(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電界紡糸ヘッド、電界紡糸装置及び電界紡糸方法
(51)【国際特許分類】
D01D 4/00 20060101AFI20241118BHJP
D01D 4/06 20060101ALI20241118BHJP
D01D 5/04 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
D01D4/00 Z
D01D4/06
D01D5/04
(21)【出願番号】P 2020138093
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】都甲 昌裕
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534828(JP,A)
【文献】特開2014-062351(JP,A)
【文献】特開2016-037694(JP,A)
【文献】特開2017-166090(JP,A)
【文献】特表2012-529574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的絶縁性を有する材料から形成され、帯電した原料液が供給される内部空洞が内部に形成されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体において前記内部空洞から外周側にそれぞれが延設され、それぞれにおいて前記内部空洞とは反対側の端に前記原料液を噴出可能な噴出口が形成される複数の流路と
、
前記ヘッド本体の外周部に形成される
とともに、前記複数の流路の前記噴出口から前記原料液が噴出される側を向く単一の噴出面に、前記複数の流路の前記噴出口が位置する噴出部と、
を具備し、
前記複数の流路のそれぞれは、
前記内部空洞への接続位置から前記外周側へ延設される第1の流路延設部と、
前記第1の流路延設部に対して前記外周側において前記噴出口まで前記外周側へ延設され、前記第1の流路延設部に比べて断面積が小さい第2の流路延設部と、
を備える、電界紡糸ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッド本体は、長手方向に延設されるとともに、前記内部空洞の中心軸は、前記長手方向に沿い、
前記噴出部の前記
噴出面は、前記ヘッド本体の前記外周部において前記内部空洞の前記中心軸から前記中心軸に垂直な方向の距離が最も大きい部分を含む、
請求項1の電界紡糸ヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド本体は、前記ヘッド本体の前記外周部において前記外周側へ突出する突出部を備え、
前記複数の流路のそれぞれは、前記突出部を通って延設され、
前記突出部の突出端に、前記複数の流路の前記噴出口が位置する前記噴出部
の前記噴出面が形成される、
請求項1又は2の電界紡糸ヘッド。
【請求項4】
前記複数の流路のいずれかにおいて前記噴出口及び前記噴出口の近傍に形成され、導電性を有する金属から形成される金属流路面をさらに具備する、請求項1乃至3のいずれか1項の電界紡糸ヘッド。
【請求項5】
前記ヘッド本体では、前記内部空洞から前記ヘッド本体の前記外周部まで前記流路とは反対側へ向かって、前記流路と同一の数の孔が形成され、
前記ヘッド本体との間が液密になる状態で前記孔のそれぞれに配置され、前記孔のそれぞれを外部に対して閉塞する閉塞部材をさらに具備する、
請求項1乃至4のいずれか1項の電界紡糸ヘッド。
【請求項6】
前記孔のそれぞれは、前記流路の対応する1つに対して同軸に形成され、
前記孔の断面積は、前記流路の対応する1つの前記第1の流路延設部の断面積以上の大きさである、
請求項5の電界紡糸ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の電界紡糸ヘッドと、
前記電界紡糸ヘッドへの前記原料液の供給源及び供給経路のいずれかに設けられ、導電材料から形成される導電部と、
前記導電部に電圧を印加することにより、前記原料液を帯電させる電源と、
を具備する電界紡糸装置。
【請求項8】
請求項7の電界紡糸装置の前記導電部に電圧を印加し、前記原料液を帯電させることと、
前記電界紡糸ヘッドから帯電させた前記原料液を噴出させることと、
を具備する、電界紡糸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界紡糸ヘッド、電界紡糸装置及び電界紡糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)により、微細なファイバーを収集体又は基材の表面に堆積させ、ファイバーの膜を形成する電界紡糸装置がある。電界紡糸装置には、電界紡糸ヘッドが設けられる。電界紡糸ヘッドとして、ヘッド本体と、ヘッド本体の外周面から外周側へ突出する複数のノズルと、を備えるものがある。このような電界紡糸ヘッドでは、複数のノズルのそれぞれは、突出端部がニードル状に形成される等の先鋭形状に形成される。そして、電界紡糸ヘッドに原料液が供給されている状態において、ノズル(電界紡糸ヘッド)と収集体又は基材との間に電圧を印加することにより、ノズルのそれぞれの突出端に形成される噴出口から原料液が収集体又は基材の表面に向かって噴出され、ファイバーが収集体又は基材の表面に堆積される。
【0003】
前述のような電界紡糸ヘッドでは、ファイバーの膜を形成する作業を行った後、電界紡糸ヘッドの外表面に付着したファイバーを除去する等の清掃作業が行われる。このため、例えば、先鋭形状に形成されるノズルを設けない構造に電界紡糸ヘッドを形成する等、清掃作業を行い易い構造に電界紡糸ヘッドを形成することが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-90924号公報
【文献】特開2012-184518号公報
