(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】記録材冷却装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241118BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20241118BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G21/20
G03G21/16 104
(21)【出願番号】P 2020187428
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2020014115
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵太
(72)【発明者】
【氏名】井上 優樹
(72)【発明者】
【氏名】片野 真吾
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215529(JP,A)
【文献】特開2017-173774(JP,A)
【文献】特開2014-142573(JP,A)
【文献】特開2005-292480(JP,A)
【文献】特開2015-094847(JP,A)
【文献】特開2008-046331(JP,A)
【文献】特開2013-218054(JP,A)
【文献】特開2002-099164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/20
G03G 21/16
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により記録材に対してトナー像を定着する定着装置を通過した記録材を冷却する記録材冷却装置において、
ベルトと、
前記ベルトに接触するように配置された前記ベルトの内周面を冷却するための冷却部と、
前記ベルトの内周面に設けられた第一ローラと、
前記第一ローラと共に前記ベルトを張架するために回転可能に設けられた第二ローラと、
前記第二ローラを回転可能に保持するローラホルダと、
前記第二ローラが前記第一ローラに対して相対的に揺動するように、前記ローラホルダを揺動させることにより、前記ベルトを前記第二ローラの回転軸線方向に移動させるステアリングユニットと、
前記ローラホルダが前記第二ローラを前記ベルトの内周面に向かって押し付けるように、前記第二ローラを付勢する付勢部と、
前記付勢部を保持する保持部であって、前記付勢部が前記ローラホルダを前記保持部から離れる方向に前記ローラホルダを押し付けるように前記付勢部を保持する保持部と、
前記ベルトを前記第一ローラと前記第二ローラによって伸張させて前記ベルトを回転可能にする第一位置と、前記ベルトを交換可能な第二位置とに前記保持部を移動させる移動部と、を備え、
前記移動部は、前記保持部を前記第一位置で支持する支持部を有し、
前記保持部は、前記支持部の支持が解除されることに応じて前記保持部の重量により前記第一位置から前記第二位置へ移動する、
ことを特徴とする記録材冷却装置。
【請求項2】
前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトをクリーニング可能な清掃部を備え、
前記清掃部は、前記第二ローラが前記第一位置にある場合に前記ベルトの内周面に接触し、前記第二ローラが前記第二位置にある場合に前記ベルトの内周面に接触しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記ローラホルダに設けられ、前記ステアリングユニットによって操作されるステアリング操作軸を有し、
前記ステアリングユニットは、前記移動部により前記第一位置と前記第二位置の間で、前記第二ローラの回転軸線方向及び前記第二ローラの移動方向に直交する方向に、前記ステアリング操作軸を揺動させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録材冷却装置。
【請求項4】
前記ベルトの外周面に接触し、トナー像の形成された記録材が搬送されるニップ部を形成する搬送部と、
前記ベルトと前記搬送部とが前記ニップ部を形成する状態と、前記ベルトと前記搬送部とが離間した状態とに変更可能な接離部を備え、
前記移動部は、前記ベルトと前記搬送部とが離間された状態で前記保持部を移動可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項5】
前記搬送部は、無端状のベルトである、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録材冷却装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記ベルトに接触して受熱する受熱部と、前記受熱部で受熱した熱を放熱する放熱部とを有するヒートシンクである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項7】
前記保持部が前記第一位置にある場合、前記第二ローラと前記第一ローラとの間の距離は、前記保持部が前記第二位置にある場合よりも短い、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項8】
前記第一ローラ及び前記第二ローラと共に前記ベルトを張架する他のローラをさらに備え、
前記保持部が前記第二位置にある場合、前記第一ローラの回転中心、前記第二ローラの回転中心及び前記他のローラの回転中心を結んだ仮想線の長さが、前記ベルトの周長よりも短い、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項9】
前記移動部は、前記保持部に接触する回転可能なカム部と、前記カム部の回転に伴って前記保持部を前記第一位置と前記第二位置の間で揺動的に支持する揺動軸と、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項10】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成されたトナー像を加熱により定着する定着部と、
