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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】成形品取出機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
B29C45/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020202992
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090541
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】久保 佐内
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 文武
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-077580(JP,A)
【文献】特開2015-217468(JP,A)
【文献】特開2017-030058(JP,A)
【文献】特開平03-281194(JP,A)
【文献】特開2000-271886(JP,A)
【文献】特開2017-019057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品取出機における取出ヘッドを有するフレームを駆動するサーボモータの駆動部の位置及び速度をエンコーダにより検出して、検出値と位置指令及び速度指令の値との偏差を求め、この偏差により前記駆動部の位置及び速度のフィードバック制御を行って前記サーボモータを制御するサーボ系制御部と、前記サーボ系制御部を手動操作する際の手動指令を発生する手動指令発生部を備えた成形品取出機の制御装置において、
前記手動指令発生部から出力される前記手動指令により前記サーボ系制御部に動作指令を与えて前記サーボモータを手動操作する際に前記フレームに加わるトルクを検知するトルク検知部と、
前記トルク検知部の検出値が予め定めた値より大きくなったときに前記取出ヘッドが周辺物に衝突したものとして動作停止指令を出力する衝突検知部と、
前記動作停止指令が出力されたときに、前記サーボ系制御部のオン状態を維持して前記トルクを保持した状態で、前記サーボ系制御部中の前記偏差を0にするクリア動作を行う偏差クリア部をさらに備えたことを特徴とする成形品取出機の制御装置。
【請求項2】
前記衝突検知部は、前記予め定めた値を自動運転時の制限値よりも低い値とする請求項1に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項3】
前記衝突検知部は、前記トルク検知部の前記検出値が前記予め定めた値より大きくなったことを所定時間、検知し続けたときに前記取出ヘッドが周辺物に衝突したものとして動作停止指令を出力する請求項1または2に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項4】
前記衝突検知部は、前記動作停止指令を出力すると同時にアラーム信号を出力し、衝突検知後の退避時に前記サーボ系制御部に再度前記手動指令発生部から移動指令が入力されて前記トルク検知部の前記検出値が前記予め定めた値より小さくなった後、所定時間が経過するまで前記アラーム信号を出力し続ける請求項3に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項5】
前記偏差クリア部は、再度前記手動指令発生部から前記移動指令が入力されると再度前記クリア動作を行う請求項4に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項6】
前記トルク検知部は、前記取出ヘッドに作用するトルクの作用方向を検知できるように構成されており、
前記手動操作をするために使用される入力部の表示部には、前記トルクの作用方向と前記トルクの大きさに比例するトルク表示が示されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項7】
前記表示部には前記トルク表示に隣接して、退避方向を示唆する示唆表示が示されている請求項6に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項8】
前記トルク検知部は、前記取出ヘッドに作用する横行方向のトルク、引抜方向のトルク及び上下方向のトルクを検知できるように構成されており、
前記手動操作をするために使用される入力部の表示部には、前記横行方向のトルク、前記引抜方向のトルク及び前記上下方向のトルクの大きさに比例する3つのトルク表示が示されている請求項6に記載の成形品取出機の制御装置。
【請求項9】
