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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】回転機械のインペラ及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20241118BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/22 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020113188
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011812
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 信頼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】小田 貴士
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133735(JP,A)
【文献】特開2014-088803(JP,A)
【文献】特開2012-122398(JP,A)
【文献】特開平06-249194(JP,A)
【文献】実開昭55-025646(JP,U)
【文献】特表2002-531755(JP,A)
【文献】実開昭55-180099(JP,U)
【文献】特表2011-509373(JP,A)
【文献】特開平08-254198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられ、
前記ディスクは、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向内側に位置する内側突出部と、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向外側に位置する外側突出部と、
を有し、
前記ディスクの前記背面は、前記内側突出部が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有し、
前記内側突出部の径方向位置における前記ディスクの厚さは、前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置の方が前記周方向に沿って隣り合う2つの前記ブレード同士の中間位置に対応する周方向位置に比べて大きい
回転機械のインペラ。
【請求項2】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられ、
前記ディスクは、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向内側に位置する内側突出部と、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向外側に位置する外側突出部と、
を有し、
前記外側突出部は、前記外側突出部の頂点から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置が前記カバーに接近し、
前記ディスクの前記背面は、前記外側突出部が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有し、
前記外側突出部のうちの径方向内側の領域が存在する径方向位置において、前記ディスクの厚さは、前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置を挟んで該ブレードの圧力面側の位置の方が該ブレードの負圧面側の位置に比べて大きい
回転機械のインペラ。
【請求項3】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられ、
前記ディスクは、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向内側に位置する内側突出部と、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向外側に位置する外側突出部と、
を有し、
前記外側突出部は、前記外側突出部の頂点から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置が前記カバーに接近し、
前記ディスクの前記背面は、前記外側突出部が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有し、
前記外側突出部のうちの径方向外側の領域が存在する径方向位置において、前記ディスクの厚さは、前記周方向に沿って隣り合う2つの前記ブレード同士の中間位置に対応する周方向位置の方が前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置に比べて大きい
回転機械のインペラ。
【請求項4】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられ、
前記カバーは、径方向内側端部と径方向外側端部との間で厚さの極大値を有し、且つ、前記厚さが前記極大値となる径方向位置よりも外側において、前記厚さの前記極大値に対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さを有し、
前記カバーの前面は、前記カバーの前記厚さが前記極大値となる前記径方向位置において、周方向に凹凸を有し、
前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置を挟んで前記ブレードの圧力面側の位置における前記カバーの厚さは、前記ブレードの負圧面側の位置における前記カバーの厚さよりも厚い
回転機械のインペラ。
【請求項5】
前記凹部の最深部は、前記ディスクの外径の40%以上70%以下の範囲内に存在する
請求項1乃至4の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項6】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記カバーは、径方向内側端部と径方向外側端部との間で厚さの極大値を有し、且つ、前記厚さが前記極大値となる径方向位置よりも外側において、前記厚さの前記極大値に対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さを有し、
前記カバーの前面は、前記カバーの前記厚さが前記極大値となる前記径方向位置において、周方向に凹凸を有し、
前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置を挟んで前記ブレードの圧力面側の位置における前記カバーの厚さは、前記ブレードの負圧面側の位置における前記カバーの厚さよりも厚い
回転機械のインペラ。
【請求項7】
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられ、
前記ディスクは、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向内側に位置する内側突出部と、
前記ディスクの背面において、前記凹部よりも径方向外側に位置する外側突出部と、
を有する
請求項4又は6に記載の回転機械のインペラ。
【請求項8】
前記凹部の最深部と前記内側突出部の頂点との軸方向距離を1とした場合に、前記最深部と前記外側突出部の頂点との軸方向距離は、0.2以上0.6以下である
