(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】円形潤滑剤ダムインサート用の位置決めツール、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241118BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020184657
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-10-24
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル・ラミレツ
(72)【発明者】
【氏名】アルフォンソ・カルデナス
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート・スコット・リベイユ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-090818(JP,A)
【文献】特開2014-169772(JP,A)
【文献】特開昭52-143369(JP,A)
【文献】米国特許第4126317(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプラインドライブシャフト(110)上に円形潤滑剤ダムインサート(120)を軸方向に位置決めするための位置決めツール(100)であって、
前記スプラインドライブシャフト(110)の外面(128、150)上をスライドするように構成された内面(142)を有する円形本体(140)と、
前記円形本体(140)の前記内面(142)上の第1の複数のスプライン(126、146、148)であって、前記スプラインドライブシャフト(110)の前記外面(128、150)上の第2の複数のスプライン(126、146、148)と嵌合するように構成された第1の複数のスプライン(126、146、148)と、
前記円形本体(140)上に位置決めされた深さ設定部材(160)であって、前記円形本体(140)が前記スプラインドライブシャフト(110)の前記外面(128、150)上をスライドする軸方向範囲を画定する深さ設定部材(160)と、
前記円形本体(140)から軸方向に延びる位置設定要素(170)であって、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の軸方向端部(164、172)に接触し、前記スプラインドライブシャフト(110)上に前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を軸方向に位置決めするように構成された位置設定要素(170)と
を備える、位置決めツール(100)。
【請求項2】
前記円形本体(140)、前記第1の複数のスプライン(126、146、148)、および前記深さ設定部材(160)は、一体型金属要素である、請求項1に記載の位置決めツール(100)。
【請求項3】
前記位置設定要素(170)は、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の前記軸方向端部(164、172)から軸方向に延びる円周方向位置決め要素(124)を受け入れるために、その中に軸方向開口部(174)を画定し、前記円周方向位置決め要素(124)は、前記スプラインドライブシャフト(110)上の前記第2の複数のスプライン(126、146、148)のそれぞれのスプライン(126、146、148)に着座し、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を円周方向に位置決めするように構成される、請求項1に記載の位置決めツール(100)。
【請求項4】
前記位置設定要素(170)は、前記円形本体(140)の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数の位置設定要素(170)を含み、複数の円周方向に間隔を置いた軸方向開口部(174)を画定し、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)は、各それぞれの軸方向開口部(174)に位置決めするために、その前記軸方向端部(164、172)から軸方向に延びる円周方向位置決め要素(124)を含む、請求項3に記載の位置決めツール(100)。
【請求項5】
前記スプラインドライブシャフト(110)は、ギアボックス(112)に位置決めされる、請求項1に記載の位置決めツール(100)。
【請求項6】
スプラインドライブシャフト(110)上に円形潤滑剤ダムインサート(120)を位置決めする方法であって、
前記スプラインドライブシャフト(110)上に位置決めツール(100)を位置決めすることであって、前記位置決めツール(100)は、
前記スプラインドライブシャフト(110)の外面(128、150)上をスライドするように構成された内面(142)を有する円形本体(140)、
