(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】グラインダ
(51)【国際特許分類】
B24B 23/02 20060101AFI20241118BHJP
B24B 41/04 20060101ALI20241118BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
B24B23/02
B24B41/04
B25F5/02
(21)【出願番号】P 2020201804
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】202010013168.1
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 玲芳
(72)【発明者】
【氏名】胡 逢美
(72)【発明者】
【氏名】張 華明
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108625(JP,A)
【文献】特開2019-010720(JP,A)
【文献】特開2019-018275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0014576(US,A1)
【文献】特開2003-191180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 23/02
B24B 41/04
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラインダであって、
ブラシを有し、外部から供給される交流電力によって駆動されるように構成された整流子モータと、
前記整流子モータによって提供される回転駆動力によって回転されるように構成された先端工具と、
前記整流子モータを収容するモータハウジングであって、前記グラインダの外側から前記ブラシを交換可能に構成された
開口を有するブラシ交換部を有するモータハウジングと、
前記整流子モータを制御するように構成されたコントローラと、
使用時にユーザが前記グラインダを把持するためのハンドルと、
前記ハンドルの外周に少なくとも部分的に設けられ、前記整流子モータを起動させるための起動位置と、前記整流子モータを停止させるための停止位置と、の間で変位可能に構成されたパドルスイッチと
を備え、
前記ハンドルは、前記整流子モータの回転軸線が延在する方向である軸線方向において、前記ブラシ交換部と前記コントローラとの間に配置され、
前記ハンドルは、前記モータハウジングよりも細い
グラインダ。
【請求項2】
請求項1に記載のグラインダであって、
前記ブラシ交換部は、前記軸線方向において前記整流子モータと前記ハンドルとの間に配置され、
前記ハンドルは、ハンドルハウジングの一部分として形成されており、
前記軸線方向における前記ハンドルに対する前記ブラシ交換部の側を第1の側とし、前記軸線方向における前記ハンドルに対する前記コントローラの側を第2の側としたとき、前記ハンドルハウジングは、該ハンドルハウジングの前記第1の側の端部が前記ブラシ交換部よりも第1の側に位置
し、かつ、前記モータハウジングの前記第2側の端部が前記ブラシ交換部よりも第2の側に位置するように、前記軸線方向において前記モータハウジングとオーバラップするオーバラップ部分を備える
グラインダ。
【請求項3】
請求項1に記載のグラインダであって、
前記ブラシ交換部は、前記整流子モータの後ろ側で、かつ、前記ハンドルの前方に配置され、
前記ハンドルは、ハンドルハウジングの一部分として形成されており、
前記ハンドルハウジングは、該ハンドルハウジングの前端部が前記ブラシ交換部よりも整流子モータ側に位置
し、かつ、前記モータハウジングの後端部が前記ブラシ交換部よりも前記ハンドル側に位置するように、前記軸線方向において前記モータハウジングとオーバラップするオーバラップ部分を備える
グラインダ。
【請求項4】
請求項2に記載のグラインダであって、
前記ブラシ交換部は、
前記軸線方向に略直交する直交方向に筒状に突出する筒状突出部を備え、
前記筒状突出部の内部空間を介して前記ブラシを交換可能に構成され、
前記ハンドルハウジングは、前記筒状突出部が貫通する孔を前記オーバラップ部分に有し、
前記筒状突出部は、前記直交方向において前記オーバラップ部分よりも外側に突出している
グラインダ。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載のグラインダであって、
前記モータハウジングは、前記整流子モータを冷却するための空気を前記モータハウジングの内部に取り込むための第1の吸気口を、前記ハンドルハウジングの前記オーバラップ部分とオーバラップする位置に有し、
前記オーバラップ部分は、前記第1の吸気口と連通する第2の吸気口を有する
グラインダ。
【請求項6】
請求項1に記載のグラインダであって、
