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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241118BHJP
   A61B 5/1459 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/1459
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020139909
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2021030081
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】16/548,153
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】アタナシオス・パパイオアンヌ
【審査官】喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538672(JP,A)
【文献】特表2014-526283(JP,A)
【文献】特開2013-000387(JP,A)
【文献】特表2018-527995(JP,A)
【文献】特表2006-513773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0111016(US,A1)
【文献】国際公開第2010/131713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/02-1/32
A61B 5/06-5/22
A61B 10/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
脳の血管に挿入するためのプローブであって、前記プローブは、
第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、前記血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、前記血管内の脳血塊と相互作用するように前記光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、
第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、前記第1の位置とは異なる前記血管に沿った第2の位置において、前記脳血塊と相互作用した、拡散された前記光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、
を含む、プローブと、
前記第1の光ファイバに前記光信号を送信し、前記第2の光ファイバから拡散された前記光信号を受信及び測定するように構成された電気光学測定ユニットと、
測定された拡散された前記光信号を分析することによって、前記脳血塊の組成を特定するように構成されたプロセッサと、を含む、
前記分析が、前記プロセッサが拡散された前記光信号から前記脳血塊の吸収係数と前記脳血塊の散乱係数とを算出することである、医療システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記脳血塊の前記組成に適合する脳血塊除去方法を選択するための提案を出力するように更に構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも遠位である、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも近位である、請求項1に記載の医療システム。
【請求項5】
前記プローブが作業チャネルを更に含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項6】
前記プローブが放射線不透過性マーカーを更に含む、請求項1に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には侵襲的な医療用プローブに関するものであり、具体的には脳血管の用途ためのカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の医療用プローブが光学的要素を含んでいる。例えば、米国特許出願公開第2008/0300493号は、血管内の血塊を検出するためのデバイス及び関連する方法を記載している。光学マイクロプローブは、電磁スペクトルの近赤外部分に対応する電磁放射線で血管を照明するように構成されている。光学マイクロプローブは、血管内の構成要素によって生成された吸収スペクトルを得るために透過分光法用に構成された一対の光ファイバストランドを有する。それに対応して、光ファイバストランドの遠位端は、直径方向に対向する構成に位置決めされる。血塊は、検出可能かつ固有のスペクトルを生成するため、血液血管吸収スペクトルを調べることによって、血塊の存在又は非存在が決定される。特別に設計されたホルダは、血管に対して光学マイクロプローブを安定的に位置決めするように構成され、血管の長さに沿った正確な血塊検出を容易にするために使用される。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2016/0022146号は、低侵襲性医療処置における挿入可能な撮像デバイス及びその使用方法を記載している。いくつかの実施形態では、撮像デバイスはアクセスポートに一体化され、それによってアクセスポートの近傍の内部組織の撮像を可能にする一方で、例えば、対象となる手術野における手術ツールの操作を可能にする。他の実施形態では、撮像デバイスは、アクセスポートに挿入可能な撮像スリーブに組み込まれる。撮像方法は、超スペクトル撮像及び光干渉断層撮影などの光学撮像に基づくことができるが、これらに限定されない。一実施形態では、光拡散器を光ファイバ又は光ガイドの遠位端で利用して、指向性均一化された照明光を提供することができる。