前記円形本体(140)の前記内面(142)上の第1の複数のスプライン(126、146、148)であって、前記位置決め中に前記スプラインドライブシャフト(110)の前記外面(128、150)上の第2の複数のスプライン(126、146、148)と軸方向に嵌合するように構成された第1の複数のスプライン(126、146、148)、
前記円形本体(140)上に位置決めされた深さ設定部材(160)であって、前記円形本体(140)が前記位置決め中に前記スプラインドライブシャフト(110)の前記外面(128、150)上をスライドする軸方向範囲を画定する深さ設定部材(160)、および
前記円形本体(140)から軸方向に延びる位置設定要素(170)であって、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)に接触し、前記スプラインドライブシャフト(110)上に前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を軸方向に位置決めするように構成された位置設定要素(170)
を含むことと、
前記スプラインドライブシャフト(110)の周りに前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を位置決めし、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の軸方向端部(164、172)が前記位置決めツール(100)上の前記位置設定要素(170)に当接するようにすることと、
前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を前記スプラインドライブシャフト(110)に恒久的に締結することと、
前記位置決めツール(100)を取り外すことと
を含む、方法。
【請求項7】
前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の位置決めは、前記スプラインドライブシャフト(110)上の前記第2の複数のスプライン(126、146、148)のそれぞれの間に前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の前記軸方向端部(164、172)から軸方向に延びる円周方向位置決め要素(124)を円周方向に位置決めすることをさらに含み、前記位置設定要素(170)は、前記円周方向位置決め要素(124)を受け入れるように構成された軸方向開口部(174)をその中に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を恒久的に締結する前に、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の前記軸方向端部(164、172)と前記スプラインドライブシャフト(110)上の前記第2の複数のスプライン(126、146、148)との間の距離(D2)を測定し、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の位置を確認することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を恒久的に締結した後に、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の前記軸方向端部(164、172)と前記スプラインドライブシャフト(110)上の前記第2の複数のスプライン(126、146、148)との間の距離(D2)を測定し、前記円形潤滑剤ダムインサート(120)の位置を確認することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記恒久的に固定することは、
一時的な留め具を用いて所定の位置に前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を一時的に締結することと、
前記円形潤滑剤ダムインサート(120)を前記スプラインドライブシャフト(110)に恒久的に接着することと、
前記一時的な留め具を取り外すことと
を含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、機械製作、より具体的には、円形潤滑剤ダムインサート用の位置決めツール、および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアボックスは、動作中に一定の潤滑を必要とする様々なシャフトを含む。適切な潤滑を確保するための1つのアプローチは、ギアボックス内の1つまたは複数のドライブシャフトの周りに潤滑剤ダムインサートを提供することである。潤滑剤ダムインサートは、潤滑剤、例えば、油をドライブシャフトの周りの特定の場所に保持および/または分配するために、内部にいくつかの半径方向開口部を含むプラスチックの円形要素であり得る。円形潤滑剤ダムインサートは、その上に軸方向に延びる位置決め要素を含み、ドライブシャフト上のスプラインと係合してダムインサートを円周方向に位置決めすることができるが、軸方向の位置決めは困難な場合がある。