記録材の搬送方向において前記定着部よりも下流側に設けられ、前記定着部を通過した記録材を冷却する、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の記録材冷却装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの画像形成装置に用いて好適な、ベルトを介して記録材を冷却する記録材冷却装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、記録材に形成されたトナー像を定着装置で加熱、加圧することによって記録材にトナー像を定着させている。記録材へのトナー像の定着は、ハロゲンヒータなどにより加熱される定着ローラと、定着ローラに圧接する加圧ローラとによって、記録材が挟持搬送されることにより行われる。トナー像の定着の際には記録材が加熱されるため、定着装置から搬送される記録材は定着前に比べて温度が高くなる。そして、トナー像定着後の記録材が温度の高いまま積載部に積載されると、積載された記録材同士がトナーにより貼り付く虞がある。こうした記録材の貼り付きを抑制するために、トナー像定着後の記録材の温度を下げる記録材冷却装置が設けられている(特許文献1)。特許文献1に記載の記録材冷却装置はベルト冷却方式の装置であって、定着装置から搬送された記録材を挟持搬送するベルトがヒートシンクにより冷却され、そのベルトを介して記録材の温度が下げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のベルト冷却方式の場合、無端状のベルトが複数のローラにより張力をかけられた状態で張架され、ヒートシンクがそのベルトの内周面に当接されている。ヒートシンクはベルトを効率よく且つ確実に冷却するために、各ローラがベルトに接触する面積に比べより大きな面積でベルトに当接するように設けられ、ベルトはヒートシンクに対し所定の圧力を加えた状態で当接している。従来、作業者はベルトの交換時、ヒートシンクや複数のローラとの摺動によりベルトにかかる摺動抵抗が大きく、ベルトの交換が難しかった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされ、記録材を冷却するためにヒートシンクが無端状のベルトの内周面に当接されているベルト冷却方式の記録材冷却装置において、作業者がベルトの交換を容易に行うことが可能な記録材冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る記録材冷却装置は、加熱により記録材に対してトナー像を定着する定着装置を通過した記録材を冷却する記録材冷却装置において、ベルトと、前記ベルトに接触するように配置された前記ベルトの内周面を冷却するための冷却部と、前記ベルトの内周面に設けられた第一ローラと、前記第一ローラと共に前記ベルトを張架するために回転可能に設けられた第二ローラと、前記第二ローラを回転可能に保持するローラホルダと、前記第二ローラが前記第一ローラに対して相対的に揺動するように、前記ローラホルダを揺動させることにより、前記ベルトを前記第二ローラの回転軸線方向に移動させるステアリングユニットと、前記ローラホルダが前記第二ローラを前記ベルトの内周面に向かって押し付けるように、前記第二ローラを付勢する付勢部と、前記付勢部を保持する保持部であって、前記付勢部が前記ローラホルダを前記保持部から離れる方向に前記ローラホルダを押し付けるように前記付勢部を保持する保持部と、前記ベルトを前記第一ローラと前記第二ローラによって伸張させて前記ベルトを回転可能にする第一位置と、前記ベルトを交換可能な第二位置とに前記保持部を移動させる移動部と、を備え、前記移動部は、前記保持部を前記第一位置で支持する支持部を有し、前記保持部は、前記支持部の支持が解除されることに応じて前記保持部の重量により前記第一位置から前記第二位置へ移動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録材を冷却するために冷却部がベルトの内周面に接触されているベルト冷却方式の記録材冷却装置において、作業者がベルトの交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】記録材冷却装置を装置背面側から見た斜視図。
【
図5】ステアリング機構について説明するための拡大斜視図。
【
図6】(a)ベルトの当接状態を示す図、(b)ベルトの離間状態を示す図。
【
図8】ステアリング機構によるローラ移動について説明するための図。
【
図9】画像形成装置の外部に記録材冷却装置を設けた例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<画像形成装置>
以下、本実施形態の記録材冷却装置について説明する。まず、本実施形態の記録材冷却装置を用いて好適な画像形成装置の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する画像形成部PY、PM、PC、PKを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器からの画像信号に応じてトナー像を記録材Sに形成する。なお、本実施形態の場合、画像形成部PY~PK、一次転写ローラ5、中間転写ベルト8、複数のローラ(9、9a、9b)、二次転写ローラ10により、記録材Sにトナー像を形成する画像形成ユニット500が構成されている。また、記録材Sとしては、普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。
【0010】
図1に示すように、画像形成部PY、PM、PC、PKは装置本体100A内において、中間転写ベルト8の移動方向に沿って並べて配置されている。中間転写ベルト8は複数のローラ(9、9a、9b)に張架されて、図中矢印R2方向に移動(回転)するように構成されている。中間転写ベルト8は、一次転写されたトナー像を担持して搬送する。そして、中間転写ベルト8を張架するローラ9と中間転写ベルト8を挟んで対向する位置には、二次転写ローラ10が配置され、中間転写ベルト8上のトナー像を記録材Sに転写する二次転写部T2を形成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には、定着装置11が配置されている。また、定着装置11の記録材搬送方向下流には、搬送装置90と記録材冷却装置20とが上流側から順に配置されている。
【0011】
画像形成装置100の下部には、記録材Sが収容されたカセット12が配置されている。記録材Sは、搬送ローラ13によりカセット12からレジストレーションローラ14に向け、装置本体100A内において記録材Sの通り道を形成する搬送経路600を搬送される。その後、レジストレーションローラ14が後述するようにして中間転写ベルト8上に形成されたトナー像と同期して回転開始されることにより、記録材Sは搬送経路600を二次転写部T2に搬送される。