【0004】
米国特許第8,029,766号は、内部表面、例えば血管の内腔を可視化するのに有用なプローブ型撮像デバイスを記載している。具体的には、プローブ型デバイスは、分子撮像剤の存在下又は非存在下で組織を直接撮像するのに特に有用である。一実施形態では、光拡散器を使用して、カテーテルから血管壁に適切な周波数の照明光を送達することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によると、プローブと、電気光学測定ユニットと、プロセッサと、を含む医療システムを提供する。プローブは、脳の血管内に挿入するように構成され、(a)第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、血管内の脳血塊と相互作用するように光信号を拡散させるように構成された第1の光ファイバと、(b)第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、第1の位置とは異なる血管に沿った第2の位置において、脳血塊と相互作用した拡散された光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、を含む。電気光学測定ユニットは、第1の光ファイバに光信号を送信し、第2の光ファイバからの拡散された光信号を受信及び測定するように構成されている。プロセッサは、測定された拡散された光信号を分析することによって、脳血塊の組成を特定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、脳血塊の組成に適合する脳血塊除去方法を選択するための提案を出力するように更に構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、拡散された光信号中の吸収関連成分と散乱関連成分とを区別することによって、測定された拡散された光信号を分析するように構成される。
【0008】
一実施形態では、第1の光学拡散器の第1の位置は、第2の光学拡散器の第2の位置よりも遠位である。別の実施形態では、第1の光学拡散器の第1の位置は、第2の光学拡散器の第2の位置よりも近位である。
【0009】
いくつかの実施形態では、プローブは作業チャネルを更に含む。他の実施形態では、プローブは放射線不透過性マーカーを更に含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、プローブを脳の血管に挿入することを含む方法が提供され、このプローブは、(a)第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、血管内の脳血塊と相互作用するように光信号を拡散させるように構成された第1の光ファイバと、(b)第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、第1の位置とは異なる血管に沿った第2の位置において、脳血塊と相互作用した拡散された光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、を含む。
【0011】
光信号は、第1の光ファイバに送信され、拡散された光信号は、第2の光ファイバから受信され、測定される。測定された拡散された光信号を分析することによって、脳血塊の組成を特定する。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、特定された組成に基づいて血塊を排除することを更に含む。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、脳の血管に挿入するための医療用プローブが更に提供され、このプローブは、(a)第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、血管内の脳血塊と相互作用するように血塊光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、(b)第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、第1の位置とは異なる血管に沿った第2の位置において、脳血塊と相互作用した拡散された光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、を含む。
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の実施形態による、カテーテルベースの血塊組成分析及び除去システムの概略画像図である。
図1B】本発明の実施形態による、カテーテルベースの血塊組成分析及び除去システムの概略画像図である。
