(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
B60L15/20 J ZHV
(21)【出願番号】P 2019051609
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018103822
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 純雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】田脇 達也
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231789(JP,A)
【文献】特開2014-88067(JP,A)
【文献】特開2016-96657(JP,A)
【文献】特開2016-10299(JP,A)
【文献】特開2012-186940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって駆動される車両の車速および前記電動モータの駆動トルクを含む車両情報を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記車両の車速が所定速度以下で、前記駆動トルクが所定の閾値以上であることを条件として、加速
状態へ向けて前後加速度が変化している時における前記駆動トルクの増加速度を、予め設定された増加速度に対して緩和する制御部と、を備え、
前記検出部は、前記車速を検出する車速検出部と、シフト位置を検出するシフト位置検出部と、前記車両に対するアクセル要求を検出するアクセル要求検出部と、前記駆動トルクを検出するトルク検出部と、を含んで構成され、
前記制御部は、さらに前記車速が前記所定速度以下で前後進のシフトチェンジがされた後、前進又は後進の前記駆動トルクの絶対値が前記閾値以上であることを条件として、前記シフトチェンジ後の
前進方向から後進方向又は後進方向から前進方向への加速
状態へ向けて前後加速度が変化している時、前記アクセル要求検出部によって検出された前記アクセル要求に対する前記シフトチェンジ時からの前記駆動トルクの増加速度を、前記車速が前記所定速度以下の低速状態からの
前進方向から後進方向又は後進方向から前進方向への加速
状態へ向けて前後加速度が変化した時における前記車両の揺動を抑制させるように緩和する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記アクセル要求に対する前記駆動トルクが異なる複数の走行モードのいずれが前記車両に設定されているかを検出するモード検出部を含んで構成され、
前記制御部は、前記モード検出部によって検出された走行モードに基づいて前記条件を判定した結果に応じて、前記駆動トルクの増加速度を緩和する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アクセル要求と前記駆動トルクとの対応関係を示すマップを有し、前記マップを参照して前記駆動トルクの増加速度を緩和する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記マップを複数有し、前記条件を満たす場合、前記マップを切り替え、切替後の前記マップを参照して前記駆動トルクの増加速度を緩和する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記アクセル要求に対する前記駆動トルクが異なる複数の走行モードにそれぞれ紐ついた前記マップを前記走行モードごとに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記モード検出部によって検出された走行モードに基づいて、前記駆動トルクの増加速度の緩和度合を変化させる
ことを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速状態からの加速時における車両の揺動を抑制するための車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)などのように、蓄電装置から電力供給された電動モータで走行可能な各種の車両(電動車両)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両において、例えば前進から後進、後進から前進へのシフトチェンジが可能な程度まで減速された場合、電動モータの駆動トルクが大きいと、かかるシフトチェンジ後の加速時に車両が揺動するおそれがある。その際、前向きの加速度もしくは後ろ向きの加速度が急激に変化することで、乗員(車両)が前後方向に振られてしまう。
【0005】
例えば、車両の走行シーンに応じてもしくは運転者の選択により、複数の走行モードで走行することが可能な車両がある。複数の走行モードにおいては、アクセルペダルの踏込量(開度)が同じであっても、直後の電動モータの駆動トルクの増加速度が走行モードによって異なる場合がある。したがって、低速状態からの加速時の駆動トルクの増加速度が大きな走行モードでは、増加速度の程度によって車両の揺動が顕著に生じてしまう。
