(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020178940
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 澄斗
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107648(JP,A)
【文献】特開2014-203008(JP,A)
【文献】特開2019-056862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成されるべき画像の階調特性を調整するための変換条件を用いて、画像データ
を変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された画像データに基づき、用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された用紙を排紙するため、前記画像形成手段から用紙を搬送する搬送手段と、
前記
画像形成手段によってテスト画像が形成された用
紙を前記搬送手段が搬送中に、該テスト画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段により画像が形成されるべき用紙の種類に対応する前記テスト画像の目標読取結果を記憶する記憶手段と、
前記
読取手段により
読み取られた前記テスト画像の読取結果
と前記記憶手段に記憶された前記テスト画像の目標読取結果とに基づいて前記変換条件を生成する制御手段と
、を備え、
前記制御手段は、前記画像形成手段
が第1の種類の用紙に画像を形成した後に前記第1の種類と異なる第2の種類の用紙に画像を形成する場合、前記第2の種類の用紙の1枚目に形成された前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記第2の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を決定することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記
テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向に直交する方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記
テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記
テスト画像は、複数の異なる階調の画像であることを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記
テスト画像は、複数の異なる色の階調を有する画像であることを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記画像形成手段が前記第1の種類の複数の用紙に画像を形成する場合であっても、前記第1の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を決定してからの経過時間が所定時間以上ならば、該所定時間経過後に前記読取手段により読み取られた前記第1の種類の用紙上の前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記第1の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を更新することを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記画像形成手段が前記第1の種類の複数の用紙に画像を形成する場合であっても、前記第1の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を決定してからの画像形成枚数が所定枚数以上ならば、該所定枚数に達した後に前記読取手段により読み取られた前記第1の種類の用紙上の前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記第1の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を更新することを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項8】
形成されるべき画像の階調特性を調整するための変換条件を用いて、画像データを変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された画像データに基づき、用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された用紙を排紙するため、前記画像形成手段から用紙を搬送する搬送手段と、
前記画像形成手段によってテスト画像が形成された用紙を前記搬送手段が搬送中に、該テスト画像を読み取る読取手段と、
前記テスト画像の目標読取結果を記憶する記憶手段と、
前記読取手段により読み取られた前記テスト画像の読取結果と前記記憶手段に記憶された前記テスト画像の目標読取結果とに基づいて前記変換条件を生成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記テスト画像の目標読取結果が設定されてからの経過時間が所定時間以上ならば、該所定時間経過後に前記読取手段により読み取られた前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記テスト画像の目標読取結果を更新することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項9】
前記テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向に直交する方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項
8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記
テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項