図2】本発明の一実施形態による、脳血塊及びカテーテルの概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態による、拡散光を使用する血塊組成分析、及びその後の血塊除去法の選択のための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概論
虚血性脳卒中は通常、脳の大血管内にある閉塞性血塊によって引き起こされるものであり、緊急の病態である。血塊組成は、例えば、フィブリンが優勢である状態(典型的には、血塊を比較的固く硬質にする)から赤血球が優勢である状態(典型的には、血塊を比較的ゲル状及び軟質にする)まで変化し得る。この多様な血塊の組成は、光学的及び機械的なものを含む、その特性のいくつかに影響を及ぼす。血塊が首尾よく除去できるかは、特定の血塊組成と係合するのに最も好適な技法を選択することに依存し得る。したがって、血塊組成の除去を試みる前に、血塊組成を分析することが重要である。
【0017】
血塊の特性を示すための脳血塊の組成の分析及び特定のための非拡散光ファイバベースのシステム及び方法が、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる、2018年8月7日出願の米国特許出願第16/057,189号、名称「Brain Clot Characterization Using Optical Signal Analysis,and Corresponding Stent Selection」に記載されている。用語「血塊の組成」は、血塊及び/又は血塊を構成する要素の様々な化学的、生物学的及び/又は物理的特性を指す。
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、光ファイバを取り囲む3D領域における脳血塊の組成の測定及び分析を強化するための光学拡散性信号系システム及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、プローブは、光ファイバ(光ファイバFOとも呼ばれる)などの2つの光チャネルを含み、それらの遠位端に処理又は追加されたそれぞれの光拡散要素を有する。1つのファイバは拡散光を放出し、他方のファイバは拡散光が血塊組成と相互作用した後に拡散光を収集し、誘導する。
【0019】
2つの拡散器は、以下に記載されるように、千鳥状である、すなわち、それらは互いに隣接していない。千鳥状拡散器は、(a)信号分析ユニットが、血塊組成の吸収特性と散乱特性とを区別することを可能にし、したがって、血塊組成に関するより多くの情報を追加し、(b)信号が血塊のバルク組成をより効果的に表し得るように、FO端の周囲の増加した3D領域から信号を取得できる。したがって、千鳥状拡散器の使用は、脳血塊の組成の分析及び特定のための光ファイバ系システム及び方法の感度及び特異性を増加させることができる。
【0020】
2つの光チャネル(例えば、2つのファイバ)を参照することにより、開示される説明は、2つを超えるファイバの使用を含むことを理解されたい。すなわち、第1の複数の照明ファイバ及び第2の複数の収集ファイバ(必ずしも照明ファイバに数が等しいわけではない)を使用し、全てのファイバは拡散要素を組み込む。各複数のファイバは、プローブの遠位端に対して様々な千鳥状構成で配置されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、光信号は、より遠位の拡散器及びファイバによって放出され、より近位の拡散器及びファイバによって収集される。代替的な実施形態では、ファイバの役割を切り替えてもよく、すなわち、光信号は、より近位の拡散器及びファイバによって放出され、より遠位の拡散器及びファイバによって収集される。
【0022】
光ファイバは、それらの近位端で電気光学測定ユニットに連結され、電気光学測定ユニットは、血塊と相互作用した拡散された光信号を収集及び測定し、1つのファイバの出力を収集及び測定する。ユニットは、測定された信号をデジタル化し、デジタル信号をプロセッサに出力して、デジタル信号を分析して血塊の組成を特定する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、脳血塊の特定された組成に適合する脳血塊除去技法を選択するための提案を出力するように更に構成されている。
【0023】
一実施形態では、脳の血管に挿入するためのプローブを含む医療システムが提供され、このプローブは、(a)第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を備え、血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、血管内の脳血塊と相互作用するように光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、(b)第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、第1の位置とは異なる血管に沿った第2の位置において、脳血塊と相互作用した拡散された光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、を含む。医療システムは、(i)光信号を第1の光ファイバに送信し、第2の光ファイバからの拡散された光信号を受信及び測定するように構成された電気光学測定ユニットと、(ii)測定された拡散された光信号を分析することによって脳血塊の組成を特定するように構成されたプロセッサと、を更に備える。