【0006】
そこで、前後進のシフトチェンジ後などの低速状態からの加速時、例えばガレージに対する入庫時や出庫時、切り返し時などに車両が揺動することを抑制可能な車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両制御装置は、電動モータによって駆動される車両の車速および電動モータの駆動トルクを含む車両情報を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、車両の車速が所定速度以下で、駆動トルクが所定の閾値以上であることを条件として、加速状態へ向けて前後加速度が変化している時における電動モータの駆動トルクの増加速度を、予め設定された増加速度に対して緩和する制御部とを備える。
【0008】
検出部は、車速を検出する車速検出部と、シフト位置を検出するシフト位置検出部と、車両に対するアクセル要求を検出するアクセル要求検出部と、駆動トルクを検出するトルク検出部とを含んで構成される。制御部は、さらに車両の車速が所定速度以下で前後進のシフトチェンジがされた後、前進又は後進の駆動トルクの絶対値が前記閾値以上であることを条件として、前記シフトチェンジ後の前進方向から後進方向又は後進方向から前進方向への加速状態へ向けて前後加速度が変化している時、アクセル要求検出部によって検出されたアクセル要求に対する前記シフトチェンジ時からの増加速度を、前記車速が前記所定速度以下の低速状態からの前進方向から後進方向又は後進方向から前進方向への加速状態へ向けて前後加速度が変化した時における前記車両の揺動を抑制させるように緩和する。
【0009】
検出部は、アクセル要求に対する駆動トルクが異なる複数の走行モードのいずれが車両に設定されているかを検出するモード検出部を含んで構成される。制御部は、モード検出部によって検出された走行モードに基づいて前記条件を判定した結果に応じて、駆動トルクの増加速度を緩和する。
【0010】
制御部は、アクセル要求と駆動トルクとの対応関係を示すマップを有し、マップを参照して駆動トルクの増加速度を緩和する。
制御部は、マップを複数有し、前記条件を満たす場合、マップを切り替え、切替後のマップを参照して駆動トルクの増加速度を緩和する。
制御部は、アクセル要求に対する駆動トルクが異なる複数の走行モードにそれぞれ紐ついたマップを走行モードごとに有する。
制御部は、モード検出部によって検出された走行モードに基づいて、駆動トルクの増加速度の緩和度合を変化させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両制御装置によれば、前後進のシフトチェンジ後などの低速状態からの加速時に車両が揺動することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置が搭載された車両の模式図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置の制御フローを示す図。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置による電動モータの駆動トルクの緩和態様を、シフトポジションが前進(Dレンジ)から後進(Rレンジ)に切り替わる場合について比較例とともに示す図であって、(a)はモータにおける駆動トルクの緩和態様、(b)はシフトポジションの時間遷移、(c)は車両の揺動(前後加速度)態様をそれぞれ示す図。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る車両制御装置による電動モータの駆動トルクの緩和態様を、シフトポジションが後進(Rレンジ)から前進(Dレンジ)に切り替わる場合について比較例とともに示す図であって、(a)はモータにおける駆動トルクの緩和態様、(b)はシフトポジションの時間遷移、(c)は車両の揺動(前後加速度)態様をそれぞれ示す図。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る車両制御装置が搭載された車両の模式図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る車両制御装置の制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置について、
図1から
図8を参照して説明する。本実施形態の車両制御装置は、低速からの加速時に必要に応じて車両の揺動(ショック)を抑制するための装置である。低速とは、車速が所定速度以下の状態であり、例えば前進から後進もしくは後進から前進にシフトチェンジが可能な程度まで車両が減速されているような状態である。車両の揺動は、上述したような低速状態からの加速時において、加速トルク(後述する電動モータの駆動トルク)が車速に対して大き過ぎる場合に、前向きの加速度もしくは後ろ向きの加速度が急激に変化することで生じる振れである。なお、以下の説明においては、前進から後進もしくは後進から前進にシフト操作が行われることをシフトチェンジとして規定する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る車両制御装置1が搭載された車両10の模式図である。車両10は、蓄電装置(電池パック)11から電力供給された駆動装置(電動モータ)12により走行可能な電動車両であり、例えば電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)などである。
