(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】レボカルニチン含有錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/205 20060101AFI20241118BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20241118BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241118BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241118BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241118BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61K31/205
A61K9/32
A61K47/02
A61K47/32
A61P3/00
A61P3/02 101
(21)【出願番号】P 2020108515
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019116554
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】水永 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 憲一
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047183(JP,A)
【文献】特開2014-091714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102349881(CN,A)
【文献】特開2012-193175(JP,A)
【文献】特開2016-050206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~2で含有する素錠、及び
当該素錠を被覆するフィルムコーティング層
を備え
、
前記多孔性ケイ酸カルシウムが、
式:
2CaO・3SiO
2
・mSiO
2
・nH
2
O
(式中、1<m<2、且つ、2<n<3)
で表される、
100gあたりの吸油量が300mL以上の、
花弁状結晶構造を持つジャイロライト型ケイ酸カルシウムである、
フィルムコーティング錠剤。
【請求項2】
多孔性ケイ酸カルシウムが、
フローライトPS200又はフローライトRである、請求項
1に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項3】
レボカルニチン(フリー)を、50~1000mg含有する、
請求項1又は2に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項4】
前記素錠が、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~0.5で含有する素錠である、請求項1~3のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項5】
フィルムコーティング層が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有する、請求項1~
4のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項6】
ポリビニルアルコール共重合体が、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体である、請求項
5に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項7】
フィルムコーティング層を、素錠に対して10~40質量%備える、請求項1~
6に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項8】
レボカルニチン(フリー)が、素錠の50~80質量%含有されている、請求項1~
7のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項9】
レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~2で含有する素錠、及び
当該素錠を被覆するフィルムコーティング層を素錠に対して10~40質量%
備え、
前記多孔性ケイ酸カルシウムが、
式:
2CaO・3SiO
2
・mSiO
2
・nH
2
O
(式中、1<m<2、且つ、2<n<3)
で表され、100gあたりの吸油量が300mL以上の
、花弁状結晶構造を持つジャイロライト型ケイ酸カルシウムであり、
前記フィルムコーティング層が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有し、
レボカルニチン(フリー)が、素錠の50~80質量%含有されている、
フィルムコーティング錠剤。
【請求項10】
多孔性ケイ酸カルシウムが、フローライトPS200又はフローライトRである、請求項9に記載のフィルムコーティング錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レボカルニチンを含有する錠剤等に関し、詳細にはレボカルニチンを含有するフィルムコーティング錠剤等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
