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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】ベルトサンダ
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/06 20060101AFI20241118BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20241118BHJP
   B25B 23/18 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
B24B23/06
B25F5/00 Z
B25B23/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020184353
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2021074875
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】201921928797.6
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 迅
(72)【発明者】
【氏名】唐 成玉
(72)【発明者】
【氏名】王 彭生
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-062979(JP,A)
【文献】特公昭46-029113(JP,B1)
【文献】特開2003-211374(JP,A)
【文献】特開2016-083758(JP,A)
【文献】米国特許第05797670(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 23/00-23/08;
B25B 23/18;
B25F 5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトサンダであって、
ユーザによって把持されるための把持部と、
第1の回転軸線を有するモータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記モータの駆動力によって前記第1の回転軸線と同軸の第2の回転軸線を中心に回転するように構成された駆動ローラと、
前記第2の回転軸線と直交する方向に延在するアームと、
前記アームの先端に設けられた従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、
前記サンディングベルトのうちの露出される部分を照明可能な光源と、
前記駆動ローラと前記アームの一部分とを収容し、前記把持部と略一直線になるように前記アームと同一方向に延在するカバーと
を備え、
前記光源は、
前記第2の回転軸線が延在する方向に見て、前記カバーと少なくとも部分的に重複する位置に配置され、
前記アームの延在方向を前後方向と定義し、前記前後方向のうちの前記従動ローラが位置する側を前側、前記駆動ローラが位置する側を後側と定義したとき、前記モータハウジングの前側部分に支持され、
前記アームが延在する方向と平行に光を照射可能に構成され
ベルトサンダ。
【請求項2】
請求項1に記載のベルトサンダであって、
前記光源は、光の照射方向を変更可能に構成される
ベルトサンダ。
【請求項3】
請求項2に記載のベルトサンダであって、
前記アームは、前記把持部に対して枢動可能であり、
前記光源は、前記光の照射方向が変更されることによって、前記アームの第1の枢動位置における前記露出される部分と、前記アームの第2の枢動位置における前記露出される部分と、を照明可能に構成される
ベルトサンダ。
【請求項4】
ベルトサンダであって、
ユーザによって把持されるための把持部と、
第1の回転軸線を有するモータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記モータの駆動力によって第2の回転軸線を中心に回転するように構成された駆動ローラと、
前記第2の回転軸線と直交する方向に延在するアームと、
前記アームの先端に設けられた従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、
前記サンディングベルトのうちの露出される部分を照明可能な光源と、
前記駆動ローラと前記アームの一部分とを収容し、該アームと同一方向に延在するカバーと
を備え、
前記光源は、光の照射方向を変更可能に構成され、
前記アームは、前記把持部に対して枢動可能であり、