請求項1、2、3、又は7の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項9】
前記内側突出部は、前記内側突出部の頂点から径方向内側に向かうにつれて軸方向位置が前記カバーに接近する
請求項1、2、3、7、又は8の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項10】
前記ディスクの前記背面は、前記内側突出部が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有する
請求項1、2、3、7、8、又は9の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項11】
前記外側突出部は、前記外側突出部の頂点から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置が前記カバーに接近する
請求項1、2、3、7、8、9又は10の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項12】
前記ディスクの前記背面は、前記外側突出部が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有する
請求項11に記載の回転機械のインペラ。
【請求項13】
前記カバーは、径方向内側端部と径方向外側端部との間で厚さの極大値を有し、且つ、前記厚さが前記極大値となる径方向位置よりも外側において、前記厚さの前記極大値に対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さを有する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項14】
前記カバーの前面は、前記カバーの前記厚さが前記極大値となる前記径方向位置において、周方向に凹凸を有する
請求項13に記載の回転機械のインペラ。
【請求項15】
前記カバーの前記厚さが前記極大値となる前記径方向位置において、前記カバーの前記厚さは、前記ブレードの配置位置に対応する周方向位置を挟んで該ブレードの圧力面側の位置における厚さの方が該ブレードの負圧面側の位置における厚さよりも大きい
請求項14に記載の回転機械のインペラ。
【請求項16】
前記ブレードと前記カバーとのなす角度は、前記ブレードの圧力面側において鋭角である
請求項15に記載の回転機械のインペラ。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載のインペラ
を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械のインペラ及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の一例として、特許文献1には、軸方向に配列された複数段のインペラを含む遠心圧縮機が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-180400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧縮機のような回転機械では小型化や低コスト化が要請されている。このような要請に応えるための手法として、例えばインペラの高周速化が挙げられる。
しかし、インペラの回転数を単に大きくするだけでは、インペラに作用する遠心力が増加するため、インペラが変形する等によって不所望の現象が生じてしまう。そのため、インペラの高周速化は容易ではない。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、回転機械のインペラの高周速化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラは、
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ディスクの背面には、前記ブレードが設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部が設けられている。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラは、
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記カバーは、径方向内側端部と径方向外側端部との間で厚さの極大値を有し、
前記カバーは、前記厚さが前記極大値となる径方向位置よりも外側において、前記厚さの前記極大値に対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さを有する。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、上記構成(1)又は(2)の構成のインペラを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、回転機械のインペラの高周速化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機の回転軸の軸方向に沿った断面図である。
図2】幾つかの実施形態に係るインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図3】幾つかの実施形態に係るインペラの変形について説明するための図である。
図4A図2におけるIV(A)矢視断面を模式的に示した図である。
図4B図2におけるIV(B)矢視断面を模式的に示した図である。
図4C図2におけるIV(C)矢視断面を模式的に示した図である。
図5A図2におけるV(A)矢視断面を模式的に示した図である。
図5B図2におけるV(B)矢視断面を模式的に示した図である。
図5C図2におけるV(C)矢視断面を模式的に示した図である。
図6】従来のインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(遠心圧縮機1の全体構成)
以下においては、回転機械の一例として、軸方向に配列された複数段のインペラを備えた多段式の遠心圧縮機を例に挙げて説明する。
図1は、幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機の回転軸の軸方向に沿った断面図である。
図1に示すように、遠心圧縮機1は、ケーシング2と、ケーシング2内で回転自在に支持されるロータ7を備えている。ロータ7は、回転軸(シャフト)4と、シャフト4の外面に固定されている複数段のインペラ8と、を有する。
【0013】
ケーシング2の内部には、軸方向に配列される複数のダイアフラム10が収容されている。複数のダイアフラム10は、インペラ8を外周側から囲うように設けられている。また、ケーシング2の内周側において、複数のダイアフラム10の軸方向における両側には、ケーシングヘッド5,6が設けられている。
ロータ7は、ラジアル軸受20,22及びスラスト軸受24により回転可能に支持されており、中心Oの周りを回転するようになっている。
【0014】
ケーシング2の一端部には、外部からの流体が流入する吸込口16が設けられているとともに、ケーシング2の他端部には、遠心圧縮機1で圧縮された流体を外部に排出するための吐出口18が設けられている。ケーシング2の内部には、複数段のインペラ8間を繋ぐように形成された流路9が形成されており、吸込口16と吐出口18とは、複数のインペラ8及び流路9を介して連通している。吐出口18には、吐出配管50が接続されている。
【0015】