【0024】
通常、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0025】
開示されるプローブは、(i)潅注/吸引処理ユニットに連結され、潅注によって血塊を溶解し、及び/又は吸引によってそれを除去するように構成され得、及び/又は、(ii)ステントリーバーなどの血塊除去デバイスを血管内に挿入して血塊を後退させるために使用され得る、1つ以上の作業チャネルを含む。
【0026】
体積拡散された光信号を使用することによって、開示された血塊組成を分析するためのシステム及び方法は、医師が特定の種類の血塊を除去するように調整されたデバイスを選択することを可能にすることによって、脳血塊の除去のための医療緊急カテーテル法処置の臨床転帰を改善することができる。
【0027】
システムの説明
図1A及び図1Bは、本発明の実施形態による、カテーテルベースの血塊組成分析及び除去システム20a及び20bの概略画像である。
【0028】
いくつかの実施形態では、カテーテル法処置を実行する前に、患者22のCT画像が取得される。CT画像は、プロセッサ40によって、その後の検索のためにメモリ42内に記憶される。プロセッサは、画像を使用して、例えば、ディスプレイ56に血塊を示す脳断面画像59を提示する。別の実施形態では、開示されたカテーテル法の間、処置システム20a及び20bは、患者の脳の内部におけるカテーテル28の遠位端の位置を、本明細書ではリアルタイムX線透視画像を含むように想定される患者32の脳画像の基準フレームと位置合わせする。カテーテル遠位端の位置は、遠位端に装着された磁気センサーの空間座標を追跡する磁気追跡サブシステム23を使用して追跡される。
【0029】
磁気位置追跡サブシステム23を使用して、医師54は、血塊の種類の診断を可能にし、所望により、対応する侵襲的治療処置を実行して血塊を除去するように、カテーテル28の遠位端を血管、通常は動脈を通して血塊まで前進させる。本発明のいくつかの実施形態では、作業チャネル71がカテーテル28内に含まれ、血塊除去デバイス、例えば血塊除去ステント、ステントリーバーが挿入され得る。代替的に又は追加的に、潅注/吸引血塊除去システムなどのシステムは、作業チャネル71に連結され得る。灌注/吸引血塊除去システムは、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2018年11月15日に出願された、「Catheter with Irrigator and/or Aspirator and with Fiberoptic brain-clot Analyzer」と題する米国特許出願第16/192,156号に記載されている。
【0030】
図1Aに示されるシステム20aでは、磁気追跡サブシステム23を構成する位置パッド24aは、患者32の頸部の周りに置かれるカラーとして実装される。位置パッド24aを頸部に置くことによって、位置パッド24aは、患者の頭部の動きを自動的に補正するように構成されている。位置パッド24aは、磁場放射器26aを備え、この磁場放射器は、患者32の頭部に対して定位置に固定され、かつ患者32の頭部が位置する領域30に交番正弦波磁場を送信する。コンソール50は、ケーブル25を介して放射器26aを電気的に駆動する。実施形態では、頭部の動きは、基準センサー21を患者の額に取り付けることによって更に補正される。コンソール50は、ケーブル27を介して基準センサー21から信号を受信するように構成されている。頚部カラー位置パッドを備える位置追跡システムは、前述の米国特許出願第16/057,189号に記載されている。
【0031】
システム20aを操作している医師54は、カテーテル28の近位端に接続されたカテーテルコントローラハンドル29を保持する。コントローラ29により、医師は、例えば、患者32の大腿部の動脈における入口点22を介して、脳内でカテーテル28を前進させナビゲートし得る。上述し及び後述するように、医師54は、カテーテル28の遠位端に装着された磁気位置センサーからの位置信号を使用して、カテーテル28の遠位端をナビゲートする。コンソール50は、ハンドル29を介してカテーテル28に接続するケーブル19を介して、位置信号を受信する。
【0032】
放射器26aを含むシステム20aの要素は、1つ以上のメモリと通信する処理ユニットを含むシステムプロセッサ40によって制御される。プロセッサ40は、キーパッド、及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを通常含む、操作制御装置58を含むコンソール50内に搭載され得る。医師54は、ハンドル29上の操作制御装置を使用して、システム20aの位置合わせを実行すると同時に、プロセッサと相互作用する。位置合わせプロセス中、脳断面画像59がディスプレイ56上に提示される。上記の位置合わせプロセスに続いて、医師54は操作制御装置を使用して、カテーテル28の遠位端を、血塊が動脈を閉塞している脳の位置60まで前進させる。プロセッサは、ディスプレイ56上にカテーテル追跡処置の結果を提示する。
【0033】
