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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/30 20060101AFI20241118BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20241118BHJP
   F16H 61/48 20060101ALI20241118BHJP
   F16D 43/14 20060101ALI20241118BHJP
   F16D 33/06 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
F16H41/30 A
F16H45/02 D
F16H41/30 C
F16H41/30 D
F16H61/48
F16D43/14
F16D33/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020214704
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100619
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-004967(JP,A)
【文献】特開2020-172976(JP,A)
【文献】特開2007-113739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 41/30
F16H 45/02
F16H 61/48
F16D 43/14
F16D 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源からのトルクが入力されるインペラ、及び作動流体を介して前記インペラからトルクが伝達されるタービン、を有する流体継手と、
前記流体継手から作動流体を回収するとともに、作動流体を前記流体継手内に供給するように構成された循環回路と、
を備え、
前記循環回路は、
前記流体継手から作動流体を回収するように構成される回収回路部と、
前記流体継手へ作動流体を供給するように構成される供給回路部と、
前記回収回路部に設置され、前記流体継手の回転時に開状態となり且つ前記流体継手の停止時に閉状態となるように構成された第1バルブと、
前記供給回路部に設置され、前記流体継手の回転時に開状態となり且つ前記流体継手の停止時に閉状態となるように構成された第2バルブと、
を有する、
駆動ユニット。
【請求項2】
前記流体継手と相対的に回転するように配置される軸部材と、
前記軸部材と前記流体継手との間をシールするシール部材と、
前記シール部材を介して前記流体継手から漏出する作動流体を回収するように構成されたドレン回路と、
をさらに備え、
前記ドレン回路は、前記流体継手の回転時に開状態となり且つ前記流体継手の停止時に閉状態となるように構成されたドレンバルブを有する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
作動流体を貯蔵する作動流体タンクをさらに備え、
前記循環回路は、前記作動流体タンクと前記流体継手との間で作動流体を循環させるように構成される、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記循環回路は、前記供給回路部に設置される流体ポンプを有し、
前記第2バルブは、前記流体ポンプと前記流体継手との間に配置される、
請求項1から3のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記流体継手は、前記タービンの回転によって作動するように構成された遠心式ロックアップクラッチを有する、
請求項1からのいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記循環回路は、作動流体を冷却する作動流体クーラを有する、
請求項1からのいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記第1及び前記第2バルブは、一方向弁である、
請求項1からのいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記第1及び第2バルブは、作動流体の流体圧が大気圧よりも大きくなると開状態となり、作動流体の流体圧が大気圧以下となると閉状態となる、
請求項1から7のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項9】
駆動源と、
前記駆動源からのトルクが入力されるインペラ、及び作動流体を介して前記インペラからトルクが伝達されるタービン、を有する流体継手と、
前記流体継手から作動流体を回収するとともに、作動流体を前記流体継手内に供給するように構成された循環回路と、
前記流体継手と相対的に回転するように配置される軸部材と、
前記軸部材と前記流体継手との間をシールするシール部材と、
前記シール部材を介して前記流体継手から漏出する作動流体を回収するように構成されたドレン回路と、
を備え、
前記循環回路は、前記流体継手の回転時に開状態となり且つ前記流体継手の停止時に閉状態となるように構成されたバルブを有する、
前記ドレン回路は、前記流体継手の回転時に開状態となり且つ前記流体継手の停止時に閉状態となるように構成されたドレンバルブを有する、
駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トルクコンバータを有する電気自動車が提案されている。このトルクコンバータには、モータによってオイルポンプを駆動してオイルを供給している。このため、車両の停止時にはオイルポンプも停止してトルクコンバータ内からオイルが抜けている。したがって、車両の発進応答性が低下してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の車両の制御装置は、車両の発進前にモータを作動させてオイルポンプを駆動させ、トルクコンバータ内に作動油を供給している。これによって、車両発進時の応答性の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-097971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、車両発進時の応答性の低下を防止するためには、流体ポンプを作動させる必要がある。しかしながら、流体ポンプを作動させることなく車両発進時の応答性の低下を抑制したいという要望がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、流体ポンプを作動させることなく車両発進時の応答性の低下を抑制することができる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、駆動源と、流体継手と、循環回路と、を備えている。流体継手は、インペラ及びタービンを有する。インペラは、駆動源からのトルクが入力される。タービンは、作動流体を介してインペラからトルクが伝達される。循環回路は、流体継手から作動流体を回収するとともに、作動流体を流体継手内に供給するように構成されている。循環回路は、バルブを有する。バルブは、流体継手の回転時に開状態となり、流体継手の停止時に閉状態となるように構成されている。
【0008】
この構成によれば、流体継手の停止時に閉状態となるバルブが設置されているため、車両の停止時に流体継手から作動流体が抜けることが防止される。このため、流体ポンプを作動させることなく、車両発進時の応答性の低下を抑制することができる。なお、駆動ユニットは、流体ポンプを有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0009】
好ましくは、駆動ユニットは、軸部材と、シール部材と、ドレン回路とをさらに備える。軸部材は、流体継手と相対的に回転するように配置されている。シール部材は、軸部材と流体継手との間をシールする。ドレン回路は、シール部材を介して流体継手から漏出する作動流体を回収するように構成されている。ドレン回路は、ドレンバルブを有する。ドレンバルブは、流体継手の回転時に開状態となり、且つ流体継手の停止時に閉状態となるように構成される。
【0010】
好ましくは、駆動ユニットは、作動流体を貯蔵する作動流体タンクをさらに備える。循環回路は、作動流体タンクと流体継手との間で作動流体を循環させるように構成される。
【0011】
好ましくは、循環回路は、供給回路部と、回収回路部とを有する。供給回路部は、流体継手へ作動流体を供給するように構成される。回収回路部は、流体継手から作動流体を回収するように構成される。
【0012】
好ましくは、バルブは、第1バルブと第2バルブとを含む。第1バルブは、回収回路部に設置される。第2バルブは、供給回路部に設置される。
【0013】
好ましくは、循環回路は、供給回路部に設置される流体ポンプを有する。第2バルブは、流体ポンプと流体継手との間に配置される。
【0014】
好ましくは、流体継手は、タービンの回転によって作動するように構成された遠心式ロックアップクラッチを有する。
【0015】
好ましくは、循環回路は、作動流体を冷却する作動流体クーラ―を有している。
【0016】
好ましくは、バルブは、一方向弁である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体ポンプを作動させることなく、車両発進時の応答性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】駆動ユニットの概略図。
図2】トルクコンバータの断面図。
図3】インペラハブの断面図。
図4】インペラハブの断面図。
図5】第1バルブの断面図。
図6】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図7】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
図8】変形例に係る駆動ユニットの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る駆動ユニットの概略図である。なお、以下の説明において、軸方向とは電気モータ2及びトルクコンバータ3の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、正回転とは、車両が前進するときの回転であり、逆回転とは、車両が後進するときの回転である。
【0020】
[駆動ユニット100]
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2(駆動源の一例)、トルクコンバータ3、及び循環回路4を備えている。また、駆動ユニット100は、入力軸5、出力軸6、減速機7、トルクコンバータケース8、及び作動流体タンク9を備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。駆動ユニット100は、駆動輪101を駆動するように構成されている。
【0021】
<電気モータ2>
電気モータ2は、モータケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。本実施形態における電気モータ2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0022】
ステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。
【0023】
<トルクコンバータ3>
トルクコンバータ3は、軸方向において、電気モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と電気モータ2との間に、減速機7が配置されている。軸方向において、電気モータ2、減速機7、トルクコンバータ3の順で配列している。
【0024】
トルクコンバータ3の回転軸Oは、電気モータ2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、電気モータ2からのトルクが伝達される。トルクコンバータ3は、電気モータ2からのトルクを増幅して減速機7へと出力する。
