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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/00 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
A47C7/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166274
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057825
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏樹
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-270951(JP,A)
【文献】実開昭60-048731(JP,U)
【文献】特開2001-178577(JP,A)
【文献】特開2005-013602(JP,A)
【文献】米国特許第04324433(US,A)
【文献】中国実用新案第208480906(CN,U)
【文献】特開2001-178578(JP,A)
【文献】意匠登録第1577860(JP,S)
【文献】意匠登録第1557960(JP,S)
【文献】特開2019-083950(JP,A)
【文献】特開2001-104096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0338573(US,A1)
【文献】実公昭54-5203(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0001462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/00-5/14
A47C 7/00-7/74
A47B 1/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本以上の棒状足と、前記棒状足の群で支持された座とを有しており、
前記各棒状足は、上端は互いに束ねられた状態になって下端は放射方向に広がっており、前記各棒状足の上端に放射方向に広がった上水平部が曲げ形成されていて、前記各上水平部は、その上面に重なったベースに溶接されている椅子であって、
前記座は前記ベースによって回転自在に支持されて、前記各棒状足の上水平部は複数に分割されたカバーによって下方から覆われており、
前記カバーは、前記ベースの外周の外側において前記座に固定されると共に中心穴を有することにより、前記座と一体に回転することが許容されている、
椅子。
【請求項2】
前記座は、高さが900mm以上のテーブル又はカウンターとセットで使用できる高さであって、
前記各棒状足は、その下端は平面視において前記座の外側にはみ出て、中途高さ位置は前記ベースよりも大径の足載せリングによって連結されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記ベースは円形であって、スラストベアリングを介して前記座が前記ベースに回転自在に取り付けられており、
前記各棒状足の各上水平部は、前記ベースの外周からはみ出ない状態で前記ベースに溶接されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記カバーには、背もたれを前記座に取り付けるための開口部が形成されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、棒状足を備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において複数本(3本以上)の棒状足を備えたタイプがあり、その一例として特許文献1には、4本の棒状足を、束ねたように配置された鉛直部とその下端から放射方向に広がる下水平状部とで構成し、各鉛直部の上端を板材(屈曲部)に固定して、板材に座を取り付けることが開示されている。特許文献1において、相対向した鉛直部は板状のスペーサによって連結されており、4本の鉛直部が若干の空間を介して束ねられたように配置されている。
【0003】
類似した構造は、特許文献2,3にも開示されている。このうち特許文献2では、棒状足の鉛直状部は、それら鉛直状部で囲われたスペーサに溶接されていると共に、外側から鞘管で囲われている。そして、鞘管に溶接された板材によって座を支持している。
【0004】