前記表示部には前記3つのトルク表示に隣接して、退避方向を示唆する3つの示唆表示がそれぞれ示されている請求項8に記載の成形品取出機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作時に衝突が発生したときに適切な退避動作を行うことができる成形品取出機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3526555号公報(特許文献1)には、チャック部に過度な外力が作用した場合であっても、チャック部が取り付けられる部材の変形を防止して、成形品の傷付を防止することができる成形品取出機の発明が開示されている。この発明では、チャック部が所定の位置へ移動した際に電動モータを直流拘束してチャック部を所定の位置に停止保持させ、停止保持されたチャック部に外力が作用したことを衝突検知用センサで検出して電動モータによる直流拘束力を減少制御してチャック部を外力により移動可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3526555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら衝突検知専用センサや衝突退避専用センサを取出機の取出ヘッドを含むフレーム全体に取り付けることは現実的に難しく、大きなコストアップにもつながる。また作業環境や作業状況によって、どの箇所に衝突するかを予測することは難しい。そのため実際には、作業者が、成形品取出機の手動動作中に操作を誤って金型や周辺機器に衝突させ、その後の退避操作が原因で、取出ヘッドやガイド部であるトラックローラー及び固定プレートを損傷させることがある。
【0005】
本発明の目的は、成形品取出機を手動操作する際に衝突が発生したときに破損を防止する適切な動作を行うことができる成形品取出機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、成形品取出機における取出ヘッドを有するフレームを駆動するサーボモータの駆動部の位置及び速度をエンコーダにより検出して、検出値と位置指令及び速度指令の値との偏差を求め、この偏差により駆動部の位置及び速度のフィードバック制御を行ってサーボモータを制御するサーボ系制御部と、サーボ系制御部を手動操作する際の手動指令を発生する手動指令発生部を備えた成形品取出機の制御装置を改良の対象とする。本発明の制御装置は、衝突が発生したときに適切な動作を行えるようにするために、トルク検知部と、衝突検知部と偏差クリア部を備えている。トルク検知部は、手動指令発生部から出力される手動指令によりサーボ系制御部に動作指令を与えてサーボモータを手動操作する際にフレームに加わるトルクを検知する。そして衝突検知部は、トルク検知部の検出値が予め定めた値より大きくなったときに取出ヘッドが周辺物に衝突したものとして動作停止指令を出力する。その上で、偏差クリア部は、動作停止指令が出力されたときにも、サーボ系制御部のオン状態を維持してトルクを保持した状態で、サーボ系制御部中の偏差を0にするクリア動作を行う。
【0007】
現状では、手動操作中に上下フレームの取出ヘッドを金型等に衝突させることでモータトルク値が例えば、300%に達したときに、過負荷エラーが発生して、サーボモータを停止させる。このときは、サーボ系制御部はサーボオフの状態となるため、衝突した状態から退避するためには再びサーボ系制御部をサーボオンにする必要がある。サーボ系制御部でサーボオフの状態になると、位置偏差が0になると共に取出ヘッドが金型等と接触した状態で若干下降し、取出ヘッドを損傷させるおそれがある。また退避動作をする際に、サーボオンとしたときに手動操作を誤ると、再度、取出ヘッドを金型に衝突させたり、負荷がかかることで上下フレームや取出ヘッドを変形させる可能性がある。また場合によっては、再びサーボオフとなり衝突した状態から脱却できない可能性がある。
【0008】
本発明によれば、動作停止指令が出力されたときに、偏差クリア部がサーボ系制御部のオン状態を維持してトルクを保持した状態で、サーボ系制御部中の偏差を0にするクリア動作を行うため、偏差が0となることにより位置決め完了が確定して、再度運転が可能となる。その結果、動作停止後に、退避操作をするときには、操作指令通りにサーボモータを動作させて、上下フレーム及び取出ヘッドを動かすことができて、衝突状態からスムーズに退避することができる。
【0009】
衝突検知部は、前述の予め定めた値を自動運転時の制限値よりも低い値とするのが好ましい。これにより作業者による手動操作の相違によって、衝突時に必要以上の負荷が周辺物に加わるのを防止することができる。
【0010】
また衝突検知部は、トルク検知部の検出値が予め定めた値より大きくなったことを所定時間検知し続けたときに、取出ヘッドが周辺物に衝突したものとして動作停止指令を出力するのが好ましい。このようにするとノイズによって予め定めた値よりも検出値が大きくなってしまった際にそのノイズを検出しなくなるので、「衝突した」という検出を正確に行うことができる。
【0011】
