(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】電磁波モジュール、およびそれを用いた電磁波カメラシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20241118BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20241118BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20241118BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20241118BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20241118BHJP
H01Q 19/06 20060101ALI20241118BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01N21/01 D
H01L31/02 D
H01L31/10 A
H01Q3/26
H01Q19/06
H01Q23/00
(21)【出願番号】P 2020198281
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】井辻 健明
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102770(JP,A)
【文献】特開2002-118270(JP,A)
【文献】特開平03-052270(JP,A)
【文献】特開2015-188174(JP,A)
【文献】特開2009-145312(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118398(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/116998(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03667813(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/3581
G01N 21/01
H01L 31/0232
H01L 31/10
H01Q 3/26
H01Q 19/06
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップとレンズ部を有する電磁波モジュールであって、
前記チップは、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを結ぶ第3面と、を有し、
前記チップは、前記第1面側に配されたアンテナ電極と、前記第2面側に配された基準電位を決める基準部と、前記アンテナ電極と前記基準部との間に配され電磁波に対し利得あるいは整流作用を有する半導体部と、を少なくとも有し、
前記レンズ部は、レンズを構成する曲面と、前記曲面と対向する第4面と、前記レンズの光軸からの投影面において前記曲面の外縁に内包される凹部と、を有し、
前記凹部は、前記曲面から前記第4面よりも近い位置に配された第5面と、前記第5面と前記第4面とを接続する第6面と、を有し、
前記凹部の前記第6面の少なくとも一部と、前記チップの前記第3面の少なくとも一部とが接触することを特徴とする、電磁波モジュール。
【請求項2】
前記第6面の少なくとも一部は、前記第6面の一部または全部に設けられた第1位置決め部であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁波モジュール。
【請求項3】
前記第3面の少なくとも一部は、前記第3面の一部または全部に設けられた第2位置決め部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電磁波モジュール。
【請求項4】
前記第6面の少なくとも一部は、前記第6面の一部または全部に設けられた第1位置決め部であり、
前記第3面の少なくとも一部は、前記第3面の一部または全部に設けられた第2位置決め部であり、
前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とが接することを特徴とする、請求項1に記載の電磁波モジュール。
【請求項5】
前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とが接する第1位置と、前記電磁波が発信するあるいは前記電磁波を受信する第2位置との第1距離は、前記第1位置と前記レンズの光軸との第2距離と等しいことを特徴とする、請求項4に記載の電磁波モジュール。
【請求項6】
前記チップの前記第1面の一部または全部と、前記凹部の前記第5面とが接することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項7】
前記レンズ部の前記第4面は、前記チップの前記第1面と、前記チップの前記第2面との間に位置することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項8】
前記レンズ部の曲面と前記チップの前記第1面との最短距離は、電磁波の波長λに対し2λ以上であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項9】
前記チップおよび前記レンズ部が配された基板と、
前記基板と、前記チップの前記第3面と、前記レンズ部の前記第4面とに接する有機材料層と、を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項10】
前記レンズ部の
前記外縁より外側に配された放熱部を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項11】
前記レンズ部は、前記第4面から離れる方向に向かって凸となる曲面を有する凸レンズであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項12】
前記レンズ部は、前記光軸に沿った断面視において、半円形状を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項13】
前記半導体部は、複数のアンテナ電極を含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項14】
前記半導体部は、負性抵抗素子を含み、
前記レンズ部は、ポリオレフィンを主成分とする材料と、テフロン(登録商標)を主成分とする材料と、ポリエチレンを主成分とする材料と、シリコンを主成分とする材料とのいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項15】
前記電磁波は、テラヘルツ波であることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の電磁波モジュール。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の電磁波モジュールと、
