(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20241118BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20241118BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241118BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241118BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20241118BHJP
【FI】
H05B33/02
G02B3/00 A
G09F9/00 313
H05B33/14 A
H10K59/00
(21)【出願番号】P 2019083785
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 恒芳
(72)【発明者】
【氏名】樋口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋光
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】本田 博幸
【審判官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-40876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0231467(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109493746(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0194634(US,A1)
【文献】特開平10-172756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K50/00-99/00
H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する基板と、
前記基板の前記第1面上にマトリックス状に位置する複数の第1電極と、
前記複数の第1電極上にそれぞれ位置する複数の有機化合物層と、
前記第1面側から前記第2面側に向かう平面視において隣接する前記有機化合物層間に位置する複数の開口部を有する、前記複数の有機化合物層上に位置する第2電極と、
少なくとも一部の前記開口部に対向する位置に設けられているレンズと
を備え、
前記第2電極側から前記第1電極側に向かう平面視又は前記第1電極側から前記第2電極側に向かう平面視において、前記レンズは、前記第1電極に重ならない位置
であって、前記第2電極を基準として前記基板と反対側における前記開口部に対向する位置に設けられている有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する基板と、
前記基板の前記第1面上にマトリックス状に位置する複数の第1電極と、
前記複数の第1電極上にそれぞれ位置する複数の有機化合物層と、
前記第1面側から前記第2面側に向かう平面視において隣接する前記有機化合物層間に位置する複数の開口部を有する、前記複数の有機化合物層上に位置する第2電極と、
少なくとも一部の前記開口部に対向する位置に設けられているレンズと
を備え、
前記第2電極側から前記第1電極側に向かう平面視又は前記第1電極側から前記第2電極側に向かう平面視において、前記レンズは、前記第1電極に重ならない位置に設けられており、
前記レンズは、前記第2電極を基準として前記基板と反対側における前記開口部に対向する位置に設けられている第1レンズと、前記第2電極を基準として前記基板側における前記開口部に対向する位置に設けられている第2レンズとを含
む有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記有機化合物層は、有機発光層を含む
請求項1
又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記レンズは、シリンドリカルレンズを含む
請求項1~
3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記レンズは、球面レンズを含む
請求項1~
4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた有機EL表示装置は、自発光により視認性が高い、液晶表示装置とは異なり全固体表示装置である、温度変化の影響を受け難い、視野角が大きい等の利点を有していることから、近年、フルカラー表示装置として実用化が進んでいる。スマートフォン等において用いられる有機EL表示装置にて、有機EL素子と同一平面上又は異なる平面上に受光素子及び発光素子を含む近接センサ等が備えられるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL表示装置において、画像等が表示される表示エリアを広くすること、特に、当該表示エリアの面積が限られているスマートフォン等においては、画面全面にまで表示エリアを広げることが求められることがある。スマートフォン等には撮像素子や近接センサ等が備えられることがあるが、有機EL表示装置が透光性を有するものでないと、画面全面に表示エリアを広げることが困難である。一般に、有機EL表示装置においては、有機発光層で発生した光を所定の方向に取り出す必要があるために、カソード電極として光透過性に劣る金属材料等が使用されることがある。そのため、有機EL表示装置で構成される画面全面を表示エリアとすることが困難である。この点、例えば、有機EL素子におけるサブピクセル間に光を透過させ得る透過エリアを形成し、この透過エリアを通じて発光素子から発せられた光(赤外線等)が物体に反射して、隣接する透過エリアを通じて受光素子にて受光するようにしたり、透過エリアを通じて撮像可能にしたりすることで、画面全面を有機EL表示装置で構成し、画像等が表示される表示エリアを広げることができると考えられる。