【0025】
図2に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、第1ワンウェイクラッチ35、及び第2ワンウェイクラッチ36を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心式ロックアップクラッチ37をさらに有している。本実施形態において、トルクコンバータ3の外殻は、カバー31、及び後述するインペラシェル321によって構成されている。トルクコンバータ3は、作動流体を介してトルクを伝達する。
【0026】
トルクコンバータ3は、インペラ32が電気モータ2側(図2の左側)に配置され、カバー31が電気モータ2と反対側(図2の右側)に配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース8内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が満たされている。作動流体は、例えば作動油である。
【0027】
カバー31は、電気モータ2からのトルクが入力される。カバー31は、電気モータ2からのトルクによって回転する。カバー31は、入力軸5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、入力軸5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、入力軸5と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0028】
カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部から電気モータ2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0029】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0030】
カバーハブ313は、第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cを有している。第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cは、一つの部材によって構成されている。
【0031】
第1ボス部313aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第1ボス部313aに、入力軸5がスプライン嵌合する。第1ボス部313aは、トルクコンバータケース8に軸受部材(図示省略)を介して回転可能に支持されている。第1ボス部313aは、軸方向において、第1フランジ部313bから電気モータ2と反対側に延びている。
【0032】
第1フランジ部313bは、第1ボス部313aから径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aの電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第1フランジ部313bの外周端部に、円板部311が固定されている。
【0033】
突出部313cは、第1フランジ部313bから軸方向に延びている。突出部313cは、電気モータ2に向かって延びている。突出部313cは、第1フランジ部313bの外周端部から延びている。突出部313cは、円筒状である。
【0034】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31を介して電気モータ2からのトルクが入力される。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、及びインペラハブ323を有している。また、インペラ32は複数の供給流路324を有している。
【0035】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0036】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0037】
インペラハブ323は、第2ボス部323aと、第2フランジ部323bとを有する。第2フランジ部323bは、第2ボス部323aから径方向外側に延びている。第2ボス部323aは、円筒状であって、軸方向に延びている。第2ボス部323aは、軸受部材(図示省略)を介してトルクコンバータケース8に回転可能に支持されている。
【0038】
第2ボス部323a内を、固定軸104(軸部材の一例)が軸方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を出力軸6が軸方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、変速機ケース72又はトルクコンバータケース8から延びている。固定軸104は、回転不能である。すなわち、固定軸104は、トルクコンバータ3と相対的に回転する。
【0039】
供給流路324は、インペラハブ323に形成されている。詳細には、供給流路324は、第2フランジ部323bに形成されている。供給流路324は、インペラハブ323の内周面から径方向外側に延びている。そして、供給流路324は、トーラスT内に開口している。なお、トーラスTは、インペラ32とタービン33とによって囲まれた空間である。
【0040】
供給流路324は、軸方向において閉じられている。すなわち、供給流路324は、インペラハブ323内を径方向に延びる貫通孔である。図3に示すように、供給流路324は、放射状に延びている。供給流路324は、径方向外側に向かって、正回転方向と反対側に傾斜している。すなわち、供給流路324は、径方向外側に向かって、逆回転方向(図3の反時計回り)に傾斜している。なお、供給流路324は直線状に延びているものに限らず、例えば、図4に示すように、供給流路324は曲線状に延びていてもよい。
【0041】
図2に示すように、タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からトルクが伝達される。