8記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記
テスト画像は、複数の異なる階調の画像であることを特徴とする、
請求項
8記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記
テスト画像は、複数の異なる色の階調を有する画像であることを特徴とする、
請求項
8記載の画像形成装置。
【請求項13】
形成されるべき画像の階調特性を調整するための変換条件を用いて、画像データを変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された画像データに基づき、用紙に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された用紙を排紙するため、前記画像形成手段から用紙を搬送する搬送手段と、
前記画像形成手段によってテスト画像が形成された用紙を前記搬送手段が搬送中に、該テスト画像を読み取る読取手段と、
前記テスト画像の目標読取結果を記憶する記憶手段と、
前記読取手段により読み取られた前記テスト画像の読取結果と前記記憶手段に記憶された前記テスト画像の目標読取結果とに基づいて前記変換条件を生成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記テスト画像の目標読取結果が設定されてからの画像形成枚数が所定枚数以上ならば、該所定枚数に達した後に前記読取手段により読み取られた前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記テスト画像の目標読取結果を更新することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項14】
前記テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向に直交する方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項13記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記テスト画像は、前記搬送手段が前記用紙を搬送する搬送方向において前記用紙の端部領域に形成されることを特徴とする、
請求項13記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記テスト画像は、複数の異なる階調の画像であることを特徴とする、
請求項13記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記テスト画像は、複数の異なる色の階調を有する画像であることを特徴とする、
請求項13記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド画像形成装置の市場が拡大している。例えば、オフセット印刷市場には、電子写真方式の画像形成装置が広がりつつある。また、ラージフォーマット、低イニシャルコスト、超高速等の理由で幅広い市場開拓に成功したインクジェット方式の画像形成装置がある。しかし市場拡大は容易なものではなく、その市場を担ってきた先行の画像形成装置の画像品質(以下、「画質」と呼ぶ。)が維持されなければならない。
【0003】
画質には、階調性、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)等がある。この中で最も重要なのは色再現性であるといわれている。人間は、経験に基づいた期待する色(特に人肌、空、金属等)についての記憶があり、この記憶の許容範囲を超えた色については違和感をおぼえる。このような記憶された色は「記憶色」と呼ばれる。記憶色は、写真等への出力時にその再現性が重要になる。この他にも、印刷されたビジネス文書とモニタとの色の差に違和感を覚えてしまうオフィスユーザ層、コンピュータグラフィックスを扱うグラフィックアーツユーザ層等は、オンデマンド画像形成装置に対する安定性を含んだ色再現性への要求度が高い。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的に、形成する画像の階調特性が目標の階調特性(目標階調)に一致するように階調特性の補正を行っている。階調特性の補正には、各階調値に対して補正後の階調値が設定された階調補正デーブルが用いられる。画像の階調特性は、画像形成装置の設置環境の変化や経時変化により変動する。そのために画像形成装置は、定期的に階調特性の調整(キャリブレーション)を行って、階調補正テーブルを最適化している。キャリブレーションは、用紙に階調調整用画像を形成することで行われる。用紙に形成された階調調整用画像はスキャナ等の読取装置で読み取られる。読み取られた階調調整用画像から得られる階調特性と目標階調との差異に応じて、階調補正テーブルが更新される。
【0005】
階調調整用画像は、例えば、用紙上の、印刷ジョブに応じた画像が形成される画像領域を除いた非画像領域に形成される(特許文献1)。これにより、ユーザが所望する画像とは別紙に階調調整用画像を形成する必要がなくなり、印刷ジョブを中断する必要がなく、ヤレ紙の発生が回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
用紙の抵抗値や表面性(表面の凹凸)等が原因で、印刷に用いられるトナー量が同じであっても用紙上の画像濃度が変化することがある。用紙の種類毎の画像濃度の変化に対応するために、用紙の種類毎に目標階調(目標濃度と同義)を保持すると、メモリの記憶容量が増加する等のコストが発生する。そこで、印刷ジョブ単位で色安定性を向上させるために、印刷ジョブの1枚目の用紙(先頭紙)の階調特性を目標階調とする方法がある。1つの印刷ジョブでは同じ種類の用紙が用いられる。そのために先頭紙の階調特性を目標階調に用い、先頭紙の画像の画質に対する相対的な制御を行うことで、メモリの記憶容量を増加させることなく画質を維持することができる。
【0008】