【0005】
一方で、高精細な画像を表示可能とするために、有機EL表示装置における画素密度を高くすることも求められている。しかしながら、画素密度を高くすると、サブピクセル間に位置する透過エリアが狭くなる傾向にあるため、透過性能が劣化するおそれがある。画素密度を低くせず、かつ透過エリアを狭くしないようにするためには、有機EL素子における有機化合物層(有機発光層)を小さくすることも考えられるが、有機EL表示装置の輝度が低下するおそれがある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示は、光の透過性能に優れた有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する基板と、前記基板の前記第1面上にマトリックス状に位置する複数の第1電極と、前記複数の第1電極上にそれぞれ位置する複数の有機化合物層と、前記第1面側から前記第2面側に向かう平面視において隣接する前記有機化合物層間に位置する複数の開口部を有する、前記複数の有機化合物層上に位置する第2電極と、少なくとも一部の前記開口部に対向する位置に設けられているレンズとを備え、前記第2電極側から前記第1電極側に向かう平面視又は前記第1電極側から前記第2電極側に向かう平面視において、前記レンズは、前記第1電極に重ならない位置であって、前記第2電極を基準として前記基板と反対側における前記開口部に対向する位置に設けられている有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【0008】
本開示の第2の態様として、上記第1の態様において、前記レンズは、前記第2電極を基準として前記基板と反対側における前記開口部に対向する位置に設けられていてもよい。
本開示の第3の態様として、上記第1の態様において、前記レンズは、前記第2電極を基準として前記基板側における前記開口部に対向する位置に設けられていてもよい。
本開示の第4の態様として、上記第1の態様において、前記レンズは、前記第2電極を基準として前記基板と反対側における前記開口部に対向する位置に設けられている第1レンズと、前記第2電極を基準として前記基板側における前記開口部に対向する位置に設けられている第2レンズとを含んでいてもよい。
【0011】
本開示の第5の態様として、上記第1~第4の態様のそれぞれにおいて、前記有機化合物層は、有機発光層を含んでいてもよい。
本開示の第6の態様として、上記第1~第5の態様のそれぞれにおいて、前記レンズは、シリンドリカルレンズを含んでいてもよい。
本開示の第7の態様として、上記第1~第5の態様のそれぞれにおいて、前記レンズは、球面レンズを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、透過性能に優れた有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第1態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第2態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第3態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第4態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第5態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態における第1電極、有機化合物層、第2電極及びレンズの位置関係の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態における第1電極、有機化合物層、第2電極及びレンズの位置関係の他の一例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置におけるレンズを介して光が開口部を通過する状態を説明するための切断端面図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態における第1電極、有機化合物層及びレンズの位置関係を説明するための切断端面図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造方法の一工程を示す切断端面図である。
【
図10B】
図10Bは、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造方法の一工程であって、
図10Aに続く工程を示す切断端面図である。
【
図10C】
図10Cは、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造方法の一工程であって、
図10Bに続く工程を示す切断端面図である。
