(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】触媒化ガソリン微粒子フィルターおよびこれを利用した微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/035 20060101AFI20241118BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241118BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241118BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20241118BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20241118BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B01J29/035 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 241
F01N3/10 A
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301B
(21)【出願番号】P 2020174873
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】城取 万陽
(72)【発明者】
【氏名】近野 優里
(72)【発明者】
【氏名】高木 由紀夫
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148147(JP,A)
【文献】特表2018-534230(JP,A)
【文献】特表2012-518753(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 29/00-29/90
B01J 35/00-35/80
C01B 37/02、39/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォールフロー型ハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒組成物を被覆した触媒組成物層が形成された触媒化ガソリン微粒子フィルターであって、
触媒組成物中に柱形の無機酸化物粒子が含まれ
、柱形の無機酸化物粒子のアスペクト比が4~50であり、長さが10~500μmである、
ことを特徴とする触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項2】
ウォールフロー型ハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒組成物を被覆した触媒組成物層が形成された触媒化ガソリン微粒子フィルターであって、
柱形の無機酸化物粒子を構成する無機酸化物がMFI型ゼオライトであり、MFIを構成するケイ素、アルミニウム元素の酸化物換算のモル比(SAR:シリカ/アルミナ換算のモル比)が200以上である、
ことを特徴とする触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項3】
柱形が角柱である請求項1または2記載の触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項4】
セルの隔壁上に存在する柱形の無機酸化物の量がセルの隔壁中に存在する柱形の無機酸化物の量より多いものである請求項1
または2に記載の触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項5】
触媒組成物が、更に、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群から選ばれる貴金属の少なくとも一つを含むものである請求項1
または2に記載の触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項6】
ウォールフロー型ハニカム構造体を構成するセルの隔壁上に、更に、柱形の無機酸化物粒子を含む触媒組成物を被覆した
触媒組成物層とは別
に、貴金属を担持した担体を触媒組成物層
として積層したものである請求項
5記載の触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項7】
貴金属を担持した担体が粒状無機酸化物であり、アスペクト比が3未満である請求項
6記載の触媒化ガソリン微粒子フィルター。
【請求項8】
排ガス流中に請求項1
または2に記載の触媒化ガソリン微粒子フィルターを配置して微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法。
【請求項9】
排ガスの空間速度が100,000/h以上である排ガス流中に請求項1
または2に記載の触媒化ガソリン微粒子フィルターを配置して微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法。
【請求項10】
排ガス流中に請求項1
または2に記載の触媒化ガソリン微粒子フィルターに加え、触媒化ガソリン微粒子フィルターよりも含まれる貴金属量が多いフロースルー型ハニカム触媒を配置する排ガスを浄化する装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン自動車等から排出される排ガスの流路中に配置され、燃料由来の微粒子成分を含む排ガス中の有害成分を浄化するための触媒化した触媒化ガソリン微粒子フィルターに関するものであり、触媒の配置により排ガスの流通抵抗(圧力損失、圧損)が増える事を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや軽油を燃料として使用する内燃機関は自動車用原動機として使用されている。このような内燃機関からは、燃料の燃焼によって未燃焼の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等の有害成分や環境負荷物質を含む排ガスが排出される。このような排ガス中の有害成分や環境負荷物質は、触媒を使用して浄化したうえで大気中に排出される手法が普及している。この様な触媒としてはハニカム形状の構造担体を触媒化したハニカム触媒が採用されている。
【0003】
近年、排ガス中の有害成分や環境負荷物質としてガソリン自動車の排ガスに含まれる微粒子成分の存在が注目されている。この微粒子成分は、主に未燃焼の燃料に由来する煤(soot)や炭化水素である可溶性有機成分(SOF:Soluble Organic Fraction)から組成されている(非特許文献1)。以下、このような可溶性有機成分を含む粒子を本発明では煤成分ということがある。
【0004】
煤成分自体は従来から存在しており、ディーゼル自動車ではフィルター化した触媒を使用して排ガス中から濾し取っているが、近年はガソリン自動車でもその増加が懸念されている。近年のガソリン自動車では燃費向上を図る事を主な目的として燃焼室内に霧化したガソリンを直接噴霧する直噴型の燃料供給システムが普及している。霧化されたガソリンは粒子状であり燃焼までの間に完全に気化することは難しく、燃焼室内に供給されたガソリンの一部は粒子の状態のままエンジンは燃焼サイクルに移行する。ここで、粒子状態のガソリンは完全に燃焼できず、燃焼サイクルを経過して排管に排出される際には燃え残りの煤、炭化水素成分、あるいはそれらの混合物が煤成分粒子を構成し、何ら浄化操作を行わない限り大気中にそのまま排出されてしまう。
