(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】リゲリズマブを使用して慢性特発性蕁麻疹を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241118BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241118BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241118BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241118BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P17/04 ZNA
A61P37/08
C07K16/18
(21)【出願番号】P 2020551266
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2019052408
(87)【国際公開番号】W WO2019186369
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】セヴリン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジャノチャ,レイノルド マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ケーネ-ヴォス,ステファン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-507474(JP,A)
【文献】特表2007-524602(JP,A)
【文献】Clinical Trial Protocol [CQGE031 C2202 / NCT03437278] "A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2b dosefinding study to investigate the efficacy and safety of ligelizumab (QGE031) in adolescent patients with Chronic Spontaneous Urticaria (CSU)",2018年01月18日,p.1-85,Retrieved from the Internet: <URL:https://clinicaltrials.gov/ProvidedDocs/78/NCT03437278/Prot_000.pdf>
【文献】History of Change for Study:NCT03437278, [online], ClinicalTrials.gov archive, NCT ID:NCT03437278,2018年02月12日,[Retrieved on 2023-04-04],Retrieved from the internet:<URL: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT03437278?V_1=View#StudyPageTop>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片を含み、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法に使用するための医薬組成物であって、前記方法は、それを必要とする患者に、第0週中、約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含み、前記抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、
リゲリズマブ又はその抗原結合断片である、医薬組成物。
【請求項2】
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mgである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約72mgである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約120mgである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約240mgである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記患者は、第12週での発疹の完全奏効(発疹重症度スコア[HSS7]=0)又はUAS7=0並びに第4、12及び20週での皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)=0~1によって測定される持続した反応を達成する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片での治療前に、前記患者は、CSUのための全身性薬剤で以前に治療されており、
前記全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-AH及びロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)並びにその組み合わせからなる群から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記患者は、中等症~重症のCSUを有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リゲリズマブを使用して慢性特発性蕁麻疹を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蕁麻疹は、痒みのある発疹及び/又は血管浮腫を特徴とする不均一性の疾患群である。慢性蕁麻疹は、6週超にわたって継続的又は断続的に存在する蕁麻疹と定義される(Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.;Bernstein JA,Lang DM,Khan DA,et al(2014)The diagnosis and management of acute and chronic urticaria:2014 update.J Allergy Clin Immunol;133(5):1270-7)。また、慢性蕁麻疹は、2つのサブグループ:慢性特発性蕁麻疹(CSU)及び誘発型蕁麻疹(IU)(後者には、温熱蕁麻疹、寒冷蕁麻疹又は圧迫蕁麻疹などの物理性蕁麻疹及びコリン性蕁麻疹などの特殊な別形態が含まれる)にさらに分類される。CSUは、分かっている又は分かっていない原因に起因する、≧6週の痒みのある膨疹、血管浮腫又はその両方の特発的出現と定義される(Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)。無症候性の皮膚描記性蕁麻疹及びCSUの頻繁に観察される組み合わせなど、CSU及び誘発型の蕁麻疹の両方の組み合わせもあり得る。
【0003】
以前には、既知の誘発因子がない慢性蕁麻疹形態は、すべて「慢性の原因不明の蕁麻疹」(CIU)と命名されていた。医学の進歩のため、現在では、「原因不明の」蕁麻疹形態と以前にみなされていた形態のいくつかにおいて、実際に自己抗体を検出できることが公知である。しかし、自己抗体を伴うこの慢性蕁麻疹における症状の毎日の変動する様相は、依然として予測不可能なままであり、また実証可能な誘発因子によって誘発されず、そのため、症状は、特発的に見える。用語法において、以前の「原因不明の」形態のいくつかは、実際に検出可能な自己抗体を有する可能性があることを正確に反映させるために、国際的指針(Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.;Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)によれば、現在、この集団は、慢性特発性蕁麻疹(CSU)と称される。医事における表現「慢性の原因不明の蕁麻疹」の使用は、もはや推奨されない。しかし、この新しい命名規則は、世界のすべての地域で実行されているわけではなく、米国などの国では、非特異的病因を伴う又は誘発因子が不明である慢性蕁麻疹を有する患者集団は、依然として慢性の原因不明の蕁麻疹(CIU)と称される。一貫性を保つために、この疾患実体を、本明細書全体を通して国際的指針に従ってCSUと称する。
【0004】
CSUの生涯有病率は、およそ1.8%であり、CSU患者の20%は、20年後、依然としてこの疾患を有している(Greaves M(2000)Chronic urticaria.J Allergy Clin Immunol;105(4):664-72;Zuberbier T,Balke M,Worm M,et al(2010)Epidemiology of urticaria:a representative cross-sectional population survey.Clin Exp Dermatol;35(8):869-73)。罹患した患者は、関連する紅斑及び/又は血管浮腫のエピソードを伴う高頻度のそう痒性の発疹を経験する。血管浮腫は、CSU症例のおよそ33~67%と関連することが報告されている(Juhlin L(1981)Recurrent urticaria:clinical investigation of 330 patients.Br J Dermatol;104(4):369-81;Toubi E,Kessel A,Avshovich N,et al(2004)Clinical and laboratory parameters in predicting chronic urticaria duration:a prospective study of 139 patients.Allergy;59(8):869-73;Zuberbier T,Balke M,Worm M,et al(2010)Epidemiology of urticaria:a representative cross-sectional population survey.Clin Exp Dermatol;35(8):869-73;Maurer M,Weller K,Bindslev-Jensen C,et al(2011)Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria.A GA2LEN task force report.Allergy;66(3):317-30)。蕁麻疹における典型的な皮膚病変は、通常、集合体で生じ、多くの場合に合体して大きい集密的な病変を形成する、大きさが数ミリメートル~数センチメートル幅の範囲である、色の薄い隆起した病変及びその周りの紅斑を伴う膨疹及び発赤である。CSUは、激しいそう痒を伴い、患者の幸福及び生活の質に大きい影響を与え、それは、重度の冠状動脈疾患に匹敵することが示唆されている(Greaves MW(2003)Chronic idiopathic urticaria.Curr Opin Allergy Clin Immunol;3(5):363-8.Review;Powell RJ,Du Toit GL,Siddique N,et al(2007)BSACI guidelines for the management of chronic urticaria and angio-oedema.Clin Exp Allergy;37(5):631-50)。蕁麻疹及び蕁麻疹関連血管浮腫の症状は、日常活動及び睡眠に悪影響を与える(O’Donnell BF,Lawlor F,Simpson J,et al(1997).The impact of chronic urticaria on the quality of life.Br J Dermatol;136(2):197-201)。したがって、蕁麻疹を有する患者を管理する場合、患者関連アウトカム(例えば、DLQI)が治療の重要な尺度である(Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges;Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)。
【0005】
CSUの病因は、完全には明らかになっていない。CSU症例の最大50%は、高親和性IgE受容体(FcεRI)又はIgE抗体を含めた複数の抗原に対するヒスタミン遊離自己抗体を伴う。これらの自己抗体の臨床的意義は、不明であるが、これらが疾患原因に関与する可能性があることが示唆されている。(Kaplan AP(2002)Chronic urticaria--new concepts regarding pathogenesis and treatment.Curr Allergy Asthma Rep;2(4):263-4;Sabroe RA,Greaves MW(2006)Chronic idiopathic urticaria with functional autoantibodies:12 years on.Br J Dermatol;154(5):813-9.Review)。CSU患者の好塩基球は、自己抗体のあらゆる潜在的役割とは無関係に、FcεRIα媒介性の脱顆粒の明確な変化を有する可能性があることも示唆されている。(Eckman JA,Hamilton RG,Gober LM,et al(2008)Basophil phenotypes in chronic idiopathic urticaria in relation to disease activity and autoantibodies.J Invest Dermatol;128(8):1956-63)。
【0006】
CSUの治療は、課題であり、非鎮静型の(第二世代)H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)がCSUの対症療法の中心である。承認用量のH1-AHは、いくらかの患者について寛解をもたらすが、50%を超える患者は、常用量のH1-AHに反応しない。現在の国際的指針(Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)の治療アルゴリズムの第2ステップに従い、承認用量の4倍に用量増大を行った場合でも、かなりの部分の患者は、蕁麻疹症状のコントロールを経験しない(Maurer M,Weller K,Bindslev-Jensen C,et al(2011)Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria.A GA2LEN task force report.Allergy;66(3):317-30;Marrouche N,Grattan C(2014)Update and insights into treatment options for chronic spontaneous urticaria.Expert Rev Clin Immunol;10(3):397-403)。4倍用量のH1-AHで疾患コントロールを有しない患者について、国際的指針の治療アルゴリズムの第3ステップは、H1-AHへのオマリズマブ、又はシクロスポリンA、又はモンテルカストの追加を想定している。
【0007】
蕁麻疹におけるロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)の有効性についてのエビデンスレベルは、モンテルカストについて最良ではあるが、低く、したがってこの適応外の治療について専門家からの弱い推奨となるに過ぎない。増悪により必要となる場合、短期(最大10日)の全身性副腎皮質ステロイドを第3レベルの治療レジメンに追加することができる。慢性的な全身性副腎皮質ステロイド曝露と関連する有害作用が原因で、より長期間の治療は、得策ではない。静脈内免疫グロブリンG、ダプソン、ヒドロキシクロロキン、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、メトトレキサート及びシクロホスファミドなど、以前に使用された他の治療選択肢は、好都合でないベネフィット-リスクプロフィール又は有意な副作用プロフィールを有し、CSUの治療法についてもはや推奨されない(Kaplan AP(2002)Chronic urticaria--new concepts regarding pathogenesis and treatment.Curr Allergy Asthma Rep;2(4):263-4;Powell RJ,Du Toit GL,Siddique N,et al(2007)BSACI guidelines for the management of chronic urticaria and angio-oedema.Clin Exp Allergy;37(5):631-50;Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)。
