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特許7588970電気生理学的マップにおける一次及び二次活性化の視覚的区別
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電気生理学的マップにおける一次及び二次活性化の視覚的区別
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/343 20210101AFI20241118BHJP
【FI】
A61B5/343
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020100736
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2020199265
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】16/437,090
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】エリヤフ・ラブナ
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236034(US,A1)
【文献】特表2019-506971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えたシステムの作動方法であって、
前記プロセッサが、心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを受信することと、
前記解剖学的マップの少なくとも1つの領域について、前記プロセッサが、位置及び前記位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(EGM)信号を受信することと、
前記双極心臓内EGM信号において、前記プロセッサが、一次活性化及び二次活性化を識別することと、
前記プロセッサが、前記双極心臓内EGM信号の中の1つの双極心臓内EGM信号の前記一次活性化及び前記二次活性化を識別することが、
(i)前記プロセッサが、前記双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択することと、
(ii)前記プロセッサが、選択された前記ノイズレベルを超える前記双極心臓内EGM信号の極大値に、活性化としてラベル付けすることと、
(iii)前記プロセッサが、前記活性化としてラベル付けされた前記極大値のうち、所与の心周期にわたって、最大絶対値を有する極大値に、一次活性化としてラベル付けし、かつ他の極大値に、二次活性化としてラベル付けすることと、を含み、
前記プロセッサが、識別された前記一次活性化及び前記二次活性化を含む、前記領域上の前記双極心臓内EGM信号の表面表現を導出することと、
前記プロセッサが、前記解剖学的マップに重ね合わせられた前記表面表現を提示することと、を含む、システムの作動方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記表面表現を提示することが、前記プロセッサが、視覚的インジケータの第1の型を使用して前記一次活性化を提示することと、前記プロセッサが、視覚的インジケータの第2の型を使用して前記二次活性化を提示することと、を含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項3】
前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる幾何学的形状を含む、請求項2に記載のシステムの作動方法。
【請求項4】
前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる色を有する、請求項2に記載のシステムの作動方法。
【請求項5】
前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、局所活性化時間(LAT)を表す、請求項2に記載のシステムの作動方法。
【請求項6】
システムであって、
心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記解剖学的マップの少なくとも1つの領域について、位置及び前記位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(EGM)信号を受信するように、
前記双極心臓内EGM信号において、一次活性化及び二次活性化を識別するように、
識別された前記一次活性化及び前記二次活性化を含む、前記領域上の前記双極心臓内EGM信号の表面表現を導出するように、かつ
前記解剖学的マップに重ね合わせられた前記表面表現を提示するように構成され、
前記プロセッサが、さらに、前記双極心臓内EGM信号の中の1つの双極心臓内EGM信号の前記一次活性化及び前記二次活性化を、
(i)前記双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択することと、
(ii)選択された前記ノイズレベルを超える前記双極心臓内EGM信号の極大値に、活性化としてラベル付けすることと、
(iii)前記活性化としてラベル付けされた前記極大値のうち、所与の心周期にわたって、最大絶対値を有する極大値に、一次活性化としてラベル付けし、かつ他の極大値に、二次活性化としてラベル付けすることと、