目標階調を決定する際の読取装置の読取結果は、読取装置による画像読取の繰り返し精度によりばらつくことがある。これは、用紙の種類が同じであっても目標階調がばらつく原因となる。そのために階調特性の監視及び調整を行った結果にズレが生じ、長時間にわたって継続して適切な階調の画像を出力し続けることができない可能性がある。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、階調補正に必要な目標階調を適切なタイミングで取得し、長期間にわたって適切な色の画像を出力できる画像形成装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置は、形成されるべき画像の階調特性を調整するための変換条件を用いて、画像データを変換する変換手段と、前記変換手段により変換された画像データに基づき、用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により画像が形成された用紙を排紙するため、前記画像形成手段から用紙を搬送する搬送手段と、前記画像形成手段によってテスト画像が形成された用紙を前記搬送手段が搬送中に、該テスト画像を読み取る読取手段と、前記画像形成手段により画像が形成されるべき用紙の種類に対応する前記テスト画像の目標読取結果を記憶する記憶手段と、前記読取手段により読み取られた前記テスト画像の読取結果と前記記憶手段に記憶された前記テスト画像の目標読取結果とに基づいて前記変換条件を生成する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記画像形成手段が第1の種類の用紙に画像を形成した後に前記第1の種類と異なる第2の種類の用紙に画像を形成する場合、前記第2の種類の用紙の1枚目に形成された前記テスト画像の読取結果に基づいて、前記第2の種類の用紙に対応する前記テスト画像の目標読取結果を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、階調補正に必要な目標階調を適切なタイミングで取得し、長期間にわたって適切な色の画像を出力可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
(画像形成システム)
図1は、本実施形態の画像形成装置を含む画像形成システムの構成図である。画像形成システム1は、画像形成装置10、読取装置50、及び操作部180を備える。画像形成装置10は、用紙への画像形成(印刷)を行う。読取装置50は、用紙に形成された階調調整用のテスト画像である階調調整用画像を読み取る。操作部180は、入力装置と出力装置とを有するユーザインタフェースである。入力装置は各種キーボタンやタッチパネルである。出力装置はディスプレイやスピーカである。
【0015】
画像形成装置10は、4つの作像ユニット181Y、181M、181C、181K、中間転写ベルト182、二次転写ローラ183、定着器184、複数(ここでは2つ)の給紙カセット185、及び反転機構186を備えている。各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kは、中間転写ベルト182のベルト面に沿って配置される。中間転写ベルト182は、複数のローラにより巻き回されて所定方向(本実施形態では図中時計回り方向)に回転する無端状の転写体である。二次転写ローラ183及び定着器184は、給紙カセット185から搬送される用紙の搬送経路上に配置される。給紙カセット185には所定サイズの用紙が収容される。本実施形態では、給紙カセット185が2つ設けられており、各給紙カセット185に収容される用紙は、同じ種類であってもよいが異なる種類であってもよい。
【0016】
各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kは同じ構成であり、形成する画像の色が異なるのみである。作像ユニット181Yは、イエロー(Y)の画像を形成する。作像ユニット181Mは、マゼンタ(M)の画像を形成する。作像ユニット181Cは、シアン(C)の画像を形成する。作像ユニット181Kは、ブラック(K)の画像を形成する。ここでは、作像ユニット181Yの構成について説明し、他の作像ユニット181M、181C、181Kの構成の説明を省略する。
【0017】
作像ユニット181Yは、露光器18a、感光体18b、現像器18c、帯電器18d、及びクリーナ18eを備える。感光体18bは、表面に感光層を有したドラム形状の像担持体である。感光体18bは、ドラム軸を中心にして図中反時計回りに回転する。帯電器18dは、回転する感光体18bの感光層に電圧を印加して感光体18bの表面を一様に帯電させる。露光器18aは、イエローの画像の各画素の階調値に応じたレーザビームを、帯電された感光体18bの表面に照射する。レーザビームの照射により、感光体18bの表面に静電潜像が形成される。なお、他の色の作像ユニットの露光器18aは、対応する色の画像の各画素の階調値に応じたレーザビームを照射する。これにより他の色の作像ユニットの感光体18bは、対応する色の静電潜像が形成される。
【0018】
現像器18cは、イエローのトナー等の色材により感光体18bに形成された静電潜像を現像する。静電潜像の現像により、感光体18bにイエローの画像が形成される。他の色の作像ユニットの現像器18cは、対応する色の色材により静電潜像を現像する。これにより他の色の作像ユニットの感光体18bは、対応する色の画像が形成される。
【0019】
各作像ユニット181Y、181M、181C、181Kのそれぞれの感光体18bに形成された画像は、中間転写ベルト182に順次重畳するように転写される。各色の画像が転写された中間転写ベルト182上には、フルカラーの画像が形成される。転写後に感光体18bに残留する色材は、クリーナ18eにより除去される。
【0020】
用紙は、中間転写ベルト182に形成された画像が中間転写ベルト182の回転により二次転写ローラ183に搬送されるタイミングに応じて、給紙カセット185から二次転写ローラ183へ搬送される。二次転写ローラ183は、中間転写ベルト182から用紙にフルカラーの画像を転写する転写部として機能する。画像が転写された用紙は、定着器184へ搬送される。定着器184は、画像が転写された用紙を加熱及び加圧することで、用紙に画像を定着させる。用紙の片面へ画像を形成する場合、以上により画像形成処理が終了する。用紙の両面へ画像を形成する場合、片面に画像が形成された用紙は、定着器184から反転機構186へ搬送されて表裏面を反転される。表裏面が反転した用紙は、再度二次転写ローラ183へ搬送され、同様の手順で裏面に画像が形成される。
