(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】過給機並びに過給機の組立方法
(51)【国際特許分類】
F16C 17/02 20060101AFI20241118BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20241118BHJP
F16C 23/04 20060101ALI20241118BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20241118BHJP
F02B 39/14 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C17/04 Z
F16C23/04 Z
F16C23/04 B
F02B39/00 J
F02B39/00 L
F02B39/14 B
F02B39/14 C
F02B39/00 T
(21)【出願番号】P 2019024518
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】白川 太陽
(72)【発明者】
【氏名】和田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 幸博
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲也
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-077530(JP,A)
【文献】実開昭58-090327(JP,U)
【文献】特開平07-217441(JP,A)
【文献】特開2005-030382(JP,A)
【文献】特開昭63-076913(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103004(WO,A1)
【文献】特開2009-174358(JP,A)
【文献】特開2014-149058(JP,A)
【文献】実開昭62-143819(JP,U)
【文献】実開昭62-143818(JP,U)
【文献】実開昭61-202649(JP,U)
【文献】実開昭61-202648(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/02
F16C 17/04
F16C 23/04
F02B 39/00
F02B 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線回りに回転する回転軸の外周を包囲するように設けられ、該回転軸と共に回転するスリーブと、
前記スリーブの前記中心軸線方向における両端に対して当接するようにそれぞれ設けられ、前記スリーブよりも大径とされ、前記回転軸とともに回転するカラーと、
前記スリーブの外周側でかつ各前記カラーの間に配置された1つの軸受であり、前記スリーブを介して前記回転軸のラジアル方向を支持するジャーナル軸受とされるとともに、前記カラーを介して前記回転軸のスラスト方向を支持するスラスト軸受とされている軸受構造と、
羽根車と、
前記羽根車が取り付けられ、小径部と、大径部と、該小径部と該大径部とを接続する段差部とを備えた回転軸と、
前記大径部に設けられた大
径部側ジャーナル軸受と、
を備え、
前記スリーブ及び各前記カラーは、前記小径部に設けられ、
前記大径部側の前記カラーは、前記段差部に当接するように設けられ、
前記軸受構造は、前記回転軸を支持し、
前記スリーブの外径は、前記大径部の外
径と同じとされ、
前記
1つの軸受の内径は、前記大
径部側ジャーナル軸受の内径と同じとされている過給機。
【請求項2】
前記
1つの軸受の前記中心軸線方向における両端部には、油溝が形成されている請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記
1つの軸受には、下流側が該
1つの軸受の内周側に開口する潤滑油供給穴が形成されている請求項1又は2に記載の過給機。
【請求項4】
前記小径部側の前記回転軸の端部に取り付けられ、各前記カラー及び前記スリーブを前記段差部側に向けて押圧する固定具を備えている請求項1に記載の過給機。
【請求項5】
羽根車と、
前記羽根車が取り付けられ、中心軸線回りに回転する回転軸と、
前記回転軸を軸支する軸受構造と、
を備えた過給機の組立方法であって、
前記回転軸は、小径部と、大
径部側ジャーナル軸受が設けられた大径部と、該小径部と該大径部とを接続する段差部とを備え、
前記軸受構造は、前記回転軸の外周を包囲するスリーブと、前記スリーブの前記中心軸線方向における両端に対して当接するようにそれぞれ設けられ、前記スリーブよりも大径とされたカラーと、前記スリーブの外周側でかつ各前記カラーの間に配置された軸受と、
を備え、
