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特許7589005紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置
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  • 特許-紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置 図1
  • 特許-紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置 図2
  • 特許-紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置 図3
  • 特許-紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】紡績機のドラフト装置用の集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 5/26 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
D01H5/26
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175837
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2021066993
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】10 2019 128 326.4
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エルカン インジェ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター フェーンリヒ
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035463(JP,A)
【文献】特開2013-023808(JP,A)
【文献】特表2009-509061(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115270(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004020984(DE,A1)
【文献】特開2002-371441(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012106781(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10016655(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H5/72
D01H5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトされたスライバを集束するための、紡績機のドラフト装置(2)用の集束装置(1)であって、吸込み開口(4)を用いて吸込み流を繊維搬送方向に対して垂直に生ぜしめる集束ゾーンが設けられている、集束装置(1)において、
ガイドローラ(10)を備えた集束要素(9)が設けられており、前記ガイドローラ(10)は、前記スライバが前記ガイドローラ(10)と係合するように、繊維搬送方向において回転可能に前記集束ゾーンの領域において前記吸込み開口(4)に向かい合って配置可能であって、
前記吸込み開口(4)を有する吸込みシュー(3)、出口トップローラ(7)および前記吸込みシュー(3)を前記吸込み開口(4)の領域において取り囲む集束エプロン(5)であって、前記吸込み流のために透過性の確定された貫通孔(6)を備えた集束エプロン(5)、および前記出口トップローラ(7)の領域において前記集束エプロン(5)に接触している出口ボトムローラ(8)を含んでいることを特徴とする、集束装置(1)。
【請求項2】
前記集束要素(9)および/または前記ガイドローラ(10)は、前記吸込み開口(4)への方向において移動調節可能に支持されている、請求項記載の集束装置(1)。
【請求項3】
前記集束要素(9)は、前記吸込み開口(4)への方向において長手方向移動可能に支持された支持体(11)を有している、請求項1または2記載の集束装置(1)。
【請求項4】
前記支持体(11)は、前記吸込み開口(4)への方向において延在する支持レール(12)に長手方向移動可能に支持されている、請求項記載の集束装置(1)。
【請求項5】
前記ガイドローラ(10)は、該ガイドローラ(10)を駆動する駆動ユニットに連結されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の集束装置(1)。
