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特許7589035情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20241118BHJP
【FI】
G01C21/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020202737
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090373
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得する予測情報取得手段と、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行するダウンサンプリング手段と、を有し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記予測情報取得手段は、前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする、情報処理装置。
【請求項2】
前記地図データには、エリア毎に前記予測情報が関連付けられており、
前記予測情報取得手段は、前記移動体の位置が属するエリアに対応する前記予測情報を前記地図データから取得する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ダウンサンプリング手段は、予め記憶されている閾値より小さい予測情報の方向のダウンサンプリングサイズを固定し、かつ前記閾値以上の前記予測情報の方向のダウンサンプリングサイズを処理時刻ごとに可変とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する方向のダウンサンプリングサイズの初期値を小さくし、
予め記憶されている閾値より小さい予測情報の方向のダウンサンプリングサイズを前記初期値にて固定し、
前記閾値以上の前記予測情報の方向のダウンサンプリングサイズを前記初期値に対して処理時刻毎に可変とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ダウンサンプリングにより得られた点群データである加工点群データと、単位領域であるボクセルごとの物体の位置を表すボクセルデータとの照合により、前記加工点群データを構成する計測点と前記ボクセルの各々との対応付けを行う対応付け手段と、
前記計測点のうち前記ボクセルと対応付けられた計測点の数である対応計測点数に基づき、次に実行される前記ダウンサンプリングのサイズを決定するダウンサンプリングサイズ決定手段と、
をさらに有する請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ダウンサンプリングにより得られた点群データである加工点群データと、単位領域であるボクセルごとの物体の位置を表すボクセルデータとの照合結果に基づき、前記移動体の位置推定を行う位置推定手段をさらに有する、請求項1~のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する制御方法であって、
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする、制御方法。
【請求項8】
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定に用いるデータのダウンサンプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザスキャナなどの計測装置を用いて計測した周辺物体の形状データを、予め周辺物体の形状が記憶された地図情報と照合(マッチング)することで、車両の自己位置を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、空間を所定の規則で分割したボクセル中における検出物が静止物か移動物かを判定し、静止物が存在するボクセルを対象として地図情報と計測データとのマッチングを行う自律移動システムが開示されている。また、特許文献2には、ボクセル毎の静止物体の平均ベクトルと共分散行列とを含むボクセルデータとライダが出力する点群データとの照合により自車位置推定を行うスキャンマッチング手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2013/076829
【文献】国際公開WO2018/221453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように、ボクセルデータとライダが出力する点群データとの照合により自車位置推定を行う場合、ライダの点群データを所定サイズに分割した空間で平均化することで間引く処理であるダウンサンプリング処理が行われる。このダウンサンプリングを行うことで、自車に近いエリアは密、遠いエリアは疎となる点群データの密度を一様にし、かつ全体の点群データ数を低減することができるため、自己位置推定精度の向上と計算時間の抑制を両立させている。しかしながら、自車周辺に物体が少ない空間では、ライダで検出される点群データ数が少ないため、ダウンサンプリング処理によって、計算に用いる点群データ数が大きく減少してしまうこともあり、自己位置推定の精度やロバスト性が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ダウンサンプリングを好適に実行可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得する予測情報取得手段と、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行するダウンサンプリング手段と、を有し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記予測情報取得手段は、前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする、情報処理装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする、制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、
前記移動体の位置と地図データにおいて方向毎に対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、
前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎に空間を所定サイズに分割し、
分割された前記空間ごとに前記点群データの計測点の代表点を算出するダウンサンプリングを実行し、
前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、
前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、
前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを小さくする処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運転支援システムの概略構成図である。
図2】車載機の機能的構成を示すブロック図である。
図3】ダウンサンプリング処理部の機能ブロックの一例を示す。
図4】位置推定性能予測情報のデータ構造の一例を示す。