不適切な軸方向の位置決めは、潤滑不良および/またはインサートの破損につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様は、スプラインドライブシャフト上に円形潤滑剤ダムインサートを軸方向に位置決めするための位置決めツールを提供し、位置決めツールは、スプラインドライブシャフトの外面上をスライドするように構成された内面を有する円形本体と、円形本体の内面上の第1の複数のスプラインであって、スプラインドライブシャフトの外面上の第2の複数のスプラインと嵌合するように構成された第1の複数のスプラインと、円形本体上に位置決めされた深さ設定部材であって、円形本体がスプラインドライブシャフトの外面上をスライドする軸方向範囲を画定する深さ設定部材と、円形本体から軸方向に延びる位置設定要素であって、円形潤滑剤ダムインサートの軸方向端部に接触し、スプラインドライブシャフト上に円形潤滑剤ダムインサートを軸方向に位置決めするように構成された位置設定要素とを備える。
【0004】
本開示の第2の態様は、スプラインドライブシャフト上に円形潤滑剤ダムインサートを位置決めする方法を提供し、この方法は、スプラインドライブシャフト上に位置決めツールを位置決めすることであって、位置決めツールは、スプラインドライブシャフトの外面上をスライドするように構成された内面を有する円形本体、円形本体の内面上の第1の複数のスプラインであって、位置決め中にスプラインドライブシャフトの外側上の第2の複数のスプラインと軸方向に嵌合するように構成された第1の複数のスプライン、円形本体上に位置決めされた深さ設定部材であって、円形本体が位置決め中にスプラインドライブシャフトの外面上をスライドする軸方向範囲を画定する深さ設定部材、および円形本体から軸方向に延びる位置設定要素であって、円形潤滑剤ダムインサートに接触し、スプラインドライブシャフト上に円形潤滑剤ダムインサートを軸方向に位置決めするように構成された位置設定要素を含むことと、スプラインドライブシャフトの周りに円形潤滑剤ダムインサートを位置決めし、円形潤滑剤ダムインサートの軸方向端部が位置決めツール上の位置設定要素に当接するようにすることと、円形潤滑剤ダムインサートをスプラインドライブシャフトに恒久的に締結することと、位置決めツールを取り外すこととを含む。
【0005】
本開示の例示的な態様は、本明細書で説明される問題および/または検討されていない他の問題を解決するように設計されている。
【0006】
本開示のこれらおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を図示する添付の図面と併せて、本開示の様々な態様に関する以下の詳細な説明から、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態による、円形潤滑剤ダムインサートおよびスプラインドライブシャフトの側面分解図である。
【
図2】本開示の実施形態による、インサート用の位置決めツールの底面斜視図である。
【
図3】本開示の他の実施形態による、インサート用の位置決めツールの側面斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態による、スプラインドライブシャフト上の円形潤滑剤ダムインサートの側面図である。
【
図5】本開示の実施形態による、ドライブシャフト上の位置決めツールの初期の位置決めの側面図である。
【
図6】本開示の実施形態による、ドライブシャフト上にインサートを位置決めする位置決めツールの側面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、ドライブシャフト上にインサートを位置決めする位置決めツールの拡大側面図、および位置決めツールの取り外しを示す矢印である。
【
図8】本開示の実施形態による、ドライブシャフトに一時的に締結されたインサートの側面図である。
【
図9】本開示の実施形態による、ドライブシャフトに恒久的に締結されたインサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の図面は、原寸に比例していないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様だけを図示することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。図面では、類似する符号は、図面間で類似する要素を表す。
【0009】