他方、特許文献3では、棒状足は上端と下端とが放射方向外側に向かうようにC形(或いはU形)に湾曲しており、棒状足の概ね中間高さ位置がリングに固定されている。従って、特許文献3では、棒状足の概ね中間高さ位置がリングによって束ねた状態に保持されている。そして、上端に曲げ形成した外向き部が座の下面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-198178号公報
【文献】特開2007-219534号公報
【文献】実公昭51-11534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、各特許文献のように棒状足を採用すると、構造を単純化してコストを抑制できると云えるが、特許文献1,2では、各棒状足の上端に直接に又は鞘管を介して板材を固定して、この板材で座を支持しているため、荷重が板材と棒状足(或いは鞘管)との溶接部に集中的に作用することになり、このため、必要な強度を確保するために製造工程の管理に手間が掛かることが懸念される。
【0007】
他方、特許文献3では、棒状足の上端に外向きの水平状部が一体に形成されているため、溶接部への荷重の集中現象は生じないが、棒状足は概ね中間高さ位置が束ねた状態に保持されており、しかも、各棒状足における外向きの水平状部が座に直接固定されているため、脚装置全体としての一体性・堅牢性が弱いと解される(例えば、捩れや斜め方向からの外力に弱いと解される。)。
【0008】
本願発明は、棒状足付きの椅子に関して、このような現状を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々な構成を含んであり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を成すもので、
「3本以上の棒状足と、前記棒状足の群で支持された座とを有しており、
前記各棒状足は、上端は互いに束ねられた状態になって下端は放射方向に広がっており、前記各棒状足の上端に放射方向に広がった上水平部が曲げ形成されていて、前記各上水平部は、その上面に重なったベースに溶接されている」
という基本構成において、
前記座は前記ベースによって回転自在に支持されて、 前記各棒状足の上水平部は複数に分割されたカバーによって下方から覆われており、
前記カバーは、前記ベースの外周の外側において前記座に固定されると共に中心穴を有することにより、前記座と一体に回転することが許容されている」
という構成になっている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、
前記座は、高さが900mm以上のテーブル又はカウンターとセットで使用できる高さであって、
前記各棒状足は、その下端は平面視において前記座の外側にはみ出て、中途高さ位置は前記ベースよりも大径の足載せリングによって連結されている」
という構成になっている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
前記ベースは円形であって、スラストベアリングを介して前記座が前記ベースに回転自在に取り付けられており、
前記各棒状足の各上水平部は、前記ベースの外周からはみ出ない状態で前記ベースに溶接されている
という構成になっている。請求項2において、棒状足の群は3か所以上の高さで連結してもよい。
【0011】
請求項の発明は、請求項1又は2において、「前記カバーには、背もたれを前記座に取り付けるための開口部が形成されている」という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明のように、棒状足の群の上水平部がベースに溶接されていると、各棒状足が一体化しつつ、座に作用した下向きの荷重は各上水平部に広く分散する。従って、特許文献1,2のような溶接部への荷重の局部集中現象を防止して、脚装置全体として堅牢性を確保できる。また、製造工程に過剰な手間を掛けることなく、高い加工精度も確保できる。更に、上水平部が放射方向に広がっているため、座を水平に保持する機能にも優れており、従って、座が回転式であっても高い品質を確保できる。
【0014】
請求項2の構成を採用すると、各棒状足は上端部と中途高さ部位との上下2か所(複数箇所)の高さで一体的に接合されるため、脚装置全体の堅牢性を格段に向上できる。この場合、棒状足に荷重がかかると各棒状足は外側に広がろうとするが、足載せリングで連結すると、各棒状足の広がりを防止することができる。従って、構造の複雑化することなく堅牢化できる利点がある。
