(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】射出圧縮成形方法、射出装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/70 20060101AFI20241118BHJP
B29C 45/66 20060101ALI20241118BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B29C45/70
B29C45/66
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2020177746
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖彦
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-195471(JP,A)
【文献】特開平08-066945(JP,A)
【文献】特開平09-039053(JP,A)
【文献】特開平09-066541(JP,A)
【文献】特開平10-286856(JP,A)
【文献】特開2000-006216(JP,A)
【文献】特表2004-510607(JP,A)
【文献】特開2007-118349(JP,A)
【文献】特開2009-119653(JP,A)
【文献】特開2016-000518(JP,A)
【文献】国際公開第1992/002352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締装置により金型を開いた状態にして射出材料を射出する型開射出工程と、
該型開射出工程の後で前記型締装置を駆動して前記金型の型開量を狭める圧縮工程と、を備え、
前記型開射出工程において、前記金型に設けられている位置センサにより前記金型の型開量を検出し、前記位置センサの検出結果に基づいて前記型開量が一定になるよう前記型締装置を制御するようにし、
前記圧縮工程は、前記型締装置を駆動して前記金型の型開量を広げる型開段階と、
該型開段階後に前記型締装置を駆動して前記金型の型開量を狭める圧縮段階とから構成する、射出圧縮成形方法。
【請求項2】
前記圧縮工程において射出材料の射出を継続する、請求項1に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項3】
前記型締装置の型締機構はトグル機構である、請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記型締装置はサーボモータで駆動するようになっている、請求項1~3のいずれかの項に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項5】
1回の前記型開射出工程と1回の前記圧縮工程とを1段の射出圧縮工程とし、該射出圧縮工程を2段以上繰り返す、請求項1~4のいずれかの項に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項6】
前記位置センサは接触式センサからなる、請求項1~5のいずれかの項に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項7】
前記位置センサは非接触式センサからなる、請求項1~6のいずれかの項に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項8】
前記金型には前記金型の型閉じに反発するスプリングが内蔵されている、請求項1~7のいずれかの項に記載の射出圧縮成形方法。
【請求項9】
金型が設けられている型盤と、
前記金型に設けられて前記金型の型開量を検出する位置センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記金型が型開き状態で射出材料が射出される型開射出工程と、該型開射出工程の後で前記金型の型開量を狭める圧縮工程とからなる射出圧縮成形を実施するとき、
前記型開射出工程において、前記位置センサの検出結果に基づいて型開量が一定になるよう制御するようになっており、
前記圧縮工程において、前記型盤を駆動して前記金型の型開量を広げる型開段階と、該型開段階後に
前記型盤を駆動して前記金型の型開量を狭める圧縮段階とを制御するようになっている、型締装置。
【請求項10】
前記圧縮工程において射出材料の射出が継続されるようになっている、請求項9に記載の型締装置。
【請求項11】
前記型締装置の型締機構はトグル機構である、請求項9または10に記載の型締装置。
【請求項12】
前記型締装置はサーボモータで駆動されるようになっている、請求項9~11のいずれかの項に記載の型締装置。
【請求項13】
1回の前記型開射出工程と1回の前記圧縮工程とを1段の射出圧縮工程とし、該射出圧縮工程が2段以上繰り返されるようになっている、請求項9~12のいずれかの項に記載の型締装置。
【請求項14】
前記位置センサは接触式センサからなる、請求項9~13のいずれかの項に記載の型締装置。
【請求項15】
前記位置センサは非接触式センサからなる、請求項9~14のいずれかの項に記載の型締装置。
【請求項16】
前記金型には前記金型の型閉じに反発するスプリングが内蔵されている、請求項9~15のいずれかの項に記載の型締装置。
【請求項17】
金型が設けられている型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、
