(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】磁性キャリア、二成分系現像剤、補給用現像剤、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20241118BHJP
G03G 9/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G03G9/113
G03G9/113 351
G03G9/00
(21)【出願番号】P 2020156246
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 隆二
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】満生 健太
(72)【発明者】
【氏名】椎野 萌
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆穂
(72)【発明者】
【氏名】皆川 浩範
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-258490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/113
G03G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子表面に樹脂被覆層を有する磁性キャリア粒子を含有する磁性キャリアであって、
該樹脂被覆層は
、樹脂としては重合体A
のみを含有し、
該重合体Aは、
第一の重合性単量体及び第二の重合性単量体のみを含有する第一組成物の重合体、
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体及びスチレンのみを含有する第二組成物の重合体、
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体及びメタクリル酸メチルのみを含有する第三組成物の重合体、または
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体、スチレン及びメタクリル酸メチルのみを含有する第四組成物の重合体、
であり、
該第一の重合性単量体が、
(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
該第二の重合性単量体が、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
【化1】
(式中、Xは単結合又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を示し、
R
1
は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR
10
、該R
10
は水素原子)、
-COOR
11
(該R
11
は炭素数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素数1以上6以下のヒドロキシアルキル基)、
-COO(CH
2
)
2
NHCOOR
14
(該R
14
は炭素数1以上4以下のアルキル基)、又は
-COO(CH
2
)
2
-NH-C(=O)-N(R
15
)
2
(該R
15
はそれぞれ独立して、炭素数1以上6以下のアルキル基)
を示し、
R
2
は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R
3
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。)
該磁性キャリアコア粒子の粉体pHが、8.0以上11.0以下であり、
該
第一組成物
から該第四組成物において、該第一の重合性単量体の含有割合が、
各組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該重合体A中の全重合性単量体の総モル数を基準として20.0モル%以上95.0モル%以下であり、
該第一の重合性単量体のSP値をSP
12とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP
22としたとき、下記式(3)と(4)を満たすことを特徴とする磁性キャリア。
0.60(J/cm
3)
0.5≦SP
22-SP
12≦15.00(J/cm
3)
0.5 (3)
18.30(J/cm
3)
0.5≦SP
22 (4)
(但し、第一の重合性単量体が複数存在する場合、SP
12
は、それぞれの重合性単量体のSP値の加重平均の値である。第二の重合性単量体は、算出したSP
12
に対して式(3)を満たすSP
22
を有する重合性単量体すべてが該当する。第二の重合性単量体が複数存在する場合、SP
22
は、それぞれの重合性単量体のSP値であり、SP
22
-SP
12
はそれぞれの第二の重合性単量体に対して決定される。)
【請求項2】
該組成物中の該第二の重合性単量体の含有量が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として40.0モル%以上95.0モル%以下である請求項
1に記載の磁性キャリア。
【請求項3】
該第一の重合性単量体が、
(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1
又は2に記載の磁性キャリア。
【請求項4】
該第二の重合性単量体が、
メタクリロニトリル、アクリロニトリル、メタクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、アクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、CH
2
=C(-CH
3
)-COO(CH
2
)
2
NHCOOCH
3
、CH
2
=C(-CH
3
)-COO(CH
2
)
2
-NH-C(=O)-N(-CH
2
CH
2
CH
2
CH
3
)
2
からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1~
3のいずれか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項5】
前記樹脂被覆層は
、前記磁性キャリアコア100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下である請求項1~
4のいずれか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項6】
該磁性キャリア粒子の表面粗さRaが0.15μm以上0.25μm以下である請求項1~
5のいずれか一項に記載の磁性キャリア。
【請求項7】
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーと、磁性キャリアとを含有する二成分系現像剤であって、該磁性キャリアが請求項1~
6のいずれか一項に記載の磁性キャリアである二成分系現像剤。
【請求項8】
静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有する画像形成方法であって、
該二成分系現像剤が、請求項
7に記載の二成分系現像剤である画像形成方法。
【請求項9】
静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を現像器内の二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有し、該現像器内の該二成分系現像剤のトナー濃度の低減に応じて、補給用現像剤が現像器に補給される画像形成方法に使用するための補給用現像剤であって、
該補給用現像剤は、磁性キャリアと、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーと、を含有し、
該補給用現像剤は、該磁性キャリア1質量部に対して該トナーを2質量部以上50質量部以下含有し、
該磁性キャリアは、請求項1~
6のいずれか一項に記載の磁性キャリアである補給用現像剤。
【請求項10】
静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を現像器内の二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有し、該現像器内の該二成分系現像剤のトナー濃度の低減に応じて、補給用現像剤が現像器に補給される画像形成方法であって、
該補給用現像剤は、磁性キャリアと、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーと、を含有し、
該補給用現像剤は、該磁性キャリア1質量部に対して該トナーを2質量部以上50質量部以下含有し、
該磁性キャリアは、請求項1~
6のいずれか一項に記載の磁性キャリアである画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法を用いて静電荷像を顕像化するための画像形成方法に使用される磁性キャリア、二成分系現像剤、補給用現像剤、及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成方法は、静電潜像担持体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて、静電潜像を現像する方法が一般的に使用されている。現像方法としては、磁性キャリアと呼ばれる担体粒子をトナーと混合し、摩擦帯電させて、トナーに適当量の正または負の電荷を付与し、その電荷をドライビングフォースとして現像する二成分現像方式が広く採用されている。
現像剤の撹拌性、搬送性、帯電性などの改善について磁性キャリアに担わせることができ、トナーとの機能分担を明確にすることができる。そのため、二成分現像方式には、現像剤性能の制御性が良いなどの利点がある。
一方、近年、電子写真分野の技術進化により、装置の高速化、高寿命化はもとより高精細化、画像品位の安定化を有することがますます厳しく要求されてきている。このような要求に応えるため、磁性キャリアの高性能化が求められている。
このような磁性キャリアとして、磁性キャリアの樹脂被覆層にワックスをドメインとして存在させることにより、上記ドメイン部に外添剤を選択的に付着させ、マクロな帯電を安定化させる磁性キャリアが提案されている(特許文献1参照)。これにより、現像剤のマクロな帯電性は安定化するが、長期間使用時の画像濃度の安定性や磁性キャリア表面に外添剤が付着することにより、磁性キャリア表面の帯電性が不均一になることによる、濃度ムラにはさらなる改善が求められた。また、磁性キャリアの樹脂被覆層に結晶性樹脂を添加し、樹脂被覆層と相溶させることにより帯電を安定化される磁性キャリアが提案されている(特許文献2)。これにより、透明トナーに対する帯電性付与能力がえらえるため、長期間の画像品質の向上は達成されるが、フルカラー画像そのものが濃度ムラのない高品位な画像が得られるという課題にはさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-70003号公報
【文献】特開2010-210703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の磁性キャリアにより、現像剤の高寿命化という課題は改善される傾向にある。
しかしながら、市場、特にオンデマンドプリンター分野において、濃度ムラのない高品位な画像を長期間得られるという要求はますます高まっている。そのため、長期間の使用においても画像濃度が変化せず、また、画像面内の濃度ムラも少ない磁性キャリア、及びそれを用いた画像形成方法の開発が急務となっている。
本発明の目的は、このような問題点を解決した磁性キャリアを提供するものである。具体的には、画像面内の濃度ムラを抑制し、使用環境によらず長期使用においても安定してムラの無い画像及び高品位な文字画像が得られる磁性キャリア、補給用現像剤、及びそれを用いた画像形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、下記に示すような二成分系現像剤を使用することで、画像面内の濃度ムラを抑制し、使用環境によらず長期使用においても安定してムラの無い画像が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子表面に樹脂被覆層を有する磁性キャリア粒子を含有する磁性キャリアであって、
該樹脂被覆層は
、樹脂としては重合体A
のみを含有し、
該重合体Aは、
第一の重合性単量体及び第二の重合性単量体のみを含有する第一組成物の重合体、
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体及びスチレンのみを含有する第二組成物の重合体、
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体及びメタクリル酸メチルのみを含有する第三組成物の重合体、または
第一の重合性単量体、第二の重合性単量体、スチレン及びメタクリル酸メチルのみを含有する第四組成物の重合体、
であり、
該第一の重合性単量体が
、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
該第二の重合性単量体が、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
【化1】
(式中、Xは単結合又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を示し、
R
1
は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR
10
、該R
10
は水素原子)、
-COOR
11
(該R
11
は炭素数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素数1以上6以下のヒドロキシアルキル基)、
-COO(CH
2
)
2
NHCOOR
14
(該R
14
は炭素数1以上4以下のアルキル基)、又は
-COO(CH
2
)
2
-NH-C(=O)-N(R
15
)
2
(該R
15
はそれぞれ独立して、炭素数1以上6以下のアルキル基)