【0008】
オマリズマブは、標準治療に抵抗性のCSUの治療のための承認された治療法であり、好都合なベネフィット-リスクプロフィールを呈する。オマリズマブは、IgE分子のC3(FcεRI結合)領域内のIgE特異的エピトープに結合する組換え型のヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、多くの国では、標準の治療法に抵抗性のコントロール不良の中等症又は重症の喘息及びCSUの治療について示されている。完了した第2相及び第3相研究は、オマリズマブが、H1-AHでの治療に失敗したCSUを有する患者並びにH1及びH2-AHとロイコトリエン受容体アンタゴニストとの組み合わせでの治療に失敗した患者における蕁麻疹(例えば、痒み、発疹)の徴候及び症状を改善することを実証している(Gober MD,Fishelevich R,Zhao Y,et al(2008)Human natural killer T cells infiltrate into the skin at elicitation sites of allergic contact dermatitis.J Invest Dermatol;128(6):1460-9;Kaplan AP,Joseph K,Maykut RJ,et al(2008)Treatment of chronic autoimmune urticaria with omalizumab.J Allergy Clin Immunol;122(3):569-73;Kaplan AP,Joseph K,Maykut RJ,et al(2008)Treatment of chronic autoimmune urticaria with omalizumab.J Allergy Clin Immunol;122(3):569-73;Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges)。オマリズマブ第3相研究(Q4882g)からの公開されたデータでは、オマリズマブが、プラセボと比較して、150mg又は300mgの毎月用量を用いて、用量依存的にCSUの臨床症状(例えば、痒み、発疹)を安全に改善する(75mg用量では改善しない)ことが実証された(Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.)。主要評価項目、すなわち第12週での週間痒み重症度スコアのベースラインからの平均(±SD)変化は、プラセボ群では-5.1±5.6、75mg群では-5.9±6.5(P=0.46)、150mg群では-8.1±6.4(P=0.001)及び300mg群では-9.8±6.0(P<0.001)であり、すべてのあらかじめ指定された副次的評価項目(例えば、UAS7のベースラインからの変化、発疹数についての週間スコア、UAS7≦6を有する患者の割合)は、用量反応性であった。オマリズマブがどのようにCSU患者に作用するかについての厳密な機構は、不明である。
【0009】
QGE031(リゲリズマブ)は、オマリズマブよりも高い親和性でヒト免疫グロブリンE(IgE)に結合するヒト化モノクローナル抗体である。QGE031は、結合すると、IgEと、高及び低親和性のIgE受容体の両方(FcεRI及びFcεRII)との相互作用を遮断することができる。QGE031は、IgE受容体の架橋、したがってヒスタミン遊離を媒介することができない(すなわち非アナフィラキシー誘発性)。患者がQGE031を受ける場合、循環IgEは、抗IgE抗体によって急速に結合され、マスト細胞及び好塩基球上のIgE受容体に到達できなくなる。IgEは、アトピー患者に見られるFcεRIの発現亢進に必要であり、循環好塩基球上のFcεRI発現の低下がQGE031治療に付随する。抗IgE療法からの他の潜在的に有益な効果には、IgE産生の減少、B細胞数の減少及びT細胞によるサイトカイン産生の低下が含まれる。
【0010】
QGE031は、遊離IgE、好塩基球FcεRI、好塩基球表面IgEの用量及び時間依存性の抑制並びにアレルゲンに対するオマリズマブで観察されるものよりも程度及び期間において優れた皮膚プリックテスト反応を示した。オマリズマブと比較して優れたQGE031の親和性及び薬力学的(PD)転帰は、CSUを有する患者における優れた用法用量及び優れた臨床的有効性に翻訳することができる(
図2を参照されたい)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ここで、非常に有効であり且つCSU患者に持続した反応を提供する、リゲリズマブ又はその抗原結合断片でCSU患者を治療するためのレジメンを考案した。したがって、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、第0週中、約24mg~約240mgの用量のリゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含み、リゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片は、配列番号62として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメイと、配列番号1として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む、方法が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】様々な治療群(プラセボ、24、72、240mg QGE031、300mgゾレア(Xolair)/オマリズマブ)並びに様々なバイオマーカー及び皮膚プリックテスト結果に関するB2203の個々の患者データを示すパネルである。IgEレベル>250IU/mlを有する患者は、三角形の記号をつなぐ破線で示す。表示「FceR1」及び「sIgE」は、好塩基球Fcイプシロン受容体(1型)及び表面結合型IgEであり;単位は、可溶性蛍光色素分子当量(MESF)である。「膨疹」は、皮膚プリックテストにおける、アレルゲンによって誘発された膨疹の大きさを指す。これは、統計分布を正確に表すために開平目盛でプロットされたすべての希釈物からのデータの合計である。
【
図3】皮膚プリックテストの膨疹部についての、QGE031について予測される用量反応曲線を示す。24mg用量は、可能な最大反応の50~70%を達成することが予測された。患者集団の中央の50%についての反応の範囲は、非常に小さい値から高い値にわたるが、最大反応に至らない。72mgの用量は、推定するところ、用量反応曲線の直線領域と飽和領域との間の移行部に近かったのに対して、240mgは、最大有効性を達成することが期待された。したがって、24mgは、最小有効用量ではなく、オマリズマブと同程度であることが期待される「最適以下の用量」に相当する。オマリズマブ300mg(q4w)は、QGE031 72mg(q4w)をわずかに下回る反応を与えることが予測される。
【
図4】ベースラインからのUAS7変化に対する、24、72及び240mgの反復投与及び単回の120mg用量のQGE031の効果を示す。x軸は、時間(週)であり、y軸は、ベースラインからのUAS7変化であり、影付きの帯域は、80%信頼区間である。最初の4~6週について、72、120又は240mg QGE031に対する患者の反応間に有意差が存在しないことが分かる。24mgの用量のみ、より低い有効性を示すが、この用量のQGE031でさえ対照のプラセボ治療よりも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
QGE031としても公知であるリゲリズマブは、各上側アームの末端に抗原結合部位を有する概してY字型の四量体分子である。抗原結合部位は、重鎖(VH)の可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)と、軽鎖(VL)の可変領域の3つのCDRとによって形成される。VHとVLとの両方において、CDRは、4つのフレームワーク領域(FR)と交互に並んでおり、一般式FR1-CDR1-FR2-a CDR2-FR3-CDR3-FR4のポリペプチド鎖を形成する。リゲリズマブは、米国特許第7,531,169号明細書にMab 2(CL-2C)として開示されており、配列番号61及び62によって定義されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0014】
定義
用語「含むこと」は、「含まれること」及び「からなること」を包含し、例えば、X「を含む」組成物は、専らXのみからなり得るか、又は何らかの追加のものを含み得る(例えば、X+Y)。
【0015】
数値xに関する用語「約」は、例えば、+/-10%を意味する。数値範囲又は数の列挙の前に使用される場合、用語「約」は、系列内のそれぞれの数に適用される。例えば、表現「約1~5」は、「約1~約5」と解釈されるべきであるか、又は例えば、表現「約1、2、3、4」は、「約1、約2、約3、約4など」と解釈されるべきである。
【0016】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない可能性がある。必要に応じて、単語「実質的に」は、本開示の定義から省くことができる。
【0017】
本明細書で言及される用語「抗体」には、天然起源の完全な抗体が含まれる。天然起源の「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存される領域に割り込まれた、高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDR)と称される高頻度可変性の領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。例示的な抗体としては、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれるリゲリズマブ抗体(米国特許第7,531,169号明細書)が挙げられる。
【0018】
抗体の用語「抗原結合断片」は、本明細書で使用する場合、抗原(例えば、IgE)と特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、すなわちVL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片;F(ab)2断片、すなわちヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;VH及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);並びに単離されたCDRが挙げられる。例示的な抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを有するリゲリズマブのCDRを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、抗体は、IgEに特異的に結合する)。
【0019】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別の遺伝子によってコードされるが、これらが単一のタンパク質鎖(ここで、VL領域とVH領域とが対合して、一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)を形成する)として振る舞うことを可能にする合成のリンカーにより、組換え方法を使用してこれらを連結することができる。こうした一本鎖抗体も用語「抗体」に包含されることが意図される。一本鎖抗体及び抗原結合部分は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られる。
【0020】
「単離された抗体」は、本明細書で使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、IgEと特異的に結合する単離された抗体は、IgE以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。本明細書で使用する場合の用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製を指す。用語「ヒト抗体」には、本明細書で使用する場合、そのフレームワークもCDR領域もヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれることが意図される。「ヒト抗体」は、ヒト、ヒト組織又はヒト細胞によって産生される必要はない。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発により、抗体遺伝子の組換え中のインビボでのジャンクションでのN-ヌクレオチド付加により又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を含むことができる。開示したプロセス及び組成物のいくつかの実施形態では、IgE抗体は、ヒト抗体、単離された抗体及び/又はモノクローナル抗体である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「抗ヒトIgE抗体」は、高親和性受容体、FcεRIへのこうしたIgEの結合を阻害するか又は実質的に低下させるような方式でヒトIgEに結合する抗体を意味する。
【0022】
用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体と抗原との間の相互作用の強さを指す。各抗原部位内では、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位で弱い非共有結合性の力を通じて抗原と相互作用し、相互作用が多いほど親和性が強くなる。様々な種のIgEに対する抗体の結合親和性を評価するための標準のアッセイは、例えば、ELISA、ウエスタンブロット及びRIAを含めて、当技術分野で公知である。抗体の結合動態(例えば、結合親和性)は、当技術分野で公知のアッセイによって評価することもできる。例えば、KDは、Biacore(登録商標)分析を使用して決定することができる。
【0023】
当技術分野で公知の方法論に従って決定され、且つ本明細書に記載した1つ又は複数のIgE機能特性(例えば、生化学的、免疫化学的、細胞、生理学的又は他の生物学的活性など)を「阻害する」抗体は、抗体の非存在下で(又は無関係の特異性の対照抗体が存在する場合に)見られるものに対する、その特定の活性の統計的に有意な低下と関連することが理解されるであろう。IgE活性を阻害する抗体は、例えば、測定されるパラメータの少なくとも約10%、少なくとも50%、80%又は90%の統計的に有意な低下をもたらし、開示した方法及び組成物のある種の実施形態では、使用されるIgE抗体は、95%、98%又は99%を超えるIgE機能活性を阻害することができる。
【0024】
用語「誘導体」は、他に指示されない限り、本開示による、例えば特定の配列(例えば、可変ドメイン)、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズのアミノ酸配列変異体及び共有結合的修飾(例えば、ペグ化、脱アミド、ヒドロキシル化、リン酸化、メチル化など)を定義するために使用される。「機能性誘導体」には、開示したIgE抗体と共通した定性的生物学的活性を有する分子が含まれる。機能性誘導体には、本明細書に開示したIgE抗体の断片及びペプチド類似体が含まれる。断片は、本開示による、例えば特定の配列のポリペプチドの配列内の領域を含む。本明細書に開示したIgE抗体の機能性誘導体(例えば、リゲリズマズの機能性誘導体)は、本明細書に開示したIGE抗体及びその抗原結合断片のVH及び/又はVL配列と少なくとも約65%、75%、85%、95%、96%、97%、98%、さらに99%の全体的な配列同一性を有するVH及び/又はVLドメインを含み、ヒトIgEと結合する能力を実質的に保持することが好ましい。
【0025】