【文献】特開2016-53230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、清掃作業における作業性が向上する電界紡糸ヘッド、その電界紡糸ヘッドを備える電界紡糸装置、及び、その電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電界紡糸ヘッドは、ヘッド本体、複数の流路及び噴出部を備える。ヘッド本体は、電気的絶縁性を有する材料から形成され、帯電した原料液が供給される内部空洞がヘッド本体の内部に形成される。流路のそれぞれは、ヘッド本体において内部空洞から外周側に延設され、流路のそれぞれにおいて内部空洞とは反対側の端に、原料液を噴出可能な噴出口が形成される。噴出部は、ヘッド本体の外周部に形成され、噴出部では、複数の流路の噴出口から原料液が噴出される側を向く単一の噴出面に、複数の流路の噴出口が位置する。複数の流路のそれぞれは、内部空洞への接続位置から外周側へ延設される第1の流路延設部と、第1の流路延設部に対して外周側において噴出口まで外周側へ延設される第2の流路延設部と、を備える。第2の流路延設部は、第1の流路延設部に比べて断面積が小さい。
【0007】
実施形態によれば、電界紡糸装置は、前述の電界紡糸ヘッド、導電部及び電源を備える。導電部は、電界紡糸ヘッドへの原料液の供給源及び供給経路のいずれかに設けられ、導電材料から形成される。電源は、導電部に電圧を印加することにより、原料液を帯電させる。
実施形態によれば、電界紡糸方法では、前述の電界紡糸装置の導電部に電圧を印加して、原料液を帯電させる。そして、電界紡糸方法では、帯電させた原料液を電界紡糸ヘッドから噴出させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電界紡糸ヘッドの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電界紡糸ヘッドの構成を、長手軸に対して平行又は略平行な断面で示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の変形例に係る電界紡糸ヘッドの構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の変形例に係る電界紡糸ヘッドの構成を、長手軸に対して平行又は略平行な断面で示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の変形例に係る電界紡糸ヘッドにおいて、1つの噴出口及びその近傍の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第3の変形例に係る電界紡糸ヘッドの構成を、長手軸に対して平行又は略平行な断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電界紡糸装置1の一例を示す。
図1に示すように、電界紡糸装置1は、電界紡糸ヘッド2、原料液の供給部3、電源4、収集体5、及び、制御部6を備える。
【0011】
原料液の供給部3は、原料液の供給源、及び、供給源から電界紡糸ヘッド2への原料液の供給経路を構成する。供給部3は、収納部31、供給駆動部32、供給調整部33及び供給配管35を備える。収納部31は、原料液を収納するタンク等である。原料液は、高分子材料を溶媒に溶解したものである。原料液に含まれる高分子、及び、高分子を溶解させる溶媒は、収集体5の表面に堆積させるファイバー100の種類等に対応させて、適宜に決定される。高分子材料は、特に限定されるものではなく、形成するファイバー100の材質に対応させて適宜に変更可能である。高分子材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、アラミド等を用いることができる。原料液に用いられる溶媒は、高分子物質を溶解することができるものであればよい。溶媒は、溶解させる高分子物質に対応させて適宜に変更可能である。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)等を用いることができる。また、ある一例では、原料液の粘度は、10Pa・s程度である。
【0012】
供給配管35は、収納部31と電界紡糸ヘッド2との間を接続し、原料液の供給流路を形成する。収納部31、供給駆動部32、供給調整部33及び供給配管35のそれぞれは、原料液に耐性を有する。ある一例では、供給配管35は、フッ素樹脂等の絶縁材から形成される。また、
図1の一例では、収納部31は、金属等の導電材料から形成され、供給源において導電部を形成する。
【0013】
供給駆動部32は、駆動等されることにより、収納部31から供給配管35を通して原料液を電界紡糸ヘッド2に供給する。ある一例では、供給駆動部32は、ポンプである。供給調整部33は、電界紡糸ヘッド2に供給される原料液の流量及び圧力等を調整する。ある一例では、供給調整部33は、原料液の流量及び圧力等を制御可能な制御弁を備える。この場合、供給調整部33は、原料液の粘度及び電界紡糸ヘッド2に形成される後述する噴出部20A,20Bの構造等に基づいて、原料液を適宜の流量及び圧力等に調整する。また、ある一例では、供給調整部33は、収納部31から電界紡糸ヘッド2への原料液の供給及び供給停止を切替え可能である。この場合、供給調整部33は、例えば、切替え弁を備える。
【0014】
電源4は、供給源に設けられる導電部である収納部31に電圧を印加する。この際、収納部31に、所定の極性の電圧が印加される。これにより、収納部31に収納された原料液が、収納部31と同一の極性に帯電される。そして、供給駆動部32が駆動等されることにより、収納部31と同一の極性に帯電した原料液が、電界紡糸ヘッド2に供給される。なお、収納部31に印加される電圧の極性は、プラスであってもよく、マイナスであってもよい。