図1には、電動モータ12に加えてエンジン13を搭載したPHEVの構成を一例として示す。このような電動車両であれば、自家用の乗用自動車、あるいはトラックやバスなどの事業用自動車のいずれであってもよく、用途や車種は特に問わない。本実施形態において、電動モータ12は、前輪14および後輪15をそれぞれ駆動する前輪駆動モータ(フロントモータ)12fと後輪駆動モータ(リヤモータ)12rとを含む。ただし、フロントモータ12fとリヤモータ12rを一元化して1つの電動モータで車両の駆動機構を構成してもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る車両制御装置1のブロック図である。
図2に示すように、車両制御装置1は、検出部2と、判定部3と、制御部4とを備える。検出部2は、判定部3および制御部4と有線もしくは無線により接続され、制御部4によって動作が制御される。制御部4に動作制御された検出部2は、各種の車両情報の検出を行い、判定部3および制御部4に対して検出結果を与える。
【0016】
車両の揺動抑制に必要な各種の検出を行うため、検出部2は、車速検出部21、シフト位置検出部22、アクセル要求検出部23、トルク検出部24を含んで構成されている。
車速検出部21は、車両の車速を検出する車速センサ、ブレーキペダルの踏込を検出するブレーキセンサなどの各種のセンサである。これらのセンサにより、車速検出部21は、車両の車速を検出する。
【0017】
シフト位置検出部22は、自動変速機16のシフトレバー16a(
図1参照)の位置(シフト位置)を検出するシフトポジションセンサやギアポジションセンサである。これにより、シフト位置検出部22は、車両の前進(Dレンジ)と後進(Rレンジ)のシフト位置の切り替え(つまりシフトチェンジ)のタイミングを検出する。
【0018】
アクセル要求検出部23は、車両に対するアクセル要求を検出する。例えば、車両のアクセルペダル17(
図1参照)の踏込量(開度)を検出するアクセルペダルセンサである。これにより、アクセル要求検出部23は、車両に対するアクセル要求の有無とその大きさ(要求トルク)をそれぞれ検出する。
【0019】
トルク検出部24は、電動モータの駆動トルクを検出するモータトルクセンサである。トルク検出部24は、電動モータの駆動トルクの大きさと向き(前進駆動トルクもしくは後進駆動トルク)をそれぞれ検出する。本実施形態においては、電動モータとして、フロントモータとリヤモータが備えられており、トルク検出部24は、これらフロントモータとリヤモータの駆動トルクをそれぞれ検出する。
【0020】
判定部3は、制御部4によって動作が制御され、検出部2の検出結果に基づいて各種の判定条件(制御開始条件)を判定し、制御部4に対して判定結果を与える。本実施形態では、車両の揺動抑制に必要な判定条件を判定するため、判定部3は、車速判定部31、シフトチェンジ判定部32、トルク緩和判定部33を含んで構成されている。車速判定部31、シフトチェンジ判定部32、トルク緩和判定部33は、例えばプログラムとして後述する演算処理部41の記憶装置(不揮発メモリ)に格納されている。なお、かかるプログラムをクラウド上に格納し、演算処理部41をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、演算処理部41は、クラウドとの通信モジュールやアンテナなどを備えた構成とする。
【0021】
車速判定部31は、車速検出部21によって検出された車速に基づいて、車速条件を判定する。車速条件は、車両が低速状態であるか否かの判定条件であり、本実施形態では前進から後進もしくは後進から前進にシフトチェンジが可能な所定速度(以下、基準速度という)以下まで車両が減速されているかを示す条件である。基準速度は、例えば時速10km程度である。車速条件の判定にあたって、車速判定部31は、車速検出部21によって検出された車速を基準速度と比較する。車速判定部31は、車速条件を満たす場合、車両が低速状態であると判定し、車速条件を満たさない場合、車両が低速状態ではないと判定する。
【0022】
シフトチェンジ判定部32は、シフト位置検出部22によって検出されたシフト位置(シフトポジション)に基づいて、シフトチェンジの有無およびシフトチェンジ後のシフト位置を判定する。この場合、シフトチェンジ判定部32は、シフトレバー16a(
図1参照)の位置が判定時の前後で前進(Dレンジ)から後進(Rレンジ)もしくはその逆に切り替えられているか否か(以下、シフト条件という)を判定する。例えば、前回判定時と今回判定時とで、シフトポジションの検出値が異なっている場合、シフトチェンジ判定部32は、シフト条件を満たす、つまりシフトチェンジがなされたと判定する。一方、前回判定時と今回判定時とで、シフトポジションの検出値が同一である場合、シフトチェンジ判定部32は、シフト条件を満たさない、つまりシフトチェンジがなされていないと判定する。