前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成されたロックオフスイッチを備える
グラインダ。
【請求項7】
請求項6に記載のグラインダであって、
前記軸線方向における前記ハンドルに対する前記ブラシ交換部の側を第1の側とし、前記軸線方向における前記ハンドルに対する前記コントローラの側を第2の側としたとき、前記ロックオフスイッチは、前記ブラシ交換部よりも前記第2の側に配置された
グラインダ。
【請求項8】
請求項2または請求項4に記載のグラインダであって、
前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成されたロックオフスイッチを備え、
前記ロックオフスイッチは、前記ブラシ交換部よりも前記第2の側に配置された
グラインダ。
【請求項9】
請求項5に記載のグラインダであって、
前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成されたロックオフスイッチを備え、
前記ロックオフスイッチは、前記ブラシ交換部よりも前記第2の側に配置された
グラインダ。
【請求項10】
請求項1に記載のグラインダであって、
前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、前記パドルスイッチが前記起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成されたロックオフスイッチを備え、
前記ブラシ交換部は、前記整流子モータの後ろ側で、かつ、前記ハンドルの前方に配置され、
前記ロックオフスイッチは、前記ブラシ交換部よりも後ろ側に配置された
グラインダ。
【請求項11】
グラインダであって、
ブラシを有し、外部から供給される交流電力によって駆動されるように構成された整流子モータと、
前記整流子モータによって提供される回転駆動力によって回転されるように構成された先端工具と、
前記整流子モータを収容するモータハウジングであって、前記グラインダの外側から前記ブラシを交換可能に構成された開口を有するブラシ交換部を有するモータハウジングと、
前記整流子モータを制御するように構成されたコントローラと、
使用時にユーザが前記グラインダを把持するためのハンドルと、
前記ハンドルの外周に少なくとも部分的に設けられ、前記整流子モータを起動させるための起動位置と、前記整流子モータを停止させるための停止位置と、の間で変位可能に構成された操作部と
を備え、
前記ハンドルは、前記整流子モータの回転軸線が延在する方向である軸線方向において、前記ブラシ交換部と前記コントローラとの間に配置され、
前記ハンドルは、前記モータハウジングよりも細い
グラインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラインダに関する。
【背景技術】
【0002】
外部から供給される交流電力によって駆動される整流子モータを備えるグラインダが従来から知られている(例えば、下記の特許文献1)。特許文献1に記載のグラインダは、ユーザが、略円筒状のモータハウジングを把持しつつ、グラインダの最後部に配置されたトグルスイッチの形態の起動スイッチを操作することによって、モータが駆動し、それによって先端工具が回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のグラインダにおいて起動スイッチとしてパドルスイッチを採用した場合、パドルスイッチの操作が行いにくい。具体的には、ユーザが把持するモータハウジングは、比較的大きな直径を有しているので、グラインダを把持している手の指先がパドルスイッチに届きにくく、その結果、操作性の悪化を招くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、グラインダが提供される。このグラインダは、ブラシを有し、外部から供給される交流電力によって駆動されるように構成された整流子モータと、整流子モータによって提供される回転駆動力によって回転されるように構成された先端工具と、整流子モータを収容するモータハウジングであって、グラインダの外側からブラシを交換可能に構成されたブラシ交換部を有するモータハウジングと、整流子モータを制御するように構成されたコントローラと、使用時にユーザがグラインダを把持するためのハンドルと、ハンドルの外周に少なくとも部分的に設けられ、整流子モータを起動させるための起動位置と、整流子モータを停止させるための停止位置と、の間で変位可能に構成されたパドルスイッチと、を備えている。ハンドルは、整流子モータの回転軸線が延在する方向である軸線方向において、ブラシ交換部とコントローラとの間に配置される。ハンドルは、モータハウジングよりも細い。
【0006】