【請求項6】
紡績機用のドラフト装置(2)であって、請求項1からまでのいずれか1項記載の集束装置(1)を特徴とする、ドラフト装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフトされたスライバを集束するための、紡績機、特にリング精紡機のドラフト装置用の集束装置であって、吸込み開口を用いて吸込み流を繊維搬送方向に対して垂直に生ぜしめる集束ゾーンが設けられている、集束装置に関する。
【0002】
紡績機、特にリング精紡機用のドラフト装置は、種々様々な構成において従来技術に基づいて公知である。ドラフト装置の役割は、ドラフト装置に供給されたスライバをドラフトもしくは延伸することであり、これによって繊維の横断面が減少させられる。このとき均等な糸を形成するために必要な均等なスライバを製造するために、繊維はドラフト中に可能な限り均等に互いに並んで移動させられねばならない。
【0003】
加撚機構がドラフト装置に直接接続している紡績機、特にリング精紡機には、ドラフト装置の出口ローラ対においていわゆる紡績三角形(Spinndreieck)が生じるという欠点がある。この紡績三角形は、生じる糸よりも著しく高い幅を有しており、かつ生じる糸内に整然と組み込まれず、ひいては紡績すべき糸の強度に貢献しない縁部繊維を有している。
【0004】
ドラフト装置の出口ローラ対におけるこのような紡績三角形を回避するために、従来技術に基づいて、ドラフト装置の下流に集束装置を配置すること、もしくはドラフト装置を集束装置を備えて構成することが既に公知であり、この集束装置において、ドラフトされているがしかしながらまだ撚りをほぼ有していないスライバは、その繊維を側方においてまとめることによって集束もしくは束ねられる。このようにして加撚機構へのスライバの進入前において紡績三角形を回避することによって、撚られた糸は、より均等に、より耐引裂性になり、かつ毛羽立ちがより少なくなる。
【0005】
このとき冒頭に述べた形式の公知の集束装置は、一般的に空気力式に作用するように構成されている。例えば、スライバを繊維の長手方向に沿って延在するパーフォレーショントラックにおける吸込みによってまとめることが既に公知であり、このパーフォレーショントラックは、吸込み流のために透過性の貫通孔を有しており、この貫通孔を通して吸込み気流(Saugzug)を用いて空気が吸い込まれる。このときパーフォレーショントラックは、吸込みシューの吸込み開口の周りを循環するように配置された集束エプロンの搬送方向に延在している。択一的な配置形態では集束エプロンは、狭いメッシュの織布から形成されていてよく、この織布は、吸込み流のために透過性の多数の貫通孔を有しており、このとき吸込みシューは、吸込み開口の領域に、吸込み開口を画定していて搬送方向において延在する細いスリットを有しており、このスリットを介してだけ、吸込み気流はスライバに作用し、かつスライバを集束する。
【0006】
糸品質を改善するために独国特許発明第10127741号明細書に基づいて、スライバの搬送方向に関して集束装置の集束ゾーンの上流領域に、スライバに接触しているエプロンを対応配置することが既に公知であり、このエプロンは、集束装置の内部における繊維案内を改善するようになっている。しかしながらこの装置には、この装置が特別に複雑な構造を有していて、かつエプロンの面での協働に基づいて条件付けられてしか繊維案内を改善することができないという欠点がある。特に処理された糸は、糸品質に不都合な影響を及ぼす著しい太い箇所と細い箇所とを有するおそれがある。
【0007】
上に述べたことを出発点として本発明の根底を成す課題は、均等な糸の製造を可能にする集束装置、ならびに集束装置用のドラフト装置を提供することである。
【0008】
本発明はこの課題を、請求項1の特徴を有する集束装置、および請求項7の特徴を有するドラフト装置によって解決する。集束装置の好適な発展形態は、従属請求項である請求項2~6に記載されている。
【0009】
本発明に係る集束装置は、ガイドローラを備えた集束要素が設けられており、ガイドローラは、スライバがガイドローラと係合するように、繊維搬送方向において回転可能に集束ゾーンの領域において吸込み開口に向かい合って配置可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、スライバと係合しているガイドローラは、スライバを吸込み開口の方向に押圧する。このときガイドローラの回転可能性は、スライバの、糸品質に不都合な影響を及ぼすおそれがあるスリップを、ガイドローラの接触面にわたって阻止する。ガイドローラは、その回転運動に基づいてスライバの搬送方向において一緒に運動する繊維案内を形成する。ガイドローラによって提供された繊維案内は、太い箇所および細い箇所を僅かしか有しないスライバの製造を可能にする。本発明に係る集束装置によって製造されたスライバは、特に高い均一性、強度、および比較的僅かな毛羽立ちを有する糸の製造を可能にし、このことは特に、スライバが集束ゾーンにおいても案内されるという状況に基づいて生じる。
