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特許7589061冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/02 20060101AFI20241118BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241118BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
F04D27/02 A
F25B1/00 101F
F25B1/053 M
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021025494
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127377
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 実
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】中庭 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】時政 泰憲
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 真人
(72)【発明者】
【氏名】呉 文平
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151991(JP,A)
【文献】特開2010-121629(JP,A)
【文献】特開2012-215350(JP,A)
【文献】米国特許第04156578(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/02
F25B 1/00
F25B 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御装置であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する特性取得部と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する制御指令生成部と
前記圧縮機の運転点が、前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部と
を具備し、
前記制御指令生成部は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記圧縮機のインバータ周波数を増加させる制御指令及び前記入口案内翼の開度を減少させる制御指令を生成する冷凍機の制御装置。
【請求項2】
前記特性取得部は、マッハ数をパラメータとして含むとともに圧力変数と流量変数との関係を示す関数で表される演算式と、運転中のマッハ数とを用いて、前記サージング管理用特性を演算する請求項1に記載の冷凍機の制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、運転中の流量変数値が、前記サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定する請求項に記載の冷凍機の制御装置。
【請求項4】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御装置であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する特性取得部と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する制御指令生成部と、
前記圧縮機の運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部と
を具備し、
前記冷凍機は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁とを備え
記制御指令生成部は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する冷凍機の制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、
運転中の流量変数値が、前記サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定する第1判定部と、
運転中の圧力変数が、前記サージング管理用特性に基づいて決定される圧力変数閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と
を備え、
前記制御指令生成部は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあり、かつ、運転中の圧力変数が前記圧力変数閾値以上である場合に、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する請求項に記載の冷凍機の制御装置。
【請求項6】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御装置であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する特性取得部と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する制御指令生成部と、
前記圧縮機の運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部と
を具備し、
前記冷凍機は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁とを備え
記制御指令生成部は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記圧縮機のインバータ周波数を低下させるための制御指令、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令、及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する冷凍機の制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、