図1の一例では、電源4は、直流電源であり、収納部31にプラスの電圧を印加する。このため、原料液は、プラスに帯電される。
【0015】
また、電源4から電圧が印加される導電部は、収納部31に限られるものではない。導電部は、電界紡糸ヘッド2への原料液の供給源、及び、供給源と電界紡糸ヘッド2との間の供給経路のいずれかに設けられていればよい。そして、電源4によって導電部に電圧が印加され、導電部と同一の極性に原料液が帯電されればよい。これにより、帯電した原料液が、電界紡糸ヘッド2へ供給される。
【0016】
収集体5は、導電材料から形成される。また、収集体5は、原料液に対して耐性を有し、ある一例では、ステンレスから形成される。収集体5には、電界紡糸ヘッド2に形成される後述する噴出部20A,20Bから、原料液が噴出される。したがって、収集体5は、電界紡糸ヘッド2に対して、原料液が噴出される側に配置される。
図1の一例では、収集体5は接地され、収集体5の対地電圧は0V又は略0Vになる。別のある一例では、電源4又は電源4とは別の電源によって、原料液及び収納部(導電部)31とは反対の極性の電圧が、収集体5に印加される。
【0017】
本実施形態では、収納部(導電部)31と同一の極性に帯電した原料液が、電界紡糸ヘッド2に供給される。このため、電界紡糸ヘッド2の原料液と収集体5との間の電位差によって、電界紡糸ヘッド2に供給された原料液は、電界紡糸ヘッド2から収集体5に向かって噴出される。電界紡糸ヘッド2から原料液が収集体5に向かって噴出されることにより、ファイバー100が収集体5の表面に堆積され、堆積されたファイバー100によってファイバー100の膜が形成される。すなわち、電界紡糸法(電荷誘導紡糸法等とも称されることもある)によって、ファイバー100の膜が形成される。なお、収納部31等の導電部に印加される電圧、及び、収集体5に印加される電圧等は、原料液に含まれる高分子の種類及び電界紡糸ヘッド2の収集体5に対する距離等に対応させて、適宜の大きさに調整される。
【0018】
収集体5は、例えば、板状又はシート状に形成される。収集体5がシート状に形成される場合、ロール等の外周面に巻かれた収集体5にファイバー100を堆積させてもよい。また、収集体5は、移動可能であってもよい。ある一例では、一対の回転ドラム、及び、回転ドラムを駆動させる駆動源が設けられる。駆動源によって回転ドラムが駆動されることにより、ベルトコンベヤーと同様にして、一対の回転ドラムの間を収集体5が移動する。収集体5が移動する(搬送される)ことにより、収集体5の表面においてファイバー100が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。収集体5の表面に形成されたファイバー100の膜は、収集体5から取外される。ファイバー100の膜は、これらに限定されないが、例えば、不織布及びフィルタ等に用いられる。
【0019】
また、ある一例では、収集体5が設けられない。この場合、導電材料から形成される基材が用いられる。そして、前述のように帯電した原料液を電界紡糸ヘッド2に供給することにより、電界紡糸ヘッド2の後述する噴出部20A,20Bから基材に向かって原料液が噴出される。これにより、基材の表面にファイバー100が堆積され、基材の表面にファイバー100の膜が形成される。この場合、基材は、接地されていてもよく、電源4又は電源4とは別の電源によって、原料液とは反対の極性の電圧が基材に印加されてもよい。
【0020】
また、別のある一例では、収集体5上に基材が設置される。そして、前述のように帯電した原料液を電界紡糸ヘッド2に供給することにより、電界紡糸ヘッド2の後述する噴出部20A,20Bから収集体5及び基材に向かって原料液が噴出される。これにより、収集体5上に設置される基材の表面にファイバー100が堆積され、基材の表面にファイバー100の膜が形成される。この場合、基材が電気的絶縁性を有する場合でも、基材の表面にファイバー100の膜を形成可能になる。
【0021】
また、収集体5上に基材が設置される場合、基材は、収集体5上を移動可能であってもよい。ある一例では、シート状の基材が巻かれた回転ドラムと、表面にファイバー100の膜が形成された基材を巻き取る回転ドラムと、が設けられる。そして、回転ドラムのそれぞれを回転することにより、収集体5上を基材が移動する。基材が移動する(搬送される)ことにより、基材の表面においてファイバー100が堆積される領域を経時的に変化させることが、可能になる。なお、基材の表面上にファイバー100の膜を形成する例としては、これに限定されないが、例えば、電池のセパレータ一体型電極の製造が挙げられる。この場合、電極群の負極及び正極の一方が基材として用いられる。そして、基材の表面に形成されるファイバー100の膜が、負極又は正極と一体のセパレータとなる。
【0022】
制御部(コントローラ)6は、例えば、コンピュータ等である。制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。制御部6は、集積回路等を1つのみ備えてもよく、集積回路等を複数備えてもよい。制御部6は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。制御部6は、供給駆動部32の駆動、供給調整部33の作動、及び、電源4からの出力等を制御する。
【0023】
図2及び
図3は、電界紡糸ヘッド2の構成を示す。
図1乃至
図3に示すように、電界紡糸ヘッド2は、ヘッド本体11を備える。ヘッド本体11(電界紡糸ヘッド2)は、中心軸として長手軸Cを有し、長手軸Cに沿って長手方向に延設される。なお、
図1では、長手軸Cに対して交差する方向から視た状態で電界紡糸ヘッド2を示し、
図2は、電界紡糸ヘッド2の斜視図を示す。また、
図3では、長手軸Cに対して平行又は略平行な断面で、電界紡糸ヘッド2を示す。本実施形態では、ヘッド本体11は、電気的絶縁性を有する材料から形成され、例えば、電気的絶縁性を有する樹脂から形成される。ヘッド本体11を形成する樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0024】
