(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】屋外受配電盤の屋根構造
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20241118BHJP
H02B 1/28 20060101ALI20241118BHJP
H02B 1/30 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
H02B3/00 D
H02B1/28 A
H02B1/30 G
H02B1/30 F
(21)【出願番号】P 2023080519
(22)【出願日】2023-05-16
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬越 和也
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-036710(JP,U)
【文献】実開昭51-052828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00-1/38
H02B 1/46-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外において複数列設される配電盤の屋根構造において、
前記配電盤は、各種機器がその内部に収容されるフレームを有し、該フレームの上部に屋根カバーが設置される構成であり、
前記屋根カバーは、両端部において上方に延在する上部プレートを有し、
前記上部プレートは、列設された複数の前記配電盤において中間に位置する場合には、隣り合う前記上部プレートとともに中間部用カバーで上方から覆われ、列設された複数の前記配電盤において端部に位置する場合には端部用カバーで上方から覆われ、
前記中間部用カバー及び端部用カバーは、ともに防水構造を有して着脱可能に構成され
、かつ、ともに前記上部プレートに貫通穴を設けることなく前記屋根カバーに固定可能に構成され、
前記上部プレートは、前記屋根カバーの一端部側で上方に延在する第1上部プレートと、前記屋根カバーの他端部側で上方に延在する第2上部プレートからなり、
前記端部用カバーは、列設された複数の前記配電盤において一端部側を覆う第1端部用カバーと、列設された複数の前記配電盤において他端部側を覆う第2端部用カバーからなり、
前記中間部用カバー及び前記第1端部用カバーは、前記第1上部プレートの内側面に設けた複数の取付座にネジ止めされることにより前記屋根カバーに固定され、
前記第2端部用カバーは、前記第2端部用カバーの内部において前記第2上部プレートの外側面に当接する位置に設けた複数の当たり部と、前記第2端部用カバーの外部から前記第2上部プレートの内側面に向かって挿入された押止用ネジの先端とで前記第2上部プレートを挟持することにより前記屋根カバーに固定されることを特徴とする配電盤の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置される受配電盤(以下、単に「配電盤」とする)の屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤の内部には、制御機器や回路機器などの各種機器が収容される。したがって、そのような配電盤を屋外に設置する場合には、雨滴などによって各種機器が影響を受けることを防止し、あるいは保守や点検の利便性を向上させるための種々の工夫がなされる。
【0003】
例えば、特許文献1では、配電盤の上面において、本体よりも前方に突出する庇を有する屋根を設けるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
ここで、そのような配電盤の屋根構造の従来例を、
図1を用いて説明する。
図1は、従来例に係る配電盤が列設された状態の正面図である。なお、配電盤(配電盤1)の基本的な構成は本発明の実施形態におけるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、複数の配電盤を連結させて並列に設置する(列設する)ことは「列盤」ともいわれる。
【0006】
図1では、三個の配電盤1が列設された状態を例示している。ここでは、右端に位置する(右側の列盤端となる)配電盤1を右端配電盤1aとし、左端に位置する(左側の列盤端となる)配電盤1を左端配電盤1cとし、配電盤1aと配電盤1cの間に位置する(列盤の中間となる)配電盤1を中間配電盤1bとして説明している。