【0015】
美観の点からは棒状足の上水平部をカバーで覆うのが好ましいが、本願発明のように割り方式のカバーを採用すると、棒状足の群によって脚装置を組み立ててからカバーの取り付け・取り外しを行えるため、製造工程での手間を軽減しつつ、カバーの着脱を容易に行える。
【0016】
本願発明のように回転式の座を採用すると、キャスター無しの椅子であっても、人は座を水平回転させることによって姿勢を変更できるため、着座及び離席をごくスムースに行える。従って、使い勝手がよい。また、座を支持する板状のベースが兼用されているため、各上水平部を一体化する機能に優れて、脚装置の堅牢性アップを助長できる。
【0017】
座が回転する椅子において背もたれが着いていると、身体の負担を軽減できる利点や、身体が後ろに行き過ぎることを防止して安全性を確保できる利点があるが、請求項のように、カバーに設けた開口部を介して背もたれを座に取り付ける構成を採用すると、カバーは背もたれを取り付ける仕様と取り付けない仕様とに共用できるため、コストや部材管理の手間を軽減できる利点がある。
【0018】
各特許文献では、放射方向に延びる下水平状部を有しているが、この形態では、座に作用した荷重が下水平状部の付け根部に大きなモーメントとして作用するため、当該付け根部が曲がり易くなる問題があり、そこで、必要な強度を確保するためには棒状足を太くしたり厚肉化したりせねばならず、すると、コストアップや重量増大をもたらすおそれがある。
【0019】
これに対して、棒状足のうち上水平部の下方の部分を真っ直ぐな態様に形成すると、座に作用した下向きの荷重の大半は棒状足に対して軸方向の圧縮力として作用し、曲げ力として作用する割合は低くなるため、棒状足を過剰に太くしたり厚くしたりすることなく必要な強度を確保できる。また、全体としてテーパ状のシンプルな形態であるため、美観においても優れていると云える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハイタイプの第1実施形態を示す図で、(A)は全体の斜視図、(B)は足載せリングを上昇させた状態の斜視図、(C)は分離斜視図である。
図2】(A)は下方から見た部分斜視図、(B)は脚装置の斜視図、(C)は一部分離斜視図である。
図3】座部の部材の配置を示す斜視図である。
図4】座部の部材の配置を示す斜視図である。
図5】カバーを示す図で、(A)は平面図、(B)は上から見た分離斜視図、(C)は下方から見た分離斜視図である。
図6】(A)は図1(A)のVI-VI 視断面図、(B)は背もたれを取り付けていない状態での下方からの部分斜視図である。
図7図1(A)のVII-VII視方向から見た一部破断立面図である。
図8】ロータイプの第2実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は(A)のB-B視拡大部分底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1).第1実施形態の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1~7に示すハイタイプの第1実施形態を説明する。図1(C)から理解できるように、第1実施形態の椅子は、4本の棒状足1より成る脚装置2と、脚装置2の上端に固定された円形のベース3と、ベース3にスラストベアリング装置4を介して回転自在に保持された円形の座5と、座5に背支柱6を介して固定された背もたれ7とを備えている。
【0022】
本実施形態の椅子は、例えば高さが900mm以上あるハイテーブルやハイカウンターとセットで使用できるもので、人は座5に腰掛けた状態で床に足が届かないため、棒状足1の群の中途高さ位置に、足載せ体の一例としての足載せリング8を外側から嵌め込んで、足載せリング8を各棒状足1に溶接によって固定している。以下、各部材の詳細を説明する。
【0023】
図2に明瞭に現されているように、各棒状足1は、丸パイプ製又は中実棒材製であり、各棒状足1の上端1aは、互いに当接又は近接するように座5の回転軸心を囲うように90度間隔で配置されており、各棒状足1は下に向けて外側に広がるように傾斜姿勢で配置されて、下端に接地体9を取り付けている。
【0024】
そして、各棒状足1の上端1aに、放射方向に延びる上水平部1bが曲げ形成されており、上水平部1bの上面に円形のベース3が溶接されている。従って、本実施形態では、ベース3がアッパ連結材を兼用している。なお、厳密には、上水平部1bも棒状足1の一部と云えるので、棒状足1は、傾斜部とその上端に設けた上水平部1bとで構成されているというべきかもしれないが、本願では、棒状足1の上端に上水平部1bが曲げ形成されているという表現を採用している。