を示し、
R
2
は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R
3
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を示す。)
該磁性キャリアコア粒子の粉体pHが、8.0以上11.0以下であり、
該
第一組成物
から該第四組成物において、該第一の重合性単量体の含有割合が、
各組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該重合体A中の全重合性単量体の総モル数を基準として20.0モル%以上95.0モル%以下であり、
該第一の重合性単量体のSP値をSP
12とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP
22としたとき、下記式(3)と(4)を満たすことを特徴とする磁性キャリアに関する。
0.60(J/cm
3)
0.5≦SP
22-SP
12≦15.00(J/cm
3)
0.5 (3)
18.30(J/cm
3)
0.5≦SP
22 (4)
(但し、第一の重合性単量体が複数存在する場合、SP
12
は、それぞれの重合性単量体のSP値の加重平均の値である。第二の重合性単量体は、算出したSP
12
に対して式(3)を満たすSP
22
を有する重合性単量体すべてが該当する。第二の重合性単量体が複数存在する場合、SP
22
は、それぞれの重合性単量体のSP値であり、SP
22
-SP
12
はそれぞれの第二の重合性単量体に対して決定される。)
また、本発明は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーと、磁性キャリアとを含有する二成分系現像剤であって、該磁性キャリアが上記磁性キャリアである二成分系現像剤に関する。
また、本発明は、静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を現像器内の二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有し、該現像器内の該二成分系現像剤のトナー濃度の低減に応じて、補給用現像剤が現像器に補給される画像形成方法に使用するための補給用現像剤であって、
該補給用現像剤は、上記二成分系現像剤に含まれる該トナーと該磁性キャリアと、を含有し、
該補給用現像剤は、該磁性キャリア1質量部に対して該トナーを2質量部以上50質量部以下含有する補給用現像剤に関する。
また、本発明は、静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有する画像形成方法であって、
該二成分系現像剤が、上記二成分系現像剤である画像形成方法に関する。
さらに、本発明は、静電潜像担持体を帯電する帯電工程、該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像を現像器内の二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程を有し、該現像器内の該二成分系現像剤のトナー濃度の低減に応じて、補給用現像剤が現像器に補給される画像形成方法であって、
該補給用現像剤は、上記二成分系現像剤に含まれる該トナーと該磁性キャリアと、を含有し、
該補給用現像剤は、該磁性キャリア1質量部に対して該トナーを2質量部以上50質量部以下含有する画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、画像面内の濃度ムラを抑制し、使用環境によらず長期使用においても安定してムラの無い画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】中間転写体を用いる画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0010】
本発明において、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(Z)で示すことができる。
【0011】
【化1】
[式(Z)中、R
Z1は、水素原子、又はアルキル基を表し、R
Z2は、任意の置換基を表す。]
【0012】
<磁性キャリア>
本発明の第一の磁性キャリアは、磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子表面に樹脂被覆層を有する磁性キャリア粒子を含有する磁性キャリアであって、
該樹脂被覆層は第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、および、該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットを有する重合体Aを含有し、
該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
該重合体A中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該重合体A中の該第二のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として20.0モル%以上95.0モル%以下であり、
該第一のモノマーユニットのSP値をSP11(J/cm3)0.5とし、該第二のモノマーユニットのSP値をSP21(J/cm3)0.5としたとき、下記式(1)と(2)を満たすことを特徴とする。
3.00(J/cm3)0.5≦SP21-SP11≦25.00(J/cm3)0.5 (1)
21.00(J/cm3)0.5≦SP21 (2)
【0013】
また、本発明の第二の磁性キャリアは、磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子表面に樹脂被覆層を有する磁性キャリア粒子を含有する磁性キャリアであって、
該樹脂被覆層は第一の重合性単量体、および、該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体含有する組成物の重合体である重合体Aを含有し、
該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、
該組成物中の該第一の重合性単量体の含有割合が、該重合体A中の全重合性単量体の総モル数を基準として5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該重合体A中の全重合性単量体の総モル数を基準として20.0モル%以上95.0モル%以下であり、
該第一の重合性単量体のSP値をSP12とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP22としたとき、下記式(3)と(4)を満たすことを特徴とする。
0.60(J/cm3)0.5≦SP22-SP12≦15.00(J/cm3)0.5 (3)
18.30(J/cm3)0.5≦SP22 (4)
【0014】
ここで、SP値とは、溶解度パラメータ(soluble parameter)の略であり、溶解性の指標となる値である。算出方法については後述する。
【0015】
本発明者らは、長期間にわたる使用において画像面内の濃度ムラの抑制と現像剤の長寿命化とを両立させることを目的に鋭意検討した結果、上記構成の磁性キャリアが重要であることを見出した。
【0016】
本発明の磁性キャリアにより、上記課題を解決できるメカニズムについて以下のように考えている。
【0017】
本発明の磁性キャリアは、樹脂被覆層に特定の構造を有する樹脂、具体的には、極性の大きく異なる二種以上のモノマーユニットがブロック状に重合されている樹脂を含有している。この樹脂は、極性が大きく異なる二種以上のモノマーユニット同士がトナー粒子中でミクロ相分離状態を形成する。そして、相対的に極性の大きいモノマーユニットの相(以下、「極性部」)が、磁性キャリアコア粒子表面に存在する極性部へと配向すると考えられる。その結果、樹脂被覆層に本発明の樹脂を用いると、相対的に極性の小さいモノマーユニットの相(以下、「結晶性部」ともいう。)が磁性キャリア粒子の表面に配向する。この相対的に極性の小さいモノマーユニットの相は結晶性を持つため、磁性キャリア表面に存在する結晶性部位がトナー由来の外添剤を滑らせることによって、磁性キャリア粒子表面への外添剤の汚染を抑制することが可能となる。その結果、低湿下から高温高湿下までの様々な環境において使用初期と長期間使用後での画像濃度の変化や、長期間にわたる使用において画像面内の濃度ムラを抑制し、高品位な画像を得ることができる。
【0018】
本発明は、樹脂被覆層が重合体Aを含有する。重合体Aは、第一の重合性単量体と、該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合体単量体と、を含有する組成物の重合体である。また、該重合体Aは、該第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニットと、該第一の重合性単量体とは異なる該第二の重合体単量体に由来する第二のモノマーユニットと、を有する。
【0019】
第一の重合性単量体は、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つである。また、第一のモノマーユニットは、該第一の重合性単量体に由来するものである。
【0020】
該(メタ)アクリル酸エステルは鎖長の長いアルキル基を有するため、磁性キャリア粒子表面に存在する樹脂被覆層に結晶性を付与することができる。そのため、磁性キャリア粒子表面の滑性が増し、外添剤の汚染を抑制する。さらに、該(メタ)アクリル酸エステルは疎水性が高いため、高温高湿環境下における吸湿性も低く、優れた帯電維持性に寄与する。
【0021】
一方、炭素数18未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、アルキル基の鎖長が短いため、得られる重合体Aは疎水性が低く、高温高湿環境下における吸湿性が高いため、帯電維持性が劣る。また、炭素数が36を超えるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、かかる(メタ)アクリル酸エステルは鎖長が長いアルキル基を有するため必要以上に結晶性が高まり、高温高湿下での帯電維持性が劣る。
【0022】
炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18以上36以下の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタル等]及び炭素数18以上36以下の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
【0023】
これらの内、上述の観点から、炭素数18以上36以下の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つが好ましく、炭素数18以上30以下の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つがより好ましく、直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルの少なくとも一方がさらに好ましい。
【0024】
第一の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
第二の重合性単量体は、前記第一の重合性単量体とは異なる重合性単量体であって、上記式(1)及び(2)、又は、上記式(3)及び(4)を満たすものである。また、第二のモノマーユニットは、該第二の重合性単量体に由来するものである。該第二の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
該第二の重合性単量体は、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0027】
【化2】
(式中、Xは単結合又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を示し、
R
1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR
10(R
10は水素原子、若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基))、
ヒドロキシ基、
-COOR
11(R
11は炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のヒドロキシアルキル基)、
ウレタン基(-NHCOOR
12(R
12は炭素数1以上4以下のアルキル基))、
ウレア基(-NH-C(=O)-
N(R
13)
2(R
13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基))、
-COO(CH
2)
2NHCOOR
14(R
14は炭素数1以上4以下のアルキル基)、又は
-COO(CH
2)
2-NH-C(=O)-
N(R
15)
2(R
15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基)
であり、
R
2は、炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。)
【0028】
第二の重合性単量体として、上記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることにより、第二のモノマーユニットが特に高極性となり、トナー粒子中にミクロ相分離状態を好ましく形成することができる。また、第二のモノマーユニットが磁性キャリア粒子表面に存在する極性部に好ましく配向し、樹脂被覆層の密着性を高めることができる。
【0029】
さらにまた、ニトリル基及びアミド基の少なくとも一方を含む化合物は、高極性でありながら非イオン性であるため、より適度な密着性を発現することができ、第二の重合性単量体としてより好ましい。さらに、ニトリル基及びアミド基の少なくとも一方を含む化合物は、非イオン性であるため疎水性が高く、高温高湿環境下における吸湿性も低いため、優れた帯電維持性を示すことができる点でも好ましい。