【0011】
集束装置は、好ましくは吸込み開口を有する吸込みシュー、出口トップローラおよび吸込みシューを吸込み開口の領域において取り囲む集束エプロンであって、吸込み流のために透過性の確定された貫通孔を備えた集束エプロン、および出口トップローラの領域において集束エプロンに接触している出口ボトムローラを含んでいる。
【0012】
ガイドローラはこの構成では、スライバがガイドローラと係合するように、集束エプロンの周方向において回転可能に吸込みシューの領域において集束エプロンに向かい合って配置可能である。集束エプロンの回転方向は繊維搬送方向を設定し、かつ集束ゾーンは吸込みシューの領域に位置している。
【0013】
この構成では、スライバと係合しているガイドローラは、集束装置の、出口トップローラと出口ボトムローラとから形成されている出口ローラ対の上流領域において、スライバを集束エプロンに押圧し、これによって出口ローラ対の上流における確実な繊維案内が達成され、このことは特に、出口ローラ対と、ドラフト装置の、出口ローラ対の上流に支持されたローラ対との間に、スライバの案内されていない単に短い区間しか存在していないことに基づいて得られる。これによってスライバは、ほぼその全搬送長さにわたって集束装置によって案内され、このときこの案内は、最初に吸込みシューの領域においてガイドローラを介して、かつそれに続いて出口ローラ対を介して行われる。これによって特に高い均一性、強度、および比較的僅かな毛羽立ちを有する糸の製造がさらに促進される。
【0014】
ガイドローラを保持する集束要素の支持装置、および集束要素におけるガイドローラの支持装置の構成は、基本的に自由に選択可能である。例えば、集束要素を、スライバに作用する等しいままの圧着力をもって、吸込み開口に向かい合ってもしくは集束エプロンに向かい合って位置固定に配置することが可能である。しかしながら本発明の好適な構成によれば、集束要素および/またはガイドローラは、吸込み開口もしくは集束エプロンへの方向において移動調節可能に支持されている。
【0015】
本発明のこの構成によれば、集束要素におけるガイドローラの移動調節によって、かつ/または吸込み開口への方向における集束要素の移動調節によって、ガイドローラと集束エプロンとの間における圧着力を、繊維案内のために最適に適合させることができる。このようにして間隔増大によって圧着力を低減すること、もしくは間隔減少によって圧着力を増大させることができ、これによって製造誤差を補償し、かつスライバの厚さに対する適合を特に容易に行うことができる。
【0016】
このときクランプ力を調節するために例えば、ガイドローラを、位置固定に配置された集束要素に移動調節可能に配置することが可能である。しかしながら本発明の好適な発展形態によれば、ガイドローラを保持する集束要素は、吸込み開口への方向において長手方向移動可能に支持された支持体を有していることが提案されている。本発明のこの構成によれば、ガイドローラを集束エプロンに向かい合って支持している支持体は、集束エプロンに対するその間隔を調節可能であり、かつ調節された位置において固定可能である。これによって支持体の移動調節により、ガイドローラによって集束エプロンに加えられる圧力もしくは集束エプロンとガイドローラとの間に配置されたスライバに加えられる圧力を、特に簡単かつ適切に調節することができる。圧着力の適合は、集束エプロンに対する支持体の移動調節によって簡単に行うことができる。
【0017】
このとき支持体の移動可能性の構成は、基本的に自由に選択可能である。しかしながら好適な構成によれば、支持体は、吸込み開口への方向において延在する支持レールに長手方向移動可能に支持されている。支持体が単に支持レールの長手方向においてだけ移動可能であり、かつ横方向運動が支持体と支持レールとの間における結合部の構成に基づいてブロックされているように構成されている、支持レールの使用は、集束エプロンに対するガイドローラの移動可能性および位置決め可能性を補足的に改善する。集束エプロンに対するガイドローラのエラー位置は、支持レールとの支持体の協働に基づいて、特に確実に回避することができ、これによって糸品質を特に確実に保証することができる。
【0018】
基本的に、既にガイドローラの自由な回転可能性が、高い糸品質を保証し、このときガイドローラの回転運動は、搬送方向において移動させられてガイドローラを回転させるスライバとの協働に基づいて生じる。しかしながら本発明の特に好適な構成によれば、ガイドローラは、このガイドローラを駆動する駆動ユニットに連結されている。
【0019】