前記電磁波モジュールからの電磁波を検出する受信部と、
前記電磁波モジュールと前記受信部の動作を制御する制御部と、を有する電磁波カメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波モジュール、およびそれを用いた電磁波カメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波は、典型的には0.2THzから30THzの範囲のうち、任意の周波数帯域の信号を有する電波電磁波である。テラヘルツ波は、可視光や赤外光と比較して波長が長いため、被写体からの散乱の影響を受け難く、多くの物質に対し強い透過性を有している。また、テラヘルツ波は、ミリ波と比較して波長が短いため、高い空間分解能を得ることができる。これらの特徴を活かし、テラヘルツ波はX線に替わる安全なイメージング技術への応用が期待されている。例えば、公共の場所でのボディチェックや監視カメラ等の秘匿物検査技術への応用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、テラヘルツ波のイメージング技術として、テラヘルツ波を照射する照明を有するアクティブ型のカメラシステムが開示されている。テラヘルツ波が発生する発生部と、発生部に対して設けられた照射光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、テラヘルツ波の発生部であるチップと照明光学系をモジュール化することについての詳細な検討がなされていない。また、光学系と電磁波チップを実装する場合に、それらの位置精度が低いと、電磁波モジュールの特性を低下させる可能がある。
【0006】
そこで、本発明では、電磁波チップと光学系とを高い位置精度で実装可能な電磁波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、チップとレンズ部を有する電磁波モジュールであって、前記チップは、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを結ぶ第3面と、を有し、前記チップは、前記第1面側に配されたアンテナ電極と、前記第2面側に配された基準電位を決める基準部と、前記アンテナ電極と前記基準部との間に配され電磁波に対し利得あるいは整流作用を有する半導体部と、を少なくとも有し、前記レンズ部は、レンズを構成する曲面と、前記曲面と対向する第4面と、前記レンズの光軸からの投影面において前記曲面の外縁に内包される凹部と、を有し、前記凹部は、前記曲面と前記第4面との間に配された第5面と、前記第5面と前記第4面とを接続する第6面と、を有し、前記凹部の前記第6面の少なくとも一部と、前記チップの前記第3面の少なくとも一部とが接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、電磁波チップと光学系とを高い位置精度で実装した電磁波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)実施形態1の電磁波モジュールの構成を説明するための平面模式図、(b)実施形態1の電磁波モジュールの構成を説明するための断面模式図、(c)実施形態1の電磁波モジュールの構成を説明するための断面模式図。
【
図2】実施形態2の電磁波モジュールの構成を説明するための模式図。
【
図3】実施形態2の電磁波モジュールの別の構成を説明するための模式図。
【
図4】実施形態3の電磁波モジュールの構成を説明するための模式図。
【
図5】実施形態4の電磁波モジュールの構成を説明するための模式図。
【
図6】実施形態5の電磁波モジュールの構成を説明するための模式図。
【
図7】実施形態6の電磁波モジュールの構成を説明するための模式図。
【
図8】実施形態1の電磁波モジュールのレンズ部の設計例を説明する図。
【
図9】(a)アンテナ数とビームの幅を説明するための図、(b)チップとレンズとの位置ずれに対するビームのずれ量を説明するための図。
【
図10】テラヘルツ波カメラシステムを説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について各実施形態を用いて説明する。各実施形態では、電磁波としてテラヘルツ波の場合について説明するが、テラヘルツ波以外の電磁波にも適用可能である。各実施形態におけるテラヘルツ波は、典型的には0.2THz以上30THz以下の範囲、より好適には0.3THz以上10THz以下の範囲である。また、以下の説明では、電磁波を発信させる素子を用いた電磁波モジュールを説明するが、電磁波を検出する素子を用いた電磁波モジュールとしても適用可能である。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。
【0011】
(実施形態1)
本実施形態の電磁波モジュールについて、
図1を用いて説明する。
図1(a)は本実施形態の電磁波モジュール100の構成を説明するための平面模式図である。
図1(b)は、本実施形態の電磁波モジュール100の構成を説明するための、
図1(a)のAA’線における断面模式図である。
図1(c)は、本実施形態の電磁波モジュール100の構成を説明するための、
図1(a)のBB’線における断面模式図である。
図1(b)および
図1(c)における断面は、レンズの光軸127を含む。以下、
図1(a)~
図1(c)を相互に参照して説明する。本実施形態の電磁波モジュール100は、チップ101と、チップ101に対応して配されたレンズ部121とを含む。また、電磁波モジュール100は、チップ101が搭載された基板142を含んでいてもよい。
【0012】
チップ101は、電磁波を発生または検出する素子を含む。チップ101の素子は、電磁波を発生、あるいは検出するためのアンテナを含む。本実施形態において、電磁波はテラヘルツ波である。そして、チップ101のアンテナは、複数あってもよい。例えば、アンテナはアンテナ電極103を含む。複数のアンテナ電極103をアレイ状に配置し、各アンテナの位相を同期させることで、テラヘルツ波の指向性を改善し、正面強度を増強させる技術を採用することができる。上述したように、素子は、発生と検出に適用することができる。よって、複数のアンテナを用いた指向性の調整も電磁波の発生だけではなく、検出にも適用できる。
【0013】
レンズ部121は、チップ101から発生する電磁波、あるいはチップ101に至る電磁波のビーム形状を調整することができる。また、レンズ部121は、チップ101から発生する電磁波、あるいはチップ101に至る電磁波の指向性を調整することができる。また、レンズ部121は、チップ101から発生する電磁波、あるいはチップ101に至る電磁波を、収束または発散させることができる。
【0014】
レンズ部121は、
図1(b)および
図1(c)に示すように曲面122を有する。曲面122はレンズとして機能しうる。曲面122は、半円形状を有するが、それに限定されない。レンズ部121は、凹部126を有する。凹部126は、
図1(b)および
図1(c)に示すように、曲面122と、対抗する面123との間に位置する。凹部126は、