によって、識別するように構成されている、システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、視覚的インジケータの第1の型を使用して前記一次活性化を提示することと、視覚的インジケータの第2の型を使用して前記二次活性化を提示することとによって、前記表面表現を提示するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記視覚的インジケータの型の前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる幾何学的形状を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記視覚的インジケータの型の前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる色を有する、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、局所活性化時間(LAT)を表す、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気生理学的マッピングに関し、特に、心臓電気生理学的マップの可視化に関する。
【背景技術】
【0002】
マッピングされた心臓電気生理学的(electrophysiological、EP)信号を視覚化するための方法は、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2010/0268059号は、患者の心臓の静脈網内のさまざまな位置に設置されたカテーテルを介して取得された心臓情報にアクセスすることを含む方法を記載している。心臓情報は、位置情報、電気的情報、及び機械的情報を含む。本方法は、局所電気的活性化時間を解剖学的位置にマッピングして、電気的活性化時間のマップを生成する。本方法は、局所機械的活性化時間を解剖学的位置にマッピングして、機械的活性化時間のマップを生成する。本方法は、対応する局所機械的活性化時間から局所電気的活性化時間を減算することによって電気機械的遅延マップを更に生成し、少なくとも電気機械的遅延マップをディスプレイにレンダリングする。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2012/0237093号は、体腔の三次元的表面上の位置と、その位置を表す二次元座標フレーム内の座標との間に、一対一対応を構築することからなる方法を記載している。本方法はまた、その位置での、それぞれの時変電位を記録することも含む。本方法は、二次元座標フレームのマップを表示すること、及びその位置の座標に対応するマップ内の位置で、時変電位のそれぞれのグラフィック表現を提示することを更に含む。一実施形態では、グラフィック表現は、電位に応じて選択される長さを有する、長方形バーを含む。別の実施形態では、グラフィック表現は、電位に応じて選択される色を有する、バーを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを受信することを含む方法を提供する。少なくとも解剖学的マップの1つの領域について、位置、及びその位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(electrogram、EGM)信号を受信する。双極心臓内EGM信号において、一次活性化及び二次活性化を識別する。識別された一次活性化及び二次活性化を含む、領域上の双極心臓内EGM信号の表面表現が導出される。表面表現は、解剖学的マップに重ね合わせられて提示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、表面表現を提示することは、視覚的インジケータの第1の型を使用して一次活性化を提示することと、視覚的インジケータの第2の型を使用して二次活性化を提示することとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、視覚的インジケータの第1及び第2の型は、第1及び第2の異なる幾何学的形状を含む。他の実施形態では、視覚的インジケータの第1及び第2の型は、第1及び第2の異なる色を有する。
【0007】
一実施形態では、視覚的インジケータの第1及び第2の型は、局所活性化時間(Local Activation Time、LAT)を表す。
【0008】
別の実施形態では、双極心臓内EGM信号の中の1つの双極心臓内EGM信号の一次活性化及び二次活性化を識別することは、(a)双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択することと、(b)選択されたノイズレベルを超える双極心臓内EGM信号の極大値に、活性化としてラベル付けすることと、(c)所与の心周期にわたって、最大絶対値を有する活性化に、一次活性化としてラベル付けし、かつ他の活性化に、二次活性化としてラベル付けすることと、を含む。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを含むシステムが更に提供される。メモリは、心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを記憶するように構成される。プロセッサは、(i)解剖学的マップの少なくとも1つの領域について、位置及びその位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(EGM)信号を受信するように、(ii)双極心臓内EGM信号において、一次活性化及び二次活性化を識別するように、(iii)識別された一次活性化及び二次活性化を含む、領域上の双極心臓内EGM信号の表面表現を導出するように、かつ(iv)解剖学的マップに重ね合わせられた表面表現を提示するように構成される。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、心臓の三次元(three-dimensional、3D)ナビゲーション及び電気生理学的(EP)信号解析システムの概略的な絵画図である。