運転中の流量変数値が、前記サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定する第1判定部と、
運転中の圧力変数が、前記サージング管理用特性に基づいて決定される圧力変数閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と
を備え、
前記制御指令生成部は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあり、かつ、運転中の圧力変数が前記圧力変数閾値以上である場合に、前記圧縮機のインバータ周波数を低下させるための制御指令、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令、及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する請求項に記載の冷凍機の制御装置。
【請求項8】
前記圧縮機は、軸線回りに回転する複数段の羽根車を備える多段圧縮機であり、
前記特性取得部は、段毎に、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得し、
前記制御指令生成部は、各段における前記サージング管理用特性と各段の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する請求項1からのいずれかに記載の冷凍機の制御装置。
【請求項9】
前記制御指令生成部は、全ての段について、前記運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあると判定された場合に、全ての段において、前記運転点が前記サージング管理領域から外れるように、前記冷凍機の制御指令を生成する請求項に記載の冷凍機の制御装置。
【請求項10】
前記圧縮機は、軸線回りに回転する複数段の羽根車を備える多段圧縮機であり、
前記特性取得部は、前記多段圧縮機の運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得し、
前記制御指令生成部は、前記多段圧縮機における前記サージング管理用特性と運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する請求項1からのいずれかに記載の冷凍機の制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の制御装置を備える冷凍機。
【請求項12】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御方法であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する工程と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する工程と
前記圧縮機の運転点が、前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する工程と
をコンピュータが実行し、
前記制御指令を生成する前記工程は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記圧縮機のインバータ周波数を増加させる制御指令及び前記入口案内翼の開度を減少させる制御指令を生成する冷凍機の制御方法。
【請求項13】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御方法であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する工程と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する工程と、
前記圧縮機の運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する工程と、
をコンピュータが実行し、
前記冷凍機は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁とを備え、
前記制御指令を生成する前記工程は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する冷凍機の制御方法。
【請求項14】
吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御方法であって、
マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する工程と、
前記サージング管理用特性と前記圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する工程と、
前記圧縮機の運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する工程と
をコンピュータが実行し、
前記冷凍機は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、前記バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁とを備え、
前記制御指令を生成する前記工程は、前記圧縮機の運転点が前記サージング管理領域内にあると判定された場合に、前記圧縮機のインバータ周波数を低下させるための制御指令、前記入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令、及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成する冷凍機の制御方法。
【請求項15】