最初の問題として、現在の開示を明確に説明するために、ギアボックスの例示的な用途内の関連する機械構成要素を参照して説明するとき、特定の専門用語を選択することが必要になる。これを行う場合、可能な限り、一般的な工業専門用語が、その受け入れられた意味と同じ意味で使用および利用される。別途記載のない限り、このような専門用語は、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広義の解釈を与えられるべきである。当業者であれば、多くの場合、特定の構成要素がいくつかの異なるまたは重複する用語を使用して参照されることがあることを理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、複数の構成要素からなるものとして別の文脈を含み、かつ別の文脈で参照されてもよい。あるいは、複数の構成要素を含むものとして本明細書に記載され得るものは、単一の部品として他の場所で参照されてもよい。
【0010】
加えて、本明細書ではいくつかの記述的用語を規則通りに使用することができ、このセクションの開始時にこれらの用語を定義することが有用であることがわかる。これらの用語およびその定義は、別途記載のない限り、以下の通りである。多くの場合、中心軸線に関して異なる半径方向位置にある部品を記述することが要求される。「半径方向」という用語は、例えば、ドライブシャフトの軸線に垂直な移動または位置を指す。このような場合、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線に近接して位置する場合には、本明細書では、第1の構成要素は第2の構成要素の「半径方向内側」または「内方」にあると述べる。一方、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線から遠くに位置する場合には、本明細書では、第1の構成要素は第2の構成要素の「半径方向外側」または「外方」にあると述べることができる。「軸方向」という用語は、例えば、ドライブシャフトに沿った軸線に平行な移動または位置を指す。最後に、「円周方向」という用語は、軸線周り、例えば、ドライブシャフト周りの移動または位置を指す。このような用語は、タービンの中心軸線に関連して適用することができることが理解されよう。
【0011】
加えて、以下に記載されるように、いくつかの記述的用語が本明細書で規則的に使用され得る。「第1の」、「第2の」、および「第3の」という用語は、ある構成要素を別の構成要素から区別するために交換可能に使用することができ、個々の構成要素の場所または重要性を示すことを意図するものではない。
【0012】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「この(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組が存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。「任意選択の」または「任意選択で」は、後で述べられる事象または状況が、起こる場合も起こらない場合もあることを意味し、この記述は、その事象が起こる事例と、起こらない事例とを含むことを意味する。
【0013】
ある要素または層が別の要素または層に対して「上に」、「係合される」、「接続される」、または「結合される」と言及される場合には、他の要素または層に対して直接上に、係合され、接続され、または結合されてもよいし、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。逆に、ある要素が別の要素または層に対して「直接上に」、「直接係合される」、「直接接続される」、または「直接結合される」と言及される場合には、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係について説明するために使用される他の語も、同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間に」に対して「直接~の間に」、「~に隣接して」に対して「直接~に隣接して」など)。本明細書で使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のいずれかおよび1つまたは複数のすべての組み合わせを含む。
【0014】
上に示したように、本開示は、スプラインドライブシャフト上に円形潤滑剤ダムインサートを軸方向に位置決めするための位置決めツールを提供する。位置決めツールは、スプラインドライブシャフトと相互作用するインサート上の円周方向位置決め要素によってインサートの円周方向の位置決めが妨げられることなく、インサートがスプラインドライブシャフト上に適切に軸方向に位置決めされるようにする。
【0015】
図1は、ギアボックス112内の例示的な用途におけるスプラインドライブシャフト110および円形潤滑剤ダムインサート120の側面分解図を示す。ギアボックス112は、ケーシング122および内部の伝達ギア(図示せず)を含む、任意の現在知られているまたは後に開発されるトランスミッションシステムを含み得る。理解されるように、スプラインドライブシャフト110は、ドライブシャフト110とは異なる方向に、例えば、ドライブシャフトに垂直な方向に回転動力を伝達するために、1つまたは複数の他のギア(図示せず)を駆動するように動力が供給され得る。ケーシング122は、スプラインドライブシャフト110および他のギアを取り囲み、ドライブシャフトおよびギアの周りに潤滑剤リザーバを提供するように密封される。スプラインドライブシャフト110は、円形の断面を有することができるが、それはすべての場合に必要であるとは限らない。スプラインドライブシャフト110は、その外面128上に複数のスプライン126を含む。スプライン126は、動力を伝達するためにギアボックス112内のギア(図示せず)と相互作用することができる。ギアボックスの例示的な用途に示されているが、本開示の教示は、円形潤滑剤ダムインサート120がスプラインドライブシャフト110上に軸方向に位置決めされる任意の用途に適用可能であることが認識される。