図5】夫々異なるダウンサンプリングサイズによるダウンサンプリングを実行した第1の実行結果を示す図である。
図6】車載機を搭載する車両周辺の俯瞰図を示す。
図7】自車位置推定部が推定すべき自車位置を2次元直交座標で表した図である。
図8】ボクセルデータの概略的なデータ構造の一例を示す。
図9】自車位置推定部の機能ブロックの一例である。
図10】ワールド座標系における2次元平面上での、ボクセルデータが存在するボクセルとこれらのボクセル付近の位置を示す計測点との位置関係を示す。
図11】自車位置推定に関する処理の手順を示すフローチャートの一例である。
図12】異なる道路上の地点を対象地点とした場合に進行方向と横方向に等間隔に設けたスライス線(格子線)を明示した道路の俯瞰図を示す。
図13図12(A)に示されるスライス線のうち横方向及び進行方向に夫々3個のスライス線を抽出して明示した図である。
図14図13に明示したスライス線による切断面においてボクセルデータが存在するボクセルを明示した図である。
図15図12(B)に示されるスライス線のうち横方向及び進行方向に夫々3個のスライス線を抽出して明示した図である。
図16図15に明示したスライス線による切断面においてボクセルデータが存在するボクセルを明示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得する点群データ取得手段と、前記移動体の位置と地図データにおいて対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得する予測情報取得手段と、前記予測情報に基づき、前記点群データに対してダウンサンプリングを実行するダウンサンプリング手段と、を有する。この態様によれば、情報処理装置は、地図データを参照することで、移動体の位置に応じた自車位置推定の性能に関する予測情報に基づいて、ダウンサンプリングを好適に実行することができる。
【0011】
上記情報処理装置の一態様では、前記地図データには、エリア毎に前記予測情報が関連付けられており、前記予測情報取得手段は、前記移動体の位置が属するエリアに対応する前記予測情報を前記地図データから取得する。この態様により、情報処理装置は、エリア毎に設けられた位置推定性能の予測情報から適切な予測情報を取得してダウンサンプリングの処理に反映することができる。
【0012】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記地図データには、前記ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に予測情報が関連付けられており、前記予測情報取得手段は、前記方向毎の予測情報を前記地図データから取得し、前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報に基づき、前記方向毎のダウンサンプリングのサイズを決定する。この態様により、情報処理装置は、ダウンサンプリングにおいて空間を分割する方向毎に適切にダウンサンプリングのサイズを決定することができる。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報が低いほど、対応する方向のダウンサンプリングのサイズを小さくする。この態様により、情報処理装置は、位置推定精度が低いと予測される方向における点群データの分解能を確保し、位置推定精度の低下を好適に抑制することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報に基づき、ダウンサンプリングのサイズを固定する方向と、ダウンサンプリングのサイズを処理時刻ごとに可変とする方向とを決定する。この態様により、情報処理装置は、ダウンサンプリングのサイズを固定する方向について、点群データの分解能を維持して位置推定精度を優先させることができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記ダウンサンプリング手段は、前記方向毎の予測情報に基づき、処理時刻ごとに可変となるダウンサンプリングのサイズの初期値を定める。この態様により、情報処理装置は、ダウンサンプリングのサイズの初期値を適切に設定することが可能となる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、情報処理装置は、前記ダウンサンプリング手段が前記点群データから生成した加工点群データと、単位領域であるボクセルごとの物体の位置を表すボクセルデータとの照合により、前記加工点群データを構成する計測点と前記ボクセルの各々との対応付けを行う対応付け手段と、前記計測点のうち前記ボクセルと対応付けられた計測点の数である対応計測点数に基づき、次に実行される前記ダウンサンプリングのサイズを決定するダウンサンプリングサイズ決定手段と、をさらに有する。この態様により、情報処理装置は、ダウンサンプリングのサイズを可変とする方向について、位置推定精度と全体の処理速度との両立が可能となるようにダウンサンプリングのサイズを好適に変更することができる。
【0017】
上記情報処理装置の他の一態様では、情報処理装置は、前記ダウンサンプリング手段が前記点群データから生成した加工点群データと、単位領域であるボクセルごとの物体の位置を表すボクセルデータとの照合結果に基づき、前記移動体の位置推定を行う位置推定手段をさらに有する。この態様では、情報処理装置は、地図データを参照して適切に設定されたサイズによりダウンサンプリングを実行し、当該ダウンサンプリングにより生成した加工点群データを位置推定に用いることで、位置推定の精度と処理時間の両立を好適に実現することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行する制御方法であって、移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、前記移動体の位置と地図データにおいて対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、前記予測情報に基づき、前記点群データに対してダウンサンプリングを実行する。情報処理装置は、この制御方法を実行することで、移動体の位置に応じた自車位置推定の性能に関する予測情報に基づいて、ダウンサンプリングを好適に実行することができる。
【0019】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、プログラムは、移動体に設けられた計測装置が出力する点群データを取得し、前記移動体の位置と地図データにおいて対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報を取得し、前記予測情報に基づき、前記点群データに対してダウンサンプリングを実行する処理をコンピュータに実行させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、移動体の位置に応じた自車位置推定の性能に関する予測情報に基づいて、ダウンサンプリングを好適に実行することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。なお、任意の記号の上に「^」または「-」が付された文字を、本明細書では便宜上、「A^」または「A」(「A」は任意の文字)と表す。
【0021】
(1)運転支援システムの概要
図1は、本実施例に係る運転支援システムの概略構成である。運転支援システムは、移動体である車両と共に移動する車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2と、ジャイロセンサ3と、車速センサ4と、GPS受信機5とを有する。