前記軸受は、1つの軸受であり、前記スリーブを介して前記回転軸のラジアル方向を支持するジャーナル軸受とされるとともに、前記カラーを介して前記回転軸のスラスト方向を支持するスラスト軸受とされ、
前記小径部に対して、前記カラー及び前記スリーブを挿入するとともに、両前記カラー間に前記軸受を配置する配置工程と、
一方の前記カラーを前記段差部に当接させる当接工程と、
前記小径部に対して固定具を固定することによって、前記羽根車、前記カラー及び前記スリーブを前記段差部に押し込んで固定する固定工程と、
を有し、
前記スリーブ及び各前記カラーは、前記小径部に設けられ、
前記大径部側の前記カラーは、前記段差部に当接するように設けられ、
前記スリーブの外径は、前記大径部の外径と同じとされ、
前記軸受の内径は、前記大
径部側ジャーナル軸受の内径と同じとされている過給機の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機並びに過給機の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば船舶等に用いられるディーゼルエンジンには、燃焼用空気を供給するための過給機が用いられる(特許文献1参照)。過給機は、環境規制の高まりから、性能向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された過給機は、羽根車を回転させる回転軸を支持する軸受として、ジャーナル軸受とスラスト軸受とをそれぞれ別個に備えている。
しかし、ジャーナル軸受とスラスト軸受をそれぞれ別個に備える構成とすると、部品点数が多くなり、小型化に対する妨げとなっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、少ない部品点数で回転軸を支持することができる過給機並びに過給機の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る過給機は、中心軸線回りに回転する回転軸の外周を包囲するように設けられ、該回転軸と共に回転するスリーブと、前記スリーブの前記中心軸線方向における両端に対して当接するようにそれぞれ設けられ、前記スリーブよりも大径とされ、前記回転軸とともに回転するカラーと、前記スリーブの外周側でかつ各前記カラーの間に配置された1つの軸受であり、前記スリーブを介して前記回転軸のラジアル方向を支持するジャーナル軸受とされるとともに、前記カラーを介して前記回転軸のスラスト方向を支持するスラスト軸受とされている軸受構造と、羽根車と、前記羽根車が取り付けられ、小径部と、大径部と、該小径部と該大径部とを接続する段差部とを備えた回転軸と、前記大径部に設けられた大径部側ジャーナル軸受と、を備え、前記スリーブ及び各前記カラーは、前記小径部に設けられ、前記大径部側の前記カラーは、前記段差部に当接するように設けられ、前記軸受構造は、前記回転軸を支持し、前記スリーブの外径は、前記大径部の外径と同じとされ、前記1つの軸受の内径は、前記大径部側ジャーナル軸受の内径と同じとされている。
【0007】
回転軸とともに回転するスリーブと、スリーブの両端に当接するように回転軸と共に回転するカラーを設けた。そして、スリーブの外周側でかつ両カラー間に挟まれるように軸受を設けることとした。これにより、軸受は、スリーブを介して回転軸のラジアル方向を支持することができ、かつ、カラーを介して回転軸のスラスト方向を支持することができる。これにより、1つの軸受でジャーナル軸受とスラスト軸受の機能を持たせることができるので、部品点数を低減でき、また小型化を実現することができる。
また、スリーブによってカラー間の距離が決まるので、中心軸線方向における軸受とカラーとの間のスラスト隙間を適切に管理することができる。
スリーブの外径を大径部と同じとすることによって、軸受の内径と、ジャーナル軸受の内径とを同等とすることができる。これにより、軸受とジャーナル軸受の内径を共通で管理することができる。
【0008】
さらに、本発明の一態様に係る過給機では、前記1つの軸受の前記中心軸線方向における両端部には、油溝が形成されている。
【0009】
軸受の両端部に油溝を形成することとした。これにより、潤滑油が軸受の両端部に導かれることで軸受の両端部をスラストパッドとして用いることができる。したがって、軸受とは別の部品としてスラストパッドを設ける必要がないので、部品点数を低減することができる。
【0010】
さらに、本発明の一態様に係る過給機では、前記1つの軸受には、下流側が該1つの軸受の内周側に開口する潤滑油供給穴が形成されている。
【0011】