図1(a)に示すように、レンズ部121の外縁150に対し内側に位置する。また、凹部126は、
図1(a)に示すように、レンズ部121の外縁150に内包される。なお、
図1(a)は曲面122によって構成されるレンズの光軸127を取った時に、光軸127からの投影図ともいえる。本実施形態では、
図1(a)に示すように凹部126の平面形状は円である。また、本実施形態では、
図1(a)に示すように、凹部126の外縁とレンズ部121の外縁150は光軸127を中心とした同心円となっているが、これに限定されない。また、本実施形態において、
図1(a)における凹部126の外縁とは、凹部126の側面125である。チップ101は、凹部126に収容される。このような構成によって、光学系とチップとを実装をした電磁波モジュールが提供される。
【0015】
更に、チップ101とレンズ部121の位置関係について説明する。チップ101の側面である面107の一部と凹部126の側面である面125の一部とが接している。面107と面125との接触により、レンズ部121の光軸127とチップ101との位置決めを行うことができる。すなわち、レンズ部121とチップ101との実装工程において、接触位置決めによりレンズ部121とチップ101との位置決めを行うことができる。よって、光軸ずれを低減しつつ、レンズ部121とチップ101との実装を行うことができる。また、レンズ部121の曲面122の内側において、位置決めがなされるため、レンズ部121の外部に設けた位置決め機構で位置決めを行う場合と比較して、電磁波モジュールの小型化が容易となる。
【0016】
以下、詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は本実施形態の電磁波モジュール100の構成を説明するための平面模式図である。チップ101は、平面視において、矩形を呈し、本実施形態では正方形である。チップ101は4つの辺からなる外縁149を有するが、これに限定されない。チップ101の中心は、点Oと一致しているとする。チップ101の対角長さは距離d×2である。チップ101には、素子が配され、素子のアンテナ電極103が示されている。アンテナ電極103の中心は、点Oと一致しているとする。本実施形態においては、アンテナ電極103の中心からテラヘルツ波が生じているとみなす。レンズ部121は、平面視において、半径R1の円からなる外縁150を有する。そして、半径R2からなる外縁148を有する凹部126を含む。いずれの外縁も点Oを中心とする円となっている。凹部126は、外縁150に内包されている。
【0018】
ここで、チップ101の対角長さである距離d×2と、凹部126の直径である半径R2×2は等しい長さである。すなわち、チップ101の4つの角と、凹部126の外縁148とが接している。このような配置によって、チップ101とレンズ部121との位置合わせが高い精度で行うことができる。
【0019】
凹部126の外縁148の少なくとも一部は、第1位置決め部128として機能する。チップ101の外縁149の少なくとも一部は第2位置決め部129として機能する。本実施形態では、チップ101の外縁149のうち角が第2位置決め部129として機能している。第2位置決め部129は、少なくとも1つあればよい。少なくとも1つあれば、位置決めを行うことが可能である。より好ましくは、第2位置決め部129は2つ以上あることが望ましい。より高い精度で位置決めを行うことができる。なお、各位置決め部としては、外縁148の全部であってもよく、外縁149の全部であってもよい。
【0020】
なお、
図1(a)において、点Oは、レンズ部121のレンズの光軸127や、チップ101にてテラヘルツ波が生じる位置141と一致していることが望ましい。なお、位置141は、生じるテラヘルツ波を合成したときの中心であってもよい。なお、これらの点は、完全一致した位置になくてもよい。また、位置141が点でなく領域である場合には、少なくとも一部が重畳すればよい。
【0021】
図1(b)は、
図1(a)のAA’線における断面模式図である。
図1(c)は、
図1(a)のBB’線における断面模式図である。チップ101は、面102と、面104と、面107とを有する。面102と面104は対向している。つまり、面102は上面であり、面104は下面であり、面107は面102と面104とを結ぶ面であり、側面である。例えば、面102を第1面、面104を第2面、面107を第3面とも称する。チップ101の面107は、本実施形態においては4面あるが、この面の数に限定されない。チップ101の面107は3面でもよいし、5面以上でもよい。チップ101は、素子を含む。ここで、
図1(a)のチップの外縁149である辺は、面107である。
【0022】
素子は、アンテナを含む。アンテナは、アンテナ電極103と、基準部105と、半導体部106とを含む。アンテナ電極103は、チップ101の面102側に配された導体である。基準部105は、チップ101の面104側に配された導体であり、基準電位を供給する。半導体部106は、アンテナ電極103と基準部105との間に位置し、半導体からなる。本実施形態の素子は、例えば、テラヘルツ波を発信させる。この時、基準部105によって、テラヘルツ波の指向性は、基準部105からアンテナ電極103に向かう方向に調整される。本実施形態の素子のアンテナ電極103は1つであるため、テラヘルツ波が生じる位置141は、アンテナ電極103の中心となる。中心とは、平面視したときの中心や、半導体部106の位置である。チップ101の素子は、GaAs系やInP系等の化合物半導体や、シリコン等の半導体をベースとして作製される。すなわち、チップ101は、第1面側に配されたアンテナ電極103と、第2面側に配された基準電位を決める基準部105とを少なくとも有する。また、チップ101は、アンテナ電極103と基準部105との間に配され電磁波に対し利得あるいは整流作用を有する半導体部106を少なくとも有する。
【0023】
半導体部106は、所望の電磁波に対し利得あるいは整流作用を有する。例えば、半導体部106がテラヘルツ波に対して利得作用を有する場合、電磁波モジュール100はテラヘルツ波発生モジュールである。また、半導体部106がテラヘルツ波に対し整流作用を有する場合、電磁波モジュール100は、テラヘルツ波検出モジュールとなる。
【0024】
半導体部106がテラヘルツ波に対し利得作用を有する場合の半導体部106の構成は次のようになる。半導体部106は、負性抵抗素子である共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode、以下RTD)、ガンダイオード(Gunn Diode)、インパットダイオード(IMPATT Diode)等が適用できる。また、半導体部106がテラヘルツ波に対し整流作用を有する場合には半導体部106の構成は次のようになる。半導体部106は、ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode、以下SBD)、セルフスイッチングダイオード、MIM(Metal-Insulator-Metal)ダイオード等が適用できる。SBDは、化合物半導体や半導体で形成されうる。