レボカルニチン(L-カルニチン)は、カルニチン欠乏症の治療のために医薬品として用いられている。カルニチン欠乏症を発現する原因として、先天代謝異常(カルニチントランスポーター異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症など)、後天的医学条件(肝硬変やFanconi syndromeなど)や医療行為(透析や薬剤性など)が挙げられる。
【0003】
カルニチン欠乏症の処置のために処方されるレボカルニチン(フリー体)の1日用量は、高用量であり、例えば成人においては通常1.5~3gが3回に分割されて経口投与される。したがって、投与が簡便であり、レボカルニチンの1日用量を提供するのに便利な経口投与形態が求められている。
【0004】
医薬製剤の形態(剤形)としては、患者の服薬容易性、取扱い容易性等を考慮した場合、錠剤がもっとも好ましいと考えられる。しかしながら、レボカルニチン(フリー体)は極めて高い吸湿性や潮解性を有することから、固形剤(特に錠剤)の形態として用いる場合には、原材料および最終製品の両方において、処理、安定性および保存性の問題が生じる。すなわち、工程管理の困難性や、打錠障害等の製造障害、最終製品の経時的な性状変化による品質低下(フィルムコーティング層の割れや湿潤等)等の問題がある。
【0005】
レボカルニチンの吸湿性や潮解性に起因する問題を解決するために、様々な検討がなされてきており、例えば、塩化カルニチン(カルニチン塩化物)を吸着性物質に吸着せしめてなる固形物(特許文献1)、L-カルニチン及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含有する顆粒化生成物(特許文献2)やカルニチンで被覆されたシリカキャリアからなるカルニチン顆粒(特許文献3)が開示されている。
【0006】
また、錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を40~80重量%、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の水不溶性の添加剤を15~55重量%含有する医薬錠剤が、開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-012569号公報
【文献】特表2002-540153号公報
【文献】特表2013-513557号公報
【文献】特開2016-050206号公報
【文献】特開昭54-093698号公報
【文献】特開2013-227205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レボカルニチン(フリー体)やレボカルニチン塩化物を有効成分とするカルニチン欠乏症治療用の医薬錠剤は既に上市されているが、いずれも耐吸湿性、耐潮解性が不十分であり、最終製品において安定性および保存性を担保するため、強度の強いSP包装や両面ア
ルミPTP包装が用いられている。しかし、これらの包装形態では、錠剤を取り出しにくい、錠剤が見えないため確認できない、つぶれる等の問題があり、錠剤の包装形態として一般的に用いられているPTP包装品(プラスチックとアルミで挟んだもの)での提供や一包化が可能な、小型で保存安定性の高い錠剤が求められている。
【0009】
このため、フリー体のレボカルニチンの含有量が高いにもかかわらず患者に適した大きさの錠剤であり、かつ、保存安定性の高い錠剤が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、レボカルニチン(フリー体)及び多孔性ケイ酸カルシウムを含有する錠剤とすることにより、レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性に起因する影響が軽減されることを見出した。またさらに、当該錠剤(素錠)をポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有するフィルムコーティング層で被覆することにより、レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性に起因する影響がさらに軽減されることを見出した。
【0011】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~2で含有する素錠、及び
当該素錠を被覆するフィルムコーティング層
を備えるフィルムコーティング錠剤。
項2.
多孔性ケイ酸カルシウムがジャイロライト型ケイ酸カルシウムである、項1に記載のフィルムコーティング錠剤。
項3.
多孔性ケイ酸カルシウムが、100gあたりの吸油量が300mL以上の多孔性ケイ酸カルシウムである、項1又は2に記載のフィルムコーティング錠剤。
項4.
多孔性ケイ酸カルシウムが、式:
2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O
(式中、1<m<2、且つ、2<n<3)
で表される多孔性ケイ酸カルシウムである、
項1~3のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
項5.
前記素錠が、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~0.5で含有する素錠である、項1~3のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
項6.
フィルムコーティング層が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有する、項1~5のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
項7.