前記金型に設けられて前記金型の型開量を検出する位置センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記金型が型開き状態で射出材料が射出される型開射出工程と、該型開射出工程の後で前記金型の型開量を狭める圧縮工程とからなる射出圧縮成形を実施するとき、
前記型開射出工程において、前記位置センサの検出結果に基づいて型開量が一定になるよう制御するようになっており、
前記圧縮工程において、前記型締装置を駆動して前記金型の型開量を広げる型開段階と、
該型開段階後に前記型締装置を駆動して前記金型の型開量を狭める圧縮段階とを制御するようになっている、射出成形機。
【請求項18】
前記圧縮工程において射出材料の射出が継続されるようになっている、請求項17に記載の射出成形機。
【請求項19】
前記型締装置の型締機構はトグル機構である、請求項17または18に記載の射出成形機。
【請求項20】
前記型締装置はサーボモータで駆動されるようになっている、請求項17~19のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項21】
1回の前記型開射出工程と1回の前記圧縮工程とを1段の射出圧縮工程とし、該射出圧縮工程が2段以上繰り返されるようになっている、請求項17~20のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項22】
前記位置センサは接触式センサからなる、請求項17~21のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項23】
前記位置センサは非接触式センサからなる、請求項17~22のいずれかの項に記載の射出成形機。
【請求項24】
前記金型には前記金型の型閉じに反発するスプリングが内蔵されている、請求項17~23のいずれかの項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を開いた状態で射出する射出工程と、型開量を狭める圧縮工程とによって成形品を得る射出圧縮成形方法、および射出圧縮成形方法が実施される型締装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型に射出材料を射出して成形品を得る射出方法として、例えば特許文献1に記載されているような、射出圧縮成形方法がある。射出圧縮成形方法は、金型を開いた状態にして射出材料を射出する射出工程を実施し、その後型締装置を駆動して型開量を狭める圧縮工程を実施する。圧縮工程においても継続して射出材料を射出するようにしてもいいし、射出を停止してもよい。いずれにしてもキャビティに射出材料が射出された状態で圧縮工程を実施することによって、射出材料がキャビティに効率よく充填されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出圧縮成形方法の射出工程は金型を開いた状態で実施するが、金型を開いた状態で維持するために型締装置は型開量を一定にする必要がある。例えばトグル式型締装置であれば、トグル機構のクロスヘッドの位置が一定になるように制御する。つまりクロスヘッドを駆動する型締サーボモータについてモータ位置を一定にする制御を実施している。このような制御によって射出工程における型開量は一定に保持され、射出が安定して成形品の品質が一定になるはずである。しかしながら、成形サイクル中、もしくは成形ショット毎に型開量が変化することがあり、成形が安定しないという問題がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、射出成形機において金型の型開量を直接検出する位置センサを型盤もしくは金型に設ける。金型を開いた状態にして射出材料を射出する型開射出工程と、その後に型締装置を駆動して金型の型開量を狭める圧縮工程とからなる射出圧縮成形方法を実施するとき、型開射出工程において、位置センサから検出される型開量が一定になるように型締装置を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、型開射出工程において型開量が一定になるように型締装置を制御するので、成形サイクル毎に型開量が変化することはなく、射出が安定して品質が一定の成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の工程を示すフローチャートである。
【
図3A】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の開始時における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3B】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の型閉工程における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3C】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の1段目の型開射出工程における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3D】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の1段目の圧縮工程における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3E】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の2段目の型開射出工程における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3F】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法の2段目の圧縮工程における、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図4】本実施の形態に係る射出圧縮成形方法を実施するときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化を示すグラフである。