このグラインダによれば、ハンドルは、ブラシ交換部とコントローラとの間に配置されているので、ハンドルの内部には、整流子モータの主要構成部品(回転軸線の径方向に大きな配置スペースを必要とする構成部品)またはコントローラが位置していない。このため、整流子モータの主要構成部品またはコントローラを収容するためのスペースをハンドルの内部に確保する必要がない。したがって、モータハウジングよりも細いハンドルを実現することができる。しかも、整流子モータのステータ、整流子およびブラシをハンドルの内部に配置しなければ、大きな絶縁距離を確保する必要がない。この点も、ハンドルを細くできる要因となる。その結果、ユーザは、ハンドルを握りやすく、また、ハンドルを握った手の指先によってパドルスイッチを容易に操作できる。
【0007】
本発明の一態様によれば、ハンドルは、ハンドルハウジングの一部分として形成されていてもよい。軸線方向におけるハンドルに対するブラシ交換部の側を第1の側とし、軸線方向におけるハンドルに対するコントローラの側を第2の側としたとき、ハンドルハウジングは、ハンドルハウジングの第1の側の端部がブラシ交換部よりも第1の側に位置するように、軸線方向においてモータハウジングとオーバラップするオーバラップ部分を備えていてもよい。ブラシ交換部は、ブラシを交換するための開口を有するが、この態様によれば、ブラシ交換部(つまり、開口)の周囲が、モータハウジングとハンドルハウジングとの二重構造に形成される。したがって、ブラシ交換部の周囲の落下強度が向上する。
【0008】
本発明の一態様によれば、ブラシ交換部は、整流子モータの後ろ側で、かつ、ハンドルの前方に配置されてもよい。ハンドルは、ハンドルハウジングの一部分として形成されてもよい。ハンドルハウジングは、ハンドルハウジングの前端部がブラシ交換部よりも整流子モータ側に位置するように、軸線方向においてモータハウジングとオーバラップするオーバラップ部分を備えていてもよい。この態様によれば、ブラシ交換部(つまり、開口)の周囲が、モータハウジングとハンドルハウジングとの二重構造に形成される。したがって、ブラシ交換部の周囲の落下強度が向上する。
【0009】
本発明の一態様によれば、ブラシ交換部は、軸線方向に略直交する直交方向に筒状に突出する筒状突出部を備え、筒状突出部の内部空間を介してブラシを交換可能に構成されてもよい。ハンドルハウジングは、筒状突出部が貫通する孔をオーバラップ部分に有していてもよい。筒状突出部は、直交方向においてオーバラップ部分よりも外側に突出していてもよい。この態様によれば、ブラシ交換部の形状に合わせて、オーバラップ部分(つまり、ハンドルハウジング)を太くする必要が無い。換言すれば、回転軸線周りのオーバラップ部分の太さは、直交方向におけるブラシ交換部の幅に影響されない。したがって、ハンドルが、直交方向におけるブラシ交換部の幅に合わせて太くなることを抑制できる。あるいは、オーバラップ部分を太くする必要が無いので、所望の細さを有するハンドルまでハンドルハウジングの太さを徐々に低減するための軸線方向の距離を短くできる。その結果、グラインダの軸線方向の長さを低減できる。
【0010】
本発明の一態様によれば、モータハウジングは、整流子モータを冷却するための空気をモータハウジングの内部に取り込むための第1の吸気口を、ハンドルハウジングのオーバラップ部分とオーバラップする位置に有していてもよい。オーバラップ部分は、第1の吸気口と連通する第2の吸気口を有していてもよい。この態様によれば、整流子モータの温度上昇を抑制することができる。また、第1の吸気口および第2の吸気口は、モータハウジングとハンドルハウジングとがオーバラップする箇所に形成されているので、2つのハウジング全体として厚みが増し、十分な絶縁距離を確保することができる。しかも、第2の吸気口を有するオーバラップ部分はハンドルとは別の部分であるから、ユーザがハンドルを把持する手が第2の吸気口を塞いで、整流子モータの冷却を阻害することもない。
【0011】
本発明の一態様によれば、グラインダは、パドルスイッチが起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、パドルスイッチが起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成されたロックオフスイッチを備えていてもよい。この態様によれば、ユーザの意図に応じて、パドルスイッチが起動位置まで変位することを阻止できるので、ユーザの利便性が向上する。
【0012】
本発明の一態様によれば、軸線方向におけるハンドルに対するブラシ交換部の側を第1の側とし、軸線方向におけるハンドルに対するコントローラの側を第2の側としたとき、ロックオフスイッチは、ブラシ交換部よりも第2の側に配置されてもよい。この態様によれば、ロックオフスイッチは、ハンドルを把持する手の指が届きやすい場所に位置することになるので、ユーザの操作性が向上する。
【0013】