ヘッド本体11の内部には、長手軸Cに沿って内部空洞12が形成される。本実施形態では、内部空洞12は、ヘッド本体11と同軸又は略同軸に形成され、内部空洞12の中心軸は、長手軸Cと同軸又は略同軸に形成される。なお、内部空洞12の中心軸は、ヘッド本体11の長手軸C、すなわち、ヘッド本体11が延設される長手方向に沿っていれば、ヘッド本体11と同軸又は略同軸でなくてもよい。内部空洞12の中心軸は、例えば、内部空洞12が延びる長手方向に垂直な断面の重心等により、定めることが可能である。内部空洞12は、長手軸Cに沿う方向について、ヘッド本体11の全体又は大部分に渡って形成される。このため、本実施形態では、ヘッド本体11は筒状に形成される。なお、
図2等の一例では、ヘッド本体11は、略円筒状であるが、ヘッド本体11は、略四角筒状又は略六角筒状等の略多角筒状に形成されてもよい。
【0025】
ヘッド本体11の内部空洞12の一端には、開口13が形成される。供給配管35は、開口13で、ヘッド本体11に接続される。このため、帯電した原料液は、供給配管35から開口13を通して、ヘッド本体11の内部空洞12に流入する。本実施形態では、長手軸Cに沿う方向についてヘッド本体11の一方側の端面に、開口13が形成される。また、内部空洞12の他端、すなわち、内部空洞12において開口13とは反対側の端は、ヘッド本体11の外部に対して閉塞される。
図3等の一例では、ヘッド本体11に取付けられる閉塞部材15によって、内部空洞12の他端が閉塞される。この場合、閉塞部材15とヘッド本体11との間が液密になる状態で、内部空洞12の他端が閉塞される。なお、別のある一例では、閉塞部材15が設けられず、内部空洞12の他端が外部に対して開口しない状態にヘッド本体11が形成されてもよい。
【0026】
また、ヘッド本体11の外表面では、長手軸Cの軸回りに沿って、外周部(外周面)が形成される。ヘッド本体11の外周部には、2つの突出部16A,16Bが設けられる。突出部16A,16Bのそれぞれは、外周側へ、すなわち、長手軸Cから離れる側へ、外周部において突出する。突出部16A,16Bのそれぞれは、長手軸Cに沿って延設される。また、突出部16A,16Bは、長手軸Cの軸回りについて、互いに対して離れて配置される。ただし、突出部16A,16Bのいずれもが、ヘッド本体11の長手軸Cに対して、収集体5が位置する側に配置される。そして、突出部16A,16Bのいずれもが、収集体5が位置する側へ突出する。ある一例では、突出部16Aは、長手軸Cの軸回りについて、突出部16Bに対して60°程度ずれて配置される。
【0027】
また、電界紡糸ヘッド2のヘッド本体11には、複数の流路17A、及び、複数の流路17Bが形成される。
図2及び
図3等の一例では、流路17Aが4つ形成され、流路17Bが4つ形成される。流路17A,17Bのそれぞれは、ヘッド本体11の内部空洞12から外周側へ向かって延設される。したがって、流路17A,17Bの内周側の端は、内部空洞12に接続される。流路17Aのそれぞれでは、外周側の端に、すなわち、内部空洞12とは反対側の端に、噴出口18Aが形成される。また、流路17Bのそれぞれでは、外周側の端に、すなわち、内部空洞12とは反対側の端に、噴出口18Bが形成される。噴出口18A,18Bのそれぞれは、内部空洞12に供給された原料液を噴出可能である。流路17A,17Bのそれぞれでは、内部空洞12から帯電した原料液が流入し、噴出口(18A,18Bの対応する1つ)から原料液が噴出される。
【0028】
本実施形態では、複数の流路17Aのそれぞれは、突出部16Aを通って延設される。そして、ヘッド本体11の外周部において突出部16Aの突出端に、複数の流路17Aの噴出口18Aが位置する噴出部20Aが形成される。突出部16Aの突出端に形成される噴出部20Aでは、1つの平面(突出部16Aの突出端面)が、複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設される。したがって、噴出部20Aは、1つの平面が複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設される状態で、突出部16Aの突出端に、形成される。なお、突出部16Aの突出端に形成される噴出部20Aでは、1つの平面の代わりに1つの曲面が、複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設されてもよい。本実施形態では、噴出部20Aの1つの平面(又は1つの曲面)は、ヘッド本体11の外周部において、内部空洞12の中心軸からの中心軸に垂直な方向の距離が最も大きい部分を含む状態に、形成される。
【0029】
また、複数の流路17Bのそれぞれは、突出部16Bを通って延設される。そして、ヘッド本体11の外周部において突出部16Bの突出端に、複数の流路17Bの噴出口18Bが位置する噴出部20Bが形成される。突出部16Bの突出端に形成される噴出部20Bでは、1つの平面(突出部16Bの突出端面)が、複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される。したがって、噴出部20Bは、1つの平面が複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される状態で、突出部16Bの突出端に、形成される。なお、突出部16Bの突出端に形成される噴出部20Bでは、1つの平面の代わりに1つの曲面が、複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設されてもよい。本実施形態では、噴出部20Bの1つの平面(又は1つの曲面)は、ヘッド本体11の外周部において、内部空洞12の中心軸からの中心軸に垂直な方向の距離が最も大きい部分を含む状態に、形成される。