【0005】
ガソリン自動車排ガス中の煤成分の浄化でもディーゼル自動車の排ガス同様に、触媒化したフィルターに排ガスを通過させることで排ガス中の煤成分を濾し取り、大気中への煤の排出を抑制しており、そのような触媒化フィルターに関する技術も数多く提案されている(特許文献1)。濾し取られた煤成分は触媒化したフィルターに捕集され、排ガスの熱や触媒の反応熱、燃料の供給の助けを借りて燃焼除去される。このようなフィルターに捕集された煤成分の燃焼除去を触媒化フィルターの再生ということがある。本発明では煤成分の捕集と再生を合わせて煤成分の浄化ということがある。
【0006】
排ガス中の煤成分の浄化はディーゼル自動車においても従来から行われているが、ガソリン自動車における触媒化フィルターの使用にあたっては特有の問題がある。排ガスの浄化に使用される触媒は、ハニカム構造体に触媒組成物を被覆した触媒化したハニカム構造体が使用される。触媒化したハニカム構造体は排ガスの流れ中に配置されるが、ハニカム構造体の存在は排ガスの流れにとっては流通抵抗となる。このような排ガスの流通抵抗は圧力損失あるいは短縮して圧損とも言われ、エンジン出力の低下要因の一つとされている。
【0007】
ディーゼル自動車ではピストンによって圧縮加熱した空気に燃料としての軽油を噴射することで着火させ、その爆発時の圧力増加を燃焼室内のピストンが受け止め、クランク、コンロッド等を介して車両の駆動力に変えている。このような圧縮着火という方式を採用するディーゼルエンジンでは燃焼室内での空気の圧縮比は大きなものとなり、この大きな圧縮比が負荷となってエンジンの回転速度が比較的遅くなり、トラックやバス等の大型のエンジンでは特に顕著なものとなる。この様な低回転のエンジンから排出される排ガスの速度は遅く、触媒化したハニカム構造体の配置による圧力損失の影響はあっても、触媒の大型化による容量の増加等の手段をもって著しい圧力損失の増加は抑制する事もできた。
【0008】
これに対してガソリン自動車では、燃料であるガソリンは空気と混合された状態で圧縮されるものの、燃焼室内での着火は点火装置であるスパークプラグからの火花をもっておこなわれる。そのため、ディーゼルのように圧縮圧力による昇温を必要とせず、圧縮比もディーゼルエンジンに比べて小さなものとなる。圧縮比が小さいエンジンは負荷が少なく高回転で稼働することが可能である。エンジンを高回転で稼働させることが出来れば高い出力が得られ易い。そのため、車両設計においてもディーゼル車両に比べて小型のエンジンを採用でき、車両の軽量化、エンジンルームの省スペース化が可能になる。
【0009】
一方で、高回転で稼働するエンジンから排出される排ガスはその流速も速いものとなる。そのため、ガソリン自動車の排ガスの流速はディーゼル自動車の流速よりも早くなる。この様な流速の速い排ガスの流れ中に触媒化したハニカム構造体を配置した場合、圧力損失は大きなものになってしまう懸念がある。圧力損失はエンジン出力の低下要因の一つである事は前述のとおりであり、そのままであると折角小型で高出力が期待できるエンジンを搭載しても所定の出力が得られ難くなり、充分な出力が得られないエンジンを搭載した自動車ではその商品価値を下げてしまう事にもなる。
【0010】
このようなガソリン自動車の排ガスにおける圧力損失増加は、排ガス流れ中に配置する触媒がフィルタータイプのハニカム構造体を触媒化したものであると特に懸念される問題である。
【0011】
フィルタータイプのハニカム構造体はウォールフロー型ハニカム構造体とも言われる。ウォールフロー型ハニカム構造体はハニカム構造体を構成するセルの一方の開口部を目封じ(plug)し、これをハニカム構造体の両端面に交互に配置したもので、セルを構成する壁が通気性を有することで、ハニカム構造体の一方の端面から流入した排ガスセルの壁を通過して流出することになり、このようなウォールフロー型ハニカム構造体を触媒化することで、排ガス中の有害成分や環境負荷物質を浄化できると共に、排ガス中の煤成分を濾し取り浄化する事が可能になる。
【0012】
このようなフィルター構造を有するウォールフロー型ハニカム構造体とは別に、排ガス用触媒にはフロースルー型ハニカム構造体も使用されている。フロースルー型ハニカム構造体の構造的な特徴はウォールフロー型ハニカム構造体における目封じ(plug)を持たない事にある。そのため、フロースルー型ハニカム構造体は圧力損失の少ないハニカム構造体と言われている。
【0013】
ウォールフロー型ハニカム構造体はフィルターという機能を有する為、フロースルー型ハニカム構造体に比べて圧力損失が大きくなり易いハニカム構造体といえる。更に、実際の排ガス触媒として使用する場合には、ウォールフロー型ハニカム構造体に触媒組成物が被覆されるが、触媒組成物はセルの壁の中や表面に被覆されることから、多孔質なセル隔壁における通気性を阻害してしまい、圧力損失の懸念はより大きなものとなる。
【0014】
このようなガソリン自動車から排出される排ガスに含まれる煤成分の浄化に使用される触媒化したウォールフロー型ハニカム構造体(以下、触媒化ガソリン微粒子フィルター、あるいはGPF:Gasoline Particulate Filterということがある)による圧力損失の増大懸念を解決するためにはGPFに被覆する触媒量を減らす事が考えられるが、触媒量を減らし過ぎると排ガス浄化触媒としての浄化能力そのものの低下に繋がり易い。また、ハニカム構造体に被覆される触媒量の減少は、GPFにおいてはフィルターとして機能するセル壁における通気性の孔を大きなものにして煤成分を濾し取る能力(以下、捕集ということがある)を低下させてしまう事が有る。
【0015】
また、触媒組成物は一般的に無機微粒子担体上に活性種であるPt、Pd、Rh等の貴金属成分を分散担持させたものであるが、触媒量が少ないということは媒質である無機微粒子担体の量が少なくなることで、必然、貴金属成分濃度が高くなり、貴金属成分を高分散に担持する事が難しくなる。高分散に担持されていない貴金属成分は、無機微粒子担体上で粗大な粒子を形成し易い。粗大化した粒子はその表面性を減少させてしまう。触媒反応における活性種の表面積の減少は反応場の減少でもあり触媒として低活性なものになってしまい易い。この様に、触媒量の減少は触媒としての本来求められる性能すらも充分に発揮する事が困難な状態を生むことにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【非特許文献】
【0017】
【文献】「直噴ガソリン車から排出されるPMおよびPAH排出挙動について」,交通安全環境研究所報告 第16号,2012年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この様に、GPFに被覆する触媒組成物の量と様々な浄化性能、特に煤成分の捕集能力と圧力損失の間には密接で相矛盾する課題を有する関係があり、充分な触媒量を被覆しつつ圧力損失も少ないGPFが必要とされている。
【0019】
従って、本発明は、充分な触媒量を被覆しつつ圧力損失も少ないGPFおよびそれを利用した微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、GPFのセルの隔壁に、特定の形状の無機酸化物粒子を含む触媒組成物を被覆することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
すなわち、本発明は、ウォールフロー型ハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒組成物を被覆した触媒組成物層が形成された触媒化ガソリン微粒子フィルターであって、
触媒組成物中に柱形の無機酸化物粒子が含まれることを特徴とする触媒化ガソリン微粒子フィルターである。