表現「実質的に同一な」は、関連するアミノ酸又はヌクレオチド配列(例えば、VH又はVLドメイン)が、特定の基準配列と比較して同一となるか、又は(例えば、アミノ酸の保存的置換による)実質的ではない違いを有することを意味する。実質的ではない違いには、特定の領域(例えば、VH又はVLドメイン)の5アミノ酸の配列における1又は2個の置換などのわずかなアミノ酸変化が含まれる。抗体の場合、第2の抗体は、同じ特異性を有し、且つ少なくとも50%の親和性を有する。本明細書に開示した配列に対して実質的に同一な配列(例えば、少なくとも約85%の配列同一性)も本出願の一部である。いくつかの実施形態では、誘導体のIgE抗体(例えば、リゲリズマズ、例えばリゲリズマズバイオシミラー抗体)の配列同一性は、開示した配列に対して約90%以上、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上である可能性がある。
【0026】
天然のポリペプチド及びその機能性誘導体に関する「同一性」は、本明細書では、最大のパーセント同一性を得るために、必要に応じて配列を整列し、ギャップを導入した後の、対応する天然のポリペプチドの残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合と定義され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなされない。N又はC末端伸長部も挿入も同一性を低下させると解釈されないものとする。アラインメントのための方法及びコンピュータプログラムは、知られている。パーセント同一性は、標準のアラインメントアルゴリズム、例えばAltshul et al.((1990)J.Mol.Biol.,215:403 410)によって記載されているBasic Local Alignment Search Tool(BLAST);Needleman et al.((1970)J.Mol.Biol.,48:444 453)のアルゴリズム;又はMeyers et al.((1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11 17)のアルゴリズムによって決定することができる。一連のパラメータは、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ及び5のフレームシフトギャップペナルティを伴うBlosum 62スコア行列であり得る。2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120重み剰余テーブル、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller((1989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定することもできる。
【0027】
「アミノ酸」は、すべての天然起源のL-α-アミノ酸を指し、例えばD-アミノ酸が含まれる。表現「アミノ酸配列変異体」は、本開示による配列と比較するとそのアミノ酸配列がいくらか違う分子を指す。例えば、特定の配列の、本開示による抗体のアミノ酸配列変異体は、ヒトIgEと結合する能力を依然として有する。アミノ酸配列変異体には、置換変異体(本開示によるポリペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、代わりに同じ位置に別のアミノ酸が挿入されたもの)、挿入変異体(本開示によるポリペプチド内の特定の位置のアミノ酸の直接隣に1つ又は複数のアミノ酸が挿入されたもの)及び欠失変異体(本開示によるポリペプチド内の1つ又は複数のアミノ酸が除去されたもの)が含まれる。
【0028】
用語「薬学的に許容し得る」は、活性成分の生物学的活性の有効性を邪魔しない非毒性の材料を意味する。
【0029】
ある化合物、例えばIgE結合分子又は別の薬剤に関する用語「投与すること」は、その化合物の、あらゆる経路による患者への送達を指すために使用される。
【0030】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」は、患者(ヒトなど)への単一用量又は反復用量投与時、障害又は再発性の障害の少なくとも1つの症状を治療するか、予防するか(該当する場合)、発症を予防するか(該当する場合)、治癒させるか、遅らせるか、重症度を低下させるか、回復させるか、又は患者の生存をこうした治療が存在しない場合に予測される生存よりも延長させるのに有効である、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)の量を指す。単独で投与される個々の活性成分(例えば、IgEアンタゴニスト、例えばリゲリズマズ)に適用される場合、この用語は、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み合わせで、連続的に又は同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の合わせた量を指す。
【0031】
用語「治療」又は「治療する」は、本明細書では、本開示によるIgE抗体、例えばリゲリズマズ又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の、対象への又は対象由来の単離された組織若しくは細胞株への適用又は投与(ここで、対象は、特定の疾患(例えば、CSU)、その疾患(例えば、CSU)に随伴する症状又はその疾患(例えば、CSU)の発症の素因(該当する場合)を有し、その目的は、疾患の1つ又は複数の症状を治癒させる(該当する場合)か、開始を遅らせるか、重症度を低下させるか、軽減するか、回復するか、疾患を改善するか、疾患のあらゆる随伴症状又は疾患の発症の素因を低下させるか又は改善することである)と定義される。用語「治療」又は「治療する」には、疾患を有することが疑われる患者及び病気であるか又は疾患若しくは医学的状態を患っていると診断されている患者を治療することが含まれ、また臨床的再発の抑制が含まれる。
【0032】
本明細書で使用する場合、表現「患者の集団」は、患者の群を意味するために使用される。開示した方法のいくつかの実施形態では、IgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブなどのIgE抗体)は、CSU患者の集団を治療するために使用される。
【0033】
本明細書で使用する場合、表現「CSUのための全身治療で以前に治療されていない」及び「受けていない」は、CSUのための全身性薬剤、例えばシクロスポリンA、モンテルカスト、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-AH及びロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)、生物製剤(例えば、オマリズマブ)などで以前に治療されていないCSU患者を指す。全身性薬剤(すなわち経口的に与えられる薬剤、注射によって与えられる薬剤など)は、全身性薬剤が患者に送達された場合に全身(体全体)への効果を与える点で局所的薬剤(例えば、外用薬及び光線療法)と異なる。開示した方法、レジメン、使用、キット及び医薬組成物のいくつかの実施形態では、患者は、CSUのための全身治療を以前に施されていない。
【0034】
本明細書で使用する場合、表現「CSUのための全身性薬剤で以前に治療されている」は、全身性薬剤を使用するCSU治療を以前に受けている患者を意味するために使用される。こうした患者には、オマリズマブなどの生物製剤で以前に治療された患者及びシクロスポリンなどの非生物製剤で以前に治療された患者が含まれる。本開示のいくつかの実施形態では、患者は、CSUのための全身性薬剤を以前に投与されている。いくつかの実施形態では、患者は、CSUのための全身性薬剤(例えば、シクロスポリン)を以前に投与されているが、この患者は、CSUのための全身性の生物学的薬物(すなわち生きている生物によって産生される薬物、例えば抗体、受容体デコイなど)(例えば、オマリズマブ)を以前に投与されていない。この場合、患者は、「生物製剤を受けていない」と称される。いくつかの実施形態では、患者は、生物製剤を受けていない。
【0035】
本明細書で使用する場合、患者に関する「選択すること」及び「選択される」は、特定の患者が、その特定の患者があらかじめ定められた基準を有することに基づいて(に起因して)、患者のより大きい群から個々に選択されることを意味するために使用される。同様に、「選択的に治療すること」は、特定の疾患を有する患者(ここで、患者は、その特定の患者があらかじめ定められた基準を有することに基づいて個々に選択される)に治療を提供することを指す。同様に、「選択的に投与すること」は、その特定の患者があらかじめ定められた基準を有することに基づいて(に起因して)、患者のより大きい群から個々に選択された患者に薬物を投与することを指す。選択すること、選択的に治療すること及び選択的に投与することは、患者が、より大きい群内の患者の帰属のみに基づく標準の治療レジメンを送達されるのではなく、患者の個別の病歴(例えば、以前の治療介入、例えば生物製剤での以前の治療)、生物学(例えば、特定の遺伝子マーカー)及び/又は徴候(例えば、特定の診断基準を満たさないこと)に基づく個別化治療を送達されることを意味する。本明細書で使用される治療の方法に関する選択することは、特定の基準を有する患者の好運な治療を指すのではなく、患者が特定の基準を有することに基づいて患者に治療を施すという意図的な選択を指す。したがって、選択的な治療/投与は、特定の疾患を有するすべての患者にその個別の病歴、疾患の徴候及び/又は生物学にかかわらず特定の薬物を送達する標準の治療/投与と異なる。いくつかの実施形態では、患者は、CSUを有することに基づいて治療について選択された。
【0036】
IgEアンタゴニスト
開示した様々なプロセス、キット、使用及び方法は、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、可溶性IgE受容体、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)を利用する。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニストは、IgE結合分子、好ましくはIgE抗体又はその抗原結合断片である。
【0037】
一実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0038】
一実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0039】
代わりに、開示した方法に使用されるIgE抗体又はその抗原結合断片は、配列によって本明細書に記述されるIgE抗体の誘導体(例えば、ペグ化変異体、グリコシル化変異体、親和性成熟変異体など)を含むことができる。代わりに、開示した方法に使用されるIgE抗体又はその抗原結合断片のVH又はVLドメインは、本明細書に記述されるVH又はVLドメインと実質的に同一であるVH又はVLドメイン(例えば、配列番号2及び61に記述されるもの)を有することができる。本明細書に開示したヒトIgE抗体は、配列番号2として記述されるものと実質的に同一である重鎖及び/又は配列番号1として記述されるものと実質的に同一である軽鎖を含むことができる。本明細書に開示したヒトIgE抗体は、配列番号2を含む重鎖及び配列番号1を含む軽鎖を含むことができる。
【0040】
開示した方法に使用される特に好ましいIgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、特にその内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,531,169号明細書の実施例10の表2に記載されているリゲリズマブである。
【0041】
CSUのための治療の方法及びIgEアンタゴニストの使用
開示したIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、インビトロ、エクスビボで使用するか、又は医薬組成物に組み込み、インビボで投与して、CSU患者(例えば、ヒト患者)を治療することができる。
【0042】
蕁麻疹は、痒みのある発疹及び/又は血管浮腫を特徴とする不均一性の疾患群である。
【0043】
慢性蕁麻疹は、6週超にわたって継続的又は断続的に存在する蕁麻疹と定義される(Maurer,et al 2013、Bernstein,et al 2014)。また、慢性蕁麻疹は、2つのサブグループ:慢性特発性蕁麻疹(CSU)及び誘発型蕁麻疹(IU)(後者には、温熱蕁麻疹、寒冷蕁麻疹又は圧迫蕁麻疹などの物理性蕁麻疹及びコリン性蕁麻疹などの特殊な別形態が含まれる)にさらに分類される。CSUは、分かっている又は分かっていない原因に起因する、≧6週の痒みのある膨疹、血管浮腫又はその両方の特発的出現と定義される(Zuberbier,et al 2014)。無症候性の皮膚描記性蕁麻疹及びCSUの頻繁に観察される組み合わせなど、CSU及び誘発型の蕁麻疹の両方の組み合わせもあり得る。
【0044】
CSU治療の有効性は、CSU病態及び/又はCSU臨床反応を測定する様々な公知の方法及び手段を使用して評価することができる。いくつかの例としては、例えば、週間発疹重症度スコア(HSS7)、週間痒み重症度スコア(ISS7)及び週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、患者は、特許請求される方法に従い、少なくとも20週、少なくとも48週、少なくとも52週又は少なくとも2年間にわたってHSについて治療される。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者は、従来の全身的CSU治療法に対する不適切な反応を以前に示していた。
【0047】
いくつかの実施形態では、患者は、中等症~重症のCSUを有する青年期の患者(≧12歳)である。いくつかの実施形態では、患者は、中等症~重症のCSUを有する成人の患者である。
【0048】
いくつかの実施形態では、特許請求される方法に従う治療に反応して、患者は、初回投薬の早ければ1週後、HSS7スコア付けによって測定される発疹の迅速な軽減を経験する。
【0049】
IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)は、薬学的に許容し得る担体と組み合わせた場合、医薬組成物として使用することができる。こうした組成物は、IgEアンタゴニストに加えて、担体、種々の希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤及び当技術分野で知られている他の材料を含有することができる。担体の特性は、投与経路に依存する。開示した方法に使用するための医薬組成物は、標的とされる特定の障害の治療のための追加の治療薬も含有することができる。例えば、医薬組成物は、抗炎症剤又は痒み止め剤も含むことができる。医薬組成物中にこうした追加の因子及び/又は薬剤を含めて、IgE結合分子との相乗効果を生じるか、又はIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)によって引き起こされる副作用を最小限にすることができる。好ましい実施形態では、開示した方法に使用するための医薬組成物は、120mg/mlのリゲリズマブを含む。
【0050】
開示した方法に使用するための医薬組成物は、従来の方式で製造することができる。一実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥形態で提供される。即時投与のために、これは、好適な水性の担体、例えば注射のための滅菌水又は滅菌した緩衝生理食塩水に溶解される。ボーラス注射ではない注入による投与のためのより大きい体積の溶液を構成することが望ましいと考えられる場合、製剤時、ヒト血清アルブミン又は患者自身のヘパリン処理した血液を生理食塩水に組み込むことが好都合である可能性がある。過剰量のこうした生理学的に不活性なタンパク質の存在は、注入溶液と共に使用される容器及び管の壁への吸着による抗体の喪失を予防する。アルブミンが使用される場合、好適な濃度は、生理食塩溶液の重量に対して0.5~4.5%である。他の製剤は、例えば、バイアル、シリンジ、自己注射器などに配分することができる、直ちに使用できる液体製剤を含む。
【0051】