【0007】
右端配電盤1aの上部には、右端用の屋根カバー501が設置されている。また、中間配電盤1bの上部には、中間用の屋根カバー502が設置されている。また、左端配電盤1cの上部には、左端用の屋根カバー503が設置されている。
【0008】
屋根カバー501~503は、防水構造を有し、それぞれが配電盤1a~1cのフレーム(後述の正面側フレーム2Aや背面側フレーム2B参照)の上面にボルトで固定される。また、右端配電盤1aのフレームの右側面及び左端配電盤1cのフレームの左側面(すなわち、列設された配電盤1a~1cにおける両端の外側面)には、側面化粧板(
図1では図示省略)が取り付けられる。なお、側面化粧板は、基本的に後述の側面化粧板4と同様の構成である。
【0009】
また、屋根カバー501~503は、配電盤1の正面側及び背面側のそれぞれで所定長の庇(後述の正面側庇8Aや背面側庇8B参照)が形成されるように奥行方向の長さが設定されているとともに、配電盤1の正面側から背面側に向かって下り傾斜を有する形状となっている(後述の
図4参照)。
【0010】
中間用の屋根カバー502は、隣り合う他の配電盤1の屋根カバー(例えば、屋根カバー501や屋根カバー503)に干渉しないように、その幅方向の長さが配電盤1の幅方向の長さと同じ(ないし略同じ)となるように設定されている。また、その左右端部(両端部)には、上方に延在する上部プレート(
図1では図示省略)が設けられている。なお、屋根カバー502は、基本的に後述の屋根カバー5と同様の構成である。
【0011】
右端用の屋根カバー501は、右端配電盤1aの左端側(すなわち、
図1において中間配電盤1bと隣り合う側)は屋根カバー502と同様の構成であるが、右端側は屋根カバー502とは異なる構成となっており、上部プレートは設けられておらず、フレームの右側面端から所定長(例えば、30mm程度)突出する突出部(符号省略)が設けられている。なお、右端配電盤1aの右側面に取り付けられた側面化粧板は、その上部がフレームの上面端を越えて所定長(例えば、50mm程度)上方に延在する構成であり、その延在した上部が屋根カバー501の突出部によって覆われる。これにより、右端配電盤1aにおいて、その屋根部分とフレーム部分の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している。
【0012】
左端用の屋根カバー503は、左端配電盤1cの右端側(すなわち、
図1において中間配電盤1bと隣り合う側)は屋根カバー502と同様の構成であるが、左端側は屋根カバー502とは異なる構成となっており、上部プレートは設けられておらず、フレームの左側面端から所定長(例えば、30mm程度)突出する突出部(符号省略)が設けられている。なお、左端配電盤1cの左側面に取り付けられた側面化粧板は、その上部がフレームの上面端を越えて所定長(例えば、50mm程度)上方に延在する構成であり、その延在した上部が屋根カバー503の突出部によって覆われる。これにより、左端配電盤1cにおいて、その屋根部分とフレーム部分の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している。
【0013】
各屋根カバーの隣り合う上部プレート(例えば、
図1において、屋根カバー501の左端部側の上部プレートと屋根カバー502の右端部側の上部プレート、及び屋根カバー502の左端部側の上部プレートと屋根カバー503の右端部側の上部プレート)は、中間部用カバー6によってともに被覆される。これにより、列設された配電盤1間(例えば、
図1において、右端配電盤1a・中間配電盤1bの間、及び中間配電盤1b・左端配電盤1cの間)の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している。なお、中間部用カバー6の基本的な構成は本発明の実施形態におけるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述の従来例で配電盤1を増設しようとする場合(すなわち、列設させる配電盤1を増加させる場合)には、増設したい端側にある配電盤1の屋根カバーを、中間用の屋根カバーに交換する必要が生じる。
【0015】
ここで、