【
図10D】
図10Dは、本開示の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造方法の一工程であって、
図10Cに続く工程を示す切断端面図である。
【
図11A】
図11Aは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程を示す切断端面図である。
【
図11B】
図11Bは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程であって、
図11Aに続く工程を示す切断端面図である。
【
図11C】
図11Cは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程であって、
図11Bに続く工程を示す切断端面図である。
【
図12A】
図12Aは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程を示す切断端面図である。
【
図12B】
図12Bは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程であって、
図12Aに続く工程を示す切断端面図である。
【
図13A】
図13Aは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程を示す切断端面図である。
【
図13B】
図13Bは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程であって、
図13Aに続く工程を示す切断端面図である。
【
図14A】
図14Aは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程を示す切断端面図である。
【
図14B】
図14Bは、本開示の一実施形態におけるレンズを作製する一工程であって、
図14Aに続く工程を示す切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、「板」、「シート」、「フィルム」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、「面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0015】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0016】
本明細書及び本図面において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」、「上側に(又は下側に)」、又は「上方に(又は下方に)」とする場合、特別な説明がない限りは、ある構成が他の構成に直接的に接している場合のみでなく、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている場合も含めて解釈することとする。また、特別な説明がない限りは、上(又は、上側や上方)又は下(又は、下側、下方)という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
【0017】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0018】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、矛盾の生じない範囲で、その他の実施形態や変形例と組み合わせられ得る。また、その他の実施形態同士や、その他の実施形態と変形例も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。また、変形例同士も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。
【0019】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、開示されている工程の順序は、矛盾の生じない範囲で任意である。
【0020】
本明細書及び本図面において、特別な説明がない限りは、「~」という記号によって表現される数値範囲は、「~」という記号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34~38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上且つ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
【0021】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態のみに限定して解釈されるものではない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第1態様の概略構成を示す切断端面図であり、
図2は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第2態様の概略構成を示す切断端面図であり、
図3は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第3態様の概略構成を示す切断端面図であり、
図4は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第4態様の概略構成を示す切断端面図であり、