【0022】
また、本発明は、排ガス流中に上記触媒化ガソリン微粒子フィルターを配置して微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法である。
【0023】
更に、本発明は、排ガス流中に上記触媒化ガソリン微粒子フィルターに加え、触媒化ガソリン微粒子フィルターよりも含まれる貴金属量が多いフロースルー型ハニカム触媒を配置する排ガスを浄化する装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高い煤成分の捕集能力を発揮しながらも、著しい圧力損失を招くこと無いGPFを得ることができる。
【0025】
そして、このGPFを利用した微粒子成分を含む排ガスを浄化する方法は、効率よく燃料由来の微粒子成分を含む排ガス中の有害成分を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体Aの走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察画像である。
【
図2】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体BのSEMによる観察画像である。
【
図3】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体CのSEMによる観察画像である。
【
図4】ウォーフロー型ハニカム構造体を構成する最小単位であるplugと多孔質なセル隔壁を排ガスの流れ方向を示す矢印と共に表した模式図である。
【
図5】参考例、実施例、比較例に関する触媒の担持量、触媒層の被覆長さを、触媒層の構成の模式図と共に表している。
【
図6】触媒組成物スラリー1のSEMによる観察画像である。
【
図7】触媒組成物スラリー2のSEMによる観察画像である。
【
図8】触媒組成物スラリー3のSEMによる観察画像である。
【
図9】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体AのX線回折(XRD:X‐ray diffraction)結果である。
【
図10】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体BのX線回折(XRD:X‐ray diffraction)結果である。
【
図11】本発明の柱形の無機酸化物粒子である粉体CのX線回折(XRD:X‐ray diffraction)結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[触媒化ガソリン微粒子フィルター]
本発明の触媒化ガソリン微粒子フィルター(以下、「本発明のGPF」という事もある)は、ウォールフロー型ハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒組成物を被覆した触媒組成物層が形成されたものであって、触媒組成物中に柱形の無機酸化物粒子が含まれるものである。
【0028】
[ウォールフロー型ハニカム構造体:構造]
本発明のGPFに使用されるウォールフロー型ハニカム構造体自体は自動車排ガス浄化触媒分野では広く普及しているもので、その基本的な構成は背景技術にも記載したとおり、通気性のある多孔質な壁により構成されたセルと、セルにおける排ガスの入口側開口部または出口側開口部の一方は目封じ(以下、「plug」という事が有る)され、このセルが他のセルと壁を共有する形で円柱状、楕円柱状に集積してハニカム構造体を構成し、ハニカム構造体における排ガスの入口側端面、出口側端面ではセルの目封じ部が交互に配置されていることで、幾何学的に大きな表面積を有するフィルターとして機能するものである。本発明に使用されるウォールフロー型ハニカム構造体は特に限定されるものではなく、市場に供給されているGPF用のウォールフロー型ハニカム構造体の中から適宜選択して採用すれば良い。
【0029】
[ウォールフロー型ハニカム構造体:材質]
GPF用のウォールフロー型ハニカム構造体の材質は、多孔質で通気可能なセル隔壁を構成可能であるものなら特に限定されるものでは無く、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、ゼオライト等の無機酸化物やコージェライト等の天然鉱物由来の無機酸化物を多孔質に成形したもので有れば良い。また、このような無機酸化物は一種類の材質で構成されていても良く、これらを複数混合したものであっても良い。
【0030】
[ウォールフロー型ハニカム構造体:多孔性]
本発明のGPFに使用されるウォールフロー型ハニカム構造体は、前記の無機酸化物によってセル隔壁が通気可能な多孔質に成形されているものである。このような多孔質な状態は特に限定されるものでは無いが、細孔容積、平均細孔径、細孔容積率を持って特定する事ができる。
【0031】
例えば、コージェライト製のウォールフロー型ハニカム構造体の場合、水銀圧入法により圧入圧力400MPaで測定し得られた細孔容積は、0.3~1.6 ml/gであることが好ましく、0.8~1.6 ml/gであることがより好ましく、1.0~1.6 ml/gである事が最も好ましい。同様に水銀圧入法により圧入圧力400MPaで測定し得られた平均細孔径(D50)は、10~25μmである事が好ましく、15~25μmであることがより好ましい。
【0032】
ハニカム構造体の細孔容積率とは、セルの隔壁と外皮部分の厚みと長さ、セルの密度から求められる多孔質体の幾何学的な体積において細孔容積が占める割合を意味するものであり、50~80%が好ましく、60~80%がより好ましく、60~70%が最も好ましい。
【0033】
[ウォールフロー型ハニカム構造体:セル、並びにセル密度]
ハニカム構造体のセルの形状(断面形状)には三角、四角、六角等がある。ウォールフロー型ハニカム構造の場合、自動車への実装時の衝撃に耐えうる強度とフィルターとして高い幾何学的面積が両立することが望ましいことから通常四角セルが採用される事が多い。ハニカム構造体はこのようなセルの形状と共に、セルの大きさ、セル壁の厚さ、単位面積あたりセルの数(セル密度)をもって特定される事が多い。
【0034】
本発明のGPFに使用されるウォールフロー型ハニカム構造体に四角セルを採用する場合、このようなセルの大きさ、セル隔壁の厚さ、単位面積あたりセルの数(セル密度)等は特に限定されるものではないが、セル形状が正方形の場合、その一辺の長さが0.8~2.5mmである事が好ましい。セル隔壁の厚みは1~18mil(0.025~0.47mm)が好ましく、6~12mil(0.16~0.32mm)がより好ましい。ここでmilはミリインチを表す。また、セル密度は100~1200セル/inch2(15.5~186セル/cm2)が好ましく、150~600セル/inch2(23~93セル/cm2)がより好ましく、200~400セル/inch2(31~62セル/cm2)である事が更に好ましい。
【0035】
<触媒組成物>
[柱形の無機酸化物粒子]