【0021】
画像形成装置10は、印刷ジョブに応じて上記のような画像形成処理(印刷処理)を行う。印刷ジョブには、形成する画像を表すデータや、使用する用紙の種類等の画像形成条件が含まれる。露光器18aは、印刷ジョブに応じたレーザビームを感光体18bに照射することになる。画像形成装置10は、用紙に画像を形成して生成した印刷物を読取装置50へ搬送する。
【0022】
後述するように、画像形成装置10は、印刷ジョブに応じて用紙上に形成される画像に追加して階調調整用画像を形成するか否かを判断する。階調調整用画像を追加して形成する場合、印刷ジョブで指示された画像データに階調調整用画像の画像データ(以下、「階調調整画像データ」という。)が付加される。画像データは、各色の画像の各画素の階調値を含むデータである。階調調整用画像が形成された印刷物は、読取装置50により読み取られる。階調調整用画像の読取結果に基づいて階調特性の監視及び調整が行われる。
【0023】
読取装置50は、第1搬送部51、第2搬送部52、第1読取センサ53、第2読取センサ54、及び測色部55を備える。第1搬送部51は、画像形成装置10から供給された印刷物を搬送する複数の搬送ローラ対511を備えている。第2搬送部52は、第1搬送部51から取得した印刷物を搬送する複数の搬送ローラ対521を備えている。第1読取センサ53と第2読取センサ54とは、印刷物が搬送される搬送経路を挟んだ位置に配置される。そのために読取装置50は、第1読取センサ53及び第2読取センサ54により、印刷物の両面の画像を一度の搬送動作で読み取ることができる。
【0024】
第1読取センサ53は、第1搬送部51に配置され、第1搬送部51を通過する印刷物の一方の面に形成された画像を読み取る。第1読取センサ53は、読取結果としてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号(輝度値)を出力する。第1読取センサ53は、例えば光学式センサである。第1読取センサ53は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ラインセンサやCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサ等のラインセンサが用いられる。第1読取センサ53は、ラインセンサを用いることで、印刷物(用紙)の搬送方向に直交する方向の印刷物の全体を読み取ることができる。
第2読取センサ54は、第2搬送部52に配置され、第2搬送部52を通過する印刷物の他方の面に形成された画像を読み取る。第2読取センサ54は、第1読取センサ53と同様の構成であり、読取結果としてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号(輝度値)を出力する。
ラインセンサは、印刷物の搬送方向(通紙方向)に直交する方向を1ラインとして画像を読み取る。そのために印刷物の搬送方向に直交する方向が主走査方向となる。印刷物の搬送方向が副走査方向となる。
【0025】
測色部55は、第2読取センサ54よりも印刷物の搬送方向の下流側に配置される。測色部55は、第2搬送部52を通過する印刷物の他方の面の画像を読み取る。測色部55は、印刷物上に形成された階調調整用画像の色を分光的に測定して、測色データを取得する。測色データは、XYZ等の表色系で表される。
【0026】
(コントローラ)
図2は、画像形成システム1の動作を制御するコントローラの説明図である。コントローラは、制御部70、記憶部12、通信部15、画像生成部16、画像処理部17、ジョブ解析部20、画像形成部19、階調調整用画像付加部30、及び表裏調整用画像付加部40を備える。制御部70には、上記した操作部180及び読取装置50も接続される。操作部180は、入力装置13及び出力装置14を含む。
【0027】
制御部70は、画像形成システム1を構成する各部の動作を制御する。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、RAM(Random Access Memory)72、及びROM(Read Only Memory)73を備える。CPU71は、ROM73や記憶部12に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像形成システム1の各部の動作を制御する。RAM72は、CPU71が処理を実行する際のワークエリアを提供し、各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。
【0028】
記憶部12は、制御部70(CPU71)により実行されるコンピュータプログラムや、処理に用いられるデータ等を記憶する。記憶部12は、後述する階調特性の監視、調整、及び表裏調整に用いられる値を記憶する。記憶部12には、ハードディスク等の大容量記憶装置を用いることができる。
【0029】
通信部15は、画像形成システム1の外部に設けられるコンピュータ等の外部装置との間の通信制御を行う通信インタフェースである。例えば、通信部15は、外部装置からネットワークを介してページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータ(以下、「PDLデータ」という)を受信する。PDLデータは、例えば画像形成を指示する印刷ジョブに含まれる。
【0030】
ジョブ解析部20は、通信部15を介して取得した印刷ジョブの画像形成条件を解析する。ジョブ解析部20は、印刷ジョブから印刷する文書名や印刷部数、出力先の排紙トレイ指定、複数バインダで構成されるジョブのバインダ順、用紙種類等の印刷ジョブ全体に関わるジョブ設定情報の詳細を解析する。
【0031】
画像生成部16は、通信部15を介して取得したPDLデータに対してラスタライズ処理を行い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎に、ビットマップ形式の画像データを生成する。画像データは、画素毎の階調値を含む。階調値は画像の濃淡を表すデータ値である。例えばデータ値が8ビットの場合、階調値は0~255階調の濃淡を表すことができる。