図5は、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の第5態様の概略構成を示す切断端面図である。
【0023】
図1~5に示すように、有機EL表示装置10は、TFT素子(図示を省略する)を有する基板11、第1層間絶縁膜12、第1電極13、有機化合物層14、第2電極15及び第2層間絶縁膜16をこの順で含む積層体として構成されていてもよい。本実施形態において、有機EL表示装置10は、有機化合物層14で発生した光が基板11側から取り出されるボトムエミッションタイプのものであってもよいし、有機化合物層14で発生した光が第2層間絶縁膜16側から取り出されるトップエミッションタイプのものであってもよい。
【0024】
基板11は、第1面11A及び当該第1面11Aに対向する第2面11Bを有する透明基板であって、例えば、第1面11A側にTFT素子が設けられていればよい。基板11としては、例えば、アルカリガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等のガラス基板;サファイア基板;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の樹脂基板等が用いられ得る。
【0025】
基板11の大きさ(平面視における大きさ)や厚さは、本実施形態に係る有機EL表示装置10の大きさや基板11の取扱性等を考慮して適宜設定され得るものであって、特に限定されるものではない。
【0026】
第1電極13及び第2電極15のいずれか一方は、陽極(アノード電極)を構成し、第1電極13及び第2電極15の他方は、陰極(カソード電極)を構成していればよい。例えば、第1電極13がアノード電極であって、第2電極15がカソード電極であってもよい。もちろん、第1電極13がカソード電極であって、第2電極15がアノード電極であってもよい。第1電極13と第2電極15とにより挟まれた有機化合物層14は、第1電極13側から第2電極15側に向かって正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層及び電子注入層をこの順で含む積層体であってもよい。第1電極13側から駆動電圧が印加されると、第1電極13から正孔が有機発光層に注入され、第2電極15から電子が有機発光層に注入される。有機発光層に注入された正孔と電子との結合により生じるエネルギーにより、有機発光層を構成する有機材料が励起させられ、励起状態から基底状態に戻るときに有機発光層が発光する。
【0027】
第1電極13が、相対的に光を透過しやすい透明導電材料により構成され、第2電極15が、相対的に光を透過し難い導電材料により構成されていてもよい。もちろん、第2電極15が、相対的に光を透過しやすい導電材料により構成され、第1電極13が、相対的に光を透過し難い導電材料により構成されていてもよい。透明導電材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム錫酸化物)、InZnO(Indium Zinc Oxide;インジウム亜鉛酸化物)、AlZnO(Aluminum Zinc Oxide;アルミニウム亜鉛酸化物)、AlTO(Aluminum Tin Oxide;アルミニウム錫酸化物)等が挙げられる。相対的に光を透過し難い導電材料としては、例えば、Mg、Ag、Mg/Ag(マグネシウム銀合金)、Al、Ca等の金属材料等が挙げられる。これらの金属材料は、相対的に低い仕事関数を有し、有機化合物層14の電子注入層に電子を効率よく注入することができると考えられる。なお、本実施形態における「透明」は、光の透過率(%)によって定義されることができ、透明であることが要求される又は透明であることが望ましい用途等に応じた波長の光の透過率(%)によって定義されてもよい。例えば、近赤外光を発する発光素子と当該近赤外光を受ける受光素子とを含む近接センサを有機EL表示装置10に設けるために透明であることが要求される又は透明であることが望ましい場合には、「透明」は、波長700nm~1400nmの光の透過率(%)によって定義され得る。また、有機EL表示装置10に撮像素子を設けるために透明であることが要求される又は透明であることが望ましいには、「透明」は、波長400nm~700nmの光の透過率(%)によって定義され得る。具体的には、「透明」とは、各用途等に応じた波長域の光の透過率が30%以上であることを意味し、好ましくは各用途等に応じた波長域の光の透過率が80%以上であればよい。したがって、例えば、相対的に光を透過し難い導電材料における各用途等に応じた波長域の光の透過率は、30%未満であり、好ましくは各用途等に応じた波長域の光の透過率が5%以下であればよい。なお、各波長域の光の透過率は、例えば、分光ヘーズメーター(製品名:HSP-150VIR,村上色彩技術研究所製)を用いて計測され得る。
【0028】
第1電極13は、有機化合物層14に対応する位置に設けられていればよい。すなわち、複数の第1電極13が、第1層間絶縁膜12上にマトリックス状に設けられている。なお、「マトリックス状」とは、所定の部材が所定の平面上における一方向及び当該一方向に直交する方向のそれぞれにおいて所定のピッチで並列している状態を意味する。例えば、「複数の第1電極13が第1層間絶縁膜12上にマトリックス状に設けられている」とは、第1層間絶縁膜12上において、各第1電極13が一方向(例えば、
図6及び
図7に示す第1方向D1)及び当該一方向に直交する方向(例えば、
図6及び