本発明のGPFに使用される柱形の無機酸化物粒子(以下、「柱形無機酸化物粒子」ということもある)は特に限定されるものでは無いが、粒子の長さとしては10~500μmである事が好ましく、20~100μmである事がより好ましい。また、このような柱形は粒子のアスペクト比として表すこともできる。本発明に使用される柱形無機酸化物粒子のアスペクト比としては4~50である事が好ましく、4~20である事がより好ましい。本発明のGPFにおいてこのような縦長の無機酸化物粒子を使用することで煤成分の捕集性能の向上と圧力損失の抑制が両立できる理由は定かでは無いが、所定の長さの柱形無機酸化物粒子がウォールフロー型ハニカム構造体の排ガスの流入側のセル隔壁上に層状に形成された場合には網目状の触媒層が形成され、その網目状の隙間が煤成分を捕集するとともに排ガスの気流の通過を促し、アスペクト比3未満の球状粒子と混合して使用した場合には触媒層を嵩高くして空隙を増やす事ができ、煤成分の捕集性能の向上と気流の透過性が向上するのではないかと考えられる。このことは一見すると柱形粒子の長さについては上限が無い様にも思われるが、ウォールフロー型ハニカム構造体における一つのセルの開口面は狭く、長すぎる粒子はセル内に供給し難いことから産業用途としては好ましくない場合がある。また、柱形無機酸化物粒子の太さについては細過ぎると機械的な強度が不足する恐れがあり、排ガスの流圧や、前述のような触媒の被覆工程で粒形が破壊されてしまう懸念がある。そのため、柱形の幅(長辺の長さ)としては1~20μmである事が好ましく、5~15μmであることがより好ましい。また厚みとしては、1~20μmである事が好ましく、1~10μmであることがより好ましい。なお、柱形無機酸化物粒子が高SARなMFI型ゼオライトである場合、粒子の幅は六角形の平面における幅のことで、厚みは四角形の平面の幅のことを指す。
【0036】
本発明の本発明の柱形無機酸化物粒子のおける前記の幅と厚みの関係は特に限定されるものでは無いが、幅が0.5~5μmの場合、[幅/厚み]は1.5~5が好ましく、2~4である事がより好ましい。柱形無機酸化物粒子が薄い事で、同じ重量の柱形無機酸化物粒子を使用した場合に粒子同士の間の隙間の数が多くなる。これをフィルターとして見た場合、単位重量あたりの網目の数が多いことになり、GPFに使用した際の煤成分の捕集能力の向上が見込まれる。また、適切な厚みを有する事で機械的な強度が保たれ、スラリー化やウォールフロー型ハニカム構造体への被覆にあたっても柱形無機酸化物粒子の形状を保ちやすい。
【0037】
[柱形無機酸化物粒子:形状]
本発明のGPFに使用される柱形無機酸化物粒子の形状は特に限定されるものでは無いが角柱が好ましく、高SARなMFI型ゼオライトの場合には底面の六角形の平行な2辺が他の4辺よりも長い柱形である事がより好ましい。なお、このような六角柱形における底面は正確に六角形である必要は無く、対抗する鋭角な角部が一部欠けた厳密には8角形の底面形状で有っても良い。
【0038】
ここで角柱は角部と平面から構成されるものであるが、本発明のGPFにおける触媒層においてこのような角柱が角部と角部、また、角部と平面が重なりあう事で多量の空隙が形成され、この空隙が煤成分の捕集を促進し、圧力損失の著しい増加を抑制すると考えられる。
【0039】
また、角柱には多様な多角柱が存在するが、本発明のGPFに使用される柱形無機酸化物粒子としては、柱形無機酸化物粒子が積層することで形成されるであろう空隙量と、自動車用排ガス触媒材料として使用されたときに柱形無機酸化物粒子にかかる多様な応力に対する強度の点から、角柱の長辺断面は四角形であることが好ましい。
【0040】
[四角柱形が優れる理由:応力]
角柱が三角柱、四角柱、円柱の場合で考えてみると、柱体側面から力が掛かった場合、三角柱であると力が三角形の2辺に均等に分散し、更に三角形の底辺にあたる面がその分散した力を水平な反対方向の力として釣り合わせることができ、強度的に有利な形状である。一方で円柱では力が掛かったのとは反対側の一点に力が集中してしまい、集中した点をきっかけに破壊し易い場合がある。四角柱形の場合は三角柱よりは弱いが円柱よりは強い事になる。
【0041】
また、柱体底面から力が掛かった場合、円柱であると円に掛かった力は円周全体に均等に分散される。これに対して三角柱では力の掛かり方が角部に集中して分散するため、このような場合は三角柱であると破壊し易い。四角柱形の場合は円柱よりは弱いが三角柱よりは強い事になる。
【0042】
[角柱形が優れる理由:煤成分の吸着]
本発明のGPFでは煤成分の捕集性能に優れる事に加えて圧力損失も少ない事を特徴としている。煤成分の捕集性能に優れるという事は多量の煤成分が触媒層を形成したGPFのセル隔壁に捕集されている状態であるが、多量の煤成分の捕集はセル隔壁の空隙量を減少させてしまう事でもある。
【0043】
また、煤成分は捕集された状態によっても圧力損失を増加させると考えられる。圧力損失を増加させてしまうような捕集状態とは、捕集された煤成分が触媒層を形成したGPFのセル隔壁において局所的に緻密に堆積してしまうような状態が考えられる。
【0044】
本発明のGPFが多量の煤成分を捕集しても圧力損失が増加し難い理由は、このような緻密化した煤成分層が形成され難い状態、すなわち捕集されていても煤成分は触媒層を形成したGPFのセル隔壁内に高分散な状態で捕集される為ではないかと考えられる。
【0045】
この様に高分散に煤成分を捕集するためには、平面を持つ角柱状の柱形無機酸化物粒子であることが好ましいものと思われる。ここで平面とは円柱の側面のような曲面のことではなく、同一直線上にない三点を通るような面の事をいう。ガソリンエンジンから排出される煤成分は霧状に噴霧された燃料の燃え残りでもあることから球形に近い形状を有している。このような球体が吸着した面の形状における安定性を考えたとき、曲面よりも平面の方が粒子の吸着状態は安定であると考えられる。そのため、柱形無機酸化物粒子が角柱であれば煤成分を高分散な状態で安定して捕捉することが可能になり緻密化した煤成分層のような圧力損失の増加が抑制され易いものと考えられる。
【0046】
[柱形無機酸化物の材質]
本発明のGPFに使用される柱形無機酸化物を構成する成分は特に限定されるものでは無く、排ガス触媒分野において耐熱性材料としている成分であれば良い。このような耐熱性成分としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、あるいはこれらの複合酸化物やゼオライト等が挙げられる。
【0047】
[柱形無機酸化物の材質:ゼオライト]
このような耐熱性材料うちゼオライトはその骨格構造の違いより様々な種類が存在し、それらは国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)によりアルファベット3文字のコードで特定されている。また、現在に至るまで排ガス浄化触媒成分としても様々な種類のゼオライトの使用が提案されており実際に使用もされている。このようなゼオライトの例としては、MFI、BEA、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON等が挙げられ、本発明のGPFにおいても柱形の形状を取る限りこのようなゼオライトを使用することができる。
【0048】
このようなゼオライトの内、本発明にはMFI型ゼオライトを使用する事が好ましい。MFI型ゼオライトは最も市場に普及しているゼオライトの一つであり、耐久性に優れ安価に入手することが可能で産業用の触媒材料としても優れている。なお、MFI型ゼオライトかどうかは、例えば、国際ゼオライト学会 (IZA:International Zeolite Association)によって公開されているX線回折パターンとの整合をみることにより確認することができる。
【0049】
ゼオライトはアルミノケイ酸塩からなるミクロ多孔性な骨格構造を持つもので、構造中のケイ素とアルミニウムについてその組成比を酸化物換算で表したものをSAR(SiO2/Al2O3:Silica Alumina Ratio)という。SARが大きなゼオライト、すなわち骨格構造中のアルミニウム原子の量が少ないゼオライトは脱アルミの影響が少なく、水熱耐久性に優れるとされておりMFI型ゼオライトにおいても同様である。
【0050】