【0022】
車載機1は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5と電気的に接続し、これらの出力に基づき、車載機1が設けられた車両の位置(「自車位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、車載機1は、自車位置の推定結果に基づき、設定された目的地への経路に沿って走行するように、車両の自動運転制御などを行う。車載機1は、ボクセルデータ「VD」を含む地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。ボクセルデータVDは、3次元空間の最小単位となる立方体(正規格子)を示すボクセルごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータである。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。車載機1は、NDTスキャンマッチングにより少なくとも車両の平面上の位置及びヨー角の推定を行う。なお、車載機1は、車両の高さ位置、ピッチ角及びロール角の推定をさらに行ってもよい。特に言及がない限り、自車位置は、推定対象となる車両のヨー角などの姿勢角も含まれるものとする。
【0023】
ライダ2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データを生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータ(点群データを構成する点であり、以後では「計測点」と呼ぶ。)を出力する出力部とを有する。計測点は、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。なお、一般的に、対象物までの距離が近いほどライダの距離測定値の精度は高く、距離が遠いほど精度は低い。ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、GPS受信機5は、それぞれ、出力データを車載機1へ供給する。
【0024】
車載機1は、本発明における「情報処理装置」の一例であり、ライダ2は、本発明における「計測装置」の一例である。なお、運転支援システムは、ジャイロセンサ3に代えて、又はこれに加えて、3軸方向における計測車両の加速度及び角速度を計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を有してもよい。
【0025】
(2)車載機の構成
図2は、車載機1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。車載機1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0026】
インターフェース11は、車載機1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース11は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5などのセンサから出力データを取得し、コントローラ13へ供給する。また、インターフェース11は、コントローラ13が生成した車両の走行制御に関する信号を車両の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)へ供給する。インターフェース11は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。インターフェース11は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0027】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ13が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ13が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0028】
また、メモリ12は、ボクセルデータVDと、位置推定性能予測情報PDとを含む地図DB10を記憶する。
【0029】
位置推定性能予測情報PDは、ボクセルデータVDを用いたNDTスキャンマッチングによる位置推定性能の予測値(「位置推定性能予測値」とも呼ぶ。)を示す情報である。この場合、例えば、位置推定性能予測情報PDは、所定の規則により区画したエリア毎に位置推定性能予測値を対応付けた情報であり、データ構造の詳細は図4を参照して後述する。位置推定性能予測値は、「予測情報」の一例である。
【0030】
なお、地図DB10は、インターフェース11を介して車載機1と接続されたハードディスクなどの車載機1の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、車載機1と通信を行うサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。また、地図DB10は、定期的に更新されてもよい。この場合、例えば、コントローラ13は、インターフェース11を介し、地図情報を管理するサーバ装置から、自車位置が属するエリアに関する部分地図情報を受信し、地図DB10に反映させる。
【0031】
コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、車載機1の全体を制御する。この場合、コントローラ13は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、自車位置推定に関する処理を行う。
【0032】
また、コントローラ13は、機能的には、ダウンサンプリング処理部14と、自車位置推定部15とを有する。そして、コントローラ13は、「点群データ取得手段」、「予測情報取得手段」、「ダウンサンプリングサイズ決定手段」、「ダウンサンプリング手段」、「位置推定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0033】
ダウンサンプリング処理部14は、ライダ2から出力される点群データに対してダウンサンプリングを行うことで、計測点数を削減するように補正された点群データ(「加工点群データ」とも呼ぶ。)を生成する。このダウンサンプリングでは、ダウンサンプリング処理部14は、点群データを所定サイズに分割した空間内で平均することで、計測点数を削減した加工点群データを生成する。この場合、ダウンサンプリング処理部14は、位置推定性能予測情報PDを参照することで、ダウンサンプリングのサイズを決定する。
【0034】
自車位置推定部15は、ダウンサンプリング処理部14が生成する加工点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータVDとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチング(NDTスキャンマッチング)を行うことで、自車位置の推定を行う。
【0035】
(3)ダウンサンプリングサイズの設定
次に、ダウンサンプリング処理部14の処理の詳細について説明する。概略的には、ダウンサンプリング処理部14は、位置推定性能予測情報PDを参照し、現在位置に相当するエリアに対応する位置推定性能予測値に基づきダウンサンプリングのサイズを決定する。これにより、ダウンサンプリング処理部14は、NDTスキャンマッチングの位置推定精度の低下が生じないようにダウンサンプリングのサイズを好適に設定する。