ポリビニルアルコール共重合体が、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体である、項6に記載のフィルムコーティング錠剤。
項8.
フィルムコーティング層を、素錠に対して10~40質量%備える、項1~7に記載のフィルムコーティング錠剤。
項9.
レボカルニチン(フリー)が、素錠の50~80質量%含有されている、項1~8のいずれかに記載のフィルムコーティング錠剤。
項10.
レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.25~2で含有する素錠、及び
当該素錠を被覆するフィルムコーティング層を素錠に対して10~40質量%
備え、
前記多孔性ケイ酸カルシウムが、100gあたりの吸油量が300mL以上のジャイロライト型ケイ酸カルシウムであり、
前記フィルムコーティング層が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有し、
レボカルニチン(フリー)が、素錠の50~80質量%含有されている、
フィルムコーティング錠剤。
【発明の効果】
【0012】
本開示に包含されるフィルムコーティング錠は、レボカルニチン(フリー体)を高用量で含むにもかかわらず、潮解性や吸湿性が抑えられており、加湿条件下においても優れた安定性を示す。このため、プラスチックとアルミで挟んだPTP包装品での提供も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】レボカルニチンと多孔性ケイ酸カルシウム(フローライトPS200)を含むFC錠、および現行市販錠剤(エルカルチン(商標登録)FF錠)を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽に無包装状態で保管して、水分吸湿量(質量増加)推移を保管開始から経時的に測定した結果を示す。
【
図2】レボカルニチンと多孔性ケイ酸カルシウム(フローライトPS200)を含むFC錠、および現行市販錠剤(エルカルチン(商標登録)FF錠)を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽に無包装状態で保管して、水分吸湿量(質量増加)推移を保管開始から経時的に測定した結果を示す。
【
図3】レボカルニチンと多孔性ケイ酸カルシウム(フローライトPS200)を含むFC錠を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽に無包装状態で保管して、水分吸湿量(質量増加)推移を保管開始から経時的に測定した結果を示す。
【
図4】レボカルニチンと多孔性ケイ酸カルシウム(フローライトPS200)を含むFC錠を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽に無包装状態で保管して、水分吸湿量(質量増加)推移を保管開始から経時的に測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、レボカルニチン(フリー体)を含有する錠剤(特にフィルムコーティング(FC)錠剤)や当該錠剤の製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0015】
本開示に包含される錠剤には、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを質量比1:0.2~2で含有する錠剤や、当該錠剤(素錠)にフィルムコーティングが施されたフィルムコーティング錠剤がある。以下、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを質量比1:0.2~2で含有する錠剤を「本開示の素錠」ということがある。また、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムとを、質量比1:0.2~2で含有する素錠(つまり、本開示の素錠)、及び当該素錠を被覆するフィルムコーティング層を備えるフィルムコーティング錠剤を「本開示のFC錠剤」ということがある。また、これらいずれかを若しくはまとめて「本開示の錠剤」ということがある。なお、本開示の錠剤は医薬錠剤であることが好ましい。
【0016】
本開示において、レボカルニチンは、特に断らない限りフリー体(分子内塩)を示す。即ち、本開示におけるレボカルニチンは、次の化学式で表される化合物である。(当該化合物の化学名は「(R)-3-Hydroxy-4-trimethylammoniobutanoate」である。)
【0017】
【化1】
本開示の錠剤に用いられる多孔性ケイ酸カルシウムは、医薬品添加物規格や食品添加物に記載されている化学名「ケイ酸カルシウム」の規格に適合するものであってよい。より好ましくは、大きな細孔径と細孔容積を有する多孔性ケイ酸カルシウムであり、特に好ましくは花弁状結晶構造を持つケイ酸カルシウムである。
【0018】
また、式:2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O[式中、1<m<2、且つ、2<n<3]として表されるケイ酸カルシウムが好ましい。
【0019】
また、ケイ酸カルシウムの結晶形として、ジャイロライト型、ゾノトライト型、トバモライト型、無定形等のものがそれぞれ知られているところ、本開示の錠剤に用いられる多孔性ケイ酸カルシウムは、ジャイロライト型結晶であるものが好ましい。
【0020】
また、吸油量が高いケイ酸カルシウムが好ましく、具体的には、100gあたりの吸油量が300mL以上のケイ酸カルシウムが好ましく、350mL以上、400mL以上、又は450mL以上のケイ酸カルシウムがより好ましい。なお、ここでの吸油量は、次のようにして測定される値である。