前記光源は、前記光の照射方向が変更されることによって、前記アームの第1の枢動位置における前記露出される部分と、前記アームの第2の枢動位置における前記露出される部分と、を照明可能に構成され、
前記アームが前記第1の枢動位置にあるときに、前記把持部と前記カバーとが略一直線になり、
前記光源は、
前記前記アームが前記第1の枢動位置にある状態において、
前記第2の回転軸線が延在する方向に見て、前記カバーと少なくとも部分的に重複する位置に配置され、
前記アームの延在方向を前後方向と定義し、前記前後方向のうちの前記従動ローラが位置する側を前側、前記駆動ローラが位置する側を後側と定義したとき、前記光源は、前記モータハウジングの前側部分に支持され、
前記アームが延在する方向と平行に光を照射可能に構成された
ベルトサンダ。
【請求項5】
請求項4に記載のベルトサンダであって、
前記第1の回転軸線は前記第2の回転軸線と同軸であり、
前記光源は、前記アームが前記第1の枢動位置にあるときに、前記モータよりも前記従動ローラに近い位置に位置する
ベルトサンダ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のベルトサンダであって、
前記光源は、回転軸と、前記回転軸を中心として枢動可能なライトと、を備え、
前記回転軸は、前記第2の回転軸線と平行に延在する
ベルトサンダ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のベルトサンダであって、
前記光源は、任意の方向に折れ曲がり可能に構成されたフレキシブルアームと、該アームの先端に取り付けられたライトと、前記ライトに電力を供給するための電池と、を有するフレキシブルライトユニットを備える
ベルトサンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト状の研磨要素を駆動する工具、すなわち、ベルトサンダに関する。
【背景技術】
【0002】
木工製品や金属製品を研磨する工具として、ベルトサンダが知られている。種々の型式のベルトサンダが存在するが、下記の特許文献1に記載されたベルトサンダは、ユーザによって把持されるための把持部と、駆動ローラと、アームと、アームの先端に設けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、を備えている。駆動ローラと従動ローラとの間で回転する無端のサンディングベルトを被研磨物に接触させることによって、被研磨物を研磨できる。
【0003】
この種のベルタサンダは、狭い箇所にもアームを挿入して研磨を行うことができるので、利便性が高い。狭い箇所は暗いこともあり、そのような場合、照明具(例えばヘッドライト)を別途使用して研磨箇所の周囲が照明されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10,137,554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ベルトサンダの利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、ベルトサンダが提供される。このベルトサンダは、ユーザによって把持されるための把持部と、モータと、モータの駆動力によって回転軸線を中心に回転するように構成された駆動ローラと、所定方向に延在するアームと、アームの先端に設けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡される無端のサンディングベルトと、サンディングベルトのうちの露出される部分を照明可能な光源と、を備えている。
【0007】
かかるベルトサンダによれば、狭く暗い箇所にアームを挿入して研磨を行う場合において、照明具を別途用意しなくても、サンディングベルトのうちの露出される部分、すなわち、研磨に使用する部分を照明することができる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0008】
本発明の一形態によれば、光源は、光の照射方向を変更可能に構成される。かかる形態によれば、ベルトサンダの使用状況に応じて光の照射方向を変更できるので、利便性が向上する。
【0009】
本発明の一形態によれば、アームは、把持部に対して枢動可能である。光源は、光の照射方向が変更されることによって、アームの第1の枢動位置における露出される部分と、アームの第2の枢動位置における露出される部分と、を照明可能に構成される。かかる形態によれば、用途に応じて、ベルトサンダを使用しやすいようにアームの枢動位置を変更することができる。しかも、アームの枢動位置に追従させて光の照射方向を変更して、露出される部分を照明することができる。
【0010】