【0036】
図3は、ダウンサンプリング処理部14の機能ブロックの一例を示す。ダウンサンプリング処理部14は、機能的には、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16と、ダウンサンプリングブロック17とを有する。なお、図3では、データの授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データの授受が行われるブロックの組合せは図3に限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0037】
ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能予測情報PDを参照し、自車位置推定部15から供給される現在の処理時刻における予測自車位置に基づき、車載機1が存在するエリアでの位置推定性能予測値を取得する。そして、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能予測値に基づき、ダウンサンプリングサイズを決定する。ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16の詳細処理については後述する。
【0038】
ダウンサンプリングブロック17は、ライダ2が処理時刻毎に生成する一周期分の走査の点群データのダウンサンプリングを行うことで、処理時刻毎に加工点群データを生成する。この場合、ダウンサンプリングブロック17は、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16が設定したダウンサンプリングのサイズに基づき、空間をグリッドに分割し、夫々のグリッドの中に含まれるライダ2の点群データの計測点の代表点を算出する。この場合、上記空間は、例えば、車載機1の進行方向、高さ方向、及び横方向(即ち進行方向と高さ方向と垂直な方向)を夫々軸とする3次元座標系の空間であり、これらの各方向に沿って等間隔に分割されることでグリッドが形成される。ダウンサンプリングブロック17の処理は、任意のVoxel grid filterの手法が用いられてもよい。ダウンサンプリングブロック17は、生成した加工点群データを自車位置推定部15に供給する。
【0039】
図4は、位置推定性能予測情報PDのデータ構造の一例を示す。図4に示す位置推定性能予測情報PDは、「エリア番号」、「中心位置」、「位置推定性能予測値」の各項目を有するテーブルである。
【0040】
「エリア番号」は、対応する位置推定性能予測値が適用されるエリアの識別番号を示す。ここで、エリア番号が割り当てられる各エリアは、緯度及び経度を基準としてワールド座標系が格子状に分割されたエリアであってもよく、位置推定性能予測値が同一性に基づきワールド座標系を領域分割したエリアであってもよい。さらに別の例では、エリアは、道路又は道路区間ごとに分けられるエリアであってもよい。この場合、エリア番号は、道路又は道路区間ごとに割り当てられる識別番号(リンクID等)であってもよい。
【0041】
「中心位置」は、対応するエリアの中心位置の緯度及び経度の組を示す。なお、位置推定性能予測情報PDには、「中心位置」に代えて、又はこれに加えて、各エリア番号が示すエリアの位置を特定する情報を格納するための種々の項目が設けられてもよい。
【0042】
「位置推定性能予測値」は、自車位置推定において推定対象となる要素(「推定対象要素」とも呼ぶ。)ごとの位置推定性能予測値を示す。ここでは、推定対象要素は、進行方向、横方向、高さ方向、及び方位であり、これらの推定対象要素の各々に対する位置推定性能予測値がエリアごとに位置推定性能予測情報PDに含まれている。位置推定性能予測値は、0~1の値域を有し、1が最良値となっている。ここで、図4に示すように、エリアによって、各推定対象要素の位置推定性能予測値の大小関係が異なっている。なお、位置推定性能予測情報PDに記録する各位置推定性能予測値の決定方法の一例については「(6)位置推定性能予測情報の生成方法」のセクションにおいて説明する。
【0043】
そして、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、図4に示すようなデータ構造を有する位置推定性能予測情報PDを参照し、ダウンサンプリングのサイズを決定する。この場合、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、まず、現在の処理時刻での予測自車位置に基づき、車載機1が存在するエリアのエリア番号を認識する。図4の例では、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、予測自車位置に最も中心位置が近いエリア番号を、車載機1が存在するエリアのエリア番号として認識する。
【0044】
そして、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、ダウンサンプリングの進行方向、横方向、高さ方向の各サイズを、認識したエリア番号に対応する進行方向、横方向、高さ方向の各位置推定性能予測値に基づき夫々決定する。ここで、位置推定性能予測値からダウンサンプリングのサイズを設定する具体例(第1設定例~第3設定例)について説明する。
【0045】
第1設定例では、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能予測値が低い方向ほど、ダウンサンプリングのサイズを小さい値に設定する。これにより、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能が低い方向の点群データの分解能を好適に確保し、同方向の位置推定精度の低下を好適に抑制する。
【0046】
この場合、例えば、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、各方向に対応するダウンサンプリングのサイズを、対応する方向の位置推定性能予測値に比例したサイズに定めてもよい。例えば、エリア番号A-1では、進行方向、横方向、高さ方向のダウンサンプリングのサイズの比が「0.6:0.8:0.8」となるように、各方向のダウンサンプリングのサイズを決定する。この場合、例えば、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、メモリ12に予め記憶されたダウンサンプリングの基準サイズに対し、対応する位置推定性能予測値を乗じることで、各方向のダウンサンプリングのサイズを定めてもよい。他の例では、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能予測値と設定すべきダウンサンプリングのサイズとの対応関係を示す式又はルックアップテーブルをメモリ12に記憶しておき、当該対応関係に基づき各方向の位置推定性能予測値から各方向のダウンサンプリングのサイズを決定してもよい。そして、第1設定例によれば、例えば進行方向の位置推定性能予測値が低い場合には、進行方向のダウンサンプリングのサイズを小さくし、進行方向の精度維持を好適に図ることができる。
【0047】