例えば図2(A)(C)のとおり、棒状足1の上水平部1aはベース3の外側にははみ出ていない。また、足載せリング8はベース3の外径よりも大径になっている。
【0025】
隣り合った棒状足1の上端1aを溶接によって互いに接合することは可能であるが、本実施形態では、各棒状足1は足載せリング8で補強されているため、上水平部1bをベース3の下面に溶接することにより、脚装置2は全体として必要な強度を確保できる。上水平部1bは2つ割り方式のカバー11で下方から覆われている。この点は後述する。
【0026】
図6(A)に示すように、座5は、下向き開口の凹所13を有する座板14と、その上面及び外周面に重ねたクッション材15と、クッション材15を覆う表皮材16と、凹所13の上底面に配置した基板17とで構成されている。基板17はビス18で座板14に固定されているが、座板14には、ビス18が螺合する鬼目ナット19(図4(B)も参照)を装着している。
【0027】
図3(A)及び図4(C)から理解できるように、スラストベアリング装置4は、ベース3にビス21で固定された下ブラケット20と、基板17にビス22で固定された上ブラケット23と、上下ブラケット20,23の間に介在したリテーナ24と、リテーナ24で保持されたボール(図示せず)の群とで構成されている。上下ブラケット20,23は、平面視正方形の形態を成している。
【0028】
図6(A)に示すように(図1(C)、図3(B)も参照)、上下ブラケット20,23は、両者の中央部に配置されたビス25とナット26とにより、上下離反不能で相対回転自在に保持されている。ナット26と下ブラケット20との間にはワッシャ27が配置されており、ビス25には、上下ブラケット20,23の間隔を保持するためのカラー28が外側から嵌まっている。
【0029】
(2).カバー・背もたれ
カバー11は上向きに開口した浅い椀状の形態であり、例えば図3に示す高ナット30を介して基板17に固定されている。すなわち、1つのカバー11に対して2本の高ナット30が配置されているが、高ナット30は溶接によって基板17に固定されており、カバー11は、これに下方から挿通したビス31(図2(C)、図5参照)を高ナット30にねじ込むことにより、基板17に固定されている。図5(B)に示すように、カバー11には、ビス31の頭を隠すボス32が上向きに突設されている。高ナット30は、ベース3と干渉しないように、ベース3の外周の外側に配置されている。従って、カバー11は、ベース3の外側の箇所において座5の基板17に固定されている。
【0030】
2つのカバー11は同一形状に形成されており、中心穴33を挟んだ一方の部位に、相手のカバー11の上面に重なる長い長さの第1重合片34と、第1重合片34を挟んで両側に位置した第1ピン35とが形成されて、中心穴33を挟んだ他方の部位に、相手のカバー11の上面に重なる短い長さの第2重合片36と、第2重合片36を挟んで両側に位置した第2ピン37とが形成されている。
【0031】
そして、第1重合片34には、相手カバー11の第2ピン37が強制嵌合する第1くびれ溝38が切り開き形成されて、第2重合片36には、相手カバー11の第1ピン35が強制嵌合する第2くびれ溝39が切り開き形成されている。これら重合片34,36の上下の重なりと、ピン35,37とくびれ溝38,39との嵌合により、2つのカバー11は上下方向及び水平方向にガタ付きなく連結されており、その状態で、それぞれ2本ずつのビス31によって高ナット30に固定されている。
【0032】
敢えて述べるまでもないが、2つのカバーを一体的に連結するための係合手段は、様々な構造を採用できる。また、2つのカバー11の重合部をビスで高ナット30等に共締めしてもよい。更に、カバー11は3つ以上に分離してもよい。図2(C)や図5(B)(C)に示すように、各カバー11の下面には、人が椅子を引いたり持ち上げたりするに際して指先を掛けることができる円弧状の凹所40を形成している。
【0033】
例えば図5(B)に示すうに、カバー11の上面(内面)には、中心穴33を囲う円弧状リブ11aが形成されて、外周寄り部位には、放射方向に延びる支持リブ11bの群が周方向に断続的に形成されている。円弧状リブ11aは補強のために設けており、支持リブ11bは、図6(A)から理解できるように、座板14を支持するために設けている。
【0034】