プロセッサ40は、メモリ42内に記憶されたソフトウェアを使用してシステム20aを操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードすることができるか、あるいはそれは、代替として又は更には、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。具体的には、プロセッサ40は、以下で更に説明するように、本開示の工程をプロセッサ40が行うことを可能にする、図3に含まれている、本明細書に開示される専用アルゴリズムを実行する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、電気光学測定ユニット55はコンソール50内に含まれる。電気光学測定ユニット55は、光ファイバ64bを使用して、両方ともカテーテル28内に含まれる光ファイバ64aから出力された拡散光学信号を収集するように構成されている(光学ファイバ64としても集合的にマークされる)。2つのFOは、ケーブル19内でコンソール50に動作する。次いで、電気光学測定ユニット55は、収集された信号を測定し、測定された信号をプロセッサ40に伝達する。測定された信号を分析することに基づいて、プロセッサ40は、以下で更に詳述するように、血塊の組成を特定する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、特定された血塊組成をディスプレイ56に提示する。
【0035】
いくつかの実施形態では、インセット45に見られるように、電気光学測定ユニット55は、白熱ランプ、LED、又はレーザーダイオードなどの単色又は広帯域光源(図示せず)のいずれかを含んでもよい光カプラ105を含む。例えば、このような光源は、単色の赤色光で、又は白色光で血塊を照明することができる。血塊の照明のために、カプラ105は、光源を光ファイバ64aの近位縁に連結する。カプラ105は、ファイバ64bが出力する光信号(すなわち、血塊と相互作用した拡散された光)を検出器110に連結するように更に構成されている。検出器110は、連結された出力光信号を電気アナログ信号に変換する。アナログデジタル変換回路115は、アナログ信号をデジタル化し、コネクタ120は分析のためにデジタル信号をプロセッサ40に搬送する。一実施形態では、コネクタ120は、電気光学測定ユニット55を電源に接続するように更に構成されている。
【0036】
図1Bに示されるシステム20bは、異なる磁気位置パッド設計、すなわち、位置パッド24bを有する。見られるように、位置パッド24bは、ベッドに固定されており、照射器26bが患者のヘッドレストを水平に囲んでいる。この例では、システム20bには、基準センサー21がなく、したがって、患者の頭部は動かないように固定されなければならない。概して、システム20bの他の構成要素は、システム20aの構成要素と同一である。位置パッド24bと同様の位置パッドを使用する位置追跡システムは、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「ENT Image Registration」と題する2017年8月10日に出願された米国特許出願第15/674,380号に記載されている。
【0037】
図1A及び図1Bに示されるシステム20a及び20bは、単に概念を明確化する目的のために選択されているに過ぎない。他のシステム要素は、例えば、血塊の種類を判定するように設計された診断ツールを制御するための追加の制御装置がハンドル29上に含まれてもよい。システム20a及び20bによって適用される技法と同様の技法を使用して、身体の器官内における磁気位置センサーの位置及び向きを追跡するCARTO(登録商標)磁気追跡システムは、カリフォルニア州アービンのBiosense-Websterによって製造されている。
【0038】
拡散要素を有する光ファイバを使用した脳血塊特性評価
図2は、本発明の一実施形態による、脳血塊66及びカテーテル28の概略断面図である。図示されるように、血塊66が動脈34内の血流を遮断しており、その場合いくつかの実施形態では、医師54は、血塊66を越えた位置へと、動脈34内で遠位にカテーテル28をナビゲートし前進させる。
【0039】
カテーテル28の遠位端31は磁気位置センサー36を備えており、この磁気位置センサーは、遠位端31を血塊66へとナビゲートするのを支援するように、脳内で遠位端31を追跡するために使用されるものである。カテーテル28を追跡し、血塊66を係合(例えば、貫通又は横断)するためのシステム及び方法は、本特許の譲渡人に譲渡され並びにその開示が参照により本明細書に組み込まれる、「POSITION SENSOR ON BRAIN-CLOT REMOVAL SHEATH AND LOCATION PAD COLLAR」と題する2018年5月24日に出願された米国仮特許出願第62/675,952号、及び「POSITION SENSOR ON BRAIN-CLOT REMOVAL SHEATH AND LOCATION PAD COLLAR」と題された2019年1月15日に出願された米国特許出願第16/248,393号に記載されている。
【0040】
