
本発明の旋光計の校正プログラムは、偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正を行うための旋光計校正プログラムであって、
試料室の試料設置部に試料又はセルのない状態で、検光子の初期回転位置と、検出手段が受光した受光量が最小になる偏光子の初期回転位置とを決定する処理と、偏光子の初期回転位置から、偏光子回転手段により偏光子を回転させ、角度エンコーダにより測定した偏光子の回転角度である標準回転角度を取得する標準回転角度取得処理と、偏光子から生じる標準回転角度に回転した直線偏光が検光子に入射する状態で、検光子の初期回転位置から、検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子を回転させた角度である検光子回転角度を取得する検光子回転角度取得処理と、標準回転角度と検光子回転角度とを比較し、検光子回転角度が標準回転角度と一致することを確認する校正処理と、をコンピュータに実行させる。
【0052】
本発明の旋光計校正プログラムは、例えば、本発明の旋光計の校正方法をコンピュータに実行させるプログラムとすることができる。また、本発明の旋光計校正プログラムにおける好適な態様は、例えば、本発明の旋光計の校正方法における好適な態様と同様とすることができる。
【0053】
本発明の旋光計校正プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成及びオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
【0054】
本発明の旋光計校正プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD-ROM(Compact Disc ROM)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk ROM)、MOディスク(Magneto-Optical disk)、SDカード、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などの記録媒体に記録しておいてもよい。
更に、本発明の旋光計校正プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本発明の旋光計校正プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本発明の旋光計校正プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本発明の旋光計校正プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
【0055】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の旋光計校正プログラムを記録してなる。
本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、SDカード、USBメモリなどが挙げられる。
また、本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の旋光計校正プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
【0056】
以下、本発明の旋光計の構成例やフローチャートなどを用いて、本発明で開示する技術の一例を更に詳細に説明する。
図8に、本発明の旋光計のハードウェア構成例を示す。
旋光計200においては、例えば、制御部201、主記憶装置202、補助記憶装置203、I/Oインターフェイス204、通信インターフェイス205、入力装置206、出力装置207、表示装置208が、システムバス209を介して接続されている。
【0057】
制御部201は、演算(四則演算、比較演算等)、ハードウェア、及びソフトウェアの動作制御などを行う。制御部201としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、本発明の旋光計に用いるマシンの一部であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
制御部201は、例えば、主記憶装置202などに読み込まれたプログラム(例えば、本発明の旋光計校正プログラムなど)を実行することにより、種々の機能を実現する。
本発明の旋光計200における標準回転角度取得部、旋光度取得部、及び比較部が行う処理は、制御部201により行うことができる。
【0058】
主記憶装置202は、各種プログラムを記憶するとともに、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。主記憶装置202としては、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)の少なくともいずれかを有するものを用いることができる。
ROMは、例えば、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶する。また、ROMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)などが挙げられる。
RAMは、例えば、ROMや補助記憶装置203などに記憶された各種プログラムが、制御部201により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
【0059】
補助記憶装置203としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。また、補助記憶装置203、CDドライブ、DVDドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。また、本発明の旋光計校正プログラムは、例えば、補助記憶装置203に格納され、主記憶装置202のRAM(主メモリ)にロードされ、制御部201により実行される。