図2】本発明の一実施形態による、心室解剖図の一部分に重ね合わせられた、2つの連続する時間での、双極心臓内電位図(EGM)活性化型のドットマッピング可視化を示すボリュームレンダリングを抜粋した図である。
図3】本発明の一実施形態による、図2に示される双極心臓内電位図(EGM)振幅のドットマッピング可視化のための方法及びアルゴリズムを概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
患者の心臓電気生理学的(EP)異常状態を特徴付けるために、カテーテルベースのEPマッピングシステムを使用して、患者の心室などの心臓の少なくとも一部のEPマップを生成することができる。典型的なカテーテルベースのEPマッピング手技では、検知電極を備えたカテーテルの遠位端が、EP信号を検知するために心臓に挿入される。システムを動作させている医師が遠位端を心臓の内部に移動させるときに、EPマッピングシステムは、さまざまな心臓位置におけるEP信号、並びに遠位端のそれぞれの位置を取得する。これらの取得された信号に基づいて、マッピングシステムのプロセッサは、必要なEPマップを生成する。
【0013】
いくつかの場合では、EPマッピングシステムのプロセッサは、例えば心臓の少なくとも一部分のボリューム(3D)レンダリングによって視覚化された心臓解剖図に重ね合わせられた、測定されたEPマップを提示する。かかるEPオーバレイレンダリングは、心臓の不規則性を診断する際に非常に有用であり得る。例えば、解剖学的マップに重ね合わせられたセイル又はバーの形態の双極心臓内電位図(EGM)振幅を使用することができ、そこで、セイル又はバーの高さは、視覚化された位置(position)での双極心臓内EGM信号振幅の測定値を与える。
【0014】
半透明のセイルの形態の双極心臓内EGM振幅のリップルマッピング可視化のための方法は、該出願が本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2018年12月20日に出願された、米国特許出願第16/228,426号、名称「Electrophysiological ripple-mapping visualization method」記載されている。
【0015】
しかしながら、単一の心周期中に複数の異常なEP活性化(例えば、重複電位、遅延電位、分裂信号)が存在する場合、(例えば、セイル又はバーの形態の)リップルマッピングによる明らかな可視化は非常に困難である。
【0016】
下に記載する本発明の実施形態は、各心周期を解析して、双極心臓内EGM信号における、一次活性化、及び1つ又は2つ以上の二次活性化(存在する場合又はしない場合がある)を識別する。最大双極心臓内EGM絶対値(ピークツーピーク)による活性化は、一次活性化であると想定され、全ての他の活性化(複数可)は、二次活性化である。活性化が一次であるか二次であるかに応じて、プロセッサは、3Dレンダリング上に、ぞれぞれ、視覚的インジケータの第1の型又は視覚的インジケータの第2の型を表す。視覚的インジケータの型は、例えば、小さい幾何学的形状(例えば、ドット、小さい正方形)を含むことができ、該形状は、異なる色を有することができる。別の例として、視覚的インジケータは、一次活性化の双極心臓内EGM値が検出されたか、又は二次活性化の双極心臓内EGM値が検出されたかに従って、点滅モードなどの他の異なる外観を有することができる。明確にするため、医師は、任意の所与の時点で、マップ上の唯一の活性化を提示するように選択することができる。
【0017】
一例として、一実施形態では、開示される方法は、小さいドットを使用し、このドットは、二次活性化が存在するときには常に青色になり、一次活性化が存在するときには常に白色になる(又は医師が選択した任意の他の色になる)。
【0018】
通常、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0019】
活性化の型に従って異なる視覚形態の視覚的インジケータ(ドットなど)によって双極心臓内EGM活性化データを3D心臓解剖図上に重ね合わせるための、開示される可視化技術は、医師が、分裂EP信号、重複EP電位、及び遅延EP電位などの異常な挙動を組織位置が示していることを容易に確かめることを可能にする。
【0020】
したがって、特別な注意を医師に要求する、心臓内の迷入組織の位置の可視化を容易にすることは、カテーテルベースのEPマッピング手技の診断値を向上させることができる。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、心臓の三次元(3D)ナビゲーション及び電気生理学的(EP)信号解析システム20の概略的な絵画図である。システム20は、実質的に任意の生理学的パラメータ又はそのようなパラメータの組み合わせを解析するように構成され得る。本明細書の説明において、一例として、解析される信号は、心臓内EGM及び/又は心臓外(体表)心電図(electrocardiogram、ECG)の電位-時間関係であると想定される。かかる関係を完全に特徴付けるために、プロセッサ40は、双極心臓内EGM信号を使用して、局所活性化時間(LAT)マップなどのEPマップ(例えば)を生成することができる。LATマップを生成するための1つの方法が、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,050,011号に記載されている。