さらに衝突検知部は、動作停止指令を出力すると同時にアラーム信号を出力し、衝突検知後の退避時に前記サーボ系制御部に再度手動指令発生部から移動指令が入力されてトルク検知部の検出値が前述の予め定めた値よりも低くなった後、所定時間が経過するまでアラーム信号を出力し続けるのが好ましい。もしトルク検知部の検出値が前述の予め定めた値よりも低くなったと同時にアラームを消してしまうと、作業者が同時に手動操作を止めた場合、衝突状態から完全に退避できていない可能性がある。そのため、アラーム信号の出力を所定時間経過するまで出力することで、作業者は手動操作を続け、衝突状態から完全に退避することができる。
【0012】
また偏差クリア部は、再度前記手動指令発生部から移動指令が入力されると再度クリア動作を行うのが好ましい。このようにすると、退避動作行う前に確実に偏差データをクリアすることができる。また、わずかな偏差が残った状態で移動指令が入力されることがなくなるので、わずかな偏差を急激にゼロにしようとするフィードバック制御が働いて、オーバーシュートもしくはアンダーシュートを伴う動作により、再度衝突する危険が発生することを防止できる。
【0013】
トルク検知部は、取出ヘッドに作用する少なくとも1つのトルクの作用方向を検知できるように構成されており、手動操作をするために使用される入力部の表示部には、トルクの作用方向とトルクの大きさに比例するトルク表示が示されているのが好ましい。これらのトルク表示は、数値表示、バーグラフ表示、メータ表示など任意の表示をすることができる。このようにすると、操作者は、退避動作を行う場合にどの方向のトルクを小さくする方向に退避すればよいのかをデータに基づいて正しく決定することができる。
【0014】
表示部にはトルク表示に隣接して、退避方向を示唆する示唆表示が示されているのが好ましい。この示唆は、文字表示でも、マーク表示でも、またランプ表示等のいずれでもよい。このような表示をすれば、熟練者で無くても、衝突後に容易に退避動作を行うことができる。
【0015】
なおトルク検知部は、サーボモータが3軸(XVZ)方向の駆動に用いられる場合には、トルク検知部は横行方向のトルク、引抜方向のトルク及び上下方向トルクを検知できるように構成されているのが好ましい。またサーボモータが駆動する軸数が、5軸、6軸等の多軸の場合には、多軸のすべてのトルクを検出できるようにトルク検知部を構成するのが好ましい。さらに取出ヘッドが姿勢制御装置に装着される場合には、姿勢制御装置から取出ヘッドに加わるトルクも、トルク検知部で検知できるようにするのが好ましい。
【0016】
表示部には3つのトルク表示に隣接して、退避方向を示唆する3つの示唆表示がそれぞれ示されてもよい。このような表示をすれば、操作者は、衝突後の退避動作を行う場合にどの方向のトルクを小さくする方向に退避すればよいのかをデータに基づいて正しく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態を適用した成形品取出機の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施の形態の特に衝突検知前後のタイムチャートである。
図3】入力部の表示の一例を示す図である。
図4】衝突検知時の実際の動作フローである。
図5】衝突退避時の実際の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態を適用した成形品取出機1の概略構成を示すブロック図である。図2は本実施の形態の特に衝突検知前後のタイムチャートを示している。図3は入力部23の表示の一例を示す図である。成形品取出機1は、成形機の型内に進入して成形機の型から成形品を取り出すための取出ヘッド3を先端に有する上下フレーム5を三軸直交型の搬送機構7により搬送する成形品取出機である。搬送機構7の駆動源としてエンコーダ10付きの複数のサーボモータ9が用いられている。複数のサーボモータ9の制御をする制御装置11内には、エンコーダ10が検出する位置情報及び速度情報と位置指令及び速度指令との偏差を求めて、この偏差により駆動部としてのサーボモータ9の駆動軸の位置及び速度のフィードバック制御を行うためのサーボ系制御部13が複数のサーボモータ9に対して設けられている。サーボ系制御部13は、いわゆるサーボアンプとしての機能を果たす。
【0019】
本実施の形態では、制御装置11は、サーボ系制御部13を手動操作する際の手動指令を発生する手動指令発生部14と、ティーチングの際に適切な動作を行うために必要な動作を行ってティーチングデータを取得して記憶するティーチングデータ取得部15と、トルク検知部17と、衝突検知部19と偏差クリア部21を備えている。トルク検知部17は、図2に示すように、入力部23からの手動操作により手動指令発生部14がサーボ系制御部13に移動指令[図2(A)参照]を与えてサーボモータ9を手動操作する際に上下フレーム5または取出ヘッド3に加わるトルク[図2(B)参照]を検知する。本実施の形態では、トルク検知部17は、取出ヘッド3に作用する横行方向のトルク、引抜方向のトルク及び上下方向トルクを検知できるように構成されている。トルクの検知は、モータ電流を測定して検知してもよいし、トルクセンサを用いて検知してもよい。