駆動ユニットの使用は、ガイドローラを、スライバの搬送速度、およびガイドローラとのスライバの協働とは無関係に調節することができる。これによって、駆動可能なガイドローラを介して、ガイドローラの、スライバと接触している接触面に対する、スライバの相対運動を特に確実に回避することができ、このことは、特に高い品質を有する糸の製造を可能にする。
【0020】
本発明に係るドラフト装置は、このドラフト装置が、上に記載された構成のうちの1つまたは複数の構成による集束装置を有していることを特徴とする。本発明に係るドラフト装置では、例えばドラフト装置の既存の出口ローラ対が集束装置を形成することによって、ドラフト装置を特に単純かつコンパクトに構成することができる。このように構成されていると、集束エプロンはドラフト装置の出口トップローラと吸込みシューとを循環するので、集束装置を形成する別体の出口ローラ対を省くことができる。択一的に集束装置の出口ローラ対は、ドラフト装置ローラ対に続いており、このとき出口ローラ対とドラフト装置ローラ対とを一緒に、構造ユニットとして同様に特にコンパクトに構成することができる。
【0021】
次に図面を参照しながら、本発明の一実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】集束装置を備えたドラフト装置を示す第1の斜視図である。
図2図1のドラフト装置を示す第2の斜視図である。
図3図1のドラフト装置を示す側面図である。
図4図1のドラフト装置の集束要素を示す斜視図である。
【0023】
図1図2、および図3には、集束装置1を備えて構成されたドラフト装置2が示されている。ドラフト装置2は、互いに間隔をおいて並んで配置された2つの第1のローラ対15、第2のローラ対16、および第3のローラ対17を有しており、これらのローラ対の間において、ローラ対15,16,17のローラの間を貫通案内されるスライバは、ローラ対15,16,17の互いに異なる周速度に基づいてドラフトもしくは延伸される。第3のローラ対17の下流には集束装置1が配置されており、集束装置1も同様に、互いに間隔をおいて並んで配置されていてそれぞれ出口トップローラ7と出口ボトムローラ8とから形成された2つの出口ローラ対18を有している。
【0024】
集束装置1はさらに、互いに間隔をおいて配置されていて出口ローラ対18と第3のローラ対17との間の領域に配置された2つの吸込みシュー3を有している。吸込みシュー3は、吸込み管13を介して、ここには図示されていない吸込み装置に接続されていて、かつ貫通案内すべきスライバの方向に向けられたそれぞれ1つの吸込み開口4を有している。このとき出口トップローラ7および吸込みシュー3はそれぞれ、集束エプロン5が吸込み開口4を覆うように集束エプロン5によって取り囲まれている。
【0025】
第3のローラ対17から進出するスライバを集束するために集束エプロン5は、搬送方向において相前後して配置されていてパーフォレーション6を形成している複数の貫通孔を有している。パーフォレーション6は、吸込み装置によって吸込みシュー3の吸込み開口4において準備された吸込み流の貫流を可能にしており、これによってドラフトされたスライバの繊維は、集束装置1を通過している間に、搬送方向に対して横方向にパーフォレーション6への方向に移動させられ、かつこのとき集束される。
【0026】
第3のローラ対17と出口ローラ対18との間の領域におけるスライバの案内を改善するために、ドラフト装置2は集束要素9を有しており、この集束要素9は、支持体11に回転可能に支持された2つのガイドローラ10を有している。このときガイドローラ10は、スライバの搬送方向において出口ローラ対18の上流で、吸込みシュー3の領域において集束エプロン5に接触しており、かつこのときドラフトされたスライバを集束エプロン5に押圧し、これによって良好な繊維案内が得られる。
【0027】
集束エプロン5へのガイドローラ10の圧着力を調節するために、支持体11は支持レール12に、集束エプロン5への方向において長手方向移動可能に支持されていて、かつ長孔14を介して調節された位置において固定可能である。支持体11の移動可能性と、これによって得られる、集束エプロン5におけるガイドローラ10の圧着力の調節とによって、ガイドローラ10および集束エプロン5によって生ぜしめられる繊維案内を、適切に、例えばスライバの製造誤差および種々様々な厚さに適合させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 集束装置
2 ドラフト装置
3 吸込みシュー
4 吸込み開口
5 集束エプロン
6 貫通孔/パーフォレーション
7 出口トップローラ
8 出口ボトムローラ
9 集束要素
10 ガイドローラ
11 支持体
12 支持レール
13 吸込み管
14 長孔
15 第1のローラ対
16 第2のローラ対
17 第3のローラ対
18 出口ローラ対
図1
図2
図3
図4