【0032】
画像処理部17は、画像生成部16により生成された画像データに対して、階調補正処理、中間調処理等の画像処理を行う。画像処理部17は、読取装置50による画像の読取結果であるR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の読取信号を色変換して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像データを生成することもできる。
【0033】
階調補正処理は、画像データに含まれる各色の階調値を、用紙上に形成される画像の階調特性が目標となる階調特性となるように変換する処理である。階調補正処理には、入力階調値に対応する出力階調値が定められた一次元の階調補正テーブルが用いられる。階調補正テーブルは、画像データの入力階調値(入力値)を出力階調値(出力値)へ変換する変換条件である。画像データに含まれるイエローの色成分の入力階調値を変換するためにはイエローの色成分用の階調補正テーブルが用いられる。画像データに含まれるマゼンタの色成分の入力階調値を変換するためにはマゼンタの色成分用の階調補正テーブルが用いられる。画像データに含まれるシアンの色成分の入力階調値を変換するためにはシアンの色成分用の階調補正テーブルが用いられる。画像データに含まれるブラックの色成分の入力階調値を変換するためには、ブラックの色成分用の階調補正テーブルが用いられる。なお、画像処理部17は、ユーザ画像(印刷ジョブで指示された画像)の画像データのみならず、ユーザ画像に付加される階調調整用画像の階調調整画像データも階調補正テーブルに基づいて変換する。また、中間調処理の種類には、例えば誤差拡散処理、組織的ディザ法を用いたスクリーン処理がある。
【0034】
画像形成部19は、制御部70の制御により、作像ユニット181Y、181M、181C、181K、中間転写ベルト182、二次転写ローラ183、定着器184、給紙カセット185、及び反転機構186の動作を制御する。画像形成部19により、用紙への画像形成処理が行われる。画像形成部19は、画像処理部17により画像処理された画像データの各画素の階調値に基づいて、複数の色からなる画像を用紙に形成する。本実施形態では、画像形成部19は、画像処理部17により画像処理された画像データに、階調調整画像データ及び表裏調整用画像の画像データ(以下、「表裏調整用画像データ」という。)が付加された画像データを用いて画像形成処理を行う。画像は用紙の中央寄せで形成されるものとする。
【0035】
階調調整用画像付加部30は、階調調整用画像が形成されるように、画像データに階調調整画像データを付加する。また、階調調整用画像付加部30は、後述の目標階調決定用画像が形成されるように、画像データに目標階調決定用画像の画像データ(以下、「目標階調画像データ」という。)を付加する。目標階調決定用画像は、目標となる階調特性を決定するためのテスト画像である。ここで、画像処理部17は、目標階調画像データを階調補正テーブルに基づいて変換する。画像形成部19は変換された目標階調画像データに基づいて目標階調決定用画像を用紙80に形成する。表裏調整用画像付加部40は、表裏調整用画像が形成されるように、画像データに表裏調整用画像の画像データを付加する。
【0036】
(階調調整用画像)
図3は、画像形成部19により用紙に形成される階調調整用画像の説明図である。なお、目標階調決定用画像は、階調調整用画像と同じ入力階調値に基づいて形成される画像である。
図3は、用紙80の一方の面に形成される画像を例示する。用紙80には、中央に画像領域81が設けられ、画像領域81の周囲と用紙80のエッジとの間に非画像領域82が設けられる。画像領域81には、画像処理部17により画像処理された画像データに基づくユーザ画像が形成される。非画像領域82には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎の階調調整用画像851Y、851M、851C、851K、表裏調整用画像841、842、及び断裁用マーク83が形成される。色を区別しない場合、階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kを「階調調整用画像851」と記載する。読取装置50により読み取られた目標階調決定用画像の読取データと読取装置50により読み取られた階調調整用画像851の読取データとは、階調補正テーブルを更新する更新処理に用いられる。読取装置50により読み取られた目標階調決定用画像の読取データ(目標読取データ)を目標階調と称す。断裁用マーク83は、ユーザにより予め付与される。断裁用マーク83は、L字形状のマークが2つ重なって構成され、画像領域81の四隅近傍に形成される。4つの断裁用マーク83により囲まれた部分(破線で囲まれた領域)が用紙80の断裁位置を形成する。なお、画像領域81を示す斜線は説明のために示したものであり、実際に用紙80上に形成されるものではない。
【0037】
階調調整用画像851は、用紙80の周縁部のいずれに形成してもよいが、
図3に示すように、用紙80の通紙方向に直交する方向の用紙80の両端部に形成されることが好ましい。すなわち、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれか2色の階調調整用画像851が通紙方向に直交する方向の一方の端部領域に形成され、残りの2色の階調調整用画像851が通紙方向に直交する方向の他方の端部領域に形成される。本実施形態では、階調調整用画像851C及び階調調整用画像851Mが通紙方向に直交する方向の一方の端部領域に形成され、階調調整用画像851Y及び階調調整用画像851Kが通紙方向に直交する方向の他方の端部領域に形成される。用紙80の通紙方向の先端部に階調調整用画像851が形成されないため、定着処理時の用紙80の巻き付きの発生を抑制することができる。
【0038】
階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kは、それぞれ階調値を段階的に異ならせた複数階調のパッチ画像により構成される。