【0023】
トルク緩和判定部33は、トルク検出部24によって検出された電動モータの駆動トルクに基づいて、該駆動トルクの増加速度(上昇レート)の緩和要否(以下、緩和条件という)を判定する。本実施形態において、トルク緩和判定部33は、フロントモータおよびリヤモータの駆動トルクについて、緩和条件をそれぞれ判定する。この場合、トルク緩和判定部33は、駆動トルクの検出値を所定の閾値(以下、緩和基準値という)と比較する。
【0024】
本実施形態では一例として、前進駆動トルクおよびその緩和基準値(以下、前進緩和基準値という)をプラスの値、後進駆動トルクおよびその緩和基準値(以下、後進緩和基準値という)をマイナスの値として、前後進を便宜上区別する。したがって、検出値が前進駆動トルクであれば前進緩和基準値以上、後進駆動トルクであれば後進緩和基準値以下である場合、トルク緩和判定部33は、緩和条件を満たすと判定する。つまり、トルク緩和判定部33は、予め設定された駆動トルクの増加速度に対して増加速度の緩和が必要と判定する。一方、検出値が前進駆動トルクであれば前進緩和基準値より小さい、後進駆動トルクであれば後進緩和基準値より大きい場合、トルク緩和判定部33は、緩和条件を満たさないと判定する。つまり、トルク緩和判定部33は、予め設定された駆動トルクの増加速度に対して増加速度の緩和は不要と判定する。ただし、後進駆動トルクの向きを考慮せずにその大きさのみで判定すれば、後進駆動トルクの緩和条件も前進駆動トルクと同様に判定することができる。すなわち、前進であるか後進であるかを問わず、駆動トルク(絶対値)が緩和基準値以上であれば、緩和条件を満たし、緩和基準値に達していなければ緩和条件を満たさないと判定される。なお、駆動トルクの増加速度を予め設定された増加速度に対して緩和することにより、結果として駆動トルク自体が緩和されるため、以下、このような緩和状態を駆動トルクの緩和という。また、予め設定された駆動トルクの増加速度とは、駆動トルクの緩和前の現時点における駆動トルクの増加速度の値である。例えば、アクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対応する通常時の駆動トルクの増加速度の値、後述するような車両の走行モードに対応するアクセル要求に応じて自動設定される値、あるいは運転者が任意に設定した値などであり、その設定方法は問わない。
【0025】
緩和基準値は、例えば、アクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)と駆動トルクとの関係を示すマップ(以下、参照マップという)の値であり、駆動トルクを緩和しなければ、低速状態からの加速時に車両を揺動させるおそれがある駆動トルクの値である。アクセル要求は、アクセル要求検出部23によって検出されている。緩和基準値は、上述したように前進駆動トルクに対応する前進緩和基準値および後進駆動トルクに対応する後進緩和基準値を含む。同一アクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対する前進緩和基準値と後進緩和基準値の絶対値は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。これらの緩和基準値が設定された参照マップは、後述する制御部4(演算処理部41)の記憶装置に格納され、緩和条件の判定時にトルク緩和判定部33によって読み出される。
【0026】
制御部4は、例えば車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)として構成され、車両ECUが実行する制御の一つとして、車両の揺動抑制制御を行う。ただし、制御部4は、車両ECUとは独立して構成されていてもよい。
【0027】
制御部4は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含む演算処理部41を備えている。演算処理部41は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて車両の揺動抑制制御を行う。
【0028】
また、車両の揺動抑制に必要な各種の制御を行うため、制御部4は、検出部制御部42、モータ制御部43を含んで構成されている。検出部制御部42およびモータ制御部43は、例えばプログラムとして演算処理部41の記憶装置(不揮発メモリ)に格納されている。なお、判定部3と同様に、これらのプログラムをクラウド上に格納し、演算処理部41をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。
【0029】
検出部制御部42は、検出部2(車速検出部21、シフト位置検出部22、アクセル要求検出部23、およびトルク検出部24)の動作を制御する。本実施形態では、検出部制御部42に制御されることで、車速検出部21は車速、シフト位置検出部22はシフトチェンジの有無とシフトポジション、アクセル要求検出部23はアクセル要求の有無と要求トルク、トルク検出部24は電動モータの駆動トルクをそれぞれ検出し、検出結果(取得した各データ)を検出部制御部42に与える。検出部制御部42は、与えられた各データを判定部3(車速判定部31、シフトチェンジ判定部32、トルク緩和判定部33)およびモータ制御部43に演算処理部41を介して適宜与える。