GPFはガソリン自動車排ガス中に配置されるが、ガソリンは言うまでも無く炭化水素から構成されており、排ガス中には炭化水素の燃焼により生じた水分が多量に含まれる。また、ガソリンの燃焼において発生する熱も高温であり、GPFにゼオライトを使用する場合には水熱耐久性に優れたゼオライトを使用する事が望ましく、MFI型ゼオライトにおいても同様である。
【0051】
本発明のGPFに使用する柱形無機酸化物粒子としてMFI型ゼオライトを選択する場合、SARは200以上である事が好ましく、500以上であることが好ましく、900以上である事がより好ましい。特にSARが900以上のMFI型ゼオライトはシリカライト-1(Silicalite-1)として知られている。
【0052】
シリカライト-1に代表される高SARなMFI型ゼオライトは疎水性が高く、ゼオライトにおける吸着作用の点でいえば、非極性な分子の吸着能力に優れているといえる。このような非極性分子には多くの炭化水素が含まれ、炭化水素成分で構成されるガソリンは多くの非極性成分が含まれているといえる。煤成分にはSOFとして燃料であるガソリン由来の炭化水素成分が含まれることは前述のとおりである。疎水性のゼオライトであるシリカライト-1に代表される高SARなMFI型ゼオライトであれば煤成分中の炭化水素成分を吸着することで結果的に煤成分そのものを強く吸着(捕集)して触媒層中での分散性が増し、煤成分の局所的な緻密化による圧力損失の増加が抑制されるのではないかとも考えられる。
【0053】
[外表面積]
このようなゼオライトは高い比表面積を有することが知られている。本発明の実施例でも、300m2/gを超える値を持つ高SARなMFI型ゼオライトについて開示している。このような比表面積値に加え、ゼオライトの結晶外表面の有効表面積の大きさを外表面積として表す事がある。この結晶外表面積は、窒素吸着法による比表面積測定におけるt-plot解析法により求められる。本発明におけるMFI型ゼオライトの外表面積は特に限定されるものでは無いが、0.1~20m2/gであることが好ましく、0.1~10m2/gである事がより好ましい。外表面積の大きさは一次粒子である結晶サイズの大きさと相関を有し、その値が小さいことは、ゼオライトとして結晶化が促進したもので化学的に安定な粒子である事も表す。このような外表面積の小さなMFI型ゼオライトを使用することで、自動車排ガス浄化触媒の様にゼオライトにとって過酷な水熱環境下にであっても、水熱劣化による脱アルミニウムの影響が少ない、耐久性に優れた触媒を得ることができる。
【0054】
[主たる活性種]
本発明のGPFに使用される触媒組成物には、上記した必須成分である柱形無機酸化物粒子の他に、更に、三元触媒(TWC:Three Way Catalyst)として提案されている多様な触媒成分を使用することが可能である。TWCは排ガス中の有害物質、環境負荷物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する目的で使用されるもので、HC、COは酸化反応により浄化し、NOxは排ガス中の還元成分であるHC、COあるいはこれらの誘導体を利用した還元反応により浄化するものである。また、近年ではガソリン自動車排ガスの還元浄化でもディーゼル自動車同様に尿素を還元成分原料として排ガス中に供給する事も検討されており、この場合、触媒成分としては銅や鉄等で修飾されたCHA、AEI、AFX、MFI、BEA、FAU等のゼオライトが使用されることがある。本発明のGPFでもこのような還元触媒が使用されても良い。
【0055】
TWCにおける主たる活性種は白金(Pt)、パラジウム(Pd)およびロジウム(Rh)からなる群から選ばれる貴金属の少なくとも一つである。TWCにおいては、これら三種の貴金属を併用する事が一般的であるが、主たる活性種としてPdとRhのみを組み合わせたり、主たる活性種としてPdのみを使用する事もある。
【0056】
上記貴金属は言うまでも無く高価で希少な資源であり、自動車触媒のような産業用途においては有効利用される必要があることは言うまでもない。そのため、これら貴金属は高比表面積値を持つ耐熱性の無機酸化物粒子上に分散担持される。分散担持することにより貴金属成分は微粒子な状態になり、微粒子であることで貴金属成分の単位重量あたりの表面積が大きなものになる。触媒反応は主に活性種の表面で促進することから、表面積が大きくあることは反応が促進され高活性な触媒が得られることになる。このように貴金属成分を高分散に担持する手法は特に限定されず、基本的には貴金属塩水溶液を担体である無機酸化物粒子に含侵担持する事による。このような担持手法は古くから数多く提案され実用もされており、本発明のGPFの製造においてもこれらを選択的に採用することができる。
【0057】
[無機酸化物担体]
TWCにおいて貴金属の担体に使用される無機酸化物担体も特に限定されるものでは無く、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、ゼオライト、またはこれらの少なくとも一つを含む複合酸化物を選択的、または組み合わせて使用することができ、本発明のGPFにおいても同様である。また、このような担体として後述する本発明の柱形の無機酸化物粒子も使用可能である。
【0058】
[その他活性成分]
TWCにおいては上記のような貴金属と無機酸化物担体の他、各種助触媒成分も併せて使用することができる。この様な助触媒成分についても従来から多様な成分が提案されており実施もされている。その一例を挙げると、触媒表面における排ガスの酸素濃度を触媒反応に適した領域に調整するために使用されるセリアやセリウム-ジルコニウム複合酸化物等の酸素吸蔵材(OSC:Oxygen Storage Component) 、NOxを還元可能な雰囲気になるまで吸着貯蔵する為に使用される酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム等のNOx吸蔵材(LNT:Lean NOx Trap)、排ガス中のHC成分を一時的に吸着するためのHC吸蔵材(HC trap)等が挙げられ、本発明のGPFにおいても使用することができる。
【0059】
[触媒組成物の被覆方法]
本発明のGPFの製法、すなわちウォールフロー型ハニカム構造体に柱状無機酸化物粒子を含む触媒組成物セルの隔壁に被覆する方法は特に限定されず、従来、ウォールフロー型ハニカム構造体に触媒組成物を被覆する方法を採用することができる。このような触媒組成物への被覆方法としてはウオッシュコート法とパウダーコート法が知られている。
【0060】
[触媒の被覆方法:ウオッシュコート法]
ウオッシュコート法は、スラリー化した触媒組成物を使用するもので、このスラリーをウォールフロー型ハニカム構造体に浸漬等により所望の位置まで供給し、必要に応じてエアブロー等で余分なスラリーを除去することで、セルの隔壁に触媒組成物を被覆するものである。触媒組成物を含むスラリーで被覆されたウォールフロー型ハニカム構造体は焼成等の処理を施し、セル隔壁への触媒組成物の定着を図っても良い。
【0061】
上記スラリーは、適切な量の触媒組成物と水等の溶媒を必要に応じて撹拌、混合して調製すればよい。また、スラリーの粘度は、例えば、界面活性剤や増粘剤等を使用して調整しても良い。また、スラリーには必要に応じてpH調整剤としての酸やアルカリ等を含ませても良い。
【0062】
[触媒の被覆方法:パウダーコート法]
