(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20241118BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241118BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20241118BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241118BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241118BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241118BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20241118BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/891
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2020148258
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影島 沙絵
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114831(JP,A)
【文献】特開2010-100590(JP,A)
【文献】特開2012-214467(JP,A)
【文献】特開平11-236308(JP,A)
【文献】特開2004-168759(JP,A)
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2003-137734(JP,A)
【文献】特開2019-043904(JP,A)
【文献】特開2006-131887(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039617(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0069542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)
、(D)
及び(E):
(A)25℃での粘度が
20,000~60,000mPa・sである重質流動パラフィン
0.3~8質量%、
(B)
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 0.3~8質量%、
(C)
ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、トリベヘン酸グリセリル、ワセリンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上の油剤
2~12質量%、
(D)
酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上の着色顔料
12~20質量%
、
(E)25℃における粘度が200mPa・s以下の液状の炭化水素油 1~6質量%
を含有
し、
成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)が、0.06~0.8である油中水型乳化組成物。
【請求項2】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.05~15である請求項1記載の油中水型乳化組成物。
【請求項3】
成分(A)及び(B)の合計含有量が、1.5~15質量%である請求項
1又は2記載の油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションなどのメイクアップ化粧料において、塗布後の肌に自然なツヤ感を得るために、フェニルシリコーン油を配合することが検討されている。
例えば、特許文献1には、メチルフェニルシリコーン等の高屈折率シリコーン油と、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、疎水性又は疎水化処理粉体、ワックスを含有する固形乳化化粧料が、優れた肌のツヤ出し効果と凹凸補正効果を両立するものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、着色顔料やワックスを多く含み、高カバー力を目的としたメイクアップ化粧料などにおいて、フェニルシリコーン油を配合すると、塗布後の肌に、ぎらつき感が目立つという課題があった。また、肌に密着して塗布する感じに劣り、隠したい肌のシミ部分などに集中して塗布しにくいという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、25℃での粘度が10,000~200,000mPa・sである重質流動パラフィンと、液状のフェニル変性シリコーン、固体状又は半固体状の油剤、着色顔料を組合わせて用いることにより、上記課題を解決した油中水型乳化組成物が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃での粘度が10,000~200,000mPa・sである重質流動パラフィン 0.1~10質量%、
(B)25℃で液状のフェニル変性シリコーン 0.1~10質量%、
(C)25℃で固体状又は半固体状の油剤 0.5~15質量%、
(D)着色顔料 10~30質量%
を含有する油中水型乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化組成物は、塗布後の肌に自然なツヤ感が得られるとともに、ぎらつき感は低減され、肌に密着して塗布する感じが向上し、しかも、塗布後の肌の油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくするため、隠したい肌のシミ部分などに集中して塗布しても自然に化粧を仕上げることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)の25℃での粘度が10,000~200,000mPa・sである重質流動パラフィンは、重質流動イソパラフィン、ポリブテンの重質流動イソパラフィンが好ましく、側鎖を有する炭化水素の混合物である。例えば、イソブテンとn-ブテンを共重合した後、水素添加して得られる混合物が挙げられ、水素添加したポリブテン(イソパラフィン)を脱臭処理したものを用いることができる。また、ポリブテンは、イソブテンの共重合体であり、例えば、イソブテン(C4ガス)を、触媒を用いて重合して得られたものを用いることができる。
これらの重質流動イソパラフィンやポリブテンは、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、数平均分子量900~5000の常温(25℃)でペースト状のものが好ましい。
【0009】
市販品の重質流動イソパラフィンとしては、例えば、パールリーム18(数平均分子量1000)、パールリーム24(数平均分子量1350)、パールリーム46(数平均分子量2650)(以上、日油社製)が挙げられ;ポリブテンとしては、出光ポリブテン 2000H(数平均分子量2900)、出光ポリブテン 300H(数平均分子量1330)(以上、出光興産社製)、精製ポリブテンHV-100F(SB)(数平均分子量940)(日本ナチュラルプロダクツ社製)等が挙げられる。
また、成分(A)の重質流動パラフィンは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(A)の25℃における粘度は、10,000~200,000mPa・sであるが、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、25℃における粘度が、15,000~80,000mPa・sであることが好ましく、20,000~60,000mPa・sであることがより好ましい。
ここで、粘度は、以下の条件で測定される。
粘度測定条件:B型粘度計(TVB-10型、東機産業社製)、ローターNo.4、12rpm,60秒。ただし、50,000mPa・s以上は、ローターNo.4、3rpm,60秒。
【0010】
成分(A)の含有量は、肌に密着して塗布する感じを向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくし、肌から浮きあがって見えない自然な仕上がりを与える観点から、全組成中に0.1~10質量%であり、0.3~8質量%が好ましく、0.8~7質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0011】
成分(B)は、25℃で液状のフェニル変性シリコーンである。液状とは、25℃における粘度が、4000mPa・s以下のことを示す。