【0030】
モータ制御部43は、判定部3の判定結果に基づいて、電動モータの駆動トルクを制御する。本実施形態においては、低速状態からの加速時に駆動トルクを緩和する制御を行う。その際、モータ制御部43は、例えば車両の進行方向の駆動トルクを緩和するように、電動モータの出力を低下させる。緩和度合は、アクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)および駆動トルクから参照マップに基づいて、モータ制御部43が適宜設定すればよい。あるいは、車両に設定可能な複数の走行モードに対応する参照マップを複数作成し、参照するマップを適宜切り替え、切替後の参照マップに基づいて緩和度合を設定してもよい。このようなマップ切替による駆動トルクの緩和については、後述する第2の実施形態で詳述する。
【0031】
このような構成をなす車両制御装置1は、低速状態からの加速時における車両の揺動を抑制するべく、次のように電動モータの駆動トルクの緩和制御を行う。
図3には、本実施形態において車両制御装置1によって行われる駆動トルクの緩和制御時の制御フローを示す。以下、
図3に示すフローに従って、車両制御装置1による制御とその作用について説明する。
【0032】
なお、かかる車両制御装置1による制御は、車両が走行可能な状態、例えばイグニッションスイッチやパワースイッチがON状態となることで、実行可能な状態となる。そして、車両が走行不可な状態、例えばイグニッションスイッチやパワースイッチがOFF(LOCK)状態となることで、かかる制御を実行可能な状態が終了する。
【0033】
図3に示すように、車両制御装置1において駆動トルクの緩和制御を行うにあたって、検出部2は、車両情報の検出を行う(S101)。本実施形態では、検出部制御部42によって動作制御され、車速検出部21が車速、シフト位置検出部22がシフトチェンジの有無とシフトポジション、アクセル要求検出部23がアクセル要求の有無と要求トルク、トルク検出部24が電動モータの駆動トルクをそれぞれ検出する。
【0034】
次いで、判定部3は、検出部2によって検出された車両情報に基づいて、駆動トルクの緩和制御を実行するか否かの判定を次のように行う。
車速判定部31は、車速検出部21によって検出された車速に基づいて、車両が低速状態であるか否か(車速条件)を判定する(S102)。この場合、車速判定部31は、車速が基準速度以下であれば車速条件を満たすと判定し、車速が基準速度を超えていれば車速条件を満たさないと判定する。
【0035】
S102において車速条件を満たすと判定された場合、シフトチェンジ判定部32は、シフト位置検出部22によって検出されたシフトポジションに基づいて、シフトチェンジの有無(シフト条件)を判定する(S103)。
【0036】
S103においてシフト条件を満たすと判定した場合、シフトチェンジ判定部32は、続けてシフトチェンジ後のシフトポジションを判定する(S104)。
【0037】
S104においてシフトポジションが前進(Dレンジ)である場合、トルク緩和判定部33は、トルク検出部24によって検出された駆動トルク(前進駆動トルク)に基づいて、駆動トルクの緩和要否(緩和条件)を判定する(S105)。この場合、トルク緩和判定部33は、前進駆動トルクが前進緩和基準値以上であれば緩和条件を満たすと判定し、前進駆動トルクが前進緩和基準値に達していなければ緩和条件を満たさないと判定する。
【0038】
S105において緩和条件を満たすと判定された場合、モータ制御部43は、前進駆動トルクを緩和する(S106)。例えば、モータ制御部43は、参照マップにおいてアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対応する駆動トルクの値よりも前進駆動トルクを低下させる。その際、モータ制御部43は、前進駆動トルクの増加速度(上昇レート)を緩和することで、前進駆動トルク自体を緩和させる。これにより、アクセルペダル17の踏込量に対応する前進駆動トルクが小さくなる。すなわち、前進駆動トルクの増加速度は、予め設定された増加速度に対して緩和される。
【0039】
一方、S104においてシフトポジションが後進(Rレンジ)である場合、トルク緩和判定部33は、トルク検出部24によって検出された駆動トルク(後進駆動トルク)に基づいて、駆動トルクの緩和要否(緩和条件)を判定する(S107)。この場合、トルク緩和判定部33は、後進駆動トルク(マイナス値)が後進緩和基準値以下であれば緩和条件を満たすと判定し、後進駆動トルクが後進緩和基準値を超えていれば緩和条件を満たさないと判定する。ここでは、前進駆動トルク(プラス値)と区別するために便宜上、後進駆動トルクをマイナス値としているので、緩和条件をこのように判定している。
【0040】