【0016】
円形潤滑剤ダムインサート120(以下「インサート120」)は、潤滑剤、例えば、油または他の潤滑性液体またはガスを受け入れ、潤滑剤を保持および/またはスプラインドライブシャフト110(以下「ドライブシャフト110」)の周りの所望の場所に分配するように構成された、任意の現在知られているまたは後に開発される要素を含むことができる。インサート120は、任意の形態の円形潤滑剤ダムを取ることができる。示される例では、インサート120は、円筒形である円形部材130を含み、その中に多数の半径方向に延びる開口部132を含む。ドライブシャフト110に対して位置決めされると、半径方向に延びる開口部132は、潤滑剤リザーバとして機能する。図示のように、開口部132は、所望に応じて潤滑剤を向けるために円周方向に角度を付けることができ、潤滑剤を、所望に応じて、例えば、スプライン126にさらに向けるためにその中に潤滑剤通路134を含み得る。インサート120は、例えば、可撓性の金属またはプラスチックで作製されてもよい。インサート120は、ドライブシャフト110の周りでその半径方向の拡張および位置決めを可能にする軸方向スプリット136をその中に含み得るが、これはすべての場合に必要であるとは限らない。インサート120は、任意選択で、インサート120の軸方向端部172から軸方向に延びる円周方向位置決め要素124を含んでもよい。円周方向位置決め要素124は、それぞれのスプライン126、すなわち、ドライブシャフト110の1つまたは複数のスプライン126間のスペースに着座し、ドライブシャフト110に対してインサート120を円周方向に位置決めすることができる。任意の数の円周方向位置決め要素124をドライブシャフト110の周りに用いてもよいし、または何も使用しなくてもよい(例えば、
図5参照)。対として示されているが、他の数の組であってもよい。当技術分野で理解されているように、インサート120は、ドライブシャフト110の周りに軸方向に位置決めされ、所望に応じて潤滑剤を提供する。例えば、インサート120は、潤滑剤がスプライン126および/またはスプラインと相互作用する任意のギアに一貫した方式で送達されるようにするために、ドライブシャフト110のスプライン126のすぐ下に軸方向に位置決めされ得る。インサート120の適切な軸方向の位置決めは、潤滑を支援し、インサートおよび他の構造に対する損傷を防止する。
【0017】
図2および
図3は、本開示の実施形態による、位置決めツール100の実施形態の底面斜視図および側面斜視図をそれぞれ示す。説明するように、位置決めツール100は、ドライブシャフト110の周りにインサート120を軸方向に位置決めすることができる。位置決めツール100は、ドライブシャフト110の外面128(
図1)上をスライドするように構成された内面142を有する円形本体140を含み得る。内面142は、外面128の外径OD(
図1)上をスライドするように構成された内径ID(
図2)を有する。
【0018】
位置決めツール100はまた、円形本体140の内面142上に複数のスプライン146を含み得る。スプライン146は、ドライブシャフト110の外面128上のスプライン126と嵌合するように構成される。すなわち、スプライン146は、ドライブシャフト110上での位置決めツール100の軸方向移動中、スプライン126間のスペース内で軸方向にスライドすることができ、逆もまた同様である。その結果、スプライン126、146がインターロックするとき、位置決めツール100とドライブシャフト110は円周方向に結合される。
図2は、位置決めツール100がその外面150上にスプライン148を含む一実施形態を示し、
図3は、滑らかな外面を有する位置決めツール100を示す。スプライン148は任意選択であり、おそらく位置決めツール100の取り扱いの容易さ以外の目的には役立たない。
【0019】
位置決めツール100はまた、円形本体140上に位置決めされた深さ設定部材160を含み得る。深さ設定部材160は、円形本体140がドライブシャフト110の外面128上をスライドする軸方向範囲を画定することができる。深さ設定部材160は、円形本体140が外面128上をスライドする軸方向範囲を設定することができる任意の構造の形態を取ることができる。
図2および