抗体、例えばIgEに対する抗体は、典型的には、直ちに非経口投与可能な水性の形態において又は投与前の好適な希釈剤での再構成のための凍結乾燥物として製剤化される。開示した方法及び使用の好ましい実施形態では、IgEアンタゴニスト、例えばIgE抗体、例えばリゲリズマブは、直ちに使用できる液体医薬製剤として製剤化される。開示した方法及び使用のいくつかの実施形態では、IgEアンタゴニスト、例えばIgE抗体、例えばリゲリズマズは、凍結乾燥物として製剤化される。好適な凍結乾燥物製剤は、皮下投与を可能にするために小体積の液体(例えば、2ml以下、例えば2mL、1mLなど)に再構成することができ、低レベルの抗体凝集を伴う溶液を提供することができる。医薬の活性成分としての抗体の使用は、HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)、RITUXAN(商標)(リツキシマブ)、SYNAGIS(商標)(パリビズマブ)という製品などを含めて、現在、広く普及している。医薬グレードへの抗体の精製のための技術は、当技術分野で知られている。治療有効量のIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)が静脈内、皮膚又は皮下注射によって投与される場合、IgEアンタゴニストは、パイロジェンフリーの非経口的に許容し得る溶液の形態となるであろう。静脈内、皮膚又は皮下注射のための医薬組成物は、IgEアンタゴニストに加えて、塩化ナトリウム、リンゲル液、デキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液などの等張性ビヒクル又は当技術分野で公知の他のビヒクルを含有することができる。
【0052】
本開示の治療又は使用の方法のいくつかを実施する際、治療有効量のIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)が患者、例えば哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。開示した方法は、IgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマズ)を使用してCSU患者の治療を提供することが理解されるが、これは、患者が最終的にIgEアンタゴニストで治療される場合、こうしたIgEアンタゴニスト療法が必然的に単剤療法であることを排除しない。実際、患者がIgEアンタゴニストでの治療について選択される場合、IgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブ)は、本開示の方法に従い、単独で又はCSU患者を治療するための他の薬剤及び治療法と組み合わせて、例えば少なくとも1種の追加のCSU薬剤と組み合わせて投与することができる。1種以上の追加のCSU薬剤と共投与される場合、IgEアンタゴニストは、他の薬剤と同時に又は連続的に投与することができる。連続的に投与される場合、担当する医師は、他の薬剤と組み合わせてIgEアンタゴニストを投与する適切な順序及び共送達のための適切な投薬量を決定することになる。
【0053】
様々な治療法を、CSUの治療中のリゲリズマブなどの開示したIgE抗体と有益に組み合わせることができる。こうした治療法には、局所的治療(クリーム[非ステロイド性又はステロイド性]、洗浄剤、消毒剤)、全身治療(例えば、生物製剤、抗生物質又は化学的実体を用いる)並びに消毒剤、光線力学療法及び外科的介入(レーザー、排膿又は切開、切除)が含まれる。
【0054】
リゲリズマブなどの開示したIgE抗体と共に使用するための局所用CSU薬剤の非限定的な例としては、過酸化ベンゾイル、外用ステロイドクリーム、アミノグリコシド系の外用抗生物質、例えばクリンダマイシン、ゲンタマイシン及びエリスロマイシンなど、レゾルシノールクリーム、ヨードスクラブ及びクロルヘキシジンが挙げられる。
【0055】
リゲリズマブなどの開示したIgE抗体と共に使用するための全身治療に使用されるCSU薬剤の非限定的な例としては、IgEアンタゴニスト(オマリズマブ)がさらに挙げられる。
【0056】
CSUの治療中のリゲリズマブなどの開示したIgE抗体と組み合わせた使用のための追加のCSU薬剤としては、シクロスポリン及び副腎皮質ステロイド(注射用又は経口用)が挙げられる。
【0057】
当業者は、リゲリズマブなどの開示したIgE抗体との共送達のための、上述のCSU薬剤の適切な投薬量を認識することができるであろう。
【0058】
IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、好都合には、非経口的に、例えば静脈内に(例えば、肘前他の末梢静脈に)、筋肉内に又は皮下に投与される。本開示の医薬組成物を使用する静脈内(IV)療法の期間は、治療される疾患及び状態の重症度並びにそれぞれ個々の患者の個別の反応に応じて変動する。企図されるのは、本開示の医薬組成物を使用する皮下(SC)療法でもある。医療提供者は、本開示の医薬組成物を使用する、IV又はSC療法の適切な期間及びこの療法の投与のタイミングを決定する。好ましい実施形態では、IgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブ)は、皮下(SC)経路を介して投与される。
【0059】
IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、第0及び4週に開始して、4週ごとに患者に静脈内(SC)投与し、且つその後、例えば第4週中に開始して、4週ごとに約24mg~約240mg(例えば、約24mg、約240mg)で患者にSC投与することができる。この方式では、患者は、第0、4、8、12、16週などの間、SC投与を受ける。
【0060】
代わりに、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、第0週に開始して、4週ごとに患者に皮下(SC)投与し、且つその後、例えば第4週中に開始して、4週ごとに約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約240mg)で患者にSC投与することができる。この方式では、患者は、第0、4、8、12週などの間、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg)のIgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブ)をSC投与される。
【0061】
好ましくは、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、第0週に開始して、4週ごとに患者に皮下(SC)投与し、且つその後、例えば第4週中に開始して、4週ごとに約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg)で患者にSC投与することができる。この方式では、患者は、第0、4、8、12、16、20週などの間、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg)のIgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブ)をSC投与される。
【0062】
より好ましくは、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、負荷レジメンを伴わずに患者に投与することができる。例えば、このアンタゴニストは、4週ごとに約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg)で患者にSC投与することができる。この方式では、患者は、第0、4、8、12週などの間、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(例えば、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg)のIgEアンタゴニスト(例えば、リゲリズマブ)をSC投与される。
【0063】
ある種の患者、例えば治療の第12週、第16週、第20週、第24週、第48週又は第52週までにIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)での治療に対して(例えば、本明細書に開示したCSUスコア付けシステムのいずれか、例えば先の特許請求の範囲のいずれかに記載の方法などによって測定された場合(ここで、前記患者は、発疹の完全奏効(発疹重症度スコア[HSS7])、UAS7及び皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)などによって測定される持続した反応を達成する)、不十分な反応を呈するCSU患者にとって、用量漸増が必要とされる可能性があることが理解されるであろう。ある種の患者、例えばIgEアンタゴニスト(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)での治療に対する有害事象又は有害反応を呈するCSU患者にとって、用量低下が必要とされる可能性もあることも理解されるであろう。したがって、IgEアンタゴニスト(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)の投薬量は、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(SC)よりも小さい可能性がある。いくつかの実施形態では、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE受容体抗体又はその抗原結合断片)は、約24mg、約72mg、約120mg~約240mg(SC送達)の初回用量で患者に投与することができ、この用量は、その後、医師によって決定される通り、必要に応じて約72mg(元々24mg用量の場合)又は約240mg(元々120mg用量の場合)に漸増される。
【0064】
投薬のタイミングは、一般に、リゲリズマブの最初の投与の日(「ベースライン」としても公知である)から測定される。しかし、医療提供者は、多くの場合、表1に示す通りの投薬スケジュールを明確にするための異なる命名規則を使用する。
【0065】
【0066】
特に、第0週は、医療提供者によって第1週とみなされる可能性がある一方、第0日は、医療提供者によって第1日とみなされる可能性がある。したがって、異なる医師は、同じ投薬スケジュールを指すのに、例えばある用量が第4週中/第28日、第4週中/第29日、第4週中/第28日、第4週中/第29日に与えられると称することになる可能性がある。一貫性を保つために、投薬の最初の週は、本明細書では、第0週とみなすこととするのに対して、投薬の最初の日は、第1日とみなすこととする。しかし、この命名規則は、単に一貫性を保つために使用され、限定的なものと解釈されるべきではなく、すなわち医師が特定の週を「第0週」と呼ぶか又は「第1週」と呼ぶかにかかわらず、毎週の投薬は、IgE抗体の毎週の用量の規定であることが当業者によって理解されるであろう。
【0067】
ある投薬レジメンでは、抗体は、第0、4、8、12、16、20週などの間に投与される。提供者によっては、このレジメンを毎月の投薬(又は4週毎の投薬)と称する可能性もある。第0週での注射、それに続く第4週に開始する月1回の投薬を患者に施すことは、以下と同じであることが当業者によって理解されるであろう:1)第0及び4週での注射、それに続く第8週に開始する月1回の投薬を患者に施すこと;2)第0及び4週での注射、それに続く4週毎の投薬を患者に施すこと;及び3)第0及び4週での注射、それに続く毎月の投与を患者に施すこと。
【0068】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の[投与経路]送達を可能にするための投薬量で製剤化される」は、所与の医薬組成物が、指定された投与経路(例えば、SC又はIV)を介して、所望される用量のIgEアンタゴニスト、例えばIgE抗体、例えばリゲリズマズを提供するために使用できることを意味するために使用される。一例として、所望されるSCが240mgである場合、臨床医は、120mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤の2ml、240mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤の1ml、480mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤の0.5mlなどを使用することができる。こうした各場合において、これらのIgE抗体製剤は、IgE抗体の皮下送達を可能にするのに十分に高い濃度である。皮下送達は、典型的には、約2ml以下の体積、好ましくは約1ml以下の体積の送達を必要とする。好ましい製剤は、緩衝剤としてのL-ヒスチジン/塩酸L-ヒスチジン一水和物、安定剤/張度調整剤としてのトレハロース無水物及び界面活性剤としてのポリソルベート20を含有する水溶液中に約24mg/mL~約120mg/mLのリゲリズマブを含む、直ちに使用できる液体医薬組成物である。
【0069】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の送達を可能にするのに十分な量のIgEアンタゴニストを有する容器」は、所与の容器(例えば、バイアル、ペン、シリンジ)が、所望される用量を提供するために使用することができる、(例えば、医薬組成物の一部としての)ある体積のIgEアンタゴニストをその中に配置していることを意味するために使用される。一例として、所望される用量が240mgである場合、臨床医は、120mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤を含有する容器からの2ml、240mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤を含有する容器からの1ml、480mg/mlの濃度を有するIgE抗体製剤を含有する容器からの0.5mlなどを使用することができる。こうした各場合において、これらの容器は、所望される240mg用量の送達を可能にするのに十分な量のIgEアンタゴニストを有する。
【0070】
開示した使用、方法及びキットのいくつかの実施形態では、IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片の用量は、約240mgであり、IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、120mg/mlの濃度で液体医薬製剤中に含まれ、2mlの医薬製剤は、2本のプレフィルドシリンジ(PFS)、ペン型注射器又は自己注射器(それぞれ1mlの医薬製剤を有する)に配分される。この場合、患者は、各投与中、240mgの総用量についてそれぞれ1mlの2回の注射を受ける。いくつかの実施形態では、IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片の用量は、約240mgであり、IgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片は、120mg/mlの濃度で液体医薬製剤中に含まれ、2mlの医薬製剤は、自己注射器又はPFSに配分される。この場合、患者は、各投与中、240mgの総用量について2mlの1回の注射を受ける。2mlの1回の注射を用いる(例えば、単一のPFS又は自己注射器を介する)方法(すなわち「単回投与調製物」)では、薬物曝露(AUC)及び最大濃度(Cmax)は、1mlの2回の注射を用いる(例えば、2本のPFS又は2本のAIを介する)方法(すなわち「反復投与調製物」)と等しい(同様である、すなわち米国FDA標準による許容変動の範囲内である)。
【0071】
慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、a)第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む方法が本明細書に開示される。それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む、CSUを治療するのに使用するためのIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片も本明細書に開示される。代わりに、それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む、CSUを治療するための医薬品の製造に使用するためのIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片が本明細書に開示される。
【0072】
慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、a)第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む方法が本明細書に開示され、ここで、IgE抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0073】
それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む、CSUを治療するのに使用するためのIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片も本明細書に開示され、ここで、IgE抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号1として記述されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0074】
それを必要とする患者に、第0週中、毎週約24mg~約240mgの用量のIgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含む、CSUを治療するのに使用するためのIgE抗体(例えば、リゲリズマブ)又はその抗原結合断片も本明細書に開示され、ここで、リゲリズマブ抗体は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなり、この抗体は、IgEに特異的に結合する。
【0075】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mg又は約240mgである。
【0076】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、第0週中、毎週約24mgの用量で皮下(SC)投与され、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約24mgの用量でSC投与される。
【0077】
開示した方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、第0週中、毎週約72mgの用量でSC投与され、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約72mgの用量でSC投与される。
【0078】
開示した方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、第0週中、毎週約120mgの用量でSC投与され、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約120mgの用量でSC投与される。
【0079】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、発疹の完全奏効(発疹重症度スコア[HSS7])、UAS7及び皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)によって測定される、治療の1年後の持続した反応を達成する。
【0080】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片での治療前に、患者は、CSUのための全身性薬剤で以前に治療されている。
【0081】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-AH及びロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)並びにその組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
開示した方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片での治療前に、患者は、CSUのための全身性薬剤又は局所的治療で以前に治療されていない。
【0083】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mgである。開示した方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IGE抗体又は抗原結合断片の用量は、約72mgである。開示した方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IGE抗体又は抗原結合断片の用量は、約120mgである。開示した方法、使用及びキットの他の好ましい実施形態では、IGE抗体又は抗原結合断片の用量は、約240mgである。
【0084】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、中等症~重症のCSUを有する。
【0085】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、成人である。開示した方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、患者は、青年である。
【0086】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片は、医薬製剤中に配分され、前記医薬製剤は、緩衝液及び安定剤をさらに含む。開示した方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、医薬製剤は、液体形態(直ちに使用できる)である。開示した方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥形態である。開示した方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、医薬製剤は、プレフィルドシリンジ、バイアル、ペン型注射器又は自己注射器内に配分される。
【0087】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mg、72mg、120mg又は240mgであり、医薬製剤は、プレフィルドシリンジ、ペン型注射器及び自己注射器からなる群から選択される投与のための手段内に配分され、前記手段は、キット内に配分され、キットは、使用のための説明書をさらに含む。
【0088】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mg、72mg又は120mgであり、医薬製剤は、自己注射器又はプレフィルドシリンジ内に配分され、且つ自己注射器又はプレフィルドシリンジは、キット内に配分され、キットは、使用のための説明書をさらに含む。
【0089】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片の用量は、約240mgであり、医薬製剤は、自己注射器又はプレフィルドシリンジ内に配分され、自己注射器又はプレフィルドシリンジは、キット内に配分され、キットは、使用のための説明書をさらに含む。
【0090】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は、120mg/mlのIgE抗体又は抗原結合断片を含む製剤からの2mlの総体積の単回皮下投与として投与される240mgであり、IgE抗体又は抗原結合断片への患者の薬理学的曝露は、同じ製剤のそれぞれ1mlの総体積の2回の別の皮下投与を使用するIgE抗体又は抗原結合断片への患者の薬理学的曝露と等しい。
【0091】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、用量は、120mg/mlのIgE抗体又は抗原結合断片を含む製剤からのそれぞれ1mlの体積の2回の別の皮下投与として投与される240mgである。
【0092】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、IgE抗体又は抗原結合断片での治療前に≧16のUAS7スコアを有する。
【0093】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、IgE抗体又は抗原結合断片での治療前に≧8のHSS7を有する。
【0094】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、第12週までに0のHSS7スコアを達成する。
【0095】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は、治療の第12週までに0のUAS7スコアを達成する。
【0096】
本開示の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。
【0097】
本開示の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト化抗体である。
【0098】
本開示の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体である。
【0099】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0100】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片は、約2~14日のTmaxを有する。
【0101】
開示した方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、IgE抗体又は抗原結合断片は、約47%~100%の絶対的バイオアベイラビリティを有する。
【0102】
本開示の好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、リゲリズマブである。
【0103】
キット
本開示は、CSUを治療するためのキットも包含する。こうしたキットは、IgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマズ)、又はIgE受容体結合分子(例えば、IgE抗体又はその抗原結合断片)(例えば、液体若しくは凍結乾燥形態で)、又はIgEアンタゴニストを含む医薬組成物(上に記載)を含む。さらに、こうしたキットは、IgEアンタゴニストを投与するための手段(例えば、自己注射器、シリンジ及びバイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン)及び使用のための説明書を含むことができる。これらのキットは、CSUを治療するための、例えば封入されたIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子、例えばIgE抗体、例えばリゲリズマズと組み合わせた送達のための追加のCSU治療薬(上に記載)を含有することができる。こうしたキットは、CSUを治療するためのIgEアンタゴニスト(例えば、IgE抗体、例えばリゲリズマズ)の投与のための説明書も含むことができる。こうした説明書は、封入されるIgEアンタゴニスト、例えばIgE結合分子、例えばIgE抗体、例えばリゲリズマブと共に使用するための用量(例えば、10mg/kg、24mg、72mg、120mg、240mg)、投与経路(例えば、IV、SC)及び投薬レジメン(例えば、毎週、毎月、毎週に続いて毎月、毎週に続いて1週おきなど)を提供することができる。
【0104】
表現「投与するための手段」は、限定されないが、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注バッグ、ポンプなどを含めた、患者に薬物を全身的に投与するためのあらゆる利用可能な道具を示すために使用される。こうしたものを用いて、患者が薬物を自己投与する(すなわち医師の支援を受けずに薬物を投与する)ことができるか、又は医師が薬物を投与することができる。いくつかの実施形態では、240mgの総用量は、それぞれが120mg/mlのIgE抗体、例えばリゲリズマブを有する1mlの体積を含有する2つのPFS又は自己注射器に配分された2mlの総体積で送達されることになる。この場合、患者は、2回の1ml注射(反復投与調製物)を受ける。好ましい実施形態では、240mgの総用量は、単一のPFS又は自己注射器に配分された120mg/mlのIgE抗体、例えばリゲリズマブを有する2mlの総体積で送達されることになる。この場合、患者は、1回の2ml注射(単回投与調製物)を受ける。
【0105】
IgEアンタゴニスト(例えば、IgE結合分子、例えばIgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)と、CSU患者にIgEアンタゴニストを投与するための手段とを含む、CSUを有する患者を治療するのに使用するためのキットが本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、このキットは、IgEアンタゴニストの投与のための説明書をさらに含み、説明書は、IgEアンタゴニスト(例えば、IgE結合分子、例えばIgE抗体又はその抗原結合断片、例えばリゲリズマブ)が第0週に約24mg~約240mg(例えば、約24mg又は約240mg)においてSCで、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mg(例えば、約24mg、約240mg)においてSCで患者に投与されるべきであることを示す。
【0106】
全般
開示した使用、方法及びキットの最も好ましい実施形態では、IgEアンタゴニストは、抗IgE抗体又はその抗原結合断片である。
【0107】
開示した方法、キット又は使用の最も好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。開示した方法、キット又は使用の最も好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト化抗体、好ましくはヒト抗体である。開示した方法、キット又は使用の最も好ましい実施形態では、IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト化抗体、好ましくはヒト抗体である。開示した方法、キット又は使用の最も好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、リゲリズマブである。
【0108】
開示した方法、キット又は使用の最も好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、リゲリズマブであり、用量サイズは、一定であり(「固定」用量とも称され、これは、体重又は体表面積に基づく投薬と異なる)、用量は、24mg、72mg、120mg又は240mgであり、投与経路は、SCであり、レジメンは、第0週、次いで第4週中に開始する4週毎の投与である。本発明の好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、一定の用量として患者に与えられる。
【0109】
本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細は、上の随伴する説明に記述されている。本明細書に記載したものと類似の又は均等なあらゆる方法及び材料を本開示の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料をここで記載する。本開示の他の特徴、目的及び利点は、この説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形には、文脈によって他に明確に指示されない限り、複数の指示内容が含まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に引用したすべての特許及び刊行物を参照によって組み込む。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態をより詳細に説明するために与えられる。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される開示した主題の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0110】
実施例1:標準治療での治療にもかかわらず症状を示すままであるCSU成人患者における有効性及び安全性データ
抗IgE抗体、ゾレア(Xolair)(登録商標)(オマリズマブ)の効果の臨床的証拠は、CSUを有する患者のための有効な治療法としての抗IgE抗体の可能性を裏付ける。リゲリズマブのように、オマリズマブは、喘息及びCSUの治療のための組換え完全ヒト抗IgEモノクローナル抗体である。リゲリズマブは、オマリズマブよりも高い親和性でヒトIgEに結合する。
【0111】