吸込口16を介して遠心圧縮機1に流入した流体は、複数段のインペラ8及び流路9を通って上流から下流へと流れ、複数段のインペラ8を通過する際に、インペラ8の遠心力が付与されることにより段階的に圧縮される。複数段のインペラ8のうち最下流側に設けられるインペラ8を通過した圧縮流体は、スクロール流路30及び吐出口18を介してケーシング2の外部に導かれ、吐出配管50を介して吐出流路51の出口部52から排出される。
以下の説明では、遠心圧縮機1の軸方向に沿って吸込口16側を上流側と称し、吐出口18を下流側と称する。
【0016】
(インペラ8)
図2は、幾つかの実施形態に係るインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図3は、幾つかの実施形態に係るインペラの変形について説明するための図であり、軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図6は、従来のインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図2及び図3に示すように、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、ハブ81の背面側でハブ81と一体的に設けられたディスク100と、径方向流路83を隔ててディスク100と軸方向に対向配置されるカバー200と、ディスク100とカバー200との間に配置されるブレード85と、を備えている。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、いわゆるクローズドインペラである。
説明の便宜上、インペラ8に関して遠心圧縮機1の軸方向上流側をカバー側と称し、軸方向下流側をディスク側と称する。
【0017】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ハブ81には、シャフト4が挿通される貫通孔87が形成されている。幾つかの実施形態では、貫通孔87のカバー側の領域には、シャフト4と焼き嵌めによって締結される部位である締結部89が設けられている。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、締結部89においてシャフト4と焼き嵌めによって締結されている。
【0018】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100の背面101には、ブレード85が設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部110が設けられている。幾つかの実施形態に係るインペラ8では、凹部110は、ディスク100の背面101において、カバー側に凹んだ部位であり、例えばディスク100の全周にわたって形成されている。
また、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100は、ディスク100の背面101において、上記凹部110よりも径方向内側に位置する内側突出部130と、ディスク100の背面101において、上記凹部110よりも径方向外側に位置する外側突出部150と、を有する。
なお、図2では、ディスク100の軸方向への凹凸を誇張している。
また、図2では、凹部110、内側突出部130、及び外側突出部150を有していない従来のインペラ8X(図6参照)におけるディスク100Xの背面101Xの形状を2点鎖線で表している。
【0019】
上述したように図2では、ディスク100の軸方向への凹凸を誇張しているので、幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるディスク100の背面101の軸方向位置は、必ずしも全ての領域で従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもディスク側(下流側)に存在するとは限らない。幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるディスク100の背面101の軸方向位置は、例えば凹部110の少なくとも一部の領域において、従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもカバー側(上流側)に存在してもよい。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるディスク100の厚さは、例えば凹部110の少なくとも一部の領域において、従来のインペラ8Xのディスク100Xにおいて該領域に径方向位置が対応する領域の厚さよりも小さくてもよい。また、幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるディスク100の背面101の軸方向位置は、例えば外側突出部150の少なくとも一部の領域において、従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもカバー側(上流側)に存在してもよい。
【0020】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、カバー200は、径方向内側端部203と径方向外側端部205との間で厚さの極大値Dを有するように突出したカバー突出部210を有する。
すなわち、幾つかの実施形態に係るカバー200は、カバー200の外側表面201が部分的に盛り上がり、部分的に厚さが厚くなるような形状を有している。
なお、図2では、カバー200の厚さ方向への凹凸を誇張している。
また、図2では、カバー突出部210を有していない従来のインペラ8Xにおけるカバー200Xの外側表面201Xの形状を2点鎖線で表している。
カバー突出部210のうち厚さが極大値Dとなる箇所を頂部211と称する。
【0021】
上述したように図2では、カバー200の厚さ方向への凹凸を誇張しているので、幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるカバー200の厚さは、必ずしも全ての領域で従来のインペラ8Xにおけるカバー200Xの厚さよりも大きいとは限らない。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8におけるカバー200の厚さは、一部の領域で従来のインペラ8Xにおけるカバー200Xの厚さよりも小さくてもよい。
【0022】
(凹部110を設けた理由について)
ところで、圧縮機のような回転機械では小型化や低コスト化が要請されている。このような要請に応えるための手法として、例えばインペラの高周速化が挙げられる。
インペラの高周速化の要請に応えるべく、インペラの回転数を大きくすると、インペラに作用する遠心力が増加するため、従来のインペラ8Xでは、インペラ8Xが変形する等によって不所望の現象が生じるおそれがある。
【0023】
一般的に、従来のインペラ8Xでは、幾つかの実施形態に係るインペラ8と同様に、シャフト4が挿通される貫通孔87の軸方向位置のうちカバー側の位置に締結部89が設けられ、シャフト4と焼き嵌めによって締結される。そのため、貫通孔87の周囲の部位に遠心力が作用するので締結力が減少する傾向があり、高周速化によって締結力が不十分になるおそれがある。また、貫通孔87の軸方向位置のうちカバー側に位置する締結部89でインペラ8Xがシャフト4と締結される場合、図6において破線及び矢印91で示したように、遠心力によってインペラ8Xがディスク側において径方向外側に浮き上がるように変形する傾向がある。このような変形は、インペラ8Xの周囲のダイアフラム10とインペラ8Xとの接触等の不具合をもたらすおそれがある。