【0021】
測定対象のケイ酸カルシウム1.0gを300mm×300mm以上の平滑なガラス板又はプラスチック板状に移し、もし粒状であればヘラで圧力をかけて粒を砕く。ビュレットから煮アマニ油を1mL単位でガラス板又はプラスチック板の試料に滴加し、分散させて小円形を描く操作で丁寧に、混合物が均一になるように練る。終点に近くなったら1滴ずつ加え、全体が最もまとまった状態になった点を終点とする。終わってから3分後にビュレット中の煮アマニ油の滴加量を読み、吸油量とする。
【0022】
好ましい多孔性ケイ酸カルシウムとして、花弁状結晶構造を持つジャイロライト型ケイ酸カルシウムが挙げられる。このようなケイ酸カルシウムは、例えば、特開昭54-093698号公報、特開2013-227205号公報等を参照して製造することができる。また、市販品を購入して用いることもできる。具体的には、例えば商品名「フローライトR」、「フローライトPS200」(富田製薬(株))等を購入して用いることができる。なお「フローライト」は登録商標である。
【0023】
本開示の錠剤(特に素錠)において含まれる多孔性ケイ酸カルシウムは、レボカルニチン(フリー体)1質量部に対して0.25~2質量部である。当該範囲の上限または下限は、例えば0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、又は1.9質量部であってもよい。例えば、当該範囲は、0.25~1.5質量部、0.25~1質量部、又は0.25~0.5質量部であってもよい。
【0024】
レボカルニチン(フリー体)1質量部に対する多孔性ケイ酸カルシウムの割合が0.2質量部以下の場合は、潮解性を十分に抑制することができず、製造性及び安定性に問題が
生じやすくなり好ましくない。また、2質量部より多い場合には錠剤が大型化し、服用に問題が生じる場合がある。
【0025】
本開示の素錠においては、本開示の効果を損なわない限り、レボカルニチン(フリー体)および多孔性ケイ酸カルシウム以外の成分を含んでもよい。
【0026】
本開示の素錠を調製するにあたり、通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを用いることができる。
【0027】
この他必要に応じて緩衝剤、保存剤、等張化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収促進剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、流動化剤、吸着剤、香料、着色剤、矯味剤、抗酸化剤、遮光剤、光沢剤などを使用することができる。
【0028】
賦形剤としては、例えば乳糖、乳糖水和物、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、などを用い得る。
【0029】
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、α化デンプンなどを用い得る。
【0030】
崩壊剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、メチルセルロース、α化デンプンなどを用い得る。
【0031】
滑沢剤としては、例えばカルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどを用い得る。
【0032】
崩壊剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総質量の約0.1~20質量%程度が好ましく、約2~10質量%程度がより好ましい。
【0033】
滑沢剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総質量の約0.1~5質量%程度が好ましく、約0.5~3質量%程度がより好ましい。
【0034】
本開示の錠剤において、レボカルニチン(フリー体)の含有量は、好ましくは錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総質量の50~80質量%、より好ましくは55~80質量%又は60~80質量%、さらに好ましくは65~75質量%である。コーティング錠の総質量に対しては、好ましくは40~70質量%、より好ましくは45~65質量%、さらに好ましくは50~60質量%である。
【0035】
本開示の錠剤は、コーティングを施してコーティング錠(FC錠)として用いる。結果として、上記のレボカルニチンを含有する素錠と、後述するフィルムコーティング層との組み合わせによって、レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性による形状変化(膨張、割れ、崩壊等)や質量変化に対して、優れた長期的な保存安定性や劣化の防止を呈す
る錠剤が得られる。
【0036】
フィルムコーティング層は、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含有することが好ましい。ポリビニルアルコール共重合体としてはポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。また、さらに例えばタルクや酸化チタンなどを含んでいてもよい。
【0037】
フィルムコーティング用の成分又は組成物は商業的に入手することも可能であり、ポリビニルアルコールを含有する組成物として、例えば、OPADRY amb、OPADRY amb II、又はOPADRY II(日本カラコン株式会社)等が挙げられる。
【0038】
ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体は、POVACOAT(登録商標)、(日新化成(株))として市販されており、これを好ましく用いることができる。
【0039】
フィルムコーティング層には、コーティング剤、可塑剤、分散剤、消泡剤、着色剤など、通常経口投与医薬品のコーティング(皮膜)処理を施す際に用いられる医薬品添加物を必要に応じて添加することができる。
【0040】
これらのコーティング用医薬品添加物としては、具体的には、例えば結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等のセルロース又はその誘導体;ポリエチレングリコール(マクロゴール)、酸化チタン、タルク、フマル酸、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の酸化鉄、β―カロテン、食用青色2号、食用青色2号アルミニウムレーキ、及びリボフラビン、等を挙げることができ、これらは、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用して使用してもよい。
【0041】
本開示のFC錠においては、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含むフィルムコーティングを施す前に、アンダーコーティングを施すこともできる。アンダーコーティングには、上記の通常経口投与医薬品のコーティング(皮膜)処理を施す際に用いられる医薬品添加物を含有することができる。なかでも、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、タルク、フマル酸を用いることが好ましい。アンダーコーティングを施す場合、本開示のFC錠は素錠、アンダーコーティング層(ファーストコーティング層)、及び、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含むフィルムコーティング層(セカンドコーティング層)をこの順に備えており、これら2つのコーティング層をまとめてフィルムコーティング層と呼ぶ。アンダーコーティングを施さない場合、本開示のFC錠は、素錠、及び、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含むフィルムコーティング層をこの順に備えており、フィルムコーティング層はこの一層だけであることが好ましい。
【0042】
フィルムコーティング層中のポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体の含有量は、例えば1~99質量%であり、好ましくは、10~70質量%である。当該範囲の上限又は下限は、例えば、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、又は65質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、15~50質量%であってもよい。
【0043】
フィルムコーティング層の量は、素錠100質量部に対して、約10~40質量部程度が好ましく、約15~35質量部程度がより好ましく、約20~30質量部程度がさらに好ましい。
【0044】
アンダーコーティングを施す場合には、アンダーコーティング層のフィルムコーティング層の量は、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を含むフィルムコーティング層の効果を損なわない限り制限されるものではなく、例えば、素錠100質量部に対して、0.5~5質量部程度が好ましく、約2質量部程度がより好ましい。
【0045】
本開示の錠剤中において、レボカルニチンは、好ましくは約50~1000mg程度、より好ましくは約100~500mg程度含有されることが好ましい。このような範囲でレボカルニチンを錠剤中に含有させることで、レボカルニチンの一日用量を容易に摂取することが可能な錠剤が得られ、また、レボカルニチンの血中濃度の維持のため薬物動態学的観点から好ましい。
【0046】
本開示の錠剤は、25℃75%RH(相対湿度)に無包装状態で4週間保管したとき、質量増加量(すなわち、水分吸湿量)が、保管前のフィルムコーティング錠の質量の25質量%以下であることが好ましく、24、23、22、21、又は20質量%以下であることがより好ましく、19、18、17、16、又は15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本開示の錠剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択される。例えば、一日当りレボカルニチンの量として約1.5~3g程度が例示される。特に成人に対しては、当該投与量が好ましい。また例えば、小児に対しては、一日当りレボカルニチンの量として約25~100mg/kg程度が例示される。また、1回で当該量を投与してもよく、あるいは一日あたり複数回(例えば2回又は3回)に分割して投与することもできる。
【0048】
本開示の錠剤としては、上記の含有量の錠剤となるように製造される。
【0049】
本開示は、上記の、レボカルニチンを含有する錠剤の表面にコーティングを施したコーティング錠の製造方法も包含する。コーティングは公知の方法を用いることができ、例えば、打錠機を用いて打錠により製造された素錠に、コーティング層に用いる添加剤及び液状媒体を混合して得られた混合液を連続的にスプレー及び乾燥することによりコーティングする工程により製造される。なお、打錠前に、レボカルニチン(フリー体)と多孔性ケイ酸カルシウムと混合及び造粒し、造粒末としてから、打錠に用いることが好ましい。また、崩壊剤や滑沢剤等をも配合する場合には、当該造粒末に加えてから打錠することが好ましい。