S107において緩和条件を満たすと判定された場合、モータ制御部43は、後進駆動トルクを緩和する(S108)。例えば、モータ制御部43は、参照マップにおいてアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対応する駆動トルクの値よりも後進駆動トルクを低下させる。その際、モータ制御部43は、後進駆動トルクの増加速度(上昇レート)を緩和することで、後進駆動トルク自体を緩和させる。これにより、アクセルペダル17の踏込量に対応する後進駆動トルクが小さくなる。すなわち、後進駆動トルクの増加速度は、予め設定された増加速度に対して緩和される。
【0041】
なお、S102において車速条件を満たさないと判定された場合、S103においてシフト条件を満たさないと判定された場合、S105およびS107において緩和条件を満たさないと判定された場合、モータ制御部43は、駆動トルクの緩和制御を行わない。したがって、車両は、駆動トルクが緩和されることなく、予め設定された駆動トルクの増加速度(上昇レート)で加速しながら走行を継続する。車速条件を満たさない場合には車両が低速状態ではなく、シフト条件を満たさない場合にはシフトチェンジがなされておらず、緩和条件を満たさない場合には駆動トルクが緩和基準値よりも小さいため、いずれも車両の揺動は抑制される。
【0042】
そして、車両制御装置1は、車両が走行を継続している間、例えばイグニッションスイッチやパワースイッチがOFF状態となるまで、次の駆動トルクの緩和制御に備え、所定の制御を繰り返す(S109)。すなわち、検出部2は、車両情報の検出を継続し、判定部3は、検出部2が新たに検出した車両情報に基づいて駆動トルクの緩和制御の実行要否を判定し、制御部4は、かかる判定結果に基づいて該緩和制御を繰り返す。これにより、低速状態からの加速時における揺動を抑制しながら、車両の走行を継続させることができる。
【0043】
例えば、
図4(a)には、シフトポジションが前進(Dレンジ)から後進(Rレンジ)に切り替わる際、電動モータの駆動トルクが緩和される態様の一例を示す。また、
図5(a)には、シフトポジションが後進(Rレンジ)から前進(Dレンジ)に切り替わる際、電動モータの駆動トルクが緩和される態様の一例を示す。各図(a)において、実線は、本実施形態に係る駆動トルクの時間遷移を示す。これに対し、破線は、実線の場合と同等の走行状況において緩和制御を行わなかった場合(比較例)、つまり予め設定された駆動トルクの増加速度で走行を継続した場合の駆動トルクの時間遷移を示す。また、
図4(b)および
図5(b)には、各図(a)に示す駆動トルクの緩和態様となるシフトポジションの時間遷移の一例を示す。
図4(c)および
図5(c)には、駆動トルクが緩和されることに伴う車両の揺動態様(前後加速度の時間変化)の一例を示す。各図(c)において、実線は、本実施形態に係る駆動トルクの緩和制御を行った場合の前後加速度の時間変化を示す。これに対し、破線は、実線の場合と同等の走行状況において緩和制御を行わなかった場合(比較例)、つまり予め設定された駆動トルクの増加速度で走行を継続した場合の前後加速度の時間変化を示す。なお、各図(a)において、縦軸は、前進駆動トルクをプラス、後進駆動トルクをマイナスとして示す。各図(c)において、縦軸は、前向きの加速度をプラス、後向きの加速度をマイナスとして示す。各図(a)から(c)において、横軸はいずれも時間を示す。
【0044】
図4(a)および
図5(a)に示すように、本実施形態において、電動モータ(フロントモータおよびリヤモータ)の駆動トルクは、緩和制御をしない比較例(破線)と比べ、シフトチェンジ後(各図(b)に示す経過時間がt以降)の加速時における増加速度が低下している。この結果、各図(c)に示すように、本実施形態の前後加速度の時間変化(実線)は、急激な変化(谷や山)が抑えられ、比較例(破線)と比べて軌跡がなだらかになる。すなわち、本実施形態での車両の揺動は、駆動トルクの緩和制御をしない比較例(破線)と比べ、シフトチェンジ後の加速時に低下する。
【0045】
このように本実施形態の車両制御装置1によれば、駆動トルクを緩和することで、該駆動トルクをアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対して適当な値まで低下させ、低速状態からの加速時における車両の揺動を抑制することができる。例えば、ガレージに対する入庫時や出庫時、切り返し時などでのシフトチェンジ後、車両を加速させる際に車両の揺動を抑制できる。したがって、運転者の運転負荷の低減など、運転環境の向上を図ることができるとともに、安全性の向上を図ることができる。
【0046】
本実施形態では、アクセル要求および駆動トルクの値から参照マップに基づいて、その都度、駆動トルクの緩和度合を設定している。ただし、駆動トルクの緩和度合は、単純に参照マップを切り替えることによって設定してもよい。以下、このように参照マップを切り替えることによって駆動トルクの緩和度合を設定する実施形態を第2の実施形態として説明する。
【0047】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る車両制御装置1aが搭載された車両10aの模式図である。車両10aは、後述する走行モードを設定する操作部18を備えていることを除き、車両10と同様である。
図7は、本実施形態に係る車両制御装置1のブロック図である。