【0030】
また、第二の重合性単量体としては、具体的には、例えば以下に挙げる重合性単量体のうち、上記式(1)及び(2)、又は、上記式(3)及び(4)を満たす重合性単量体を用いることができる。
【0031】
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0032】
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等。
【0033】
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1以上30以下のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体。
【0034】
ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上22以下のアルコール(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1以上30以下のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた単量体、及び
炭素数1以上26以下のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のイソシアネート[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた単量体等。
【0035】
ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3以上22以下のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t―ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等。
【0036】
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
【0037】
なかでも、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、ウレア基を有する単量体を使用することが好ましい。より好ましくは、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、及びウレア基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体である。
【0038】
また、第二の重合性単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルといったビニルエステル類も好ましく用いられる。
【0039】
重合体A中の第一のモノマーユニットの含有割合は、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合は、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%以上95.0モル%以下である。また、該重合体Aを構成する組成物中の該第一の重合性単量体の含有割合は、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、20.0モル%以上95.0モル%以下である。
【0040】
第一のモノマーユニットの含有割合、及び第一の重合性単量体の含有割合が上記範囲であることで、樹脂被覆層の結晶性により磁性キャリア粒子表面の滑性が良好となり、優れた耐スペント性を示す。また、第二のモノマーユニットの含有割合、及び第二の重合性単量体の含有割合が上記範囲であることで、樹脂被覆層と磁性キャリアコア粒子との密着性が高まり、長期間の使用においても良好な帯電安定性が得られる。
【0041】
一方、第一のモノマーユニットの含有割合、又は第一の重合性単量体の含有割合が5.0モル%未満の場合、結晶性を有する非架橋部の割合が少ないため、耐スペント性が劣る。また、第一のモノマーユニットの含有割合、又は第一の重合性単量体の含有割合が60.0モル%より多い場合、極性部の割合が相対的に少ないため、樹脂被覆層の密着性が低下し、良好な帯電安定性が得られない。
【0042】
なお、重合体Aが、2種以上の炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを有する場合、第一のモノマーユニットの含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。また、重合体Aに用いる組成物が2種以上の炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む場合も同様に、第一の重合性単量体の含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。
【0043】
また、重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合が、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として20.0モル%未満の場合、極性部の割合が相対的に少ないため、樹脂被覆層の密着性が低下し、良好な帯電安定性が得られない。また、重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合が、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として95.0モル%より多い場合、結晶性を有する非架橋部の割合が少ないため、耐スペント性が劣る。
【0044】
また、重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合は、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数に対して40.0モル%以上95.0モル%以下であることが、さらには、40.0モル%以上70.0モル%以下であることが、磁性キャリア粒子に滑性を付与する非極性部と、樹脂被覆層の密着性を高める極性部が両立できるため、帯電維持性の観点から好ましい。同様の理由から、組成物中の第二の重合性単量体の含有割合は、組成物中の全モノマーユニットの総モル数に対して40.0モル%以上95.0モル%以下であることが好ましく、40.0モル%以上70.0モル%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
重合体Aにおいて、式(1)を満足する第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットが2種類以上存在する場合、第二のモノマーユニットの割合は、それらの合計のモル比率を表す。また、重合体Aに用いる組成物が2種以上の第二の重合性単量体を含む場合も同様に、第二の重合性単量体の含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。
【0046】
第一の磁性キャリアにおいては、重合体Aは、第一のモノマーユニットのSP値をSP11(J/m3)0.5とし、第二のモノマーユニットのSP値をSP21(J/m3)0.5としたとき、下記式(1)及び(2)を満足する。
3.00≦(SP21-SP11)≦25.00・・・(1)
21.00≦SP21・・・(2)
【0047】
また、第二の磁性キャリアにおいては、重合体Aは、第一の重合性単量体のSP値をSP12(J/cm3)0.5とし、第二の重合性単量体のSP値をSP22(J/cm3)0.5としたとき、下記式(3)及び(4)を満足する。
60≦(SP22-SP12)≦15.00・・・(3)
18.30≦SP22・・・(4)
【0048】
上記式(1)及び(2)又は上記式(3)及び(4)を満足することで、第二のモノマーユニットが高極性となり、第一及び第二のモノマーユニット間に極性差が生じる。かかる極性差により、磁性キャリアの樹脂被覆層にミクロ相分離状態を形成することができる。その結果、磁性キャリア粒子表面の滑性に寄与する非極性部と、樹脂被覆層の密着性に寄与する極性部と、をドメインマトリックス状に存在させることができるため、長期間の使用においても良好な帯電安定性が得られる磁性キャリアを得ることができる。
【0049】
上記式(1)及び(2)又は上記式(3)及び(4)を満足することで、磁性キャリア粒子表面の滑性及び樹脂被覆層の密着性を高め、長期間の使用においても良好な帯電安定性が得られるメカニズムについて、以下のように推察している。
【0050】
第一のモノマーユニットは、重合体Aに組み込まれ、第一のモノマーユニット同士が集合することで結晶性を発現する。通常の場合、第一のモノマーユニットの結晶化は、他のモノマーユニットが組み込まれていると阻害されるため、重合体として結晶性を発現しにくくなる。この傾向は、重合体の一分子内において複数種のモノマーユニット同士がランダムに結合していると顕著になる。
【0051】
一方、本発明においては、第一のモノマーユニットの含有割合及び第二のモノマーユニットが上記式(1)及び(2)の範囲内となるように第一の重合性単量体及び第二の重合性単量体を使用することで、重合時に第一の重合性単量体と第二の重合性単量体がランダムに結合するのではなく、ある程度連続して結合できると考えられる。それにより、第一のモノマーユニット同士が集合したブロックが形成され、重合体Aはブロック共重合体となり、他のモノマーユニットが組み込まれていても結晶性を高めることが可能となり、融点も維持できると考えられる。すなわち、重合体Aは第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニットを含む結晶性部位を有することが好ましい。また、重合体Aは、第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを含む非晶性部位を有することが好ましい。
【0052】
一方、各モノマーユニットのSP値であるSP11とSP21が
(SP21-SP11)<3.00
である場合、モノマーユニット間の極性差が小さ過ぎることを意味し、磁性キャリアの樹脂被覆層にミクロ相分離状態を形成することができず、磁性キャリア表面の滑性が低下し、帯電維持性が劣る。また、
25.00<(SP21-SP11)
である場合、ユニット間の極性差が大き過ぎることを意味し、重合体Aはブロック共重合体に類似の構造とならず、磁性キャリア粒子表面の滑性にばらつきが生じ、帯電維持性が劣る。
【0053】
また、第二のモノマーユニットのSP値であるSP21が
SP21<21.00
である場合、第二のモノマーユニットが低極性であり、樹脂被覆層との密着性が低下するため、帯電維持性が劣る。
【0054】
SP21-SP11の下限は、4.00以上であることが好ましく、5.00以上であることがより好ましい。また上限は、20.00以下であることが好ましく、15.00以下であることがより好ましい。SP21は、22.00以上であることが好ましい。
【0055】
第二の磁性キャリアにおいては、各重合性単量体のSP値であるSP12とSP22が
(SP22-SP12)<0.60
である場合、重合性単量体間の極性差が小さ過ぎることを意味し、磁性キャリアの樹脂被覆層にミクロ相分離状態を形成することができず、磁性キャリア表面の滑性が低下し、帯電維持性が劣る。また、
15.00<(SP22-SP12)
である場合、重合性単量体間の極性差が大き過ぎることを意味し、重合体Aはブロック共重合体に類似の構造とならず、磁性キャリア粒子表面の滑性にばらつきが生じ、帯電維持性が劣る。
【0056】
また、第二の重合性単量体のSP値であるSP22が
SP22<18.30
である場合、第二の重合性単量体が低極性であり、樹脂被覆層との密着性が低下するため、帯電維持性が劣る。
【0057】
SP22-SP12の下限は、2.00以上であることが好ましく、3.00以上であることがより好ましい。また上限は、10.00以下であることが好ましく、7.00以下であることがより好ましい。SP22は、25.00以上であることが好ましく、29.00以上であることがより好ましい。
【0058】
なお、本発明において重合体A中に上記第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニットが複数種類存在する場合、式(1)におけるSP11の値はそれぞれのモノマーユニットのSP値を加重平均した値とする。例えば、SP値がSP111のモノマーユニットAを第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準としてAモル%含み、SP値がSP112のモノマーユニットBを第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準として(100-A)モル%含む場合のSP値(SP11)は、
SP11=(SP111×A+SP112×(100-A))/100
である。第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニットが3以上含まれる場合も同様に計算する。一方、SP12も同様に、それぞれの第一の重合性単量体のモル比率で算出した平均値を表す。
【0059】
一方、第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットは、上記方法で算出したSP11に対して式(1)を満たすSP21を有するモノマーユニット全てが該当する。同様に、第二の重合性単量体は、上記方法で算出したSP12に対して式(2)を満たすSP22を有する重合性単量体全てが該当する。
【0060】
すなわち、該第二の重合性単量体が2種類以上の重合性単量体である場合、SP21はそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SP21-SP11はそれぞれの第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットに対して決定される。同様に、SP22はそれぞれの重合性単量体のSP値を表し、SP22-SP12はそれぞれの第二の重合性単量体に対して決定される。
【0061】
次に、本発明に使用する磁性キャリアコアについて説明する。