図1において、配電盤1cのさらに左側に配電盤1を増設する場合を例に挙げて説明する。この場合、まず、配電盤1b上の屋根カバー502と配電盤1c上の屋根カバー503との間を被覆する中間部用カバー6を取り外す。次いで、配電盤1c上の屋根カバー503を取り外し(配電盤1c左側面の側面化粧板も取り外して)、新たに屋根カバー502を設置する。次いで、増設する配電盤1を設置し(該配電盤1の左側面に側面化粧板を取り付けて)、該配電盤1上に屋根カバー503を設置する。最後に、配電盤1b上の屋根カバー502と配電盤1c上の屋根カバー502との間に中間部用カバー6を取り付けるとともに、配電盤1c上の屋根カバー502と増設した配電盤1上の屋根カバー503との間に中間部用カバー6を取り付けるといった作業が必要となる。
【0016】
なお、屋根カバーを交換する際には、既設の配電盤を現場で分解し、クレーンや門型を組んでチェンブロックで釣り上げるなどの作業が必要となる。このため、増設工事が大掛かりになり、配電盤を増設する対応が容易に行えないという問題があった。
【0017】
また、従来例では、防水性の確保などを目的として、両端用の屋根カバー(屋根カバー501や屋根カバー503)を、中間用の屋根カバー(屋根カバー502)とは異なる構成としているため、設計や製造にかかるコストが増大してしまうという問題もあった。
【0018】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、配電盤の防水性を確保しながらも増設する対応を容易とし、かつ、そのコストも低減することができる配電盤の屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る配電盤の屋根構造は、屋外において複数列設される配電盤(例えば、後述の配電盤1)の屋根構造において、前記配電盤は、各種機器がその内部に収容されるフレーム(例えば、後述の正面側フレーム2A及び背面側フレーム2B)を有し、該フレームの上部に屋根カバー(例えば、後述の屋根カバー5)が設置される構成であり、前記屋根カバーは、両端部において上方に延在する上部プレート(例えば、後述の上部プレート53,54)を有し、前記上部プレートは、列設された複数の前記配電盤において中間に位置する場合には、隣り合う前記上部プレートとともに中間部用カバー(例えば、後述の中間部用カバー6)で上方から覆われ、列設された複数の前記配電盤において端部に位置する場合には端部用カバー(例えば、後述の端部用カバー7)で上方から覆われ、前記中間部用カバー及び端部用カバーは、ともに防水構造を有して着脱可能に構成され、かつ、ともに前記上部プレートに貫通穴を設けることなく前記屋根カバーに固定可能に構成され、前記上部プレートは、前記屋根カバーの一端部側で上方に延在する第1上部プレート(例えば、後述の上部プレート53)と、前記屋根カバーの他端部側で上方に延在する第2上部プレート(例えば、後述の上部プレート54)からなり、前記端部用カバーは、列設された複数の前記配電盤において一端部側を覆う第1端部用カバー(例えば、後述の右端部用カバー7a)と、列設された複数の前記配電盤において他端部側を覆う第2端部用カバー(例えば、後述の左端部用カバー7b)からなり、前記中間部用カバー及び前記第1端部用カバーは、前記第1上部プレートの内側面に設けた複数の取付座(例えば、後述の取付座55)にネジ止めされることにより前記屋根カバーに固定され、前記第2端部用カバーは、前記第2端部用カバーの内部において前記第2上部プレートの外側面に当接する位置に設けた複数の当たり部(例えば、後述の当たり部76)と、前記第2端部用カバーの外部から前記第2上部プレートの内側面に向かって挿入された押止用ネジ(例えば、後述のネジ74)の先端とで前記第2上部プレートを挟持することにより前記屋根カバーに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、配電盤の防水性を確保しながらも増設する対応を容易とし、かつ、そのコストも低減することができる配電盤の屋根構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来例に係る配電盤が列設された状態の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る配電盤1が列設された状態の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る配電盤1が列設された状態の背面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る配電盤1が列設された状態の右側面図である。