本発明の一態様によれば、ブラシ交換部は、整流子モータの後ろ側で、かつ、ハンドルの前方に配置されてもよい。ロックオフスイッチは、ブラシ交換部よりも後ろ側に配置されてもよい。この態様によれば、ロックオフスイッチは、ハンドルを把持する手の指が届きやすい場所に位置することになるので、ユーザの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるグラインダの側面図である。
【
図5】
図4の横断面図のうち、ブラシ交換部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図6】
図1のA-A線に沿ったグラインダの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態によるグラインダ10の概略構成について
図1~6を参照して説明する。グラインダ10は、工具装着部26によってスピンドル23に装着された円板状の先端工具27を回転駆動するように構成されている。スピンドル23は、モータ50によって提供される回転駆動力によって回転される。グラインダ10に装着可能な先端工具27として、砥石、ゴムパッド、ブラシ、ブレード等が用意されている。使用者は、所望の加工作業に応じて適切な先端工具27を選択し、グラインダ10に装着する。グラインダ10によれば、先端工具27の種類に応じて、被加工材に対して研削、研磨、切断等の加工作業を行うことができる。
【0016】
以下の説明では、モータ50の回転軸線AX1(
図3参照)が延在する方向(以下、軸線方向とも呼ぶ)をグラインダ10の前後方向と定義する。前後方向のうち、先端工具27が位置する側を前側と定義し、その反対側を後側と定義する。また、スピンドル23の回転軸線AX2(
図3参照)が延在する方向をグラインダ10の上下方向と定義する。上下方向のうち、先端工具27が位置する側を下側と定義し、その反対側を上側と定義する。また、上下方向および前後方向に直交する方向を、グラインダ10の左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側をグラインダ10の右側と定義し、その反対側をグラインダ10の左側と定義する。
【0017】
図1に示すように、グラインダ10は、ギアハウジング20と、モータハウジング30と、ハンドルハウジング40と、を備えている。ギアハウジング20、モータハウジング30およびハンドルハウジング40は、前側から見て、ギアハウジング20、モータハウジング30およびハンドルハウジング40の順に配置されている。
【0018】
ギアハウジング20内には、モータ50の回転駆動力を先端工具27に伝達するための機構が収容されている。具体的には、
図3に示すように、ギアハウジング20内には、小ベベルギア21と、大ベベルギア22と、スピンドル23と、軸受24,25と、が収容されている。小ベベルギア21は、モータ50のモータシャフト51の前端部において、モータシャフト51の周りに固定されている。スピンドル23は、上下方向に離間して配置された軸受24,25によって、回転軸線AX2を中心に回転可能に支持されている。大ベベルギア22は、スピンドル23の上側において、スピンドル23の周りに固定されており、小ベベルギア21と噛み合っている。スピンドル23は、ギアハウジング20内を上下方向(換言すれば、回転軸線AX2が延在する方向)に延在し、下側においてギアハウジング20から延出している。
【0019】
工具装着部26は、ギアハウジング20から延出したスピンドル23の下端部において、スピンドル23の周りに固定されている。工具装着部26は、先端工具27を上下に挟むことによって、スピンドル23に対する先端工具27の位置を固定する。先端工具27の後側半分は、略半円形のホイールカバー28によって覆われている。モータシャフト51の回転は、小ベベルギア21および大ベベルギア22を介して、減速されつつ、スピンドル23に伝達される。このとき、回転運動の方向も、モータ50の回転軸線AX1周りの方向から、スピンドル23の回転軸線AX2周りの方向へと変換される。この機構によれば、モータシャフト51の回転に伴って、スピンドル23が回転軸線AX2周りに回転され、その結果、工具装着部26に固定された先端工具27がスピンドル23とともに回転される。
【0020】
図3に示すように、モータハウジング30は、モータ収容部31と、スイッチボックス収容部32と、を備えている。モータ収容部31は、前後方向に延在する略円筒形状を有している。モータ収容部31内には、モータ50が収容されている。モータ50は、外部から電源コード91を介して供給される交流電力によって駆動されるように構成された整流子モータである。モータ50は、モータシャフト51と、ロータ52と、ステータ53と、軸受54,55と、整流子56と、2つのブラシ57(
図4参照)と、を備えている。
【0021】