【0012】
なお、ここではカセット12を1つだけ示したが、カセット12はサイズや厚さの異なる記録材Sを収容可能に複数が配置されていてもよく、その場合、複数のカセット12のいずれかから選択的に記録材Sが搬送経路600に搬送されてよい。また、カセット12に収容された記録材Sに限らず、手差し給送部(不図示)に載置された記録材Sが搬送経路600に搬送されるようにしてもよい。
【0013】
<画像形成部>
画像形成装置100が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。従って、ここでは代表してブラックの画像形成部PKについて説明し、その他の画像形成部PY、PM、PCについては説明を省略する。
【0014】
図2に示すように、画像形成部PKには、感光体として円筒型の感光ドラム1が配設されている。感光ドラム1は、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には帯電装置2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6が配置されている。
【0015】
画像形成装置100により、例えばフルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始されると、回転する感光ドラム1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。帯電装置2は、例えばコロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム1を一様な負極性の暗部電位に帯電させるコロナ帯電器などである。次いで、感光ドラム1は、露光装置3から発せられる画像信号に対応したレーザ光Lにより走査露光される。これにより、感光ドラム1の表面に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム1に形成された静電潜像は、現像装置4内に収容されているトナー(現像剤)によって顕像化され、可視像となる。
【0016】
感光ドラム1に形成されたトナー像は、中間転写ベルト8を挟んで配置される一次転写ローラ5との間で構成される一次転写部T1にて、中間転写ベルト8に一次転写される。この際、一次転写ローラ5には一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム1の表面に残ったトナーは、ドラムクリーニング装置6によって除去される。
【0017】
図1に戻って、上記した動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部PY~PKで順次行い、中間転写ベルト8上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングにあわせてカセット12に収容された記録材Sが二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写ローラ10に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト8上に形成されたフルカラーのトナー像が記録材Sに一括して二次転写される。
【0018】
次いで、記録材Sは定着装置11に搬送される。定着装置11は、回転自在に配設された定着ローラ11aと、定着ローラ11aに圧接しながら回転する加圧ローラ11bとを有する。定着ローラ11aは加圧ローラ11bに圧接された状態で(例えば、圧接力が約784N(約80kgf))、不図示の駆動モータにより所定の回転速度(例えば400mm/s)で回転される。定着ローラ11a内にはハロゲンヒータ11cが配置されており、このハロゲンヒータ11cにより定着ローラ11aの表面温度が上げられることで(例えば180℃)、定着装置11は記録材Sを加熱し得る。
【0019】
定着装置11は、定着ローラ11aと加圧ローラ11bとによって形成された定着ニップT3においてトナー像が形成された記録材Sを挟持搬送することにより、搬送される記録材Sを加熱、加圧してトナー像を記録材Sに定着させる。即ち、加熱、加圧によって記録材Sに形成されたトナー像のトナーが溶融、混合され、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。このようにして、一連の画像形成プロセスは終了する。そして、トナー画像が定着された記録材Sは、搬送装置90によって記録材冷却装置20へと搬送される。搬送装置90は、例えばエア吸着などにより記録材Sを担持するベルトが所定の回転速度(例えば400mm/s)で回転されることにより、定着装置11から記録材冷却装置20へと記録材Sを搬送する。記録材冷却装置20は、搬送装置90により搬送される記録材Sを冷却する。記録材Sの温度は、例えば記録材冷却装置20の冷却前で90℃程度であるが、記録材冷却装置20により60℃程度まで下げられる。記録材冷却装置20については後述する(
図3乃至
図8参照)。
【0020】
なお、本実施形態の場合、搬送経路600は両面印刷のために、記録材冷却装置20に冷却された記録材Sの表裏を反転して画像形成部PY、PM、PC、PKへ再搬送する反転搬送部600aを有している。即ち、片面印刷の場合、第一面(表面)にトナー像が定着された記録材Sは記録材冷却装置20による冷却後、機外へ排出されて積載ユニット60に積載される。他方、両面印刷の場合、第一面(表面)にトナー像が定着された記録材Sは記録材冷却装置20による冷却後、反転搬送部600aにより表裏反転され搬送経路600に搬送され、第二面(裏面)に対しトナー像が定着される。第二面にトナー像が定着された記録材Sは記録材冷却装置20による冷却後、機外へ排出されて積載ユニット60に積載される。
【0021】
<記録材冷却装置>
次に、本実施形態の記録材冷却装置20について、
図3乃至
図8を用いて説明する。本実施形態の記録材冷却装置20は、ベルト冷却方式の冷却装置である。
図3に示すように、記録材冷却装置20は無端状の第一ベルト21と、第一ベルト21と記録材Sを挟持して搬送する無端状の第二ベルト25とを有している。第一ベルト21と第二ベルト25は共に、例えば強度の高いポリイミド樹脂などを用いて、厚みが100μm、ベルト周長が942mmに形成されたエンドレスベルトである。