第2b相研究(CQGE031C2201)は、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を有する患者における有効性及び安全性を調べるために、アドオン療法としてのリゲリズマブ(QGE031)の、多施設の、無作為化された、二重盲検の、プラセボ及び実薬対照の第2b相用量設定研究として行った。この研究は、プラセボ及びオマリズマブと比較してリゲリズマブの用量反応関係を確立するため及びその有効性及び安全性を評価するための、無作為化された、二重盲検の、実薬及びプラセボ対照の並行群研究であった。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
研究目的
主目的
H1-AH単独に又はH2-AH及び/又はLTRAと組み合わせて加えられた場合の、CSUを有する患者における第12週での発疹の完全奏効の達成に関するQGE031の用量反応関係を確立すること。
【0117】
発疹の完全奏効は、0のHSS7スコアと定義される。それと類似して、痒みの完全奏効及びUAS7の完全奏効は、それぞれ0のISS7及びUAS7スコアと定義される。
【0118】
副次的目的
・H1-AH単独に又はH2-AH及び/又はLTRAと組み合わせて加えられた場合の、CSUを有する患者における第12週での発疹の完全奏効の達成に関する、オマリズマブ300mgと比較した場合の(選択された用量反応モデルに基づく)QGE031の有効性を評価すること。
・H1-AH単独に又はH2-AH及び/又はLTRAと組み合わせて加えられた場合の、CSUを有する患者における第20週での発疹の完全奏効の達成に関する、オマリズマブ300mgと比較した場合の24mg、72mg及び240mg(s.c.)の個々のQGE031用量の有効性を評価すること。
・以下に関して、CSUを有する患者におけるプラセボ及びオマリズマブ300mgに対する24mg、72mg及び240mg(s.c.)のQGE031用量の有効性を評価すること:
・第12及び20週での発疹重症度スコア(HSS7)のベースラインからの変化
・第12及び20週での痒み重症度スコア(ISS7)のベースラインからの変化
・第12及び20週での蕁麻疹活動性スコア(UAS7)のベースラインからの変化
・20週の治療及び24週の追跡調査中、特にECG、有害事象、バイタルサイン及び臨床検査評価に関する、CSUを有する患者におけるプラセボ及びオマリズマブ300mgに対するQGE031(24mg、72mg及び240mg(s.c.、4週毎)の用量)の安全性(免疫原性が含まれる)及び忍容性を評価すること。
【0119】
探索目的
・以下に関して、プラセボ及びオマリズマブ300mgに対するQGE031(24mg、72mg及び240mg(s.c.、4週毎)の用量)の有効性を探索すること
・第12及び20週でのUAS7の完全奏効の達成
・第12及び20週での痒みの完全奏効の達成
・第12及び20週での蕁麻疹活動性スコア(UAS7)≦6の達成
・HSS7、ISS7及びUAS7のベースラインからの経時的な変化のプロフィール
・臨床効果(例えば、HSS7、UAS7、ISS7)の開始までの時間
・臨床反応と、IgE経路に関連する薬力学的パラメータ(例えば、総IgE、好塩基球IgE発現)との相関
・CU指標状態(+又は-)の治療効果に対する影響
・蕁麻疹患者日誌(UPDD)で収集された睡眠障害及び日常活動障害
・レスキュー治療の使用
・UPDDで収集された血管浮腫の発生及び血管浮腫のための措置/治療
・退薬後の奏効期間
・医師、看護師又はナースプラクティショナーへの連絡の回数
・血管浮腫の診察室での評価の有用性
・ベースラインから第12週及び20までの以下のPRO評価の変化:
・皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)総スコア
・血管浮腫活動性スコア(AAS)
・例えば、血管浮腫エピソード/日の1週間の数
・作業生産性及び活動性障害(WPAI)-CU
・QGE031の薬物動態(PK)を評価すること
・薬物代謝、CSU及び薬物標的経路に関する遺伝子のそれぞれの遺伝的変異がQGE031に対する反応差を与えるかどうかを検討するために、探索的な薬理遺伝学的評価を実施すること
・QGE031の有効性及び安全性の相関に関するバイオマーカーの潜在的有用性を評価すること。
【0120】
研究設計
これは、承認された若しくは増大された用量のH1-AH単独で又はH2-AH及び/若しくはロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)と組み合わせるにもかかわらず症状を示すままである抵抗性CSUと診断された成人患者の治療のための、アドオン療法として皮下投与されるプラセボ及びオマリズマブと比較した場合の、QGE031の用量反応関係を確立するため及びその有効性及び安全性を評価するための、第2b相用量設定の、多施設の、無作為化された、二重盲検の、実薬及びプラセボ対照の並行群研究であった。この研究は、下に概説する通り、46週にわたる3つの異なる期から構成されていた(
図1も参照されたい):
・スクリーニング期、第-14日~第1日:インフォームドコンセントを受けている患者が研究適格性について評価された、最大2週の期間。
・治療期、第1日~第141日(20週):患者が4週ごとに診察室を受診した、二重盲検治療期。
・治療後追跡調査期、第141日~第309日(24週):追跡調査期は、6回の来診(4週ごと)からなり、最終の来診は、最後の治療来診の24週後までに又は第32週以降の追跡調査期中に患者が再発する場合に生じる。
【0121】
スクリーニング期
患者は、研究についての適格性を確立するための最大2週のスクリーニング期を有していた。患者は、スクリーニング期中、2回の来診:第-14日及び第-7日に来る必要があった。特別な事情の場合のみ、適格性に関する情報が未解決であった場合(例えば、未決定の検査データ)、スクリーニング期の延長が認められた。
【0122】
ある種の選択/除外基準について、最初のスクリーニングに失敗した患者について再スクリーニングが許された。1回のみの再スクリーニングが許された。ある患者が研究について再スクリーニングされる場合、その患者は、新たなインフォームドコンセントに署名し、新たな患者番号が発行された。再スクリーニングされた患者についてのインフォームドコンセントは、あらゆる研究関連評価を実施するか又はスクリーニング来診に関するあらゆるデータを収集する前に得た。
【0123】
二重盲検の治療期
第1日に、適格の患者を、20週の二重盲検治療中、QGE031 24mg、72mg若しくは240mg又はオマリズマブ300mg又はプラセボ(s.c.、q4w)或いはQGE 120mg単回投与(s.c.注射)(盲検を維持するために、その後、プラセボ注射が与えられることになる)を受けるように無作為に割り当てた。およそ80人の患者のそれぞれをQGE031 240mg(q4w)、72mg(q4w)に、またオマリズマブ300mg(q4w)群に割り当てることが計画された。およそ40人の患者それぞれをQGE031 24mg(q4w)、プラセボ(q4w)及びQGE031 120mg単回投与群に割り当てた。患者は、評価スケジュール(表2)に基づいて、すべての医療機関来診に来ることが期待された。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
治療期中の研究薬物の最終投与は、第113日(第16週)の研究来診時に施した。この研究におけるすべての患者は、基礎医薬品としてH1-AHを単独で又はH2-AH及び/又はLTRAと組み合わせて受け続けた。患者は、研究全体を通して安定な治療レジメンを続けていた。すべての患者が第12週に到達したとき、第1の分析が計画されていた。治療終了時分析は、治療期間の第20週に計画されていた。
【0130】
治療後追跡調査期
二重盲検治療期の完了後、患者は、QGE031のPK及びPDのさらなる特徴付け、追加の有効性及び安全性データ(例えば、再発)の収集並びに抗薬物抗体(ADA)の存在の評価を可能にするための治療後追跡調査期に入った。追跡調査期は、24週であり、最後の追跡調査来診(来診206)は、最後の治療投薬の28週後に相当していた。治療後追跡調査期中、調査的治療は、施されなかったが、患者は、そのレスキュー治療を受けることが可能であった。患者は、治療後期中、4週ごとに研究施設を来診することを求められていた。
【0131】
調査的治療を中断せず、且つ来診203(第32週、最後の注射の16週後)時又は次の来診(204~206)時にUAS7スコア≧12を有していた患者は、追跡調査期の完了前に延長研究に入るのにも適格であった。
【0132】
患者は、特にオマリズマブ群の患者について、中核研究医薬品の不十分なウォッシュアウトが原因で来診203前に延長研究に入ることが認められなかった。
【0133】
スクリーニング、治療及び治療後追跡調査期中、必要に応じて、レスキュー治療(ロラタジン、又はフェキソフェナジン、又はセチリジン)が提供及び使用された。
【0134】
研究設計の理論的根拠
この無作為化された、二重盲検の、並行群の、プラセボ及び実薬対照の設計は、用量範囲設定及び有効性の評価並びに安全性を裏付ける。この研究は、オマリズマブ300mg、すなわち現在多くの国で販売されている唯一の代替の抗IgE医薬品に対して、コントロールされていないCSUを有する患者に対する利益を有する用量を特定するための用量反応関係を確立することを目的とし、且つ選択された用量反応モデルに基づく用量範囲設定研究として設計された。
【0135】
この研究のための標的集団は、(承認された若しくは増大された用量の)H1-AH単独での又はH2-AH及び/又はLTRAと組み合わせる治療にもかかわらず症状を示すままであるCSU患者から構成されていた。これらの患者は、重大な依然として対処されていない医学的必要性を有しており、QGE031のための標的集団の典型となる。オマリズマブ開発計画では、基礎医薬品に関するFDAとEMAとの間の見込みの違いが明らかになった(H1-AH、それに対してH1-AH、H2-AH及び/又はLTRAの組み合わせ)。オマリズマブ第3相研究では、2つの集団間で有効性の有意差が認められなかった。オマリズマブ開発計画の開始並びに2009年及び2010年にFDA及びEMAによって与えられた化学的助言以来、新規の医学データ及び科学の進歩により、蕁麻疹の定義、分類、診断及び管理に関する最新の国際的指針がもたらされている(Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2014)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2013 revision and update.Allergy;69(7):868-87)。国際専門家チームによる証拠に基づく提言により、ステップ1及び2について、それぞれ承認又は増大された用量(最大4倍)の非鎮静型のH1-AHの使用を推奨する治療アルゴリズムがもたらされた。ステップ3としてのみ、オマリズマブ、シクロスポリンA又はモンテルカストの追加が推奨される。
【0136】
したがって、CSUについての大部分の現在の治療アルゴリズムを熟考するために、この研究は、H1-AH単独(地域保健所の指導による承認された用量又は最大4倍までの増大させた用量)での又は基礎医薬品としてのH2-AH及び/若しくはLTRAと組み合わせた使用を可能にした。しかし、これらは、第3相プログラム(保健機関による承認保留)中に分離される可能性がある。オマリズマブプログラムからの既存のCSUデータとの比較を可能にするために、集団は、他の点でオマリズマブ第3相研究において研究されたものとほぼ同一であった。
【0137】
この患者集団におけるプラセボの使用は、患者がその基礎治療を継続することになることから、適切であると考えられた。患者は、研究全体を通してレスキュー治療としてH1-AHを受けることも可能であった。さらに、患者は、QGE031を受ける延長研究(長期安全性研究)に入ることが可能であった。CSUの徴候及び症状は、患者にとって負担が重いが、プラセボ試験は、この適応症において安全且つ問題なく行われている(Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.)。患者は、最適モデル化のためのデータ要件を満たすために必要とされる人数に従って治療群に割り当てられた。
【0138】
プラセボの投与は、統計比較及び実薬並びにプラセボ治療に対する盲検化の維持が可能でありながら、可能な限り制限されていた。オマリズマブの特性と完全に適合するであろうプラセボがなく、したがって非盲検の職員及び患者のリスク(例えば、送達された注射間の感覚の違いに患者が気付く可能性)が増大することが原因で、ダブルダミー設計は、可能ではなかった。これは、各来診時の注射の合計回数の観点から見て、患者への負担/不快感も増大させるであろう。したがって、この研究は、QGE031群のみに対するプラセボを使用することになる。QGE031及びオマリズマブについて、投与される体積は、異なることになる(例えば、QGE031 240mgは、2回の別の1.0mL注射として投与される2.0mLの体積を有し、オマリズマブ300mgは、2回の別の1.2mL注射として投与される2.4mLの体積を有する)ため、治療群は、様々な注射体積を有することになる。
【0139】
さらに、盲検化を維持するために、研究薬物は、研究評価を実施する施設チームから独立した、盲検化されていない人物(例えば、スタディナース又は医師)によって投与される。
【0140】
第1の分析は、すべての患者が第12週に到達したときに実施された。治療終了時分析は、治療期間の第20週に実施された。
【0141】
用量/レジメン、投与経路及び治療の期間の理論的根拠
QGE031がIgEを抑制する、オマリズマブよりも大きい効力は、換言すると、CSUの治療におけるより大きい利益となると仮定される。科学的に正当性のある評価のために、QGE031に対する反応の解釈のためのプラセボ及びオマリズマブ治療群の両方との比較が含められた。
【0142】
用量/レジメンに関する理論的根拠
用量反応モデルは、ゼロ用量としてのプラセボと共に、24mg(q4w)で開始して、72mg(q4w)~240mg(q4w)にわたる10倍範囲のQGE031用量を試験することから得られた。次いで、この用量反応モデルを使用して、活性な対照薬に所望される利益を追加する用量又は用量範囲を探し出した。
【0143】
QGE031 24、72及び240mgを20週間s.c(q4w)投与、すなわち合計5回投与した。オマリズマブ300mgは、活性な対照薬としてs.c(q4w)投与し、対照は、投薬レジメンに適合させたプラセボであった。
【0144】
単回投与群のための用量として120mgを選択した理論的根拠は、投与後の最初における最大又は最大に近い効果を確実にするが、試験期間内に再発しないほど高くないことであった。この群は、痒み及び発疹症状の再発と関連する血清中の薬物のレベル、そこからq4wではない代替投薬間隔を決定するために不可欠である盲検化されたウォッシュアウトデータを提供した。
【0145】
q4w用量/レジメンについての理論的根拠は、(a)アトピーのボランティアでの研究QGE031A2103及び喘息患者でのQGE031B2203からのアレルゲン皮膚プリックテスト耐性データと、(b)CSU患者での第3相研究からのオマリズマブ有効性データとに基づいていた。
【0146】
(a)アレルゲン皮膚プリックテスト耐性データ
・皮膚プリックテストは、これが皮膚におけるIgE経路反応性のレベルを直接的に示すものであり、且つヒスタミン媒介性の膨疹反応が皮膚プリックテストと蕁麻疹との両方に呈されるため、蕁麻疹反応の予測因子とみなされた。臨床的な読み取りは、皮膚プリックテストにおいて現れる膨疹の直径に基づいていた。
図2は、研究QGE031B2203における喘息患者における、血漿中の遊離IgEの低下及び末梢好塩基球上のFcεRI及び表面IgEの低下並びに皮膚プリックテストの膨疹部の減少を示す。中程度のIgEレベルを有する患者について、72mg及び240mgの両方は、バイオマーカーの顕著な減少及び皮膚プリックテストにおける有効性をもたらす。同様の観察は、体重によって調節される投薬を使用するQGE031A2103において健康なボランティアについて行われた。
【0147】
・QGE031A2103及びQGE031B2203における投薬レジメンは、2週ごと(q2w)であり、その結果、そのデータは、q4wレジメンの適切な用量に関して直接的に情報を提供しなかった。したがって、このデータ上で確立されるモデルを使用することを利用して、CSU集団におけるq4w投薬に関する用量反応関係を予測した。
【0148】
・