【0062】
本発明の磁性キャリアに用いる磁性キャリアコアとしては、公知の磁性キャリアコアを用いることができる。樹脂成分中に磁性体が分散された磁性体分散型樹脂粒子、又は空隙部に樹脂を含有する多孔質磁性コア粒子を用いることがより好ましい。
【0063】
これらは、磁性キャリアの真密度を低くできるため、トナーへの負荷を軽減することができる。これにより、長期間の使用においても、画質の劣化が少なく、トナーとキャリアで構成された現像剤の交換頻度を減らすことが可能となる。しかし上記に限定されず、市販の磁性キャリアコアを用いても、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
【0064】
磁性体分散型樹脂粒子に使用する磁性体成分としては、マグネタイト粒子粉末、マグヘマイト粒子粉末、又はこれらにケイ素の酸化物、ケイ素の水酸化物、アルミニウムの酸化物及びアルミニウムの水酸化物から選ばれる少なくとも1種が含まれる磁性鉄酸化物粒子粉末;バリウム、ストロンチウム又はバリウム-ストロンチウムを含むマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末;マンガン、ニッケル、亜鉛、リチウム及びマグネシウムから選ばれた少なくとも1種を含むスピネル型フェライト粒子粉末などの各種磁性鉄化合物粒子粉末が使用できる。
【0065】
これらの中でも、磁性鉄酸化物粒子粉末が好ましく使用できる。
【0066】
さらに磁性体成分の他に、ヘマタイト粒子粉末のような非磁性鉄酸化物粒子粉末、ゲータイト粒子粉末のような非磁性含水酸化第二鉄粒子粉末、酸化チタン粒子粉末、シリカ粒子粉末、タルク粒子粉末、アルミナ粒子粉末、硫酸バリウム粒子粉末、炭酸バリウム粒子粉末、カドミウムイエロー粒子粉末、炭酸カルシウム粒子粉末、亜鉛華粒子粉末などの非磁性無機化合物粒子粉末を、磁性鉄化合物粒子粉末と併用してもよい。
【0067】
磁性鉄化合物粒子粉末と非磁性無機化合物粒子粉末とを混合して使用する場合には、これらの混合割合は、磁性鉄化合物粒子粉末が少なくとも30質量%含有されていることが好ましい。
【0068】
磁性鉄化合物粒子粉末は、その全部又は一部が親油化処理剤で処理されていることが好ましい。
【0069】
その場合に用いられる親油化処理剤としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、有機酸基、エステル基、ケトン基、ハロゲン化アルキル基及びアルデヒド基からから選ばれた1種又は2種以上の官能基を有する有機化合物やそれらの混合物が使用できる。
【0070】
官能基を有する有機化合物としてはカップリング剤が好ましく、より好ましくはシランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤であり、シラン系カップリング剤が特に好ましい。
【0071】
磁性体分散型樹脂粒子を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0072】
例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などがあるが、安価で製法面の容易性からフェノール樹脂を含有していることが好ましい。例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0073】
本発明における複合体粒子を構成するバインダー樹脂と磁性鉄化合物粒子粉末(又は磁性鉄化合物粒子粉末と非磁性無機化合物粒子粉末との混合物)との含有割合は、バインダー樹脂1~20質量%と磁性鉄化合物粒子粉末(又は該混合物)80~99質量%であることが好ましい。
【0074】
次に、磁性体分散型樹脂粒子の製造方法について述べる。
【0075】
複合体粒子は、例えば、後述する実施例に記載されている通り、磁性、非磁性の無機化合物粒子粉末及び塩基性触媒の存在下で、フェノール類とアルデヒド類とを水性媒体中で撹拌を行う。その後フェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させて、磁性鉄酸化物粒子粉末などの無機化合物粒子とフェノール樹脂とを含有する複合体粒子を生成する方法がある。
【0076】
また磁性鉄酸化物粒子粉末などの無機化合物粒子を含有したバインダー樹脂を粉砕する、所謂、混練粉砕法などによって製造することもできる。磁性キャリアの粒径を容易に制御し、シャープな粒度分布にするために前者の方法が好ましい。
【0077】
次に、多孔質磁性コア粒子について説明する。
【0078】
多孔質磁性コア粒子の材質としては、マグネタイト又はフェライトが好ましい。さらに、多孔質磁性コア粒子の材質は、フェライトであることが多孔質磁性コア粒子の多孔質の構造を制御したり、抵抗を調整できるため、より好ましい。
【0079】
フェライトは次の一般式で表される焼結体である。
(M12O)x(M2O)y(Fe2O3)z
(式中、M1は1価、M2は2価の金属であり、x+y+z=1.0とした時、x及びyは、それぞれ0≦(x,y)≦0.8であり、zは、0.2<z<1.0である。)
【0080】
式中において、M1及びM2としては、Li、Fe、Mn、Mg、Sr、Cu、Zn、Ca、からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を用いることが好ましい。そのほかにもNi、Co、Ba、Y、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、Si、希土類なども用いることができる。
【0081】
磁性キャリアでは、磁化量を適度に維持し、細孔径を所望の範囲にするため多孔質磁性コア粒子表面の凹凸状態を制御することが好ましい。また、フェライト化反応の速度を容易にコントロールでき、多孔質磁性コアの比抵抗と磁気力を好適にコントロールできることが好ましい。以上の観点から、Mn元素を含有する、Mn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mn-Mg-Sr系フェライト、Li-Mn系フェライトがより好ましい。
【0082】
以下に、磁性キャリアコアとして多孔質フェライト粒子を用いる場合の製造工程を詳細に説明する。
【0083】
<工程1(秤量・混合工程)>
上記フェライトの原料を、秤量し、混合する。
【0084】
フェライト原料としては、上記金属元素の金属粒子、又はその酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩などが挙げられる。
【0085】
混合する装置としては、例えば以下のものが挙げられる。ボールミル、遊星ミル、ジオットミル、振動ミル。特にボールミルが混合性の観点から好ましい。
【0086】
具体的には、ボールミル中に、秤量したフェライト原料、ボールを入れ、好ましくは0.1時間以上20.0時間以下、粉砕・混合する。
【0087】
<工程2(仮焼成工程)>
粉砕・混合したフェライト原料を、大気中又は窒素雰囲気下で、好ましくは焼成温度700℃以上1200℃以下の範囲で、好ましくは0.5時間以上5.0時間以下仮焼成し、フェライト化する。焼成には、例えば以下の炉が用いられる。バーナー式焼却炉、ロータリー式焼成炉、電気炉などが挙げられる。
【0088】
<工程3(粉砕工程)>
工程2で作製した仮焼フェライトを粉砕機で粉砕する。
【0089】
粉砕機としては、所望の粒径が得られれば特に限定されない。例えば以下のものがあげられる。クラッシャーやハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジオットミルなどが挙げられる。
【0090】
フェライト粉砕品を所望の粒径にするために、例えば、ボールミルやビーズミルでは用いるボールやビーズの素材、粒径、運転時間を制御することが好ましい。具体的には、仮焼フェライトスラリーの粒径を小さくするためには、比重の重いボールを用いたり、粉砕時間を長くすればよい。また、仮焼フェライトの粒度分布を広くするためには、比重の重いボールやビーズを用い、粉砕時間を短くすることで得ることができる。また、粒径の異なる複数の仮焼フェライトを混合することでも分布の広い仮焼フェライトを得ることができる。
【0091】
また、ボールミルやビーズミルは、乾式より湿式の法が、粉砕品がミルの中で舞い上がることがなく粉砕効率が高い。このため、乾式より湿式の方がより好ましい。
【0092】
<工程4(造粒工程)>
仮焼フェライトの粉砕品に対し、水、バインダーと、必要に応じて、細孔調整剤を加える。細孔調整剤としては、発泡剤や樹脂微粒子が挙げられる。
【0093】
発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウムが挙げられる。
【0094】
樹脂微粒子として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体のようなスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択されるモノマーを構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂の微粒子が挙げられる。
【0095】
上記バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが用いられる。
【0096】
工程3において、湿式で粉砕した場合は、フェライトスラリー中に含まれている水も考慮し、バインダーと必要に応じて細孔調整剤を加えることが好ましい。
【0097】
得られたフェライトスラリーを、噴霧乾燥機を用い、好ましくは100℃以上200℃以下の加温雰囲気下で、乾燥・造粒する。噴霧乾燥機としては、所望の多孔質磁性コア粒子の粒径が得られれば特に限定されない。例えば、スプレードライヤーが使用できる。
【0098】
<工程5(本焼成工程)>
次に、造粒品を、好ましくは800℃以上1400℃以下で、好ましくは1時間以上24時間以下焼成する。
【0099】
焼成温度を上げ、焼成時間を長くすることで、多孔質磁性コア粒子の焼成が進み、その結果、細孔径は小さく、かつ、細孔の数も減る。
【0100】
<工程6(選別工程)>
以上の様に焼成した粒子を解砕した後に、必要に応じて、分級や篩で篩分して粗大粒子や微粒子を除去してもよい。
【0101】
画像へのキャリア付着とガサツキの抑制の観点から、磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)は、好ましくは18.0μm以上68.0μm以下である。
【0102】
<工程7(充填工程)>
多孔質磁性コア粒子は、内部の細孔容積によっては物理的強度が低くなることがあり、磁性キャリアとしての物理的強度を高めるために、多孔質磁性コア粒子の空隙の少なくとも一部に樹脂の充填を行うことが好ましい。多孔質磁性コア粒子に充填される樹脂の量としては、多孔質磁性コア粒子中、2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0103】
磁性キャリア毎の樹脂含有量にバラつきが少なければ、内部空隙内の一部にのみ樹脂が充填されていても、多孔質磁性コア粒子の表面近傍の空隙にのみ樹脂が充填され内部に空隙が残っていても、内部空隙が完全に樹脂で充填されていてもよい。
【0104】
多孔質磁性コア粒子の空隙に、樹脂を充填する方法としては、特に限定されないが、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床のような塗布方法により多孔質磁性コア粒子を樹脂溶液に含浸させ、その後、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。また、樹脂を溶剤に希釈し、これを多孔質磁性コア粒子の空隙に添加する方法も採用できる。
【0105】
ここで用いられる溶剤は、樹脂を溶解できるものであればよい。有機溶剤に可溶な樹脂である場合は、有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールが挙げられる。また、水溶性の樹脂又はエマルジョンタイプの樹脂である場合には、溶剤として水を用いればよい。
【0106】
上記樹脂溶液における樹脂固形分の量は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。50質量%以下であると、粘度が高すぎず多孔質磁性コア粒子の空隙に樹脂溶液が均一に浸透しやすい。一方、1質量%以上であると樹脂量が適量であり、多孔質磁性コア粒子への樹脂の付着力が良好になる。
【0107】
多孔質磁性コア粒子の空隙に充填する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いてもかまわない。多孔質磁性コア粒子に対する親和性が高いものであることが好ましい。親和性が高い樹脂を用いた場合には、多孔質磁性コア粒子の空隙への樹脂の充填と同時に、多孔質磁性コア粒子表面を樹脂で覆うこともできる。
【0108】
上記充填する樹脂として、熱可塑性樹脂としては、以下のものが挙げられる。ノボラック樹脂、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリアリレート、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0109】
また、上記熱硬化性樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。
【0110】
本発明の磁性キャリアに用いられる磁性キャリアコアは、粉体pHが8.0以上11.0以下であることが好ましい。粉体pHがこの範囲である場合、樹脂被覆層中の重合体Aとの密着性が向上し、帯電維持性が良化する傾向にある。
【0111】
また、磁性キャリアは、磁性キャリアコア表面に樹脂被覆層を有する。
【0112】
磁性キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆する方法としては、特に限定されないが、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、乾式法、及び流動床のような塗布方法により被覆する方法が挙げられる。
【0113】