モータシャフト51は、前後方向に延在しており、前後方向に離間して配置された軸受54,55によって、回転軸線AX1を中心に回転可能に支持されている。ロータ52は、モータシャフト51の周りに固定されており、モータシャフト51とともに回転する。ステータ53は、ロータ52を径方向外側で取り囲むように配置されている。整流子56は、モータシャフト51の後端付近において、絶縁材を介してモータシャフト51の周りに取り付けられている。2つのブラシ57は、
図4に示すように、整流子56の外周と接触するように、右側および左側にそれぞれ配置されている。
【0022】
ブラシ57は、カーボンによって形成されている。ブラシ57は、消耗品であり、所定の程度まで消耗すると、交換が必要となる。このため、モータハウジング30は、例えば
図4に示すように、2つのブラシ交換部34を有している。ブラシ交換部34は、モータ収容部31とスイッチボックス収容部32との間に位置している。詳細は後述するが、ブラシ交換部34は、グラインダ10の外部からブラシ57を交換可能に構成されている。
【0023】
モータシャフト51には、前側の軸受54に隣接して、軸受54の後側にファン58が取り付けられている。ファン58は、グラインダ10の外部から空気を取り込んでモータ50の周囲を流通させることによって、モータ50を冷却するために設けられている。モータ50を冷却した空気は、ギアハウジング20に形成された排気口(図示省略)を介してグラインダ10の外部へ排出される。
【0024】
スイッチボックス収容部32は、モータ収容部31およびブラシ交換部34よりも後側に位置しており、後述するハンドルハウジング40内に配置されている。スイッチボックス収容部32には、後述するスイッチボックス76が取り付けられる。
【0025】
ハンドルハウジング40は、前後方向に延在する有底筒形状を有している。ハンドルハウジング40は、ハンドル41と、オーバラップ部分42と、コントローラ収容部43と、を備えている。ハンドル41は、グラインダ10の使用時にユーザが把持するために設けられる。換言すれば、ハンドル41は、グラインダ10の使用時においてユーザによって把持されることが意図された部分である。本実施形態では、ハンドル41は、ハンドルハウジング40のうちの最も細い部分であると定義され得る。
【0026】
図3および
図4に示すように、ハンドルハウジング40は、その前方側で、前後方向において、モータハウジング30とオーバラップしている。換言すれば、上下方向に見て、ハンドルハウジング40とモータハウジング30とがオーバラップしている。このオーバラップしている部分のうち、ハンドル41よりも前側の部分をオーバラップ部分42と呼ぶ。コントローラ収容部43は、ハンドルハウジング40のうちの最も後方の部分である。
図1~4では、ハンドルハウジング40のうちの、ハンドル41の範囲を範囲R1として、オーバラップ部分42の範囲を範囲R2として、コントローラ収容部43の範囲を範囲R3として示している。
【0027】
コントローラ収容部43内には、コントローラ90が配置されている。コントローラ90は、CPUとROMとを有しており、ROMに記録されたプログラムを実行することによって、モータ50を制御する。本実施形態では、コントローラ90は、モータ50を所定の回転数で回転するように制御する他、キックバック低減制御および再起動防止制御を行う。キックバック低減制御とは、キックバックを検知した際に、モータ50の駆動を停止させる制御である。キックバックの検出には、公知の任意の手法を採用可能である。例えば、特開2018-20421号に記載されているように、加速度センサの検出値を積分して得られるグラインダ10の移動速度、および/または、角速度センサの検出値を積分して得られるグラインダ10の回転量が閾値を超えたときに、キックバックが生じていると判定することができる。再起動防止制御とは、モータ50の起動スイッチ(本実施例では、後述するパドルスイッチ70)をオンにした状態で、電源コード91の先端に設けられた電源プラグ(図示省略)を交流電源のコンセントから抜いた場合に、起動スイッチをオンに維持した状態で、電源プラグをコンセントに再び接続しても、モータ50が起動しないようにする制御である。
【0028】
コントローラ90は、キックバック低減制御および再起動防止制御のうちの一方のみを行うように構成されてもよい。あるいは、コントローラ90は、キックバック低減制御および/または再起動防止制御に代えて、または、加えて、他の制御(例えば、モータ50の回転数を検出し、回転数が低下したときに、モータ50に流す電流値を増大させる制御)を行ってもよい。コントローラ90は、プログラムを実行するためのCPUを備える任意の形態であってもよい。
【0029】
図1および
図2に示すように、コントローラ収容部43の右側面および左側面には、複数の第3の吸気口47が形成されている。この第3の吸気口47は、モータ50を冷却するための空気をハンドルハウジング40内、ひいては、モータハウジング30内に取り込むために設けられる。
【0030】
図1および