【0022】
図3に示すように、第一ベルト21は複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に架け渡され、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)のうち少なくともいずれか1つのローラが不図示の駆動モータによって回転される。本実施形態の場合、例えばローラ22dが駆動モータ(不図示)によって回転されることで、第一ベルト21が図中矢印Q方向へ移動する。駆動ローラとしてのローラ22dは、例えば表層に厚み1mmのゴム層を有し、外径φ40mmに形成されている。
【0023】
第二ローラとしてのローラ22bは、第一ベルト21の内周面に当接してローラ22cと共に第一ベルト21を張架可能に設けられて、第一ベルト21の幅方向(ローラ22cの回転軸線方向)の寄りを制御するステアリングローラである。ローラ22bは表層に厚み1mmのゴム層を有し、第一ローラとしてのローラ22cに対して舵角を切る後述するようなステアリング動作が行われることによって、第一ベルト21の蛇行をコントロールし得る。ローラ22bはローラホルダ81aに回転自在に軸支されて、ステアリング機構400によってステアリング動作される。
【0024】
ステアリング機構400及びローラホルダ81aについて、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、記録材冷却装置20を装置背面側から見た斜視図である。なお、
図4において、第一ベルト21は図示を省略している。
図4に示すように、ステアリング機構400は、記録材冷却装置20の背面側の支持フレームである背面板200に取り付けられている。ローラ22bとステアリング機構400とは、背面板200を挟むようにして互いに反対側に配置されている。背面板200には、少なくともステアリング操作軸406が挿通される貫通孔が形成されている。このように、フォーク板404を備える駆動変換部410は、背面板200に対してローラ22bと反対側に位置している状態であっても、ローラ22bをステアリング制御可能となっている。
【0025】
ステアリング機構400は、
図5に示すように、ステアリングモータ401、ウォーム402、駆動変換部410、回動軸部405、ステアリング操作軸406、ポジションフラグ408、ポジションセンサ407を有している。ステアリングモータ401はステッピングモータであり、正逆方向の任意の方向に所定の回転数で回転可能である。ステアリングモータ401が回転すると、ステアリングモータ401の回転軸に取り付けられたウォーム402が回転される。
【0026】
ここで、駆動変換部410は、ウォームホイール403とフォーク板404とを一体的に有している。ウォーム402の回転は、ウォーム402と噛合されたウォームホイール403に伝達される。このとき、ステアリングモータ401の正逆回転に伴うウォーム402の回転に従って、ステアリングモータ401の回転軸線方向においてウォームホイール403が往復移動可能になっている。こうして、ウォーム402とウォームホイール403とを介して、ステアリングモータ401の回転に伴って駆動変換部410が回動軸部405を回動中心として回動し得る。つまり、駆動変換部410は、ウォームホイール403を介してステアリングモータ401の駆動を伝達されることで、フォーク板404が揺動するように、回動軸部405を揺動中心として揺動し得る。
【0027】
また、ステアリング機構400は、駆動変換部410の移動に伴って移動するポジションフラグ408と、ポジションフラグ408を介して駆動変換部410の位置を検出するポジションセンサ407とを備えている。そして、ポジションセンサ407の検出結果に応じたステアリング制御を実行可能となっている。
【0028】
ローラホルダ81aは、
図5に示すように、ローラ22dの回転軸を回転自在に軸支するためのベアリング部810が設けられている。また、ローラホルダ81aには、上記した駆動変換部410に嵌合されるステアリング操作軸406が固定されている。ステアリング操作軸406は、駆動変換部410のフォーク板404に隙間をもって嵌合されており、フォーク板404の揺動に伴って、駆動変換部410とともに動作し得る。このように、ステアリング操作軸406がフォーク板404の揺動に伴って動作することで、ローラホルダ81aは、ローラ22bの回転軸線に交差する揺動中心軸(不図示)を中心として揺動可能となっている。そして、ローラホルダ81aに支持されているローラ22bもローラホルダ81aの揺動に倣って揺動することで、ローラ22bの舵角を調整することができる。こうして、ローラ22bの舵角が調整されると、第一ベルト21が幅方向に往復移動されるので、第一ベルト21の幅方向の所定範囲内に位置付ける、第一ベルト21のステアリング制御を実現できる。
【0029】
図3に戻って、ローラ支持機構81は、上記したローラホルダ81aと、ローラホルダ81aを第一ベルト21に向けて付勢する付勢部材としてのバネ81bとを有する。このバネ81bは、例えば第一ベルト21の張力が約39.2N(約4kgf)となる付勢力でローラ22bを付勢可能なバネ圧固定のものである。
【0030】
第一ベルト21の内周側には、複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)やローラ支持機構81の他に、ヒートシンク30、スクレーパー70、ベルト張架機構部61が設けられている。ヒートシンク30、スクレーパー70、ベルト張架機構部61については後述する。
【0031】
他方、搬送部材としての第二ベルト25は複数の第二ベルト張架ローラ(26a~26d)に架け渡されて、第一ベルト21の外周面に当接される。第二ベルト25は第一ベルト21の外周面に当接し、トナー像の形成された記録材Sを搬送しつつ冷却するための冷却ニップ部T4を形成する。本実施形態の場合、ローラ26dがローラ22dによって例えば約49N(約5kgf)で加圧されている。そして、ローラ26dは図示を省略したが、駆動ギアを介してローラ22dを駆動する駆動モータに接続されており、この駆動モータにより回転されることで、第二ベルト25が図中矢印R方向へ移動する。即ち、第二ベルト25は第一ベルト21と共に移動(回転)する。ローラ26bは、第二ベルト25の幅方向(ローラ26cの回転軸線方向)の寄りを制御するステアリングローラであり、幅方向中央部を揺動中心としてローラ26cに対して舵角を切るステアリング動作を行って、第二ベルト25の蛇行をコントロールする。即ち、ローラ26bは、上記したステアリング機構400と同様のステアリング機構420によってステアリング動作される。