パウダーコート法はDE4225970C1や特開2012-157855の様に古くから現在に至るまで様々な仕様が提案されている。パウダーコートの原理は、触媒組成物として粉体を使用するもので、この触媒組成物粉体を気流(陽圧)と共にウォールフロー型ハニカム構造体の一方の開口端面から供給し、必要に応じて他方の開口端面から吸引(陰圧)処理を行うことで、セル内に触媒組成物を被覆するものである。触媒組成物粉体で被覆されたウォールフロー型ハニカム構造体は焼成等の処理を施し、セル隔壁への触媒組成物の定着を図っても良い。このようなパウダーコート法は、触媒組成物を比較的嵩高くセル隔壁上に被覆することが可能である。そのため、形成された触媒組成物層における通気性を高く保つ事が容易で、本発明のGPFの様に、圧力損失が増加し難いウォールフロー型ハニカム触媒を得る点では有利な方法であるといえる。
【0063】
[触媒層構造(layer)]
本発明のGPFはウォールフロー型ハニカム構造体のセル隔壁に所定の触媒組成物を被覆するものであるが、その被覆状態は特に限定されるものではなく、触媒層はセル隔壁の中(in wall)、セル隔壁の上(on wall)、排ガスの入口側に相当するセル隔壁の上、排ガスの出口側に相当するセル隔壁の上、ハニカム構造体の一方の開口端面から他方の開口端面に向けセルの全域(uniform coat)、ハニカム構造体の一方の開口端面から他方の開口端面に向けセルの長さ方向未満(zone coat)、複数の触媒層を積層(multi layer)またこれら触媒層構造を組み合わせたもので有っても良い。なお、本発明のGPFは何れの被覆状態であってもセルの隔壁上に存在する柱形の無機酸化物の量がセルの隔壁中に存在する柱形の無機酸化物の量より多いことが好ましい。
【0064】
[層構造:in wall]
触媒層構造がin wallとは、ウォールフロー型ハニカム構造体の多孔質なセル隔壁に触媒組成物を含侵するものである。In wallな状態は触媒組成物全てをセル隔壁の中に完全に含侵させるものであっても良く、触媒組成物の一部をセル隔壁の中に含侵し、他を後述するon wallに被覆するもので有っても良い。本発明の柱形無機酸化物粒子はこのようなin wallに含侵、被覆されていても良い。
【0065】
[層構造:on wall]
触媒層構造がon wallとは、ウォールフロー型ハニカム構造体の多孔質なセル隔壁表面に触媒組成物が被覆されているものである。on wallな被覆にあたっては、必ずしもセル隔壁の表面に本発明の柱形無機酸化物粒子を直接被覆するものである必要は無く、他の触媒組成物をセル隔壁に被覆あるいは含侵して触媒層を形成した後にon wallに被覆したもので有っても良い。
【0066】
[層構造:zone coat]
触媒層構造がzone coatとは、前記のin wall、on wallによる含侵や被覆により、排ガスの流れ方向から見て、触媒組成物層をウォールフロー型ハニカム構造体の長さの未満に形成されたものである。このようなzone coatはハニカム構造体のセルが開口する一方の端面から他方の端面に向けて形成される。
【0067】
排ガス触媒の主な作用としては酸化、還元、発熱、HC吸蔵、NOx吸蔵等が挙げられる。一方で、煤成分の捕集では捕集した煤成分を燃焼除去してフィルターとしての機能を再生させることから酸化を主な作用にしているともいえる。一般的なZone coatでは、この様な作用の違いに応じて調整した触媒組成物や、複数の作用を目的に調整した触媒組成物を組み合わせ、ハニカム構造体中に複数の触媒層zoneを形成する事が多い。
【0068】
[層構造:multi layer]
触媒層構造のmulti layerとは、広義には前記のzone coatも含まれるが、狭義には組成の異なる複数の触媒組成物をウォールフロー型ハニカム構造体のセル隔壁に積層したものである。触媒組成物の積層は、in wallした触媒組成物層の上に触媒組成物層をon wallしたもので有っても良く、on wallした触媒組成物層の上に更に触媒組成物をon wallしたもので有っても良い。この様に積層する触媒組成物は組成が異なるものであっても良いが、ハニカム構造体に被覆する触媒量を増やす事を目的に同一組成の触媒組成物を積層したもので有っても良い。このようなmulti layerは前記のzone coatやuniform coatと組み合わせてハニカム触媒の層構造を形成しても良い。multi layerとzone coatと組み合わせる場合、各zone coatの長さは同一であっても良く異なっていても良く、一方の触媒組成物層がuniform coatで他方の触媒組成物層がzone coatで有っても良い。またウォールフロー型ハニカム構造体に、multi layerを形成する場合、排ガスの入口側に相当するセル隔壁の上と出口側に相当するセル隔壁の上にそれぞれ触媒組成物層を形成してもよく、これらの触媒組成物層はzone coatを組み合わせたもので有っても良い。
【0069】
<別の触媒組成物>
[他の触媒組成物との組合せ]
本発明のGPFはセルの隔壁に柱形無機酸化物粒子を含む触媒組成物を被覆するものであるが、前記触媒組成物には主たる活性種として白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分が含まれる。このような貴金属成分は担体である無機酸化物粒子に担持して使用されるが、このような担体としては本発明の柱形無機酸化物粒子であってもよく、後述する他の無機酸化物の粒子で有っても良い。また、このような貴金属成分が担持した担体は柱形無機酸化物粒子と混合状態で使用しても良く、貴金属成分が担持した担体を触媒組成物として柱形無機酸化物粒子を含む触媒層とは異なる触媒層として積層したもので有っても良いが、いずれを上層あるいは下層とするかを問わず、柱形の無機酸化物粒子を含む触媒組成物とは別の触媒組成物層として被覆することが好ましい。また、この触媒組成物は、柱形無機酸化物粒子以外の他の無機酸化物粒子と組み合わせても良い。このような他の無機酸化物粒子は特に限定されるものでは無く、成分については従来から排ガス触媒に使用されてきた無機酸化物粒子等から目的とする触媒の設計に応じて適宜選択することができる。このような酸化物粒子としてはアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、ゼオライト、またはこれらの少なくとも一つを含む複合酸化物を選択的、または組み合わせて使用することができ、これら酸化物粒子には白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分を活性種として担持してもよい。
【0070】
また、他の酸化物粒子の粒形についても特に限定されるものでは無く、従来、排ガス浄化触媒に使用されてきた無機酸化物粒子から触媒設計に応じて適宜選択することができる。このような他の無機酸化物粒子の粒形の例としては、粒子径としては1~100μm程度の粒子径が好ましく、10~50μmである事がより好ましい。粒子径が小さすぎると触媒層が緻密化することがある。緻密化した触媒層が排ガスの通気を妨げて圧力損失が大きくなってしまい易い。粒子径が大きすぎると触媒層において粒子間で形成される空隙のサイズが大きくなる事がある。空隙が大きいと煤成分は触媒層を通過し易くなり、煤成分の捕集性能が低下し易い。
【0071】
このような粒子の粒形としてはアスペクト比をもって特定しても良く、好ましくは本発明の柱形無機酸化物粒子よりも小さなアスペクト比をもつ粒子である事が好ましく、3未満のアスペクト比の粒状無機酸化物である事がより好ましい。
【0072】
[他の触媒組成物との組合せ:層構造]
本発明のGPFにおいて、柱形無機酸化物粒子と他の無機酸化物粒子とを組み合わせて使用する場合、混合して一つの触媒組成物層としてウォールフロー型ハニカム構造体のセル隔壁に含侵、被覆しても良く、柱形無機酸化物粒子と他の無機酸化物粒子とをそれぞれ異なる触媒組成物層としてウォールフロー型ハニカム構造体のセル隔壁上に被覆しても良い。