図3に示すように、グラインダ10は、さらに、モータ50の起動スイッチとしてのパドルスイッチ70を備えている。パドルスイッチ70は、本実施形態では、ハンドル41およびオーバラップ部分42の外周(より具体的には、下側)に配置されている。パドルスイッチ70は、ハンドル41の外周に少なくとも部分的に設けられ得る。パドルスイッチ70は、モータ50を起動させるための起動位置と、モータ50を停止させるための停止位置と、の間で変位可能に構成される。
図1および
図3では、停止位置にあるパドルスイッチ70が示されている。
【0031】
図3に示すように、パドルスイッチ70は、前後方向に延在する細長い形状を有している。停止位置では、パドルスイッチ70の後端部71は、コントローラ収容部43の下方前端に設けられた座部43aに着座している。パドルスイッチ70の前端部は、モータ収容部31と係合している。具体的には、パドルスイッチ70の前端部には、下側が凹んだ凹部72が形成されている。この凹部72内には、モータ収容部31の底から上方に向けて突出する凸部33が配置されている。これにより、パドルスイッチ70は、前後方向への変位が規制された状態で、モータ収容部31と係合している。このパドルスイッチ70は、スイッチボックス収容部32とパドルスイッチ70との間に配置された付勢部材としてのコイルバネ74によって、下側に向けて(換言すれば、停止位置に向けて)付勢されている。
【0032】
ユーザが、指でパドルスイッチ70を上方に向けて押すと、コイルバネ74の付勢力に抗って、パドルスイッチ70が上方に向けて変位する。具体的には、凸部33が凹部72内に保持されたまま、凹部72のうちの凸部33との接触点を支点として、パドルスイッチ70が上方に向けて枢動され、後端部71は座部43aから離間する。そして、パドルスイッチ70が所定距離だけ変位すると、パドルスイッチ70の上面に設けられた押圧凸部73が、スイッチボックス76の下面に設けられたプランジャ77を上方に向けて押圧する。この時のパドルスイッチ70の位置(図示省略)が起動位置である。プランジャ77が押圧されると、電源コード91からスイッチボックス76を介してモータ50に接続される通電経路の接点がオンになるとともに、スイッチボックス76からコントローラ90に所定の信号が出力される。この信号を受信すると、コントローラ90は、電源コード91からコントローラ90を介したモータ50への電力の供給の制御を行う。そして、ユーザがパドルスイッチ70から指を離すと、パドルスイッチ70は、コイルバネ74の付勢力によって、起動位置から停止位置へ戻る。
【0033】
図1および
図3に示すように、グラインダ10は、さらに、ロックオフスイッチ80を備えている。ロックオフスイッチ80は、パドルスイッチ70が起動位置まで変位することを阻止する阻止位置と、パドルスイッチ70が起動位置まで変位することを許容する許容位置と、の間で変位可能に構成される。ロックオフスイッチ80は、パドルスイッチ70の前後方向における略中央に配置されている。ロックオフスイッチ80は、前後方向において、ブラシ交換部34よりも後側に配置されている。ロックオフスイッチ80は、シャフト81を備えている。シャフト81は、パドルスイッチ70に支持されており、左右方向に延在している。ロックオフスイッチ80は、シャフト81の周りを枢動可能に構成されている。
【0034】
ロックオフスイッチ80は、パドルスイッチ70の貫通孔を貫通するように配置されている。このための、ロックオフスイッチ80の一端は、パドルスイッチ70の内側に位置しており、他端は、パドルスイッチ70の外側(つまり、グラインダ10の外側)に位置している。ロックオフスイッチ80の一端は、略L字状の第2の係合部82として形成されている。この第2の係合部82は、ロックオフスイッチ80が阻止位置にあるとき、パドルスイッチ70の上面に設けられた第1の係合部75と係合することにより、パドルスイッチ70が起動位置まで枢動することを阻止する。
図1および
図3では、阻止位置にあるロックオフスイッチ80が示されている。シャフト81の周囲には、付勢部材としてのねじりコイルバネ83が配置されている。ねじりコイルバネ83は、ロックオフスイッチ80を阻止位置に向けて付勢している。
【0035】
ユーザが、指でロックオフスイッチ80の他端(つまり、パドルスイッチ70の外部に位置する部分)を後側へ引くと、ねじりコイルバネ83の付勢力に抗って、ロックオフスイッチ80が時計回りに枢動される。これにより、第1の係合部75は、第2の係合部82と干渉しない位置に変位され、パドルスイッチ70の起動位置への変位が許容される。このときのロックオフスイッチ80の位置(図示省略)が許容位置である。そして、ユーザがロックオフスイッチ80から指を離すと、ロックオフスイッチ80は、ねじりコイルバネ83の付勢力によって、許容位置から阻止位置へ戻る。パドルスイッチ70が起動位置まで変位することを機械的に阻止する上述の構造に代えて、パドルスイッチ70によるスイッチボックス76への入力を電気的に無効化するロックオフスイッチが採用されてもよい。