【0025】
本実施形態においては、素子は1つのアンテナを有する構成を示しているが、素子が有するアンテナは複数であってもよい。この時、複数のアンテナの基準部105を共通にすることができる。テラヘルツ波領域では、電波の波の性質を利用し、複数のアンテナから発生するテラヘルツ波を重ねて、テラヘルツ波全体の指向性を調整することができる。例えば、複数のアンテナをアレイ状に配置する。ここで、各アンテナから発生するテラヘルツ波の位相を同期させることで、テラヘルツ波のビーム形状を調整することができる。具体的には、テラヘルツ波の指向性を制御する手段としては、特開2014-200065号公報に示したようなアンテナのアレイ化という手段がある。アレイ数の増加に伴い、指向性が向上する傾向がある。隣接するアンテナから発生するテラヘルツ波の位相差を制御することで、テラヘルツ波のビームの指向性の方向を制御できる。アンテナにおいて、テラヘルツ波が生じる位置141は、複数のアンテナ電極103の配置パターンと、複数のアンテナから発生するテラヘルツ波の位相差により変化する。例えば、複数のアンテナ電極103を2次元アレイ状に配置し、アンテナのテラヘルツ波の位相を同期させることで、テラヘルツ波が生じる位置141は、アレイ状に配されたアレイ領域の中心に位置する。中心とは、平面視したときの重心ともいえる。言い換えると、複数のアンテナのテラヘルツ波の位相を同期させることで、テラヘルツ波が生じる位置141にテラヘルツ波の点光源を生じさせるともいえる。なお、テラヘルツ波の位相の同期とは、位相が完全に一致している状態に限定されない。
【0026】
ここで、光デバイスの例と比較する。LED(Light Emitting Diode)等の光デバイスにおいては、複数のLEDをアレイ状に配すると、面光源化となる。複数のLEDのそれぞれの光の指向性は変わらないので、複数のLEDから発せられる光(ビーム)は拡がる。テラヘルツ波では、上述のようにテラヘルツ波の位相を調整することで複数のアンテナからのテラヘルツ波のビームを点光源のように調整することができ、テラヘルツ波のビーム形状を制御できる。
【0027】
レンズ部121は、円柱状の部分と半球状の部分が仮想線151にて一体となった形状である。レンズ部121は、レンズを構成する曲面122と、曲面122と対向する面123と、凹部126とを含む。ここで、曲面122は上面でもあり、面123は底面ともいえる。凹部126は、曲面122側に設けられた面124と、面124と対向する面123と、面124と面123とを接続する面125とを含む。面123は、面124と曲面122との間に位置する。凹部126は、円柱状の構造であり、面125は曲面である。凹部126は、レンズの光軸127からの投影面において曲面122の外縁に内包される。面123は第4面と、面124は第5面と、面125は第6面とも称する。レンズ部121は、レンズを構成する曲面122と、曲面122と対向する第4面と、レンズの光軸127からの投影面において曲面の外縁に内包される凹部126と、を有する。凹部126は、曲面122と第4面との間に配された第5面と、第5面と第4面とを接続する第6面と、を有する。
【0028】
レンズの光軸127は、レンズ部121の屈折率境界面の形状や屈折率や配置により求めることができる。レンズ部121は、テラヘルツ波に対する損失が小さい材料を使用することが好ましい。例えば、ポリオレフィン、テフロン(登録商標)、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene)等の樹脂材料が使用できる。また、高抵抗シリコン等の半導体材料が適用できる。本発明では、これらの材料を総称して誘電体材料とも呼ぶ。
【0029】
位置決め部について詳細に説明する。第1位置決め部128は、
図1(a)を用いて説明したように、凹部126の外縁148である。
図1(b)および
図1(c)において、外縁148は、凹部126の面125である。すなわち、第1位置決め部128は、凹部126の面125の少なくとも一部であればよい。第2位置決め部129は、
図1(a)を用いて説明したように、チップ101の外縁149の少なくとも一部であり、例えば、チップ101の角である。
図1(b)および
図1(c)において、チップ101の外縁149はチップ101の面107であり、チップ101の角は、2つの面107の交点である。
【0030】
第1位置決め部128と第2位置決め部129は、少なくとも点で接している。更に、本実施形態においては、第1位置決め部128と第2位置決め部129は線で接する。第1位置決め部128と第2位置決め部129は、
図1(a)に示すように少なくとも位置143において、点で接し、
図1(c)に示すように線で接する。すなわち、凹部126の面125の少なくとも一部と、チップ101の面107の少なくとも一部とが接触する。ここで、例えば、面125は第6面とも称し、面107は第3面とも称する。このような方法によって、レンズ部121は、チップ101に対する相対的な位置決めを行うことができる。このような接点を有することで、チップ101とレンズ部121とを高い位置精度で実装することができる。すなわち、本実施形態の電磁波モジュール10は、チップ101のテラヘルツ波が生じる位置141と、レンズ部121のレンズの光軸127とを重ねることができる。
【0031】
なお、第1位置決め部128と第2位置決め部129の接し方は、これに限定されない。例えば、第1位置決め部128と第2位置決め部129とが面で接していてもよい。また、
図1(a)のような平面視したときにおいて、第1位置決め部128と第2位置決め部129とが線で接していてもよい。また、
図1(c)の断面視したおきにおいて、第1位置決め部128と第2位置決め部129とは点で接していてもよい。
【0032】
図1(a)に示すように、第1位置決め部128と第2位置決め部129とが接触する位置143について、次に示す距離が等しくなる。第1位置決め部128とテラヘルツ波が生じる位置141との距離dと、第2位置決め部129とレンズの光軸127との距離である半径R2とが等しくなる。この条件を満たすことで、本実施形態の電磁波モジュール10は、実装段階において、少なくともレンズの光軸127に対し垂直な面内の方向において、チップ101とレンズ部121との位置ずれを低減することが可能となる。例えば、チップ101の中心とレンズ部121の光軸との位置ずれを低減することが可能となる。レンズの光軸127に対し垂直な面内の方向は、水平方向とも呼べる。
【0033】
位置決めの精度について説明する。チップ101は、例えば、半導体ウェハから切り出される。一般に、半導体ウェハからのチップの切り出し精度は、10μm~数100um程度である。レンズ部121は、例えば誘電材料で作製する場合、外形の加工精度は10μm~数100μm程度である。これらの加工精度より、接触による水平方向の位置決めの精度は、数10μm~数100μmとすることができる。ここで、水平方向の位置ずれとは、レンズの光軸に対し、レンズの光軸に垂直な面内でのチップの位置ずれを示す。
【0034】
テラヘルツ波の指向性について、
図9(a)および