【0032】
第二ベルト25の内周側には、第一ベルト21の内周側に配設されている後述のヒートシンク30に向かって第二ベルト25を加圧するために、複数の加圧ローラが設けられている。本実施形態では一例として、記録材搬送方向(図中矢印R方向)に関し、加圧ローラ26eが冷却ニップ部T4の下流端側に、加圧ローラ26fが冷却ニップ部T4の上流端側に設けられている。これら加圧ローラ26e、26fは例えば9.8N(1kgf)の加圧力で第二ベルト25を加圧しており、第二ベルト25を介して第一ベルト21をヒートシンク30により確実に当接させている。
【0033】
なお、ここでは第一ベルト21と第二ベルト25の両方を駆動させる例を示したが、これに限らない。例えば、第一ベルト21のみを駆動して第二ベルト25を第一ベルト21に従動させるようにしてもよいし、あるいは第二ベルト25のみを駆動して第一ベルト21を第二ベルト25に従動させるようにしてもよい。
【0034】
<ヒートシンク>
第一ベルト21の内周側には、第一ベルト21を冷却するためのヒートシンク30が配設されている。本実施形態の場合、ヒートシンク30は、定着装置11によりトナー像が形成された面側で記録材Sに当接する第一ベルト21の内周面に当接される。即ち、トナー像が定着された記録材Sは、第一ベルト21と第二ベルト25とによって挟持され、これらの回転に従って記録材搬送方向(図中矢印R方向)へと搬送される。その際に、記録材Sは、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接することにより形成されるニップ部としての冷却ニップ部T4を通過する。本実施形態の場合、冷却ニップ部T4を形成するうちの第一ベルト21がヒートシンク30により冷却されている。ヒートシンク30は、記録材Sを効率よく冷却するために、冷却ニップ部T4を形成する箇所において第一ベルト21の内周面に当接している。記録材Sは冷却ニップ部T4を通過する際に、ヒートシンク30によって冷却された第一ベルト21を介して温度が下げられる。
【0035】
冷却部材としてのヒートシンク30は、例えばアルミなどの金属で形成された放熱板である。ヒートシンク30は、第一ベルト21に接触して第一ベルト21から熱を奪うための受熱部30aと、熱を放熱するための放熱部30bと、受熱部30aから放熱部30bに熱を伝導するためのフィンベース30cとを有する。放熱部30bは、空気との接触面積を増やして効率のよい放熱を促すために、多数の放熱フィンにより形成されている。例えば、放熱フィンは厚みが1mm、高さが100mm、ピッチが5mmに設定され、フィンベース30cは厚みが10mmに設定される。また、ヒートシンク30自体を強制的に冷却するために、ヒートシンク30(詳しくは放熱部30b)に向けて送風する冷却ファン40が設けられている。この冷却ファン40の風量は、例えば2m3/minに設定される。
【0036】
<スクレーパー>
また、第一ベルト21の内周側には、清掃部材としてのスクレーパー70が第一ベルト21の回転方向(図中矢印Q方向)に関しヒートシンク30の下流側に配設されている。スクレーパー70はヒートシンク30よりも重力方向上方の位置で第一ベルト21に当接するように、本実施形態の場合、第一ベルト21の回転方向に関しローラ22cの下流からローラ22bの上流までの間に設けられている。スクレーパー70は例えば厚み0.1mmのPETシートにより、第一ベルト21の幅方向において少なくとも記録材Sが通過する範囲に亘って当接する長さに形成されたフィルム状のシート部材である。スクレーパー70は、第一ベルト21に対し回転方向に対しカウンター方向から当接するように設けられる。こうしたスクレーパー70は柔軟性を有することから、移動(回転)する第一ベルト21の動きに追従して第一ベルト21に当接した状態を維持し得る。
【0037】
上記のスクレーパー70は、第一ベルト21に付着した摩耗粉(削れ粉とも呼ばれる)を第一ベルト21から除去してクリーニング可能に設けられている。即ち、上記のように、ヒートシンク30は第一ベルト21の内周面に当接していることから、第一ベルト21の内周面は回転することに伴いヒートシンク30に摺擦される。そうすると、第一ベルト21がヒートシンク30によって削られるので、ベルトの摩耗粉が生じ得る。この摩耗粉は第一ベルト21に付着して運ばれ、ヒートシンク30の上流端に溜りやすい。そして、溜った摩耗粉の量が多くなると、溜った摩耗粉のうちの一部がヒートシンク30と第一ベルト21との間に入り込み、それによって熱抵抗が増し記録材Sの冷却性能を低下させてしまい得る。
【0038】
上記したベルトの摩耗粉の発生を抑制するために、第一ベルト21として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラーを含有するポリイミド樹脂により形成されたベルトが用いられる。PTFEフィラー含有率は、例えば重量パーセントで5%程度である。基材のポリイミド樹脂にPTFEフィラーを含有させると、ヒートシンク30との摩擦抵抗が低下するので、PTFEフィラーを含有させた第一ベルト21はPTFEフィラーを含有させていない場合に比べて、ヒートシンク30によって削られ難くなる。ただし、PTFEフィラーを含有させたベルトを用いても、摩耗粉はどうしても生じ得る。この摩耗粉はPTFEフィラーを含むため、第一ベルト21に付着し難いが、そうした摩耗粉であってもヒートシンク30と第一ベルト21との摺動面を通過すると、第一ベルト21に付着し得る。そうであるから、第一ベルト21の使用時間が長くなるにつれ、ヒートシンク30の上流端に溜る摩耗粉の量は多くなる。そこで、第一ベルト21に付着した摩耗粉を第一ベルト21から除去するために、上記したように、スクレーパー70がヒートシンク30の下流側に配設されている。
【0039】
スクレーパー70の重力方向下方には、スクレーパー70により第一ベルト21の内周面から掻き落された摩耗粉を貯留して回収するための回収ボックス71が配置されている。回収ボックス71は重力方向上方が開口しており、その開口部がスクレーパー70と第一ベルト21との当接箇所よりも第一ベルト21の回転方向上流側で摩耗粉を受け入れできるように、回収ボックス71は配置されている。なお、スクレーパー70は、例えば両面テープなどによって回収ボックス71に固定されている。