【0050】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0051】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0052】
以下、例を示して本開示の錠剤の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の錠剤は下記の例に限定されるものではない。
【0053】
<造粒末1~5の調製>
造粒末1 (ケイ酸カルシウム、 0.2倍量)
多孔性のケイ酸カルシウム(フローライトPS200、富田製薬(株))600gを撹拌造粒機(VG-25、(株)パウレック)に投入し、続いて、レボカルニチン(フリー
体)(ILS(株))3000gを水1200 gに溶解させた溶液を投入し、ブレード回転数150rpm、チョッパー回転数1500rpmで、ケイ酸カルシウム及びレボカルニチン(フリー体)が均一に分散するまで撹拌して、撹拌造粒を行い、湿性造粒物を得た。得られた湿性造粒物を、真空乾燥機(LCV-232、TABAI ESPEC CORP.)を用いて、80℃、12時間乾燥した。乾燥後、850μmのメッシュスクリーンを用いて篩過し、造粒末1を得た。
【0054】
造粒末2 (ケイ酸カルシウム、 0.25倍量)
ケイ酸カルシウム(フローライトPS200、富田製薬(株))を750g用いる以外は、造粒末1の調製と同様にして、造粒末2を得た。
【0055】
造粒末3 (ケイ酸カルシウム、 0.3倍量)
ケイ酸カルシウム(フローライトPS200、富田製薬(株))を900g用いる以外は、造粒末1の調製と同様にして、造粒末3を得た。
【0056】
造粒末4 (ケイ酸カルシウム、 0.4倍量)
ケイ酸カルシウム(フローライトPS200、富田製薬(株))を1200g用いる以外は、造粒末1の調製と同様にして、造粒末4を得た。
【0057】
造粒末5 (ケイ酸カルシウム、 0.3倍量)
用いるケイ酸カルシウムの種類及び量を、多孔性のケイ酸カルシウム(フローライトR、富田製薬(株))を900g用いることとした以外は、造粒末1の調製と同様にして、造粒末5を得た。
【0058】
なお、フローライトPS200及びフローライトRは、いずれも花弁状結晶構造を持つジャイロライト型ケイ酸カルシウムであり、2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O[式中、1<m<2、且つ、2<n<3]として表され、100gあたりの吸油量が450mL又はそれ以上である。
【0059】
造粒末1~4において、造粒後の性状を確認した。粉状の性状を保っていた場合を製造性が良好な湿性造粒物として判断した。なお、造粒末1において、造粒後の容器内を確認したところ、粉体のスラリー化が確認され、全量を回収するのは難しいと判断し、一部のみ回収し乾燥工程へと進めた。得られた各造粒末を40℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽(LHL-113、エスペック(株))に4週間保管し,性状の変化を確認したところ、造粒末1は潮解が認められ、造粒末2~4の各造粒末は性状が維持されていた。このことから、配合比が1:0.25以上であれば性状を維持する事が確認された。
【0060】
<素錠1~14の調製>
表1に従い、造粒末1~5に対してカルメロースカルシウム(商品名:ECG-505、ニチリン化学工業(株))、カルメロース(商品名:NS-300、ニチリン化学工業(株))、クロスカルメロースナトリウム(商品名:Parteck CCS、メルク)、デンプングリコール酸ナトリウム(商品名:Primojel、DFE Pharma)、クロスポビドン(商品名:Kollidon CL-F、BASF)、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:LH-11、信越化学工業(株))の6種の崩壊剤のうち1種を加え、ポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム植物性,太平化学産業(株))を添加してさらに混合して、打錠用粉末を得た。なお、表1に記載の各成分の値の単位は、質量部を示す。
【0061】
当該打錠用粉末を、直径10mmスミ角Rの臼杵を付けたロータリー打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて打錠を行い、1錠あたり250mgのレボカルニチンを
含有する素錠1~素錠14を調製した。なお、打錠圧は、6、8、又は10kNとした。
【0062】
【0063】
8kNの打錠圧で得られた各素錠(直径10.0mm)について、錠剤物性を、表2に示す。
【0064】
厚みは、厚みばかり(MODEL G、PEACOCK(株))を用いて測定した。
【0065】
硬度は、錠剤硬度計(MT50、フロイント産業(株))を用いて各素錠の直径方向の硬度を測定した。
【0066】
錠剤強度は、硬度を割断面の面積(錠剤の直径×錠剤厚み)で除して求めた。
【0067】
各素錠の崩壊性は、具体的には、「第十六改正日本薬局方 一般試験法 崩壊試験法 (1)即放性製剤」に従って、崩壊性を確認した。なお、試験液としては水を用いた。また、補助盤は使用しなかった。崩壊試験器は、NT-200(富山産業(株))を用いた。
【0068】
【0069】
得られた錠剤は、フローライト配合量に依らず、一様な崩壊性を示した(特に素錠1~4参照)。錠剤硬度および強度に関しては、レボカルニチンに対するフローライトの配合量が0.25以上で高い硬度および強度が認められ、その後のフィルムコーティング工程に問題のない錠剤を得る事ができた。フローライトRを用いた場合(素錠5)にも同様の値が得られた。