図9(b)を用いて説明する。
図9(a)は、素子のアンテナ数と5m先のビーム幅(m)の関係を示す図である。この図は、アンテナは格子状に配置し、各アンテナの位相は同期しているものとして算出したものである。この関係は、アンテナ数と指向性の関係を意味する。アレイとして配するアンテナの数が増えるほど、ビーム幅が小さくなることがわかる。そして、アンテナの数の増加率に対してビーム幅の減少率が緩やかになることがわかる。つまり、アンテナ数の増加に伴う指向性の改善幅が飽和する傾向がある。具体的には、テラヘルツ波のビーム幅は、アレイ数の増加に伴い指数関数的に小さくなり、アンテナ数が100個から200個にて、5m先のビーム幅は約0.4mに飽和する。すなわち、5m先のビーム幅が0.4mに収束していることがわかる。0.4mとは例えば、平均的な人の横幅である。
【0035】
図9(b)には、テラヘルツ波を発生する素子を有するチップ101とレンズ部121のレンズとの水平方向の位置ずれ量(mm)と、5m先のテラヘルツ波のビームとレンズ部121の光軸とのずれ量(m)の関係を示す図である。36個のアンテナをアレイ状に配し、レンズ部121を設けた場合について算出している。水平方向の位置ずれとは、レンズ部121の光軸に対し、レンズ部121の光軸に垂直な面内でのチップの位置ずれを示し、レンズ部121の光軸とはテラヘルツ波を照射するターゲット位置を意味する。
図9(b)に示すように、位置ずれ量を1mm以下にすることで、光軸のずれを0.5mm程度から0.5mm以下に抑えることができる。特に、テラヘルツ波を利用し、被写体として人をイメージングする場合には、一般的な人の横幅に相当する0.4m以内にずれ量を収めることが望ましい。本実施形態のずれ量は、0.4mを十分に満たす。テラヘルツ波の波長はサブミリメートルオーダーであるため、光軸ずれ量がテラヘルツ波の波長以下になることが望ましい。よって、テラヘルツ波を用いる場合には、位置ずれ量を1mm以下にすることが望ましい。
【0036】
上述のように、本実施形態の構成によれば、レンズ部121とチップ101の加工精度より、接触による水平方向の位置決めの精度は、数10μm~数100μmとすることができる。よって、
図9(b)に示す位置ずれ量は1mm以下となり、精度よく実装することができるため、更なるテラヘルツ波の指向性を向上させることができる。
【0037】
更に、電磁波としてテラヘルツ波を用いる場合には、その波長は数100μmのオーダーである。よって、接触による位置決めの精度は、テラヘルツ波の波長よりも小さい。このことから、実装段階において、テラヘルツ波の光学調整が行われた状態で、チップ101とレンズ部121との水平方向の位置決めをすることが可能となる。
【0038】
上述したように、本実施形態では、
図1(a)に示すように、第1位置決め部128と、チップ101の4つの角である第2位置決め部129とが接する。
図1(c)は、
図1(a)のBB’線での断面であり、
図1(a)におけるチップ101の対角線上に位置する2つの第2位置決め部129を横断する面での断面図である。ここでは、チップ101が有する4つの第2位置決め部129の全部が、凹部126の第1位置決め部128に接する例を示しているが、必ずしも全部が接する必要はない。例えば、4つの第2位置決め部129のうち、1つの角を面取りし、3つの第2位置決め部129が、第1位置決め部128に接する態様も可能である。この時、面取りされたチップ101の角は、第1位置決め部128とは接していない。3点でチップ101とレンズ部121との位置決めを行うことで、突き当てでの位置決めが可能となる。面取りされた部分と第1位置決め部128との隙間により、レンズ部121の凹部126にチップ101を挿入する際、過度の力で第1位置決め部128と第2位置決め部129が接触してチップ101が破損するリスクが低減する。そのため、チップ101に対するレンズ部121の実装がより容易となる。
【0039】
次にレンズ光軸方向の位置合わせについて説明する。
図1(b)および
図1(c)に示すように、チップ101の面102の一部または全部と、凹部126の面124の一部または全部は、面で接触する。面で接触することで、例えば、レンズ部121の曲面122とチップ101のテラヘルツ波が生じる位置141との間隔が固定できる。
【0040】
更に、レンズ部121の面123は、チップ101の面102と面104との間にあることが好ましい。例えば、レンズ部121の面123が面104よりも外、すなわち基板側にあると、チップ101の面102と曲面122との距離に誤差が生じやすい。よって、面123を面102と面104との間に配することで、より確実にレンズ部121とチップ101を面で接触させることができる。従って、チップ101とレンズ部121との光軸方向の位置決めが容易となる。
【0041】
また、レンズ部121とチップ101の位置決め状態を、より強固に保持するため、面123と基板142の隙間の一部、または全部に接着材を充填してもよい。言い換えると、基板142に対し、接着剤でレンズ部121を固定する。このような構成により、レンズの光軸127方向に対するチップ101とレンズ部121との位置決めが可能となる。よって、チップ101とレンズ部121との光軸方向の位置決めが容易となる。
【0042】
レンズ部121の曲面122と、チップ101の面102との最短距離は、テラヘルツ波の波長λに対し、2λ以上であることが好ましい。この条件により、テラヘルツ波が生じる位置141から発生したテラヘルツ波は、曲面122近傍において平面波として扱うことが可能となる。平面波として扱うことで、可視光のレンズ設計の手法をレンズ部121の設計に適用することができ、レンズ設計が容易となる。
【0043】
レンズ部121が樹脂材料で構成する場合、チップ101とレンズ部121との位置決め後に、レンズ部121を加熱することで、熱圧着により、チップ101に対し、レンズ部121を固定することもできる。
【0044】
本実施形態の構成によって、レンズの光軸127に対し水平方向において、レンズ部121とチップ101とが高い精度で位置合わせされた電磁波モジュール10が提供可能である。また、本実施形態の構成によって、レンズの光軸127の方向において、レンズ部121とチップ101とが高い精度で位置合わせされた電磁波モジュール10が提供可能である。特に、テラヘルツ波などの可視光よりも長い波長の帯域においては、実装時の光軸ずれの低減に顕著な効果を有する。
【0045】
また、電磁波としてテラヘルツ波を用いる場合には、次のような効果が期待できる。複数のアンテナによるテラヘルツ波のビーム調整と、レンズ部121によるテラヘルツ波のビーム調整を組み合わせて使用することができ、テラヘルツ波の指向性やビーム形状の調整の自由度が高まる。具体的には、テラヘルツ波の指向性を更に改善するために、上述したアンテナのアレイ化技術に加え、レンズ部121を設ける。このような構成によって、テラヘルツ波の指向性やビーム形状の調整の自由度が高まる。
【0046】
以下、本実施形態で説明した電磁波モジュール10について、レンズ部121の設計例を示す。なお、これまで共通する部分の説明は省略する。また、本発明の電磁波モジュールの構成はこれに限定されるものではない。