【
図5】(A)は、屋根カバー5の断面図(正面視)であり、(B)は、中間部用カバー6の取り付け状態を示す図である。
【
図6】(C)は、右端部用カバー7aの取り付け状態を示す図であり、(D)は、左端部用カバー7bの取り付け状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る配電盤1の増設作業に関する説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る配電盤1の増設作業に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る配電盤の屋根構造の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
[構成]
(全体構成)
本発明の実施形態に係る配電盤1は、正面側フレーム2A、背面側フレーム2B、正面側盤扉3A、背面側盤扉3B、及び側面化粧板4などを備える(
図2~
図4等参照)。なお、配電盤1の内部に収容される制御機器や回路機器などの各種機器についてはその説明を省略している。また、本発明の実施形態では、配電盤1は屋外に設置されるものとしているが、その目的に反しない限り屋内に設置されるものであってもよい。
【0024】
また、
図2及び
図3では、
図1と同様、三個の配電盤1が列設された状態を例示しており、正面側からみて右端に位置する配電盤1を右端配電盤1aとし、正面側からみて左端に位置する配電盤1を左端配電盤1cとし、配電盤1aと配電盤1cの間に位置する配電盤1を中間配電盤1bとして説明している。
【0025】
配電盤1は、正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bにより矩形の筐体として構成され、例えば、その幅は800mm、高さは2300mm、奥行は2000mm程度に設定されている(
図2~
図4参照)。また、配電盤1は、地上高150mm程度に設定されたチャンネルベース9を介してコンクリートの基礎上に固定される(
図4参照)。むろん、これらの寸法はあくまで一例にすぎない。
【0026】
正面側フレーム2Aは、鋼板を折り曲げて柱状にした部材を、ネジを用いて溶接レスで直方体に組み上げて構成され、その内部に各種機器が収容される。また、少なくとも配電盤1における正面側が開口しており、その開口に正面側盤扉3Aが取り付けられる。なお、背面側フレーム2B側は、配電盤1における正面側と同様に開口して(背面側フレーム2B内と連通して)、奥行がある機器が収容可能な構成としてもよいし、例えば、仕切り板によって仕切られて、正面側フレーム2A内に収容された各種機器と背面側フレーム2B内に収容された各種機器との配線などに必要な一部分のみが開口する構成としてもよい。
【0027】
背面側フレーム2Bは、基本的に正面側フレーム2Aと同様の構成であるが、背面側フレーム2Bでは、少なくとも配電盤1における背面側が開口しており、その開口に背面側盤扉3Bが取り付けられる。なお、配電盤1を列設する際には、一の配電盤1の各フレームと他の配電盤1の各フレームの隣り合う面がネジで強固に締結される。また、配電盤1のフレームは、正面側フレーム2Aと背面側フレーム2Bとに分割されることなく一個のフレーム(例えば、これをフレーム2とする)で構成されるものであってもよい。
【0028】
正面側盤扉3Aは、鋼板を正面側フレーム2A側に折り曲げて袋構造とした扉状の部材で構成され、正面側フレーム2Aの当たり面はパッキンが全周に配された防水構造となっている。また、一端部側(例えば、
図2では右端部側)の裏面にヒンジ(図示省略)を有するとともに、他端部側(例えば、
図2では左端部側)の表面にハンドル(符号省略)を有し、正面側フレーム2Aの開口(配電盤1の正面側)を開閉自在としている。なお、正面側盤扉3Aの厚みは40mm程度に設定されている(
図4参照)。
【0029】
背面側盤扉3Bは、基本的に正面側盤扉3Aと同様の構成であるが、背面側盤扉3Bでは、一端部側(例えば、
図3では左端部側)の裏面にヒンジ(図示省略)を有するとともに、他端部側(例えば、
図3では右端部側)の表面にハンドル(符号省略)を有し、背面側フレーム2Bの開口(配電盤1の背面側)を開閉自在としている。なお、背面側盤扉3Bの厚みは40mm程度に設定されている(
図4参照)。
【0030】
側面化粧板4は、防水構造を有し、配電盤1の両側面、あるいは配電盤1が列設される場合には両端となる配電盤1の外側面(例えば、