本発明の一形態によれば、ベルトサンダは、カバーを備えている。カバーは、駆動ローラとアームの一部分とを収容し、アームと同一方向に延在する。光源は、把持部とカバーとが略一直線になる状態において、回転軸線が延在する方向に見て、カバーと少なくとも部分的に重複する位置に配置される。光源は、アームが延在する方向と平行に光を照射可能に構成される。かかる形態によれば、アームを狭くて暗い箇所(例えば、小さな穴)に挿入して研磨作業を行う際でも、光源からの光は、当該箇所の開口に対してほぼ垂直な角度で当該箇所へ進入する。したがって、当該箇所内を好適に照明することができる。
【0011】
本発明の一形態によれば、光源は、互いに異なる位置に配置された第1の光源と第2の光源とを備えている。第1の光源および第2の光源は、光の照射方向が異なる。かかる形態によれば、露出される部分の周囲のより広い範囲を照明可能である。
【0012】
本発明の一形態によれば、アームは、把持部に対して枢動可能である、光源は、互いに異なる位置に配置された第1の光源と第2の光源とを備えている。第1の光源および第2の光源からの光の照射方向は、固定されており、かつ、互いに異なる。かかる形態によれば、アームの枢動位置が変更されても、第1の光源および第2の光源の少なくとも一方によって、露出される部分を照明することができる。
【0013】
本発明の一形態によれば、光源は、フレキシブルライトユニットを備えている。フレキシブルライトユニットは、任意の方向に折れ曲がり可能に構成されたフレキシブルアームと、アームの先端に取り付けられたライトと、ライトに電力を供給するための電池と、を有する。かかる形態によれば、フレキシブルアームを任意の方向に曲げることによって、ベルトサンダの使用状況に応じて光の照射方向を変更して、露出される部分を照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるベルトサンダの側面図であり、一部を断面で示している。
図2】ベルトサンダの側面図である。
図3】ベルトサンダの平面図であり、一部を断面で示している。
図4図1に対応するベルトサンダの側面図であり、アームの枢動位置を示している。
図5図2の矢印A-Aの方向に見たベルトサンダの矢視図であり、一部を断面で示している。
図6】アームの枢動位置に応じて光源からの光の照射方向が変更されている様子を示す図である。
図7】アームの枢動位置に応じて光源からの光の照射方向が変更されている様子を示す図である。
図8】アームの枢動位置に応じて光源からの光の照射方向が変更されている様子を示す図である。
図9】代替実施形態によるベルトサンダの斜視図である。
図10】代替実施形態によるベルトサンダの斜視図である。
図11図6の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~3を参照して、本発明の一実施形態であるベルトサンダ10の概略構成について説明する。図1,3に示すように、ベルトサンダ10は、把持部20と、アーム41と、従動ローラ42と、駆動ローラ43と、サンディングベルト44と、電動モータ80と、を備えている。把持部20は、所定方向に延在する細長い形状を有している。把持部20は、ベルトサンダ10の使用時においてユーザによって把持されるために設けられる。アーム41は、所定方向を長軸として延在する細長い形状を有している。図1~3に示す状態では、アーム41は、把持部20が延在する方向と略同一の方向に延在している。ただし、本実施形態では、アーム41は、把持部20に対して枢動可能に構成されている(詳細は後述)。アーム41の先端には、従動ローラ42が設けられている。図3に示すように、駆動ローラ43には、電動モータ80の出力軸81が連結されている。駆動ローラ43は、軸受83によって支持されており、電動モータ80の回転駆動力によって回転軸線45を中心に回転するように構成される。従動ローラ42と駆動ローラ43との間には、無端のサンディングベルト44が掛け渡されている。電動モータ80が駆動されると、サンディングベルト44は、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で矢印A1(図1,2参照)の方向に回転する。
【0016】
以下の説明では、便宜上、把持部20とアーム41とが略一直線になる状態(つまり、図1~3に示す状態)において、駆動ローラ43が回転するときにサンディングベルト44が駆動ローラ43から従動ローラ42に向けて進む側を上側と定義し、サンディングベルト44が従動ローラ42から駆動ローラ43に向けて進む側を下側と定義する(図1,2参照)。さらに、把持部20が延在する方向を前後方向と定義する。前後方向のうち、把持部20に対して電動モータ80が位置する側を前側と定義し、把持部20に対して電動モータ80と反対側を後側と定義する(図1,3参照)。さらに、回転軸線45が延在する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、電動モータ80が位置する側を左側と定義し、駆動ローラ43が位置する側を右側と定義する(図3参照)。