【0040】
上記した第一ベルト21は、上述のようにヒートシンク30により削られて摩耗し、また時間がたつにつれて劣化し得る。また、ヒートシンク30が配設されていない第二ベルト25は、第一ベルト21に比べ摩耗するのが遅いが、使用に応じて摩耗するし、また時間がたつにつれて劣化し得る。そこで、本実施形態では、作業者が摩耗あるいは劣化した第一ベルト21や第二ベルト25を交換できるようにしている。具体的に、第一ベルト21と第二ベルト25は、それぞれが記録材冷却装置20の上枠体62や下枠体63(後述の
図6(a)、
図6(b)参照)に対して第一ベルト張架ローラ(22a~22d)の回転軸線方向に挿抜自在に設けられている。ただし、作業者が第一ベルト21や第二ベルト25を交換する際に、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接した状態のままではベルトを挿抜し難い。そこで、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接した当接状態と、第一ベルト21と第二ベルト25とが離間した離間状態とに変更可能に、第一ベルト21と第二ベルト25とが相対的に移動可能に設けられている。
【0041】
<接離機構>
第一ベルト21と第二ベルト25とを相対的に移動させるための機構(接離機構と呼ぶ)について、説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、記録材冷却装置20を記録材搬送方向の下流側から見た図である。ここで、
図4における左右方向が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)の回転軸線方向であり、
図4において奥手前方向が記録材の搬送方向である。そして、
図6(a)、
図6(b)において、右側が画像形成装置100(記録材冷却装置20)の「正面側」であり、左側が画像形成装置100(記録材冷却装置20)の「背面側」である。なお、ここでは、上枠体62の幅方向一端側(背面側)を揺動中心として幅方向他端側(正面側)が下枠体63に対し重力方向上方に向け揺動される例を示したが、これに限らない。例えば、下枠体63の幅方向一端側(背面側)が上枠体62に対し重力方向下方に向け揺動されるようにしてもよい。本実施形態の場合、接離機構は主に後述のフック部材64、ピン65、圧縮バネ66により構成されている。
【0042】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、本実施形態の記録材冷却装置20は上枠体62と下枠体63とに大きく分けられる。上枠体62は、上述した第一ベルト張架ローラ(22a~22d)を回転可能に保持し、またヒートシンク30、スクレーパー70、後述のベルト張架機構部61を保持している。他方、下枠体63は、上述した第二ベルト張架ローラ(26a~26d)、加圧ローラ26e、26fを回転可能に保持している。これら上枠体62と下枠体63とは、幅方向一端側(背面側)に設けられた揺動軸62aを揺動中心として揺動可能に連結されている。第一ベルト21は上枠体62に対し幅方向他端側(正面側)から挿抜自在に設けられており、第二ベルト25は下枠体63に対し幅方向他端側(正面側)から挿抜自在に設けられている。
【0043】
上枠体62の幅方向他端側(正面側)にはフック部材64が設けられ、下枠体63の幅方向他端側(正面側)にはピン65が設けられている。下枠体63の幅方向一端側(背面側)には、上枠体62を重力方向上方に向けて付勢する圧縮バネ66が配置されている。そして、フック部材64には把持部67が設けられており、作業者は記録材冷却装置20の正面側からこの把持部67を持ってフック部材64を回動させて、フック部材64をピン65に係合させたり、フック部材64とピン65との係合を解除させたりし得る。
図6(a)に示すように、フック部材64がピン65に係合されることで、第一ベルト21と第二ベルト25とは当接した当接状態となる。作業者は圧縮バネ66の力に抗して上枠体62を下枠体63に向けて押し下げるようにして、フック部材64をピン65に係合させる。
【0044】
作業者は第一ベルト21あるいは第二ベルト25を交換する場合、フック部材64とピン65との係合を解除する。フック部材64とピン65との係合が解除されると、
図6(b)に示すように、上枠体62は圧縮バネ66によって上方に持ちあがるようにして揺動する。この際に、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)、第一ベルト21、ヒートシンク30、スクレーパー70、ベルト張架機構部61が、上枠体62と一体的に移動される。そして、上枠体62はストッパー(不図示)によって揺動が止められることで所定位置に位置づけられる。こうして、上枠体62が下枠体63に対して揺動することで、第一ベルト21と第二ベルト25とは離間した離間状態となる。なお、圧縮バネ66のバネ力は上枠体62の重量に応じた値に設定されていればよく、本実施形態の場合、作業者が約10Nの力でフック部材64をピン65に係合可能な値に設定されている。
【0045】
図3に戻り、記録材冷却装置20では、上述したように、第一ベルト21が複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に張架されているため、第一ベルト21がヒートシンク30に対して所定の圧力でもって当接している。また、PETシートのような柔軟性あるスクレーパー70が第一ベルト21に当接されている。従来の場合、既に述べたように、作業者は第一ベルト21の交換時に、古いベルトをヒートシンク30や第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に摺擦させながら引き抜かなければならなかった。また、作業者は新しいベルトをヒートシンク30に摺動させながら、複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に架け渡していた。それ故、ヒートシンク30との摺動によりベルトにかかる抵抗が大きく、ベルト交換が難しかった。具体的には、第一ベルト21を適切な状態で適切な位置に取り付けたり、スクレーパー70を第一ベルト21に対し適切に当接させたりするのに、手間がかかっていた。
【0046】