図2では配電盤1aの右側面、及び配電盤1cの左側面)に取り付け可能に構成され、正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bの外部露出面をふさぐ。なお、側面化粧板4は、その上部が正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bの上面端を越えて所定長(例えば、50mm程度)上方に延在する構成であり(
図4では斜線で図示)、その延在した上部は、後述の端部用カバー7によって覆われる。
【0031】
また、本発明の実施形態では、配電盤1の上部(フレームの上面)に屋根カバー5が設置される。屋根カバー5は、基本的に上述の中間用の屋根カバー502と同様の構成であり、その幅方向の長さは配電盤1の幅方向の長さと同じ(ないし略同じ)となるように設定され、配電盤1の正面側及び背面側のそれぞれで所定長の庇(正面側庇8A及び背面側庇8B)が形成されるように奥行方向の長さが設定されているとともに、配電盤1の正面側から背面側に向かって下り傾斜を有する形状となっている(
図4参照)。
【0032】
なお、本発明の実施形態では、屋根カバー5によって形成される配電盤1の正面側庇8A及び背面側庇8Bは、それぞれ配電盤1の端部から200mm程度突出する構成としている(
図4参照)。むろん、これらの寸法はあくまで一例にすぎない。例えば、配電盤1の正面側(
図4では左側)において保守や点検に必要な範囲は、配電盤1の端部から2000mm程度、配電盤1の背面側(
図4では右側)において保守や点検に必要な範囲は、配電盤1の端部から1000mm程度であることから、それを加味して庇の長さを変動させてもよい。
【0033】
また、屋根カバー5は、防水構造を有し、配電盤1のフレーム(正面側フレーム2A及び背面側フレーム2B)の上面にボルトで固定される。なお、本発明の実施形態において「防水構造を有する」とは、例えば、構造上、雨滴などの浸入経路となり得る箇所が形成されない設計とすることや、あらかじめ溶接などを行って雨滴などの浸入経路となり得る箇所をふさいでおくことのみならず、雨滴などの浸入経路となり得る箇所にコーキング剤などによる防水処理を事後的に施すことも含まれる。
【0034】
(屋根カバー5)
ここで、
図5(A)を参照して屋根カバー5の構成をさらに説明する。屋根カバー5は、上面部51、底面部52、右端部側の上部プレート53、左端部側の上部プレート54、取付座55などを備える。上面部51、底面部52、上部プレート53(及び屋根カバー5の右側面部)、上部プレート54(及び屋根カバー5の左側面部)は、屋根カバー5の内部が中空となるように鋼板で構成される。また、屋根カバー5の上面側は、上面部51、上部プレート53,54によってコの字を起こした(上向きに開口する凹状の)断面形状を有する。
【0035】
なお、屋根カバー5は、該屋根カバー5を配電盤1の正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bに固定するための固定部を備えているが、
図5(A)では図示を省略している。この固定部は、配電盤1の各フレームの上面と底面部52を、各フレーム側から固定するものであってもよいし、上面部51側から固定するものであってもよい。
【0036】
上部プレート53,54は、屋根カバー5の左右端部(両端部)において上方に延在し、右端部側の上部プレート53の内側にはナットが溶接された取付座55が所定間隔で複数設けられている。なお、本発明の実施形態では、左端部側の上部プレート54の内側には取付座55を設けない構成としているが、これを設ける構成とし、後述の左端部用カバー7bを、後述の中間部用カバー6や右端部用カバー7aと同様の手法にて取り付け可能にしてもよい。なお、本発明の実施形態では、右端部用カバー7a及び左端部用カバー7bを総称し「端部用カバー7」として説明する場合がある。
【0037】
また、本発明の実施形態では、各屋根カバー5の隣り合う上部プレート53,54(例えば、
図2において、配電盤1b上部の屋根カバー5の上部プレート53と配電盤1a上部の屋根カバー5の上部プレート54、及び配電盤1c上部の屋根カバー5の上部プレート53と配電盤1b上部の屋根カバー5の上部プレート54)は、コの字を伏せた(下向きに開口する凹状の)断面形状を有する中間部用カバー6によって被覆される。なお、中間部用カバー6は、後述の右端部用カバー7aと同様、上部プレート53,54の上方のみならず、屋根カバー5の正面側や背面側も40mm程度突出して被覆するように構成されている(