下流側が軸受の内周側に開口する潤滑油供給穴が形成されているので、潤滑油は軸受の内周側に流出した後に、軸受の内周とスリーブの外周との間のラジアル隙間を通り、その後に軸受の端部とカラーとの間のスラスト隙間を流れる。このように、潤滑油はラジアル隙間を通過しながら摩擦熱によって加熱されて粘度が低下した後に、スラスト隙間を流れることになる。このように温度上昇により潤滑油の粘度を下げることで、スラスト隙間で生じる機械損失を低減することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る過給機は、前記小径部側の前記回転軸の端部に取り付けられ、各前記カラー及び前記スリーブを前記段差部側に向けて押圧する固定具を備えている。
【0013】
回転軸の小径部に取り付けられた固定具によって、カラー及びスリーブを回転軸の段差部側に向けて押圧することとした。これにより、カラー及びスリーブが回転軸と一体に回転するように固定される。
また、固定具と段差部との間で、回転軸の小径部に張力がかかることになる。小径部は大径部に比べて弾性変形による伸びが大きいので、カラー及びスリーブに対して締め代(伸び代)を大きくでき、締付のロバスト性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る過給機の組立方法は、羽根車と、前記羽根車が取り付けられ、中心軸線回りに回転する回転軸と、前記回転軸を軸支する軸受構造と、を備えた過給機の組立方法であって、前記回転軸は、小径部と、大径部側ジャーナル軸受が設けられた大径部と、該小径部と該大径部とを接続する段差部とを備え、前記軸受構造は、前記回転軸の外周を包囲するスリーブと、前記スリーブの前記中心軸線方向における両端に対して当接するようにそれぞれ設けられ、前記スリーブよりも大径とされたカラーと、前記スリーブの外周側でかつ各前記カラーの間に配置された軸受と、を備え、前記軸受は、1つの軸受であり、前記スリーブを介して前記回転軸のラジアル方向を支持するジャーナル軸受とされるとともに、前記カラーを介して前記回転軸のスラスト方向を支持するスラスト軸受とされ、前記小径部に対して、前記カラー及び前記スリーブを挿入するとともに、両前記カラー間に前記軸受を配置する配置工程と、一方の前記カラーを前記段差部に当接させる当接工程と、前記小径部に対して固定具を固定することによって、前記羽根車、前記カラー及び前記スリーブを前記段差部に押し込んで固定する固定工程と、を有し、前記スリーブ及び各前記カラーは、前記小径部に設けられ、前記大径部側の前記カラーは、前記段差部に当接するように設けられ、前記スリーブの外径は、前記大径部の外径と同じとされ、前記軸受の内径は、前記大径部側ジャーナル軸受の内径と同じとされている。
【0017】
回転軸の小径部に取り付けられた固定具によって、カラー及びスリーブを回転軸の段差部側に向けて押圧することとした。これにより、カラー及びスリーブが回転軸と一体に回転するように固定される。
また、固定具と段差部との間で、回転軸の小径部に張力がかかることになる。小径部は大径部に比べて弾性変形による伸びが大きいので、カラー及びスリーブに対して締め代(伸び代)を大きくでき、締付のロバスト性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
軸受でラジアルとスラストの両方を支持することとしたので、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る過給機を示した縦断面図である。
【
図2】
図1のコンプレッサ側ジャーナル軸受の周りを示した概略縦断面図である。
【
図3】変形例を示した
図2に対応する概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、排気タービン過給機とされた過給機1は、例えば船舶の主機とされたディーゼルエンジンに用いられる。過給機1は、タービン2と、コンプレッサ3と、回転軸4と、これらを収容するハウジング5とを備えている。なお、過給機1は、主機に限らず補機に用いても良い。
【0021】
ハウジング5は、内部が中空に形成され、タービン2を収容するタービンハウジング5aと、コンプレッサ3を収容するコンプレッサハウジング5bと、回転軸4を収容する軸受ハウジング5cとを有している。軸受ハウジング5cは、タービンハウジング5aとコンプレッサハウジング5bとの間に位置している。
【0022】
回転軸4の中心軸線CL方向における一端部(
図1において右端部)には、タービン2のタービンホイール14が固定されている。タービンホイール14には、複数のタービン翼15が周方向に所定間隔で設けられている。回転軸4の中心軸線CL方向における他端部(
図1において左端部)には、コンプレッサ3のコンプレッサ羽根車16が固定されている。コンプレッサ羽根車16には、複数のブレード17が周方向に所定間隔で設けられている。
【0023】
回転軸4は、タービン2側でタービン側ジャーナル軸受11によって中心軸線CL回りに回転自在に支持され、コンプレッサ3側でコンプレッサ側ジャーナル軸受(軸受)12により中心軸線CL回りに回転自在に支持されている。コンプレッサ側ジャーナル軸受12は、後述するようにスラスト軸受としての機能も有している。