【0030】
複数の流路17A(噴出口18A)は、長手軸Cの軸回りについて、互いに対して同一又は略同一の角度位置に配置され、互いに対してずれていない又はほとんどずれていない。このため、ヘッド本体11の外周部に形成される突出部16Aでは、複数の噴出口18Aは、長手軸Cに沿って配列され、噴出口18Aの列が形成される。また、複数の流路17B(噴出口18B)は、長手軸Cの軸回りについて、互いに対して同一又は略同一の角度位置に配置され、互いに対してずれていない又はほとんどずれていない。このため、ヘッド本体11の外周部に形成される突出部16Bでは、複数の噴出口18Bは、長手軸Cに沿って配列され、噴出口18Bの列が形成される。
【0031】
また、本実施形態では、前述のように、突出部16A,16Bは、長手軸Cの軸回りについて、互いに対して離れて配置される。このため、流路17B(噴出口18B)は、長手軸Cの軸回りについて、流路17A(噴出口18A)に対してずれて設けられる。したがって、ヘッド本体11の外周部では、噴出口18Bの列は、長手軸Cの軸回りについて、噴出口18Aの列に対してずれて形成される。ただし、噴出口18Aの列及び噴出口18Bの列のいずれもが、長手軸Cに対して、収集体5が位置する側に配置される。ある一例では、噴出口18Aの列は、長手軸Cの軸回りについて、噴出口18Bの列に対して60°程度ずれて配置される。
【0032】
ヘッド本体11の外周部では、噴出口18A,18Bは、ジグザグ状に配置される。そして、流路17A(噴出口18A)及び流路17B(噴出口18B)は、長手軸Cに沿う方向について交互に配置される。このため、長手軸Cに沿う方向について隣り合う流路(第1の流路)17Aの間には、流路(第2の流路)17Bの対応する1つが、配置される。そして、長手軸Cに沿う方向について隣り合う噴出口(第1の噴出口)18Aの間には、噴出口(第2の噴出口)18Bの対応する1つが、配置される。
【0033】
流路17A,17Bのそれぞれは、流路延設部21,22を備える。流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部(第1の流路延設部)21は、内部空洞12への接続位置(内周側の端)から外周側へ延設される。また、流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部(第2の流路延設部)22は、流路延設部21に対して外周側に設けられ、噴出口(18A,18Bの対応する1つ)まで外周側へ延設される。流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部22の断面積は、流路延設部21の断面積に比べて、小さい。ここで、流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部21,22のそれぞれの断面積は、内部空洞12から噴出口(18A,18Bの対応する1つ)までの延設方向に垂直又は略垂直な断面積で規定される。ある一例では、流路延設部22の断面は、直径0.05mm以上1.00mm以下の円形に形成される。
【0034】
また、流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部21,22に中継部分が形成される。そして、中継部分では、流路延設部21に近づくほど、すなわち、外周側に向かうほど、断面積が減少する。
図2等の一例では、流路17Aのそれぞれにおいて、流路延設部21の外周側の端、及び、流路延設部22の内周側の端は、突出部16Aの突出の根元に対して外周側に位置する。そして、流路17Bのそれぞれでは、流路延設部21の外周側の端、及び、流路延設部22の内周側の端は、突出部16Bの突出の根元に対して外周側に位置する。ある一例では、流路延設部22の内周側の端から外周側の端までの延設長、すなわち、流路17A,17Bのそれぞれにおける流路延設部22の内周側の端から噴出口(18A,18Bの対応する1つ)までの延設長は、0.5mm以上15mm以下となる。
【0035】
また、本実施形態では、流路17A,17Bと同一の数の孔23が、ヘッド本体11に形成される。孔23は、流路17A,17Bのそれぞれに対応して1つずつ設けられる。ヘッド本体11では、孔23のそれぞれは、内部空洞12から流路17A,17Bの対応する1つとは反対側へ向かって、延設される。また、本実施形態では、孔23のそれぞれは、流路17A,17Bの対応する1つに対して同軸又は略同軸に形成される。
【0036】
孔23のそれぞれは、ヘッド本体11の外周部まで、外周側に向かって延設される。このため、ヘッド本体11の外周部には、孔23のそれぞれの開口が形成される。ここで、流路17Aに対応する孔23の開口は、長手軸Cの軸回り(ヘッド本体11の周方向)について、突出部16A及び噴出口18Aから180°程度離れて形成される。そして、流路17Bに対応する孔23の開口は、長手軸Cの軸回りについて、突出部16B及び噴出口18Bから180°程度離れて形成される。
【0037】
孔23のそれぞれの断面積は、流路17A,17Bの対応する1つの流路延設部(第1の流路延設部)21の断面積以上の大きさとなる。なお、孔23のそれぞれの断面積は、内部空洞12から外周部(開口)までの延設方向に垂直又は略垂直な断面積で規定される。また、孔23のそれぞれには、閉塞部材25が配置され、孔23のそれぞれは、閉塞部材25によって、ヘッド本体11(電界紡糸ヘッド2)の外部に対して閉塞される。孔23のそれぞれでは、閉塞部材25とヘッド本体11との間が液密になる状態で、閉塞部材25が配置される。
【0038】