樹脂被覆層は必要に応じて上記重合体A以外の樹脂を含有してもよい。重合体A以外の樹脂としては、分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体であるビニル系樹脂が好ましい。より好ましいのは、脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びマクロモノマーを含むモノマーの共重合体である。脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、該脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外のその他の(メタ)アクリル系モノマー、及びマクロモノマーの共重合体であることがより好ましい。
【0114】
本発明における磁性キャリアの樹脂被覆層の含有量は、磁性キャリアコア100質量部に対し0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。該含有量が0.5質量部以上の場合は樹脂被覆層の滑性が高まり、画像濃度の変化が抑制される。一方、該含有量が5.0質量部以下の場合、磁性キャリア粒子表面に適度な凹凸が生じるため、帯電安定性が良好となる。
【0115】
また、樹脂被覆層に導電性を有する粒子や荷電制御性を有する粒子や材料を含有させて用いてもよい。導電性を有する粒子としては、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫が挙げられる。
【0116】
導電性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが磁性キャリアの抵抗を調整するためには好ましい。
【0117】
荷電制御性を有する粒子としては、有機金属錯体の粒子、有機金属塩の粒子、キレート化合物の粒子、モノアゾ金属錯体の粒子、アセチルアセトン金属錯体の粒子、ヒドロキシカルボン酸金属錯体の粒子、ポリカルボン酸金属錯体の粒子、ポリオール金属錯体の粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂の粒子、ポリスチレン樹脂の粒子、メラミン樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、ナイロン樹脂の粒子、シリカの粒子、酸化チタンの粒子、アルミナの粒子など挙げられる。
【0118】
荷電制御性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上50.0質量部以下であることが摩擦帯電量を調整するためには好ましい。
【0119】
本発明に用いられる磁性キャリアの算術平均粗さRa(JIS-B0601に準拠)は0.15μm以上0.25μm以下であることが好ましい。磁性キャリアの算術平均粗さRaが0.15μm未満であると、耐スペント性が低下し帯電維持性が低下する場合がある。また、磁性キャリアの算術平均粗さRaが0.25μmより大きいと、長期間使用時において磁性キャリア粒子の凸部での樹脂被覆層の削れが起こる場合があり、その結果帯電維持性が低下する場合がある。
【0120】
<トナー>
次に、好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
【0121】
トナーは結着樹脂、並びに必要に応じて着色剤及び離型剤を含有するトナー粒子を有する。結着樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもビニル樹脂とポリエステル樹脂が帯電性や定着性でより好ましい。特にポリエステル樹脂が好ましい。
【0122】
ビニル系モノマーの単重合体又は共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を、必要に応じて前述した結着樹脂に混合して用いることができる。
【0123】
2種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
【0124】
結着樹脂のガラス転移温度は好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは55℃以上70℃以下である。数平均分子量(Mn)は2500以上50000以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)は10000以上1000000以下であることが好ましい。
【0125】
結着樹脂としては以下に示すポリエステル樹脂も好ましい。
【0126】
ポリエステル樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、45mol%以上55mol%以下がアルコール成分であり、45mol%以上55mol%以下が酸成分であることが好ましい。
【0127】
ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは0mgKOH/g以上90mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、OH価は好ましくは0mgmgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。これは、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる為である。
【0128】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は好ましくは50℃以上75℃以下、より好ましくは55℃以上65℃以下である。数平均分子量(Mn)は好ましくは1500以上50000以下、より好ましくは2000以上20000以下である。重量平均分子量(Mw)は好ましくは6000以上100000以下、より好ましくは10000以上90000以下である。
【0129】
着色剤は非磁性のものが好ましい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0130】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調整したものが挙げられる。
【0131】
マゼンタトナー用着色顔料しては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、269;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35が挙げられる。
【0132】
着色剤には、顔料単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点から好ましい。
【0133】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.Iソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
【0134】
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチルを1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0135】
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物。
【0136】
具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74,83、93、95、97,109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191;C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
【0137】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以上15質量部以下である。
【0138】
トナーの製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、溶融混練法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法などが挙げられる。
【0139】
また、上記トナーにおいて、結着樹脂に予め、着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いることが好ましい。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー中に着色剤を良好に分散させることができる。
【0140】
トナーの帯電性をさらに安定化させる為に、必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、結着樹脂100質量部あたり、0.5質量部以上10質量部以下使用するのが好ましい。0.5質量部以上であると、十分な帯電特性が得られる。一方、10質量部以下であると、他材料との相溶性が良好になり、低湿下における帯電過剰を抑制できる。
【0141】
荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0142】
トナーを負荷電性に制御する負荷電性制御剤として、例えば有機金属錯体又はキレート化合物が有効である。モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、その無水物、又はそのエステル類、又は、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
【0143】
トナーを正荷電性に制御する正荷電性制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのキレート顔料として、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等)、高級脂肪酸の金属塩として、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキシド等のジオルガノスズオキサイドやジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレートが挙げられる。
【0144】
必要に応じて一種又は二種以上の離型剤を、トナー粒子中に含有させてもよい。離型剤としては次のものが挙げられる。
【0145】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく使用できる。また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又は、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0146】
離型剤の量は、結着樹脂100質量部あたり、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。
【0147】
また、離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、65℃以上130℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以上125℃以下である。融点が65℃以上であると、トナーの粘度が好適になるため、感光体へのトナー付着を抑制できる。一方、融点が130℃以下であると、低温定着性が良化する。
【0148】
トナーには、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得る微粉体を流動性向上剤として用いてもよい。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末のようなフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカのような微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ等をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施し、疎水化処理したものであり、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30~80の範囲の値を示すように処理したものが特に好ましい。
【0149】
無機微粒子は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上8質量部以下用いる。
【0150】
<二成分系現像剤>
本発明の二成分系現像剤は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーと、磁性キャリアとを含有する。
【0151】
トナーを磁性キャリアと混合する場合、その際のキャリア混合比率は、現像剤中のトナー濃度として、好ましくは2質量%以上15質量%以下、より好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%以上であると画像濃度が良好になり、15質量%以下であると、カブリや機内飛散を抑制できる。
【0152】
本発明の磁性キャリアを含む二成分系現像剤は、
静電潜像担持体を帯電する帯電工程、
該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、
該静電潜像を二成分系現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程、
該トナー像を中間転写体を介して又は介さずに、転写材に転写する転写工程、及び
転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程
を有する画像形成方法に用いることができる。
【0153】
また、該画像形成方法は、現像器に二成分系現像剤を有し、該現像器内の二成分系現像剤のトナー濃度の低減に応じて、補給用現像剤が該現像器に補給される構成を有していてもよい。本発明の磁性キャリアは、このような画像形成方法に使用するための補給用現像剤に用いることができる。該画像形成方法は、現像器内で過剰になった磁性キャリアが必要に応じて現像器から排出される構成を有してもよい。
【0154】