【0017】
ベルトサンダ10は、さらにプーリカバー70を備えている。プーリカバー70は、アーム41が延在する方向と同一方向に延在する延在部71と、延在部71の後端に設けられたフランジ部72と、を備えている。延在部71は、その上側、下側、左側および後側が閉じられており、右側と前側が開口している。この延在部71内には、図3に示すように、駆動ローラ43と、アーム41の一部分(より具体的には、後側の端部)と、が収容される。延在部71の右側の開口部には、安全カバー78が設けられる。安全カバー78は、延在部71の右側の開口部に追従した形状を有しており、当該開口部よりも若干小さい大きさを有している。このため、安全カバー78と延在部71との間には、安全カバー78の外周に沿って僅かな隙間が形成されている。この隙間は、ユーザの指は入らないが、サンディングベルト44を挿入できる程度の大きさを有している。サンディングベルト44が摩耗した場合には、この隙間を介してサンディングベルト44が取り替えられる。
【0018】
図3に示すように、延在部71内には、さらに、テンショナ47と圧縮バネ48とが収容されている。圧縮バネ48は、前端と後端とを備えている。前端は、テンショナ47に接触しており、後端は、プーリカバー70の内部面に支持されている。この圧縮バネ48は、テンショナ47を介して、アーム41を前側に付勢している。これによって、従動ローラ42と駆動ローラ43との間でサンディングベルト44のテンションが適正に保たれる。
【0019】
サンディングベルト44の前側の略半分は、延在部71の前側の開口部から延出して、露出されている。サンディングベルト44のうち、このように露出された部分を露出部分44a(図1参照)とも呼ぶ。従動ローラ42の近傍において、アーム41には一対のシュー49が設けられている。これらのシュー49は、アーム41の上側および下側にそれぞれ取り付けられている。シュー49の各々は、アーム41と平行に(換言すれば、サンディングベルト44と略平行に)延在する平坦面を有している。サンディングベルト44によって被研磨物を研磨する際、サンディングベルト44は、シュー49の平坦面上を摺動しつつ、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で回転する。ユーザがサンディングベルト44を被研磨物に押し当てる際、サンディングベルト44が上下方向に撓んだとしても、シュー49の平坦面がサンディングベルト44を内側で支持することによって、サンディングベルト44と被研磨物との間に、研磨に必要な摩擦力を生じさせることができる。
【0020】
電動モータ80は、本実施形態ではブラシレスDCモータである。電動モータ80は、前後方向において把持部20に隣接しており、把持部20に対して前側に配置されている。電動モータ80は、ブラシレスモータであるから、通常の電動モータよりも小型であり、特に軸方向に短くなっている。これにより、把持部20の右端から右側へ突出している量と、把持部20の左端から左へ突出している量と、が略同一になっている。ベルトサンダ10は、さらに、コントローラハウジング90とバッテリパック95とを備えている。コントローラハウジング90は、前後方向において把持部20に隣接しており、把持部20に対して後側に配置されている。バッテリパック95は、前後方向においてコントローラハウジング90に隣接しており、コントローラハウジング90に対して後側に配置されている。バッテリパックは、バッテリパッケージや組電池と呼ばれる場合がある。バッテリパックは、所定のサイズに成形された外郭ハウジングと、当該外郭ハウジング内に収容され直列に接続された複数の電池セルと、を備えていてもよい。
【0021】
バッテリパック95は、電動モータ80に電力を供給するために着脱可能に設けられる。本実施例では、バッテリパック95は、公称18ボルトの電圧で電力を供給する。コントローラハウジング90は、その内部にコントローラ91を収容している(図1参照)。コントローラ91は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって電動モータ80の駆動を制御する。コントローラハウジング90およびバッテリパック95は、その重心が、上下方向における下側に偏心するように配置される。
【0022】