【0047】
図8は、実施形態1の電磁波モジュールのレンズ部の設計例を説明するための模式図である。
図8は、
図1(b)と対応する構成となっており、チップ101とレンズ部121の配置は
図1(b)と同じものとする。
【0048】
図8において、電磁波はテラヘルツ波であり、半導体部106はRTDを含む。アンテナ電極103は
図1(a)に示したような矩形の電極であり、基準部105と組み合わせることでパッチアンテナとして機能する。パッチアンテナの電極となるアンテナ電極103と基準部105との間にRTDを配している。ここでの素子は、このような構成のアンテナを含むアクティブアンテナ型のテラヘルツ波発生素子である。テラヘルツ波発生素子は、2次元アレイ状に配された25個のアンテナを有し、各アンテナのテラヘルツ波の位相を同期するものとする(不図示)。例えば、特開2014-200065号に構成例が示される。チップ101は3mm×3mmのサイズに切り出される。チップ101の厚みは600μm以上650μm以下である。
【0049】
レンズ部121は、高密度ポリエチレンで構成するものとする。レンズ部121に設ける凹部126は、レンズ部121の面123より円柱状に構成されている。レンズ部121の光軸127と円柱の中心軸は一致している。凹部126の深さは例えば、0.5mmである。円柱の直径は例えば、4.3mmである。本例でのチップ101とレンズ部121との位置関係は
図1と同じである。
図1(a)に示すように、チップ101の第2位置決め部129である4つの角は、凹部126の第1位置決め部128である面125に接触する。
【0050】
図8において、レンズ部121の曲面122の曲率Rは、例えば、5mmである。また、チップ101の第1の面102からレンズ部121の曲面122までの距離Hは、例えば、12.9mmである。
【0051】
このような構成において、チップ101とレンズ部121とが高い位置精度で実装されることで、好適なテラヘルツ波を照射することが可能となる。特に、チップ101のアンテナのアレイ化の効果により、テラヘルツ波の放射角度は約18度に絞られる。更に、レンズ部121のレンズの効果により、テラヘルツ波の放射角度はさらに約2.5度に絞られる。これは、5m先のテラヘルツ波のビーム幅を約0.2mにする設計であり、上述した好適なずれ量0.4mを下回る値である。このように、複数のアンテナによるビーム調整と、レンズによるビーム調整を組み合わせて使用することで、テラヘルツ波の指向性やビーム形状の調整の自由度を向上させることができる。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態の電磁波モジュールについて、
図2および
図3を用いて説明する。本実施形態では、実施形態1の凹部126の平面形状やチップ101の平面形状の変形例について説明する。
図2(a)、
図2(b)、
図3(a)、
図3(b)は、
図1(a)に対応するレンズ部121の光軸方向からみた投影図を示す図面である。なお、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0053】
図2(a)は本実施形態の電磁波モジュール200の構成を説明するための平面模式図である。電磁波モジュール200において、凹部126は、八角柱状の形状を有する。または、凹部126は、四角柱の角を面取りした構造ともいえる。すなわち、凹部126は、
図2(a)に示すように平面視において八角形であり、4つの辺202と4つの辺203を含む8辺からなる。凹部126は、
図1(b)示す凹部126の側面である面125が8つある構造ともいえる。
図2(a)の辺202および辺203は、八角柱状の側面に相当する、平面である。凹部126は、八角柱に限らず、他の多角柱構造が適用できる。
【0054】
凹部126が有する第1位置決め部128は、辺203の一部または全部であり、上述の四角柱の角の面取り部分ともいえる。チップ101が有する第2位置決め部129は、実施形態1と同じく、チップ101の角であり、チップ101の面107に形成された辺である。第1位置決め部128と第2位置決め部129は、点あるいは線で接する。ここでは、第1位置決め部128を含む面125は、平面として説明したが、平面でなくてもよい。例えば、曲面や、第1位置決め部128を含む面125は、平面と曲面の組み合わせでもよい。
【0055】
図2(b)は、本実施形態の電磁波モジュール201の構成を説明するための平面模式図である。チップ101と第2位置決め部129は他の例と同様であるため、説明を省略する。凹部126は四角の各辺204と、辺204から連続する辺205を有する。辺205は、湾曲した辺であり、半円状の辺であり、凸部206を構成する。凹部126が有する第1位置決め部128は、この凸部206である辺205である。辺205は、立体視した場合には、半円柱状の側面部分である。なお、辺205は、半円柱状として説明したが、角柱状でもよく、これに限らない。また、辺205からなる凸部206は、曲面によって構成されているが、複数の平面によって構成されていてもよく、曲面と平面との組み合わせでもよい。第2位置決め部129は、チップ101の面107である。ここでは、第1位置決め部128と第2位置決め部129は、点あるいは線で接する。実施形態1で説明したように、第1位置決め部128と第2位置決め部129の接し方はこれに限らない。例えば、面で接していてもよい。
【0056】
図3(a)は、本実施形態の電磁波モジュール300の構成を説明するための平面模式図である。凹部126は、
図3(a)に示すように四角形状である。
図3(a)の凹部126は、
図2(a)の四角形状に比べて面取り部分が小さい。凹部126を立体視した場合には、四角柱状の構造ともいえる。なお、凹部126は、面取りされていない角がある四角柱でもよく、他の多角柱構造でもよい。凹部126は、4つの辺312と4つの辺313を含む。辺313は面取り部を構成する。第1位置決め部128は、
図3(a)における辺312である。言い換えると、第1位置決め部128は、四角柱状の側面である面125である。面125は、曲面でも曲面と平面の組み合わせでもよい。
【0057】
チップ101は、
図3(a)において、4つの辺314と、辺314から連続する辺315を有する。辺315は、湾曲した辺であり、半円形の辺である。辺315によって、半円形状の凸部316が構成される。凸部316を立体視した場合には、凸部316は半円柱状の突起構造であるが、多角柱状でも、曲面と平面が組み合わさった柱状構造でもよい。第2位置決め部129は、突起構造ともいえる。
図3(a)において、第1位置決め部128と第2位置決め部129は、点あるいは線で接する。これまで説明したように、第1位置決め部128と第2位置決め部129の接し方はこれに限らない。例えば、面で接していてもよい。
【0058】