また、補給用現像剤は、磁性キャリアと、結着樹脂、必要に応じて着色剤及び離型剤を含有するトナー粒子を有するトナーと、を含有することが好ましい。補給用現像剤は、補給用磁性キャリア1質量部に対し、トナーを好ましくは2質量部以上50質量部以下含有する。なお、補給用現像剤は、補給用磁性キャリアを有さず、トナーのみであってもよい。
【0155】
次に、磁性キャリア、二成分系現像剤及び補給用現像剤を用いる現像装置を備えた画像形成装置について例を挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0156】
<画像形成方法>
図1おいて、静電潜像担持体(感光ドラム)1は図中矢印方向に回転する。静電潜像担持体1は帯電手段である帯電器2により帯電され、帯電した静電潜像担持体1表面には、静電潜像形成手段である露光器3により露光させ、静電潜像を形成する。現像器4は、二成分系現像剤を収容する現像容器5を有し、現像剤担持体6は回転可能な状態で配置され、且つ、現像剤担持体6内部に磁界発生手段をしてマグネット7を内包している。マグネット7の少なくとも一つは潜像担持体に対して対向の位置になるように設置されている。
【0157】
二成分系現像剤は、マグネット7の磁界により現像剤担持体6上に保持され、規制部材8により、二成分系現像剤量が規制され、静電潜像担持体1と対向する現像部に搬送される。現像部においては、マグネット7の発生する磁界により磁気ブラシを形成する。その後、直流電界に交番電界を重畳してなる現像バイアスを印加することにより静電潜像はトナー像として可視像化される。静電潜像担持体1上に形成されたトナー像は、転写帯電器11によって記録媒体12に静電的に転写される。
【0158】
ここで、
図2に示すように、静電潜像担持体1から中間転写体9に一旦転写し、その後、転写材(記録媒体)12へ静電的に転写してもよい。その後記録媒体12は、定着器13に搬送され、ここで加熱、加圧されることにより、記録媒体12上にトナーが定着される。その後、記録媒体12は、出力画像として装置外へ排出される。なお、転写工程後、静電潜像担持体1上に残留したトナーは、クリーナー15により除去される。
【0159】
その後、クリーナー15により清掃された静電潜像担持体1は、前露光16からの光照射により電気的に初期化され、上記画像形成動作が繰り返される。
【0160】
【0161】
図中のK、Y、C、Mなどの画像形成ユニットの並びや回転方向を示す矢印は何らこれに限定されるものではない。ちなみにKはブラック、Yはイエロー、Cはシアン、Mはマゼンタを意味している。
図2において、静電潜像担持体1K、1Y、1C、1Mは図中矢印方向に回転する。各静電潜像担持体は帯電手段である帯電器2K、2Y、2C、2Mにより帯電され、帯電した各静電潜像担持体表面には、静電潜像形成手段である露光器3K、3Y、3C、3Mにより露光し、静電潜像を形成する。
【0162】
その後、現像手段である現像器4K、4Y、4C、4Mに具備される現像剤担持体6K、6Y、6C、6M上に担持された二成分系現像剤により静電潜像はトナー像として可視像化される。さらに転写手段である中間転写帯電器10K、10Y、10C、10Mにより中間転写体9に転写される。さらに転写手段である転写帯電器11により、記録媒体12に転写され、記録媒体12は、定着手段である定着器13により加熱圧力定着され、画像として出力される。そして、中間転写体9のクリーニング部材である中間転写体クリーナー14は、転写残トナーなどを回収する。
【0163】
現像方法としては、具体的には、現像剤担持体に交流電圧を印加して、現像領域に交番電界を形成しつつ、磁気ブラシが感光体に接触している状態で現像を行うことが好ましい。現像剤担持体(現像スリーブ)6と感光ドラム1との距離(S-D間距離)は、100μm以上1000μm以下であることが、キャリア付着防止及びドット再現性の向上において良好である。100μm以上であると現像剤の供給が十分であり、画像濃度が良好になる。1000μm以下であると、磁極S1からの磁力線が広がりにくく磁気ブラシの密度が良好になり、ドット再現性が向上する。また、磁性コートキャリアを拘束する力が高まりキャリア付着を抑制できる。
【0164】
交番電界のピーク間の電圧(Vpp)は、好ましくは300V以上3000V以下、より好ましくは500V以上1800V以下である。また周波数は、好ましくは500Hz以上10000Hz以下、より好ましくは1000Hz以上7000Hz以下であり、それぞれプロセスにより適宜選択して用いることができる。
【0165】
この場合、交番電界を形成するための交流バイアスの波形としては三角波、矩形波、正弦波、あるいはDuty比を変えた波形が挙げられる。ときにトナー像の形成速度の変化に対応するためには、非連続の交流バイアス電圧を有する現像バイアス電圧(断続的な交番重畳電圧)を現像剤担持体に印加して現像を行うことが好ましい。印加電圧が300V以上であると十分な画像濃度が得られやすく、また非画像部のカブリトナーを回収しやすくなる。また、3000V以下であると磁気ブラシを介した潜像の乱れが生じにくく、良好な画質が得られる。
【0166】
良好に帯電したトナーを有する二成分系現像剤を使用することで、カブリ取り電圧(Vback)を低くすることができ、感光体の一次帯電を低めることができるために感光体寿命を長寿命化できる。Vbackは、現像システムにもよるが、好ましくは200V以下であり、より好ましくは150V以下である。コントラスト電位としては、十分な画像濃度が出るように100V以上400V以下が好ましく用いられる。
【0167】
また、周波数が500Hzより低いと、プロセススピードにも関係するが、静電潜像担持体の構成としては、通常、画像形成装置に用いられる感光体と同じでよい。例えば、アルミニウム、SUS等の導電性基体の上に、順に導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、必要に応じて電荷注入層を設ける構成の感光体が挙げられる。
【0168】
導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は、通常、感光体に用いられるものでよい。感光体の最表面層として、例えば電荷注入層あるいは保護層を用いてもよい。
【0169】
以下、本発明に関する物性の測定方法について説明する。
【0170】
<重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定方法>
重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定は、1H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
【0171】
得られた1H-NMRチャートより、第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。
【0172】
同様に、第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
【0173】
さらに、第三の重合性単量体を使用している場合は、第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークから、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
【0174】
第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合は、上記積分値S1、S2及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、n3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
【0175】
同様に、第二の重合性単量体、第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合は以下のように求める。
第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
【0176】
なお、重合体Aにおいて、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、1H-NMRにて同様にして算出する。
【0177】
<SP値算出方法>
重合性単量体のSP値及び重合性単量体に由来するユニットのSP値は、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。
【0178】
それぞれの重合性単量体又は離型剤について、分子構造中の原子又は原子団に対して、「polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm3/mol)を求め、(4.184×ΣΔei/ΣΔvi)0.5をSP値(J/cm3)0.5とする。
【0179】
なお、SP11、SP21は、該重合性単量体の二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造の原子又は原子団に対して、上記と同様の算出方法によって算出する。
【0180】
SP13は、該重合体Aを構成する重合性単量体に由来するモノマーユニットの蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)をモノマーユニット毎に求め、各モノマーユニットの該重合体Aにおけるモル比(j)との積をそれぞれ算出し、各モノマーユニットの蒸発エネルギーの総和をモル体積の総和で割ることによって求め、下記式により算出する。
SP3={4.184×(Σj×ΣΔei)/(Σj×ΣΔvi)}0.5
【0181】
<磁性キャリアからの樹脂被覆層の分離及び樹脂被覆層中の重合体Aの分取>
磁性キャリアから樹脂被覆層を分離する方法としては、磁性キャリアをカップに取り、トルエンを用いて被覆用樹脂を溶出させる方法がある。
【0182】
溶出させた樹脂を乾固させたのち、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、以下の装置を用いて分取する。
[装置構成]
LC-908(日本分析工業株式会社製)
JRS-86(同社;リピートインジェクタ)
JAR-2(同社;オートサンプラー)
FC-201(ギルソン社;フラクッションコレクタ)
[カラム構成]
JAIGEL-1H~5H(20φ×600mm:分取カラム)(日本分析工業株式会社製)
[測定条件]
温度:40℃
溶媒:THF
流量:5ml/min.
検出器:RI
【0183】
被覆用樹脂の分子量分布に基づき、下記方法で特定した樹脂構成を用いて、重合体Aのピーク分子量(Mp)となる溶出時間を予め測定し、その前後で樹脂成分を分取する。その後溶剤を除去し、乾燥させ、重合体Aを得る。
【0184】
なお、フーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用いて吸光波数から原子団を特定し、重合体Aの樹脂構成を特定することができる。
【0185】
<GPCによる重合体A及び重合体A以外の樹脂の重量平均分子量測定>
重合体A及び重合体A以外の樹脂のTHF可溶分の分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0186】
まず、測定試料は以下のようにして作製する。
【0187】
試料(磁性キャリアから分離した被覆用樹脂、分取装置で分取した重合体A)と、テトラヒドロフラン(THF)とを5mg/mlの濃度で混合し、室温にて24時間静置して、試料をTHFに溶解した。その後、サンプル処理フィルター(マイショリディスクH-25-2 東ソー社製)を通過させたものをGPCの試料とする。
【0188】
次に、GPC測定装置(HLC-8120GPC 東ソー社製)を用い、前記装置の操作マニュアルに従い、下記の測定条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
【0189】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0190】
<磁性キャリア、多孔質磁性コアの体積平均粒径(D50)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行う。
【0191】
磁性キャリア、多孔質磁性コアの体積平均粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行う。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33l/sec、圧力約17kPaとする。制御は、ソフトウエア上で自動的に行う。粒径は体積平均の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3-202D)を用いて行う。測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81%
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :23℃、50%RH
【0192】
<多孔質磁性コアの細孔径及び細孔容積の測定>
多孔質磁性コアの細孔径分布は、水銀圧入法により測定される。
【0193】
測定原理は、以下の通りである。
【0194】
本測定では、水銀に加える圧力を変化させ、その際の細孔中に浸入した水銀の量を測定する。細孔内に水銀が浸入し得る条件は、圧力P、細孔直径D、水銀の接触角と表面張力をそれぞれθとσとすると、ちからの釣り合いから、PD=-4σCOSθで表せる。接触角と表面張力を定数とすれば、圧力Pとそのとき水銀が浸入し得る細孔直径Dは反比例することになる。このため、圧力Pとそのときに浸入液量Vを、圧力を変えて測定し得られる、P-V曲線の横軸Pを、そのままこの式から細孔直径に置き換え、細孔分布を求めている。
【0195】
測定装置としては、ユアサアイオニクス社製、全自動多機能水銀ポロシメータPoreMasterシリーズ・PoreMaster-GTシリーズや、島津製作所社製、自動ポロシメータオートポアIV 9500 シリーズ等を用いて測定することができる。
【0196】
具体的には、株式会社 島津製作所社のオートポアIV9520を用いて、下記条件・手順にて測定を行う。