コンピュータを請求項1から10のいずれかに記載の制御装置として機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機のサージングや旋回失速を防止するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、圧縮機の回転数速度制御や圧縮機の羽根車の上流側に取り付けた入口案内翼(以下「IGV」という。)の設定条件毎にサージング発生限界流量を決定し、決定したサージング発生限界流量に基づいて圧縮機の回転制御及びIGVの開度制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6235369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示の制御方法は、事前に実施する性能試験で得たデータからサージング発生限界流量の特性を求めている。また、試験の回数を必要最低限に抑えるため、試験を行っていない設定条件については、試験データから得られたサージング発生限界流量の特性の相似則を用いて求めている。しかしながら、実際の回転数変化やベーン開度変化に対する流量特性の変化は、相似則のみでは表現できない場合がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、サージングを回避しながら運転効率を向上させることのできる冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷凍機の制御装置は、吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御装置であって、マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する特性取得部と、前記サージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する制御指令生成部とを具備する。
【0007】
本開示の冷凍機の制御方法は、吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御方法であって、マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する工程と、前記サージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する工程とをコンピュータが実行する。
【0008】
本開示の冷凍機の制御プログラムは、コンピュータを上記冷凍機の制御装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
サージングを回避しながら運転効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る冷凍機の概略構成を示した図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る制御装置が備える機能のうち、圧縮機のサージングを管理するサージング管理制御機能を抽出して示した機能ブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るサージング管理用特性の一例を示した図である。
図4】本開示の第1実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。
図5】本開示の第1実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について説明するための図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る制御装置が備える機能のうち、圧縮機のサージングを管理するサージング管理制御機能を抽出して示した機能ブロック図である。
図7】本開示の第2実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。
図8】本開示の第2実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について説明するための図である。
図9】本開示の第3実施形態に係る制御装置が備える機能のうち、圧縮機のサージングを管理するサージング管理制御機能を抽出して示した機能ブロック図である。
図10】本開示の第3実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。
図11】本開示の第3実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係る冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る冷凍機の概略構成を示す図である。本実施形態に係る冷凍機1は、例えば、ターボ冷凍機である。図1に示すように、冷凍機1は、例えば、圧縮機3、凝縮器5、蒸発器9が冷媒配管で接続された冷媒回路と、冷凍機1が備える各部の制御を行う制御装置10とを主な構成として備えている。
冷媒は特に限定されない。冷媒の一例として、GWP(Global-Warming Potential)がフロン系冷媒よりも小さい低GWP冷媒が挙げられる。具体的には、二酸化炭素冷媒等が挙げられる。
【0012】
圧縮機3は、例えば、遠心式圧縮機が用いられる。圧縮機3は、一例として、軸線回りに回転する2段の羽根車を備える、いわゆる2段圧縮式の圧縮機とされている。換言すると、圧縮機3は低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bを備えている。しかしながら、圧縮機3の構成はこの例に限定されず、例えば、単段圧縮の圧縮機とされていてもよい。
【0013】
圧縮機3は、例えば、インバータ11によって回転数制御されたモータ12によって駆動される。インバータ11は、制御装置10によって周波数制御され、この結果、モータ12の回転数が制御される。
圧縮機3の冷媒吸入口には、吸入冷媒流量を制御する入口案内翼(以下「IGV」という。)13が設けられており、冷凍機1の容量制御が可能とされている。IGV13の開度は、制御装置10によってIGV用電動モータが駆動されることによって調整される。
【0014】
凝縮器5は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器である。凝縮器5には、例えば、冷媒を冷却するための冷却水が供給される。凝縮器5に導かれる冷却水は、図示しない冷却塔や空気熱交換器において外部へと排熱された後に、再び凝縮器5へと導かれる。凝縮器5は、例えば、空気熱交換器でもよい。凝縮器5を空気熱交換器とした場合、冷やされた外気と冷媒との間で熱交換が行われる。
【0015】
蒸発器9は、シェルアンドチューブ型やプレート型等の熱交換器である。例えば、蒸発器9には、図示しない外部負荷へ供給される冷水が導かれる。冷水は、蒸発器9にて冷媒と熱交換することによって、定格温度(例えば7℃)まで冷却され、外部負荷(図示略)へと送られる。
【0016】
冷媒配管において、凝縮器5と蒸発器9との間には、中間冷却器15が設けられている。中間冷却器15におけるガス冷媒は、圧縮機3が備える高段側圧縮機3bの入口側に供給される構成とされている。