図4参照)。これにより、列設された配電盤1間(例えば、
図2において、右端配電盤1a・中間配電盤1bの間、及び中間配電盤1b・左端配電盤1cの間)の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している。
【0038】
(中間部用カバー6)
ここで、
図5(B)を参照して中間部用カバー6の構成(取り付け状態)をさらに説明する。中間部用カバー6の左側面には、取付座55と対応する各位置にネジ穴62が複数設けられており、中間部用カバー6を隣り合う上部プレート53,54の上方から被せた後、締結用のネジ61をネジ穴62から挿入して取付座55にネジ止めすることにより中間部用カバー6が取り付けられる。
【0039】
(端部用カバー7)
また、本発明の実施形態では、右端配電盤1a上の屋根カバー5の右端部側の上部プレート53は、右端部用カバー7aによって被覆される。なお、右端部用カバー7aは、上部プレート53の上方のみならず、屋根カバー5の正面側や背面側も40mm程度突出して被覆するように構成されている(
図4参照)。ここで、
図6(C)を参照して右端部用カバー7aの構成(取り付け状態)をさらに説明する。
【0040】
右端部用カバー7aは、コの字を伏せた(下向きに開口する凹状の)断面形状であり、右端部用カバー7aの左側面には、取付座55と対応する各位置にネジ穴71aが複数設けられ、右端部用カバー7aを上部プレート53の上方から被せた後、締結用のネジ61をネジ穴71aから挿入して取付座55にネジ止めすることにより取り付けられる点は基本的に中間部用カバー6と同様であるが、右端部用カバー7aの右側面には、正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bの上面端を越えて上方に延在された側面化粧板4の上部を覆う垂れ部72aが設けられる点において異なる構成となっている。
【0041】
すなわち、列設された配電盤1a~1cの右端部側では、屋根部分とフレーム部分の合わせ目(屋根カバー5の底面部52と、正面側フレーム2A及び背面側フレーム2Bの上面との間)が側面化粧板4の上部(延在させた部分)によって覆われ、さらにその側面化粧板4の上部が右端部用カバー7aによって上方から覆われるように構成されている。これにより、右端配電盤1aの右端側において、屋根部分とフレーム部分の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している。なお、垂れ部72aには、さらに所定位置にL字アングル73aが設けられ、その防水効果を高めている。
【0042】
また、本発明の実施形態では、左端配電盤1c上の屋根カバー5の左端部側の上部プレート54は、左端部用カバー7bによって被覆される。なお、左端部用カバー7bは、上述の右端部用カバー7aと同様、上部プレート54の上方のみならず、屋根カバー5の正面側や背面側も40mm程度突出して被覆するように構成されている(
図4参照)。ここで、
図6(D)を参照して左端部用カバー7bの構成(取り付け状態)をさらに説明する。
【0043】
左端部用カバー7bは、コの字を伏せた(下向きに開口する凹状の)断面形状であって、その左側面において、側面化粧板4の上部を覆う垂れ部72bが設けられ(また該垂れ部72bにはL字アングル73bが設けられ)、これにより、左端配電盤1cの左端側(列設された配電盤1a~1cの左端部側)において、屋根部分とフレーム部分の合わせ目に雨滴などが浸入することを防止している点は基本的に右端部用カバー7aと同様である。
【0044】
もっとも、屋根カバー5の上部プレート54には取付座55を設けない構成としているので(
図5(A)参照)、左端部用カバー7bは右端部用カバー7aとは異なる手法で取り付けられる。なお、上述の如く、上部プレート54の内側にも取付座55を設けるようにし、左端部用カバー7bを右端部用カバー7aと同様に(勝手違いに)構成して取り付けられるものとしてもよい。また、上部プレート53の内側にも取付座55を設けないようにし、右端部用カバー7aを左端部用カバー7bと同様に(勝手違いに)構成して取り付けられるものとしてもよい。すなわち、右端部用カバー7a及び左端部用カバー7bは、左右対称となる端部用カバー7として構成されるものであってもよい。
【0045】