図3(b)は、本実施形態の電磁波モジュール301の構成を説明するための平面模式図である。凹部126は、四角状である。具体的には、凹部126は、4つの辺317と、辺317と連続した辺318とを含む。辺318は、4つの角が面取りされた構成を形成し、凹部126の内側に向かって湾曲した凸部319を構成している。凸部319を立体視した場合には、凸部319は円柱状の構造であり、側面が凹部126の内側にせり出した構造を有する。せり出し構造の側面は曲面構造を有する。第1位置決め部128は、凹部126の凸部319の一部または全部である。
【0059】
チップ101は、
図3(b)において、四角状であり、角が面取りされた構成である。チップ101は、4つの辺320と、辺320と連続した4つの辺321とを含む。辺321は、面取りされた部分を構成する。立体視した場合には、辺320と辺321はチップ101の側面である面107を構成する。第2位置決め部129は、辺321である。なお、面107は平面でも曲面でもよい。
図3(b)において、第1位置決め部128と第2位置決め部129は、点あるいは線で接する。これまで説明したように、第1位置決め部128と第2位置決め部129の接し方はこれに限らない。例えば、面で接していてもよい。
【0060】
本実施形態において説明したように、第1位置決め部128と第2位置決め部129の構造は各種変更が可能であり、また本実施形態に示す構成に限らず、凹部126とチップ101との接触により位置決めする目的を達成できればよい。
【0061】
以上の構成により、本実施形態の電磁波モジュールは、レンズの光軸127に対し水平方向にテラヘルツ波の光学調整を行いつつ、レンズ部121とチップ101の位置決めができる。よって、高い位置精度で実装された電磁波モジュールを提供することが可能となる。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態の電磁波モジュール400について、
図4を用いて説明する。本実施形態では、実施形態1に対して、チップ101とレンズ部121の固定を変形した例である。
図4(a)は、電磁波モジュール400の構成を説明するための平面模式図である。
図4(b)は、電磁波モジュール400の構成を説明するための、
図4(a)のAA’線における断面模式図である。
図4(a)は、レンズ部121の光軸方向からみた投影図を示す図面ともいえる。
図4(b)は、レンズ部121の光軸方向に沿った断面図ともいえる。
図4(a)は
図1(a)に、
図4(b)は
図1(b)に対応する模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0063】
電磁波モジュール400は、有機材料層451を有している。
図4(a)において、有機材料層451は、レンズ部121の外側に位置し、凹部126の外縁と、レンズ部121の外縁150と、有機材料層451の外縁452は点Oを中心とした同心円のである。
図4(b)において、有機材料層451は、レンズ部121と基板142との間に位置し、レンズ部121の凹部126とチップ101との間の充填している。また、有機材料層451は、レンズ部121の面123と基板142との間に位置し、チップ101と凹部126の面125との間に位置し、凹部126の面124と基板142との間に位置する。有機材料層451は、基板142と、チップ101の面107と、レンズ部121の面123と、凹部126の面124とに接する。言い換えると、有機材料層451は凹部126の内側と、レンズ部121の面123と基板142の隙間に充填している。例えば、有機材料層451は、接着剤やマッチングオイルや樹脂などが適用でき、これらのうち少なくとも1つを含む。なお、有機材料層451は、レンズ部121と基板142との隙間の全てに充填されているが、一部の領域に充填する形態でもよい。例えば、有機材料層451は、レンズ部121の面123と基板142との間に位置し、チップ101の面107と凹部126の面125との間には気体が充填されていてもよい。また、有機材料層451には、有機材料からなるスペーサーが含まれていてもよい。
【0064】
この構成に依れば、基板142とチップ101とレンズ部121の隙間に有機材料層451が充填するため、チップ101とレンズ部121との固定がより強固なものとすることができる。また、チップ101の周囲が大気の場合に比べて、チップ101に有機材料層451が密着することで、チップ101と外部との熱経路における熱伝導率を高めることができる。よって、チップ101で発生した熱を効率よく放熱することが可能となり、チップ101の保護が容易となる。
【0065】
(実施形態4)
本実施形態の電磁波モジュール500について、
図5を用いて説明する。本実施形態では、実施形態3に対して、放熱構造を追加した例である。
図5(a)は、電磁波モジュール500の構成を説明するための平面模式図である。
図5(b)は、電磁波モジュール500の構成を説明するための、
図5(a)のAA’線における断面模式図である。
図5(a)は、レンズ部121の光軸方向からみた投影図を示す図面ともいえる。
図5(b)は、レンズ部121の光軸方向に沿った断面図ともいえる。
図5(a)は
図4(a)に、
図5(b)は
図4(b)に対応する模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0066】
電磁波モジュール500は、
図5(a)に示すように、レンズ部121の外縁150より外側に配された放熱部552を有している。放熱部552は、熱伝導率が高い物質で構成されており、例えば、アルミニウム、銅、アルミニウムを主成分とする材料、銅を主成分とする材料を含む。放熱部552の熱伝導率は、レンズ部121の熱伝導率よりも高いことが好ましい。また、放熱部552は、熱伝導率を高めるための放熱構造として、複数のフィン553を有する。放熱部552が有する放熱構造はフィン553に限定されず、表面積を大きくする構成など任意の構成をとることができる。チップ101で発生した熱は、レンズ部121及び有機材料層451を介して放熱部552に伝わり、熱は、外部に効率よく放熱される。そのため、チップ101の熱的な破壊を低減することができ、チップ101を保護することが可能となる。また、放熱部552により、レンズ部121の位置が固定されるため、チップ101とレンズ部121の固定がさらに強固となり、高い位置精度での実装が可能となる。
【0067】
(実施形態5)
本実施形態の電磁波モジュール600について、
図6を用いて説明する。本実施形態では、実施形態1に対して、レンズ部121の凹部126の構造を変更した例である。
図6(a)は、電磁波モジュール600の構成を説明するための平面模式図である。
図6(b)は、電磁波モジュール600の構成を説明するための、
図6(a)のAA’線における断面模式図である。
図6(c)は、電磁波モジュール600の構成を説明するための、
図6(a)のBB’線における断面模式図である。
図6(a)は、レンズ部121の光軸方向からみた投影図を示す図面ともいえる。
図6(b)および
図6(c)は、レンズ部121の光軸方向に沿った断面図ともいえる。
図6(a)は
図1(a)に、
図6(b)は
図1(b)に、
図6(c)は
図1(c)に対応する模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0068】