そして本実施の形態では、図3に示すように、手動操作をするために使用されるコントローラからなる入力部23の表示部24の表示画面に、横行方向のトルク、引抜方向のトルク及び上下方向のトルクの大きさに比例する3つのトルク表示(図3では、「40%」、「150%」、「30%」の表示)をするようにしている。また表示部24の表示画面には3つのトルク表示に隣接して、退避方向を示唆する3つの示唆表示(図3では、「○」印と「●」印)がそれぞれ示されている。なおこの示唆表示は、文字表示でも、マーク表示でも、またランプ表示等のいずれでもよい。このような表示をすれば、操作者は、衝突後の退避動作を行う場合にどの方向のトルクを小さくする方向に退避すればよいのかをデータに基づいて正しく決定することができる。また熟練者で無くても、衝突後に容易に退避動作を行うことができる。
【0020】
衝突検知部19は、トルク検知部17の検出値が予め定めた値より大きくなったときに取出ヘッド3が周辺物に衝突したものとして動作停止指令を出力する。本実施の形態では、図2(B)に示すように、衝突検知部19は、予め定めた値を自動運転時の制限値(例えば定格トルクの300%)よりも低い値(制限値×α%:例えばα=50%)にしている。このように予め定め値を定めることにより、ティーチング等の作業や衝突後の退避動作をするときの手動操作によって、衝突時や退避動作時に必要以上の負荷が周辺物に加わるのを防止している。また本実施の形態では、衝突検知部19が、トルク検知部17の検出値が予め定めた値より大きくなったことを所定時間T1[図2(B)の「β秒」参照]検知し続けたときに、取出ヘッド3が周辺物に衝突したものとして動作停止指令[図2(E)参照]を出力する。このトルクが予め定めた値を超えたときに直ちに衝突であると判断すると、タッピング操作をするときなどに、衝突であると誤った判断をすることがあるため、β秒(具体的に0.2~0.3秒)の期間が経過した後も、トルクが制限値×α%を超え続けていた場合に、衝突が発生したと判断することとした。
【0021】
さらに衝突検知部19は、動作停止指令を出力すると同時にアラーム信号[図2(C)のエラーフラグ参照]を出力する。その後、退避操作をするために、入力部23を操作してサーボ系制御部13に手動指令発生部14から再度手動操作による移動指令が入力された(図2(A)の「逆方向へ移動」のタイミングになった)後、トルク検知部17の検出値が前述の予め定めた値よりも小さくなった後(フラグ1が0になった)後、所定時間[図2(B)のγ秒参照]が経過するまで(時間T2)は、アラーム信号[図2(C)のエラーフラグ]を出力し続ける。なお「逆方向への移動」をする移動指令が入力されても衝突状態から徐々にトルクが0になっていくため、直ちに制限値×α%が0になることはない。そしてアラーム信号が出力されている間は、アラーム25は音、画像等により作業者に警告を発生する。なおγ秒の待ち時間T2を設定するのは、作業者の退避操作が誤っている場合に、作業者に退避操作のやり直しをするチャンスを与えるためである。すなわち衝突によって引抜方向のトルクが高い状態にあるときには、引抜方向のトルクが0になる方向に上下フレーム5を移動させる必要がある。しかし作業者が上下方向に上下フレーム5を移動させる手動操作をすると、取出ヘッド3を強い力で被衝突物に押しつけた状態で上限方向に移動させて、取出ヘッド3を壊してしまうことがある。そこで作業者に正しい判断をするのに必要な時間を提供するために、γ秒の待ち時間T2を設定している。
【0022】
偏差クリア部21は、衝突検知部19から動作停止指令が出力されたときに、サーボモータのサーボ系制御部13のオン状態を維持し図2(B)に示すようにトルクを保持した状態で、サーボ系制御部13内で演算した偏差を0にする偏差クリア動作を行う。本実施の形態では、偏差クリア部21は、図2(D)に示すように、再度手動操作による移動指令[図2(A)参照]が入力されると、再度クリア動作を行う[図2(D)参照]。
【0023】
本実施の形態の制御装置によれば、衝突検知部19から動作停止指令が出力されたときに、偏差クリア部21がサーボ系制御部のオン状態を維持してトルクを保持した状態で図2(B)参照]、サーボ系制御部中の偏差を0にするクリア動作を行うため、偏差が0となることにより位置決め完了が確定して、再度手動指令に対応した運転が可能となる。偏差が0になっていないと、退避動作のための手動指令に先立って偏差分の動作をすることになる。この動作が、取出ヘッド3を損傷させる虞れがあるが、本実施の形態では、このような問題は発生しない。本実施の形態では、動作停止後に、脱却操作をするときには、入力部23からの操作指令通りにサーボモータ9を動作させて、上下フレーム5(取出ヘッド3)を動かすことができて、衝突状態からスムーズに退避することができる。
【0024】