そこで、本実施形態の記録材冷却装置20には、ベルト交換を容易に行えるようにするために、ベルト張架機構部61が設けられている。なお、後述するように、ベルト張架機構部61は作業者により操作されるものであるが、第一ベルト21と第二ベルト25とが離間した離間状態でないと(
図6(b)参照)、作業者はベルト張架機構部61を操作し得ない。
【0047】
<ベルト張架機構部>
ベルト張架機構部61について説明する。移動部材としてのベルト張架機構部61は、第一ベルト21が張架された張架位置(第一位置、
図3参照)と、第一ベルト21が緩められた非張架位置(第二位置、
図7参照)との間で、ローラ22b(ここではステアリングローラ)を移動させる機構である。ローラ22bは、ローラ支持機構81を保持する保持体61aが第一位置に位置する場合のローラ22cに対する距離よりも、保持体61aが第二位置に位置する場合のローラ22cに対する距離が短くなる。そして、ローラ22bが第二位置にある場合の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)のそれぞれの回転中心を結んだ仮想線の長さは、第一ベルト21の周長よりも短くなる。それ故、ローラ22bが第二位置にある場合、ローラ22bが第一位置に位置する場合よりも第一ベルト21への当接圧が小さくなり、第一ベルト21の張架が緩まる。なお、第一位置とは、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)によって第一ベルト21が回転動作(稼働)する位置であって、第一ベルト21と第二ベルト25とによって記録材を搬送可能な位置である。
【0048】
ここで、ローラ22bがステアリングローラでなく、圧縮バネにより第一ベルト21を所定の張力で張架する所謂テンションローラである場合、ローラ22bを張架位置と非張架位置との間で移動させるためには、ローラ22bのみを移動させてよい。即ち、ローラ22bを張架位置から非張架位置へ移動する際に、圧縮バネの付勢力に抗してローラ22bを移動させるようにすればよい。他方、ローラ22bがステアリングローラである場合にはローラ22bを揺動する機構を有していることから、ローラ22bを張架位置と非張架位置との間で移動させるには、ローラ支持機構81ごとローラ22bを移動させるようにしている。この構成により、圧縮バネの付勢力に抗してローラ22bを移動させる場合(ローラ22bがテンションローラの場合)に比べ、ローラ22bの移動量を多くすることができるため、上述した作業者によるベルト交換時の作業性をより向上することができる。
【0049】
図8に、ローラ22bが第一ベルト21の張架位置に位置するときのステアリング操作軸406の位置(実線で示す)と、ローラ22bが第一ベルト21の非張架位置に位置するときのステアリング操作軸406´の位置(点線で示す)とを示した。ステアリング操作軸406のステアリング制御時の移動方向は、ローラ22bが張架位置と非張架位置とに移動する方向と交差する方向である。ステアリング操作軸406のステアリング制御時の移動方向は、ローラ22bが張架位置と非張架位置とに移動する方向と、ローラ22bの回転軸線方向とに直交する方向である。ステアリング操作軸406は、駆動変換部410のフォーク板404のU字状に形成された溝に沿って移動する。このような構成とすることで、ローラ22bを張架位置と非張架位置との間で移動させる際に、ローラ支持機構81ごとローラ22bを移動させることができる。
【0050】
図3及び
図7に示すように、ベルト張架機構部61は、ローラ支持機構81を保持する保持体61aと、例えば楕円形状に形成されたカム部61bとを有する。保持体61aは、上枠体62(
図6(a)参照)に揺動軸61cを揺動中心として揺動可能に設けられている。また、カム部61bが上枠体62に回転可能に設けられている。カム部61bは作業者によって操作されることにより、
図3に示した位置から
図5に示した位置までの間を往復移動するように回転される。そして、カム部61bの回転により保持体61aが揺動される。このカム部61bが作業者により回転される向きに応じて、ローラ22bはヒートシンク30に近づく向き(ベルトの内側向き)に移動したり、ヒートシンク30から離れる向き(ベルトの外側向き)に移動したりする。こうして、ローラ22bは、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に張架された張架位置(
図3)と、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に張架されずに緩んでいる非張架位置(
図7)との間を移動し得る。
【0051】
ローラ22bが張架位置にある場合、第一ベルト21に対しスクレーパー70が当接し、また第一ベルト21がヒートシンク30に対し所定の圧力で当接した状態となる。その状態で、第一ベルト21の張力は約39.2N(約4kgf)となる。他方、ローラ22bが非張架位置にある場合、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に対し緩んだ状態となる。第一ベルト21が緩んだ状態であれば、作業者は第一ベルト21に対しスクレーパー70やヒートシンク30を当接させないようにできる。つまり、第一ベルト21の交換時、作業者は古いベルトをスクレーパー70やヒートシンク30に当接させることなく、上枠体62から取り外すことができる。つまり、作業者は、古いベルトを負荷なく取り外すことができる。そして、作業者は新しいベルトをスクレーパー70に当接させることなく、またヒートシンク30に摺動させることなく、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に架け渡すようにして、上枠体62に取り付けることができる。このように、ベルト交換時にローラ22bを張架位置から非張架位置に移動させることで、ベルト交換時の作業性を向上させることができる。
【0052】
図5を用い、ベルト張架機構部61の具体的な動作を説明する。
図7に示すように、作業者は不図示のつまみを持って反時計回り(図中矢印c参照)にカム部61bを回転させることで、保持体61aが揺動軸61cを揺動中心として自重でカム部61bに接触しながら下方に移動する。本実施形態の場合、ヒートシンク30の側面30dがカム部61bのストッパーの役割を果たしており、そこでカム部61bの回転が止まるようになっている。こうして、ローラ22bは張架位置dから非張架位置eに移動される。
【0053】