図3は、皮膚プリックテストの膨疹部についてのQGE031についての予測される用量反応曲線を示す。24mg用量は、可能な最大反応の50~70%を達成することが予測された。患者集団の中央の50%についての反応の範囲は、非常に小さい値から高い値にわたるが、最大反応に至らない。72mgの用量は、推定するところ、用量反応曲線の直線領域と飽和領域との間の移行部に近かったのに対して、240mgは、最大有効性を達成することが期待された。したがって、24mgは、最小有効用量ではなく、オマリズマブと同程度であることが期待される「最適以下の用量」に相当する。オマリズマブ300mg(q4w)は、QGE031 72mg(q4w)をわずかに下回る反応を与えることが予測される。
【0149】
(b)CSUにおける第3相研究からのオマリズマブ有効性データ
・オマリズマブの第3相臨床データを、選択されるQGE031用量に対する臨床反応の代替推定として使用した。このデータに基づいて、遊離IgEの減少をCSU症状スコアの低下と関連付けるPK/PDモデルを確立した。QGE031とオマリズマブとの間の異なるIgE結合親和性の差を仮定すれば、24mgは、150mgオマリズマブと同様の最適以下の反応を達成できることが期待された。CSU患者におけるインビボでの効力差がインビトロ結合親和性の差(50×)と同様である極端な場合にのみ、24mgは、最大有効性と近い可能性もあり、その結果、濃度反応関係は、ウォッシュアウトデータから推測されなければならない。240mg QGE031の投与は、300mgオマリズマブと比較した場合、遊離IgEのかなり高い低下を達成することが予測され、これは、優れた臨床的有効性をもたらすことが期待された。症状スコア低下についての最大効果のレベルは、300mgオマリズマブが既に最大反応の近くであると想定されるオマリズマブデータに基づいて推定されたことに留意するべきである。しかし、より高い曝露、すなわちより顕著なIgE減少についての反応に関するデータは、ほとんどなく、したがって、このモデルは、QGE031、すなわちより強力な薬物で観察される可能性がある最大反応に対処することができなかった。
【0150】
要約すると、皮膚プリックテストデータを使用して又はオマリズマブからQGE031に対するCSU有効性データを予測して、用量24及び240mgは、最適以下~最大の反応をもたらすことが予測された。より高い遊離IgE低下が300mgオマリズマブと比較した場合により高い有効性をもたらすかどうか、240mgの用量を試験した。72mgは、これらの用量間において対数スケール上で等間隔になる。
【0151】
図3は、アトピーではあるが、他には健康な対象からの皮膚プリックテストデータの膨疹部に適合されているQGE031 PKPDモデルからのシミュレーションに基づく、第20週での予測される用量反応曲線を示す。帯域は、健康な対象間の変動を表す25及び75パーセンタイルを示し、線は、中央値を示す。y軸反応の単位は、各来診時に各患者について試験されるすべてのアレルゲン希釈物の膨疹の大きさ(mm)の合計の平方根である。
【0152】
固定投薬についての理論的根拠:
mg/kg投薬ではなく固定投薬についての理論的根拠は、登録される患者全体にわたってQGE031への曝露の程度を(可能な限り大きく)広げ、それによって安全性の評価を高めることであった。いずれにせよ、体重の影響は、この研究及び他の研究からのデータを使用して、統計的及び薬物動態学的-薬力学的モデル化において調査された。(Wang DD,Zhang S,Zhao H,et al (2009)Fixed dosing versus body size-based dosing of monoclonal antibodies in adult clinical trials.J Clin Pharmacol;49(9):1012-24)は、モノクローナル抗体曲線下面積(AUC)(又はその均等物、定常状態平均濃度)の分布が、体重によって調節される投薬と比較して、固定投薬として投与された場合、わずかに広いことを示した。
【0153】
単回投与群についての理論的根拠:
・120mg(s.c.)での単回投与群についての理論的根拠は、第3相における用量間隔選択を裏付けることであった。この群からのデータは、反応の期間を評価し、これを、症状が再び現れた時点での血清中の薬物の濃度と相関させる。これを、240mg反復投与群からのウォッシュアウトからの類似のデータと比較して、より長い治療が、症状再出現の時点での濃度、したがって必要とされる投薬間隔を変えるかどうかを確認した。PK、PD及び臨床的有効性データ、単回及び反復投与の全体を、非線形の混合効果PKPDモデルを使用して分析して、濃度-反応、またこれから用量反応曲線を作成し、そこから登録研究のための好適な用法用量が得られる。
【0154】
20週の治療の期間についての理論的根拠
2本のオマリズマブ第3相研究(Q4881g及びQ4883g)の結果は、すべての奏効患者が最初の投与後に頑強な又は完全な反応を達成するとは限らないことを実証した。頑強な臨床反応(UAS7≦6)又は完全な反応(UAS7=0)までの時間の分析は、最初の投与後に反応しなかったかなりの割合の患者が、確かに前進し、第2及び第3用量の投与後(すなわち12週の全治療後)に頑強な又は完全な反応を達成したことを示した。さらに、Q4881g及びQ4883g、両方の研究にわたり、UAS7≦6又は無症状状態(UAS=0)を達成した患者の割合の試験は、第12週と比較して第24週でさらに多くの患者が健康状態の改善を達成する一貫した傾向を示した。より長い期間の治療では、異なる安全性プロフィールは、認められなかった(Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9)。さらに、提案された第2b相研究についての治療の期間は、詳述した評価を使用して血管浮腫コントロールを評価し、且つサブグループ(例えば、CU指標+及びCU指標-の患者)間の臨床反応動態のあらゆる差を探索するのに十分な時間を与えるための20週である。血管浮腫は、主として「血管浮腫のない日」としてオマリズマブプログラムにおいて評価した。より新しい且つより詳細な確証された評価(すなわち血管浮腫活動性スコア[AAS])が利用可能であり、これらは、この研究において適用されることになる。血管浮腫事象は、突発性であるため、患者を評価するための時間が長くなるほど、コントロールとオマリズマブ及びプラセボとの区別を実証するためのより良い機会が提供される。CU指標は、患者のCSUに対する自己免疫成分を有する患者を区別するために一般的に使用される臨床検査であり、これらの患者は、蕁麻疹を誘発する可能性がある特異的な自己抗体(例えば、抗FcεRI)を有する可能性があり、またCU指標-患者と異なる病態生理を有する可能性がある(Biagtan MJ,Viswanathan RK,Evans MD,et al(2011)Clinical utility of the Chronic Urticaria Index.J Allergy Clin Immunol;127(6):1626-7)。CU指標+患者は、オマリズマブからの第3相データに基づいてCSU集団の最大30%を構成する。
【0155】
その目的のために、この研究における20週の治療の選択された期間は、CSU転帰に対する統計的及び臨床的に意味のある影響を最適に評価するために必要とされる曝露の最小期間であった(Kaplan A,Ledford D,Ashby M,et al(2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy.J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M,Magerl M,Metz M,et al(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.)。これは、Q4881g及びQ4883gにおけるオマリズマブで使用された24週の治療期間より短かったが、IgE抑制が、オマリズマブで認められるよりも迅速に且つ高い抑制レベルで起こることになるという理解に基づくと、QGE031にとって十分であった。
【0156】
全体として、この研究設計は、QGE031及びオマリズマブを用いる以前の研究からの利用可能な安全性及び臨床活動データを慎重に使用し、プラセボへの曝露を最小限にし、第2相設計の状況での臨床的利益の可能性を最適化する。
【0157】
対照薬の選択の理論的根拠
すべての患者は、いずれの治療群に無作為化されるかにかかわらず、基礎医薬品として標準治療を受けた。さらに、患者は、H1-AHレスキュー治療を利用可能であった。
【0158】
この研究では、次の理由でプラセボを使用した:
・その治療に対する研究者と患者の盲検化を可能にし、それにより安全性及び有効性評価の評価の偏りを最小限にすること、
・QGE031で治療される、基礎医薬品によってコントロールされなかった疾患を有する患者についての、専ら基礎医薬品のみを継続したものと比較した、CSUコントロールに関する向上の評価を可能にすること、及び
・基礎医薬品単独と比較される、基礎医薬品に加えたQGE031の安全性の評価を可能にすること
・より低い用量のQGE031治療群についての二重盲検を維持すること。これらは、それぞれ0.2mL及び0.6mLとして投与されたからである。この治療群における患者は、適合させた体積の2回の注射、すなわち1回の実薬と1回のプラセボを受けることになる。
【0159】
オマリズマブは、次の理由で活性な対照薬として選択された:
・オマリズマブは、H1-AHに対する不十分な反応を有するCSU患者におけるアドオン療法として現在承認されている、QGE031と同じクラスにおける唯一の薬物であること、及び
・オマリズマブに対するQGE031安全性及び有効性の比較は、QGE031のさらなる開発を正当化するための、患者に対する十分な潜在的利益が存在するかどうかの試験依頼者の決定を補助したこと。
【0160】
【0161】
併用治療
この研究は、H1-AH単独(地域保健所の指導による承認された用量又は最大4倍までの増大させた用量)での又は基礎医薬品としてのH2-AH及び/若しくはLTRA(モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト)と組み合わせた同時使用を必要としていた。
【0162】
蕁麻疹患者日誌(UPDD)
UPDDには、臨床症状に関するUAS7(痒み及び発疹)、レスキュー治療の使用、睡眠及び活動障害、血管浮腫発生及びその管理が含まれる。
【0163】
発疹重症度スコア(HSS)
発疹の数によって定義される膨疹(発疹)重症度スコアは、1日2回、患者によってそのeDiaryに0(なし)~3(激しい/重度)のスケールで記録された(表4を参照されたい)。週間スコア(HSS7)は、来診前の最後の7日の平均日常スコアを合計することによって得た。したがって、可能性のある週間スコアの範囲は、0~21であった。
【0164】
発疹の完全奏効は、HSS7=0と定義される。
【0165】
【0166】
朝又は夜のスコアのいずれかが欠けている場合、その日の欠けていないスコア(朝又は夜)を日ごとのスコアとして使用した。日ごとのスコアの1つ以上が欠けている場合、次の原則を適用して、欠けているデータを処理した。患者が、研究来診前の7日以内に少なくとも4つの欠けていない日ごとのスコアを有していた場合、週間スコアは、その週における利用可能なeDiaryスコアの合計を、欠けていない日ごとのスコアを有する日の数で割り、7を乗じたものとして算出した。事前の7日以内に存在していた欠けていない日ごとのスコアが4つ未満であった場合、その週について週間スコアは、欠損であった。
【0167】
痒み重症度スコア(ISS)
痒みの重症度は、1日2回、患者によってそのeDiaryに0(なし)~3(激しい/重度)のスケールで記録された(表5を参照されたい)。週間スコア(ISS7)は、来診前の最後の7日の平均日常スコアを合計することによって得る。したがって、可能性のある週間スコアの範囲は、0~21であった。部分的に欠けている日誌の入力は、発疹重症度スコアについて記載したのと同じように取り扱った。
【0168】
痒みの完全奏効は、ISS7=0と定義される。
【0169】
【0170】
週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)
UAS7は、HSS7スコアとISS7スコアとの合計であった。可能性のある週間UAS7スコアの範囲は、0~42であった。
【0171】
UAS7の完全奏効は、UAS7=0と定義された。
【0172】
睡眠障害スコア
睡眠障害は、eDiaryにおいて1日1回、朝に患者によって評価された。これは、0~3のスケールでスコア付けされた(表6を参照されたい)。
【0173】
【0174】
活動障害スコア
活動障害は、eDiaryにおいて1日1回、夜に0~3のスケールで患者によって評価された(表7を参照されたい)。日常活動には、仕事、学校、スポーツ、趣味並びに友人及び家族との活動を含めることができる。
【0175】
【0176】
合計382人の患者が含まれていた。この研究の主目的は、達成され、リゲリズマブ(QGE031)は、第12週での発疹の完全奏効率に関する用量反応関係を示した(p<0.001)。第12週でのHSS7=0奏効率は、オマリズマブについての26%及びPBOについての0%に対して、リゲリズマブ24、72及び240mgについてそれぞれ30%、51%及び42%であった。これらの奏効は、第20週まで維持された(オマリズマブについての34%及びPBOについての9%に対して、リゲリズマブ24、72及び240mgについてそれぞれ26%、51%及び45%)。早ければ第4週に高いUAS7=0及びDLQI=0~1奏効率が観察され;より多くの患者が無症状(UAS7=0)であり、20週の治療期間全体を通して、リゲリズマブ72及び240mgでは、オマリズマブに対して生活の質(DLQI=0~1)の著しい向上が報告された(表8)。リゲリズマブは、良好な耐容性を示し、安全性プロフィールは、オマリズマブに匹敵していた。
【0177】
【0178】
試験の最初の4~6週について、72、120又は240mgリゲリズマブに対する患者の反応において有意差がなかった(
図4)。上に記載したUAS7完全奏効者及びDLQI=0~1奏効と同様に、24mg用量に対する反応は、より高い3つの用量よりも劣っていたが、プラセボより優れていた。6週後、120mg単回投与の効果は、低下し始め、症状は、対象群の症状に戻った。
【0179】
結論
中等症~重症のCSUを有する患者では、リゲリズマブは、複数の評価項目にわたって明確な用量反応を呈した。オマリズマブ300mgと比較して、リゲリズマブ24mgは、それに匹敵することが示され、また72、120及び240mgは、前記複数の評価項目にわたってより高い有効性を達成し、且つ匹敵する安全性を示した。
【0180】
実施例2:リゲリズマブ小児治験計画:青年の用量設定のシミュレーションに基づく設計を用いる成人のCSUにおける曝露-反応解析
目的:小児の用量を確立する際、成人と比較した場合の青年CSU集団における効力の著しい低下、すなわちより高いオマリズマブのEC50に当然の注意を払った[EMA 2014.Application II/0048 Assessment report,Section 2.3.4.2 page10 and Section 2.3.5 page11.world wide web.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Assessment_Report_-_Variation/human/000606/WC500164453.pdf accessed 17th January 2018]。したがって、青年及び成人における等しい濃度のリゲリズマブが成人及び青年集団において等しい有効性をもたらすであろうと仮定することはできない。目的は、青年CSU患者についてのEC50が、異なる用法用量を必要とするために、成人と十分に異なるかどうかを決定するための適切な青年研究を設計することであった。
【0181】
方法:第2相研究EudraCT 2014-005559-16において、0、24、72及び240mg(4週ごと、反復)並びに120mg単回投与のリゲリズマブで治療した成人患者から、リゲリズマブ(QGE031)濃度及び蕁麻疹活動性スコア(UAS7、日ごとの痒み及び発疹(それぞれ0~3の範囲)の7日の合計)を収集した。295人の患者からの中間データを、重点サンプリングを用いるNONMEMを使用して、継続的なUAS7(範囲0~42)について、縦断的薬物動態学的-薬力学的モデルを用いて解析した。得られたモデルを確率的シミュレーション-推定と共に使用して、青年と成人との間のEC50の変化を検出する能力を有する青年(年齢11~17歳(端値を含む))研究を設計した。R-3.2.3、NONMEM 7.3.0[Bauer RJ NONMEM Users Guide Introduction to NONMEM 7.3.0.2013.Icon Development Solutions,Hanover MD 21076,USA]とPDx-Pop-5.2ソフトウェアとの組み合わせを使用して、分析データセットを作成し、パラメータを推定し、NONMEM実行を制御し、結果を後処理した。