図1に示すように、ベルトサンダ10は、さらに、トリガスイッチ50を備えている。トリガスイッチ50は、前後方向において、把持部20と電動モータ80との間に配置されている。また、トリガスイッチ50は、上下方向において下側に配置されている。このトリガスイッチ50は、駆動ローラ43を駆動させるため(換言すれば、電動モータ80を駆動させるため)に設けられる。トリガスイッチ50は、操作部51とスイッチボックス52とを備えている。操作部51は、上下方向に変位可能に構成される。操作部51がユーザの手動操作によって、図1に示す第1の位置から、第2の位置(第1の位置から上側に所定距離だけ変位された位置)まで変位されると、指令信号がスイッチボックス52からコントローラ91に入力される。コントローラ91は、指令信号を受け付けると、バッテリパック95から電動モータ80に電力を供給して、電動モータ80を駆動する。これによって、駆動ローラ43が駆動され、サンディングベルト44が、従動ローラ42と駆動ローラ43との間で回転される。
【0023】
上述したように、アーム41は、把持部20に対して枢動可能に構成されている。具体的には、図4に示すように、アーム41は、回転軸線45(図3参照)に直交する平面上で、延在部71とともに枢動可能に構成される。本実施形態では、アーム41は、回転軸線45を中心として枢動する。図4では、アーム41の枢動位置として、第1の位置P1と、第2の位置P2と、第3の位置P3と、が示されている。本実施形態では、アーム41は、第1の位置P1と第3の位置P3との間で移動可能に構成される。詳細は後述するが、アーム41は、第1の位置P1と第3の位置P3との間の任意の枢動位置において固定され得る。アーム41は、第1の位置P1から第3の位置P3に移動するとき、アーム41がコントローラハウジング90およびバッテリパック95の下側と最終的に対向する方向に枢動する。
【0024】
第1の位置P1では、アーム41は、前後方向に対して5度だけ上側に傾いている。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は185度である。本実施形態において、アーム41と把持部20とがなす角度とは、アーム41と把持部20とがなす2つの角度(この2つの角度の和は360度である)のうち、ベルトサンダ10の下側で形成される角度をいう。第2の位置P2では、アーム41は、上下方向に平行である。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は90度である。本実施形態では、ベルトサンダ10を使用して研磨作業を行う場合、アーム41は、ベルトサンダ10の用途に応じて、第1の位置P1と第2の位置P2との間の任意の枢動位置で固定される。
【0025】
第3の位置P3では、把持部20とアーム41とがわずかな角度となって近接し、上下方向にほぼ並んでいる。このとき、アーム41と把持部20とがなす角度は20度である。第3の位置P3では、ベルトサンダ10が前後方向および上下方向においてコンパクトになる。このため、ベルトサンダ10を使用しないとき(例えば、ベルトサンダ10の持ち運び時や収納時)には、アーム41は第3の位置P3まで枢動されてもよい。
【0026】
次に、アーム41を枢動させるための構造について説明する。プーリカバー70のフランジ部72は、図3に示すように、左右方向の左側において延在部71の後端に連続している。また、フランジ部72は、図2に示すように、左右方向、すなわち、回転軸線45が延在する方向に見て、延在部71の後端を円弧状に取り囲んでいる。
【0027】
図2に示すように、フランジ部72には、その外周に沿って長穴73が円弧状に形成されている。長穴73は、フランジ部72を左右方向に貫通している(図3参照)。図5に示すように、フランジ部72は、電動モータ80の右側を覆うブラケット82に当接している。円筒状のボス84が、ブラケット82から右側に向けて突出している。このボス84は、フランジ部72の長穴73を貫通して、フランジ部72の右側の端面を超えて、右側に向けて延在している。ボス84の外周は、フランジ部72よりも右側において、リング状のスペーサ77内に嵌合されている。スペーサ77の左面は、フランジ部72の右面と当接している。
【0028】
ボス84の内面には雌ネジが形成されており、ボス84内には六角ボルト75が挿入されている。この雌ネジと六角ボルト75は左ネジ(逆ネジ)である。六角ボルト75の周囲には、レバー74が取り付けられている。レバー74は、レバー74を左右方向に貫通する貫通穴を有している。この貫通穴を形成するレバー74の内面は、六角ボルト75の六角断面に適合する断面形状を有している。このため、ユーザがレバー74を回すと、六角ボルト75も一緒に回転される。図2には、六角ボルト75を締めたときのレバー74の位置が実線で示されており、また、矢印A2の方向にレバー74を回して六角ボルト75を緩めたときのレバー74の位置が点線で示されている。レバー74および六角ボルト75とスペーサ77との間には、ワッシャ76が配置されている。