【0024】
発明者らが鋭意検討した結果、ディスク100の背面101においてブレード85が設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部110が設けると、以下のような原理によって、シャフト4との締結力の減少を抑制できることが判明した。すなわち、図3に示すように、ディスク100に対して遠心力が作用すると、上述したようにディスク100がカバー側に向かって倒れるように変形して、ブレード85を介してカバー200を押圧する。この時、ディスク100に凹部110が設けられていると、凹部110を折り曲げ点として、ディスク100のうち該凹部110よりも径方向外側の領域100bは、凹部110よりも径方向内側の領域100aに対して矢印93で示すようにディスク側からカバー側に向かってさらに倒れるように変形する。すなわち、ディスク100に凹部110が設けられていると、ディスク100に凹部110が設けられていない場合と比べて、ディスク100のうち比較的径方向外側の領域が、一層ディスク側からカバー側に向かって倒れるように変形する。これにより、カバー200のうち比較的径方向外側の領域200bが矢印95で示すようにディスク側からカバー側へ向かう方向に押圧されるため、カバーのうち比較的径方向内側に近い領域200aには、矢印97で示すように径方向内側に向かう成分を有する押圧力Fが作用する。
そのため、締結部89の近傍が径方向外側に向かって膨らむことが抑制されるため、上記締結力の減少が抑制される。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上記締結力の減少を抑制でき、インペラ8の高周速化に寄与できる。
【0025】
(凹部110の径方向位置について)
発明者らが鋭意検討した結果、上述したようにシャフト4との締結力の減少を効果的に抑制するためには、凹部110の最深部111がディスク100の外径の40%以上70%以下の範囲内に存在するとよいことが判明した。
そこで、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、凹部110の最深部111がディスク100の外径の40%以上70%以下の範囲内に存在するように凹部110の径方向位置を設定している。これにより、シャフト4との締結力の減少を効果的に抑制できる。
【0026】
(内側突出部130及び外側突出部150について)
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100は、ディスク100の背面101において、内側突出部130と外側突出部150とを有するとよい。
上述したように、遠心力によってインペラ8がディスク側において径方向外側に浮き上がるように変形する傾向がある。
そこで、このような変形を抑制するために周方向応力を抑制すべく、例えばディスク100の厚さを厚くすることが考えられる。しかし、ディスク100の厚さを単に厚くするだけでは、インペラ8の重量が増加するため遠心力も増加し、周方向応力を効果的に抑制できないおそれがある。また、ディスク100には複数のブレード85が取り付けられているため、ブレード85から受ける力等によってディスク100に局所的に高い応力が生じるおそれがある。そのため、遠心力の抑制のために、例えばディスク100の厚さを薄くすると、ディスク100に生じる局所的な応力の影響がより大きくなるおそれがある。
【0027】
ディスク100において周方向応力を効果的に抑制するためには、径方向において比較的内側の領域の厚さを厚くするとよい。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上述した内側突出部130を設けることで、ディスク100(ハブ81)において周方向応力を効果的に抑制できる。
【0028】
また、発明者らが鋭意検討した結果、上述した外側突出部150を設けることで、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力の影響を抑制できることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力の影響を抑制できる。
【0029】
なお、幾つかの実施形態に係るインペラ8において、内側突出部130は、周方向に沿って一様に、すなわち、周方向の位置によらず軸方向への突出量が不変となるように形成されていてもよい。また、後述するように、幾つかの実施形態に係るインペラ8において、内側突出部130は、周方向の位置によって突出量が変化してもよい。
また、幾つかの実施形態に係るインペラ8において、外側突出部150は、周方向に沿って一様に形成されていてもよい。また、後述するように、幾つかの実施形態に係るインペラ8において、外側突出部150は、周方向の位置によって突出量が変化してもよい。
【0030】
(凹部110、内側突出部130及び外側突出部150の軸方向位置の関係について)
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、図3に示すように、凹部110の最深部111と内側突出部130の頂点131との軸方向距離Bを1とした場合に、最深部111と外側突出部150の頂点151との軸方向距離Aは、0.2以上0.6以下であるとよい。
発明者らが鋭意検討した結果、凹部110の最深部111と内側突出部130の頂点131との軸方向距離Bを1とした場合に、最深部111と外側突出部150の頂点151との軸方向距離Aが0.2未満であると、上述したような外側突出部150を設けることによる作用効果が不十分になってしまうおそれがあることが判明した。また、凹部110の最深部111と内側突出部130の頂点131との軸方向距離Bを1とした場合に、最深部111と外側突出部150の頂点151との軸方向距離Aが0.6を超えると、凹部110よりも径方向外側の領域110bでディスク100の重量が増加することによるデメリットが大きくなるおそれがあることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上記軸方向距離Bを1とした場合に、上記軸方向距離Aを0.2以上0.6以下に設定することで、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力の影響を効果的に抑制できる。
【0031】
(内側突出部130の形状について)
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、図2及び図3に示すように、内側突出部130は、内側突出部130の頂点131から径方向内側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するように形成されているとよい。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、図2及び図3に示すように、内側突出部130は、内側突出部130の頂点131から径方向内側に向かうにつれてディスク100の厚さが薄くなるように形成されているとよい。
発明者らが鋭意検討した結果、図2及び図3に示す頂点131よりも径方向内側の領域において、ディスク100の厚さを厚くしても、ディスク100の重量が増加する割には周方向応力を抑制する効果が比較的少ないことが判明した。したがって、図2及び図3に示すように、内側突出部130の形状を、内側突出部130の頂点131から径方向内側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するように形成することで、ディスク100において周方向応力を抑制しつつ、ディスク100の重量増を抑制できる。