左端部用カバー7bの右側面には、所定間隔で複数のネジ穴71bが設けられる。また、その内側には各ネジ穴71bに対応する位置に複数のナット75が溶接で取り付けられる。また、左端部用カバー7bの左側面の内側には、各ナット75に対応する対向位置に複数の当たり部76が溶接で取り付けられる。左端部用カバー7bを上部プレート54の上方から被せ、押止用のネジ74をネジ穴71bから挿入してナット75に螺嵌していくと、ネジ74の先端と当たり部76とによって上部プレート54の当接面が挟持され、固定される。
【0046】
[作用]
上記のように構成された配電盤1の屋根構造の作用を、
図7及び
図8を用いて説明する。なお、
図7及び
図8では、一個の配電盤1(配電盤1a)が設置された状態から、さらに一個の配電盤1(配電盤1b)を増設する際の作業工程の一例を示している。
【0047】
図7(1)では、屋根カバー5が設置され、屋根カバー5の上部プレート53に右端部用カバー7aが取り付けられ、屋根カバー5の上部プレート54に左端部用カバー7bが取り付けられた配電盤1aが設置された状態を示している。
【0048】
配電盤1aの左側に配電盤1bを増設する場合、まず、配電盤1aの屋根カバー5に取り付けられた左端部用カバー7bを取り外す。具体的には、ネジ穴71bから挿入されていたネジ74を押止方向とは逆方向に回し、上部プレート54を、ネジ74の先端と当たり部76との挟持から解放する(
図6(D)参照)。なお、図示は省略しているが、配電盤1aの左側面に取り付けられていた側面化粧板4も取り外される。
【0049】
次いで、
図7(2)に示すように、配電盤1aの左側に配電盤1bを設置した後、これらのフレーム同士を連結する。なお、図示は省略しているが、配電盤1bの左側面には側面化粧板4が取り付けられる。次いで、
図8(3)に示すように、配電盤1aの屋根カバー5と配電盤1bの屋根カバー5との合わせ目に中間部用カバー6を取り付ける。具体的には、中間部用カバー6の左側面に設けられたネジ穴62にネジ61を挿入し、ネジ61を締結方向に回して配電盤1bの屋根カバー5の上部プレート53に設けられた取付座55に締結する(
図5(B)参照)。
【0050】
最後に、
図8(4)に示すように、配電盤1bの屋根カバー5に左端部用カバー7bを取り付ける。具体的には、左端部用カバー7bの右側面に設けられたネジ穴71bからネジ74を挿入し、ネジ74の先端と当たり部76とによって配電盤1b左端側の上部プレート54が挟持されて固定されるまでネジ74を押止方向に回す(
図6(D)参照)。なお、
図8(3)の作業工程と
図8(4)の作業工程はその順序が逆であってもよい。
【0051】
ここで、図示は省略しているが、例えば、既設の配電盤1の右側に配電盤1を増設する場合の、右端部用カバー7aの取り外し及び取り付け作業についても説明する。右端部用カバー7aを取り外す場合には、ネジ穴71aから挿入されていたネジ61を締結方向とは逆方向に回し、取付座55との締結を解除する(
図6(C)参照)。また、右端部用カバー7aを取り付ける場合には、ネジ穴71aにネジ61を挿入し、ネジ61を締結方向に回して取付座55に締結する(
図6(C)参照)。
【0052】
本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、配電盤1を増設する際、右端部用カバー7aや左端部用カバー7bを中間部用カバー6に交換する作業を行えばよく(むろん、列設した配電盤1を撤去する際にはその逆の作業を行えばよく)、屋根カバー5を交換する作業が必要ない。すなわち、大掛かりな増設工事は不要となる。また、これに加え、配電盤1がどこに列設されるものであっても屋根カバー5の構成を共通化することできる。
【0053】
また、上述の如く、中間部用カバー6は、その左側面のネジ穴62からネジ61を挿入し、上部プレート53の左側面に設けられた取付座55にネジ止めすれば屋根カバー5への固定が可能となっている(
図5(B)参照)。また、右端部用カバー7aは、その左側面のネジ穴71aからネジ61を挿入し、上部プレート53の左側面に設けられた取付座55にネジ止めすれば屋根カバー5への固定が可能となっている(
図6(C)参照)。また、左端部用カバー7bは、その右側面のネジ穴71bからネジ74を挿入してナット75に螺嵌させ、ネジ74の先端と当たり部76とによって上部プレート54を挟持すれば屋根カバー5への固定が可能となっている(