図3では、階調調整用画像851は、10階調のパッチ画像により構成される。各パッチ画像は、例えば主走査方向の長さが8[mm]、副走査方向の長さが20[mm]である。主走査方向は通紙方向に直交する方向であり、副走査方向は通紙方向である。複数のパッチ画像は、用紙80の通紙方向に一列に配列される。
【0039】
階調値が255階調で表される場合、階調調整用画像851の一列に配列される複数のパッチ画像の階調値は、隣接するパッチ画像間の階調値の差が均等になるように、0~255のいずれかの値に設定される。また、両端のパッチ画像の階調値はそれぞれ0、255に設定される。なお、階調調整用画像851を構成するパッチ画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに限られるものではなく、R、G、BやプロセスBk等で形成されてもよい。
本実施形態では、A3サイズの1枚の用紙に、4色すべての階調調整用画像851Y、851M、851C、851Kが収まるように、階調調整用画像851のサイズが決定されている。
【0040】
用紙80に形成された画像は、読取装置50により読み取られる。読取装置50による階調調整用画像851Y、851M、851C、851K及び表裏調整用画像841、842の読取結果は、記憶部12或いは制御部70のRAM72に記憶される。記憶された読取結果は制御部70により解析される。
【0041】
制御部70は、画像形成部19により形成された画像の階調特性の監視及び調整を行う。制御部70は、用紙80に形成された階調調整用画像851を読取装置50に読み取らせ、その読取結果に基づいて階調補正テーブルを修正するための修正テーブルを生成する。そして、制御部70は予め記憶された階調補正テーブルと修正テーブルとを合成することで階調補正テーブルを新たに生成する。なお、本発明は修正テーブルを生成するとともに階調補正テーブルと修正テーブルを合成して階調補正テーブルが更新される構成に限定されない。例えば、制御部70が階調調整用画像851の読取データから直接階調補正テーブルを新たに生成する構成としてもよい。
【0042】
制御部70は、用紙80の1枚毎に、階調特性の監視と調整とを交互に行う。なお、本発明は1枚毎に階調特性の冠詞と調整とを交互に行う構成に限定されない。例えば、制御部70は、n枚分の読取データが取得される度に、n枚分の階調調整用画像851の読取データに基づき階調補正テーブルを更新する構成としてもよい。
【0043】
(画像形成処理)
制御部70は、印刷に用いられる用紙の種類が変更される度に目標とする階調特性(目標階調)を取得するか否かが判断される。目標階調は、用紙の種類が変更された場合に、変更後の1枚目の印刷物から取得される。画像形成装置10は、印刷ジョブで設定された画像形成条件で色安定性を高めるために、目標階調に対する相対的な制御により、用紙特性に左右されない構成となっている。また、制御部70は、目標階調を取得してから経過した時間が所定時間に達した後、目標階調を再度取得する。あるいは、制御部70は、目標階調を取得してから画像形成装置10により画像が形成された用紙の枚数が所定枚数に達した後、目標階調を再度取得する。これは、目標階調を取得してから時間が経過するほど、目標階調の確からしさが低下するからである。制御部70は、印刷ジョブが変わっても、印刷に用いる用紙の種類に変更がなく、経過時間が所定時間未満(及び画像形成枚数が所定枚数未満)ならば、目標階調を新たに取得することはない。印刷に用いる用紙の種類は、用紙の紙質の種類であり、印刷ジョブにより、普通紙、再生紙、コート紙等が設定される。用紙の種類は、例えば坪量、厚さ、ベック平滑度、体積抵抗、用紙サイズ、白色度によって区別される。
【0044】
市場には、多様な用紙種類が存在するために、印刷ジョブには、その種類の数だけ用紙の種類が設定可能としてもよい。画像形成システム1で使用可能な用紙種類は、入力装置13によりユーザが事前に登録することができる。用紙種類の登録情報は、例えば記憶部12に記憶される。
【0045】
ラインセンサである第1読取センサ53及び第2読取センサ54を有する読取装置50は、階調調整用画像の読み取りを、例えば600[dpi]で4[mm]*4[mm]の範囲を1単位として行う。この場合の1階調のパッチ画像の読取結果は、パッチ画像の副走査方向の両端部の2[mm]幅が光学的フレアやトナーエッジ効果の影響により読み込まれないために、2単位の読取結果である2データとなる。2データの平均値が当該パッチ画像の読取信号(輝度値)として採用される。なお、平均値の他に、最大値や最小値が読取信号(輝度値)に採用されてもよい。読取信号の算出は、読取装置50の構成や画像形成装置10の特徴により決定される。
【0046】
上記の通り、本実施形態では、A3サイズの用紙を縦送りしたときの1枚に、4色すべての階調調整用画像851が収まる範囲で階調調整用画像851のサイズが決定される。通常の階調調整用画像851は1枚毎に印字され、その読取信号から得られる階調と目標階調との差分により階調補正が行われる。前回登録した目標階調と今回登録した目標階調とが相違すると、一度の階調調整用画像851の読取誤差による影響が、形成した画像の階調に現れてしまう。
【0047】
図4は、本実施形態の画像形成処理を表すフローチャートである。この画像形成処理は、印刷ジョブ毎に行われる。印刷ジョブが画像形成装置10へ転送された場合、CPU71は、ROM73に格納された画像形成処理のプログラムを読み出すとともに実行する。この処理では、階調補正テーブルの更新処理に
図3の階調調整用画像851が用いられる。
【0048】
印刷ジョブが画像形成装置10へ転送された場合、先ずCPU71は、階調調整を行うか否かを判断する(S101)。階調調整を行うか否かは、ユーザにより入力装置13を用いて予め設定されている。設定内容はRAM72に格納されており、CPU71はRAM72を参照してこの判断を行う。
【0049】
階調調整を行う場合(S101:Yes)、CPU71は、目標階調の生成が必要か否かを判定する(S102)。S102の処理において、CPU71は、画像が形成される用紙の種類が記憶部12に記憶された目標階調が設定されている用紙の種類と一致するか否かを判定する。画像が形成される用紙の種類と目標階調が設定されている用紙の種類とが一致する場合、CPU71は、当該用紙の種類に対応する目標階調が生成されてから経過した時間が所定時間未満か否かを判定する。画像が形成される用紙の種類と記憶部12に記憶された目標階調が設定されている用紙の種類が一致し、且つ、目標階調が生成されてからの経過時間が所定時間未満ならば、CPU71は、目標階調の生成が不要と判定する。