【0042】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0043】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベットによって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0044】
タービンハブ333には、出力軸6が取り付けられている。詳細には、出力軸6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、出力軸6と一体的に回転する。
【0045】
タービンハブ333は、第3ボス部333a及び第3フランジ部333bを有している。第3ボス部333a及び第3フランジ部333bは、一つの部材によって構成されている。
【0046】
第3ボス部333aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第3ボス部333aに、出力軸6がスプライン嵌合する。第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bから電気モータ2と反対側に延びている。すなわち、第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからカバーハブ313に向かって延びている。
【0047】
第3ボス部333aは、径方向において、突出部313cと間隔をあけて配置されている。すなわち、径方向において、第3ボス部333aの外側に突出部313cが配置されている。第3ボス部333aと突出部313cとの間に、第1ワンウェイクラッチ35が配置されている。なお、第1ワンウェイクラッチ35が無い状態では、第3ボス部333aの外周面と、突出部313cの内周面とが対向する。
【0048】
第3フランジ部333bは、第3ボス部333aから径方向外側に延びている。詳細には、第3フランジ部333bは、第3ボス部333aの電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第3フランジ部333bの外周端部に、タービンシェル331がリベットなどによって固定されている。
【0049】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻るオイルを整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、第2ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0050】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0051】
第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31とタービン33との間に配置されている。第1ワンウェイクラッチ35は、正回転方向において、カバー31をタービン33に対して相対回転可能とする。すなわち、車両が前進するように電気モータ2が正回転したとき、カバー31がタービン33と相対回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の前進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達しない。
【0052】
一方、第1ワンウェイクラッチ35は、逆回転方向において、カバー31をタービン33と一体回転させる。すなわち、車両が後進するように電気モータ2が逆回転したとき、カバー31がタービン33と一体回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の後進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達する。
【0053】
第2ワンウェイクラッチ36は、固定軸104とステータ34との間に配置されている。第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転方向に回転可能とするように構成されている。一方、第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転方向に回転不能とする。このステータ34によって、トルクが増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0054】
遠心式ロックアップクラッチ37は、トルクコンバータ3の回転によって作動するように構成されている。すなわち、遠心式ロックアップクラッチ37は、作動流体の流体圧によって作動するものではない。遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33に取り付けられている。遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。
【0055】
遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、インペラ32とタービン33とを作動流体1を介さずに連結するように構成されている。なお、遠心式ロックアップクラッチ37は、カバー31を介してインペラ32とタービン33とを連結する。詳細には、遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33が所定の回転速度以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0056】
遠心式ロックアップクラッチ37は、複数の遠心子371と、摩擦材372とを有している。摩擦材372は、遠心子371の外周面に取り付けられている。遠心子371は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心子371は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心子371は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0057】