図6(D)参照)。すなわち、上部プレート53,54自体に貫通穴(貫通部)を設けることなくそれらの固定が可能となっている。したがって、そのような貫通穴から雨滴などが浸入することを防止できるし、防水処理を簡素化することもできるようになる。
【0054】
さらに、中間部用カバー6、右端部用カバー7a、及び左端部用カバー7bのいずれもがネジ止めするだけで既定位置に設置できるので、増設時に現場で調整作業を行う必要も生じにくくなる。
【0055】
なお、本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、正面側から背面側に向かって下り傾斜を有する屋根カバー5の上面部51と、中間部用カバー6の側面と、右端部用カバー7aの垂れ部72aが設けられていない側面又は左端部用カバー7bの垂れ部72bが設けられていない側面とで、屋根カバー5上の雨滴を後方に排出する樋部が形成されることとなる。
【0056】
この点、
図1で説明した従来例では、中間用の屋根カバー502上の雨滴は後方に排出され得るものの、右端用の屋根カバー501や左端用の屋根カバー503上の雨滴は後方のみならず、それぞれ右方や左方にも排出され得るため、水たまりの発生箇所が増加して浸水リスクが高まる、あるいは排水路を背面側以外にも設ける必要があるなどといった問題が生じていたが、本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、そのような問題は生じなくなる。
【0057】
[効果]
ここまで説明したように、本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、屋根カバー5の両端部において上方に延在する上部プレート53及び上部プレート54は、列設された複数の配電盤1において中間に位置する場合には、隣り合う上部プレート54又は上部プレート53とともに中間部用カバー6で上方から覆われ、列設された複数の配電盤1において端部に位置する場合には端部用カバー7で上方から覆われ、中間部用カバー6及び端部用カバー7は、ともに防水構造を有して着脱可能に構成される。これにより、配電盤1の防水性を確保しながらも増設する対応を容易とし、かつ、そのコストも低減することができる。
【0058】
また、本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、中間部用カバー6及び端部用カバー7は、ともに上部プレート53,54に貫通穴を設けることなく屋根カバー5に固定可能に構成される。これにより、配電盤1の防水性や増設時の作業効率をさらに高めることができるため、上述の効果をより顕著なものとすることができる。
【0059】
また、本発明の実施形態に係る配電盤1の屋根構造では、屋根カバー5は、配電盤1の正面側から背面側に向かって下り傾斜を有する形状であり、屋根カバー5と、中間部用カバー6と、端部用カバー7とで屋根カバー5上の雨滴を後方に排出する樋部が形成される。これにより、配電盤1の排水性などをさらに高めることができるため、上述の効果をより顕著なものとすることができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…配電盤、2A…正面側フレーム、2B…背面側フレーム、3A…正面側盤扉、3B…背面側盤扉、4…側面化粧板、5…屋根カバー、6…中間部用カバー、7…端部用カバー、7a…右端部用カバー、7b…左端部用カバー、8A…正面側庇、8B…背面側庇、9…チャンネルベース、51…上面部、52…底面部、53,54…上部プレート、55…取付座、61…ネジ、62,71a,71b…ネジ穴、72a,72b…垂れ部、73a,73b…L字アングル、74…ネジ、75…ナット、76…当たり部、501,502,503…屋根カバー
【要約】
【課題】配電盤の防水性を確保しながらも増設する対応を容易とし、かつ、そのコストも低減することができる配電盤の屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根カバー5の両端部において上方に延在する上部プレート53及び上部プレート54は、列設された複数の配電盤1において中間に位置する場合には、隣り合う上部プレート54又は上部プレート53とともに中間部用カバー6で上方から覆われ、列設された複数の配電盤1において端部に位置する場合には端部用カバー7で上方から覆われ、中間部用カバー6及び端部用カバー7は、ともに防水構造を有して着脱可能に構成される。
【選択図】
図2