【0032】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100の背面101は、内側突出部130が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
すなわち、ディスク100には周方向に間隔を空けて複数のブレード85が取り付けられているため、ディスク100に生じる応力が周方向の位置によって変化する。この点に注目して発明者らが鋭意検討した結果、周方向の位置によって内側突出部130の突出量を変えることで、ディスク100において周方向応力を抑制しつつ、内側突出部130を設けることによる重量増を抑制できることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、内側突出部130が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するようにディスク100の背面101を形成することで、ディスク100において周方向応力を抑制しつつ、内側突出部130を設けることによる重量増を抑制できる。
具体的には、以下のようにディスク100の背面101を形成するとよい。
【0033】
図4Aは、図2におけるIV(A)矢視断面、すなわち、内側突出部130が存在する径方向位置における矢視断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図4Aに示したように、内側突出部130の径方向位置におけるディスク100の厚さは、ブレード85の配置位置に対応するディスク100の周方向位置P1の方が周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応するディスク100の周方向位置P2に比べて大きいとよい。
すなわち、例えば、幾つかの実施形態に係る内側突出部130は、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1において軸方向への突出量が比較的多い第1突出部133と、周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2において軸方向への突出量が比較的少ない第2突出部134とが周方向に交互に現れるように形成されていてもよい。
【0034】
発明者らが鋭意検討した結果、隣り合う2つのブレード同士の中間位置に対応する周方向位置P2では、ディスク100の厚さを厚くする必要性が低いことが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、第1突出部133と第2突出部134とが周方向に交互に現れるように内側突出部130を形成することで、内側突出部130を設けることによる重量増を抑制しつつ、ディスク100における周方向応力を効率的に抑制できる。
【0035】
(外側突出部150の形状について)
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、図2及び図3に示すように、外側突出部150は、外側突出部150の頂点151から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するように形成されているとよい。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、図2及び図3に示すように、外側突出部150は、外側突出部150の頂点151から径方向外側に向かうにつれてディスク100の厚さが薄くなるように形成されているとよい。
遠心力の大きさは、中心Oからの距離及び質量に比例する。そのため、ディスク100に作用する遠心力を低減する観点から、ディスク100において中心Oからの距離が遠いほど、ディスク100の厚さは薄い方が望ましい。したがって、図2及び図3に示すように、外側突出部150の形状を、外側突出部150の頂点151から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するように形成することで、ディスク100に作用する遠心力を抑制できる。
【0036】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100の背面101は、外側突出部150が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
発明者らが鋭意検討した結果、上記凹部110よりも径方向外側の領域100bにおいて、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力は、周方向に間隔を空けて取り付けられている複数のブレード85の影響を受けるため、周方向に沿って周期的に増減することが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、外側突出部150が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するようにディスク100の背面101を形成することで、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。
具体的には、以下のようにディスク100の背面101を形成するとよい。
【0037】
図4Bは、図2におけるIV(B)矢視断面、すなわち、外側突出部150のうちの径方向内側の領域150aが存在する径方向位置における矢視断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図4Bに示したように、外側突出部150のうちの径方向内側の領域150aが存在する径方向位置において、ディスク100の厚さは、ブレード85の配置位置に対応するディスク100の周方向位置P1を挟んで該ブレードの圧力面85P側に位置するディスク100の位置P3の方が該ブレード85の負圧面85S側に位置するディスク100の位置P4に比べて大きいとよい。
すなわち、例えば、幾つかの実施形態に係る外側突出部150は、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P3において軸方向への突出量が比較的多い第3突出部153が形成されているとよい。また、幾つかの実施形態に係るディスク100では、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1を挟んで該ブレード85の負圧面85S側の位置P4において、少なくとも第3突出部153を含むディスク100の厚さよりもディスク100の厚さが薄くなる凹部171が形成されているとよい。なお、幾つかの実施形態に係る凹部171の少なくとも一部の領域における軸方向位置は、従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもカバー側(上流側)に存在してもよい。
【0038】
発明者らが鋭意検討した結果、上記凹部110よりも径方向外側の領域100bのうち比較的径方向内側の領域となる領域150aでは、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力は、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P3において比較的高くなることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、第3突出部153が周方向に沿って周期的に現れるように外側突出部150を形成することで、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。また、上述したように、凹部171が周方向に沿って周期的に現れるように、すなわち、周方向に沿って第3突出部153と凹部171とが交互に現れるように外側突出部150を形成してもよい。