一方、画像が形成される用紙の種類と目標階調が設定されている用紙の種類とが一致しない場合、CPU71は目標階調決定処理を実行する。又は、画像が形成される用紙の種類と目標階調が設定されている用紙の種類とが一致していたとしても、当該目標階調が生成されてからの経過時間が所定時間以上ならば、CPU71は目標階調決定処理を実行する。
【0050】
目標階調決定処理を開始する(S102:Yes)と、CPU71は、まず、画像生成部16により生成された1枚目用の画像データに、階調調整用画像付加部30により、該印刷ジョブの目標階調を決定するための目標階調画像データを付加する(S103)。目標階調画像データは、階調調整画像データと同じである。CPU71は、画像形成部19により、目標階調画像データが付加された画像データに基づいて、用紙上への画像形成処理を行う(S104)。これにより、
図3に例示するように、用紙80に、階調調整用画像851と、印刷ジョブで指示された画像と、が形成された印刷物が生成される。印刷物は、読取装置50へ搬送されて読み取られる。CPU71は、読取装置50による階調調整用画像851の読取結果(読取信号)から輝度値を取得する。CPU71は、取得した輝度値を目標階調として決定し、RAM72に登録する(S105)。
【0051】
階調調整用画像851の読取結果は、パッチ画像毎、つまり1色の1階調毎に9データである。CPU71は、9データから上下限の値を除いた7データの平均値を当該パッチ画像の輝度値とする。これにより、パッチ画像の輝度値を正確に判断することが可能となり、目標階調が高精度に決定される。
【0052】
目標階調決定処理が終了すると、CPU71は、階調補正テーブルの更新処理を開始する。階調補正テーブルの更新処理を開始すると、CPU71は、まず、画像生成部16により生成された画像データに、階調調整用画像付加部30により、階調調整画像データを付加する(S106)。CPU71は、画像形成部19により、階調調整画像データが付加された画像データに基づいて、用紙上への画像形成処理を行う(S107)。これにより、
図3に例示するように、用紙80に、階調調整用画像851と、印刷ジョブで指示された画像と、が形成された印刷物が生成される。印刷物は、読取装置50へ搬送されて読み取られる。CPU71は、読取装置50による階調調整用画像851の読取結果から輝度値を取得する。CPU71は、取得した輝度値と目標階調との差分に基づいて、階調補正テーブルを更新する(S108)。
【0053】
CPU71は、印刷ジョブに含まれる全ての画像を用紙に形成したか否かを判断する(S109)。印刷ジョブに含まれる全ての画像が用紙に形成された場合(S109:Yes)、CPU71は、画像形成処理を終了する。
印刷ジョブに含まれる全ての画像が用紙に形成されていない場合(S109:No)、CPU71は、S102以降の処理を印刷ジョブに含まれる全ての画像を用紙に形成するまで繰り返し実行する。
【0054】
なお、階調調整を行わない場合(S101:N)、CPU71は、画像形成部19により、画像生成部16により生成された画像データに基づいて、用紙上への画像形成処理を行い(S110)、処理をステップS109へ移行する。階調調整を行わない場合、階調調整用画像851は用紙上に印刷されない。
【0055】
以上のように、用紙上に階調調整用画像851を形成して階調調整を行う場合、目標階調の決定処理を行うか否かが、用紙種類が前回の印刷ジョブと同じであるか否かにより判断される。用紙種類が同じであり、且つ、目標階調が生成されてからの経過時間が所定時間未満である場合に目標階調を更新しないことで、読取装置50が原因で生じる測定誤差や用紙の搬送時のばたつきによる読取結果から得られる目標階調のズレが抑制される。そのために、同一の用紙種類で異なる印刷ジョブにより画像形成を行う場合の画質の変動が抑制できる。
【0056】
図5は、本実施形態による効果の説明図である。ここでは、印刷ジョブにより、印刷枚数が500枚で、1枚目の印刷物から目標階調を取得する条件が登録されている。同じ用紙種類を用いる連続した2つの印刷ジョブが行われる。
図5では、同じ印刷ジョブで500枚の印刷が2回行われるために、出力枚数が合計1000枚となっている。
【0057】
従来は、各印刷ジョブの開始時である1枚目の印刷物と501枚目の印刷物とから目標階調が登録されることになる。その結果、最初の印刷ジョブと次の印刷ジョブとで、従来は目標階調に約0.01の差(画像濃度が0.86と0.87)が発生している。このように従来は、印刷ジョブ間で同じ種類の用紙に対して異なる目標階調が設定される。
【0058】
本実施形態では、1つめの印刷ジョブの1枚目の印刷物に基づいて目標階調が設定されるが、2つめの印刷ジョブの1枚目の印刷物からは目標階調が設定されない。これにより読取装置50の読取バラツキの影響が抑制され、画像濃度のズレが生じないことになる。これによって、印刷物の画質が一定に保たれる。連続した印刷ジョブが3以上の場合にも、用紙種類が同じであれば、最初の印刷ジョブの1枚目の印刷物に基づいて目標階調が設定され、後続の印刷ジョブでは目標階調の設定が行われない。
【0059】
なお、目標階調を再登録する条件は、印刷ジョブの1枚目の用紙以外で行うことが好適である。目標階調の再登録は、印刷ジョブ内で完結する相対的な制御であり、画像形成装置10の設置環境(温度、湿度)が大きく変化した場合や電源がオフされた場合に行われる。そのため、目標階調が生成されてからの経過時間が所定時間以上となった後、或いは、目標階調が生成されてからの画像形成枚数が所定枚数以上に達した後、目標階調の再登録が実施される。また、階調補正を絶対基準で行う場合にも目標階調の再登録が行われる。
【0060】
以上のような本実施形態の画像形成装置10は、使用する用紙の種類が同一であるか否かにより新たな目標階調を取得するか否かを決定する。そのために目標階調が最適なタイミングで設定されることになる。目標階調が決定すると、画像形成装置10は、階調調整用画像の読取結果と目標階調との差分により階調補正を行うことで、長期間にわたり適切な色の画像を出力することが可能となる。