【0029】
六角ボルト75を締めた状態では、六角ボルト75は、ワッシャ76およびスペーサ77を介してフランジ部72をブラケット82に対して押圧する。この押圧力によって、フランジ部72がブラケット82に対して回転することが阻止される。一方、六角ボルト75を緩めた状態では、この押圧力が解除される。このため、フランジ部72は、ボス84が長穴73を貫通する範囲内で、ブラケット82に対して枢動することが許容される。フランジ部72は延在部71と一体的に構成されており、かつ、アーム41は延在部71に支持されているから、フランジ部72が枢動すると、アーム41もフランジ部72と一緒に枢動する。
【0030】
長穴73は、図4に示す第1の位置P1から第3の位置P3までアーム41を枢動させることができる範囲に形成されている。このため、ユーザは、レバー74を使用して六角ボルト75を緩め、次いで、アーム41を所望の位置まで枢動させ、次いで、レバー74を使用して六角ボルト75を締めることにより、図4に示した第1の位置P1から第3の位置P3の間の所望の枢動位置にアーム41を固定することができる。
【0031】
図6に示すように、ベルトサンダ10は、露出部分44a(図1参照)、特に、シュー49が設けられた部分を照明可能な光源30を備えている。光源30は、光源ホルダ31と、回転軸32と、ライト35と、を備えている。ライト35は、本実施形態ではLEDである。ただし、本願で言及されるLEDは、白熱球、ハロゲン電球など、任意の発光体に置換されてもよい。ライト35の電源には、バッテリパック95が使用されてもよい。ライト35は、光源ホルダ31内に収容されている。光源ホルダ31は、モータハウジング85に固定されている。光源ホルダ31は、モータハウジング85の前側かつ下側に位置している。
【0032】
回転軸32は、回転軸線45と平行に延在しており、回転可能に光源ホルダ31によって支持されている(図11参照)。ライト35は、この回転軸32に固定されている。このため、ライト35は、回転軸32を中心として光源ホルダ31内で枢動可能に構成される。これにより、光源30は、ライト35からの光の照射方向を手動操作で変更可能である。かかる構成によれば、ベルトサンダ10の使用状況に応じて光の照射方向を変更できる。しかも、アーム41の枢動の回転中心と回転軸32とは平行なので、図6~8に示すように、アーム41の枢動位置に応じてライト35からの光の照射方向を変更できる。つまり、アーム41の複数の枢動位置の各々において、露出部分44aを照明できる。光の照射方向をアーム41の枢動位置に追従できるので、光源30として狭角タイプ(つまり、指向角が小さいタイプ)のLEDが使用されてもよい。この場合、広角タイプのLEDを使用する場合と比べて、露出部分44aをより明るく照明できる。
【0033】
本実施形態では、アーム41の図6,7に示す枢動位置では、回転軸線45が延在する方向、すなわち、左右方向に見て、光源30は、プーリカバー70の延在部71と少なくとも部分的に重複する位置に配置されている。そして、光源30は、アーム41が延在する方向と略平行に光を照射して、露出部分44aを照明することができる。かかる構成によれば、光源30は、上下方向におけるアーム41とほぼ同じ位置から、アーム41と略平行に光を照射できる。このため、露出部分44aを狭くて暗い箇所(例えば、小さな穴)に挿入して研磨作業を行う際でも、光源30からの光は、当該箇所の開口に対してほぼ垂直な角度で当該箇所へ進入するので、当該箇所内を好適に照明することができる。
【0034】
代替実施形態では、図9に示すとおり、ベルトサンダ110は、露出部分44aを照明可能な光源として、光源30に代えて、第1の光源131と第2の光源132とを備えている。第1の光源131および第2の光源132は、いずれもLEDを備えている。第1の光源131および第2の光源132は、いずれも、モータハウジング85の基部(つまり、右側)かつ前側の位置に配置されている。第1の光源131および第2の光源132は、互いに異なる位置に配置されている。具体的には、第1の光源131はモータハウジング85の上側に配置され、第2の光源132はモータハウジング85の下側に配置されている。
【0035】
第1の光源131および第2の光源132からの光の照射方向は、固定されているが、互いに異なっている。具体的には、第1の光源131からの光の照射方向は、アーム41が延在する方向に対して上側に傾いている。一方、第2の光源132からの光の照射方向は、アーム41が延在する方向に対して下側に傾いている。かかる構成によれば、把持部20とアーム41とが略一直線になった状態において、露出部分44aの周囲のより広い範囲を照明可能である。