図7に示すように、本実施形態の車両制御装置1aは、第1の実施形態の車両制御装置1(
図2)が備える各部に加えて、モード検出部25とモード判定部34とを備え、演算処理部41が2つの参照マップ411,412を有している。これら以外の車両制御装置1aの基本的な構成は、車両制御装置1と同様である。したがって、車両制御装置1と同様の基本的な構成については、図面上で同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
モード検出部25は、検出部2の一つに含まれ、車両の走行モードを検出する。例えば、走行モードを設定するために車両に設けられたボタンやスイッチ等の操作部18(
図6参照)の操作(ON/OFF、切替)や設定値などを検出するセンサである。
車両の走行モードは、車両制御装置1aが車両の運転支援を行う場合に設定される走行態様であり、通常モード、スポーツモード、エコモードなどが挙げられる。例えば、通常モードは、法定速度や交通の流れなどに従って走行するモードである。スポーツモードは、通常モードよりも速度や加速度の目標値が高く、アクセルペダル17の踏込量が通常モードと同じであっても、より早く目標速度に到達するような走行性を重視したモードである。エコモードは、通常モードよりも燃費を重視したモードである。なお、これらは走行モードの例示に過ぎず、車種、走行路、運転者などの各種の条件に対応する様々な走行モードが想定できる。
【0049】
走行モードには、該走行モードに対応するアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)と駆動トルクとの対応関係を示すマップ(参照マップ)がそれぞれ紐つけられている。本実施形態では一例として、2つの走行モードに対応する参照マップがそれぞれ作成されている。第1の走行モードに対応する参照マップ(以下、第1の参照マップ411という)に基づいたアクセル要求と駆動トルクの関係に従えば、低速状態からの加速時に車両の揺動は抑制される。これに対し、第2の走行モードに対応する参照マップ(以下、第2の参照マップ412という)に基づいたアクセル要求と駆動トルクとの関係に従えば、低速状態からの加速時に車両を揺動させるおそれがある。例えば、第1の走行モードを通常モードもしくはエコモード、第2の走行モードをスポーツモードに該当するものとすることができる。第1の参照マップ411および第2の参照マップ412は、演算処理部41の記憶装置(不揮発メモリ)に格納され、駆動トルクの緩和制御時にモータ制御部43によって読み出される。
【0050】
モード判定部34は、判定部3の一つのプログラムとして演算処理部41の記憶装置(不揮発メモリ)に格納されており、モード検出部25によって検出された車両の走行モードに基づいて、該走行モードが第1の走行モードと第2の走行モードのいずれであるかを判定する。
【0051】
図8には、本実施形態において、車両制御装置1aによって行われる駆動トルクの緩和制御時の制御フローを示す。以下、
図8に示すフローに従って、車両制御装置1aによる制御とその作用について説明する。なお、本実施形態の制御フローは、第1の実施形態の制御フロー(
図3)を一部変更して、第2の実施形態に特有の制御を適宜付加するものである。したがって、上述した第1の実施形態と同一もしくは同様の制御については、同一のステップ番号を付して説明を省略し、第2の実施形態に特有の制御についてのみ説明する。
【0052】
本実施形態では、S101における車両情報の検出には、モード検出部25による走行モードの検出が含まれる。そして、S102において車速条件を判定する前に、モード判定部34が車両の走行モードを判定する。この場合、モード判定部34は、モード検出部25よって検出された走行モードに基づいて、現時点(判定時)における走行モードが第1の走行モード(一例として通常モード)であるか、第2の走行モード(一例としてスポーツモード)であるかを判定する(S201)。
【0053】
S201において走行モードが第2の走行モードではない、つまり第1のモードである場合、モータ制御部43は、駆動トルクの緩和制御を行わない。この場合、モータ制御部43は、第1の参照マップ411においてアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対応する駆動トルクの値で車両の走行を継続させる(S202)。すなわち、車両は、駆動トルクが緩和されることなく、第1の参照マップ411に基づいた駆動トルクの増加速度(上昇レート)で加速しながら走行を継続する。第1の参照マップ411に基づいたアクセル要求と駆動トルクの関係に従うことで、低速状態からの加速時であっても車両の揺動を抑制することができる。
【0054】
S201において走行モードが第2の走行モードである場合、車速判定部31は、車速条件を判定する(S102)。
【0055】
S102において車速条件を満たすと判定された場合、以降のシフト条件の判定(S103)、シフトポジションの判定(S104)、および駆動トルクの緩和要否(緩和条件)の判定(S105,S107)を適宜行う。
【0056】