【0022】
本開示の文脈では、「解剖学的マップ」という用語は、心臓の少なくとも一部分の三次元形状をモデル化し、また、その上に重ね合わせられた1つ又は2つ以上のパラメータを有し得る、マップを指すことができる。EPマップは、1つ又は2つ以上の電気生理学的パラメータが重ね合わせられた解剖学的マップの1つの特殊な場合である。LATマップは、EPマップの一例であり、したがって、同じく一種の解剖学的マップと考えられる。
【0023】
図1は、システム20がプローブ24を使用して心臓34の実際の電気的活性を測定する、調査手技を示す。典型的には、プローブ24は、システム20を使用する医師28によって実施されるマッピング手技の間に患者26の身体の中に挿入されるカテーテルを備える。プローブ24の遠位端32は、電極22を有すると想定される。手技中、患者26は、接地電極23に取り付けられると想定される。加えて、電極29は、心臓34領域において患者26の皮膚に取り付けられると想定される。一実施形態では、プローブ24は、プローブが心腔の一部分の上を運動するときに、局所双極心臓内EGMを取得する。これらの時点で、プローブ24の位置も記録される。測定した信号は、上述のように、及び数ある用法の中でも、患者26の心臓34の壁組織の少なくとも一部のLATマップを作成するために使用される。
【0024】
システム20は、メモリ44と通信する処理ユニット42を備える、システムプロセッサ40によって制御される。いくつかの実施形態では、システムプロセッサ40に含まれるメモリ44は、患者26の心臓34の壁組織の少なくとも一部のLAT及び/又は双極心臓内EGMマップ62を記憶する。プロセッサ40は、典型的にはコンソール46内に載置されており、該コンソールは、医師28がプロセッサと対話するために使用する典型的にはマウス又はトラックボールなどのポインティングデバイス39を含む操作制御部38を備える。
【0025】
上に記載したように、及び下に更に詳細に記載するように、プロセッサ40(特に処理ユニット42)は、プローブ追跡モジュール30と、ECGモジュール36と、ECG活性化型可視化モジュール35と、を備え、これらは、心臓26の解剖図の一部分の3Dレンダリング上に(すなわち、活性化が一次であるか異常であるかに応じて色を変化させるドットの形態で)双極心臓内EGM活性化を視覚化するために使用される。ECGモジュール36は、電極22及び電極29からの実際の電気信号を受信するよう連結されている。モジュールは、実際の信号を解析するように構成され、ディスプレイ48上に、標準的なECG形式で、典型的には、時間と共に変動するグラフ式表現で、解析の結果を提示することができる。
【0026】
プローブ追跡モジュール30は、典型的には、患者26の心臓内で、プローブ24の遠位端32の位置を追跡する。追跡モジュールは、当該技術分野において既知であるいかなるプローブ位置追跡方法を使用してもよい。例えば、モジュール30は、磁場ベースの位置追跡サブシステムを動作させることができる。(簡単にするために、かかるサブシステムの構成要素は、図1に示していない)。プロセッサ40は、追跡モジュール30を使用して遠位端32の位置を測定することができる。加えて、追跡モジュール30とECGモジュール36の両方を使用することによって、プロセッサは、遠位端の位置だけでなく、これらの特定の位置(location)において検出される実際の電気信号のLATも測定することができる。
【0027】
代替的に又は追加的に、追跡モジュール30は、電極23と電極29と電極22との間のインピーダンス、並びに、プローブ上に位置し得る他の電極に対するインピーダンスを測定することによって、プローブ24を追跡してもよい。(この場合には、電極22及び/又は電極29は、双極心臓内EGM及び位置追跡信号を提供することができる)。Biosense Webster(カリフォルニア州アーバイン)社により製造されるCarto 3(登録商標)システムは、磁場位置追跡と位置追跡に関するインピーダンス測定の両方を位置追跡に使用する。
【0028】
プロセッサ40によって行われる動作及び可視化の結果は、ディスプレイ48上で医師28に提示され、該ディスプレイは、典型的には、医師に対するグラフィックユーザインターフェース、電極22によって検知された双極心臓内EGM信号の視覚的表現、及び/又は調査されている間の心臓34の画像若しくはマップを提示する。一実施形態では、EP活性化型可視化モジュール35は、活性化の型(例えば、一次又は異常)に従ってさまざまな色のドットとして表される双極心臓内EGM活性化と重ね合わせられたLATマップを医師に提示する。
【0029】
プロセッサ40は、典型的には、本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを有する汎用コンピュータを備える。具体的には、プロセッサ40は、下に記載するように、開示される工程をプロセッサ40が行うことを可能にする、図3を含む本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行する。プロセッサ40によって実行されるソフトウェアは、例えば、電子的な形でネットワークを介してプロセッサ40にダウンロードされてもよいが、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアが磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの非一時的な有形の媒体に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0030】