【0017】
冷媒配管において、凝縮器5と中間冷却器15との間には第1膨張弁7aが設けられ、中間冷却器15と蒸発器9との間には第2膨張弁7bが設けられている。
【0018】
第1膨張弁7a及び第2膨張弁7bは、電動式とされている。凝縮器5から導かれた低温高圧の冷媒は、第1膨張弁7aによって等エンタルピ的に膨張させられる。同様に、中間冷却器15から導かれた低温高圧の冷媒は、第2膨張弁7bによって等エンタルピ的に膨張させられる。
第1膨張弁7a及び第2膨張弁7bの開度は、所望のヘッド差(冷凍サイクルにおける冷媒の高低圧差)が得られるように制御装置10によって制御される。
【0019】
圧縮機3の吐出側と圧縮機3の吸込側との間には、ホットガスバイパス管(バイパス管)16が設けられている。ホットガスバイパス管16には、冷媒流量を調整するためのホットガスバイパス弁(バイパス弁)8が設けられている。ホットガスバイパス弁(以下「HGBP弁」という。)によって流量が調整された高温高圧の吐出冷媒が蒸発器9側へと導かれ、圧縮機3(低段側圧縮機3a)の吸込側へとバイパスされるようになっている。HGBP弁8の開度は、制御装置10によってHGBP用電動モータが駆動されることによって調整される。
【0020】
冷凍機1には、例えば、蒸発器9に流入する冷水の温度である冷水入口温度Ti、蒸発器9から流出する冷水の温度である冷水出口温度To、冷水流量Gw、蒸発器圧力Pe、凝縮器5に流入する冷却水の温度である冷却水入口温度Twi、凝縮器5から流出する冷却水の温度である冷却水出口温度Two、凝縮器圧力Pc等、冷凍機1の制御に必要となる各種パラメータを計測するための温度センサ、流量センサ、圧力センサ等が適宜設けられている。これら各センサの計測値は、制御装置10に送信され、冷凍機1の制御に用いられる。
【0021】
制御装置10は、各センサから受信した測定値や上位システムから送られてくる負荷率などに基づいて冷凍機1を制御する。また、制御装置10は、圧縮機3のサージングを未然に防ぐためのサージング管理制御部30を備えている。
【0022】
このような冷凍機1において、圧縮機3から吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器5へ送られる。凝縮器5において、冷却水との熱交換により冷却された冷媒は、第1膨張弁7aにより中間圧に調整されて中間冷却器15へ送られる。中間冷却器15において、冷媒は気液分離され、ガス冷媒は圧縮機3の高段側圧縮機3bの冷媒吸込側へ導かれ、液冷媒は中間冷却器15内に貯留される。中間冷却器15内に貯留された液冷媒は、第2膨張弁7bを通過する過程で断熱膨張した後、蒸発器9に送られる。蒸発器9において、冷媒は冷水との熱交換により気化し、圧縮機3の低段側圧縮機3aに送られる。低段側圧縮機3aにおいて圧縮された冷媒は、中間冷却器15からのガス冷媒と合流して高段側圧縮機3bに吸い込まれ、更に圧縮される。このような動作により、冷凍機1は、所望温度(例えば、7℃)の冷水を外部負荷(図示略)へ供給する。
【0023】
ここで、図1に示した冷凍機1の構成は一例であり、この構成に限定されない。例えば、冷凍機1の構成としては、様々な構成が提案されており、公知の構成を用いることが可能である。また、冷凍機1は冷水を供給する場合に限定されず、例えば、温水を供給するものであってもよいし、或いは、冷水と温水との両方を供給するものであってもよい。また、冷却又は加熱される媒体は水に限られず、空気やそれ以外の媒体であってもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る制御装置10について説明する。
制御装置10は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメインメモリ、記憶部(例えば、ROM、フラッシュメモリ等)を備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、例えば、プログラムの形式で記憶部に記録されており、このプログラムをCPUがメインメモリに読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0025】
なお、プログラムは、記憶部に予めインストールされている形態や、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0026】
図2は、制御装置10が備える機能のうち、圧縮機3のサージングを未然に防ぐためのサージング管理機能を抽出して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、サージング管理制御部30は、例えば、特性取得部31、運転点演算部32、判定部33、及び制御指令生成部34を備えている。
以下、低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bを備える圧縮機3を一つの圧縮機としてみなしてサージング管理を行う場合を例示して説明する。
【0027】
特性取得部31は、圧縮機3の運転点に応じたサージング管理用特性を動的に取得する。特性取得部31は、例えば、マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する。例えば、特性取得部31は、サージング管理用特性を演算するための演算式と、運転中のマッハ数とを用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を演算することにより、サージング管理用特性を取得する。
演算式は、例えば、マッハ数をパラメータとして含むとともに、圧力変数と流量変数との関係を示す関数で表される。
【0028】
例えば、演算式は、以下の(1)~(3)式で表される。ここで、以下の(1)~(3)のうち、(1)、(2)式は、例示であり、この式に限定されない。また、(3)式は一般式である。
【0029】
【数1】
【0030】
上記(1)式において、Ωsurは、運転中のマッハ数(以下「運転マッハ数」という。)における圧力変数のサージング点、a20,a21,a22は所定の定数である。θsurは、運転マッハ数における流量変数のサージング点であり、以下の(2)式で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