図3では、深さ設定部材160は、位置決めツール100がドライブシャフト110上をスライドするときにドライブシャフト110の軸方向端部164に当接するように、円形本体140から半径方向内側に延びる棚部162を含む。深さ設定部材160は、ドライブシャフト110に対する位置決めツール100の軸方向位置を画定するために、ドライブシャフト110上の軸方向端部164または他の構造に接触することができる位置決めツール100上の任意の形態の構造を含み得ることが認識されよう。
【0020】
位置決めツール100はまた、円形本体140から軸方向に延びる位置設定要素170を含み得る。位置設定要素170は、インサート120の軸方向端部172(
図1)に接触し、ドライブシャフト110の周りにインサート120を軸方向に位置決めするように構成される。位置設定要素170は、インサート120の軸方向端部172に接触することが可能な円形本体140上の任意の要素またはその一部を含むことができる。任意の数の位置設定要素170を使用することができる。
図2および
図3に最もよく示すように、各位置設定要素170、すなわち、その軸方向端部は、インサートの軸方向端部172の適切な軸方向位置を画定する深さ設定部材160からの所定の軸方向距離を有し、したがって、軸方向端部172が位置設定要素170に当接するときにインサート120の適切な軸方向の位置決めを可能にする。
【0021】
本明細書でより詳細に説明するように、位置設定要素170は、インサート120の軸方向端部172から軸方向に延びる任意の円周方向位置決め要素124を受け入れるために、その中に軸方向開口部174を画定することができる。各軸方向開口部174は、円周方向位置決め要素124用のスペースを可能にするために必要な任意の程度まで、円形本体140の周りに円周方向に延びることができる。任意の数の位置設定要素170および軸方向開口部174を用いることができる。このようにして、位置設定要素170は、円形本体140の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数の位置設定要素170を含み、複数の円周方向に間隔を置いた軸方向開口部174を画定することができる。インサート120の軸方向端部172から軸方向に延びる円周方向位置決め要素124は、円周方向位置決め要素124が各それぞれの軸方向開口部174を円周方向に位置決めすることができるように、各それぞれの軸方向開口部174に位置決めされ得る。
【0022】
位置決めツール100は、金属、例えば、純金属または金属合金で作製されてもよい。金属は、例えば、アルミニウム、ニッケル、または任意の他の剛性金属を含み得る。
図2では、円形本体140、任意選択のスプライン148、および深さ設定部材160は、一体型金属要素であり、これらは一体型要素として作製することができ、またはいくつかの構成要素を互いに溶接して作製することができる。
図3では、位置決めツール100は、単一の一体型プラスチック部品として示されている。位置決めツール100は、任意の現在知られている方法、例えば、鋳造、機械加工、溶接、付加製造などを使用して作製することができる。
【0023】
図4~
図9を参照すると、ドライブシャフト110上にインサート120を位置決めする方法がここで説明される。この方法は、ドライブシャフト110上に位置決めツール100を位置決めすることと、ドライブシャフト110の周りにインサート120を位置決めすることとを含み得る。これらの2つの動作は、任意の順序で行うことができる。プロセスは、ギアボックス112に位置決めされた、またはギアボックス112から分離されたドライブシャフト110を用いて実行され得る。
図4は、本開示の実施形態による、ドライブシャフト110の周りにおけるインサート120の位置決めの側面図を示し、
図5は、本開示の実施形態による、ドライブシャフト110上の位置決めツール100の初期の位置決めの側面図を示す。ここで、インサート120は、ドライブシャフト110の軸方向端部164上で強制的に軸方向にスライドさせることができ、またはスプリット136がその中に設けられる場合、インサート120は、一時的に拡張され、ドライブシャフト110の円周の周りに載置され得る。インサート120は、その所望の最終的な軸方向位置に近い場所に位置決めすることができる。所望に応じて、インサート120は、任意選択で、例えば、テープ180(
図4)、プラスチックタイ188(
図8)、または他の一時的な締結機構を用いて、共にかつ/または所定の位置に一時的に締結され得る。
図4の例では、インサート120は、円周方向位置決め要素124を含まない。
図5の例では、インサート120は、スプライン126、すなわち、スプライン126間のスペースに位置決めされ、インサート120を円周方向に位置決めする円周方向位置決め要素124を含む。この設定では、インサートの位置決めは、すなわち、インサート120を回転させることによって、ドライブシャフト110上のスプライン126のそれぞれの間に、すなわち、それらの間のスペースにインサート120の軸方向端部172から軸方向に延びる円周方向位置決め要素124を円周方向に位置決めすることをさらに含み得る。前述のように、位置設定要素170は、インサート120上の円周方向位置決め要素124を受け入れるように構成された軸方向開口部174をその中に含む。