【0197】
測定条件
測定環境 20℃
測定セル 試料体積 5cm3、圧入体積 1.1cm3、用途 粉体用
測定範囲 2.0psia(13.8kPa)以上、59989.6psia(413.7kPa)以下
測定ステップ 80ステップ
(細孔径を対数で取った時に、等間隔になるようにステップを刻む)
圧入パラメータ 排気圧力 50μmHg
排気時間 5.0min
水銀注入圧力 2.0psia(13.8kPa)
平衡時間 5secs
高圧パラメータ 平衡時間 5secs
水銀パラメータ 前進接触角 130.0degrees
後退接触角 130.0degrees
表面張力 485.0mN/m(485.0dynes/cm)
水銀密度 13.5335g/mL
【0198】
測定手順
(1)多孔質磁性コアを、約1.0g秤量し試料セルに入れる。
秤量値を入力する。
(2)低圧部で、2.0psia(13.8kPa)以上、45.8psia(315.6kPa)以下の範囲を測定。
(3)高圧部で、45.9psia(316.3kPa)以上、59989.6psia(413.6kPa)以下の範囲を測定。
(4)水銀注入圧力及び水銀注入量から、細孔径分布を算出する。
(2)、(3)、(4)は、装置付属のソフトウエアにて、自動で行う。
【0199】
上記の様にして計測した細孔径分布から、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における微分細孔容積が最大となる細孔径を読み取り、それをもって、微分細孔容積が極大となる細孔径とする。
【0200】
また、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における微分細孔容積を積分した細孔容積を、付属のソフトウエアを用いて算出し、細孔容積とする。
【0201】
<磁性キャリア、磁性キャリアコア粒子の表面粗さRaの測定>
本発明においては、非接触3次元表面測定機(マイクロマップ123 (株)菱化システム社)を用いて測定した。この測定機は、高精度レーザー顕微鏡であり、観察している面内の表面粗さを3次元化することができる。以下に、測定方法の具体例を示す。
【0202】
上記マイクロマップの光学顕微鏡部に20倍の二光束干渉対物レンズを装着した。レンズ下に磁性キャリア又は磁性キャリアコア粒子を配置し、表面形状画像をWaveモードでCCDカメラを用いて干渉像を垂直走査させて磁性キャリア又は磁性キャリアコア粒子表面の3次元画像を得た。得られた画像を、上記測定機に付随している解析ソフト(SX-Viewer (株)菱化システム社)を用いて、切断線における断面の表面粗さRaを測定した。表面粗さRaは、評価長さにおいて平均線から断面曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均することで求める。本発明では、磁性キャリア又は磁性キャリアコア粒子表面の凹凸に対し、より曲率の影響を排除する為、測定条件は、切断長さを24μm、評価長さを8μm、カットオフ値を8μmとし、3次元画像上の磁性キャリア又は多孔質磁性コア粒子の中心と切断線の中点を合わせ、表面粗さRaを算出した。なお、本発明における表面粗さRaは、50個の磁性キャリア又は磁性キャリアコア粒子について測定し、その平均値として得られた値である。
【0203】
<磁性キャリアコアの粉体pHの測定>
磁性キャリアコアの粉体pHの測定は、以下のようにして測定を行う。
【0204】
磁性キャリア10gをビーカーに秤量し、トルエンを用いて樹脂被覆層を除去したのち、乾燥させる。十分に乾燥させた樹脂被覆層を取り除いた磁性キャリアに純水50gを加え、2分間撹拌する。その後、樹脂被覆層を取り除いた磁性キャリアが分散した純水を、pH4、pH7、pH9の水溶液で校正されたpHメーター((株)堀場製作所社製 pH METER D-51)を用いて測定した値を磁性キャリアコアの粉体pHとした。
【0205】
<重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いた。実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
【0206】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0207】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
【0208】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0209】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0210】
具体的な測定法は以下の通りである。
【0211】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れる。この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0212】
<微粉量の算出方法>
トナー中の個数基準の微粉量(個数%)は、以下のようにして算出する。
【0213】
例えば、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%は、前記のMultisizer 3の測定を行った後、(1)専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。(2)書式/粒径/粒径統計画面における粒径設定部分の「<」にチェック、その下の粒径入力部に「4」を入力する。そして、(3)分析/個数統計値(算術平均)画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【0214】
<粗粉量の算出方法>
トナー中の体積基準の粗粉量(体積%)は、以下のようにして算出する。
【0215】
例えば、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%は、前記のMultisizer 3の測定を行った後、(1)専用ソフトでグラフ/体積%に設定して測定結果のチャートを体積%表示とする。(2)書式/粒径/粒径統計画面における粒径設定部分の「>」にチェック、その下の粒径入力部に「10」を入力する。そして、(3)分析/体積統計値(算術平均)画面を表示したときの「>10μm」表示部の数値が、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%である。
【0216】
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0217】
<樹脂の水酸基価の測定方法>
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。樹脂の水酸基価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5モル/l塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mlをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
非晶性ポリエステルの試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B-C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)、D:試料の酸価(mgKOH/g)である。
【0218】
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0219】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0220】
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30℃以上180℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0221】
一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃以上100℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
【0222】
<ワックスの吸熱ピークのピーク温度の測定>
ワックスの最大吸熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAインストルメント社製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
【0223】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0224】
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。測定条件は以下の通りである。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
【0225】
トナーを試料とする場合において、吸熱ピーク(結着樹脂由来の吸熱ピーク)がワックス以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークをそのままワックスに由来する吸熱ピークとして扱う。
【0226】
一方、トナーを試料とする場合において、ワックスの吸熱ピークの判別は、トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によってワックスを抽出し、ワックス単体の示差走査熱量測定を上記方法で行い、得られた吸熱ピークとトナーの吸熱ピークを比較することにより行う。
【0227】
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、該最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
【実施例】
【0228】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の処方において部は特に断りのない限り質量基準である。
【0229】
<重合体A1の製造例>
・溶媒:トルエン 100.0部
・単量体組成物 100.0部
(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル・メタクリロニトリル・スチレンを以下に示す割合で混合したものとする)
・アクリル酸ベヘニル(第一の重合性単量体) 67.0部(28.9モル%)
・メタクリロニトリル(第二の重合性単量体) 22.0部(53.8モル%)
・スチレン(第三の重合性単量体) 11.0部(17.3モル%)
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)0.5部
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、さらにメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して重合体A1を得た。重合体A1の重量平均分子量は68400、融点は62℃、酸価は0.0mgKOH/gであった。
【0230】
上記重合体A1をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが28.9モル%、メタクリロニトリル由来のモノマーユニットが53.8モル%、スチレン由来のモノマーユニットが17.3モル%含まれていた。重合性単量体及び重合性単量体由来のユニットのSP値を上記の方法により算出した。
【0231】
<ウレタン基を有する単量体の調製>
メタノール50.0部を反応容器に仕込んだ。その後、撹拌下、40℃にてカレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート](昭和電工株式会社)5.0部を滴下した。滴下終了後、40℃を維持しながら2時間撹拌を行った。その後、エバポレーターにて未反応のメタノールを除去することで、ウレタン基を有する単量体を調製した。
【0232】
<ウレア基を有する単量体の調製>
ジブチルアミン50.0部を反応容器に仕込んだ。その後、撹拌下、室温にてカレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート]5.0部を滴下した。滴下終了後、2時間撹拌を行った。その後、エバポレーターにて未反応のジブチルアミンを除去することで、ウレア基を有する単量体を調製した。
【0233】
<重合体A2~A29の製造例>
重合体A1の製造例において、それぞれの重合性単量体及び部数を表1となるように変更した以外は同様にして反応を行い、重合体A2~29を得た。重合体A2~A29の物性を表2~4に示す。
【0234】
【表1】
表1~3中の略号は以下の通り。
BEA:ベヘニルアクリレート
BMA:ベヘニルメタクリレート
SA:ステアリルアクリレート
MYA:ミリシルアクリレート
OA:オクタコサアクリレート
HA:ヘキサデシルアクリレート
MN:メタクリロニトリル
AN:アクリロニトリル
HPMA:メタクリル酸2‐ヒドロキシプロピル
AM:アクリルアミド
UT:ウレタン基を有する単量体
UR:ウレア基を有する単量体
AA:アクリル酸
VA:酢酸ビニル
MA:アクリル酸メチル
St:スチレン
MM:メタクリル酸メチル
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
<磁性キャリアコア1の製造例>
工程1(秤量・混合工程)
Fe2O3 68.3質量%
MnCO3 28.5質量%
Mg(OH)2 2.0質量%
SrCO3 1.2質量%
上記フェライト原材料を秤量し、フェライト原料80部に水20部を加え、その後、直径(φ)10mmのジルコニアを用いてボールミルで3時間湿式混合しスラリーを調製した。スラリーの固形分濃度は、80質量%とした。
【0239】
工程2(仮焼成工程)
混合したスラリーをスプレードライヤー(大川原化工機社製)により乾燥した後、バッチ式電気炉で、窒素雰囲気下(酸素濃度1.0体積%)、温度1050℃で3.0時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
