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特許7588961ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤
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  • 特許-ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20241118BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20241118BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/87
A61P3/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020040961
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021141824
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相星 晴佳
(72)【発明者】
【氏名】正箱 尚久
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/136274(WO,A1)
【文献】J. Med. Plant Res.,2010年,vol.4, no.20,pp.2113-2120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/105
A61K 36/87
A61P 3/06
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載の剤を含むコレステロールミセル形成阻害用経口組成物。
【請求項3】
前記ブドウ種子抽出物の含有量が0.01~90質量%である請求項2に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤、および同剤を含む食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールの代謝異常による血中コレステロール値の上昇は、メタボリックシンドロームを引き起こす要因の1つであり、動脈硬化や心筋梗塞などの心血管疾患のリスク因子である。これらの予防には、コレステロール代謝を改善し、血中コレステロール値を下げることが重要である。体内のコレステロールの70~80%は、肝臓で合成される内因性コレステロールが占め、20~30%は食事から消化吸収される外因性コレステロールが占める。高コレステロール食の継続により小腸からの吸収量が増加し、血中コレステロール値の上昇を引き起こすため、高コレステロール血症の予防には食生活の改善が重要であるが
コレステロールを多く含む乳製品、脂肪、肉類、卵等の摂取を避けることは困難である。
【0003】
食事により摂取されたコレステロールは、腸管内においてタウロコール酸やリン脂質から成る胆汁酸とミセルを形成し腸管壁より体内へと取り込まれて血中へ循環する。よって、前記ミセルの形成を阻害することで腸管からのコレステロール吸収を抑制し、血中コレステロール値を低下させる方法が提案されてきた。例えば、特許文献1には、陰イオン交換樹脂を用いて腸管内で胆汁酸を吸着し、コレステロールの吸収を抑制する方法が記載されている。また、特許文献2には、茶カテキンがコレステロールミセルの形成を阻害する旨が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭53-10386号公報
【文献】特開2006-104213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、一日あたり4~9gの陰イオン交換樹脂の摂取が必要であり、強塩基性粉末の懸濁液を服用するため消化管への副作用があり、また強塩基性のため食品組成物または飲料組成物への適用が困難であった。また、特許文献2に記載の方法は、茶カテキンが苦みや渋み、収斂感を呈する物質であるため、有効量を摂取可能な食品組成物または飲料組成物とする際に、嗜好性を低下させるという問題があった。これらのことから、食品組成物に適用可能であり、より低濃度でコレステロールミセル形成を阻害することができる素材が所望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、ブドウ種子抽出物が上記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
本発明は、例えば以下に記載の発明を包含する。
項1.
ブドウ種子抽出物を含有するコレステロールミセル形成阻害剤。
項2.
請求項1に記載の剤を含む経口組成物。
項3.
前記ブドウ種子抽出物の含有量が0.01~90質量%である請求項2に記載の経口組成物。
項4.
ブドウ種子抽出物によりコレステロールミセルの形成を阻害する方法。
【発明の効果】
【0008】
より低濃度でコレステロールミセル形成を阻害することができる剤が提供され、前記剤は食品組成物または飲料組成物に適用可能である。前記剤を配合した食品組成物または飲料組成物は嗜好性に優れているのみならず、より低い濃度で効果が得られるため、需要者が食品組成物または飲料組成物として摂取すべき量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】コレステロールミセル形成阻害効果の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は食品組成物に対して、ブドウ種子抽出物を含有する食品組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本発明に用いられるブドウ種子抽出物は、ブドウ種子抽出物であれば特に限定されることはなく、あらゆる品種由来の抽出物またはその混合物を用いることができる、例えば、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、リースリング、ピノ・ノワール、ネッピオーロ、巨峰、マスカット、甲斐路、デラウェア、ミラトルガウ、ネオ・マスカット、甲州、白羽、セレサ、マスカット・ベリーAおよびナイアガラなどが挙げられるが、シャルドネが好ましい。抽出物の採取方法は特に制限されず、例えばエタノール抽出法、ヘキサン抽出法などの有機溶媒抽出法、高温水抽出法、樹脂吸着法、加熱還流抽出法が挙げられ、高温水抽出法あるいはエタノール抽出法、およびこれらの組み合わせが好ましく用いられる。上記方法で得られた抽出物は、溶媒を含んだ液体、あるいは溶媒を除去した乾燥粉末のいずれも好ましく用いることができる。溶媒除去および乾燥の方法としては、過大な熱負荷がかからないものであれば特に限定されることはなく、減圧水蒸気蒸留、減圧単蒸留、減圧精密蒸留、噴霧乾燥、凍結乾燥、熱乾燥などが例示され、好ましくは噴霧乾燥が用いられる。