第2設定例では、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、位置推定性能予測値が閾値より小さい方向のダウンサンプリングのサイズを固定し、その他の方向のダウンサンプリングのサイズを処理時刻毎に適応的に決定する。上述の閾値は、例えばメモリ12に予め記憶されている。このようにすることで、車載機1は、位置推定精度が低くなる低精度方向での加工点群データの分解能を確保し、低精度方向での位置推定精度の低下を確実に抑制することができる。
【0048】
ここで、第2設定例におけるダウンサンプリングのサイズの適応的変更方法について説明する。この場合、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、ダウンサンプリング後の点群データにおいてボクセルデータVDと対応付けられた計測点数(「対応計測点数Nc」とも呼ぶ。)が所定の目標範囲となるように、各処理時刻において次の処理時刻で用いるダウンサンプリングのサイズを決定する。例えば、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、各処理時刻において、対応計測点数Ncが目標範囲の上限より多い時には、次の処理時刻でのダウンサンプリングサイズを所定率(例えば1.1)又は所定値だけ大きくする。これにより、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、次の処理時刻での対応計測点数Ncが減少しやすくなるようにダウンサンプリングのサイズを好適に変更する。一方、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、対応計測点数Ncが目標範囲の下限より少ない時には、次の処理時刻でのダウンサンプリングサイズを所定率又は所定値だけ小さくする。これにより、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、次の処理時刻での対応計測点数Ncが増加しやすくなるようにダウンサンプリングのサイズを好適に変更する。一方、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、各処理時刻において、対応計測点数Ncが目標範囲内である場合には、ダウンサンプリングサイズを維持する。
【0049】
なお、一般に、ダウンサンプリングのサイズが大きいとデータ数(即ち、加工点群データの計測点数)が少なくなるという関係はあるものの、ダウンサンプリングサイズとデータ数との関係は線形ではない。よって、線形のフィードバック制御によりダウンサンプリングのサイズを決定することは適切ではない。以上を勘案し、本実施例では、目標となる対応計測点数Ncを範囲により表して不感帯を設け、データ数と目標範囲の差分量には係らずに一定の割合又は値によりダウンサンプリングのサイズを変更する。これにより、緩やかに対応計測点数Ncを目標レベルに到達させることができる。
【0050】
以上述べたような適応的なダウンサンプリングのサイズの変更を行う第2設定例によれば、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、低精度方向での加工点群データの分解能を確保しつつ、他の方向についても処理時間と位置推定精度とを両立するようにダウンサンプリングのサイズを変更することができる。
【0051】
第3設定例では、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、各方向のダウンサンプリングのサイズの初期値を第1設定例に基づき決定し、かつ、第2設定例において説明した適応的なダウンサンプリングのサイズの変更を各方向において実行する。これにより、ダウンサンプリングサイズ設定ブロック16は、各方向のダウンサンプリングのサイズの初期値を適切に設定し、各方向のダウンサンプリングのサイズをそれぞれ適切なサイズに早期に収束させることができる。
【0052】
次に、ダウンサンプリングの具体例について説明する。
【0053】
図5(A)~図5(C)は、夫々異なるダウンサンプリングサイズによるダウンサンプリングを実行した第1の実行結果を示す図である。図5(A)でのダウンサンプリングのサイズは、ボクセルサイズの1倍に設定され、図5(B)でのダウンサンプリングのサイズは、ボクセルサイズの2/3倍に設定され、図5(C)でのダウンサンプリングのサイズは、ボクセルサイズの1/2倍に設定されている。図5(A)~図5(C)では、正規分布で表されたボクセルデータVDと、ダウンサンプリング前の点群データと、ダウンサンプリング後の加工点群データとを明示している。ここでは、説明簡略化のため、4つのボクセルに対応するボクセルデータVDと当該ボクセルに属する点群データとを対象としている。
【0054】
ダウンサンプリングブロック17は、図5(A)~図5(C)の各場合において夫々設定されたダウンサンプリングのサイズにより、対象の4つのボクセルに対応する空間を区切ることでグリッドを生成する。そして、ダウンサンプリングブロック17は、グリッド毎にライダ2の各計測点が示す位置の平均を算出し、算出した平均位置を、対象のグリッドに対応する加工点群データの計測点として生成する。この場合、図5(A)~図5(C)に示されるように、ダウンサンプリングサイズが小さいほど、ダウンサンプリング後の加工点群データの計測点数が多くなり、分解能が高くなる。
【0055】
次に、ダウンサンプリングのサイズを変更することの効果について、図6(A)及び図6(B)を参照して説明する。
【0056】
図6(A)及び図6(B)は、ダウンサンプリングサイズをボクセルサイズの1倍に設定した場合の、車載機1を搭載する車両周辺の俯瞰図を示す。図6(A)及び図6(B)では、ボクセルデータVDが存在するボクセルが矩形枠により示され、1周期分の走査により得られるライダ2の計測点の位置をドットにより示されている。ここで、図6(A)は、位置推定性能予測値が大きいエリアの例を示し、図6(B)は位置推定性能予測値が小さいエリアの例を示す。なお、構造物の表面位置に対応するボクセルには、対応するボクセルデータVDが存在する。
【0057】
図6(A)に示されるように、位置推定性能予測値が大きいエリアでは、ボクセルデータVDが存在する構造物が周辺に存在し、NDTスキャンマッチングに利用可能な点群データの計測点数も多くなる。一方、図6(B)に示されるように、位置推定性能予測値が小さいエリアでは、ボクセルデータVDが存在する構造物が少なく、NDTスキャンマッチングに利用可能な点群データの計測点数も少なくなる。
【0058】
このように、自車周辺の環境が変化することで、NDTスキャンマッチングに利用可能な点群データの計測点数が変化する。そして、図6(B)に示すようにNDTスキャンマッチングに利用可能な点群データの計測点数が少ないときにダウンサンプリングのサイズが大きいと、ボクセルデータVDとマッチングを行う加工点群データの計測点数が過少となり、NDTスキャンマッチングにより得られる位置推定精度が低くなる。よって、ダウンサンプリングサイズを小さくして計測点数を増加させる必要がある。一方、もし図6(A)より周辺構造物が更に多く計測点数が増大する場合は所定時間内に計算が終了しない可能性が生じてくる。その場合は、ダウンサンプリングサイズを大きく設定して計測点数を少なくする必要がある。以上を勘案し、本実施例に係る車載機1は、走行位置に対応する位置推定性能予測値に基づきダウンサンプリングのサイズを適応的に変更することで、NDTスキャンマッチングの位置推定精度を好適に維持する。
【0059】
(4)NDTスキャンマッチングに基づく位置推定
次に、自車位置推定部15が実行するNDTスキャンマッチングに基づく位置推定に関する説明を行う。
【0060】