【0182】
結果:選択された2コンパートメント薬物動態モデルは、薬物濃度データを十分に示した。重要な曝露パラメータ、クリアランスは、体重80kgに対して0.85L/d(残差の標準誤差、RSE、9.1%)であり、対象間変動(BSV)の係数は、49%であった。体重及び慢性蕁麻疹指標(抗IgE又は抗IgE受容体自己抗体)は、クリアランスに影響を与える主要な共変数と特定され、推定値は、体重について1.0(検出力;35% RSE)及びCU指標について0.89(比率;36% RSE)であった。選択された継続的UAS7モデルは、非常に大きい推定されるBSV(1405%)及び5.72(0.75% RSE)の急勾配のヒル係数と共に1.1μg/mL(38% RSE)のEC50を有していた。視覚的事後予測性能評価は、いくつかの研究選択肢について青年研究設計プロセスを開始するのに十分であるとみなされた。数値的安定性を維持するために、EC50に関するBSVは、推定されたものから≦300%に低下され、影響を調べるために感度分析が含められた。選択された設計により、3つの群:プラセボ、24及び120mg(4週ごと)(16週の治療期間及び40週までの追跡調査を伴う)が指定された。プラセボ患者は、8週後に120mgに移行するべきである。
【0183】
結論:非常に変動が大きいデータにもかかわらず、曝露-UAS7反応モデルは、経時的なプラセボ及びリゲリズマブの用量関連の変化をかなり十分に検出及び示すことができた。確率的シミュレーション-推定は、前向き青年研究では、24mg q4wリゲリズマブがより高い120mg q4w用量と共に使用されるべきであることを示した。24mg用量は、これが、期待されるEC50の領域、すなわちこのパラメータを推定するための感受性の最適点の集中をもたらすために優先された。したがって、無作為化は、不均等であり、24mgに対して20人の患者、120mg及びプラセボに対してそれぞれ10人の患者であった。直接的に治療した患者及びクロスオーバーしたプラセボ患者の両方からの120mg用量は、最大薬物効果の推定を可能にするであろう。全体として、100通りのシミュレーション-推定に基づくと、この手順により、EC50の2倍の増大、すなわち成人と異なる用法用量が考慮されるべきであるものを超える閾値を検出するおよそ80%の確率が存在することが示された。
【0184】
実施例3:リゲリズマブ再治療は、慢性特発性蕁麻疹を有する患者において非常に有効である
方法
第2b相中核試験(NCT02477332)では、中等症~重症のCSU(7日の蕁麻疹活動性スコア[UAS7]≧16)を有する適格の成人患者を、20週にわたって皮下リゲリズマブ24、72若しくは240mg、オマリズマブ300mg又はプラセボ(4週ごと(q4w))を受けるように無作為に割り付けた。二重盲検の治療期間後、患者は、24週の無治療期間に入った。中核研究における最終投与(第32週)のウォッシュアウト後、疾患活動性(UAS7≧12)のエビデンスを有する患者は、非盲検の単一群(リゲリズマブ240mg q4w)延長研究に入るのに適格であった。再治療後の反応を、UAS7を用いて評価し、延長研究に入った患者についての中核研究からの結果を示す。
【0185】
結果
全体として、患者の70.6%(226/320)が延長研究に入った。中核研究中に受けた用量にかかわらず、リゲリズマブ240mg(q4w)での12週の再治療後、有効性の持続(完全奏効者率[UAS7=0を達成する患者の割合]及びUAS7のベースラインからの変化)が見られた(表9を参照されたい)。HSS7=0及びISS7=0の完全奏効者率並びにHSS7及びISS7のベースラインからの平均変化についても同様の傾向が認められた。
【0186】
【0187】
結論
リゲリズマブ再治療は、最初のリゲリズマブ治療から恩恵を受け、且つ治療中断後に再発した、慢性特発性蕁麻疹を有する患者において非常に有効である。
【0188】
実施例4:リゲリズマブは、発疹、痒み及び血管浮腫の慢性特発性蕁麻疹症状のコントロールの持続を達成する:1年の治療結果
背景
リゲリズマブは、第2b相中核(NCT02477332)において、第20週(第16週の最終治療)まで、H1-抗ヒスタミン薬(単独)を用いた又はH2-抗ヒスタミン薬及び/又はロイコトリエン受容体アンタゴニストと組み合わせた、コントロール不十分の慢性特発性蕁麻疹(CSU)を有する患者におけるオマリズマブ及びプラセボに対する発疹、痒み及び血管浮腫の症状のより大きいコントロールを達成した。ここで、本発明者らは、中核研究を完了し、且つ活動性疾患(7日の蕁麻疹活動性スコア[UAS7]≧12)を呈する患者における、非盲検の単一群延長研究(NCT02649218)におけるリゲリズマブ240mg(最大1年)の有効性及び安全性を報告する。
【0189】
方法
中核研究における最終投与のウォッシュアウト及び疾患活動性の証明後、延長研究に入る患者は、4週ごとに(q4w)、52週間、リゲリズマブ240mgを受け;48週の追跡調査中、さらなるモニタリングが継続している。疾患活動性は、UAS7で評価した。血管浮腫発生は、ベースライン来診(すなわち延長研究におけるリゲリズマブの第1の投与前の来診)の7日前に開始する蕁麻疹患者日誌において患者によって記録された。他のすべての来診では、これは、事前の7日間にわたって報告された。
【0190】
結果
中核研究集団から患者の70.6%(226人/320人)が延長研究に入り、88.9%(201人/226人)が1年の非盲検治療を完了した。リゲリズマブの最初の投与(第4週)後、35.4%の患者において、完全な症状コントロール(UAS=0)が達成された。完全奏効は、持続され、50%を超える患者は、第52週の最後にUAS7=0を達成した。1年の治療期間全体を通して、累積的に、75.8%の患者(95%信頼区間[69.9%、81.3%])は、カプラン-マイヤー法に基づいて第52週の最後までに少なくとも1回、完全な症状コントロールを経験した。血管浮腫は、延長期におけるベースライン時に33.2%の患者によって報告され;これは、第4週に10.8%に低下した。血管浮腫を報告した患者の割合の向上は、第52週まで続き、この時点で93.0%の患者に血管浮腫が見られなかった。延長研究における1年の治療中、新たな又は予想外の安全性シグナルは、認められなかった。
【0191】
結論
H1-抗ヒスタミン薬を含む標準治療ではコントロール不十分であったCSUを有する患者において、52週間のリゲリズマブ240mg(q4w)治療を用いて、発疹及び痒み(UAS7=0)並びに血管浮腫の、早期に開始する高い割合の完全なコントロールが達成及び持続された。
【0192】
配列表
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
本発明は次の実施態様を含む。
[請求項1]
慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、第0週中、約24mg~約240mgの用量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を皮下(SC)投与し、且つその後、第4週中に開始して、毎月(4週ごとに)約24mg~約240mgの用量でSC投与することを含み、前記抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む可変軽鎖領域(V
L
)と、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む可変重鎖領域(V
H
)とを含み、CDRL1は、配列番号3からなり、CDRL2は、配列番号4からなり、CDRL3は、配列番号5からなり、CDRH1は、配列番号6からなり、CDRH2は、配列番号7からなり、及びCDRH3は、配列番号8からなる、方法。
[請求項2]
前記V
H
は、配列番号2として記述されるアミノ酸配列を含み、及び前記V
L
は、配列番号1として記述されるアミノ酸配列を含み、前記抗体は、IgEに特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、ヒトIgEに対するヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
ヒトIgEに対するヒト抗体は、リゲリズマブである、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mgである、請求項Bに記載の方法。
[請求項6]
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約72mgである、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約120mgである、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約240mgである、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
第0週中、約24mgの用量でリゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片をSC投与し、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約24mgの用量でSC投与することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
第0週中、約72mgの用量でリゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片をSC投与し、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約72mgの用量でSC投与することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
第0週中、約120mgの用量でリゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片をSC投与し、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約120mgの用量でSC投与することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
第0週中、約240mgの用量でリゲリズマブ抗体又はその抗原結合断片をSC投与し、且つその後、第4週中に開始して、4週ごとに約240mgの用量でSC投与することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
前記患者は、第12週での発疹の完全奏効(発疹重症度スコア[HSS7]=0)又はUAS7=0並びに第4、12及び20週での皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)=0~1によって測定される持続した反応を達成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[請求項14]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片での治療前に、前記患者は、CSUのための全身性薬剤で以前に治療されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
[請求項15]
前記全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-AH及びロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)並びにその組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
前記IgE抗体又は抗原結合断片での治療前に、前記患者は、CSUのための全身性薬剤で以前に治療されていない、請求項1~13又は15のいずれか一項に記載の方法。
[請求項17]
前記患者は、中等症~重症のCSUを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
[請求項18]
前記患者は、成人である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
[請求項19]
前記患者は、青年である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
[請求項20]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片は、医薬製剤中に配分され、前記医薬製剤は、緩衝液及び安定剤をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
[請求項21]
前記医薬製剤は、液体形態である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
[請求項22]
前記医薬製剤は、凍結乾燥形態である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
[請求項23]
前記医薬製剤は、プレフィルドシリンジ、バイアル、ペン型注射器又は自己注射器内に配分される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
[請求項24]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の用量は、約24mgであり、前記医薬製剤は、プレフィルドシリンジ、ペン型注射器及び自己注射器からなる群から選択される投与のための手段内に配分され、前記手段は、キット内に配分され、前記キットは、使用のための説明書をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[請求項25]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の前記用量は、約72mgであり、前記医薬製剤は、自己注射器又はプレフィルドシリンジ内に配分され、前記自己注射器又はプレフィルドシリンジは、キット内に配分され、前記キットは、使用のための説明書をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
[請求項26]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の前記用量は、約120mgであり、前記医薬製剤は、自己注射器又はプレフィルドシリンジ内に配分され、前記自己注射器又はプレフィルドシリンジは、キット内に配分され、前記キットは、使用のための説明書をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
[請求項27]
前記リゲリズマブ抗体又は抗原結合断片の前記用量は、約240mgであり、前記医薬製剤は、自己注射器又はプレフィルドシリンジ内に配分され、前記自己注射器又はプレフィルドシリンジは、キット内に配分され、前記キットは、使用のための説明書をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
[請求項28]
前記用量は、120mg/mlの前記IgE抗体又は抗原結合断片を含む製剤からの1mlの総体積の単回皮下投与として投与される120mgである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
[請求項29]
前記用量は、120mg/mlの前記IgE抗体又は抗原結合断片を含む製剤からの2mlの総体積の単回皮下投与として投与される240mgである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
[請求項30]
前記抗IgE抗体又は抗原結合断片は、約2~14日のT
max
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[請求項31]
前記抗IgE抗体又は抗原結合断片は、約47%~100%の絶対的バイオアベイラビリティを有する、請求項1~3又は30のいずれか一項に記載の方法。
[請求項32]
前記抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、IgGアイソタイプのものである、請求項1~3又は30若しくは31のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】