図7に示す第2方向D2)のそれぞれにおいて所定のピッチで並列していることを意味し、第1方向D1に並列する第1電極13のピッチと、第2方向に並列する第1電極13のピッチとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
第1電極13の平面視形状は、例えば、略円形状、長円形状、多角形状、ストライプ状等であってもよい。なお、「略」とは、第1電極13の形成時における製造誤差等をも含む概念であり、例えば、略円形状という場合、長径を1としたときの短径の範囲は、0.80、0.83及び0.86を含む第1グループの値と、0.89、0.92及び0.95を含む第2グループの値とによって定められてもよい。例えば、短径の範囲の下限は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つによって定められてもよい。例えば、短径の範囲の下限は、0.80以上であってもよく、0.83以上であってもよく、0.86以上であってもよい。また、短径の範囲の上限は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つによって定められてもよい。例えば、短径の範囲の上限は、0.89以下であってもよく、0.92以下であってもよく、0.95以下であってもよい。短径の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよく、例えば、0.80以上0.95以下であってもよく、0.83以上0.92以下であってもよく、0.86以上0.89以下であってもよい。また、短径の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよく、例えば、0.80以上0.86以下であってもよく、0.83以上0.86以下であってもよい。また、短径の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよく、例えば、0.89以上0.95以下であってもよく、0.92以上0.95以下であってもよい。
【0030】
第2層間絶縁膜16から基板11に向かう平面視において、第1電極13は、例えば、ポリイミド等により構成される絶縁膜17により囲まれていてもよい。すなわち、絶縁膜17は、当該平面視において、第1電極13の外周縁に重なるように位置していてもよい。
【0031】
第2電極15は、各有機化合物層14に電子を注入するための共通電極である。第2電極15は、基板11の第1面11A側の平面視において、隣接する有機化合物層14間に位置する開口部151を有する。
図6及び
図7に示すように、開口部151は、4つの有機化合物層14(サブピクセル)に囲まれる領域(
図6及び
図7において一点破線で示される矩形状の領域)の略中央に位置していてもよい。第2電極15が、相対的に光を透過し難い導電材料により構成される場合、この開口部151の存在により、有機EL表示装置10の厚さ方向に進行する光が透過しやすくなる。
【0032】
第2電極15が有する開口部151は、略円形状(
図6及び
図7参照)であってもよいし、長円形状、多角形状等であってもよい。開口部151の開口面積(総開口面積)を可能な限り大きくすることで、有機EL表示装置10の透過性能を向上させることができる。なお、開口部151の開口面積(総開口面積)を大きくすればするほど、第2電極15の電気抵抗が大きくなって消費電力も大きくなる傾向にあると考えられる。すなわち、有機EL表示装置10における透過性能と消費電力の大きさとはトレードオフの関係にあるということもできる。また、開口部151の開口面積(総開口面積)を大きくするためには、有機化合物層14の大きさを小さくしたり、隣接する有機化合物層14のピッチを大きくしたりすることが考えられる。しかし、有機化合物層14の大きさを小さくすると有機EL表示装置の輝度が低下すると推察される。また、隣接する有機化合物層14のピッチを大きくすると、有機EL表示装置に表示される画像が粗くなってしまうと推察される。本実施形態に係る有機EL表示装置10においては、後述するように、レンズ18を備えていることで、透過性能を向上させつつ、消費電力が大きくなるのを抑えることができるという効果が奏され得る。また、レンズ18を備えていることで、透過率を向上させる目的で、有機化合物層14の大きさを小さくしたり、隣接する有機化合物層14のピッチを大きくしたりする必要がなくなり、有機EL表示装置10の輝度を高めることができ、また画素密度を高くすることができ高精細な画像の表示が可能となるという効果も奏される。
【0033】
開口部151の大きさは、第2層間絶縁膜16から基板11に向かう平面視において、第1電極13が第2電極15によって覆われる程度であって、第2電極15の抵抗が大きくなり消費電力が大きくなり過ぎない程度であればよく、特に限定されるものではない。
【0034】