この遠心式ロックアップクラッチ37は、タービン33の回転速度が所定の回転速度以上になると、遠心子371が径方向外側に移動し、摩擦材372がカバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心式ロックアップクラッチ37はオン状態となり、カバー31からのトルクが遠心式ロックアップクラッチ37を介してタービン33へと伝達される。
【0058】
タービン33の回転速度が所定の回転速度未満になると、遠心子371が径方向内側に移動し、摩擦材372とカバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心式ロックアップクラッチ37はオフ状態となり、カバー31からのトルクは遠心式ロックアップクラッチ37を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からのトルクは、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0059】
<減速機7>
図1に示すように、減速機7は、軸方向において電気モータ2とトルクコンバータ3との間に配置されている。減速機7は、トルクコンバータ3からのトルクを駆動輪101側へと伝達する。詳細には、減速機7は、トルクコンバータ3からのトルクを増幅して、デファレンシャルギア109を介して、駆動輪101側へと伝達する。なお、減速機7は、複数の歯車71を有している。減速機7は、変速機ケース72内に収容される。なお、複数の歯車71のうちの一つは、出力軸6に固定されている。歯車71は出力軸6と一体的に回転する。
【0060】
<入力軸5>
入力軸5は、電気モータ2から延びている。詳細には、入力軸5は、電気モータ2のロータ23から延びている。なお、電気モータ2が出力軸を有している場合、入力軸5は、電気モータ2の出力軸に取り付けられる。入力軸5の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0061】
入力軸5は、電気モータ2からのトルクをトルクコンバータ3に入力する。入力軸5は、トルクコンバータ3のインペラ32に接続されている。詳細には、入力軸5は、カバー31を介してインペラ32に接続されている。入力軸5の先端部は、トルクコンバータ3のカバーハブ313に取り付けられている。
【0062】
入力軸5は、出力軸6内を延びている。入力軸5は、中実状である。
【0063】
<出力軸6>
出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを減速機7へと出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3から電気モータ2に向かって延びている。
【0064】
図2に示すように、出力軸6は、円筒状である。入力軸5は、この出力軸6内を延びている。出力軸6の一方の端部(図2の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。また、出力軸6の他方の端部には、減速機7の歯車71が取り付けられている。出力軸6は、例えば、変速機ケース72に軸受部材などを介して回転可能に支持されている。
【0065】
<トルクコンバータケース8>
図1に示すように、トルクコンバータケース8は、トルクコンバータ3を収容している。トルクコンバータケース8は、変速機ケース72と一つの部材によって構成されていてもよいし、別部材によって構成されていてもよい。トルクコンバータケース8とトルクコンバータ3の外殻とは、互いに間隔をあけて配置されている。このため、トルクコンバータケース8とトルクコンバータ3の外殻との間に空気層が形成されている。
【0066】
<作動流体タンク9>
作動流体タンク9は、トルクコンバータ3に供給する作動流体を貯蔵している。作動流体タンク9は、循環回路4を介してトルクコンバータ3と接続されている。
【0067】
<循環回路4>
循環回路4は、トルクコンバータ3と作動流体タンク9との間で作動流体を循環させるように構成されている。循環回路4は、トルクコンバータ3から作動流体を回収するとともに、作動流体をトルクコンバータ3に供給するように構成されている。循環回路4は、回収回路部41と、供給回路部42とを有している。
【0068】
回収回路部41は、トルクコンバータ3と作動流体タンク9とを接続している。回収回路部41は、トルクコンバータ3から作動流体を回収するように構成されている。また、回収回路部41は、その回収した作動流体を作動流体タンク9に供給するように構成されている。
【0069】
供給回路部42は、作動流体タンク9とトルクコンバータ3とを接続している。供給回路部42は、作動流体タンク9内の作動流体をトルクコンバータ3へ供給するように構成されている。
【0070】
循環回路4は、第1バルブ43と、第2バルブ44とを有している。
【0071】
第1バルブ43は、回収回路部41に設置されている。第1バルブ43は、トルクコンバータ3の回転時に開状態となり、トルクコンバータ3の停止時に閉状態となるように構成されている。
【0072】
具体的には、トルクコンバータ3の回転時は、トルクコンバータ3内の作動流体の流体圧によって、第1バルブ43は開状態となる。なお、第1バルブ43は、作動流体の流体圧が大気圧よりも大きくなると開状態となるように構成することができる。そして、第1バルブ43は、トルクコンバータ3の回転が停止すると、作動流体の流体圧が低下することによって、閉状態となる。例えば、第1バルブ43は、作動流体の流体圧が大気圧以下となると、閉状態となる。
【0073】
図5に示すように、第1バルブ43は、例えば、一方向弁とすることができる。第1バルブ43は、トルクコンバータ3から作動流体タンク9に向かう作動流体を通す一方で、作動流体タンク9からトルクコンバータ3に向かう作動流体を通さないように構成されている。
【0074】