【0036】
次に、ブラシ交換部34について説明する。
図5に示すように、モータハウジング30の一部分であるブラシ交換部34は、前後方向において、モータ50の後端付近(換言すれば、後側の軸受55付近)に位置している。ブラシ交換部34は、モータ収容部31に対して左右方向(換言すれば、軸線方向に直交する方向)に筒状に突出する筒状突出部35を備えている。
図1から分かるように、本実施形態では、筒状突出部35は円筒形状を有している。
図5に示すように、筒状突出部35の内部空間は、整流子56が配置される空間に連通している。このため、ブラシ交換部34は、筒状突出部35の内部空間を介してブラシ57を交換可能に構成される。以下、より具体的に説明する。
【0037】
筒状突出部35の内面には、左右方向に延在する筒状のブラシホルダ60が固定されている。ブラシホルダ60は、小径部61と大径部62とを備えている。大径部62は、小径部61よりも、回転軸線AX1に関する径方向外側に位置している。大径部62は、小径部61よりも大きい外径と、小径部61よりも大きい内径と、を有している。小径部61内には、ブラシ57が着脱可能に配置される。大径部62内には、円柱状のブラシホルダキャップ65が配置される。ブラシホルダキャップ65の外周面には雄ネジが形成されており、大径部62の内周面には雌ネジが形成されている。ブラシホルダキャップ65は、小径部61の内径と大径部62の内径との違いに起因して形成された段部に当接するまで、モータシャフト51に向けて締め付けられる。このとき、ブラシ57は、ブラシホルダキャップ65とブラシ57との間に配置されたバネ(図示省略)によって、回転軸線AX1に関する径方向内側に向けて付勢される。これによって、ブラシ57は、その消耗状態に関係なく、整流子56に接触する。
【0038】
ブラシホルダキャップ65の回転軸線AX1に関する径方向外側の面には、ブラシホルダキャップ65を締め付けるのに使用されるスクリュードライバと係合する溝66が形成されている。ブラシホルダキャップ65のうちの、回転軸線AX1に関する径方向内側の面には、バネを着座させるための円形の凹部67が形成されている。このブラシ交換部34によれば、ブラシ57が消耗したときは、ブラシホルダキャップ65を取り外し、さらにバネおよびブラシ57を取り外し、新たなブラシ57を小径部61内に挿入して、バネおよびブラシホルダキャップ65を装着することによって、ブラシ57を外部から容易に交換することができる。
【0039】
図5に示すように、ハンドルハウジング40(より具体的には、オーバラップ部分42)の前端部44は、ブラシ交換部34よりも前側に位置している。オーバラップ部分42は、左右方向に延在する孔45を有している。孔45は、オーバラップ部分42を貫通している。筒状突出部35は、この孔45を貫通して、オーバラップ部分42よりも、回転軸線AX1に関する径方向外側に突出している。オーバラップ部分42は、前後方向において、孔45よりも後側で、ハンドル41まで徐々に細くなっている。
【0040】
図6に示すように、モータハウジング30には、モータ50を冷却するための空気をモータハウジング30の内部に取り込むための複数の第1の吸気口36が形成されている。この第1の吸気口36は、モータハウジング30のうちの、ハンドルハウジング40のオーバラップ部分42とオーバラップする位置に形成されている。また、オーバラップ部分42には、第1の吸気口36と連通する複数の第2の吸気口46が形成されている。本実施形態では、ブラシ交換部34の下側に2つの第2の吸気口46が形成され、ブラシ交換部34の上側に2つの第2の吸気口46が形成されている。コントローラ収容部43の第3の吸気口47に加えて、第1の吸気口36および第2の吸気口46を設けることによって、モータ50の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。また、第1の吸気口36および第2の吸気口46は、モータハウジング30とハンドルハウジング40とがオーバラップする箇所に形成されているので、2つのハウジング全体として厚みが増し、十分な絶縁距離を確保することができる。逆に言えば、モータハウジング30とハンドルハウジング40とがオーバラップしているので、この位置に第1の吸気口36および第2の吸気口46を設けることができる。しかも、第2の吸気口46が形成されるオーバラップ部分42は、ハンドル41とは別の部分であるから、ユーザがハンドル41を把持する手が第2の吸気口46を塞いで、モータ50の冷却を阻害することもない。
【0041】