電気生理学的マップにおける一次及び二次活性化の視覚的区別
図2は、本発明の一実施形態による、心室解剖図50の一部分に重ね合わせられた、2つの連続する時間での、双極心臓内電位図(EGM)活性化型のドットマッピング可視化を示すボリュームレンダリングを抜粋したものである。
【0031】
図2は、解剖学的マップに重ね合わせられた双極心臓内EGM活性化の型に従う、双極心臓内EGM信号の表面表現の表示された映像(例えば、システム20のディスプレイ48に表示される映像)からの、時間T及びT+ΔTでとった、2つの画面キャプチャを示す。図2に示されるように、キャプチャした一次パターン及び異常パターンは、典型的に数分の1秒程度である時間ステップΔTの範囲で変化する。
【0032】
図2では、ドット60及び66によって視覚化された、解析された活性化は、プロセッサ40によってグレースケールの解剖学的マップ上に重ね合わせられ、ドット60及び66の色は、ドット位置における双極心臓内EGM活性化型の指示を与える。図2では、白色ドット60は、一次活性化を指し、一方で、黒いドット66は、二次の異常な活性化を示す。
【0033】
いくつかの実施形態では、開示されるように双極心臓内EGM信号を視覚化するために、プロセッサ40は、以下の工程を適用することによって、双極心臓内EGM信号を解析する。
(i)双極心臓内EGM信号を事前にフィルタ処理し、定常基線を取得した後に、双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択する。
(ii)ピークが選択されたノイズレベルを超えたときには常に、双極心臓内EGM信号の絶対値の極大値に、活性化としてラベル付けする。
(iii)心拍毎に、所与の可視化ウインドウスケール上で、双極心臓内EGMの最大絶対値を有する活性化に、一次活性化としてラベル付けし、他の活性化に、二次活性化としてラベル付けする。
(iv)最初の視覚的インジケータ(例えば、黒色ドット)を心臓マップ上に配置し、最初の視覚的インジケータを、一次活性化を示す位置のための第1の視覚的インジケータ(例えば、白色ドット)に、又は二次活性化を示す位置のための第2の視覚的インジケータ(例えば、青色ドット)(又は医師が選択する任意の色若しくは形状)に変化させる。
【0034】
いくつかの実施形態では、ノイズレベルは、信号の特定のパーセンタイルに従って、プロセッサ40によって動的に設定することができる(例えば、ノイズレベルは、双極心臓内EGM信号の最後の10秒のスライディングウインドウ内の双極心臓内EGMの絶対値の10番目のパーセンタイルとして設定することができる)。ノイズレベルは、定数を乗算した(例えば、最後の10秒のスライディングウインドウにわたる標準偏差に2を掛ける)、スライディングウインドウにわたる双極心臓内EGM信号の絶対値の標準偏差に従って、動的に設定することができる。一次活性化の特定のパーセンテージと少なくとも同程度の高さ(例えば、一次活性化の90%)の活性化を、一次活性化とみなすことができる。一次活性化及び二次活性化が、非常に類似した時間に発生した場合、すなわち、所与の数ミリ秒(例えば、25ミリ秒)の以内で一致した場合、二次活性化は、一次(すなわち、一次活性化波形の特徴)とみなすことができる。
【0035】
一実施形態では、双極心臓内EGM信号の絶対値の代わりに、プロセッサは、信号の一次導関数を確認することができる。次いで、プロセッサは、導関数の最大絶対値を探して、一次活性化と二次活性化とを区別する。
【0036】
いくつかの実施形態では、一次活性化又は二次活性化が双極心臓内EGM波形のQRS群と一致した場合は、異なる色とすることができる。「QRSと一致する」という定義は、それぞれのR波ピークから数ミリ秒以内の所定の範囲内とすることができる。代替的に、QRS群を検出することができ、QRS時間間隔全体を考慮することができる。任意に、ユーザは、QRS群の周囲の数ミリ秒の範囲を指定することができる。例えば、プロセッサは、QRS群の5ミリ秒後まで、QRSの開始5ミリ秒前の間隔と一致する黄色ドットに色付けすることができる。
【0037】
一実施形態では、一次活性化又は二次活性化がペーシングピークと一致する場合、一次活性化又は二次活性化は、異なる色とすることができる。「ペーシングピークと一致する」という定義は、ペーシングピークのタイミングを中心に所与の数ミリ秒の範囲内に発生する一次活性化又は二次活性化として与えることができる。
【0038】
図2に示される例示的なドットマッピング可視化は、単に概念を明確にする目的で選択されている。別の形状(例えば、ダイヤモンド形状)を使用して活性化を表すこと、ドット60及び66を詳細に視認するために拡大鏡効果を使用すること、及びその他などの、さまざまな追加的な可視化ツールを適用することができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態による、図2に示される双極心臓内電位図(EGM)活性型のドットマッピング可視化のための方法を概略的に例示するフローチャートである。アルゴリズムは、提示された実施形態に従って、双極心臓内EGM活性化型割り当て工程70において、プロセッサ40が、上に記載したステップ(i)~(iv)を使用して解析された双極心臓内EGM活性化型を、心室50のラットマップ表面にわたるなどの、心室の解剖学的マップにわたるそれぞれの位置に割り当てることから始まる過程を実行する。
【0040】