【0024】
前述のように、
図5は、ドライブシャフト110上の位置決めツール100の初期の位置決めを示す。位置決めツール100は、ドライブシャフト110上に位置合わせされ、その上に軸方向に、すなわち、力F1で押し付けられる。
図2を参照すると、内面142上のスプライン146は、ドライブシャフト110の外面128上のスプライン126と嵌合するように円周方向に位置決めされる。スプライン126および146の係合の前にドライブシャフト110の周りに位置決めツール100を円周方向に位置決めする、すなわち、回転させることによって、位置決めツール100における軸方向開口部174は、インサート120から位置決めツール100に向かって軸方向に延びる円周方向位置決め要素124を受け入れるように回転可能に位置決めすることができる。所望の回転場所に入ると、位置決めツール100は、スプライン126、146が係合するように、ドライブシャフト110上にさらに軸方向にスライドさせることができる。この時点で、インサート120は円周方向に位置しているが、適切に軸方向に位置決めされていない場合がある。提供される任意の円周方向位置決め要素124は、スプライン126において軸方向にスライドし、インサートを軸方向に誤って位置決めする可能性がある。
【0025】
図6は、ドライブシャフト110上にインサート120を位置決めする位置決めツール100の側面図を示し、
図7は、ドライブシャフト110上にインサート120を位置決めする位置決めツール100の拡大側面図を示す。
図6に示すように、位置決めツール100がさらに位置決めされると、深さ設定部材160(
図2~
図3)がドライブシャフト110の軸方向端部164(
図1)に接触するまで、位置決めツール100はスライドし続ける。この場所では、位置設定要素170は、インサート120の軸方向端部172が位置決めされる場所に軸方向にある。ユーザは、インサート120の軸方向端部172が位置決めツール100上の位置設定要素170に当接するようにする。位置決めツール100がドライブシャフト110上に完全にある場合、当接は、インサート120の軸方向端部172を位置決めツール100に対して押し付けることによって行われ得る。同様に、位置決めツール100がドライブシャフト110上に完全にない場合、深さ設定部材160(
図2~
図3)が軸方向端部164(
図1)に接触するまで位置決めツール100をさらに軸方向にスライドさせることができ、および/またはインサート120の軸方向端部172が位置設定要素170に当接し、次に深さ設定部材160(
図2~
図3)が軸方向端部164(
図1)に接触するまで軸方向端部172をスライドさせることができる。任意の点において、位置決めツール100は、深さ設定部材160がドライブシャフト110の軸方向端部164(
図1)に接し、インサート120の軸方向端部172が位置設定要素170に当接するように位置決めされ、したがってインサート120を適切に位置決めする。
【0026】
この時点で、インサート120をドライブシャフト110に恒久的に締結すること、インサート120の軸方向位置を確認すること、および/または位置決めツール100を取り外すことを含む、多数の異なる動作を行うことができる。これらのステップを行う順序は、ユーザが定義することができる。
【0027】
図7はまた、ドライブシャフト110からの位置決めツール100の取り外しを示す矢印を示す。位置決めツール100は、軸方向に引っ張ることによって、すなわち、力F2で、位置決めツール100をドライブシャフト110から引き離すことによって取り外すことができる。この時点で、インサート120は、所定の位置に一時的または恒久的に締結され得る。
【0028】
一実施形態では、
図8の側面図に示すように、インサート120は、ドライブシャフト110に一時的に締結される。ここで、インサート120をドライブシャフト110に恒久的に締結する前に、インサート120の軸方向端部172とスプライン126、すなわち、ドライブシャフト110上のスプライン126の軸方向近接端との間の距離D2を測定し、インサート120の位置を確認することができる。すなわち、その場所に締結する前に、スプライン126に対するインサート120の所望の軸方向位置を確認する。ここで、インサート120は、例えば、テープ、接着剤、および/またはプラスチックタイ188(図示)などの留め具によって、ある場所に一時的に固定され得る。別の実施形態では、インサート120の軸方向端部172とドライブシャフト110上のスプライン126との間の距離D2は、インサート120をドライブシャフト110に恒久的に締結した後に測定され得、すなわち、スプライン126に対するその所望の軸方向位置におけるインサート120の恒久的な位置を確認する。測定は、位置決めツール100を取り外す前または後に実施することができる。いずれにせよ、測定は、所望の精度を有する任意の現在知られているまたは後に開発される測定ツール、例えば、キャリパゲージ、測定テープ、光学測定システムなどを使用して実行することができる。1つの非限定的な例では、インサート120の軸方向端部172は、スプライン126から0.457センチメートル(cm)~0.559cm(0.180~0.220インチ)の間である。