本実施形態では、ヘッド本体11の外周部において、突出部16Aの突出端に、複数の流路17Aの噴出口18Aが位置する噴出部20Aが形成され、突出部16Bの突出端に、複数の流路17Bの噴出口18Bが位置する噴出部20Bが形成される。そして、噴出部20Aでは、1つの平面又は曲面が複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設され、噴出部20Bでは、1つの平面又は曲面が複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される。前述のような構成であるため、本実施形態の電界紡糸ヘッド2では、突出端部がニードル状に形成される等の先鋭形状に形成されるノズルが、ヘッド本体11に設けられない。ノズルがヘッド本体11の外周部に設けられない構造であるため、ヘッド本体11の外周部に付着したファイバーを除去する等の清掃作業を行い易くなる。すなわち、電界紡糸ヘッド2の清掃作業の作業性が、向上する。
【0039】
また、1つの平面又は曲面が複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設される状態に噴出部20Aを形成することにより、複数の噴出口18Aが配置される噴出部20Aの清掃をさらに行い易くなる。同様に、1つの平面又は曲面が複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される状態に噴出部20Bを形成することにより、複数の噴出口18Bが配置される噴出部20Bの清掃をさらに行い易くなる。
【0040】
また、本実施形態では、ヘッド本体11の外周部にノズルが設けられないため、電界紡糸ヘッド2を構成する部品の数を減少可能になる。電界紡糸ヘッド2を構成する部品の数が減少することにより、電界紡糸ヘッド2の製造コストが低減されるとともに、電界紡糸ヘッド2のメンテナンス等における手間も低減される。
【0041】
また、本実施形態では、流路17A,17Bのそれぞれに、流路延設部21、及び、流路延設部21より断面積が小さい流路延設部22が、形成される。そして、流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部22が噴出口(18A,18Bの対応する1つ)まで延設される。このため、流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれでは、帯電した溶液の電荷密度が高くなり、電界が集中する。流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれにおいて電界が集中することにより、噴出口18A,18Bのそれぞれから収集体5等に向かって原料液が適切に噴出される。なお、ある一例では、流路延設部22の直径を1.00mm以下にし、流路延設部22の延設長を0.5mm以上にすることにより、噴出口18A,18Bのそれぞれにおいて電界が適切に集中する。
【0042】
また、本実施形態では、流路17A,17Bのそれぞれに、流路延設部22より断面積が大きい流路延設部21が、形成される。そして、流路17A,17Bのそれぞれでは、流路延設部21は、流路延設部22に対して内周側に形成され、内部空洞12から外周側へ向かって延設される。前述のように流路17A,17Bのそれぞれに流路延設部21が設けられるため、ヘッド本体11における内部空洞12の体積を大きくすることなく、流路17A,17Bのそれぞれの流路延設部22の延設長がある程度の長さに抑えられる。
【0043】
流路17A,17Bのそれぞれの流路延設部22の延設長が過度に長くならないことにより、噴出口18A,18Bのそれぞれに到達するまでの原料液の圧力損失が、低減される。これにより、供給源(収納部31)から噴出口18A,18Bのそれぞれへの原料液の供給に関して、エネルギー効率が向上する。ある一例では、流路延設部22の延設長を15mm以下にすることにより、噴出口18A,18Bのそれぞれに到達するまでの原料液の圧力損失が、低減される。また、ヘッド本体11における内部空洞12の体積が大きくならないことにより、ヘッド本体11及び電界紡糸ヘッド2の破壊強度等の力学的強度が、適切に確保される。
【0044】
また、本実施形態では、流路17A,17Bのそれぞれに対応して1つずつ孔23が、ヘッド本体11に形成される。流路17A,17Bのそれぞれの形成においては、孔23の対応する1つをヘッド本体11に形成する。そして、流路17A,17Bのそれぞれの形成においては、孔23を対応する1つを介して、流路延設部21を形成するとともに、流路延設部21を形成した後に、孔23を対応する1つを介して、流路延設部21より断面積が小さい流路延設部22を形成する。したがって、流路延設部21、及び、流路延設部21より断面積が小さい流路延設部22を流路17A,17Bのそれぞれが備える構成であっても、流路17A,17Bのそれぞれを容易に形成可能になる。
【0045】
また、孔23のそれぞれは、閉塞部材25によって閉塞される。そして、閉塞部材25によって、孔23のいずれかを通して原料液がヘッド本体11の外部に漏れることが、有効に防止される。また、閉塞部材15によって、内部空洞12の開口13とは反対側の端から原料液がヘッド本体11の外部に漏れることが、有効に防止される。
【0046】
また、本実施形態では、長手軸Cに沿う方向について隣り合う噴出口18Aの間に、噴出口18Bが配置される。このため、収集体5又は基材では、長手軸Cに沿う方向について隣り合う噴出口18Aの間の領域においても、噴出口18Bによってファイバー100が堆積される。これにより、収集体5又は基材においてファイバー100が局所的に堆積されることが、有効に防止される。
【0047】
(変形例)
図4及び
図5に示す第1の変形例では、ヘッド本体11の外周部に、突出部16A,16Bは設けられない。ただし、本変形例でも、ヘッド本体11の外周部に、複数の流路17Aの噴出口18Aが位置する噴出部20Aが形成され、複数の流路17Bの噴出口18Bが位置する噴出部20Bが形成される。本変形例では、ヘッド本体11の外周部において、長手軸Cの軸回り(周方向)について全周に渡って、1つの曲面が延設される。噴出部20Aでは、前述の1つの曲面が、複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設される。そして、噴出部20Bでは、前述の1つの曲面が、複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される。