背もたれ7は、例えば図3図6(A)に示すブラケット42を介して基板17に固定されている。図3に示すように、ブラケット42は鋼板製で上向き開口のコ字形に形成されており、側板42aの上端に一対ずつの係合突起43を形成している一方、基板17には、係合突起43が嵌まる係合穴44を形成しており、両者の嵌まり合いによって位置決めした状態で、ブラケット42を基板17に溶接している。
【0035】
そして、図6(A)に示すように(図3(C)、図5(A)も参照)、ブラケット42の底板に3つのナット45を溶接で固定し、背支柱6の前向き部に挿通したビス46をナット45にねじ込むことにより、背支柱6がカバー11を介してブラケット42に固定されている。従って、背支柱6とカバー11とがブラケット42に共締めされている。
【0036】
背もたれ7はオプション品であり、背もたれ7を取り付けない椅子も品揃えとして用意されている。そこで、本実施形態では、背支柱6をカバー11の下面に重ねて固定することにより、背もたれ7を設けた椅子と背もたれ7を設けない椅子とでカバー11を共用している。
【0037】
この場合、カバー11にビス46の挿通穴を予め空けておいてもよいが、本実施形態では、図5(B)から理解できるように、カバー11にはビス挿通穴は空けられておらずに、ビス挿通穴48(図6(B)参照)になる箇所を薄肉部47と成しており、背もたれ7を取り付ける場合は、ドライバビットなどで薄肉部47を突き破るように設定している。図6(B)では、ビス挿通穴48が空いた状態を表示している。
【0038】
このように、背もたれ7の取り付けに際してビス挿通穴48を空ける構造を採用すると、背もたれ7を取り付けないときの美観の悪化を防止しつつ、カバー11を共用できる。薄肉部47に代えて、ビス挿通穴の中心になる凹所等の目印を形成しておいて、ドライバビットを回転させてビス挿通穴を空けることも可能である。
【0039】
(3).足載せリング
足載せリング8は、金属の中実棒材製又は金属パイプ製であり、円形(真円)に形成されている(四角形などの非円形に形成することも可能で)。そして、棒状足1に形成した切欠き部49に足載せリング8部分的に嵌め込むことにより、足載せリング8と棒状足1とを互いに噛み合わせ、その状態で両者を溶接で接合している。
【0040】
このように、足載せリング8を棒状足1と噛み合わせて溶接すると、両者が嵌合して一体化しているため、強固に固定できる。また、足載せリング8に作用した下向きの荷重は棒状足1の切欠き部49で支えられるため、溶接部に負担が掛かることを大幅に抑制できる。この面でも、両者の固定強度を向上できる。なお、溶接に際しての肉盛り代を大きく確保できることによっても、溶接の強度アップに貢献できる。
【0041】
足載せリング8と棒状足1とを噛み合わせるに当たっては、足載せリング8に切欠き部49を形成することも可能であるが、実施形態のように棒状足1に切欠き部49を形成すると、足載せリング8の高さを正確に規定して高い寸法精度を確保できる利点がある。
【0042】
また、足載せリング8は、棒状足1の群に下方から当てて、足載せリング8を棒状足1の群で囲われた形態に配置することも可能であるが、実施形態のように、足載せリング8を棒状足1の群に上から当てて、足載せリング8で棒状足1の群を囲う態様を採用すると、足載せリング8に作用した荷重は、当該足載せリング8を棒状足1に押し付けるように作用するため、溶接の肉盛り量を少なくしつつ高い強度を確保できる。
【0043】
足載せリング8は棒材で製造したが、金属板製や合成樹脂製とすることもできる。図7に一点鎖線で示すように、板状のリング板50を設けてもよい。リング板50は、足載せリング8の内側に延ばすことも可能である。足載せリング8等の足載せ体を上下複数段設けることも可能である。従って、足載せ体の形態や配置位置は、必要に応じて任意に設定できる。
【0044】
(4).第1実施形態のまとめ
本実施形態において、ベース3は各棒状足1の上水平部1bに固定されているため、 ベース3と上水平部1bとの溶接箇所に荷重が集中する現象は皆無であり、脚装置2は棒材製でありながら堅牢な構造になる。
【0045】
特に、本実施形態では、足載せリング8が棒状足1の群を一体化するロア連結材としても機能しており、棒状足1の群は上下2か所で互いに連結(接合)されているため、真上からの荷重に対する抵抗はもとより、斜め方向からの荷重やねじりの荷重に対しても極めて大きな抵抗を発揮する。従って、パイプ材や棒材で作られた脚装置2でありながら、極めて堅牢な構造を実現できる。
【0046】