一対の第1電極13及び第2電極15の間に配置されている有機化合物層14は、各々が有機EL表示装置の単位画素を構成する赤色有機化合物層14R、緑色有機化合物層14G及び青色有機化合物層14Bを含んでいてもよいし、白色有機化合物層を含んでいてもよい。赤色有機化合物層14R、緑色有機化合物層14G及び青色有機化合物層14Bは、それぞれ、赤色光、緑色光及び青色光を放出する。白色有機化合物層は、白色光を放出する。有機化合物層14が白色有機化合物層を含む場合、有機EL表示装置10において画像等をカラーで表示するのであれば、カラーフィルターが備えられていてもよい。なお、有機化合物層14が赤色有機化合物層14R、緑色有機化合物層14G及び青色有機化合物層14Bを含む場合においても、各有機化合物層14R,14G,14Bに対応する着色層を有するカラーフィルターが備えられていてもよい。赤色有機化合物層14R、緑色有機化合物層14G及び青色有機化合物層14Bを構成する材料は、所定の電圧が印加されることにより所望の色で発光する蛍光性有機化合物を含有するものであれば特に限定されるものではない。当該蛍光性有機化合物としては、例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。有機化合物層14は、第1層間絶縁膜12上にマトリックス状に配置されている第1電極13上に設けられているため、有機化合物層14もまた、マットリックス状に設けられている。
【0035】
TFT素子は、一対の第1電極13及び第2電極15から赤色有機化合物層14R、緑色有機化合物層14G及び青色有機化合物層14Bに選択的に印加される電圧を制御することができる。TFT素子としては、既知の例えば多結晶シリコンTFT等が用いられ得る。TFT素子は、当該TFT素子上に形成されている第1層間絶縁膜12を貫通する配線電極を介して第1電極13に接続されている。
【0036】
第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜16を構成する材料としては、例えば、絶縁性を有する材料が用いられ得る。第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜16を構成する材料として、例えば、酸化ケイ素等の無機系材料や、フォトレジスト、アクリル樹脂等の樹脂系材料等が挙げられる。
【0037】
第2電極15と有機化合物層14(電子注入層)との間に、厚さ0.2nm~3.0nm程度の絶縁膜が設けられていてもよい。この絶縁膜が設けられていることで、トンネル効果により、第2電極15から有機化合物層14(電子注入層)に電子が注入されやすくなるものと推察される。当該絶縁膜を構成する材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、アルミナ(Al2O3)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。なお、第2電極15と有機化合物層14との間に上記絶縁膜が設けられている場合において、有機化合物層14は、第1電極13側から第2電極15側に向かって正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層及び電子輸送層をこの順に含む積層体であってもよい。この場合において、上記絶縁膜が、電子注入層としての機能を果たし得るものと考えられる。
【0038】
本実施形態に係る有機EL表示装置10において、第2電極15の開口部151に対向する位置にレンズ18が設けられていてもよい。一般に、開口部を有する第2電極(カソード電極)を備える有機EL表示装置において、その厚さ方向(例えば、
図1に示す有機EL表示装置10で言えば、基板11から第2層間絶縁膜16に向かう方向又はその逆方向)に進行する光の多くが有機EL表示装置を透過し難い。これは、有機EL表示装置を透過する光(例えば、外光)は、第2電極の開口部を通過すると考えられるが、第2電極が相対的に光を透過させ難い材料(例えば、マグネシウム、銀、マグネシウム銀合金等の金属材料等)で構成されている場合には、第2電極の表面で多くの光が反射してしまうからであると推察される。その結果、有機EL表示装置の透過率を向上させ難いという問題がある。本実施形態に係る有機EL表示装置10においては、第2電極15の開口部151に対向する位置にレンズ18が設けられていることで、レンズ18が設けられていない場合には第2電極15の表面で反射してしまうような方向に進行する光であってもレンズ18を介して開口部151に向かって集光し、当該開口部151を通過しやすくなるため、透過率を向上させることができる(
図8参照)。
【0039】
レンズ18は、第2電極15のすべての開口部151に対向する位置に設けられていてもよいし、一部の開口部151に対向する位置に設けられていてもよい。本実施形態に係る有機EL表示装置10が、当該有機EL表示装置10の観察者側を表面としたときの裏面側を視認可能な、いわゆる透過型の有機EL表示装置10である場合には、すべての開口部151に対向する位置にレンズ18が設けられていてもよいが、当該有機EL表示装置10において要求される光透過率に応じて、一部の開口部151に対向する位置にレンズ18が設けられていてもよい。また、有機EL表示装置10を含むデバイス(例えば、スマートフォン等)において、一の開口部151を通じて赤外光を発する発光素子と、他の開口部151を通じて当該赤外光を受ける受光素子とを含む近接センサ等が設けられている場合、当該赤外光が通過する開口部151に対向する位置にレンズ18が設けられていてもよい。
【0040】
有機EL表示装置10の第1態様(
図1参照)として、第1基板11を下方に位置させ、第2層間絶縁膜16を上方に位置させた状態での側面視において、レンズ18は、開口部151の上方、例えば、第2層間絶縁膜16上における開口部151に対向する位置に設けられていてもよい。
【0041】
有機EL表示装置10の第2態様(
図2参照)として、第1基板11を下方に位置させ、第2層間絶縁膜16を上方に位置させた状態での側面視において、レンズ18は、開口部151の下方、例えば、第1電極13を取り囲む絶縁膜17の下方における開口部151に対向する位置に設けられていてもよい。