図7は、自車位置推定部15が推定すべき自車位置を2次元直交座標で表した図である。図7に示すように、xyの2次元直交座標上で定義された平面での自車位置は、座標「(x、y)」、自車の方位(ヨー角)「ψ」により表される。ここでは、ヨー角ψは、車の進行方向とx軸とのなす角として定義されている。座標(x、y)は、例えば緯度及び経度の組合せに相当する絶対位置、あるいは所定地点を原点とした位置を示すワールド座標である。そして、自車位置推定部15は、これらのx、y、ψを推定パラメータとする自車位置推定を行う。なお、自車位置推定部15は、x、y、ψに加えて、3次元直交座標系での車両の高さ位置、ピッチ角、ロール角の少なくともいずれかをさらに推定パラメータとして推定する自車位置推定を行ってもよい。
【0061】
次に、NDTスキャンマッチングに用いるボクセルデータVDについて説明する。ボクセルデータVDは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含む。
【0062】
図8は、ボクセルデータVDの概略的なデータ構造の一例を示す。ボクセルデータVDは、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含み、本実施例では、図8に示すように、ボクセルIDと、ボクセル座標と、平均ベクトルと、共分散行列とを含む。
【0063】
「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0064】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示す。なお、任意のボクセル「n」内の任意の点「i」の座標を
(i)=[x(i)、y(i)、z(i)]
と定義し、ボクセルn内での点群数を「N」とすると、ボクセルnでの平均ベクトル「μ」及び共分散行列「V」は、それぞれ以下の式(1)及び式(2)により表される。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
次に、ボクセルデータVDを用いたNDTスキャンマッチングの概要について説明する。
【0068】
車両を想定したNDTによるスキャンマッチングは、道路平面(ここではxy座標とする)内の移動量及び車両の向きを要素とした推定パラメータ
P=[t、t、tψ
を推定することとなる。ここで、「t」は、x方向の移動量を示し、「t」は、y方向の移動量を示し、「tψ」は、ヨー角を示す。
【0069】
また、ライダ2が出力する点群データの座標を、
(j)=[x(j)、y(j)、z(j)]
とすると、X(j)の平均値「L´」は、以下の式(3)により表される。
【0070】
【数3】
そして、上述の推定パラメータPを用い、平均値L´を座標変換すると、変換後の座標「L」は、以下の式(4)により表される。
【0071】
【数4】
そして、自車位置推定部15は、地図DB10と同一の座標系である絶対的な座標系(「ワールド座標系」とも呼ぶ。)に変換した加工点群データに対応付けられるボクセルデータVDを探索し、そのボクセルデータVDに含まれる平均ベクトルμと共分散行列Vとを用い、ボクセルnの評価関数値(「個別評価関数値」とも呼ぶ。)「E」を算出する。この場合、自車位置推定部15は、以下の式(5)に基づき、ボクセルnの個別評価関数値Eを算出する。
【0072】
【数5】
【0073】
そして、自車位置推定部15は、以下の式(6)により示される、マッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数値(「スコア値」とも呼ぶ。)「E(k)」を算出する。
【0074】
【数6】
その後、自車位置推定部15は、ニュートン法などの任意の求根アルゴリズムによりスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、自車位置推定部15は、デッドレコニングにより暫定的に算出した予測自車位置「X(k)」に対し、推定パラメータPを適用することで、以下の式(7)を用いて高精度な推定自車位置「X^(k)」を算出する。
【0075】
【数7】
なお、ここでは、計算対象となる基準時刻(即ち現在時刻)「k」の自車位置を示す状態変数ベクトルを、「X(k)」または「X^(k)」と表記している。
【0076】
図9は、自車位置推定部15の機能ブロックの一例である。図9に示すように、自車位置推定部15は、デッドレコニングブロック21と、位置予測ブロック22と、座標変換ブロック23と、点群データ対応付けブロック24と、位置補正ブロック25とを有する。
【0077】
デッドレコニングブロック21は、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5等の出力に基づく車両の移動速度と角速度を用い、前回時刻からの移動距離と方位変化を求める。位置予測ブロック22は、直前の計測更新ステップで算出された時刻k-1の推定自車位置X(k-1)に対し、求めた移動距離と方位変化を加えて、時刻kの予測自車位置X(k)を算出する。位置予測ブロック22は、算出した予測自車位置X(k)を、ダウンサンプリング処理部14、座標変換ブロック23及び位置補正ブロック25に供給する。
【0078】
座標変換ブロック23は、ダウンサンプリング処理部14から出力されるダウンサンプリング後の加工点群データを、地図DB10と同一の座標系であるワールド座標系に変換する。この場合、座標変換ブロック23は、例えば、時刻kで位置予測ブロック22が出力する予測自車位置に基づき、時刻kでの加工点群データの座標変換を行う。なお、ダウンサンプリング後の加工点群データに対して上述の座標変換が行われる代わりに、ダウンサンプリング前の点群データに対して上述の座標変換が行われてもよい。この場合、ダウンサンプリング処理部14は、座標変換後のワールド座標系の点群データをダウンサンプリングしたワールド座標系の加工点群データを生成する。なお、車両に設置されたライダを基準とした座標系の点群データを車両座標系に変換する処理、及び車両座標系からワールド座標系に変換する処理等については、例えば、国際公開WO2019/188745などに開示されている。
【0079】
点群データ対応付けブロック24は、座標変換ブロック23が出力するワールド座標系の加工点群データと、同じワールド座標系で表されたボクセルデータVDとを照合することで、加工点群データとボクセルとの対応付けを行う。位置補正ブロック25は、加工点群データと対応付けがなされた各ボクセルを対象として、式(5)に基づく個別評価関数値を算出し、式(6)に基づくスコア値E(k)が最大となるとなる推定パラメータPを算出する。そして、位置補正ブロック25は、式(7)に基づき、位置予測ブロック22が出力する予測自車位置X(k)に対し、時刻kで求めた推定パラメータPを適用することで、推定自車位置X(k)を算出する。
【0080】
ここで、計測点とボクセルデータVDとの対応付けの具体的手順について、簡単な例を用いて補足説明する。
【0081】
図10は、ワールド座標系におけるx-yの2次元平面上でのボクセルデータVDが存在するボクセル「Vo1」~「Vo6」とこれらのボクセル付近の位置を示す計測点61~65との位置関係を示す。ここでは、説明の便宜上、ボクセルVo1~Vo6の中心位置のワールド座標系のz座標と、計測点61~65のワールド座標系のz座標とは同一であるものとする。
【0082】
まず、座標変換ブロック23は、計測点61~65を含む点群データをワールド座標系に変換する。その後、点群データ対応付けブロック24は、ワールド座標系の計測点61~65の端数等の丸め処理を行う。図10の例では、立方体である各ボクセルのサイズが1mであることから、点群データ対応付けブロック24は、各計測点61~65のx、y、z座標の夫々の小数点以下を四捨五入する。