【0240】
工程3(粉砕工程)
仮焼フェライトをクラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、水を加え、スラリーを調製した。スラリーの固形分濃度を70質量%とした。1/8インチのステンレスビーズを用いた湿式ボールミルで3時間粉砕し、スラリーを得た。さらにこのスラリーを直径1mmのジルコニアを用いた湿式ビーズミルで4時間粉砕し、体積基準の50%粒子径(D50)が1.3μmの仮焼フェライトスラリーを得た。
【0241】
工程4(造粒工程)
上記仮焼フェライトスラリー100部に対し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール1.5部を添加した後、スプレードライヤー(大川原化工機社製)で球状粒子に造粒、乾燥した。得られた造粒物に対して、粒度調整を行った後、ロータリー式電気炉を用いて700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダー等の有機物を除去した。
【0242】
工程5(焼成工程)
窒素雰囲気下(酸素濃度1.0体積%)で、室温から焼成温度(1100℃)になるまでの時間を2時間とし、温度1100℃で4時間保持し、焼成した。その後、8時間をかけて温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0243】
工程6(選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、目開き150μmの篩で篩分して粗大粒子を除去、風力分級を行って微粉を除去し、さらに磁力選鉱により低磁力分を除去して多孔質磁性コア粒子1を得た。
【0244】
多孔質磁性コア粒子1を100部、混合撹拌機(ダルトン社製の万能撹拌機NDMV型)の撹拌容器内に入れ、60℃に温度を保ち、常圧でメチルシリコーンオリゴマー:95.0質量%、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン:5.0質量%からなる充填樹脂を5部滴下した。
【0245】
滴下終了後、時間を調整しながら撹拌を続け、70℃まで温度を上げ、各多孔質磁性コアの粒子内に樹脂組成物を充填した。
【0246】
冷却後得られた樹脂充填型磁性コア粒子を、回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD-AT型)に移し、窒素雰囲気下で、2℃/分の昇温速度で、撹拌しながら140℃まで上昇させた。その後140℃で50分間加熱撹拌を続けた。
【0247】
その後室温まで冷却し、樹脂が充填、硬化されたフェライト粒子を取り出し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。さらに、振動篩にて粗大粒子を取り除き樹脂が充填された磁性キャリアコア1を得た。
【0248】
<磁性キャリアコア3~7の製造例>
製造条件を表5のように変えた以外は磁性キャリアコア1と同様にして、磁性キャリアコア3~7を得た。
【0249】
【0250】
<磁性キャリアコア2の製造例>
個数平均粒径0.30μmのマグネタイト粉100.0部に対して、4.0部のシラン系カップリング剤(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、微粒子を処理した。
・フェノール 10部
・ホルムアルデヒド溶液 6部
(ホルムアルデヒド40%、メタノール10%、水50%)
・処理したマグネタイト 84部
上記材料と、28%アンモニア水5部、水20部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体が分散された状態の球状の磁性キャリアコア2を得た。
【0251】
<磁性キャリア1の製造例>
・磁性キャリアコア1 100.0部
・重合体A1 2.00部
磁性キャリアコア1:100.0部に対して、上記の部数の被覆用樹脂を樹脂成分が5%になるようにトルエンで希釈し、充分に撹拌された樹脂溶液を準備した。その後温度60℃で維持されている遊星運動型混合機(ホソカワミクロン社製のナウタミキサVN型)に、磁性キャリアコア1を入れ、上記の樹脂溶液を投入した。投入の仕方として、1/2の量の樹脂溶液を投入し、30分間溶媒除去及び塗布操作を行った。次いで、さらに1/2の量の樹脂溶液を投入し、40分間溶媒除去及び塗布操作を行った。
【0252】
その後樹脂被覆層で被覆された磁性キャリアを回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD-AT型)に移し、混合容器を1分間に10回転させて撹拌しながら、窒素雰囲気下に温度120℃で2時間熱処理した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口150μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、磁性キャリア1を得た。
【0253】
<磁性キャリア2~42の製造例>
磁性キャリア処方を表6のように変えた以外は磁性キャリア1と同様にして、磁性キャリア2~42を得た。
【0254】
【0255】
<トナーの製造例>
・結着樹脂 100部
(Tg:57℃、酸価:12mgKOH/g、水酸基価:15mgKOH/gのポリエステル)
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.5部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.2部
・ノルマルパラフィンワックス(融点:90℃) 6部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM-75J型、日本コークス工業(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(商品名:PCM-30型、池貝鉄鋼(株)製)にて10kg/hrのFeed量で混練(吐出時の混練物温度は150℃)した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗砕した後、機械式粉砕機(商品名:T-250、ターボ工業(株)製)にて15kg/hrのFeed量で微粉砕した。そして、重量平均粒径が5.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子を55.6個数%含有し、粒径10.0μm以上の粒子を0.8体積%含有する粒子を得た。
【0256】
得られた粒子を回転式分級機(商品名:TTSP100、ホソカワミクロン(株)製)にて、微粉及び粗粉をカットする分級を行った。重量平均粒径が6.0μmであり、粒径4.0μm以下の粒子の存在率が27.8個数%、かつ粒径10.0μm以上の粒子の存在率が2.2体積%であるシアントナー粒子1を得た。
【0257】
さらに、下記材料をヘンシェルミキサー(商品名:FM-75J型、日本コークス工業(株)製)に投入し、回転羽根の周速を35.0(m/秒)とし、混合時間3分で混合することにより、シアントナー1を得た。
・シアントナー粒子1: 100部
・シリカ粒子: 1.0部
(一次粒子の個数平均粒径が10nmのシリカ粒子にヘキサメチルジシラザンで表面処理したもの)
・チタン酸ストロンチウム粒子: 0.5部
(一次粒子の個数平均粒径が40nmのチタン酸ストロンチウム粒子にオクチルシラン化合物で表面処理したもの。)
トナー1と磁性キャリア1~42を用いて、トナー濃度が8質量%となるように各材料を、振とう機(YS-8D型:株式会社ヤヨイ製)にて振とうし、二成分系現像剤300gを調製した。振とう機の振幅条件は200rpm、2分間とした。
【0258】
一方、8部の磁性キャリア1~42それぞれに対し、トナー1を92部加え、常温常湿23℃/50%RHの環境において、V型混合機により5分間混合し、補給用現像剤を得た。二成分系現像剤の詳細を表7に、補給用現像剤の詳細を表8に示す。
【0259】
【0260】
【0261】
〔実施例1~33、比較例1~9〕
調製された二成分系現像剤および補給用現像剤を用いて以下の評価を行った。
【0262】
画像形成装置として、キヤノン製カラー複写機imagePRESS C850 改造機を用いた。
【0263】
尚、画像形成に際しては、シアン色の現像器に入っている現像剤を上記の二成分系現像剤1~42に入れ替え、また、シアン色の補給用現像剤容器に入っている補給用現像剤を上記の補給用現像剤1~42に入れ替えた。また、改造点は以下のとおりである。
【0264】
(1)現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。
(2)現像バイアスの交流成分を、周波数2.0kHzとし、ピーク間の電圧(Vpp)を0.7kVから1.8kVまで0.1kV刻みで変更できるように改造した。
(3)単色で画像形成できるように改造した。
【0265】
上記の改造機を用い、転写紙として、レーザービームプリンター用紙CS-814(81.4g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社から入手可能)を用いて、シアン色単色で画像形成を行い、以下の評価試験を行った。
【0266】
画像形成には、画像比率1%および40%のFFH出力のチャートを用いた。FFHとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFHが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0267】
(1)画像濃度変化
H/H環境(温度30℃/湿度80RH%)下で、転写紙(CS-814)に15mm×15mmの大きさのFFH画像(紙上のトナー載り量:0.35mg/cm2)を、紙の中央部および端部の計9か所に出力した。各画像の中央部の濃度をX-Riteカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X-Rite 404A)により測定して、得られた画像濃度の平均値を求めた。さらに、同環境において画像比率1%および40%のFFH出力のチャートで10,000枚出力を行った後、出力を行う前と同様にして評価画像の出力を行い、得られた画像濃度の平均値を求めた。同様にして、総出力枚数が50,000枚になるまで、10,000枚ごとに画像濃度の平均値を求めた。得られた6つの平均値のうちの最大値と最小値との差を算出し、以下の基準により評価した。評価結果を表9に示す。
【0268】
<評価基準>
A:差が0.02以下
B:差が0.02より大きく0.05以下
C:差が0.05より大きく0.08以下
D:差が0.08より大きく0.10以下
E:差が0.10より大きく0.13以下
F:差が0.13より大きく0.15以下
G:差が0.15より大きく0.20以下
H:差が0.20より大きく0.25以下
I:差が0.25より大きく0.30以下
J:差が0.30より大きい
【0269】
(2)放置での画像濃度変化
(1)において40%のFFH出力のチャートで50,000枚通紙後、H/H環境において3晩放置を行った。その後、放置前と同じ条件で評価画像の出力を行い、得られた画像濃度の平均値を求めた。放置前後で得られた画像の平均値の差を算出し、以下の基準により評価した。評価結果を表9に示す。
【0270】
<評価基準>
A:差が0.02以下
B:差が0.02より大きく0.04以下
C:差が0.04より大きく0.06以下
D:差が0.06より大きく0.08以下
E:差が0.08より大きく0.10以下
F:差が0.10より大きく0.12以下
G:差が0.12より大きく0.15以下
H:差が0.15より大きく0.18以下
I:差が0.18より大きく0.20以下
J:差が0.20より大きい
【0271】
(3)面内一様性
前述の条件で耐久試験を行った後、画像比率100%のFFH画像を5枚出力した。さらにA4サイズの紙(CS-814)に200mm×280mmの大きさのFFH画像(紙上のトナー載り量:0.35mg/cm2)を出力し、得られた画像を20mm×20mmごとに140個に区切った。各画像の中央部の濃度をX-Riteカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X-Rite 404A)により測定した。得られた画像濃度のうち、画像濃度の標準偏差を算出して下記の基準により面内均一性を評価した。評価結果を表9に示す。
【0272】
<評価基準>
A:標準偏差が0.01以下
B:標準偏差が0.01より大きく、0.03以下
C:標準偏差が0.03より大きく、0.05以下
D:標準偏差が0.05より大きく、0.07以下
E:標準偏差が0.07より大きく、0.10以下
F:標準偏差が0.10より大きく、0.12以下
G:標準偏差が0.12より大きく、0.15以下
H:標準偏差が0.15より大きく、0.17以下
I:標準偏差が0.17より大きく、0.20以下
J:標準偏差が0.20より大きい
【0273】
(4)総合判定
上記評価項目(1)~(3)における評価ランクを数値化し、合計値を以下の基準により判定した。
【0274】
なお、評価項目(1)~(3)については、A=10、B=9、C=8、D=7、E=6、F=5、G=4、H=3、I=2、J=1とした。
【0275】
総合判定の合計値が25点以上のものを本発明の効果が得られていると判断した。
【0276】
結果を表9に示す。
【0277】
【符号の説明】
【0278】
1、1K、1Y、1C、1M:静電潜像担持体、2、2K、2Y、2C、2M:帯電器、3、3K、3Y、3C、3M:露光器、4、4K、4Y、4C、4M:現像器、5:現像容器、6、6K、6Y、6C、6M:現像剤担持体、7:マグネット、8:規制部材、9:中間転写体、10K、10Y、10C、10M:中間転写帯電器、11:転写帯電器、12:転写材(記録媒体)、13:定着器、14:中間転写体クリーナー、15、15K、15Y、15C、15M:クリーナー、16:前露光、17:円筒状容器、18:下部電極、19:支持台座、20:上部電極、21:磁性キャリア又はキャリアコア、22:エレクトロメーター、23:処理コンピュータ、d1:試料が無い時の間隙、d2:試料を充填した時の間隙