【0042】
有機EL表示装置10の第3態様(
図3参照)及び第4態様(
図4態様)として、第1基板11を下方に位置させ、第2層間絶縁膜16を上方に位置させた状態での側面視において、レンズ18は、開口部151の上方、例えば、第2層間絶縁膜16上における開口部151に対向する位置に設けられている第1レンズ181と、開口部151の下方、例えば、第1電極13を取り囲む絶縁膜17の下方における開口部151に対向する位置に設けられている第2レンズ182とを含んでいてもよい。この場合において、開口部151の上方に第1レンズ181が設けられている場合にはその開口部151の下方に第2レンズ182が設けられていなくてもよく、開口部151の下方に第2レンズ182が設けられている場合にはその開口部151の上方に第1レンズ181が設けられていなくてもよい(
図3参照)。また、開口部151上方に第1レンズ181が設けられ、かつその開口部151の下方に第2レンズ182が設けられていてもよい(
図4参照)。
【0043】
有機EL表示装置10の第5態様(
図5参照)として、第1基板11を下方に位置させ、第2層間絶縁膜16を上方に位置させた状態での側面視において、レンズ18は、開口部151の上方、例えば、第2層間絶縁膜16上における開口部151に対向する位置とともに、有機化合物層14に対向する位置にも設けられていてもよい。有機化合物層14で発生した光が第2層間絶縁膜16側から取り出されるトップエミッションタイプの有機EL表示装置10においては、有機化合物層14で発生した光がレンズ18を通じて取り出されることになり、有機EL表示装置10の輝度をさらに高めることができる。
【0044】
レンズ18の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、球面レンズであってもよいし、シリンドリカルレンズであってもよい。レンズ18の形状が球面レンズである場合、レンズ18は、各開口部151に対して設けられていればよい(
図6参照)。レンズ18の形状がシリンドリカルレンズである場合、レンズ18は、複数の開口部151に対して設けられていればよい(
図7参照)。
【0045】
レンズ18を構成する材料は、光透過性を有する材料であればよく、例えば、感光性レジスト材料等の樹脂材料(有機材料)であってもよいし、SiO2等の無機材料であってもよい。レンズ18を構成する材料は、光学設計によって比較的高い自由度を持って選定され得る。
【0046】
第2電極15側から第1電極13側に向かう平面視において、レンズ18の大きさは、レンズ18に入射する光(例えば、外光)が開口部151を通過するような大きさ、すなわち開口部151を覆うことのできる大きさであればよいが、レンズ18の一部が有機化合物層14の発光領域14Aに重ならないような大きさであってもよく、第1電極13に重ならないような大きさであってもよい。本実施形態に係る有機EL表示装置10において、有機化合物層14の一部の発光する領域14Aで発光すると推察される。本実施形態において、第1電極13の外周縁部は絶縁層17に被覆されているため、絶縁層17により囲まれた第1電極13上の領域が、有機化合物層14と直接的に接触している。第1電極13上の当該領域から有機化合物層14に対し、有機EL表示装置10の厚さ方向に正孔が注入されるため、有機化合物層14のうちの当該領域に相当する領域が発光する領域14Aであると考えられる(
図9参照)。そのため、レンズ18の一部が有機化合物層14の発光領域14Aに重なってしまうと、有機化合物層14で発生し、第2層間絶縁膜16側又は基板11側に取り出される光の一部がレンズ18を通過してしまう。それにより、有機EL表示装置10において光の取り出される方向が変化してしまい、画像等を高精細に表示することが困難となるおそれがある。したがって、レンズ18の大きさが有機化合物層14の発光領域14Aに重ならないような大きさ、好ましくは第1電極13に重ならないような大きさであって、レンズ18が有機化合物層14の発光領域14Aに重ならない位置、好ましくは第1電極13に重ならない位置に設けられていることで、所望とする方向に光を取り出すことができ、画像等を高精細に表示することができるという効果が奏され得る。
【0047】
本実施形態に係る有機EL表示装置10が、有機化合物層14にて発生する光を第2層間絶縁膜16側から取り出すトップエミッションタイプのものである場合、第1電極13側から第2電極側に向かう平面視において、開口部151に対向する位置に設けられる第2レンズ182の大きさは、第2レンズ182の一部が有機化合物層14の発光領域14Aや第1電極13に重なるような大きさであってもよい。この場合には、有機化合物層14にて発生する光が第2レンズ182とは反対側から取り出され、第2レンズ182を通過することがないため、有機EL表示装置10において光の取り出される方向が変化するという問題が生じるおそれがないためである。
【0048】
上述した構成を有する有機EL表示装置10においては、有機EL表示装置10の厚さ方向(例えば、
図1に示す有機EL表示装置10で言えば、基板11から第2層間絶縁膜16に向かう方向又はその逆方向)に進行する光(例えば、外光)が、開口部151に対向する位置に設けられているレンズ18(第1レンズ181及び/又は第2レンズ182)を通って開口部151に向かって集光されるため、有機EL表示装置10の厚さ方向における光の透過率を向上させることができる。よって、本開示によれば、透過性能に優れた有機EL表示装置10を提供することができる。