【0083】
次に、点群データ対応付けブロック24は、ボクセルVo1~Vo6に対応するボクセルデータVDと、各計測点61~65の座標との照合を行うことで、各計測点61~65に対応するボクセルを判定する。図10の例では、計測点61の(x,y)座標は、上述の四捨五入により(2,1)となることから、点群データ対応付けブロック24は、計測点61をボクセルVo1と対応付ける。同様に、計測点62及び計測点63の(x,y)座標は、上述の四捨五入により(3,2)となることから、点群データ対応付けブロック24は、計測点62及び計測点63をボクセルVo5と対応付ける。また、計測点64の(x,y)座標は、上述の四捨五入により(2,3)となることから、点群データ対応付けブロック24は、計測点64をボクセルVo6と対応付ける。一方、計測点65の(x,y)座標は、上述の四捨五入により(4,1)となることから、点群データ対応付けブロック24は、計測点65に対応するボクセルデータVDが存在しないと判定する。その後、位置補正ブロック25は、点群データ対応付けブロック24が対応付けた計測点とボクセルデータVDとを用いて推定パラメータPの推定を行う。なお、この例では、ダウンサンプリング後の計測点数は5個であるが、対応計測点数Ncは4個となる。対応計測点数Ncは、道路周辺に構造物が少なく疎な空間の場合に少なくなり、また自車両の近くに他車両が存在してライダの光ビームが遮られてしまう現象(オクルージョンと呼ぶ)が生じた場合も少なくなる。
【0084】
(5)処理フロー
図11は、車載機1のコントローラ13が実行する自車位置推定に関する処理の手順を示すフローチャートの一例である。コントローラ13は、図11のフローチャートの処理を、電源がオンになった場合など、自車位置推定を行う必要が生じた場合に開始する。
【0085】
まず、コントローラ13は、GPS受信機5の測位結果に基づき、予測自車位置を決定する(ステップS10)。そして、コントローラ13は、ライダ2の点群データを取得できたか否か判定する(ステップS11)。そして、コントローラ13は、ライダ2の点群データを取得できない場合(ステップS11;No)、引き続きステップS11の判定を行う。また、コントローラ13は、点群データを取得できない期間では、引き続きGPS受信機5の測位結果に基づき、予測自車位置を決定する。なお、コントローラ13は、GPS受信機5のみの測位結果に限らず、点群データ以外の任意のセンサの出力に基づき、予測自車位置を決定してもよい。
【0086】
そして、ライダ2の点群データを取得できた場合(ステップS11;Yes)、コントローラ13は、ジャイロセンサ3及び車速センサ4等の出力に基づく車両の移動速度と角速度を用いて、前回時刻からの移動距離と方位変化を求める。これにより、位置予測ブロック22は、1時刻前(直前の処理時刻)に得られた推定自車位置(ヨー角などの姿勢角を含んでもよい)から、現処理時刻の予測自車位置(姿勢角を含んでもよい)を算出する(ステップS12)。なお、1時刻前の推定自車位置が算出されていない場合には、コントローラ13は、ステップS10で決定した予測自車位置を推定自車位置とみなしてステップS12の処理を行ってもよい。
【0087】
次に、コントローラ13は、位置推定性能予測情報PDを参照し、現在の処理時刻の予測自車位置から現在のエリアを判定する(ステップS13)。例えば、位置推定性能予測情報PDが図4に示されるデータ構造を有する場合、コントローラ13は、取得した予測自車位置と位置推定性能予測情報PDに記録された各エリアの中心位置とに基づき、該当するエリア番号を特定する。
【0088】
そして、コントローラ13は、ステップS13で判定した現在のエリアに対する位置推定性能予測値を位置推定性能予測情報PDから取得する(ステップS14)。この場合、方向毎の位置推定性能予測値が位置推定性能予測情報PDに記録されている場合には、コントローラ13は、方向毎の位置推定性能予測値を取得する。
【0089】
次に、コントローラ13は、ステップS14で取得した位置推定性能予測値に基づき、ダウンサンプリングのサイズを決定する(ステップS15)。この場合、例えば、コントローラ13は、「(3)ダウンサンプリングサイズの設定」のセクションで述べた第1設定例~第3設定例のいずれかの例に従い、各方向のダウンサンプリングのサイズを決定する。なお、コントローラ13は、ステップS13~ステップS15の処理を、毎回(各処理時刻で)実行する代わりに、所定時間間隔ごとに実行してもよい。即ち、コントローラ13は、ダウンサンプリングのサイズの設定処理を実行する周期を、自車位置推定の実行周期よりも所定倍数だけ長くしてもよい。
【0090】
そして、コントローラ13は、ステップS15で決定したダウンサンプリングのサイズに基づき、ライダ2が現処理時刻において走査する1周期分の点群データに対してダウンサンプリングを実施する(ステップS16)。
【0091】
次に、コントローラ13は、NDTマッチング処理を実行する(ステップS17)。この場合、コントローラ13は、加工点群データをワールド座標系のデータに変換する処理、及び、ワールド座標系に変換された加工点群データとボクセルデータVDが存在するボクセルとの対応付けなどを行う。そして、コントローラ13は、NDTマッチング処理の結果に基づき、現処理時刻での推定自車位置(ヨー角などの姿勢角を含む)を算出する(ステップS18)。
【0092】
そして、コントローラ13は、自車位置推定処理を終了すべきか否か判定する(ステップS19)。そして、コントローラ13は、自車位置推定処理を終了すべきと判定した場合(ステップS19;Yes)、フローチャートの処理を終了する。一方、コントローラ13は、自車位置推定処理を継続する場合(ステップS19;No)、ステップS11へ処理を戻し、次の処理時刻での自車位置の推定を行う。
【0093】
(6)位置推定性能予測情報の生成方法
次に、位置推定性能予測情報PDの生成方法について説明する。NDTスキャンマッチングによる自己位置推定を行う場合、道路周辺に構造物が多い場所では、精度の良い自己位置推定が可能だが、特徴物が少ない場合は精度が低下する可能性がある。また、その特徴物の配置により、進行方向及び横方向のそれぞれの自己位置推定の精度は依存する。従って、地図DB10に記憶されたボクセルデータVDが存在するボクセルの配置によって、各方向の位置推定性能を予測することが可能である。車載機1は、以下に述べる方法により算出された位置推定性能予測値を含む位置推定性能予測情報PDを、地図DB10の一部として記憶する。
【0094】
以下では、地図DB10に含まれるボクセルデータVDから各位置での位置推定性能予測値を算出する方法の一例について説明する。この処理は、車載機1が実行してもよく、地図データの生成処理の一環として車載機1以外の装置により事前に行われてもよい。
【0095】
概略的には、位置推定性能予測値を算出する対象となる地点(「対象地点」とも呼ぶ。)から所定距離範囲内に該当するボクセルデータVDを地図DB10から抽出し、対象範囲を進行方向と横方向でそれぞれスライスし、スライスした線上での対象地点からのボクセルデータVDが存在するボクセルの高さの差分を求める。そして、スライス毎の上述の差分を積分し,その積分結果に基づき、進行方向と横方向の位置推定性能を予測する。
【0096】