【0039】
図4Cは、図2におけるIV(C)矢視断面、すなわち、外側突出部150のうちの径方向外側の領域150bが存在する径方向位置における矢視断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図4Cに示したように、外側突出部150のうちの径方向外側の領域150bが存在する径方向位置において、ディスク100の厚さは、周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2の方がブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1に比べて大きいとよい。
すなわち、例えば、幾つかの実施形態に係る外側突出部150は、周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2において軸方向に突出する第4突出部154が形成されているとよい。また、幾つかの実施形態に係るディスク100では、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1において、少なくとも第4突出部154を含むディスク100の厚さよりもディスク100の厚さが薄くなる凹部173が形成されているとよい。なお、幾つかの実施形態に係る凹部173の少なくとも一部の領域における軸方向位置は、従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもカバー側(上流側)に存在してもよい。
【0040】
発明者らが鋭意検討した結果、上記凹部110よりも径方向外側の領域100bのうち比較的径方向外側の領域となる領域150bでは、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力は、周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2において僅かに高くなることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、第4突出部154が周方向に沿って周期的に現れるように外側突出部150を形成することで、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。また、上述したように、凹部173が周方向に沿って周期的に現れるように、すなわち、周方向に沿って第4突出部154と凹部173とが交互に現れるように外側突出部150を形成してもよい。
なお、図示はしないが、図2におけるIV(C)矢視断面よりも径方向外側の少なくとも一部の領域における軸方向位置は、周方向の全周にわたって従来のインペラ8Xにおけるディスク100Xの背面101Xの軸方向位置よりもカバー側(上流側)に存在してもよい。
【0041】
(カバー200の形状について)
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、厚さが極大値Dとなる径方向位置よりも径方向外側において、厚さの極大値Dに対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さCを有するとよい。なお、カバー200の径方向外側端部205がブレード85の後縁85Tよりも径方向外側に突出していた場合、上記最小厚さCは、カバー200のうちブレード85の後縁85Tよりも径方向外側に突出した部分における最小厚さとする。
【0042】
上述したように、ディスク100に対して遠心力が作用すると、ディスク100がカバー側に向かって倒れるように変形して、ブレード85を介してカバー200を押圧する。
なお、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク100には上記凹部110が設けられているので、上述したように、上記凹部110が設けられていない場合と比べて、ディスク100のうち比較的径方向外側の領域が、一層ディスク側からカバー側に向かって倒れるように変形する。
【0043】
ここで、ディスク100がカバー側に向かって倒れるように変形すると、カバー200のうち、主として比較的径方向外側の領域200bが押圧されることとなる。そのため、カバー200のうち比較的径方向内側に近い領域200aにおいて径方向内側に向かう成分を有する押圧力Fを効率的に発生させるためには、カバー200の曲げ剛性を向上させる、すなわちカバー200の厚さを厚くするとよい。
しかし、単にカバー200の厚さを厚くするだけでは、カバー200に作用する遠心力が増加するため、増加する遠心力の影響を受けて上記押圧力Fが減殺されてしまう。
【0044】
ここで、径方向内側端部203と径方向外側端部205との間で厚さの極大値Dを有するようにカバー200を構成すると、カバー200の厚さを厚くしても、上記押圧力Fを減殺するような遠心力の増加を抑制できる。
また、発明者らが鋭意検討した結果、厚さが極大値Dとなる径方向位置よりも径方向外側において、厚さの極大値Dに対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さCを有するようにカバー200を構成すると、カバー200における比較的径方向外側の領域200bの厚さを抑制でき、インペラ8の重量の増加を抑制できることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、インペラ8の重量の増加を抑制しつつ、上記締結力の減少を抑制できる。
【0045】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、カバー200の前面(外側表面201)は、カバー200の厚さが極大値Dとなる径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
【0046】
発明者らが鋭意検討した結果、カバー200には周方向に間隔を空けて複数のブレード85が取り付けられているため、カバー200の厚さが極大値Dとなる径方向位置において、周方向の位置によって極大値Dの大きさ、すなわちカバー200の厚さを変えることで、上記押圧力Fを効率的に発生させることができるとともに、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上記締結力の減少を効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
具体的には、以下のようにカバー200の外側表面201を形成するとよい。
【0047】
図5Aは、図2におけるV(A)矢視断面、すなわち、カバー突出部210のうち頂部211が存在する位置における矢視断面を模式的に示した図である。
図5Bは、図2におけるV(B)矢視断面、すなわち、カバー突出部210のうち頂部211よりも径方向外側の位置における矢視断面を模式的に示した図である。
図5Cは、図2におけるV(C)矢視断面、すなわち、カバー突出部210のうち図2におけるV(B)矢視断面の位置よりも径方向外側の位置における矢視断面を模式的に示した図である。