【0029】
図9は、インサート120をドライブシャフト110に恒久的に締結している側面図を示す。恒久的な締結は、多数の方法で行うことができる。一例では、インサート120は、例えば、プラスチックインサート120用に工業用接着剤、または金属インサート120用にスポット溶接(両方とも参照番号190によって示されている)を使用して、ドライブシャフト110に恒久的に締結され得る。接着剤は、ドライブシャフト110上に位置決めする前にインサート120上にあり得、位置決めツール100は、すでにその上にある接着剤によりその所望の軸方向場所にインサート120を位置決めするために使用され得ることに留意されたい。別の例では、インサート120は、
図8に示すように、一時的な留め具、例えば、テープ、接着剤、プラスチックタイ188(
図8)を用いて所定の位置に一時的に締結され得る。次に、インサート120は、例えば、プラスチックインサート120用に工業用接着剤、または金属インサート120用にスポット溶接を使用して、ドライブシャフト110に恒久的に接着することができる。完了すると、一時的な留め具は取り外すことができる。
【0030】
位置決めツール100および開示された関連する方法は、スプラインドライブシャフトと相互作用するインサート上の円周方向位置決め要素124によってインサートの円周方向の位置決めが妨げられることなく、円形潤滑剤ダムインサート120がスプラインドライブシャフト110上に適切に軸方向に位置決めされるようにする機構を提供する。位置決めツール100は、作製が容易かつ安価であり、比較的迅速に動作する。
【0031】
上記の図面は、本開示のいくつかの実施形態による関連する処理のいくつかを示す。これに関連して、各図面は、記載した方法の実施形態に関連するプロセスを表すことができる。いくつかの代替の実施態様では、図面で説明した動作は、図で示した順序から外れて生じてもよいし、または例えば、関連する動作に応じて、実際には実質的に同時に、または逆の順序で実行されてもよいことにも留意されたい。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される、近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動し得る任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語によって修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定は組み合わせおよび/または置き換えが可能であり、文脈および文言が特に指示しない限り、このような範囲は識別され、それに包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、両方の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の+/-10%を示すことができる。
【0033】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作、および均等物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を実施するための、一切の構造、材料、または動作を包含することを意図している。本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されており、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図していない。当業者には、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの修正および変形が明らかであろう。本開示の原理および実際の用途を最良に説明し、想定される特定の使用に適するように様々な修正を伴う様々な実施形態の本開示を他の当業者が理解することができるようにするために、本実施形態を選択し、かつ説明した。
【符号の説明】
【0034】
100 位置決めツール
110 スプラインドライブシャフト
112 ギアボックス
120 円形潤滑剤ダムインサート、金属インサート、プラスチックインサート
122 ケーシング
124 円周方向位置決め要素
126 スプライン
128 外面
130 円形部材
132 開口部
134 潤滑剤通路
136 軸方向スプリット
140 円形本体
142 内面
146 スプライン
148 スプライン
150 外面
160 深さ設定部材
162 棚部
164 軸方向端部
170 位置設定要素
172 軸方向端部
174 軸方向開口部
180 テープ
188 プラスチックタイ
190 工業用接着剤、スポット溶接
D2 距離
F1 力
F2 力
ID 内径
OD 外径