図12(A)及び図12(B)は、異なる道路上の地点を対象地点とした場合に進行方向と横方向に等間隔に設けたスライス線(格子線)を明示した道路の俯瞰図を示す。図12(A)及び図12(B)では、対象地点を車両により表している。ここで、図12(A)の例では、対象地点の横方向ではボクセルデータVDが生成される特徴物が存在せずに疎な空間が広がっている一方で、進行方向前後にはボクセルデータVDが生成される特徴物が存在している。また、図12(B)に示される道路では、周辺に構造物が無いものの、ガードレールが設置されている。よって、図12(B)に示される対象地点では、進行方向の推定精度を維持できる物体はないものの、横方向はガードレールによって推定精度を維持できると推察される。
【0097】
図13は、図12(A)に示されるスライス線のうち横方向及び進行方向に夫々3個のスライス線「ha1」~「hc1」、「va1」~「vc1」を抽出して明示した図である。また、図14(A)~図14(F)は、図13に明示したスライス線による切断面においてボクセルデータVDが存在するボクセルを明示した図である。
【0098】
この例では,進行方向前後にはボクセルデータVDが生成される特徴物が存在していることから、進行方向の積分値は大きめの値となり、横方向では疎な空間となることから、横方向の積分値は小さい値となる。例えば、進行方向のスライス線va1では、前方向でのボクセル高さ差分は「+3」であり、後方向でのボクセル高さ差分は「+6」となる。また、進行方向のスライス線vb1では、前方向でのボクセル高さ差分は「+2」であり、後方向のボクセル高さ差分は「0」となる。また、進行方向のスライス線vc1では、前方向でのボクセル高さ差分は「+7」であり、後方向のボクセル高さ差分は「+2」となる。一方、横方向のスライス線ha1~hc1では、左方向及び右方向のいずれもボクセル高さ差分は「0」となる。そして、図12(A)に示される進行方向の各スライス線のボクセル高さ差分の積分値と、図12(A)に示される横方向の各スライス線のボクセル高さ差分の積分値とを算出し、積分値が高いほど位置推定性能予測値を高い値に設定する。よって、図13の例では、その積分値に応じて、進行方向の位置推定性能予測値は、横方向の位置推定性能予測値に比べて大きな値が設定される。なお、高さ方向の位置推定性能予測値については、高い構造物のボクセルも含まれており高さ方向の分布が広いため、横方向の位置推定性能予測値よりも大きく、進行方向の位置推定性能予測値と同程度の値が設定される。
【0099】
図15は、図13(B)に示されるスライス線のうち横方向及び進行方向に夫々3個のスライス線「ha2」~「hc2」、「va2」~「vc2」を抽出して明示した図である。また、図16(A)~図16(F)は、図15に明示したスライス線による切断面においてボクセルデータVDが存在するボクセルを明示した図である。
【0100】
この例では、進行方向については疎な空間となることから、進行方向の積分値は小さめの値となり、横方向の積分値はガードレールの存在により中程度の値となる。例えば、進行方向のスライス線va2~vc2では、前方向及び右方向のいずれも後方向のボクセル高さ差分は「0」となる。一方、横方向のスライス線ha2~hc2では、左方向及び右方向のいずれもボクセル高さ差分は「1」となる。このように、横方向の各スライス線では、個々のボクセル高さ差分は小さいものの、ガードレールの連続性により、横方向の積分値はある程度の大きさとなる。よって、図15の例では、進行方向の位置推定性能予測値は、横方向の位置推定性能予測値より小さい値が設定される。なお、高さ方向の位置推定性能予測値については、路面とガードレール部分のボクセルであり高さ方向の分布が狭いため、進行方向の位置推定性能予測値と横方向の位置推定性能予測値の間の値が設定される。
【0101】
以上のように、地図DB10に記憶されるボクセルデータVDに基づくシミュレーションにより、各地点の位置推定性能予測値を好適に算出することができる。そして、位置推定性能予測値の算出結果は位置推定性能予測情報PDとして地図DB10に格納されることで、車載機1は、上述した実施例で述べたダウンサンプリングのサイズ調整を好適に実行することができる。
【0102】
以上説明したように、本実施例に係る車載機1のコントローラ13は、移動体である車両に設けられたライダ2が出力する点群データを取得する。そして、コントローラ13は、車両の位置が属するエリアと地図データにおいて対応付けられた、自己位置推定の性能に関する予測情報である位置推定性能予測値を取得する。そして、コントローラ13は、位置推定性能予測値に基づき、点群データに対してダウンサンプリングを実行する。この態様により、車載機1は、自己位置推定精度を勘案してダウンサンプリングを好適に実行することができる。
【0103】
(7)変形例
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせてこれらの実施例に適用してもよい。
【0104】
(変形例1)
図1に示す運転支援システムの構成は一例であり、本発明が適用可能な運転支援システムの構成は図1に示す構成に限定されない。例えば、運転支援システムは、車載機1を有する代わりに、車両の電子制御装置が車載機1のダウンサンプリング処理部14及び自車位置推定部15の処理を実行してもよい。この場合、地図DB10は、例えば車両内の記憶部又は車両とデータ通信を行うサーバ装置に記憶され、車両の電子制御装置は、この地図DB10を参照することで、ダウンサンプリング及びNDTスキャンマッチングに基づく自車位置推定などを実行する。
【0105】
(変形例2)
ボクセルデータVDは、図8に示すように、平均ベクトルと共分散行列とを含むデータ構造に限定されない。例えば、ボクセルデータVDは、平均ベクトルと共分散行列を算出する際に用いられる計測整備車両が計測した点群データをそのまま含んでいてもよい。
【0106】
(変形例3)
車載機1は、位置推定性能予測情報PDに基づき、ダウンサンプリングのサイズを決定する代わりに、ダウンサンプリングの要否を判定してもよい。例えば、車載機1は、位置推定性能予測情報PDを参照して現在のエリアに対応する全ての方向の位置推定性能予測値が閾値以上となる場合に、ダウンサンプリングを実行し、いずれかの方向の位置推定性能予測値が閾値未満となる場合に、ダウンサンプリングを実行しない。この例においても、位置推定性能予測情報PDに基づいてダウンサンプリングを好適に実行することができる。
【0107】
(変形例4)
図4に示す位置推定性能予測情報PDでは、推定対象要素(進行方向、横方向、高さ方向、方位)ごとに位置推定性能予測値が関連付けられていた。これに代えて、位置推定性能予測情報PDには、推定対象要素によらずに1つの位置推定性能予測値が各エリアに対応付けられてもよい。この場合、例えば、車載機1は、位置推定性能予測情報PDを参照し、現在のエリアに対応する位置推定性能予測値に基づき、進行方向、横方向、高さ方向において共通のダウンサンプリングサイズを決定する。他の例では、車載機1は、進行方向、横方向、高さ方向のダウンサンプリングのサイズの比率が予め定められている場合には、現在のエリアに対応する位置推定性能予測値と、上記比率とに基づき、各方向のダウンサンプリングのサイズを決定してもよい。
【0108】
なお、上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0109】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0110】
1 車載機
2 ライダ
3 ジャイロセンサ
4 車速センサ
5 GPS受信機
10 地図DB
図1
図2
図3
図4
図5
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図16