第1バルブ43は、弁体431とバネ432とを有している。弁体431は、回収回路部41の流路を封鎖するように配置されている。バネ432は、弁体431を付勢している。具体的には、バネ432は、作動流体の流れ方向とは逆方向に向かって弁体431を付勢している。
【0075】
バネ432によって付勢された弁体431は、回収回路部41の流路を封鎖している。作動流体の流体圧が増加すると、作動流体が弁体431を押圧してバネ432の付勢力に抗して弁体431を移動させ、作動流体が流れるようになる。
【0076】
図1に示すように、第2バルブ44は、供給回路部42に設置されている。第2バルブ44は、トルクコンバータ3の回転時に開状態となり、トルクコンバータ3の停止時に閉状態となるように構成されている。
【0077】
第2バルブ44は、例えば第1バルブ43と同様に、一方向弁とすることができる。第2バルブ44は、作動流体タンク9からトルクコンバータ3に向かう作動流体を通す一方で、トルクコンバータ3から作動流体タンク9に向かう作動流体を通さないように構成されている。なお、第2バルブ44の構成は、第1バルブ43の構成と実質的に同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
[デファレンシャルギア]
図1に示すように、駆動ユニット100は、デファレンシャルギア109、及び一対のドライブシャフト110をさらに有している。デファレンシャルギア109は、減速機7からのトルクを一対の駆動輪101へと伝達するように構成されている。
【0079】
一対のドライブシャフト110は、デファレンシャルギア109から一対の駆動輪101へと延びている。ドライブシャフト110は、入力軸5と平行に延びている。また、ドライブシャフト110は、入力軸5に対してオフセットされて延びている。
【0080】
デファレンシャルギア109は、ドライブシャフト110が延びる方向において、一対の駆動輪101の間の中央部に配置されている。すなわち、一対のドライブシャフト110は、互いに同じ長さである。
【0081】
<駆動ユニット100の動作>
上述した駆動ユニット100は、電気モータ2のトルクが、トルクコンバータ3に伝達され、減速機7、デファレンシャルギア109、駆動輪101の順に伝達される。ここで、駆動ユニット100の作動時は、トルクコンバータ3が回転している。このため、トルクコンバータ3内の作動流体の流体圧によって、第1バルブ43及び第2バルブ44は開状態となり、作動流体は、循環回路4を介して循環する。
【0082】
一方、電気モータ2が停止すると、トルクコンバータ3の回転も停止する。このため、トルクコンバータ3内の作動流体の流体圧が低下し、第1バルブ43及び第2バルブ44は閉状態となる。この結果、トルクコンバータ3内の作動流体が外部へ抜けてしまうことを防止できる。したがって、再発進時において、トルクコンバータ3の作動応答遅れも抑制され、車両発進時の応答性の低下を抑制することができる。
【0083】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0084】
変形例1
図6に示すように、駆動ユニット100は、シール部材11、及びドレン回路12をさらに備えていてもよい。シール部材11は、固定軸104とトルクコンバータ3との間をシールしている。固定軸104は回転不能であり、トルクコンバータ3は回転可能である。このため、固定軸104は、トルクコンバータ3と相対的に回転する。
【0085】
ドレン回路12は、シール部材11を介してトルクコンバータ3から漏出した作動流体を回収するように構成されている。また、ドレン回路12は、作動流体タンク9に接続されている。このため、回収された作動流体は、作動流体タンク9へ供給される。
【0086】
ドレン回路12は、ドレンバルブ121を有している。ドレンバルブ121は、例えば、第1バルブ43と同様に、一方向弁とすることができる。ドレンバルブ121は、トルクコンバータ3から作動流体タンク9へ向かう作動流体のみを通すように構成されている。ドレンバルブ121は、シール部材11を介してトルクコンバータ3から漏出した作動流体が所定の圧力以上となると開状態となる。
【0087】
変形例2
図7に示すように、循環回路4は、流体ポンプ45を有していてもよい。流体ポンプ45は、供給回路部42に設置されている。第2バルブ44は、流体ポンプ45とトルクコンバータ3との間に配置される、すなわち、流体ポンプ45から吐出された作動流体は、第2バルブ44を経由してトルクコンバータ3へと供給される。
【0088】
変形例3
図8に示すように、循環回路4は、作動流体クーラ46を有していてもよい。作動流体クーラ46は、作動流体を冷却するように構成されている。作動流体クーラ46は、回収回路部41に設置されていてもよいし、供給回路部42に設置されていてもよい。作動流体クーラ46は、第1バルブ43又は第2バルブ44と作動流体タンク9との間に配置されている。
【0089】
変形例4
上記実施形態では、第1バルブ43及び第2バルブ44は一方向弁として構成されていたが、第1バルブ43及び第2バルブ44の構成はこれに限定されない。例えば、第1バルブ43及び第2バルブ44は、電磁弁であってもよい。この場合、例えば、駆動ユニット100は、マイクロコンピュータなどによって構成された制御部をさらに備える。制御部は、トルクコンバータ3が回転しているか否かを判断する。制御部は、トルクコンバータ3が回転していると判断すると、第1バルブ43及び第2バルブ44を開状態とする。一方、制御部は、トルクコンバータ3が回転していない、すなわちトルクコンバータ3が停止していると判断すると、第1バルブ43及び第2バルブ44を閉状態とする。
【符号の説明】
【0090】
100 駆動ユニット
2 電気モータ
3 トルクコンバータ
32 インペラ
33 タービン
37 遠心式ロックアップクラッチ
4 循環回廊
41 回収回路部
42 供給回路部
43 第1バルブ
44 第2バルブ
45 流体圧ポンプ
46 作動流体クーラ
9 作動流体タンク
11 シール部材
12 ドレン回路
104 固定軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8