【0073】
柱形無機酸化物粒子と他の無機酸化物粒子をそれぞれ異なる触媒組成物層として被覆する場合、その仕様は特に限定されるものでは無く、例えば、ウォールフロー型ハニカム構造体の入口側のセル隔壁上に他の無機酸化物粒子からなる触媒組成物層を被覆し、その上に柱形無機酸化物粒子を含む触媒組成物層を被覆する仕様、ウォールフロー型ハニカム構造体の入口側のセル隔壁上に柱形無機酸化物粒子を含む触媒組成物層を、出口側セル隔壁上に他の無機酸化物粒子からなる触媒組成物層を分けて被覆する仕様等が挙げられる。また、このような柱形無機酸化物粒子を含む触媒組成物層と他の無機酸化物粒子からなる触媒組成物層は、ウォールフロー型ハニカム構造体のセル隔壁上にゾーンに被覆されたものであっても良い。
【0074】
[効果的な用途:高流速なガソリン車排ガス]
本発明のGPF中の排気ガスの流速は空間速度(SV: Space Velocity)として表される事がある。これは、ハニカム構造体内を通過する1時間当たりの排ガス量を、ハニカム構造体の体積で除したもので、単位としてはh-1で表される。
【0075】
本発明のGPFは、排ガス流中に配置する事により微粒子成分を含む排ガスを浄化するという効果が得られるが、特に比較的流速の速い排ガス流中において圧力損失の低減効果が得られ易く、具体的には排ガスの空間速度が100,000/h以上である場合において使用される事が効果的である。このような高速な空間速度は、自動車の内燃機関であれば高回転での稼働が想定される。内燃機関を高回転で稼働させる状態は、一般的に加速時や急坂の登坂時や高積載量での走行時等、運転者が高出力を求めている状況である。このような高出力を求めている状況において、圧力損失が少なく内燃機関で高出力を得られ易いGFPはまさに市場が求めるものである。また、高出力が得られ易い事は内燃機関の効率的な稼働が可能である事でも有る。運転者が必要とするときに速やかに高出力を得る事が可能であれば、使用する燃料の量も抑制され環境負荷低減にも貢献可能な触媒であるといえる。
【0076】
[効果的な用途:排ガス浄化触媒装置]
本発明のGPFは排気管の内部に配置されて使用されるが、GPFは使用するハニカム構造体がウォールフロー型ハニカム構造体であることから触媒化によって背圧が上昇を招き易い。背圧の上昇は圧力損失となりエンジンの出力低下の原因となる場合がある。そのため、一般的なフロースルー型ハニカム構造体を使用したハニカム触媒に比べて、GPFでは触媒量を少なく被覆する事が望ましい。触媒量を少なくすることで圧力損失の増加を抑制することができる。
【0077】
一方で、触媒量が少ないことは、GPFそのものの有害成分、環境負荷成分の浄化については不利である。そのため、本発明のGPFは、より多くの触媒量を被覆しても圧力損失が増加し難いフロースルー型ハニカム構造体を使用したハニカム触媒と組み合わせて使用されることが好ましい。なお、触媒としての性能は活性種の量、排ガス触媒においては含有する貴金属量とも相関を有する。これらのことを踏まえて言い換えると、本発明のGPFを使用した排ガス浄化触媒装置としては、本発明のGPFよりも多くの貴金属成分を含むフロースルー型ハニカム触媒と組合せて使用される事が好ましいといえる。
【0078】
本発明のGPFを、フロースルー型ハニカム触媒と組合せて排ガス浄化触媒装置として使用する場合、本発明のGPFを排ガス流れの上流に、貴金属含有量の多いフロースルー型ハニカム触媒(TWC)をその後方に配置しても良く、その逆の配置であっても良く、エンジンにおける燃焼制御と優先すべき浄化対象物質に合わせて適宜選択すれば良い。
【0079】
本発明のGPFをTWC上流側、すなわちGPF-TWCの様に配置した場合、燃焼直後の高温の排ガスを本発明のGPFに導入することが可能になり、捕集した煤成分の燃焼に有利になる。このような作用はエンジン-GPF-TWCの様にエンジン直下にGPFを配置したシステムにおいて特に有効である。
【0080】
逆にTWC-GPFのように、本発明のGPFをTWCの下流に配置したシステムの場合、貴金属量の多いTWCは温度の高い排ガスに接触することになり、NOx、HC、CO等の有害成分、環境負荷成分の浄化に有利である。また、貴金属量の多いTWCを通過した排ガスは触媒反応によって著しい温度の低下を招くことなく本発明のGPFに導入され、GPFにおける煤成分の燃焼浄化にあたって有利に働く。更に、排ガスがTWCを通過する際に排ガスの流速が低下し、流速が低下した排ガスにあっては本発明のGPFにおける煤成分との接触機会が増し、GPF本来の煤成分の捕集性能を向上させることができる。
【0081】
本発明のGPFをフロースルー型ハニカム触媒と組み合わせ、産業用途の触媒装置として使用する場合、触媒組成物に含まれる貴金属を効率的に使用する必要がある。そのため触媒組成物中の貴金属は耐熱性の無機担体に分散担持することで微粒子化して活性な表面積を大きくして使用される。本発明のGPFやフロースルー型ハニカム触媒についても同様である。このような触媒組成物量や貴金属量はハニカム構造体における単位体積あたりの重量であるg/Lで表すことができ、触媒化ガソリン微粒子フィルターにおける触媒組成物量としては5~70g/Lが好ましく、10~50g/Lがより好ましく、貴金属量としては0.1~3g/Lが好ましく、0.5~2g/Lがより好ましい。そして、本発明のGPFと組み合わせて使用されるフロースルー型ハニカム触媒(TWC)には、本発明のGPFに比べて1.5~10倍の触媒組成物量あるいは貴金属量が被覆されていることが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
本発明の実施例において使用するハニカム構造体は以下のとおりである。下記ハニカム構造体における気孔率、平均細孔径は圧入圧力400MPaで測定した水銀圧入法による値から求めたものである。
[ハニカム構造体]
・ハニカムタイプ:ウォーフロー型ハニカム構造体
・材質:コージェライト
・形状:円筒形
・サイズ:直径118.4mm,高さ127mm
・セル形状:四角
・セル密度:46.5cel/cm2(300cel/inch2)
・セル隔壁の厚み:0.2mm(8ミリインチ)
・気孔率:63%
・平均気孔径(D50):16μm
【0084】
[触媒組成物スラリー1]
以下の成分と水とを攪拌翼を使用した撹拌機で細粒が発生しない様に混合し触媒組成物スラリー1を調整した。得られた触媒組成物スラリーのレーザー回析法による平均粒子径はD50が9μm、D90が26μmであった。また、SEM画像を
図6に表す。
・硝酸パラジウム水溶液(Pd金属換算):0.96重量部
・γ-アルミナ:16.8重量部
・硝酸ロジウム水溶液(Rh金属換算):0.16重量部
・セリウム-ジルコニウム複合酸化物:11.1重量部 (CeO
2/ZrO
2換算の組成比3/7)
【0085】
[柱形MFI型ゼオライトの合成:粉体A]
40%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液(セイケム社製)271.4gと水3,266.0gを混合した溶液に、フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)29.9gを溶解した。この溶液にNipsil ER(東ソーシリカ社製)287.5gを加えて一晩撹拌保持した。混合物の組成は次のとおりであった。この混合物における各成分の数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量(モル)比を意味する。
1 SiO2
0.001 Al2O3
0.121 TPAOH (TPA:テトラプロピルアンモニウムカチオン)
0.182 (NH4
++NH3)