カテーテル28は、光信号を誘導するための光ファイバ64a及び64bを含む。一実施形態では、電気光学測定ユニット55(図1A及び1Bに示す)は、ファイバ64aの近位縁を連結して、拡散器33aを介して血塊66を照明し、拡散器33b及びファイバ64bを介して収集して、生じた光信号信号を収集し、信号を分析する。拡散器33a及び33bは、限定するものではないが、光ファイバを先端に先細りさせること、ファイバを粗面化する表面、及び/又は拡散器要素をファイバの遠位放出/受信縁に連結することによって、拡散器要素を光ファイバの遠位部分に連結することによる、様々な方法によって製造することができる。
【0041】
ユニット55は、分析された信号をプロセッサ40に更に伝達する。プロセッサは、伝達された測定された信号を分析して、血塊66の組成を特定する。光信号分析を用いた脳血塊66の特徴付けのためのシステム及び方法が、上記の米国特許出願第16/057,189号に記載されている。
【0042】
図2に見られるように、拡散器33a及び33bは千鳥状であり、すなわち、それらは互いに隣接しないため、システムは、以下に記載されるように、血塊66の吸収特性と散乱特性とを区別することができる。インセット63は、光波を送信又は受信するための拡散器33a及び33bなどの拡散器の角度の関数として、連結効率65を血塊66に概略的に示す。見られるように、連結効率65は広義であり、光波の発生の実質的に全ての検出を網羅する。
【0043】
拡散器の千鳥状態及び追加は、信号分析ユニット55及びプロセッサ40が、以下の式1 μで表される血塊組成の吸収と、及び以下の式1中のμによって表される組成散乱特性との間を区別することを可能にし得る。一実施形態では、プロセッサ40は、μ及びμに対する最良の適合を有する数式1を解くことによって、所与の受信信号の吸収成分と散乱成分との間を区別する。
【0044】
【数1】
式中、Ψ(r,t)は光子フルエンス率であり、Sは光源用語であり、c/nは、血塊内の光の速度であり、μは拡散器33aと33bとの間の直接的な線形軌道を取る光の吸収係数であり、
【0045】
【数2】
は光子散乱係数であり、μは散乱係数であり、lは拡散器33aと33bとの間の血塊66内の散乱光子の平均自由経路である。
【0046】
場合によっては、パルス光源S(r,t)を使用することにより、出力される波長とは異なる波長で信号を生成する測定可能な非弾性光子散乱をもたらす場合があり、これは、開示される光学技術の指標電力を更に向上させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、カテーテル28は、チャネル開口部72を有する作業チャネル71を備える。チャネル71は、処理ユニットに連結され得、上述のように、特定された血塊を処理するのにこれらの手段が好適であることが確認された場合に、血塊の溶解及び/又は吸引除去のために使用される。光学測定及びその後の分析によって、それ以外にも、例えば、血塊が吸引するには密度が高すぎることが示された場合には、ステントリーバー(図示せず)など、異なるツールが、作業チャネル71を介して、凝固した血管34内に挿入され得る。
【0048】
最後に、カテーテル28は、X線透視法(例えば、Cアームを使用する)及び/又はCTなどのX線ベースの撮像モダリティを使用してその遠位端を追跡するための放射線不透過性マーカー75を含む。
【0049】
図2に示されている例示は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されている。例えば、別の実施形態では、拡散器33a及び33bは、光ファイバの遠位縁の近位に位置してもよく、及び/又は異なって千鳥状で配置されてもよい。
【0050】
図3は、本発明のある実施形態による、血塊組成分析、及びその後の血塊除去法の選択のための方法を概略的に示すフローチャートである。このプロセスでは、まず医師54は、ナビゲーション工程80において、カテーテルの遠位端で血塊66を横断するようにカテーテル28をナビゲートする。次に、医師54は、信号取得工程82において、カテーテル28内に光学送信/受信拡散器33a及び33bを備える光感知システムを操作して、血塊66の組成を示す光信号を測定する。
【0051】
次に、プロセッサ40は、血塊分析工程84において、血塊66の組成(すなわち、血塊の種類)を特定するために、測定された信号を分析する。
【0052】
次に、プロセッサ40がディスプレイ56上で医師54に提示し得る、血塊66の特定された組成に基づいて、医師54は、除去技法選択工程86において、患者32の脳から血塊66を除去するための最適な血塊除去技法を選択する。いくつかの実施形態では、医師54は血塊66を溶解すること及び/又は吸引すること、又はステントリーバーを使用して除去することを選択する。最後に、医師54は、血塊除去工程88において、選択された脳血塊除去技法を用いて血塊66を除去する。
【0053】
図3に示されている例となるフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択される。代替的な実施形態では、例えば、プロセッサ40からの指示に基づいて、医師54は、医師54が作業チャネル71を通じて挿入する血塊除去デバイスによって、血塊を除去することを選択してもよい。
【0054】
上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し記載したものに限定されない点が理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 医療システムであって、