【0060】
I/Oインターフェイス204は、各種の外部装置を接続するためのインターフェイスである。I/Oインターフェイス204は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、SDカード、USBメモリなどのデータの入出力を可能にする。
【0061】
通信インターフェイス205としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
【0062】
入力装置206としては、本発明の旋光計200に対する各種要求や情報の入力を受け付けることができれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが挙げられる。また、入力装置206がタッチパネル(タッチディスプレイ)である場合は、入力装置206が表示装置208を兼ねることができる。
【0063】
出力装置207としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、プリンタなどが挙げられる。
表示装置208としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
【0064】
図9に、本発明の旋光計の機能構成例を示す。
図9に示すように、旋光計200は、通信機能部220と、入力機能部230と、出力機能部240と、表示機能部250と、記憶機能部260と、制御機能部270とを備える。
【0065】
通信機能部220は、例えば、各種のデータを外部の装置と送受信する。
入力機能部230は、例えば、旋光計200に対する各種指示を受け付ける。また、入力機能部230は、例えば、測定する試料などに関する情報を受け付ける。
出力機能部240は、例えば、試料の測定データをプリントアウトする。
表示機能部250は、例えば、試料の測定データをディスプレイに表示する。
【0066】
記憶機能部260は、例えば、各種プログラムを記憶するプログラム格納用DB261と、標準回転角度取得部、旋光度取得部、及び比較部からのデータを記憶するデータ記憶用DB262とを有する。
【0067】
制御機能部270は、標準回転角度取得部271、旋光度取得部272、及び比較部273を有する。制御機能部270は、例えば、記憶機能部260のプログラム格納用DB261に記憶された各種プログラムを実行するとともに、本発明の旋光計全体の動作を制御する。
【0068】
標準回転角度取得部271は、例えば、旋光計の試料室の試料設置部107aに試料又はセルのない状態で、偏光子を回転させ、偏光子が回転した角度を角度エンコーダで測定して標準回転角度を取得する処理を行う。
【0069】
旋光度取得部272は、例えば、旋光計の検出手段が受光した受光量が最小になる検光子の回転位置から、直線偏光が回転し前記受光量が最小でなくなった状態で受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子を回転させた角度を測定して旋光度を取得する処理を行う。
比較部273は、例えば、標準回転角度と旋光度とを比較する処理を行う。
【0070】
ここで、
図10は、本発明の旋光計の校正方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図3及び
図9を参照して、本発明の旋光計の校正方法における処理の流れについて説明する。
【0071】
ステップS11では、旋光計200は、試料室107の試料設置部107aに試料又はセルのない状態で、検出手段110が出力する受光信号の強度が最小になる検光子108の初期回転位置を決定すると、処理をS12に移行する。
【0072】
ステップS12では、制御手段111は、検光子108の回転位置を初期回転位置に定めた検光子回転手段109による検光子108の初期回転位置の角度を検光子の回転角度0°に初期化すると、処理をS13に移行する。
【0073】
ステップS13では、制御手段111は、偏光子回転手段104により偏光子103を回転させ、検出手段110が出力する受光信号の強度が最小になる偏光子103の初期回転位置を決定すると、処理をS14に移行する。ステップS13では、偏光子103が初期回転位置にある状態では、偏光子103の透過軸は検光子108の透過軸と直交している(クロスニコルの位置)。
【0074】
ステップS14では、制御手段111は、偏光子103の回転位置を初期回転位置に定めた偏光子回転手段104による偏光子103の初期回転位置の角度及び角度エンコーダ105の角度を偏光子の回転角度0°に初期化すると、処理をS15に移行する。
【0075】
ステップS15では、制御手段111は、偏光子回転手段104により偏光子103を回転し、停止させると、処理をS16に移行する。ステップS15では、制御手段111は、例えば、予め定められた回転角度だけ偏光子103を回転させればよい。偏光子103の回転によって偏光子から生じる直線偏光の偏光面も回転する。
【0076】
ステップS16では、角度エンコーダ105は、回転角度0°の回転位置から停止するまでの偏光子が回転した角度(標準回転角度)を計測し、計測した標準回転角度を制御手段111に送信すると、処理をS17に移行する。
【0077】
ステップS17では、制御手段111は、検光子回転手段109により検光子108を回転し、停止させると、処理をS18に移行する。
ステップS17では、制御手段111は、検光子108を回転させながら受光信号の変化を順次測定する。例えば、受光信号の強度が所定の閾値以下となる回転位置を求めることにより、受光信号の強度が最小となる検光子108の回転位置を決定する。この状態では、偏光子103の透過軸は検光子108の透過軸と直交する(クロスニコルの位置)。