S105あるいはS107において緩和条件を満たすと判定された場合、モータ制御部43は、駆動トルクを緩和する。その際、モータ制御部43は、参照するマップを第2の参照マップ412から第1の参照マップ411に切り替える(S203)。例えば、第1の参照マップ411を演算処理部41の記憶装置(不揮発メモリ)から読み出すとともに、第2の参照マップ412をクローズする。そして、モータ制御部43は、第1の参照マップ411においてアクセル要求に対応する駆動トルクの値で車両を走行させる(S202)。これにより、第2の参照マップ412を参照する場合と比べ、駆動トルクの増加速度(上昇レート)を緩和することができるので、駆動トルク自体を緩和させることができる。すなわちこの場合、第2の参照マップ412においてアクセル要求に対応する駆動トルクの増加速度の値が予め設定された増加速度に相当し、該増加速度に対して駆動トルクの増加速度が緩和される。なお、モータ制御部43は、シフトポジションが前進(Dレンジ)であれば、前進駆動トルクを緩和し、後進(Rレンジ)であれば、後進駆動トルクを緩和する。
【0057】
一方、S102において車速条件を満たさないと判定された場合、モータ制御部43は、第2の参照マップ412においてアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)に対応する駆動トルクの値で車両の走行を継続させる(S204)。すなわち、車両は、駆動トルクが緩和されることなく、第2の参照マップ412に基づいた駆動トルクの増加速度(上昇レート)で加速しながら走行を継続する。この場合、車速条件を満たしておらず、車速が基準速度を超えている(低速状態ではない)ため、第2の参照マップ412に基づいた駆動トルクの増加速度(上昇レート)で加速しても車両の揺動は抑制される。
【0058】
同様に、S103においてシフト条件を満たさないと判定された場合、S105およびS107において緩和条件を満たさないと判定された場合、モータ制御部43は、第2の参照マップ412においてアクセル要求に対応する駆動トルクの値で車両の走行を継続させる(S204)。
【0059】
そして、車両制御装置1aは、駆動トルクの緩和制御の実行有無にかかわらず(S202,S204)、車両が走行を継続している間、例えばイグニッションスイッチやパワースイッチがOFF状態となるまで、次の駆動トルクの緩和制御に備え、所定の制御を繰り返す(S109)。すなわち、検出部2は、車両情報の検出を継続し、判定部3は、検出部2が新たに検出した車両情報に基づいて駆動トルクの緩和制御の実行要否を判定し、制御部4は、かかる判定結果に基づいて該緩和制御を繰り返す。
【0060】
以上、本発明の実施形態(第1の実施形態および第2の実施形態)を説明したが、これらは、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0061】
例えば、上述した第1および第2の実施形態において、車両の低速状態は、前後進のシフトチェンジが可能な程度まで車速が減速されている状態とし、電動モータの駆動トルクの緩和制御は、シフトチェンジがなされた場合に実行するものとしている。これに代えて、シフトチェンジの有無に関わらず、車速条件と駆動トルクの増加速度の緩和条件のみを判定して駆動トルクの緩和制御を実行してもよい。この場合、
図3および
図8に示すS103におけるシフト条件の判定を省略し、S102において車速条件を満たす場合、S104におけるシフトポジションの判定を行えばよい。
【0062】
また、第2の実施形態において、低速状態からの加速時に車両の揺動が抑制されるアクセル要求(アクセルペダル17の踏込量)と駆動トルクの関係を示す参照マップ(マスタマップ)を走行モードとは切り離して作成してもよい。例えば、第2の走行モードのみならず、第1の走行モードであっても、車速条件、シフト条件、緩和条件をいずれも満たす場合には第1の参照マップ411からマスタマップに切り替え、これらの条件を満たさない場合には、マップを切り替えることなく、第1の参照マップ411に従って車両の走行を継続させてもよい。この場合、第1の参照マップ411は、アクセル要求と駆動トルクの関係に従えば、低速状態からの加速時に車両を揺動させるおそれがあるものであってもよい。例えば、第1の参照マップ411は、第2の参照マップ412とは駆動トルクの緩和度合を異ならせる。これにより、各種の条件に対応する様々な走行モードを自由に設定しながら、低速状態からの加速時における車両の揺動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1a…車両制御装置、2…検出部、3…判定部、4…制御部、10…車両、11…蓄電装置(電池パック)、12…駆動装置(電動モータ)、12f…フロントモータ、12r…リヤモータ、13…エンジン、14…前輪、15…後輪、16…自動変速機、16a…シフトレバー、17…アクセルペダル、18…操作部、21…車速検出部、22…シフト位置検出部、23…アクセル要求検出部、24…トルク検出部、25…モード検出部、31…車速判定部、32…シフトチェンジ判定部、33…トルク緩和判定部、34…モード判定部、41…演算処理部、42…検出部制御部、43…モータ制御部、411…第1の参照マップ、412…第2の参照マップ。