【0036】
他の実施形態では、アーム41の、想定される複数の枢動位置のそれぞれに対して1つずつ光源が設けられてもよい。例えば、第1の位置(例えば、図9に示す第1の光源131の位置)にある第1の光源131が、第1の方向(例えば、図9に示す方向)に光を照射して、アーム41が第1の位置P1にあるときの露出部分44aを照明可能に設けられてもよい。さらに、第2の位置(例えば、図9に示す第2の光源132の位置)にある第2の光源132が、第2の方向(例えば、図9に示す方向よりも下側に傾けられた方向)に光を照射して、アーム41が第2の位置P2にあるときの露出部分44aを照明可能に設けられてもよい。かかる構成によっても、複数のアーム枢動位置の各々について、露出部分44aを照明することができる。
【0037】
他の実施形態では、第1の光源131および第2の光源132のそれぞれが、光源30のように光の照射方向を変更可能に構成されていてもよい。かかる構成によれば、複数のアーム枢動位置の各々について、露出部分44aを照明することができ、かつ、露出部分44aの周囲のより広い範囲を照明可能である。
【0038】
他の代替実施形態では、図10に示すとおり、ベルトサンダ210は、露出部分44aを照明可能な光源として、光源30に代えて、フレキシブルライトユニット230を備えている。フレキシブルライトユニット230は、筐体231と、フレキシブルアーム234と、ライト235と、を備えている。筐体231は、ボルトによって延在部71に取り付けられている。本実施形態では、筐体231は、延在部71の側面(より具体的には、左面)に取り付けられている。筐体231が側面に取り付けられることによって、フレキシブルライトユニット230がユーザの露出部分44aに向けた視線を遮ることを抑制できる。
【0039】
フレキシブルアーム234は、筐体231の上面から延在している。フレキシブルアーム234は、任意の方向に折れ曲がり可能に構成される。フレキシブルアーム234の先端には、ライト235(本実施形態では、LED)が取り付けられている。この構成によれば、アーム41の枢動位置が変更されても、フレキシブルアーム234を任意の方向に曲げることによって、光の照射方向をアーム41の枢動位置に追従させて、露出部分44aを照明することができる。
【0040】
筐体231内には、ライト235に電力を供給するための電池232が収納されている。このため、バッテリパック95からライト235に電力を供給するためのケーブルを可動箇所(プーリカバー70とブラケット82との取り合い部分)を超えて配置しなくてもよい。筐体231には、ライト235の点灯/消灯状態を切り替えるためのスイッチ233が設けられている。このため、サンディングベルト44の回転と、ライト235の点灯/消灯と、を個別に操作できる。
【0041】
光源に関して上述した種々の実施形態は、アーム41が枢動できないように構成されている場合にも適用可能である。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、ベルトサンダ10は、バッテリパックに代えて、商用電源に接続する電源コードを備えていてもよい。あるいは、電動モータ80に代えて、外部から供給される圧縮空気を駆動源として駆動ローラ43を駆動するエアモータが使用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10,110,210...ベルトサンダ
20...把持部
30...光源
31...光源ホルダ
32...回転軸
35...ライト
41...アーム
42...従動ローラ
43...駆動ローラ
44...サンディングベルト
44a...露出部分
45...回転軸線
47...テンショナ
48...圧縮バネ
49...シュー
50...トリガスイッチ
51...操作部
52...スイッチボックス
70...プーリカバー
71...延在部
72...フランジ部
73...長穴
74...レバー
75...六角ボルト
76...ワッシャ
77...スペーサ
78...安全カバー
80...電動モータ
81...出力軸
82...ブラケット
83...軸受
84...ボス
85...モータハウジング
90...コントローラハウジング
91...コントローラ
95...バッテリパック
131...第1の光源
132...第2の光源
230...フレキシブルライトユニット
231...筐体
232...電池
233...スイッチ
234...フレキシブルアーム
235...ライト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11