【0049】
上述した構成を有する有機EL表示装置10の製造方法の一例を説明する。
図10A~
図10Dは、本実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法の各工程を説明するための切断端面図である。なお、以下においては、
図1に示す構成を有する有機EL表示装置10を製造する方法を例に挙げて説明する。
【0050】
第1面11A及び第1面11Aに対向する第2面11Bを有し、第1面11A上にTFT素子(図示を省略する)及び第1層間絶縁膜12を有する基板11を準備し、第1層間絶縁膜12上の所定の位置に第1電極13を形成する(
図10A参照)。例えば、第1電極13に対応する貫通孔を有する蒸着マスクを準備し、第1電極13を構成する材料(例えば、ITO、InZnO等の透明導電性材料等)を、蒸着マスクを介して第1層間絶縁膜12上の所定の位置に真空蒸着することで、第1電極13を形成してもよい。また、第1層間絶縁膜12上に第1電極13を構成する材料(例えば、ITO、InZnO等の透明導電性材料等)を成膜し、フォトリソグラフィー法により、第1層間絶縁膜12上の所定の位置に第1電極13を形成してもよい。なお、第1層間絶縁膜12上の所定の位置(第1電極13を形成する位置)には、第1層間絶縁膜12にスルーホールビアが形成されていてもよく、当該所定の位置に第1電極13が形成されることで、当該スルーホールビアを介して第1電極13とTFT素子とが電気的に接続され得る。
【0051】
次に、第1電極13及び第1層間絶縁膜12を覆う絶縁膜(例えばポリイミド等)を、従来公知の塗工法(例えば、ダイコート法、スピンコート法等)により形成し、当該絶縁膜のパターニングにより、第1電極13を取り囲む絶縁膜17を形成する(
図10B参照)。
【0052】
続いて、露出する第1電極13上に有機化合物層14を形成する(
図10C参照)。例えば、有機化合物層14に対応する貫通孔を有する蒸着マスクを準備し、有機化合物層14を構成する材料(例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等の蛍光性有機化合物等)を、蒸着マスクを介して第1電極13上に真空蒸着することで、有機化合物層14を形成してもよい。なお、有機化合物層14上に、所望により厚さ0.2nm~3.0nm程度の絶縁膜(例えば、フッ化リチウム(LiF)等)を形成してもよい。
【0053】
有機化合物層14上に第2電極15を形成し、第2電極15上に第2層間絶縁膜16を形成する(
図10D参照)。例えば、第2電極15を構成する材料(例えば、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、マグネシウム銀合金(Mg/Ag)等)を真空蒸着して、有機化合物層14及び絶縁膜17を覆う金属層を形成し、当該金属層のパターニングにより開口部151を形成することで、第2電極15を形成してもよい。
【0054】
次に、第2電極15の開口部151に対向する位置にレンズ18を形成する。
レンズ18を形成する方法としては、例えば、第2層間絶縁膜16上にネガ型感光性レジスト膜20を形成し(
図11A参照)、第2電極15をマスクとして基板11側から露光し(
図11B参照)、現像することにより開口部151に対向する位置にレンズ18を形成してもよい(
図11C参照)。第2電極15の開口部151を介して露光光Lがネガ型感光性レジスト膜20に照射されるが、開口部151のエッジ近傍においては露光光の回折現象が起こり得る。これにより、開口部151を介して露光光Lが照射されるネガ型感光性レジスト膜20に露光量分布が形成されるため、開口部151に対向する位置にレンズ18を形成することができる。
【0055】
レンズ18を形成する他の方法としては、例えば、第2層間絶縁膜16上にネガ型感光性レジスト膜20を形成し(
図11A参照)、遮光部31、半透過部32及び透光部33を少なくとも有する多階調露光マスク30を介して露光し(
図12A参照)、現像することにより開口部151に対向する位置にレンズ18を形成してもよい(
図12B参照)。
【0056】
レンズ18を形成する他の方法として、例えば、第2層間絶縁膜16上における開口部151に対向する位置に、レンズ18を構成する材料(例えば、感光性(紫外線硬化型)レジスト材料等の樹脂材料等)の液滴40をインクジェット法により滴下し(
図13A参照)、当該材料の液滴40に例えば紫外線UV等を照射して硬化させることで、レンズ18を形成してもよい(
図13B参照)。また、第2層間絶縁膜16上における開口部151に対向する位置に、レンズ18を構成する材料50(例えば、感光性(紫外線硬化型)レジスト材料等の樹脂材料等)を塗布し、レンズ18に対応する凹部61を有する版60(石英ガラス等により構成される透明な版等)を用いて賦型し、当該版60を介して露光して材料50を硬化させた後(
図14A参照)、離型することによりレンズ18を形成してもよい(
図14B参照)。
【0057】
上記のようにして第2電極15の開口部151に対応する位置にレンズ18を形成することで、本実施形態に係る有機EL表示装置10を製造することができる。このようにして製造される有機EL表示装置10によれば、有機EL表示装置10の厚さ方向における光の透過率を向上させることができる。
【0058】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。