【
図5】従来の射出圧縮成形方法を実施するときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化を示すグラフである。
【
図6】本実施の他の形態に係る射出圧縮成形方法を実施するときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化を示すグラフである。
【
図7】従来の射出圧縮成形方法を実施するときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化を示すグラフである。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0010】
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドBに設けられている型締装置2と射出装置3とから概略構成されている。型締装置2は、固定盤7と、可動盤8と、型締ハウジング9と、型締ハウジング9と固定盤7とを連結しているタイバー10、10、…と、トグル機構11とから構成されている。型締装置2には型締サーボモータ13が設けられ、伝達機構15を介してボールネジ機構16を回転し、トグル機構11のクロスヘッド17を駆動するようになっている。
【0011】
射出装置3は、加熱シリンダ19と、この加熱シリンダ19に入れられているスクリュ20とから概略構成されている。本実施の形態に係る射出成形機1には、コントローラ22が設けられ、型締装置2の型締サーボモータ13や射出装置3を制御するようになっている。
【0012】
<金型>
本実施の形態においては、型締装置2に設けられている金型に特徴がある。金型は、固定盤7に設けられている固定側金型24と、可動盤8に設けられている可動側金型25
とから構成されているが、射出圧縮成形用の金型になっている。
【0013】
固定側金型24は、そのパーティングラインが平面状になっているが、可動側金型25は、その周囲がパーティングラインから後退して段部27が形成されており、それによって中央部に凸部28が形成されている。この段部27には複数個のスプリング30、30を介して枠体31が設けられている。枠体31は、スプリング30、30によって前方に押されているが、固定側金型24によって押されると後退するようになっている。固定側金型24のパーティングラインと可動側金型25の凸部28と枠体31とからキャビティが構成されることになるが、型閉して枠体31が後退することによって、キャビティの容積が小さくなる。これによってキャビティに射出された射出材料を圧縮できるようになっている。
【0014】
固定側金型24は、スプル33とランナ34が設けられており、加熱シリンダ19に設けられている射出ノズル35がスプル33に接している。
【0015】
<位置センサ>
本実施の形態に係る射出成形機1には、金型24、25の型開量を直接検出する位置センサ36が設けられている点に特徴がある。位置センサ36は、型盤つまり固定盤7や可動盤8に設けるようにしてもよいが、本実施の形態においては金型24、25に設けられている。本実施の形態において位置センサ36はピン38を備えた接触式センサからなる。位置センサ36は可動側金型25に固定されており、ピン38が当たる検出片39が枠体31に設けられている。したがって、金型24、25が型閉じされて枠体31が後退すると、型開量が減少して位置センサ36によって検出されることになる。この位置センサ36もコントローラ22に接続され、型開量がコントローラ22に入力されている。
【0016】
<本実施の形態に係る射出圧縮成形方法>
本実施の形態に係る射出圧縮成形方法を説明する。
成形サイクルの開始時において、金型24、25は
図3Aに示されているように、完全に型開きされた状態になっている。
図2に示されているように、コントローラ22は最初に型閉工程S1を実施する。すなわち、型締サーボモータ13を駆動して可動盤8を型閉方向に駆動して、固定側金型24と可動側金型25の枠体31とが接する位置にする。つまり所定の型開量だけ型開きされた状態まで型閉じする。つまりキャビティが構成される位置にする。この状態が
図3Bに示されている。
【0017】
<1段目の型開射出工程>
このキャビティが構成され、型開きされた状態で1段目の型開射出工程S2を実施する。つまり、コントローラ22は射出装置3のスクリュ20を駆動して一定速度で前進させる。これによって、
図3Cに示されているように、金型24、25のキャビティに射出材料が充填される。
【0018】