【0024】
タービンハウジング5aには、タービン翼15に対する排ガスの入口通路21と排ガスの出口通路22が設けられている。ディーゼルエンジンの排ガスが入口通路21から導かれてタービン翼15を通過する際に排ガスのエネルギーがタービン2の回転エネルギーに変換され、回転軸4が中心軸線CL回りに回転する。
【0025】
コンプレッサハウジング5bには、コンプレッサ羽根車16に対する空気の吸入口24と、圧縮空気を吐出する吐出口25とが設けられている。タービン2によって得られた回転動力によってコンプレッサ羽根車16が回転し、吸入口24から吸入された空気がコンプレッサ羽根車16のブレード17を通過する際に圧縮される。コンプレッサ3によって圧縮された圧縮空気は、吐出口25からディーゼルエンジンに燃焼用空気として導かれる。
【0026】
軸受ハウジング5cには、軸受11,12等の各所へ潤滑油を供給する潤滑油供給経路30が設けられている。潤滑油供給経路30のタービン側潤滑油供給経路30aは、タービン側ジャーナル軸受11の外周側に接続されている。コンプレッサ側潤滑油供給経路30bは、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の外周側に接続されている。
【0027】
<軸受構造>
次に、コンプレッサ側ジャーナル軸受12周りの軸受構造について説明する。
回転軸4は、タービン2側の大径部4aと、コンプレッサ3側の小径部4bとを備えている。大径部4aと小径部4bとは、段差部4cによって接続されている。段差部4cは、中心軸線CLに直交する面を備えている。
【0028】
コンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周側には、円筒スリーブ(スリーブ)32が設けられている。円筒スリーブ32は、円筒形状とされ、回転軸4の小径部4bを包囲するように挿入されている。円筒スリーブ32の外周とコンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周との間にはラジアル隙間が形成されており、このラジアル隙間に潤滑油が導かれて回転軸4のラジアル方向が支持されるようになっている。
【0029】
コンプレッサ側ジャーナル軸受12の両側には、スラストカラー(カラー)34a,34bがそれぞれ設けられている。各スラストカラー34a,34bは、円板形状とされており、各スラストカラー34a,34bの中心を貫通するように回転軸4の小径部4bが挿入されている。各スラストカラー34a,34bの外径は、円筒スリーブ32の外径よりも大きい。すなわち、円筒スリーブ32の両端に各スラストカラー34a,34bが径方向に突出した状態とされている。各スラストカラー34a,34bの端面は、円筒スリーブ32の両端に対してそれぞれ当接している。
【0030】
円筒スリーブ32の中心軸線CL方向の寸法は、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の中心軸線CL方向の寸法よりも大きい。このため、円筒スリーブ32よりも中心軸線CL方向の寸法が短いコンプレッサ側ジャーナル軸受12と各スラストカラー34a,34bとの間には、所定のスラスト隙間が形成されている。このスラスト隙間に潤滑油が導かれて、回転軸4のスラスト方向が支持されるようになっている。
【0031】
円筒スリーブ32と両側のスラストカラー34a,34bとで囲まれた領域に位置するように、コンプレッサ側ジャーナル軸受12が配置されている。コンプレッサ側ジャーナル軸受12は、軸受ハウジング5c側に周方向の回動を制限するように保持されている。
【0032】
コンプレッサ側ジャーナル軸受12の両端部には、各スラストカラー34a,34bと対向する面に、油溝(図示せず)が形成されている。油溝は、所定間隔を空けて周方向に複数設けられている。これら油溝に潤滑油が貯留されて液膜を形成することによって、スラストカラー34a,34bからコンプレッサ側ジャーナル軸受12に加わるスラスト力が支持されるようになっている。このように、コンプレッサ側ジャーナル軸受12は、両端部に油溝を備えることによってスラストパッドの機能も備えている。
【0033】
タービン2側のスラストカラー34aのタービン2側の側端面は、回転軸4の段差部4cに当接している。すなわち、タービン2側のスラストカラー34aは、段差部4cに突き当たって中心軸線CL方向のタービン2側にはそれ以上は移動できないようになっている。
【0034】
コンプレッサ3側のスラストカラー34bのコンプレッサ3側の側部は、中間スリーブ36の端部に当接している。中間スリーブ36は、円筒形状とされ、回転軸4を包囲するように配置されている。中間スリーブ36のコンプレッサ3側の端部は、コンプレッサ羽根車16の端部に当接している。
【0035】