非張架位置eにおけるローラ22bの位置は、張架位置dにおけるローラ22bの位置よりも第一ベルト21の内側であり、言うなればヒートシンク30により近い位置である。また、非張架位置eにおけるローラ22bの位置は、張架位置dと比較してローラ22bがローラ22a、22c、22dの少なくともいずれかに対して近づいた位置である。そうなるように、保持体61aとカム部61bとは揺動軸61cを含め、上枠体62(
図6(a))に設けられている。ローラ22bが非張架位置eに移動して第一ベルト21から離れることにより、第一ベルト21の張力が解除され、第一ベルト21を引き抜いての交換が可能になる。これにより、作業者は、交換対象となった古い第一ベルト21を簡単に引き抜くことができ、スクレーパー70を傷つけたり変形させたりする恐れなく、第一ベルト21を容易に交換することができる。また、新しい第一ベルト21を装着する際に、スクレーパー70やヒートシンク30等に摺擦させることなくベルトを装着することができるため、第一ベルトを傷つけることなく容易に交換することができる。
【0054】
新しいベルトを上枠体62に取り付けた後、作業者はカム部61bを時計回りに回転させる。すると、保持体61aが揺動軸61cを揺動中心としてカム部61bに持ち上げられるようにして上方に移動する。そして、カム部61bは、保持体61aの揺動軸61cと反対側に形成されたストッパー部61dに接触することによって、回転が止まるようになっている。こうして、ローラ22bは非張架位置eから張架位置dに移動される。
【0055】
なお、ローラ22bが張架位置dにない場合、作業者は上枠体62を下枠体63に向けて押し下げることができず、第一ベルト21と第二ベルト25とを当接した当接状態にできないようにすると好ましい。
【0056】
以上のように、本実施形態では、張架状態の第一ベルト21がローラ22bの移動に伴い緩められる(非張架状態)。作業者は第一ベルト21を緩めることが容易にできるので、第一ベルト21を交換する際に、ヒートシンク30やスクレーパー70を接触させることなく、第一ベルト21を挿抜することができる。即ち、第一ベルト21の交換時に、交換対象となった古い第一ベルト21が取り出しやすくなり、かつ新しい第一ベルト21にヒートシンク30が接触し難くできるので、ヒートシンク30との接触によって第一ベルト21に傷がつくのを抑制し得る。また、第一ベルト21の交換時に第一ベルト21にスクレーパー70が接触し難くできるので、第一ベルト21との接触によってスクレーパー70が捲れたり破損したりするのを抑制できる。こうして、第一ベルト21を冷却するためにヒートシンク30が第一ベルト21の内周面に当接されているベルト冷却方式の記録材冷却装置20において、作業者が第一ベルト21の交換を容易に行うことができる。
【0057】
<他の実施形態>
なお、上述した実施形態では、ヒートシンク30やスクレーパー70が配置されていない第二ベルト25側にベルト張架機構部61を設けていないが、第二ベルト25側にもベルト張架機構部61を設けてもよい。
【0058】
なお、上述した実施形態では、第一ベルト21を交換する際に、ベルト張架機構部61によって第一ベルト21の張架状態と非張架状態とを切り替える構成を説明したが、これに限らない。例えば、第一ベルト21を交換せずにスクレーパー70を交換する際や回収ボックス71内に回収された摩耗粉を除去する際に、ベルト張架機構部61によって第一ベルト21の張架状態と非張架状態とを切り替える構成であってもよい。スクレーパー70を交換する際や回収ボックス71内に回収された摩耗粉を除去する際に第一ベルト21の張架状態を切り替える構成とした場合は、上枠体62と下枠体63とを離間させなくてもよい。この場合、スクレーパー70や回収ボックス71を挿抜する際に第一ベルト21の内周面を削ってしまい第一ベルト21の交換頻度が増加するのを、第一ベルト21を非張架状態とすることにより抑制することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、画像形成装置100の装置本体100A内に記録材冷却装置20を設けた場合を例に示したが(
図1参照)、これに限らない。例えば、記録材冷却装置20は装置本体100Aの外部に設けられてもよい。
図9に、記録材冷却装置20を装置本体100Aの外部に設けた例を示す。
【0060】
図9に示すように、装置本体100Aには外部冷却装置としての外部冷却ユニット101が連結されている。外部冷却ユニット101は画像形成装置100の機能を拡張するために後付け可能な周辺機(オプションユニットなどと呼ばれる)の1つとして、画像形成装置100に連結可能に構成されている。外部冷却ユニット101は、装置本体100Aから排出される記録材Sを冷却して、定着前に比べて高い記録材Sの温度を所定温度以下に下げるために配設される。外部冷却ユニット101は、記録材Sを冷却するために上述した記録材冷却装置20を有している。
【0061】
外部冷却ユニット101により冷却された記録材Sは、排出ローラ17により外部冷却ユニット101から排出されて積載ユニット60に積載される。積載ユニット60は、外部冷却ユニット101や画像形成装置100に対し着脱自在に設けられている。即ち、積載ユニット60は、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結されていない場合、画像形成装置100に装着されている(
図1参照)。そして、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結される際に、利用者によって画像形成装置100から取り外されて外部冷却ユニット101に付け替えられる。
【0062】
なお、周辺機として、複数の外部冷却ユニット101が連結されてもよい。作業者は連結する外部冷却ユニット101の台数を増やすことによって、既存の画像形成装置100に対し記録材Sの冷却能力を向上させることが容易にできる。
【符号の説明】
【0063】
11…定着装置、20…記録材冷却装置、21…ベルト(第一ベルト)、22b…第二ローラ(ローラ)、22c…第一ローラ(ローラ)、25…搬送部材(第二ベルト)、30…冷却部材(放熱板、ヒートシンク)、61…移動部材(ベルト張架機構部)、61a…保持体、64…接離機構(フック部材)、65…接離機構(ピン)、66…接離機構(圧縮バネ)、70…清掃部材(スクレーパー)、81a…ローラホルダ、81b…付勢部材(バネ)、100…画像形成装置、400…ステアリング機構、406…ステアリング操作軸、500…画像形成ユニット、S…記録材、T4…ニップ部(冷却ニップ部)