射出材料がキャビティに射出されると、その射出圧力が金型24、25に作用する。この射出圧力によってタイバー10、10がわずかに伸長して型開量がわずかに大きくなる。しかしながら本実施の形態に係る射出圧縮成形方法では、1段目の型開射出工程S2において型開量が一定になるように制御する。具体的には、コントローラ22は位置センサ36で検出される型開量が一定になるように、型締サーボモータ13のモータ位置を制御する。これによって1段目の型開射出工程S2における型開量の変化を抑制する。
【0019】
図4のグラフを参照すると、1段目の型開射出工程S2において、符号51で示されているように型開量が一定に制御されている。このとき、型締サーボモータ13のモータ位置は型開量を一定にするために、符号52で示されているように1段目の型開射出工程S2の間、少しずつ変化している。タイバー10、10の伸長を相殺して型開量が一定になるよう制御しているからである。またタイバー10、10がわずかに伸長するので、型締力は符号53で示されているように1段目の型開射出工程S2においてわずかずつ上昇している。
【0020】
1段目の型開射出工程S2は、キャビティに充填される射出材料が基準となる充填率、例えば50%に達したら完了する。基準となる充填率に達したか否かは、スクリュ20の位置、つまりスクリュ位置で検出してもいいし、1段目の型開射出工程S2の開始からの経過時間で検出してもよい。
【0021】
<1段目の圧縮工程>
1段目の型開射出工程S2の完了後、コントローラ22は1段目の圧縮工程S3を実施する。すなわち
図3Dに示されているように、型締サーボモータ13を駆動して金型24、25を型閉方向に圧縮する。型開量は
図4のグラフにおいて符号55で示されているように狭くなる。型開量が基準量に達したら1段目の圧縮工程S3を完了する。なお、1段目の圧縮工程S3において射出材料の射出は停止してもいいし、射出を継続してもよい。本実施の形態においてはこの工程中においてもスクリュ20を前進させて射出材料の射出を継続している。したがって、
図4のグラフにおいて符号56で示されているようにスクリュ位置は前進し続けている。1段目の圧縮工程S3によって型締力は符号57で示されているように上昇する。
【0022】
<2段目の型開射出工程>
2段目の型開射出工程S4を実施する。つまり、コントローラ22は射出装置3のスクリュ20を駆動して一定速度で前進させる。これによって、
図3Eに示されているように、金型24、25のキャビティに追加的に射出材料が充填される。
【0023】
2段目の型開射出工程S4においても型開量が一定になるように制御する。すなわちコントローラ22は位置センサ36で検出される型開量が一定になるように、型締サーボモータ13のモータ位置を制御する。これによって2段目の型開射出工程S4における型開量の変化を抑制する。
【0024】
2段目の型開射出工程S4においても、
図4のグラフにおいて符号59で示されているように型開量が一定に制御されるので、型締サーボモータ13のモータ位置は符号60で示されているように少しずつ変化している。またこの工程の間、タイバー10、10がわずかに伸長するので、型締力は符号61で示されているようにわずかずつ上昇する。
【0025】
2段目の型開射出工程S4は、キャビティに充填される射出材料が基準となる充填率、例えば80%に達したら完了する。
【0026】
<2段目の圧縮工程>
2段目の型開射出工程S4の完了後、コントローラ22は2段目の圧縮工程S5を実施する。すなわち型締サーボモータ13を駆動して金型24、25を型締する。
図3Fに示されているように、射出材料はキャビティ全体に充填される。この2段目の圧縮工程S5において射出材料の射出は停止してもいいし、射出を継続してもよい。本実施の形態においてはこの工程中においてもスクリュ20を前進させて射出材料の射出を継続している。したがって、
図4のグラフにおいて符号63で示されているようにスクリュ位置は前進し続けている。スクリュ位置が完了位置に達したら射出を停止する。射出材料が冷却固化したら2段目の圧縮工程S5を完了する。
【0027】
<型開工程、突出工程>
図2に示されているように、型開工程S6を実施する。すなわち型締サーボモータ13を駆動して金型24、25を型開する。ついで突出工程S7を実施して成形品を突き出す。成形サイクルを完了する。再び型閉工程S1に戻って成形サイクルを繰り返す。
【0028】
<従来の射出圧縮成形方法>
従来の射出圧縮成形方法でも、型開状態で射出する射出工程、型締装置を駆動して型開量を狭める圧縮工程からなる。しかしながら射出工程において型開状態で射出するとき、従来は型締サーボモータ13のモータ位置が変化しないように制御している。換言すると、
図5のグラフにおいて符号70で示されているように、クロスヘッド17の位置が変化しないように制御している。そうすると、型開量は符号71で示されているように、少しずつ開いてしまう。クロスヘッド17の位置が一定でも、射出圧力によってタイバー10、10がわずかに伸長するからである。これによって型締力も符号72で示されているように僅かに大きくなる。
【0029】
1段目の射出工程を完了後、1段目の圧縮工程を実施する。ついで2段目の射出工程を実施するとき、1段目の射出工程と同様に従来の制御方法では型締サーボモータ13のモータ位置が変化しないようにしている。したがって、型開量は符号75で示されているように少しずつ開いてしまう。これによって型締力も符号76で示されているように僅かに大きくなる。
【0030】
このように従来の射出圧縮成形方法では、射出工程において型開量が少しずつ広がってしまうので、射出を安定させることができない。したがって、成形サイクル毎に射出工程における型開量が異なってしまい、成形品の品質にばらつきが生じる原因になっている。