【0012】
このような本発明のブドウ種子抽出物を用いた製品としては、より具体的には、肥満、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、インスリン抵抗性、動脈硬化、体脂肪蓄積、脂質代謝異常、脂肪肝、高脂血症、高コレステロール血症、生活習慣病、メタボリックシンドロームの予防・改善をコンセプトとした機能性飲食品、疾病者用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品などを挙げることができる。
【0013】
本発明の剤を含有する食品組成物または飲料組成物の形態としては、特に限定されないが、キャンディー、飴、トローチ、ガム、グミ、ゼリー、フィルム状食品、タブレット、粉末食品、粉末飲料、液体飲料、炭酸含有飲料、アルコール含有飲料、ゼリー飲料、ジャム、ビスケット、パン、ショートブレッド、アイスクリーム、氷菓等を挙げることができる。また、さらに、本発明の剤を含有する上記以外の経口組成物として、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、細粒剤等にも適用することができる。
【0014】
ブドウ種子抽出物の乾燥重量での含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれは特に制限されないが、例えば組成物全量に対して0.01~90質量%であってよい。また例えば、キャンディー、飴、トローチ、ガム、グミ、ゼリー、フィルム状食品などの場合は、組成物全量に対して乾燥重量で0.1~70質量%、好ましくは1~60質量%、最も好ましくは5~50質量%程度配合すればよい。粉末食品、粉末飲料、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、細粒剤などの場合は、組成物全量に対して、乾燥重量で1~90質量%程度、好ましくは5~80質量%程度、最も好ましくは10~70質量%程度配合すればよい。また例えば、上記以外の組成物の場合は、乾燥重量で0.01~50質量%程度、好ましくは0.1~30質量%程度、最も好ましくは1~20質量%程度配合すればよい。また、ブドウ種子抽出物の含有量は乾燥重量で0.5、1、2,3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45質量%であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term “comprising” includes “consisting essentially of” and “consisting of.”)。また、本発明は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【実施例
【0016】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0017】
<コレステロールミセル形成阻害効果の評価>
[コレステロールミセルの形成]
Nagaokaら方法(Nagaoka S. et al., J. Nutr., 129: 1725-1730, 1999)をもとに、0.1 mmol/Lのコレステロール(ナカライテスク社製:Cholesterol)、1 mmol/Lのオレイン酸(東京化成工業社製:Oleic Acid)、0.5 mmol/Lのモノオレイン(東京化成工業社製:Monoolein)、0.6 mmol/Lのホスファチジルコリン(シグマアルドリッチ社製:L-α-Phosphatidylcholine)をクロロホルム(ナカライテスク社製:Chloroform)に溶解し、乾固させたのち、6.6 mmol/Lのタウロコール酸ナトリウム(東京化成工業社製:Sodium Taurocholate)、132 mmol/L塩化ナトリウム(ナカライテスク社製:Sodium Chloride)を含むリン酸緩衝液(gibco社製:PBS pH 7.4 (1X))を加え、ミセル溶液を調製した。
【0018】
前記ミセル溶液に1mlに対して試験サンプルとしてブドウ種子エキス(サンブライト社製:exGrape Seed OPC30)あるいは没食子酸エピガロカテキン(東京化成工業社製:(-)-Epigallocatechin Gallate Hydrate (以下、EGCGと記載)を、0.005mg、0.05mg、あるいは0.1mgの割合で添加したもの、および試験サンプル非添加の試験溶液に対して周波数37kHzで3分間超音波処理(シャープ社製:超音波洗浄機UT-606H)したのち37℃で24時間振とうさせながらインキュベートし、コレステロールミセルを形成させた。このコレステロールミセル溶液1mlを37℃、100,000×gで60分間遠心し、コレステロールミセルが含まれる上清を回収した。
【0019】
[コレステロールミセル中のコレステロール抽出]
回収した上清1mlにクロロホルム8ml、メタノール(和光純薬工業社製:Methanol)4mlを加え、40℃に設定したインキュベーター内で5分間静置後、30分間振とうさせた。超純水を2ml加え690×g、室温で10分間遠心し、上層を除去して濃縮遠心または窒素ガスにより溶媒を乾固させた。残渣からヘキサン(シグマアルドリッチ社製:Hexane)抽出によりコレステロールを抽出し、下記LCMS測定試料に用いた。
【0020】
[コレステロール濃度の定量]
前記試料を下記の条件でLCMSにより解析し、コレステロール濃度を定量した。各試験サンプルによるコレステロールミセル形成阻害率は、{試験サンプル非添加時コレステロール濃度-試験サンプル添加時コレステロール濃度)/試験サンプル非添加時コレステロール濃度}×100の式により算出し、結果を図1に示した。
【0021】
LCMS測定条件
・装置:Agilent 1290 Infinity II LC (Agilent社製)
・カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18(100×2.1mm I.D.,1.7μm,Waters社製)
・カラム温度:30℃
・流速:0.3ml/min
・移動相:93容量%メタノール/7容量%水
・注入量:1μl
・検出波長:UV 202nm
【0022】
当該結果から、ブドウ種子抽出物のコレステロールミセル形成阻害率は、EGCGに比して高いことがわかり、コレステロールミセル形成阻害作用を期待して各種組成物に配合すする際に、EGCGよりも少量の添加で効果を発揮しうることが示唆された。
【0023】
以下表1~表5に、本発明の組成物の実施形態の処方例を示す。なお各成分の配合量は特に記載のない限り質量%を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】


図1