0.182 F-
43.74 H2O
【0086】
次いで、この原料組成物(混合物)を5,000ccのステンレス製オートクレーブに入れ、300rpmで攪拌しながら室温から3時間かけて175℃まで昇温し、その後、175℃を維持して45時間撹拌保持した。この水熱処理後の生成物をまとめて105℃乾燥し粉砕した後、600℃で5時間焼成して生成物を得た。粉末X線回折分析(XRD)を行ったところ、生成物はMFI型ゼオライトの単相であることが確認された。回析結果を大気中1時間、1,000℃と1,100℃で加熱処理した結果と共に
図9に表す。また、蛍光X線(XRF:X-ray Fluorescence)により組成分析をしたところSARは952であった。
【0087】
[表面積の測定:粉体A]
サンプル約0.1gを200℃で2時間真空排気した後、TristarII 3020型窒素吸着測定装置(マイクロメリティクス社製)を用いて、相対圧0~1.0の範囲で窒素吸着測定を行い、BET法により比表面積を、t-plot法により外表面積を算出した。他の柱形粉体の値と共に結果を表1以下に記す。
【0088】
[粒形の測定:粉体A]
この様にして得られたMFI型ゼオライト粉体をSEMにより観察したところ粒子サイズの揃った柱形をしていることが確認された。SEM画像を
図1に表す。また、
図1における50μm四方における粒子を目視で観察した結果を他の柱形粉体の値と共に結果を表1以下に記す。
【0089】
[柱形MFI型ゼオライトの合成:粉体B]
200rpmで攪拌しながら室温から3時間かけて175℃まで昇温し、その後、175℃を維持しながら45時間60rpmで攪拌した他は粉体Aと同様にして柱形酸化物粒子である粉体Bを合成した。SEM画像を
図2に表す。粉体Aと同様にXRD、XRFで回析を行い、SAR、粒子の長さ、粒子の幅、粒子の厚さ、比表面積、外表面積を測定した。結果を表1に記し、粉体BもMFI型ゼオライトの単層であることを示すXRDの回析結果を
図10に表す。
【0090】
[柱形MFI型ゼオライトの合成:粉体C]
40%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液(セイケム社製)151.7gと水910.0gを混合した溶液に、フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)15.1gを溶解した。この溶液にNipsil ER(東ソーシリカ社製)247.0gを加えて一晩撹拌保持した。混合物の組成は次のとおりであった。
【0091】
1 SiO2
0.001 Al2O3
0.079 TPAOH (TPA:テトラプロピルアンモニウムカチオンのこと)
0.107 (NH4
++NH3)
0.107 F-
15.12 H2O
【0092】
上記混合物における各成分の数値は、SiO
2の物質量を1としたときの物質量比を意味する。
次いで、この原料組成物(混合物)を1,200ccのステンレス製オートクレーブに入れ、175℃48時間300rpmで加熱撹拌保持した。この水熱処理後の生成物をまとめて105℃乾燥し粉砕した後、600℃で焼成して生成物を得た。SEM画像を
図3に表す。粉体Aと同様にXRD、XRFで回析を行い、SAR、粒子の長さ、粒子の幅、粒子の厚さ、比表面積、外表面積を測定した。結果を表1以下に記し、粉体CもMFI型ゼオライトの単層であることを示すXRDの回析結果を
図11に表す。
【0093】
【0094】
[柱形酸化物粒子:スラリーA]
前記柱形酸化物粒子である粉体Aと水を、攪拌翼を使用して攪拌混合して柱形酸化物粒子スラリーAを調整した。
【0095】
[参考例1:基礎となるハニカム触媒]
前記ハニカム触媒に対し、前記触媒組成物スラリーをウオッシュコート法をもって被覆し、ウォーフロー型ハニカム触媒を製造した。ウォーフロー型ハニカム構造体を構成する最小単位であるplugと多孔質なセル隔壁を排ガスの流れ方向を示す矢印と共に模式的に
図4として表す。
【0096】
この模式図であらわしたウォールフロー型ハニカム構造体に、排ガスの入口端面側からスラリー化した触媒組成物1を所定量供給した後、排ガス入口側から調整した圧力と時間でエアブロー処理を行い、ハニカム構造体における所定の長さにまでスラリー化した触媒組成物1を塗り伸ばした。続いて、排ガスの出口端面側から触媒組成物スラリー1を所定量供給した後、排ガス出口側から調整した圧力と時間でエアブロー処理を行い、ハニカム構造体における所定の長さにまで触媒組成物スラリー1を塗り伸ばした。この様にして、それぞれセルの開口端面からウオッシュコート法をもってそれぞれon wallに被覆し、乾燥後、550℃で1時間大気雰囲気で焼成し参考例1のハニカム触媒を得た。参考例1に関する触媒層の構成、触媒の担持量、触媒層の被覆長さを模式図と共に
図5に記す。なお、
図5中の1は各々前記触媒組成物スラリー1を表し、前記粉体A、前記スラリーAも併せて記し、以下の実施例、比較例においても同様に
図5に記す。
【0097】
[実施例1]
参考例1において入口側触媒層、出口側触媒層を被覆した後、ハニカム触媒における排ガスの入口側から粉体の柱形酸化物粒子Aをパウダーコートし実施例1の触媒を得た。
【0098】
[実施例2]
参考例1において入口側触媒層、出口側触媒層を被覆した後、ハニカム触媒における排ガスの入口側から柱形酸化物粒子スラリーAをウオッシュコートし、乾燥させ、550℃で1時間焼成を施し実施例2の触媒を得た。
【0099】
[比較例1]
参考例1において入口側触媒層、出口側触媒層を被覆した後、ハニカム触媒における排ガスの入口側から触媒組成物スラリー1をウオッシュコートし、乾燥させ、550℃で1時間焼成を施し比較例1の触媒を得た。
【0100】
[圧力損失性能評価]
この様にして得られたハニカム触媒を、圧力損失測定装置(ツクバリカセイキ株式会社製)に設置し、設置した排ガス浄化触媒に室温の空気を導入し、ハニカム触媒からの空気の排出量が4m3/minとなったときのハニカム触媒への空気の導入側と排出側の差圧を測定して得られた値を圧力損失とした。結果を後述する煤成分捕集性能評価と共に表2に記す。
【0101】
[煤成分捕集性能評価]
参考例、実施例、比較例として得られたハニカム触媒を、1.5L直噴ターボエンジン搭載車に取り付け、固体粒子数測定装置(堀場製作所製、商品名:MEXA-2100 SPCS)を用いて、WLTCモード走行時のスス排出数量(PNtest)を測定した。なお、ススの捕集率は、排ガス浄化触媒を搭載せずに上記試験を行った際に測定した煤成分量(PNblank)からの減少率として、下記式1により算出した。前記圧力損失性能評価と共に表2に結果を記す。
【0102】
[式1]
煤成分の捕集率(%)=(PNblank-PNtest)/PNblank×100(%)
【0103】
【0104】
実施例、比較例はそれぞれ煤成分捕集率を95%以上にすることを目標に、比較例1では通常の球形に近い粒形の粒子からなる触媒組成物を被覆し、目的どおり95%以上の煤成分捕集率を実現したが、圧力損失が2.88 KPaという高い値を示してしまった。
【0105】
これに対し、実施例1、実施例2でも95%以上の煤成分捕集率を実現しつつ、圧力損失は実施例1のパウダーコート品が2.00 KPa、実施例2のウオッシュコート品でも2.17 KPaという結果で、煤成分捕集能力を向上させるためにウォールフロー型ハニカム構造体に被覆する触媒量を増やしても圧力損失の増加量を少なくすることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の触媒化ガソリン微粒子フィルターは、ガソリン自動車等から排出される微粒子成分を含む排ガスを浄化するのに利用できる。