上述したグラインダ10によれば、ハンドル41は、前後方向において、ブラシ交換部34とコントローラ収容部43(換言すれば、コントローラ90)との間に配置されている。このため、ハンドル41の内部には、モータ50の主要構成部品(回転軸線AX1に関する径方向に大きな配置スペースを必要とする部品)が位置しておらず、また、コントローラ90も位置していない。このため、モータ50の主要構成部品またはコントローラ90を収容するためのスペースをハンドル41の内部に確保する必要がない。したがって、モータハウジング30(より具体的には、モータ収容部31)よりも細いハンドル41を実現することができる。しかも、大きな電流が流れる部品(ステータ53、整流子56およびブラシ57)をハンドル41の内部に配置していないので、大きな絶縁距離を確保する必要がない。この点も、ハンドル41を細くできる要因となっている。
【0042】
本願において、「細い」とは、回転軸線AX1に対する径が小さいこと、または、軸線方向(換言すれば、回転軸線AX1)周りの外周長さが小さいことを言う。本実施形態では、
図1に示すように、上下方向におけるハンドル41の幅W1は、上下方向におけるモータハウジング30の幅W2よりも小さい。また、
図2に示すように、左右方向にけるハンドル41の幅W3は、左右方向におけるモータハウジング30の幅W4よりも小さい。これにより、ハンドル41は、モータハウジング30よりも大幅に細くなっている。ただし、W1<W2およびW3<W4のうちの一方のみが成立してもよい。このようにハンドル41を細く形成することによって、ユーザは、ハンドル41を握りやすく、また、ハンドル41を握った手の指先によってパドルスイッチ70を容易に操作できる。
【0043】
また、グラインダ10によれば、ハンドルハウジング40のオーバラップ部分42は、ハンドルハウジング40の前端部44がブラシ交換部34よりも前側に位置するように、前後方向においてモータハウジング30とオーバラップしている。換言すれば、オーバラップ部分42は、ブラシ交換部34を構成する筒状突出部35の開口を越えて前側に延在している。このため、筒状突出部35の開口の周囲が、モータハウジング30とハンドルハウジング40との二重構造に形成される。したがって、ブラシ交換部34の周囲の落下強度が向上する。
【0044】
また、グラインダ10によれば、ブラシ交換部34を構成する筒状突出部35は、オーバラップ部分42の孔45を貫通して、オーバラップ部分42よりも、回転軸線AX1に関する径方向外側へ突出している。このため、ブラシ交換部34の形状に合わせて、オーバラップ部分42を太くする必要が無い。換言すれば、回転軸線AX1周りのオーバラップ部分42の太さは、左右方向におけるブラシ交換部34の幅に影響されない。したがって、ハンドル41が、左右方向におけるブラシ交換部34の幅に合わせて太くなることを抑制できる。あるいは、オーバラップ部分42を太くする必要が無いので、所望の細さを有するハンドル41までオーバラップ部分42の太さを徐々に低減するための前後方向の距離を短くできる。その結果、グラインダ10の前後方向の長さを低減できる。
【0045】
また、グラインダ10によれば、ロックオフスイッチ80は、前後方向において、ブラシ交換部34よりも後側に配置されている。その結果、ロックオフスイッチ80は、ハンドル41を把持する手の指が届きやすい場所に位置することになるので、ユーザの操作性が向上する。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0047】
例えば、ハンドルハウジング40は、前後方向において、ブラシ交換部34よりも後側で終端していてもよい。あるいは、ブラシ交換部34に代えて、グラインダ10の外側からブラシ57を交換可能な任意の公知の開口構造が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10...グラインダ
20...ギアハウジング
21...小ベベルギア
22...大ベベルギア
23...スピンドル
24,25...軸受
26...工具装着部
27...先端工具
28...ホイールカバー
30...モータハウジング
31...モータ収容部
32...スイッチボックス収容部
33...凸部
34...ブラシ交換部
35...筒状突出部
36...第1の吸気口
40...ハンドルハウジング
41...ハンドル
42...オーバラップ部分
43...コントローラ収容部
43a...座部
44...前端部
45...孔
46...第2の吸気口
47...第3の吸気口
50...モータ
51...モータシャフト
52...ロータ
53...ステータ
54,55...軸受
56...整流子
57...ブラシ
58...ファン
60...ブラシホルダ
61...小径部
62...大径部
65...ブラシホルダキャップ
66...溝
67...凹部
70...パドルスイッチ
71...後端部
72...凹部
73...押圧凸部
74...コイルバネ
75...第1の係合部
76...スイッチボックス
77...プランジャ
80...ロックオフスイッチ
81...シャフト
82...第2の係合部
83...ねじりコイルバネ
90...コントローラ
91...電源コード
AX1...モータの回転軸線
AX2...スピンドルの回転軸線