図6(a)に示すように、レンズ部121は、部分601を有している。部分601は、凹部126の内部に設けられ、平面視すると円形である。部分601の外縁と、レンズ部121の外縁150と、凹部126の外縁148は、点Oを中心とした同心円となっている。凹部126の外縁148と、部分601との間を部分603とする。
【0069】
図6(b)および
図6(c)に示すように、部分601は、面653を有する。面653は、凹部126と面122との間に位置する。面653は、曲面であり、レンズとして機能しうる。レンズ部121とチップ101との間には、部分602が配されている。部分602は、空間であり、空間には気体が含まれている。空間は例えば、空隙であってもよい。気体は、大気や不活性ガスである。部分602は、側面である面610を有する。面610は、
図6(a)に示すように曲面であるが、これに限定されず、例えば平面であってもよい。面122と面653は、両凸レンズを構成しているともいえる。面653が構成するレンズの形態はこれに限らず、凸レンズを構成してもよい。また、面653は、複数あってもよい。複数の面653は水平方向に配列し、複数のレンズを形成していてもよい。
【0070】
図6(b)および
図6(c)に示すように、凹部126の上面である面124は、チップ101の上面である面102の四隅で接しており、レンズ部121とチップ101との位置決めとして機能しうる。また、
図6(a)に示す部分603の少なくとも一部が、
図6(c)に示すチップ101の面102に接することで、チップ101とレンズ部121との水平方向および垂直方向の位置合わせを行っている。すなわち、
図6(c)に示す凹部604が第1位置決め部128として機能しうる。凹部604は、面610と面123との間に位置する部分である。
【0071】
レンズ部121は、例えば、レンズ部121を複数のブロックに分割して成形し、最終的に各ブロックを接着してレンズ部121を作製してもよい。また、3Dプリンタを利用し、複数の曲面を有するレンズ部121を一体に作製してもよい。
【0072】
本実施形態では、レンズ部121は複数の曲面を有するため、レンズによる電磁波のビーム調整の自由度が高まる。
【0073】
(実施形態6)
本実施形態の電磁波モジュール700について、
図7を用いて説明する。本実施形態では、実施形態1に対して、レンズ部121の凹部126の構造を変更した例である。
図7(a)は、電磁波モジュール700の構成を説明するための平面模式図である。
図7(b)は、電磁波モジュール700の構成を説明するための、
図7(a)のAA’線における断面模式図である。
図7(c)は、電磁波モジュール700の構成を説明するための、
図7(a)のBB’線における断面模式図である。
図7(d)は、電磁波モジュール700の構成を説明するための側面模式図である。
図7(a)は、レンズ部121の光軸方向からみた投影図を示す図面ともいえる。
図7(b)および
図7(c)は、レンズ部121の光軸方向に沿った断面図ともいえる。
図7(d)は、レンズ部121の光軸方向に垂直は方向から見たときの構成を示す模式図である。
図7(a)は
図1(a)に、
図7(b)は
図1(b)に、
図7(c)は
図1(c)に対応する模式図である。なお、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0074】
図7(a)に示すように、レンズ部121は、凹部126に加え溝部754を有している。溝部754は、チップ101の面102に構造物があった場合、この構造物とレンズ部121との接触を避けることができる。本実施形態では、チップ101の構造物の例として、ワイヤ配線755が配置された例を示している。
図7(d)に示すように、溝部754によって、ワイヤ配線755がレンズ部121に接触することなく設けることができる。溝部754は、
図7(a)に示すように、凹部126を通る帯状の形状を有する。また、溝部754は、
図7(a)に示すように、点Oに対してAA’線を基準に線対称、あるいはAA’線に垂直な線を基準に線対称となっている。例えば、溝部754は、
図7(b)および
図7(c)に示すように、レンズ部121の面123に位置し、角柱状である。このような溝部754は、面123に切削によって形成することができる。溝部754の形状や配置はこれに限定されず、例えば、溝部754は曲面を有していてもよく、溝部754は複数あってもよい。また、溝部754は、
図7(a)に示すように、底面である面123を横断するように、レンズ部121の外縁150に接するように設けられているが、レンズ部121の外縁150から離間されるように設けられていてもよい。すなわち、溝部754はレンズ部121に内包される構造であってもよい。
【0075】
図7(c)に示すように、凹部126の面124は、チップ101の面102の四隅で接しており、レンズ部121とチップ101との位置決めとして機能しうる。
図7(c)に示す凹部701が第1位置決め部128として機能しうる。凹部701は、溝部754を構成する面702と面123との間に位置する部分である。
【0076】
この構成に依れば、チップ101の面124に構造物がある状態でも、チップ101とレンズ部121の位置決めが可能となる。そのため、実装形態の自由度が向上する。
【0077】
(実施形態7)
本実施形態では、実施形態1~6のいずれかの電磁波モジュールを用いて、電磁波カメラシステムに適用した場合について説明する。本実施形態では、電磁波としてテラヘルツ波の場合を説明するため、テラヘルツ波カメラシステムとして説明する。以下、
図10を参照して説明する。テラヘルツカメラシステム1000は、テラヘルツ波を放射する発信部1001と、テラヘルツ波を検出する受信部1002とを有する。更に、テラヘルツカメラシステム1000は、外部からの信号に基づき発信部1001や受信部1002の動作を制御し、検出したテラヘルツ波に基づく画像を処理、あるいは外部へ出力するための制御部1003を有する。各実施形態の電磁波モジュールは、発信部1001であってもよいし、受信部1002であってもよい。
【0078】
発信部1001からのテラヘルツ波は被写体1005にて反射し、受信部1002にて検出される。このような発信部1001と受信部1002を有するカメラシステムをアクティブ型のカメラシステムとも称する。なお、発信部1001がないパッシブ型カメラシステムにおいて、各実施形態の電磁波モジュールを受信部として用いることができる。各実施形態の電磁波モジュールを用いることで、電磁波カメラシステムは高い検出感度や、高画質の画像を得ることが可能となる。
【0079】
本発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変改や変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
101 チップ
102 面
103 アンテナ電極
104 面
105 基準部
106 半導体部
107 面
121 レンズ部
122 曲面
123 面
124 面
125 面
126 凹部
127 レンズの光軸
128 第1位置決め部
129 第2位置決め部
141 テラヘルツ波が生じる位置
142 基板
143 位置