【0078】
ステップS18では、制御手段111は、検光子108が回転した角度から旋光度を求めると、処理をS19に移行する。ステップS18では、検光子108の回転角度は、検光子に取付けたエンコーダで測定してもよいし、検光子回転手段109としてのパルスモータのパルス信号の数により算出してもよい。
【0079】
ステップS19では、制御手段111は、ステップS16で得られた標準回転角度とステップS18で得られた旋光度を比較すると、本処理を終了する。
標準回転角度と旋光度の比較方法としては、例えば、標準回転角度と旋光度とが一致することを確認する方法、標準回転角度と旋光度との差分を補正データとして算出し、前記補正データが閾値を超える場合には、補正データによって前記旋光度の補正を行う方法などが挙げられる。なお、得られた補正データは制御手段における記憶手段に記憶される。
【0080】
校正の処理が終了した後は、試料室107の試料設置部107aに試料が設置され、試料の測定が行われる。なお、校正の処理は、旋光計の製造時又は点検時などに個々の旋光計について実行される。
【0081】
本発明の旋光計、本発明の旋光計の校正方法、及び本発明の旋光計プログラムによると、標準試料を用いることなく、波長546nmよりも短波長側を含む幅広い波長範囲において簡便かつ精密に校正を行うことができる。また、本発明の旋光計は、校正を行う際に部品の取換が不要であり、試料測定時と同じ装置構成で校正を行うことができるので、迅速かつ簡便に校正を行うことができる。
【0082】
(第2実施形態)
旋光計により旋光度を長時間に亘って測定を行うと、温度変化、偏光子の歪み、振動などの影響によってバランス位置(検出手段における受光量が最小になる位置)が理想的な状態から変化して、直線偏光の偏光面の変動が生じ、測定精度が低下するおそれがある。第2実施形態の旋光計によると、偏光面変動補正手段により直線偏光の偏光面の変動を補正することによって、旋光度の測定精度を更に向上させることができる。
【0083】
図11は、第2実施形態の旋光計の一例を示す概略図である。なお、第2実施形態において、既に説明した第1実施形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図11に示す第2実施形態の旋光計300は、
図3に示す第1実施形態の旋光計200において、第2光源112を有し、直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段118を有する以外は、第1実施形態の旋光計と同じである。
偏光面変動補正手段118は、第2光源112からの入射光を偏光子103で変換した直線偏光が、変調手段106、試料設置部107a以外の試料室107、及び第2検光子114を通過し、第2検出手段115で検出した検出信号を、ドライバ116を介してフィードバック制御することにより直線偏光の偏光面の変動を補正する手段である。
第2実施形態の旋光計300は、直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段118を有することによって、旋光度の測定精度が更に向上する。
【0085】
第2光源112としては、例えばレーザー光源などが挙げられ、第1実施形態の旋光計の光源101と同様なものを用いることができる。
第2検光子114は、回転しないで固定であること以外は、第1実施形態の旋光計の検光子108と同様なものを用いることができる。第2検光子114を固定とすることによって、第2検光子回転手段が不要となり、第2検出手段から検出信号の強度のみを取得することができる。
第2検出手段115は、第1実施形態の旋光計の検出手段110と同様なものを用いることができる。
干渉フィルタ102は、直線偏光の偏光面の変動補正用の第2光源112からの光をカットしないように試料室107よりも後であって、ミラー113の後の位置に設けている。
変調手段106としてのファラデーセルはファラデーコイル内にファラデーガラスが組み込まれた構成であり、ファラデーコイルに交流電流を印可することによって入射した光の偏光方向を周期的に変調させている(上記
図6及び
図7参照)。
【0086】
第2実施形態においては、第2検光手段115からの検出信号は、上記
図6と同様に2fHzの交流(AC)成分となる。温度変化、偏光子の歪み、振動などの影響によって偏光面が変動すると、上記
図7と同様にfHzの変動分が生じ、検出信号は2fHzとfHzが混在した信号となる。この混在した検出信号から変動分を打ち消すような信号を制御手段111によりDC成分として生成し、この生成したDC成分をドライバ116でAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分を変調手段106としてのファラデーセルに印加する。
【0087】
具体的には、
図11に示すように、第2光源112からの入射光を偏光子103で変換した直線偏光が、変調手段106、試料設置部107a以外の試料室107、及び第2検光子114を通過し第2検出手段115で検出した検出信号から変動分を打ち消すような信号をDC成分として生成し、生成したDC成分をドライバ116に送り、ドライバ116でAC成分と合わせてAC成分+DC成分とする。該DC成分+AC成分を変調手段106としてのファラデーセルに印加する。ここで、直線偏光の偏光面に変動がない場合には、変調手段106としてのファラデーセルへの印加信号は
図12の実線で示すようになる。一方、直線偏光の偏光面に変動がある場合には、第2検出手段115で検出した信号は変動分を含んだ状態となる。この変動分を打ち消すような信号を制御手段111によりDC成分として生成する。この生成したDC成分をドライバ116によりAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、