次に、形状及び色選択工程72で、プロセッサ40は、活性化の型に従って、幾何学的形状及び形状色(例えば、一次のために白色、二次のために青色)を選択する。次に、双極心臓内EGM活性化データ点の重ね合わせ工程74で、プロセッサ40は、各解析された位置の活性化型に従って、色分けされた形状を解剖学的マップに重ね合わせる。最後に、マップ表示工程76で、プロセッサ40は、結果として生じる可視化(例えば、図2のドット60及び66などの、活性化型に従って色付けした、重ね合わせられたドットを含むLATマップ)をディスプレイ48上で医師28に提示する。
【0041】
図3に示される例示的なフローチャートは、単に概念を明確にする目的で選択されている。本実施形態は、アルゴリズムの追加的な工程も含む。その例としては、ドット60と66との間の伝導矢印などの追加的な可視化が挙げられる。かかる追加的なステップは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書の開示から意図的に取り除かれている。
【0042】
本明細書に記載されている実施形態は、主として心臓マッピングを対象にしたものであるが、本明細書に記載される方法お及びシステムは、脳組織のEPマッピングなどの他の用途にも使用することができる。
【0043】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上述に具体的に示し説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述のさまざまな特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを受信することと、
前記解剖学的マップの少なくとも1つの領域について、位置及び前記位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(EGM)信号を受信することと、
前記双極心臓内EGM信号において、一次活性化及び二次活性化を識別することと、
識別された前記一次活性化及び前記二次活性化を含む、前記領域上の前記双極心臓内EGM信号の表面表現を導出することと、
前記解剖学的マップに重ね合わせられた前記表面表現を提示することと、を含む、方法。
(2) 前記表面表現を提示することが、視覚的インジケータの第1の型を使用して前記一次活性化を提示することと、視覚的インジケータの第2の型を使用して前記二次活性化を提示することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる幾何学的形状を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる色を有する、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、局所活性化時間(LAT)を表す、実施態様2に記載の方法。
【0045】
(6) 前記双極心臓内EGM信号の中の1つの双極心臓内EGM信号の前記一次活性化及び前記二次活性化を識別することが、
前記双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択することと、
選択された前記ノイズレベルを超える前記双極心臓内EGM信号の極大値に、活性化としてラベル付けすることと、
所与の心周期にわたって、最大絶対値を有する活性化に、一次活性化としてラベル付けし、かつ他の活性化に、二次活性化としてラベル付けすることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) システムであって、
心臓の少なくとも一部分の解剖学的マップを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記解剖学的マップの少なくとも1つの領域について、位置及び前記位置で測定されたそれぞれの双極心臓内電位図(EGM)信号を受信するように、
前記双極心臓内EGM信号において、一次活性化及び二次活性化を識別するように、
識別された前記一次活性化及び前記二次活性化を含む、前記領域上の前記双極心臓内EGM信号の表面表現を導出するように、かつ
前記解剖学的マップに重ね合わせられた前記表面表現を提示するように構成されている、システム。
(8) 前記プロセッサが、視覚的インジケータの第1の型を使用して前記一次活性化を提示することと、視覚的インジケータの第2の型を使用して前記二次活性化を提示することとによって、前記表面表現を提示するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記視覚的インジケータの型の前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる幾何学的形状を含む、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記視覚的インジケータの型の前記第1及び第2の型が、第1及び第2の異なる色を有する、実施態様8に記載のシステム。
【0046】
(11) 前記視覚的インジケータの前記第1及び第2の型が、局所活性化時間(LAT)を表す、実施態様8に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサが、前記双極心臓内EGM信号の中の1つの双極心臓内EGM信号の前記一次活性化及び前記二次活性化を、
前記双極心臓内EGM信号のノイズレベルを選択することと、
選択された前記ノイズレベルを超える前記双極心臓内EGM信号の極大値に、活性化としてラベル付けすることと、
所与の心周期にわたって、最大絶対値を有する活性化に、一次活性化としてラベル付けし、かつ他の活性化に、二次活性化としてラベル付けすることと、
によって、識別するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
図1
図2
図3