【0070】
また、崩壊剤の種類、配合量を変化させた場合でも(特に素錠6~14参照)同様の値が得られた。
【0071】
打圧6kN及び10kNで打錠した場合にも、8kNで打錠した場合とほぼ同等の錠剤物性を示した。
【0072】
素錠1~5、7、12~14(8kN打錠品)に対して、ヒプロメロース(TC-5R、信越化学工業(株))、タルク(乾熱タルクML115、富士タルク工業(株))、フマル酸(試薬特級、富士フィルム和光純薬(株))から成るアンダーコーティング用組成物(表3)を用いて、1錠当たり素錠質量に対して2質量%となるように、フィルムコーティングを施した(ファーストコーティング)。さらに、ポリビニルアルコールを含有するフィルムコーティング用組成物(OPADRY ambII、日本カラコン合同会社)の20質量%フィルムコーティング液(表4)を用いて、1錠当たり素錠質量に対して23質量%となるように、フィルムコーティングを施した(セカンドコーティング)。フィルムコーティングの総量は、1錠当たり素錠質量に対して25質量%とした。
【0073】
フィルムコーティングは、Driacoater(DRC-200、ドリアム社)を使用しておこなった。
【0074】
【0075】
【0076】
素錠1~5、7、12~14に上述のフィルムコーティングを施して得たフィルムコーティング錠剤(FC錠)1~5、7、12~14について、各10錠を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽(LHL-113、エスペック(株))に無包装状態で保管した。対照にレボカルニチン(フリー体)を250mg含む市販錠剤(エルカルチン(商標登録)FF錠 250 mg)を用いて,無包装状態で同じく保管した。
【0077】
経時的にサンプリングを行い、加湿保存時の質量増加を以下の式から算出した。FC錠1~4の結果を
図1に示した。市販錠剤に対して、FC錠1~4の錠剤は加湿安定性が改善されており、その中でもFC錠2~4の錠剤は1ヶ月程度の加湿安定性の改善が認めら
れた。
質量増加量(水分吸湿量) =加湿保存後のFC錠質量 -初期FC錠質量
また、FC錠3、7、12、13、5、14の結果を表5に示した。
【0078】
【0079】
フローライトの種類、崩壊剤の種類、配合量等にかかわらず、1ヶ月程度の加湿安定性の改善が認められた。
【0080】
以上の結果より、レボカルニチンに対するフローライトの配合量は製造性および安定性の観点から、その配合比はレボカルニチン:フローライト=1:0.25以上が好ましい事がわかった。
【0081】
<素錠15及びFC錠15の調製>
ケイ酸カルシウム(フローライトPS200、富田製薬(株))75gを撹拌造粒機(NSK150、岡田精工(株))に投入し、続いて、レボカルニチン(フリー体)(ILS(株))250gを水100 gに溶解させた溶液を投入し、回転数500rpmで、ケイ酸カルシウム及びレボカルニチン(フリー体)が均一に分散するまで撹拌して、撹拌造粒した。得られた湿性造粒物を60℃で24時間乾燥した後、850μmのメッシュスクリーンを用いて篩過することにより整粒して、造粒末を得た。
【0082】
得られた造粒末に対して、カルメロースカルシウム(商品名:ECG-505、ニチリン化学工業(株))を加え、ポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム植物性、太平化学産業(株))を添加してさらに混合して、打錠用粉末を得た。
【0083】
打錠用粉末を、直径10mmスミ角Rの臼杵を付けたロータリー打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、6kNの打錠圧で打錠し、1錠あたり250mgのレボカルニチンを含有する素錠15を得た。
【0084】
素錠15の処方を表6に示す。表6の各成分の値は質量部を示す。
【0085】
【0086】
素錠15の錠剤硬度は98N(n=10)、崩壊時間は11.0(n=6)分であった
。
【0087】
素錠15に対して、ヒプロメロース(TC-5R、信越化学工業(株))とタルク(乾熱タルクML115、富士タルク工業(株))を含むアンダーコーティング用組成物(表7)を用いて、1錠当たり素錠質量に対して2%となるように、フィルムコーティングを施した(ファーストコーティング)。このアンダーコーティング錠に対して、さらに、ポリビニルアルコールを配合したフィルムコーティング用組成物(OPADRY amb II、日本カラコン合同会社)の15質量%フィルムコーティング液(表8)を用いて、フィルムコーティングの総量が1錠当たり素錠質量に対して15質量%、20質量%、25質量%となるように、フィルムコーティングを施した(セカンドコーティング)。フィルムコーティングの総量が1錠当たり素錠質量に対して15質量%のFC錠剤をFC錠15-1、20質量%のFC錠をFC錠15-2、25質量%のFC錠をFC錠15-3とする。
【0088】
フィルムコーティングは、Driacoater(DRC-200、ドリアム社)を使用しておこなった。
【0089】
【0090】
【0091】
FC錠15-1~15-3を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽(LHL-113、エスペック(株))に無包装状態で保管した。対照にレボカルニチン(フリー体)を250mg含む市販錠剤(エルカルチン(商標登録)FF錠 250 mg)を用いて,無包装状態で同じく保管した。
【0092】
経時的にサンプリングを行い、加湿保存時の質量増加を算出し、結果を
図2に示した。
【0093】