【0048】
本変形例でも、第1の実施形態等と同様に、流路17A,17Bのそれぞれに、流路延設部(第1の流路延設部)21、及び、流路延設部21に比べて断面積が小さい流路延設部(第2の流路延設部)22が、形成される。また、本変形例でも、第1の実施形態等と同様に、ヘッド本体11の外周部に、複数の噴出口18Aが長手軸Cに沿って配列される噴出口18Aの列が形成され、複数の噴出口18Bが長手軸Cに沿って配列される噴出口18Bの列が形成される。そして、ヘッド本体11の外周部では、噴出口18Bの列は、長手軸Cの軸回りについて、噴出口18Aの列に対してずれて形成され、噴出口18A,18Bは、ジグザグ状に配置される。
【0049】
本変形例でも、第1の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。すなわち、本変形例でも、先鋭形状に形成されるノズルがヘッド本体11に設けられないため、電界紡糸ヘッド2の清掃作業の作業性が、向上する。また、流路17A,17Bのそれぞれに流路延設部22が設けられるため、流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれにおいて電界が適切に集中する。また、流路17A,17Bのそれぞれに流路延設部21が設けられるため、ヘッド本体11における内部空洞12の体積を大きくすることなく、流路17A,17Bのそれぞれの流路延設部22の延設長がある程度の長さに抑えられる。
【0050】
また、
図6に示す第2の変形例では、流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれに、金属筒27が配置される。すなわち、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、流路延設部22の外周側の端部に、金属筒27が配置される。金属筒27のそれぞれは、導電性を有する金属から形成され、金属筒27を形成する金属としては、例えば、ステンレスが挙げられる。ある一例では、金属筒27の外径は、0.10mm以上2.00mm以下となり、金属筒27の肉厚みは、0.05mm以上0.50mm以下となる。また、金属筒27のそれぞれは、ヘッド本体11に対して外周側に突出していなくてもよく、ヘッド本体11に対して外周側に僅かに突出してもよい。ただし、金属筒27のそれぞれがヘッド本体11に対して突出する場合、金属筒27のそれぞれのヘッド本体11に対する突出長は、5mm以下となる。本変形例では、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、噴出口(18A,18Bの対応する1つ)及びその近傍に、金属筒27によって金属流路面が形成される。
【0051】
なお、金属筒27は、流路17A,17Bの全てに配置される必要はなく、流路17A,17Bのいずれかに配置されていればよい。ある一例では、流路17A,17Bの一部でのみ、噴出口(18A,18Bの対応するいずれか)に金属筒27が配置される。また、ある一例では、流路17A,17Bのそれぞれに金属筒27を配置する代わりに、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、流路延設部(第2の流路延設部)22の噴出口(18A,18Bの対応する1つ)及びその近傍に金属を蒸着させてもよい。この場合、蒸着させた金属によって、流路17A,17Bのそれぞれにおいて噴出口(18A,18Bの対応する1つ)及びその近傍に、金属内流路が形成される。
【0052】
本変形例でも、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。また、本変形例形態では、流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれに、導電性を有する金属筒27が配置され、金属流路面が形成される。金属流路面(金属筒27)によって、流路17A,17Bの噴出口18A,18Bのそれぞれでは、電界がさらに集中し易くなる。また、金属筒27を設けることにより、噴出口18A,18Bのそれぞれから噴出された原料液が、拡散し難くなる。これにより、ファイバー100の膜がさらに適切に形成される。また、例えば、金属筒27のそれぞれのヘッド本体11に対する突出長を5mm以下とすることより、電界紡糸ヘッド2の清掃作業の作業性も適切に確保される。
【0053】
また、前述の実施形態等では、流路17A,17Bのそれぞれに対応して1つずつ孔23が形成され、流路17A,17Bのそれぞれの流路延設部21,22は、孔23の対応する1つを通して形成されるが、これに限るものではない。ある変形例では、孔23及び閉塞部材25は設けられず、ヘッド本体11は、複数の構成部材を組付けることにより、形成される。この場合、複数の構成部材のそれぞれに溝等が形成され、複数の構成部材を組付けることにより、複数の構成部材の溝から内部空洞12及び流路17A,17Bが形成される。これにより、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、流路延設部(第1の流路延設部)21、及び、流路延設部21より断面積が小さい流路延設部(第2の流路延設部)22を形成可能になる。
【0054】
また、