【0031】
これに対して本実施の形態に係る射出圧縮成形方法では、型開射出工程S2、S4において型開量が一定になるように制御しているので、射出が安定する。したがって得られる成形品の品質を一定に維持できるという効果が得られる。
【0032】
<本実施の他の形態に係る射出圧縮成形方法>
上の実施の形態に係る射出圧縮成形方法において、圧縮工程S3、S5は、型締サーボモータ13を駆動して金型24、25を型締めするように説明した。つまり金型24、25の型開量を狭める方向に駆動するだけであるように説明した。しかしながら、圧縮工程S3、S5は、型開量を一時的に広げる型開段階と、この型開段階の後に実施する型開量を狭める圧縮段階と、から構成しても良い。
図6には、2段目の圧縮工程S5‘を、型開段階81と圧縮段階82とから構成した射出圧縮成形方法を実施したときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化が示されている。
【0033】
図6のグラフに示されているように、2段目の圧縮工程S5‘では、型開段階81を実施して型開量を符号84で示されているように広げる必要がある。従って、型締サーボモータ13のモータ位置は符号85で示されているように一時的に型開方向に駆動する。そうすると、必然的に型締力は符号86で示されているように低下する。
【0034】
2段目の圧縮工程S5‘において、型開段階81の次に型締段階82を実施する。つまり、符号87で示されているように、型締サーボモータ13を駆動する。そうすると、型開量が符号88で示されているように狭められ、型締力が符号89で示されているように大きくなる。これによってキャビティ内に充填された射出材料を圧縮する。
【0035】
なお、この実施の形態では1段目の圧縮工程S3については型開段階と圧縮段階とから構成していないが、1段目の圧縮工程S3についても型開段階と圧縮段階とから構成するようにしてもよい。さらには、1段目の圧縮工程S3、2段目の圧縮工程S5‘においてスクリュ20を前進させて射出材料の射出を継続しているが、スクリュ20を停止して射出を停止するようにしてもよい。
【0036】
<従来の射出圧縮成形方法>
図7には、2段目の圧縮工程を型開段階と圧縮段階とから構成した、従来の射出圧縮方法を実施したときの、スクリュ位置、射出圧力、型開量、型締サーボモータ位置、そして型締力の変化が示されている。
【0037】
この従来の射出圧縮方法の2段目の圧縮工程では、型開段階を実施して型締サーボモータ13を符号92で示されているように駆動して型開量を符号91で示されているように広げている。その後、型締段階を実施して型締サーボモータ13を符号93で示されているように駆動して型開量を符号94で示されているように狭めている。従って、符号95、96で示されているように型締力は一時的に低下した後に大きくなっている。
【0038】
従って、適切に射出圧縮成形方法が実施できているように見える。しかしながら、符号101、102に示されているように1段目、2段目の射出工程において型締サーボモータ13のモータ位置を一定に制御しているので、射出圧力によって型開量は符号103、104で示されているようにわずかに開いてしまい、型締力も符号105、106で示されているように変化してしまう。従って、成形サイクル毎に射出工程における型開量が異なってしまい、成形品の品質にばらつきが生じる原因になる。
【0039】
<本発明の他の実施の形態>
本実施の形態に係る射出成形機1や金型24、25はいろいろな変形が可能である。
図6には第2の実施の形態が示されている。この実施の形態において可動側金型25‘は、枠体31が油圧シリンダ41、41によって押し上げられるようになっている。この実施の形態においても金型24、25’を型閉じして型開量を小さくすると枠体31が油圧シリンダ41、41の押力に抗して押し込まれることになる。
【0040】
この実施の形態においては、位置センサ36‘も前実施の形態と異なっている。位置センサ36’は、レーザによって位置を測定する非接触式センサからなる。位置センサ36‘はマーカ42との距離を測定することによって型開量を検出するようになっている。
【0041】
図7には第3の実施の形態が示されている。この実施の形態において固定側金型24‘’と可動側金型25‘’は、いわゆるインロー型の金型になっている。つまり、固定側金型24‘’は周辺部が比較的高く突き出た形状をしており、可動側金型25‘’は周辺部が後退した形状をしている。インローのように金型24‘’、25‘’が結合され、型開射出工程、圧縮工程が実施できるようになっている。
【0042】
本実施の形態に係る射出圧縮工程では、型開射出工程と圧縮工程とを、それぞれ2回ずつ実施している。つまり2段分実施している。しかしながら1段のみで実施してもよく、3段以上で実施してもよい。段数にかかわらず型開射出工程において、位置センサ36によって検出される型開量が一定になるように型締サーボモータ13を制御すればよい。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 7 固定盤
8 可動盤 9 型締ハウジング
10 タイバー 11 トグル機構
13 型締サーボモータ 17 クロスヘッド
19 加熱シリンダ 20 スクリュ
22 コントローラ 24 固定側金型
25 可動側金型 30 スプリング
31 枠体 36 位置センサ
38 ピン 39 検出片
41 油圧シリンダ