市販錠剤に対して、FC錠15-1~15-3の錠剤は加湿安定性が改善されているこ
とが確認された。
【0094】
<素錠16及びFC錠16-1~16-2の調製>
表1の素錠11の処方の打錠用粉末を、直径9.5mmスミ角Rの臼杵を付けたロータリー打錠機(VIRGO、(株)菊水製作所)を用いて、8kNの打錠圧で打錠し、1錠あたり250mgのレボカルニチンを含有する素錠16を得た。素錠16の錠剤厚みは5.23mm(n=10)、錠剤硬度は265N(n=10)、錠剤強度は5.33N/mm2(n=10)、崩壊時間は10.8分(n=6)であった。
【0095】
素錠16(直径9.5mm、打錠圧8kN)に対して、PVAコポリマー(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、商品名:POVACOAT typeF、大同化成工業株式会社)とタルク(乾熱タルクML115、富士タルク工業(株))とを10質量%エタノール溶液に溶解及び分散したフィルムコーティング用組成物(表9、固形分濃度は15質量%)を用いてフィルムコーティングを施し、FC錠16-1を得た。
【0096】
また素錠16(直径9.5mm、打錠圧8kN)に対して、ヒプロメロースとタルクからなる表7のアンダーコーティング用組成物を用いたアンダーコーティング(ファーストコーティング)と、PVAコポリマー(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、商品名:POVACOAT typeF、大同化成工業株式会社)とタルクとを10質量%エタノール溶液に溶解及び分散したフィルムコーティング用組成物(表9、固形分濃度は15質量%)から成るセカンドコーティングを施し、FC錠16-2を得た(表10:各値は質量部)。各錠剤のフィルム量は、FC錠16-1では、FC量が素錠質量に対して25質量%とし、FC錠16-2では、セカンドコーティング層のフィルム量が、FC錠16-1の単位面積あたりのフィルム量と同量になるように処方した。
【0097】
フィルムコーティングはパウレックコーター(PRC-GTXmini、(株)パウレ
ック)を使用しておこなった。
【0098】
【0099】
【0100】
FC錠16-1、16-2を25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽(LHL-113、エスペック(株))に無包装状態で保管し、経時的にサンプリングを行い、加湿保
存時の質量増加を算出し、結果を
図3に示した。
【0101】
<フローライトとフィルムコーティングとの組み合わせの検討>
造粒末3に、カルメロースカルシウム(商品名:ECG-505、ニチリン化学工業(株))を加え、ポリエチレン袋で混合後、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム植物性、太平化学産業(株))を添加してさらに混合して、打錠用粉末を得た。当該打錠用粉末を、直径10mmスミ角Rの臼杵を付けたロータリー打錠機(VELA5、(株)菊水製作所)を用いて、8kNの打錠圧で打錠し、1錠あたり250mgのレボカルニチンを含有する素錠17を得た。
【0102】
素錠17の処方を表11(各値の単位は質量部)に示す。
【0103】
【0104】
素錠17に、表8のフィルムコーティング液(15質量% OPADRY amb II)を用いて、素錠に対するフィルムコーティングの質量比が20質量%又は25質量%となるようにコーティングした(FC錠17-1)。当該コーティングは、Driacoater(DRC-200、ドリアム社)を使用して行った。
【0105】
素錠17に、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)系のフィルムコーティングを施し、効果を確認した。ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)系のフィルムコーティング用プレミックス品であるOPADRY(商品名:OPADRY、日本カラコン合同会社)を5質量%となるように、精製水に溶解及び分散させたフィルムコーティング液を使用し、素錠に対してフィルムコーティングが20質量%又は25質量%となるようにコーティングした(FC錠17-2)。当該コーティングは、Driacoater(DRC-200、ドリアム社)を使用しておこなった。
【0106】
市販錠剤であるエルカルチンFF錠250mgに用いられている素錠(レボカルニチン(フリー体)を250mg、添加剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムを含有する)に、表8のフィルムコーティング液(15質量% OPADRY amb II)を用いて、コーティングを施した。当該コーティング錠における素錠の単位面積あたりのフィルムコーティング量は、FC錠17-1における素錠17の単位面積あたりのフィルムコーティング量と同量とした(FC錠17-3)。なお、当該コーティングは、Driacoater(DRC-200、ドリアム社)を使用して行った。
【0107】
FC錠17-1、17-2、17-3及び現行市販錠(エルカルチンFF錠)を、25℃75%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽(LHL-113、エスペック(株))に無包装状態で保管し、経時的にサンプリングを行い、加湿保存時の質量増加を算出し、25質量%FC錠の結果を
図4に示した。
【0108】
加湿保存時の質量増加と錠剤の性状を確認した結果、多孔性ケイ酸カルシウム(フロー
ライト)とポリビニルアルコールを含有するフィルムコーティングを組み合わせる事で顕著な安定性改善を達成できることが確認できた。