【0061】
(変形例)
目標階調は、用紙種類や用紙種類が指示されたタイミングだけではなく、用紙設定も考慮して取得されてもよい。例えば、目標階調は、用紙種類、用紙種類が指示されたタイミング、及び用紙設定の3条件のいずれかが先行する印刷ジョブと後続の印刷ジョブとで同一である場合に後続の印刷ジョブにおいて再取得されない。これらの条件は、操作部180により設定可能である。目標階調を取得するか否かの条件を操作部180により追加・削除するようにカスタマイズ可能とすることで、ユーザビリティが向上する。
【0062】
用紙種類の指示タイミングは、所定期間内で初めて印刷に用いられる用紙種類が指示されるタイミングである。所定期間は、例えば8時間、24時間(1日)、1週間、1時間等のユーザの使用状況に応じて、操作部180により適宜設定される。当該所定期間内で目標階調を取得した種類の用紙は、再度、該所定期間内で印刷に用いられる場合に目標階調が取得されない。つまり、所定期間内の印刷ジョブで用いられた用紙と同じ用紙種類や用紙設定の用紙に画像を形成する場合、目標階調が取得されない。
【0063】
用紙設定は、用紙種類よりもさらに詳細な用紙の種別や用紙の物理的特性である。例えば普通紙であっても、用紙の表面性は様々である。用紙の表面性は、形成する画像の画像濃度特性に影響する。用紙設定は、操作部180から入力される。ユーザは、操作部180の出力装置14に表示された用紙設定画面に応じて用紙設定を入力する。用紙設定画面には、例えば画像形成装置10に登録された用紙種類が一覧表示されており、入力装置13により一覧から選択されることで用紙設定が可能となる。また、用紙設定は、用紙の商品コード等の用紙の種類を特定するための情報により行われてもよい。
【0064】
画像形成装置10は、通信部15により外部のデータベースにアクセス可能である。通信部15は、例えばLAN(Local Area Network)、インターネット、専用回線等の既存の通信ネットワークを用いて通信を行う。使用可能な用紙の種類が予め登録されていない場合、画像形成装置10は、登録された用紙の種類を一覧表示することができない。この場合、画像形成装置10は、データベースにアクセスし、データベースに登録されている用紙の種類一覧を出力装置14に表示する。データベースサーバは、画像形成装置10から入力装置13により選択された用紙種類を取得すると、該用紙種類の物理的特性を画像形成装置10へ送信する。物理的特性には、例えば坪量、厚さ、ベック平滑度、体積抵抗、サイズ度、白色度等がある。
【0065】
図6は、データベースに記憶される用紙分類情報の例示図である。用紙分類情報には、カテゴリ1~5の物理的特性が設定されている。
図7は、画像形成装置10から取得した用紙種類に応じてデータベースサーバが検索した物理的特性の例示図である。用紙種類として「普通紙」を取得したデータサーバは、用紙分類情報から坪量、厚さ、ベック平滑度、及び体積抵抗のカテゴリを抽出する。画像形成装置10は、抽出されたカテゴリの物理的特性をデータベースから取得する。
【0066】
制御部70は、異なる印刷ジョブ間であっても用紙種類が同一であれば、同一ジョブと判断し、目標階調を取得しない。制御部70は、印刷ジョブで指示された用紙種類が初めて使用される用紙の種類か否かに基づいて、より適切なタイミングで目標階調を取得可能となる。
【0067】
以上のような処理では、用紙80に階調調整用画像851を印字して階調補正テーブルの更新処理を行う印刷ジョブの場合に、用紙種類が同一で、且つ、用紙種類が指示されたタイミングからの経過時間が所定時間未満であれば新たな目標階調が取得されない。そのために、読取装置50が原因で生じる測定誤差や用紙表面の凹凸によるムラ、用紙搬送による用紙のバタツキの読取結果への影響を抑制して、適切な目標階調を取得することができる。目標階調が決定すると、画像形成装置10は、階調調整用画像851の読取結果と目標階調との差分により階調補正テーブルを更新することで、長期間にわたり適切な色の画像を出力することが可能となる。
【0068】
以上説明した画像形成装置10は、用紙種類が大きく異ならない場合に、用紙特性の変更が無いと判断して目標階調を更新しない。また、同じ給紙カセット185から給紙される用紙は、給紙カセット185の開閉動作がなければ同じ用紙である可能性が高い。そのために、異なる印刷ジョブであっても同じ給紙カセット185の用紙が印刷に用いられる場合には、目標階調を更新しない構成としてもよい。
【0069】
また、制御部70は、画像が形成される用紙の種類と記憶部12に記憶された目標階調が設定されている用紙の種類が一致し、且つ、目標階調が生成されてからの経過時間が所定時間未満ならば目標階調の取得をしない。しかしながら、制御部70は、画像が形成される用紙の種類と記憶部12に記憶された目標階調が設定されている用紙の種類が一致する場合には、目標階調の取得をしない構成としてもよい。
【0070】
以上の説明では画像形成装置10と読取装置50とを別の装置としたが、これらの装置は一体に構成されていてもよい。例えば、画像形成装置10内で定着器184よりも用紙の搬送方向で下流側に第1読取センサ53及び第2読取センサ54が配置されていてもよい。
【0071】
画像形成システム1は、読取装置50の用紙搬送方向下流側に、ステイプル処理、パンチ穴開け処理、折り処理、製本処理等の用紙処理を行う用紙処理装置が設けられた構成であってもよい。用紙処理装置は、制御部70から指示された場合にのみ用紙処理を実行してもよい。制御部70からの指示がなく用紙処理を行わない場合、当該用紙処理装置は搬送された用紙をそのまま排紙する。
【0072】
また、第1読取センサ53は下方から用紙の画像を読み取り、第2読取センサ54及び測色部55は上方から用紙の画像を読み取るものとしたが、これは逆であってもよい。また、画像データに基づいて形成される画像に断裁用マーク83が含まれるものとしたが、断裁用マーク83が含まれないものとしてもよい。そのような場合、画像形成装置10は、画像データに基づいて画像が形成される用紙の断裁位置に断裁用マーク83が形成されるように、画像データに断裁用マーク情報を付加できるように構成されていてもよい。