成分(B)の25℃における粘度としては、600mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。
ここで、粘度は、以下の条件で測定される。
粘度測定条件:B型粘度計(TVB-10型、東機産業社製)、ローターNo.4、60rpm、60秒
【0012】
25℃で液状のフェニル変性シリコーンとしては、例えば、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキシサン等が挙げられる。
なかでも、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを含むのがより好ましい。
【0013】
成分(B)としては、フェニルトリメチコンとして、SH556(東レ・ダウコーニング社製);ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンとして、KF-56A(信越化学工業社製);ジフェニルジメチコンとして、KF-50(信越化学工業社製)、KF-53(信越化学工業社製)、KF-54(信越化学工業社製);トリメチルシロキシフェニルジメチコンとして、PDM-1000(旭化成ワッカーシリコーン社製);トリメチルペンタフェニルトリシロキシサンとして、PH-1555 HRI C.F.(東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を用いることができる。
【0014】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、ぎらつき感を低減させる観点から、全組成中に0.1~10質量%であり、0.3~8質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましく、1.5~4質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、0.05~15であるのが好ましく、0.1~7がより好ましく、0.25~3がさらに好ましい。
また、本発明において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、塗布後の肌の自然なツヤ感、安定性を向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、全組成中に1.5~15質量%であるのが好ましく、2~12質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましく、4~7.5質量%がよりさらに好ましい。
【0016】
成分(C)は、25℃で固体状又は半固体状の油剤である。
25℃で固体状又は半固体状とは、25℃における粘度が200,000mPa・sより大きいことをいう。粘度は、成分(A)と同様にして測定される。
25℃で固体状の油剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば制限されず、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、合成ワックス等を用いることができる。より具体的には、エステルワックスとしては、コメヌカロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ゲイロウ等が挙げられ、炭化水素ワックスとしては、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。
【0017】
25℃で半固体状の油剤としては、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカダミアナッツ油脂肪酸コレステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のコレステロール類誘導体;
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等のフィトステロール類誘導体;
ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、ロジン酸ジペンタエリトリット等のジペンタエリトリット脂肪酸エステル類;
トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、トリラノリン脂肪酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル等のトリグリセライド類;
硬化油等の部分的に水素添加されたトリグリセライド類、ラノリン、軟質ラノリン脂肪酸、ラノステロール類誘導体、ワセリン、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油などが挙げられる。
【0018】
成分(C)としては、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じ、安定性を向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、トリグリセライド類、ラノリン、ワセリン、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、トリグリセライド類、ラノリン、ワセリンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、フィトステロール類誘導体、トリグリセライド類、ワセリンがさらに好ましく、
ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、トリベヘン酸グリセリル、ワセリンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがよりさらに好ましい。
また、マカダミアナッツ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラノリン、ワセリンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがよりさらに好ましい。
【0019】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じ、安定性を向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、全組成中に0.5~15質量%であり、2~12質量%が好ましく、4~10質量%がより好ましく、6~9質量%がさらに好ましい。
【0020】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、塗布後の肌の自然なツヤ感、肌に密着して塗布する感じを向上させ、ぎらつき感を低減し、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、0.01~1であるのが好ましく、0.03~0.8がより好ましく、0.15~0.45がさらに好ましい。
【0021】
成分(D)の着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、さらに、カーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられ、これらの着色顔料の複合体、これらの着色顔料とパール顔料とを組み合わせた複合顔料などが挙げられる。処理されるパール顔料としては、例えば、雲母、金雲母、タルク、シリカ、セリサイト、マイカ、ガラス、カオリン、オキシ塩化ビスマス、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、板状アルミナ粉末等の天然又は合成の無機粉体が挙げられる。複合顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化クロム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン内包ガラス末、酸化鉄内包ガラス末等が挙げられる。
成分(D)としては、カバー力がありながらも、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、金属酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0022】
これらの着色顔料は、そのまま用いられるほか、疎水化処理して用いることもできる。疎水化処理としては、例えば、フッ素化合物処理、シリコーン処理、アルキル処理、アルキルシラン処理、金属石鹸処理、水溶性高分子処理、アミノ酸処理、アシル化アミノ酸処理、レシチン処理、有機チタネート処理、ポリオール処理、アクリル樹脂処理、メタクリ樹脂処理、ウレタン樹脂処理等の表面処理が挙げられる。
着色顔料を疎水化処理するには、通常の方法により、行うことができる。