【0048】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図5A乃至図5Cに示すように、カバー200の厚さが極大値Dとなる径方向位置において、カバー200の厚さは、以下のように設定されているとよい。すなわち、ブレード85の配置位置に対応するカバー200の周方向位置P5を挟んで該ブレード85の圧力面85P側に位置するカバー200の位置を位置P6とし、周方向位置P5を挟んで該ブレード85の負圧面85S側に位置するカバー200の位置を位置P7とする。カバー200の厚さは、位置P6における厚さの方が位置P7における厚さよりも大きいとよい。
【0049】
すなわち、例えば図5Aに示すように、幾つかの実施形態に係るカバー突出部210は、頂部211が存在する径方向位置において、周方向の位置P6において突出量が比較的多い第1突出部213と、周方向の位置P7において突出量が比較的少ない第2突出部214とが周方向に交互に現れるように形成されていてもよい。
また、例えば図5Bに示すように、幾つかの実施形態に係るカバー突出部210は、頂部211が存在する径方向位置よりも径方向外側において、位置P6を含む周方向位置に設けられた第3突出部215と、位置P7含む周方向位置に設けられた凹部231とが周方向に交互に現れるように形成されていてもよい。第3突出部215は、突出量が比較的多いものの上記第1突出部213よりも突出量が少ない部位である。凹部231は、少なくとも第3突出部215を含むカバー200の厚さよりもカバー200の厚さが小さくなる部位である。
なお、凹部231の少なくとも一部の領域におけるカバー200の厚さは、従来のインペラ8Xのカバー200Xにおいて該領域に径方向位置が対応する領域の厚さよりも小さくてもよい。
【0050】
なお、例えば図5Cに示すように、幾つかの実施形態に係るカバー200は、上記第3突出部215及び凹部231が形成された径方向位置よりも径方向外側において、位置P6を含み周方向に延在する外周側領域233と、位置P7含む周方向位置に設けられた凹部235とが周方向に交互に現れるように形成されていてもよい。外周側領域233は、少なくとも第3突出部215を含むカバー200の厚さよりもカバー200の厚さが小さくなる領域である。凹部235は、外周側領域233よりもカバー200の厚さが小さくなる部位である。
なお、外周側領域233の少なくとも一部の領域におけるカバー200の厚さは、従来のインペラ8Xのカバー200Xにおいて該領域に径方向位置が対応する領域の厚さよりも小さくてもよい。また、凹部235におけるカバー200の厚さは、従来のインペラ8Xのカバー200Xにおいて該領域に径方向位置が対応する領域の厚さよりも小さくてもよい。
【0051】
発明者らが鋭意検討した結果、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P5を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P6においてカバー200の厚さを該ブレード85の負圧面85S側の位置P7よりも厚くすると、上記押圧力Fを効率的に発生させることができることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上記締結力の減少を効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
【0052】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図5A乃至図5Cに示すように、ブレード85とカバー200とのなす角度θは、ブレード85の圧力面85P側において鋭角であるとよい。
【0053】
発明者らが鋭意検討した結果、ブレード85とカバー200とのなす角度θがブレード85の圧力面85P側において鋭角であると、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P5を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P6においてカバー200の厚さを該ブレード85の負圧面85S側の位置P7よりも厚くしたときに、上記押圧力Fを一層効率的に発生させることができることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、上記締結力の減少を一層効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
【0054】
幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1によれば、上述した幾つかの実施形態に係るインペラ8を備えるので、インペラ8の高周速化を図ることができ、遠心圧縮機1の小型化や低コスト化に資する。
【0055】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、インペラ8には、凹部110と、内側突出部130と、外側突出部150と、カバー突出部210とが設けられている。しかし、インペラ8には、例えば凹部110、内側突出部130、及び外側突出部150が設けられずに、カバー突出部210が設けられていてもよい。また、インペラ8には、例えば凹部110、内側突出部130、及び外側突出部150が設けられていて、カバー突出部210が設けられていなくてもよい。
【0056】
上述した幾つかの実施形態では、インペラ8が回転機械の一例として多段式の遠心圧縮機1に用いられる場合について説明した。しかし、上述した幾つかの実施形態に係るインペラ8は、単段式の圧縮機や、ラジアルタービン、ポンプ等、他の種類の回転機械に用いられるものであってもよい。
【0057】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラ8は、ディスク100と、径方向流路83を隔ててディスク100と軸方向に対向配置されるカバー200と、ディスク100とカバー200との間に配置されるブレード85と、を備える。ディスク100の背面101には、ブレード85が設けられている径方向の範囲内に、周方向に延在する凹部110が設けられている。
【0058】
上述したように、上記(1)の構成によれば、上記締結力の減少を抑制でき、インペラ8の高周速化に寄与できる。
【0059】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、凹部110の最深部111は、ディスク100の外径の40%以上70%以下の範囲内に存在するとよい。
【0060】
上記(2)の構成によれば、シャフト4との締結力の減少を効果的に抑制できる。
【0061】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、ディスク100は、ディスク100の背面101において、上記凹部110よりも径方向内側に位置する内側突出部130と、ディスク100の背面101において、上記凹部110よりも径方向外側に位置する外側突出部150と、を有するとよい。
【0062】
上述したように、上記(3)の構成によれば、上述した内側突出部を設けることで、ディスク100(ハブ81)において周方向応力を効果的に抑制できる。
また、上記(3)の構成によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力の影響を抑制できる。
【0063】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、凹部110の最深部111と内側突出部130の頂点131との軸方向距離Bを1とした場合に、最深部111と外側突出部150の頂点151との軸方向距離Aは、0.2以上0.6以下であるとよい。
【0064】