コンプレッサ羽根車16の先端側(吸入側)には、固定ナット(固定具)38が設けられている。固定ナット38は、回転軸4の小径部4bの先端(
図1において左端)に形成された雄ネジに対して螺合される。固定ナット38を締め付けることにより、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、スラストカラー34b、円筒スリーブ32及びスラストカラー34aを順に回転軸4の段差部4cに対して押し込むようになっている。このように固定ナット38を締め付けることによって、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、スラストカラー34b、円筒スリーブ32及びスラストカラー34aを回転軸4と一体化している。これにより、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、円筒スリーブ32及びスラストカラー34a,34bは、回転軸4とともに回転するようになっている。
【0036】
図2には、上述したような、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、スラストカラー34b、円筒スリーブ32及びスラストカラー34aの位置関係が簡略化して示されている。
【0037】
円筒スリーブ32の外径は、回転軸4の大径部4aの外径と同等とされていることが好ましい。これにより、大径部4aを軸支するタービン側ジャーナル軸受11の内径と、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の内径とを同等とすることができる。
【0038】
図2には、コンプレッサ側潤滑油供給経路30b(
図1参照)によって導かれた潤滑油の経路が示されている。潤滑油は、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の半径方向に形成され、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周側に開口する潤滑油供給穴を矢印A1のように通り、矢印A2のように両側に分かれてコンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周と円筒スリーブ32の外周との間のラジアル隙間を中心軸線CL方向に流れる。その後、矢印A3のように、コンプレッサ側ジャーナル軸受12とスラストカラー34a,34bとの間の各スラスト隙間を流れる。このように、潤滑油は、ラジアル隙間を流れた後にスラスト隙間を流れるようになっている。
【0039】
上述したコンプレッサ側ジャーナル軸受12周りの軸受構造は、以下のように組み立てられる。
【0040】
回転軸4の小径部4bに対して、タービン2側のスラストカラー34aを挿入し、段差部4cに当接させる(当接工程)。
【0041】
そして、コンプレッサ側ジャーナル軸受12が嵌め合わされた円筒スリーブ32、コンプレッサ3側のスラストカラー34b、中間スリーブ36及びコンプレッサ羽根車16を順に挿入する。このようにして、両スラストカラー34a,34b間にコンプレッサ側ジャーナル軸受12が位置するように配置する(配置工程)。
【0042】
その後、固定ナット38を回転軸4の小径部4bに対して螺合することによって、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、コンプレッサ3側のスラストカラー34b、円筒スリーブ32、タービン2側のスラストカラー34aを段差部4cに当てつつ押し込んで固定する(固定工程)。これにより、コンプレッサ羽根車16、中間スリーブ36、コンプレッサ3側のスラストカラー34b、円筒スリーブ32及びタービン2側のスラストカラー34aが回転軸4と一体化して回転軸4とともに回転するようになる。
【0043】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
回転軸4とともに回転する円筒スリーブ32と、円筒スリーブ32の両端に当接するように回転軸4と共に回転するスラストカラー34a,34bを設けた。そして、円筒スリーブ32の外周側でかつ両スラストカラー34a,34b間に挟まれるようにコンプレッサ側ジャーナル軸受12を設けることとした。これにより、コンプレッサ側ジャーナル軸受12は、円筒スリーブ32を介して回転軸4のラジアル方向を支持することができ、かつ、スラストカラー34a,34bを介して回転軸4のスラスト方向を支持することができる。これにより、1つのコンプレッサ側ジャーナル軸受12でジャーナル軸受とスラスト軸受の機能を持たせることができるので、部品点数を低減でき、また小型化を実現することができる。
また、円筒スリーブ32によってスラストカラー34a,34b間の距離が決まるので、中心軸線CL方向におけるコンプレッサ側ジャーナル軸受12と各スラストカラー34a,34bとの間のスラスト隙間を適切に管理することができる。