また、上水平部1bは放射方向に広がっているため、製造工程で手間をかけることなくベース3を水平姿勢に保持できる。従って、スラストベアリング装置4を安定的に支持して、座5の回転をスムース化できる。更に述べると、本実施形態のスラストベアリング装置4は直径が大きくて座5の姿勢安定性に優れているが、上水平部1bが外向きに広がっていることによって外径が大きいベース3を採用できるため、外径が大きいスラストベアリング装置4を使用できて、高い品質を確保できる。
【0047】
ベース3は、各上水平部1bにビス止めしたりリベット止めしたりすることも可能であるが、実施形態のように溶接によって固定すると、固定強度と信頼性とに優れている。この場合、上記したように溶接箇所に荷重が集中することはないため、過剰な肉盛り不要であり、それだけ溶接の手間を軽減できる。
【0048】
さて、座5に作用した下向きの荷重は、棒状足1を軸心方向に圧縮する分力と、棒状足1を曲げる分力とに分かれるが、本実施形態のように棒状足1を真っ直ぐな姿勢に形成すると、特定の部位に曲げ力が集中することは無くて、全体に均等な曲げ力が作用する。そして、鉛直線に対する棒状足1の傾斜姿勢は20数度であって小さいため、荷重の大部分は棒状足1を軸方向に押す圧縮荷重(座屈荷重)として作用するが、圧縮強度は曲げ強度よりも遥かに大きいため、棒状足1を過剰に太くすることなく、脚装置2を堅牢な構造にすることができる。
【0049】
なお、座5が回転式でない場合は、カバー11はベース3に固定してもよい。また、座5が回転しない椅子の場合は、ベース3を座板に兼用することも可能である。アッパ連結材にベース3を兼用させると、それだけ構造を簡素化できる。
【0050】
(5).他の実施形態・その他
図8では、人が床に足を着けて使用するロータイプに適用した第2実施形態を表示している。この椅子は、背もたれは備えずに座5は回転式になっている。従って、座部の内部構造は第1実施形態と同じである。
【0051】
この第2実施形態では、第1実施形態の足載せリング8は使用しないため、ロア連結材として、各棒状足1の水平上部1bに下方から重なるスペーサ板52を使用しており、スペーサ板52と各棒状足1とを溶接している。スペーサ板52には、棒状足1の上部1cが嵌合する切欠き53を形成しており、この切欠き53によって各棒状足1の位置も規定している。
【0052】
図8(B)に一点鎖線で示すように、スペーサ板52は、棒状足1の中途高さ部位に溶接することも可能であるが、美観の点からはなるべく上部に配置するのが好ましい(強度の点からは、なるべく下に配置するのが好ましい。)。棒状足1の下端に補強リングを溶接して、補強リングを直接に又は樹脂製接地体を介して接地させることも可能である。
【0053】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、棒状足1は3本又は5本以上であってもよい。また、各棒状足は真っ直ぐな形態である必要性はないのであり、曲がった形態も採用できる。例えば、各棒状足を外向きに膨れた形態と成して、脚装置を全体として釣り鐘形に形成けることができる。或いは、各棒状足を、外向きに反った弓形又は内向きに反った弓形に形成することも可能である。更に、鉛直部と下水平部とからなるL形に形成することも可能である。足載せ体を設ける場合、高さ調節できるタイプも採用できる。
【0054】
アッパ連結材としては必ずしもベースを利用する必要はないのであり、アッパ連結材を丸棒等でリング状に形成し、これを各上水平部の下面や先端面に重ねて溶接等することも可能である。アッパ連結材及びロア連結材は、隣り合った棒状足を繋ぐブリッジ状の形態であってもよい(従って、連結材は複数に分離していてもよい。)。 実施形態では、各上水平部は放射方向に延びていたが、隣り合った上水平部が互いに当接するように非直線状に形成し、隣り合った上水平部同士を溶接することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は、棒脚タイプの椅子に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 棒状足
1a 上端
1b 上水平部
1c 上部
2 脚装置
3 アッパ連結材を兼用するベース
4 スラストベアリング装置
5 座
7 背もたれ
8 ロア連結材を兼用する足載せリング
11 カバー
14 座板
17 座を構成する基板
33 中心穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8