上記(4)の構成によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力の影響を効果的に抑制できる。
【0065】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、内側突出部130は、内側突出部130の頂点131から径方向内側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するとよい。
【0066】
上記(5)の構成によれば、ディスク100において周方向応力を抑制しつつ、ディスク100の重量増を抑制できる。
【0067】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(5)の何れかの構成において、ディスク100の背面101は、内側突出部130が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
【0068】
上記(6)の構成によれば、ディスク100において周方向応力を抑制しつつ、内側突出部130を設けることによる重量増を抑制できる。
【0069】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、内側突出部130の径方向位置におけるディスク100の厚さは、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1の方が周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2に比べて大きいとよい。
【0070】
上記(7)の構成によれば、内側突出部130を設けることによる重量増を抑制しつつ、ディスク100における周方向応力を効率的に抑制できる。
【0071】
(8)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(7)の何れかの構成において、外側突出部150は、外側突出部150の頂点151から径方向外側に向かうにつれて軸方向位置がカバー200に接近するとよい。
【0072】
上記(8)の構成によれば、径方向外側に向かうにつれてディスク100の厚さを薄くできるので、ディスク100に作用する遠心力を抑制できる。
【0073】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、ディスク100の背面101は、外側突出部150が存在する径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
【0074】
上記(9)の構成によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。
【0075】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、外側突出部150のうちの径方向内側の領域150aが存在する径方向位置において、ディスク100の厚さは、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P3の方が該ブレード85の負圧面85S側の位置P4に比べて大きいとよい。
【0076】
上記(10)の構成によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。
【0077】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)の構成において、外側突出部150のうちの径方向外側の領域150bが存在する径方向位置において、ディスク100の厚さは、周方向に沿って隣り合う2つのブレード85同士の中間位置に対応する周方向位置P2の方がブレード85の配置位置に対応する周方向位置P1に比べて大きいとよい。
【0078】
上記(11)の構成によれば、上述したようなディスク100に生じる局所的な応力を抑制しつつ、外側突出部150を設けることによる重量増を抑制できる。
【0079】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかの構成において、カバー200は、径方向内側端部203と径方向外側端部205との間で厚さの極大値Dを有し、且つ、厚さが極大値Dとなる径方向位置よりも外側において、厚さの極大値Dに対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さCを有するとよい。
【0080】
上記(12)の構成によれば、インペラ8の重量の増加を抑制しつつ、上記締結力の減少を抑制できる。
【0081】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、カバー200の前面(外側表面201)は、カバー200の厚さが極大値Dとなる径方向位置において、周方向に凹凸を有するとよい。
【0082】
上記(13)の構成によれば、上記締結力の減少を効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
【0083】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)の構成において、カバー200の厚さが極大値Dとなる径方向位置において、カバー200の厚さは、ブレード85の配置位置に対応する周方向位置P5を挟んで該ブレード85の圧力面85P側の位置P6における厚さの方が該ブレード85の負圧面85S側の位置P7における厚さよりも大きいとよい。
【0084】
上記(14)の構成によれば、上記締結力の減少を効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
【0085】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)の構成において、ブレード85とカバー200とのなす角度θは、ブレード85の圧力面85P側において鋭角であるとよい。
【0086】
上記(15)の構成によれば、上記締結力の減少を一層効果的に抑制しつつ、カバー200の厚さを厚くすることによる重量増を抑制できる。
【0087】
(16)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラ8は、ディスク100と、径方向流路83を隔ててディスク100と軸方向に対向配置されるカバー200と、ディスク100とカバー200との間に配置されるブレード85と、を備える。カバー200は、径方向内側端部203と径方向外側端部205との間で厚さの極大値Dを有し、且つ、厚さが極大値Dとなる径方向位置よりも外側において、厚さの極大値Dに対する比が0.2以上0.6以下の範囲内の最小厚さCを有する。
【0088】
上記(16)の構成によれば、インペラ8の重量の増加を抑制しつつ、上記締結力の減少を抑制できる。
【0089】
(17)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械としての遠心圧縮機1は、上記(1)乃至(16)の何れかの構成のインペラ8を備える。
【0090】
上記(17)の構成によれば、インペラ8の高周速化を図ることができ、遠心圧縮機1の小型化や低コスト化に資する。
【符号の説明】
【0091】
1 遠心圧縮機
4 回転軸(シャフト)
8 インペラ
83 径方向流路
85 ブレード
100 ディスク
101 背面
110 凹部
130 内側突出部
131 頂点
150 外側突出部
151 頂点
200 カバー
201 外側表面(前面)
210 カバー突出部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6