図12の点線で示すように、DC成分+AC成分により変調手段106としてのファラデーセルを駆動すると、偏光方向の周期的な変調に加えて偏光回転を付与することができ、直線偏光の偏光面の変動分を除去することができる。その結果、バランス位置(検出手段における受光量が最小になる位置)の変動を補正することができ、より正確に旋光度を測定することが可能になる。
【0088】
(第3実施形態)
第3実施形態の旋光計は、第2実施形態の旋光計とは異なる方法によって、直線偏光の偏光面の変動を補正する実施形態である。
図13は、第3実施形態の旋光計の一例を示す概略図である。なお、第3実施形態において、既に説明した第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図13に示す第3実施形態の旋光計400は、
図11に示す第2実施形態の旋光計300における光源101及び第2光源112が単一の光源101からなり、偏光子103が第2偏光子117である以外は、第2実施形態の旋光計300と同様である。
【0090】
光源101としては、第1実施形態の光源と同様の光源が用いられ、偏光方向が揃っている偏光レーザー、無偏光レーザーなどが挙げられる。
第2偏光子117としては、ローションプリズム又はウォラストンプリズムが用いられる。これらの中でも、ローションプリズムが好ましい。
ローションプリズムは、2つのプリズムを互いに光学軸が直交する様に張り合わせたもので、入射側のプリズムの光学軸は、プリズムへの入射光の光軸と平行になるようになっている。そして、出射側のプリズムは光学軸の方向が入射光の光軸と直交するように配置されている。このため、光が一番目のプリズムを透過するときは偏光状態に関わらず、屈折率は同一である。しかし、光が二番目のプリズムに入ると、偏光状態によって屈折率が異なる。この場合、二番目のプリズムに対して常光線となる偏光状態の光は、一番目のプリズムと同じ屈折率となるので、プリズムの境界で光は屈折せず、プリズムを透過する。一方、二番目のプリズムで異常光線となる偏光状態を持つ光は、二つのプリズムの境界で屈折し、光の入射方向と異なる方向に光が出ていく。その結果、ローションプリズムからの光の出射角違いにより、偏光状態が異なる光を分離することができる。
したがって、ローションプリズムを用いることによって光源101からの入射光を、異なる光軸の第1の直線偏光と第2の直線偏光に分光することができる。
【0091】
第1の直線偏光は、変調手段106、試料室107、干渉フィルタ102、及び検光子108を通過し、試料の旋光度の測定に用いられる。
第2の直線偏光は、変調手段106、試料設置部107a以外の試料室107、及び第2検光子114を通過し、第2検出手段115で検出したAC成分と直線偏光の偏光面の変動分を含む検出信号から変動分を打ち消すような信号をDC成分として生成し、この生成したDC成分をドライバ116でAC成分と合わせてAC成分+DC成分とし、該AC成分+DC成分で変調手段106としてのファラデーセルを駆動して直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段118に用いられる。
【0092】
光源101から第2偏光子117としてのローションプリズムに45°で入射すれば縦方向の光軸の直線偏光と横方向の光軸の直線偏光に分光される。また、光源101から第2偏光子117としてのローションプリズムに約10°で入射すれば高エネルギーの直線偏光と低エネルギーの直線偏光に分光される。低エネルギーの直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段118に用い、高エネルギーの直線偏光を試料測定用として使用することができる。
【0093】
第3実施形態の旋光計400は、第2実施形態の旋光計300と同様に、直線偏光の偏光面の変動を補正する偏光面変動補正手段118を有することによって、旋光度の測定精度が更に向上する。
【符号の説明】
【0094】
101 光源
102 干渉フィルタ
103 偏光子
104 偏光子回転手段
105 角度エンコーダ
106 変調手段
107 試料室
107a 試料設置部
108 検光子
109 検光子回転手段
110 検出手段
111 制御手段
112 第2光源
113 ミラー
114 第2検光子
115 第2検出手段
116 ドライバ
117 第2偏光子
118 偏光面変動補正手段
119 発振器
200 旋光計
201 制御部
202 主記憶装置
203 補助記憶装置
204 I/Oインターフェイス
205 通信インターフェイス
206 入力装置
207 出力装置
208 表示装置
209 システムバス
260 記憶機能部
261 プログラム格納用DB
262 データ記憶用DB
270 制御機能部
271 標準回転角度取得部
272 旋光度取得部
273 比較部
300 旋光計
400 旋光計
【要約】 (修正有)
【課題】校正を行う際に部品の取換が不要であり、標準試料の代りに偏光子の標準回転角度を用いることによって、幅広い波長範囲において迅速、簡便かつ精密に校正を行うことができる旋光計等の提供。
【解決手段】偏光子を回転させて測定した偏光子の回転角度を用いて校正できる旋光計である。旋光計は、光源と偏光子と偏光子回転手段と、偏光子に取付けられ、偏光子が回転した角度を測定する角度エンコーダと検光子と検光子回転手段と、検出手段と、旋光計の校正時において、試料室に試料又はセルのない状態で、偏光子回転手段により偏光子を回転させ、偏光子の回転角度を角度エンコーダで測定した標準回転角度と、検出手段の受光量が最小になる検光子の回転位置から、直線偏光が回転し受光量が最小でなくなった状態で受光量が最小になる検光子の回転位置まで検光子回転手段が検光子を回転させた角度である旋光度とを比較する処理を行う制御手段とを有する。
【選択図】
図3