【0044】
コンプレッサ側ジャーナル軸受12の両端部に油溝を形成することとした。これにより、潤滑油がコンプレッサ側ジャーナル軸受12の両端部に導かれることでコンプレッサ側ジャーナル軸受12の両端部をスラストパッドとして用いることができる。したがって、コンプレッサ側ジャーナル軸受12とは別の部品としてスラストパッドを設ける必要がないので、部品点数を低減することができる。
【0045】
下流側がコンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周側に開口する潤滑油供給穴が形成されているので、潤滑油はコンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周側に流出(
図2の矢印A1参照)した後に、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の内周と円筒スリーブ32の外周との間のラジアル隙間を通り(
図2の矢印A2参照)、その後にコンプレッサ側ジャーナル軸受12の端部と各スラストカラー34a,34bとの間のスラスト隙間を流れる(
図2の矢印A3参照)。このように、潤滑油はラジアル隙間を通過しながら摩擦熱によって加熱されて粘度が低下した後に、スラスト隙間を流れることになる。このように温度上昇により潤滑油の粘度を下げることで、スラスト隙間で生じる機械損失を低減することができる。
【0046】
回転軸4の小径部4bに取り付けられた固定ナット38によって、スラストカラー34a,34b及び円筒スリーブ32を回転軸4の段差部4c側に向けて押圧することとした。これにより、スラストカラー34a,34b及び円筒スリーブ32が回転軸4と一体に回転するように固定される。
また、固定ナット38と段差部4cとの間で、回転軸4の小径部4bに張力がかかることになる。小径部4bは大径部4aに比べて弾性変形による伸びが大きいので、スラストカラー34a,34b及び円筒スリーブ32に対して締め代(伸び代)を大きくでき、締付のロバスト性を向上させることができる。
【0047】
円筒スリーブ32の外径を回転軸4の大径部4aと同等とすることによって、コンプレッサ側ジャーナル軸受12の内径と、タービン側ジャーナル軸受11の内径とを同等とすることができる。これにより、コンプレッサ側ジャーナル軸受12とタービン側ジャーナル軸受11の内径を共通で管理することができる。
【0048】
また、円筒スリーブ32の半径方向の厚さを適宜調整することによって、回転軸4の小径部4bの径を変更することができる。これにより、固定ナット38で締め付けた際の小径部4bの伸び量を調整できることができる。また、タービン2側のスラストカラー34aと回転軸4の段差部4cとの接触面積を調整することで、摩擦力を適切に設定することができる。
【0049】
<変形例>
なお、本実施形態は、
図3のように変形することができる。
図3に示すように、ジャーナル軸受を1つとしても良い。具体的には、
図2に示したコンプレッサ側ジャーナル軸受12を中心軸線CL方向に延長形成したコンプレッサ側ジャーナル軸受12’とし、
図2に示した円筒スリーブ32を中心軸線CL方向に延長形成した円筒スリーブ32’とする。これに伴い、小径部4b’も中心軸線CL方向に延長する。これにより、1つのコンプレッサ側ジャーナル軸受12’によって回転軸4の中心軸線CL回りの振れ回りを支持することができるので、
図2に示したタービン側ジャーナル軸受11を省略することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、過給機1の適用先として舶用主機として用いられるディーゼルエンジンとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば舶用主機以外のディーゼルエンジンに用いることができ、また、ディーゼルエンジン以外の内燃機関に用いることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 過給機
2 タービン
3 コンプレッサ
4 回転軸
4a 大径部
4b,4b’ 小径部
4c 段差部
5 ハウジング
5a タービンハウジング
5b コンプレッサハウジング
5c 軸受ハウジング
11 タービン側ジャーナル軸受
12,12’ コンプレッサ側ジャーナル軸受
14 タービンホイール
15 タービン翼
16 コンプレッサ羽根車
17 ブレード
21 入口通路
22 出口通路
24 吸入口
25 吐出口
30 潤滑油供給経路
30a タービン側潤滑油供給経路
30b コンプレッサ側潤滑油供給経路
32,32’ 円筒スリーブ(スリーブ)
34a (タービン側の)スラストカラー
34b (コンプレッサ側の)スラストカラー
36 中間スリーブ
38 固定ナット(固定具)
CL 中心軸線