図7に示す第3の変形例では、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、内部空洞12から噴出口(18A,18Bの対応する1つ)まで、断面積が均一又は略均一になる。したがって、本変形例では、流路17A,17Bのそれぞれは、断面積が互いに対して異なる2つの流路延設部21,22を備える構成ではない。本変形例では、流路17A,17Bのそれぞれにおいて、内部空洞12から噴出口(18A,18Bの対応する1つ)まで、断面積が、前述の実施形態等の流路延設部22と同一又は略同一となる。
【0055】
本変形例では、第1の実施形態等と同様に、ヘッド本体11の外周部に、突出部16A,16Bが形成される。そして、突出部16Aの突出端に、複数の流路17Aの噴出口18Aが位置する噴出部20Aが形成され、噴出部20Aでは、1つの平面又は曲面が、複数の流路17Aの噴出口18Aに跨って延設される。また、突出部16Bの突出端に、複数の流路17Bの噴出口18Bが位置する噴出部20Bが形成され、噴出部20Bでは、1つの平面又は曲面が、複数の流路17Bの噴出口18Bに跨って延設される。本変形例でも、先鋭形状に形成されるノズルがヘッド本体11に設けられないため、第1の実施形態等と同様に、電界紡糸ヘッド2の清掃作業の作業性が、向上する。
【0056】
なお、前述の実施形態等では、ヘッド本体11の外周部に、2つの噴出部20A,20Bが形成されるが、これに限るものではない。ヘッド本体11の外周部には、1つ以上の噴出部(20A,20B)が設けられていればよい。この場合も、噴出部(20A,20B)のそれぞれに、複数の流路の噴出口が位置し、噴出部(20A,20B)のそれぞれでは、1つの平面又は曲面が複数の流路の噴出口に跨って延設される。
【0057】
また、電界紡糸装置1において、前述した実施形態等のいずれかと同様の電界紡糸ヘッド2が複数設けられてもよい。この場合、電源4及び供給部3によって、複数の電界紡糸ヘッド2のそれぞれに、帯電した原料液が供給される。そして、複数の電界紡糸ヘッド2のそれぞれにおいて、噴出口(18A,18B)のそれぞれから、供給された原料液が噴出される。
【0058】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、電界紡糸ヘッドは、電気的絶縁性を有する材料から形成されるヘッド本体を備え、ヘッド本体に、複数の流路の噴出口が位置する噴出部が形成される。噴出部は、1つの平面又は曲面が複数の流路の噴出口に跨って延設される状態で、ヘッド本体の外周部に形成される。これにより、清掃作業における作業性が向上する電界紡糸ヘッド、その電界紡糸ヘッドを備える電界紡糸装置、及び、その電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法を提供することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]電気的絶縁性を有する材料から形成され、帯電した原料液が供給される内部空洞が内部に形成されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体において前記内部空洞から外周側にそれぞれが延設され、それぞれにおいて前記内部空洞とは反対側の端に前記原料液を噴出可能な噴出口が形成される複数の流路と、
前記複数の流路の前記噴出口が位置し、1つの平面又は曲面が前記複数の流路の前記噴出口に跨って延設される状態で前記ヘッド本体の外周部に形成される噴出部と、
を具備し、
前記複数の流路のそれぞれは、
前記内部空洞への接続位置から前記外周側へ延設される第1の流路延設部と、
前記第1の流路延設部に対して前記外周側において前記噴出口まで前記外周側へ延設され、前記第1の流路延設部に比べて断面積が小さい第2の流路延設部と、
を備える、電界紡糸ヘッド。
[2]前記ヘッド本体は、長手方向に延設されるとともに、前記内部空洞の中心軸は、前記長手方向に沿い、
前記噴出部の前記平面又は前記曲面は、前記ヘッド本体の前記外周部において前記内部空洞の前記中心軸から前記中心軸に垂直な方向の距離が最も大きい部分を含む、
[1]の電界紡糸ヘッド。
[3]前記ヘッド本体は、前記ヘッド本体の前記外周部において前記外周側へ突出する突出部を備え、
前記複数の流路のそれぞれは、前記突出部を通って延設され、
前記突出部の突出端に、前記複数の流路の前記噴出口が位置する前記噴出部が形成される、
[1]又は[2]の電界紡糸ヘッド。
[4]前記複数の流路のいずれかにおいて前記噴出口及び前記噴出口の近傍に形成され、導電性を有する金属から形成される金属流路面をさらに具備する、[1]乃至[3]のいずれか1つの電界紡糸ヘッド。
[5]前記ヘッド本体では、前記内部空洞から前記ヘッド本体の前記外周部まで前記流路とは反対側へ向かって、前記流路と同一の数の孔が形成され、
前記ヘッド本体との間が液密になる状態で前記孔のそれぞれに配置され、前記孔のそれぞれを外部に対して閉塞する閉塞部材をさらに具備する、
[1]乃至[4]のいずれか1つの電界紡糸ヘッド。
[6]前記孔のそれぞれは、前記流路の対応する1つに対して同軸に形成され、
前記孔の断面積は、前記流路の対応する1つの前記第1の流路延設部の断面積以上の大きさである、
[5]の電界紡糸ヘッド。
[7][1]乃至[6]のいずれか1つの電界紡糸ヘッドと、
前記電界紡糸ヘッドへの前記原料液の供給源及び供給経路のいずれかに設けられ、導電材料から形成される導電部と、
前記導電部に電圧を印加することにより、前記原料液を帯電させる電源と、
を具備する電界紡糸装置。
[8][7]の電界紡糸装置の前記導電部に電圧を印加し、前記原料液を帯電させることと、
前記電界紡糸ヘッドから帯電させた前記原料液を噴出させることと、
を具備する、電界紡糸方法。
【符号の説明】
【0060】
1…電界紡糸装置、2…電界紡糸ヘッド、3…供給部、4…電源、5…収集体、6…制御部、11…ヘッド本体、12…内部空洞、17A,17B…流路、18A,18B…噴出口、20A,20B…噴出部、21…流路延設部(第1の流路延設部)、22…流路延設部(第2の流路延設部)、23…孔、25…閉塞部材、27…金属筒。