脳の血管に挿入するためのプローブであって、前記プローブは、
第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、前記血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、前記血管内の脳血塊と相互作用するように前記光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、
第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、前記第1の位置とは異なる前記血管に沿った第2の位置において、前記脳血塊と相互作用した、拡散された前記光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、
を含む、プローブと、
前記第1の光ファイバに前記光信号を送信し、前記第2の光ファイバから前記拡散された光信号を受信及び測定するように構成された電気光学測定ユニットと、
測定された前記拡散された光信号を分析することによって、前記脳血塊の組成を特定するように構成されたプロセッサと、を含む、医療システム。
(2) 前記プロセッサは、前記脳血塊の前記組成に適合する脳血塊除去方法を選択するための提案を出力するように更に構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
(3) 前記プロセッサが、前記拡散された光信号中の吸収関連成分と散乱関連成分とを区別することによって、前記測定された拡散された光信号を分析するように構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
(4) 前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも遠位である、実施態様1に記載の医療システム。
(5) 前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも近位である、実施態様1に記載の医療システム。
【0056】
(6) 前記プローブが作業チャネルを更に含む、実施態様1に記載の医療システム。
(7) 前記プローブが放射線不透過性マーカーを更に含む、実施態様1に記載の医療システム。
(8) 医療方法であって、
脳の血管にプローブを挿入することであって、前記プローブが、
第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、前記血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、前記血管内の脳血塊と相互作用するように前記光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、
第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、前記第1の位置とは異なる前記血管に沿った第2の位置において、前記脳血塊と相互作用した、拡散された前記光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、
を含む、ことと、
前記第1の光ファイバに前記光信号を送信し、前記第2の光ファイバから前記拡散された光信号を受信及び測定することと、
測定された前記拡散された光信号を分析することによって、前記脳血塊の組成を特定することと、を含む、方法。
(9) 前記プロセッサによって、前記脳血塊の前記組成に適合する脳血塊除去方法を選択するための提案を出力することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記測定された拡散された光信号を分析することが、前記拡散された光信号中の吸収関連成分と散乱関連成分とを区別することを含む、実施態様8に記載の方法。
【0057】
(11) 前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも遠位である、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記第1の光学拡散器の前記第1の位置が、前記第2の光学拡散器の前記第2の位置よりも近位である、実施態様8に記載の方法。
(13) 特定された前記組成に基づいて前記血塊を排除することを含む、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記プローブ上に配置された放射線不透過性マーカーを使用して前記プローブを追跡することを含む、実施態様8に記載の医療システム。
(15) 脳の血管に挿入するための医療用プローブであって、前記プローブは、
第1の光ファイバであって、その遠位端に第1の光学拡散器を含み、前記血管に沿った第1の位置に光信号を誘導し、前記血管内の脳血塊と相互作用するように前記光信号を拡散させるように構成されている、第1の光ファイバと、
第2の光ファイバであって、その遠位端に第2の光学拡散器を含み、前記第1の位置とは異なる前記血管に沿った第2の位置において、前記脳血塊と相互作用した、拡散された前記光信号を収集するように構成されている、第2の光ファイバと、を備える、プローブ。
図1A
図1B
図2
図3