【0023】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、カバー力がありながらも、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくし、安定性を向上させる観点から、全組成中に10~30質量%であり、11~25質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましく、13~18質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明の油中水型乳化組成物は、さらに、(E)成分(A)以外の液状の炭化水素油を含有することができ、肌に密着して塗布する感じを向上させることができる。ここで、液状とは、25℃における粘度が、4000mPa・s以下のことを示す。
成分(E)の25℃における粘度としては、600mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。
粘度は、成分(B)と同様にして測定される。
【0025】
かかる炭化水素油としては、直鎖又は分岐鎖の炭化水素油のいずれでも良く、例えば、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、イソドデカン、ポリブテン、スクワラン、スクワレン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
これらのうち、肌に密着して塗布する感じを向上させる観点から、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、オレフィンオリゴマーから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、流動パラフィン、オレフィンオリゴマーから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、オレフィンオリゴマーがさらに好ましい。
【0026】
成分(E)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、肌に密着して塗布する感じと安定性に優れる観点から、全組成中に0.5~10質量%であるのが好ましく、1~6質量%がより好ましく、2~4質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の油中水型乳化組成物は、さらに、親油性界面活性剤を含有することができ、肌に密着して塗布する感じ、安定性を向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくすることができる。
親油性界面活性剤としては、HLBが2~6の範囲にある非イオン界面活性剤が好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンや、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
これらのうち、肌に密着して塗布する感じ、安定性を向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、ソルビタン脂肪酸エステルがより好ましく、モノイソステアリン酸ソルビタンがさらに好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lipophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。また、2種以上の非イオン界面活性剤から構成される場合、混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン界面活性剤Xの質量(g)を示す。
【0028】
親油性界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、肌に密着して塗布する感じ、安定性を向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明の油中水型乳化組成物において、水の含有量は、安定性を向上させる観点から、全組成中に10~70質量%であるのが好ましく、20~60質量%がより好ましく、25~50質量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明の油中水型乳化組成物は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油性成分、タルク、マイカ等の体質顔料、前記以外の粉体、高分子化合物、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0031】
本発明の油中水型乳化組成物は、通常の方法に従って製造することができ、液状、乳液液、ペースト状、クリーム状、ジェル状、固形状等の剤型にすることができ、ペースト状、クリーム状、固形状が好ましい。
【0032】
本発明の油中水型乳化組成物は、肌に密着して塗布する感じを向上させ、塗布した油中水型乳化組成物の色による肌の境目を目立ちにくくする観点から、25℃における粘度が、15,000~200,000mPa・sであるのが好ましく、30,000~180,000mPa・sがより好ましく、50,000~150,000mPa・sがさらに好ましく、75,000~90,000mPa・sがよりさらに好ましい。
本発明において、組成物の粘度は、以下の条件で測定される。
粘度測定条件:B型粘度計(TVB-10型、東機産業社製)、ローターNo.T-C、5rpm,60秒
【0033】
本発明の油中水型乳化組成物は、油中水型乳化化粧料として好適であり、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー;ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料などとして適用することができる。
【実施例】
【0034】
実施例1~5及び比較例1
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料(ファンデーション)を製造し、粘度を測定するともに、ツヤ感、ぎらつき感のなさ、密着感、塗布後の肌の境目の目立ちのなさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0035】
(製法)
粉体相成分をヘンシェルミキサーで攪拌混合し、これを、油相成分を80℃で加熱溶解したものに加え、分散させた。これに、水相成分を80℃で加熱溶解して加え、ホモジナイザーで分散させたのち、容器に充填し、室温まで冷却した。
【0036】
(評価方法)
(1)粘度:
製造後の各油中水型乳化組成物を40mLのサンプル瓶(浅井硝子社製、ED-40瓶)に40g入れ、25℃において、以下の条件で測定した。
粘度測定条件:B型粘度計(TVB-10型、東機産業社製)、ローターNo.T-C、5rpm,60秒
【0037】
(2)ツヤ感:
1名の専門評価者が、指を用いて各油中水型乳化化粧料0.03gを、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに塗布し、塗布直後のツヤ感について、下記の5段階で評価した。
5;ツヤ感が明らかにある。
4;ツヤ感がある。
3;ツヤ感がややある。
2;ツヤ感があまりない。
1;ツヤ感が明らかにない。
【0038】
(3)ぎらつき感のなさ:
1名の専門評価者が、指を用いて各油中水型乳化化粧料0.03gを、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに塗布し、塗布してから5分後の肌のぎらつき感について、下記の5段階で目視評価した。なお、ぎらつき感とは、素肌感がなく、不自然な反射光が見える状態を示す。
5;ぎらつき感を明らかに感じない。
4;ぎらつき感を感じない。
3;ぎらつき感をあまり感じない。
2;ぎらつき感をやや感じる。
1;ぎらつき感を明らかに感じる。
【0039】
(4)密着感:
1名の専門評価者が、指を用いて各油中水型乳化化粧料0.03gを、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに塗布し、肌に密着して塗布する感じについて、下記の5段階で評価した。肌に密着して塗布する感じとは、油中水型乳化化粧料を肌に塗布する際に、油中水型乳化化粧料が肌に吸い込まれて一体化する感じを示す。密着して塗布する感じが得られることで、違和感なく自然な化粧仕上がりが得られる。
5;密着感が明らかにある。
4;密着感がある。
3;密着感がややある。
2;密着感があまりない。
1;密着感が明らかにない。
【0040】
(5)塗布後の肌の境目の目立ちのなさ:
1名の専門評価者が、指を用いて各油中水型乳化化粧料0.03gを、前腕内側の肌に2×3cm2の大きさに塗布し、塗布してから5分後の塗布した部分と塗布してない部分の肌の境目の目立ちのなさを、下記の5段階で目視評価した。
5;目立ちを明らかに感じない。
4;目立ちを感じない。
3;目立ちをあまり感じない。
2;目立ちをやや感じる。
1;目立ちを明らかに感じる。
【0041】