図4は、衝突検知時の実際の動作フローである。ステップST1では、トルク値が所定の値(制限値×α%)より大きいか否かが判定される。Noの場合にはステップST2で手動操作が実行され、ステップST3でサーボモータ9を駆動して軸を移動させる。そしてステップST4では、トルク値が所定の値(制限値×α%)より大きいか否かが再度判定され、Yesの場合には、ステップST5へと進んでタイマの時間T1が0であるかを判定し、YesであればステップST6でタイマの計数を開始してステップST7へと進む。またステップST5でNoの場合にもステップST7へと進んで、タイマは計数を継続する。次にステップST8で、タイマ時間T1がβであるか否かの判定がなされ、βであればステップST9へと進み、NoであればステップST1に戻る。ステップST4でNoであれば、ステップST41へと進み。タイマ時間T1が0であるか否かの判定が行われ、NoであればステップST42でタイマをオフにしてステップST43でタイマ時間T1を0にしてステップST2に戻る。ステップST41でYesの場合にもステップST2に戻る。ステップST8でタイマ時間T1がβになったことが判定されると、ステップST9でエラーフラグがONとなりステップST10で停止処理が実行される。その後ステップST11で偏差がクリアされ、ステップST12でアラームとしてエラーポップアップ(エラー表示)が出され、ステップST13でアラームとしてブザーが発報される。その後ステップST14でタイマのオフ動作が行われてステップST15でタイマ時間T1が0になる。上記の動作により、衝突が検知された後サーボ系制御部がオン状態を維持してトルクを保持した状態で偏差がリセットされる。
【0025】
図5は衝突退避時の動作フローである。この例では開始時にトルク値が制限値×α%より大きい場合に衝突退避を行う。ステップST21でトルク値が制限値×α%より小さいか否かの判定がなされる。小さくない場合(大きい場合)にはステップST22へと進んで手動操作が実行され、ステップST23で偏差をクリアして動作停止指令をオフにして、ステップST24でサーボモータを駆動して軸を移動させる。その後、ステップST25で、トルク値が制限値×α%より小さいか否かの判定がなされる。トルク値が制限値×α%より小さい場合には、ステップST26へと進んでタイマ時間T2が0か否かの判定がなされる。タイマ時間T2が0の場合には、ステップST27でタイマの計数が開始される。タイマ時間T2が0でない場合にはステップST28でタイマの計数が継続される。ステップST25でトルク値が制限値×α%より小さくない場合には、ステップST251へと進んでタイマ時間T2が0か否かの判定がなされる。0であればステップST21に戻り、0でなければステップST252へと進んでタイマがオフとされ、ステップST253でタイマ時間T2を0(初期化)にしてステップST21へ戻る。ステップST28でのタイマ時間の計数で、タイマ時間がγになったか否かがステップST29で判定される。NOであればステップ21へ戻り、Yesであれば衝突退避動作のためにステップST30へと進んでエラーフラグをオフにし、ステップST31でブザーをオフにし、ステップST32でタイマ時間T2の計数をオフにして、ステップST33でタイマ時間T2を0にする(初期化する)。これにより衝突状態からの退避がなされる。
【0026】
[変形例]
トルク検知部は、取出ヘッドに種々の方向から作用するトルクの作用方向を検知できるように構成されているのが好ましい。例えばサーボモータが駆動する軸数が、5軸、6軸等の多軸の場合には、多軸のすべてのトルクを検出できるようにトルク検知部を構成すればよい。また取出ヘッドが姿勢制御装置に装着される場合には、姿勢制御装置から取出ヘッドに加わるトルクも、トルク検知部で検知できるようにすればよい。さらに手動操作をするために使用される入力部の表示部には、トルク検知部が検知するすべてのトルクの大きさに比例するトルク表示を示すのが好ましい。これらのトルク表示は、数値表示、バーグラフ表示、メータ表示な任意の表示をすることができる。また入力部の表示部のトルク表示に隣接して、退避方向を示唆する示唆表示がそれぞれ示されているのが好ましい。この示唆は、文字表示でも、マーク表示でも、またランプ表示等のいずれでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、動作停止指令が出力されたときに、偏差クリア部がサーボ系制御部のオン状態を維持してトルクを保持した状態で、サーボ系制御部中の偏差を0にするクリア動作を行うため、偏差が0となることにより位置決め完了が確定して、再度運転が可能となる。その結果、動作停止後に、退避操作をするときには、操作指令通りにサーボモータを動作させて、上下フレーム及び取出ヘッドを動かすことができて、衝突状態からスムーズに退避することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 成形品取出機
3 取出ヘッド
5 上下フレーム
7 搬送機構
9 サーボモータ
10 エンコーダ
11 制御装置
13 サーボ系制御部
14 手動指令発生部
15 ティーチングデータ取得部
17 トルク検知部
19 衝突検知部
21 偏差クリア部
23 入力部
24 表示部
25 アラーム
図1
図2
図3
図4
図5