上記(2)式において、b20,b21,b22,b23,b24は所定の定数である。Moは、運転マッハ数であり、以下の(3)式で表される。
【0033】
【数3】
【0034】
上記(3)式において、Aは吸込ガスの音速[m/s]、具体的には、蒸発器圧力Peから算出される飽和温度Teにおける吸込冷媒音速である。Fは圧縮機3の回転数を制御するインバータ11のインバータ周波数[Hz]、Dは圧縮機3の羽根外径[m]である。上記各種パラメータのうち、吸込ガスの音速A[m/s]及びインバータ周波数F[Hz]は、運転状態に応じて変化する値(変数)であり、圧縮機3の羽根外径D[m]は圧縮機3の仕様によって決定される固定値である。
【0035】
上記演算式(1)、(2)は、例えば、事前にシミュレーションを行うことにより、運転マッハ数及び運転点を相互に変化させたときのサージング発生点に関するデータを得、これらのデータに基づいて得た関係式である。また、シミュレーションではなく、同様の内容の実機試験を行い、その試験結果に基づいて上記関係式(1)、(2)を得ることとしてもよい。
【0036】
上記演算式は、制御装置10が備える所定の記憶部に予め記録されていてもよいし、ネットワークを介して接続される所定のサーバ上(例えば、クラウド上)に格納されていてもよい。なお、ネットワーク上のサーバ等に格納されている場合には、毎回の起動時においてダウンロードしてもよい。このように、演算式の格納先は、特に限定されない。
【0037】
図3は、サージング管理用特性の一例を示した図である。図3には、異なる3つのマッハ数に対応するサージング管理用特性が示されている。図3において、横軸は流量変数、縦軸は圧力変数であり、特性SUR_0は、設計マッハ数に対応するサージング管理用特性、特性SUR_1は設計マッハ数よりも大きなマッハ数に対応するサージング管理用特性、特性SUR_2は設計マッハ数よりも小さなマッハ数に対応するサージング管理用特性である。
図3に示したグラフにおいて、サージング管理用特性よりも下側の領域Sは、旋回失速やサージングを起こさない安定領域とされ、サージング管理用特性よりも上側の領域は、旋回失速やサージングを起こす不安定領域とされる。
【0038】
上記(1)~(3)式からわかるように、マッハ数は、インバータ11の周波数(以下、「インバータ周波数」という。)が高いほど大きな値をとる。このため、図3に示すように、設計マッハ数のときよりもインバータ周波数が高いほどサージング管理用特性は上方に移動し(例えば、特性SUR_1)、設計マッハ数のときよりもインバータ周波数が低いほどサージング管理用特性は下方に移動する(例えば、特性SUR_2)。
【0039】
本実施形態では、特性取得部31が、演算によってサージング管理用特性を取得する場合について述べたが、サージング管理用特性の取得手法についてはこの例に限定されない。例えば、図3に示すように、流量変数と圧力変数とかなるマップ上に、それぞれ異なるマッハ数に対応するサージング管理用特性が示された空力特性マップを記憶しており、この空力特性マップを用いて運転中の運転マッハ数に対応するサージング管理用特性を取得することとしてもよい。
【0040】
運転点演算部32(図2参照)は、圧縮機3の運転点を算出する。具体的には、運転点演算部32は、運転中の流量変数と運転中の圧力変数とを算出する。
流量変数は、圧縮機3の吸込風量に基づく無次元数である。以下、流量変数について説明する。
【0041】
まず、冷凍機1の冷凍能力Qは、蒸発器9を流れる冷水の入口温度である冷水入口温度Ti、冷水の出口温度である冷水出口温度To並びに冷水流量Gw[kg/s]に基づいて得られる。具体的には、下記(4)式のように、冷水の出入口温度差(Ti-To)に冷水流量Gw及び冷水比熱cp[kJ/(kg・℃)]を乗じて、冷凍能力Qが得られる。
【0042】
Q=(Ti-To)×Gw×cp (4)
【0043】
この冷凍能力Qと、圧縮機3の出入口における冷媒ガスのエンタルピ差Δhとに基づいて、以下の(5)式により、蒸発器9を流れる冷媒の流量である蒸発器冷媒流量Ge(重量流量)が得られる。
【0044】
Ge=k×Q/Δh (5)
【0045】
ここで、kは定数である。
そして、蒸発器冷媒流量Geを体積流量に変換した冷媒流量Qv、圧縮機3の羽根外径D[m]、及び吸込ガスの音速A[m/s]に基づいて、以下の(6)式により、流量変数θが得られる。
【0046】
θ=Qv/(A×D2) (6)
【0047】
このように、流量変数θは、冷凍能力Q及び蒸発器圧力Peから得られる。
【0048】
圧力変数Ωは、圧縮機3のヘッドを反映した無次元数である。圧力変数Ωは、以下の(7)式により得られる。
【0049】
Ω=Δh(Te)/A (7)
【0050】
上記(7)式において、Δh(Te)は冷媒ガスのエンタルピ差であり、凝縮器圧力Pc、蒸発器圧力Pe、及び蒸発器圧力Peから算出される飽和温度Teを用いて演算される。Aは吸込ガスの音速である。
【0051】
判定部33は、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性と、運転点演算部32によって演算された圧縮機の運転点とに基づいて、圧縮機の運転点がサージング管理制御を必要とするサージング管理領域にあるか否かを判定する。
サージング管理領域は、例えば、サージング管理用特性を下方に所定量平行移動させたマージンラインを仮想的に追加し、このマージンラインとサージング管理用特性との間をサージング管理領域とする。
【0052】
例えば、判定部33は、運転中の流量変数の値が、サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下であるかを判定する。より具体的には、判定部33は、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性から運転中の圧力変数に対応する流量変数のサージング点を演算し、このサージング点の流量変数値に所定の余裕度(例えば、0.01)を加算することにより、流量変数閾値を演算する。そして、運転中の流量変数の値が流量変数閾値以下であるか否かを判定する。この結果、運転中の流量変数の値が流量変数閾値以下である場合には、圧縮機の運転点がサージング管理領域にあると判定する。
【0053】
制御指令生成部34は、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、サージングや旋回失速が発生しないように冷凍機1を制御するための制御指令を生成する。
例えば、制御指令生成部34は、判定部33によって、圧縮機の運転点がサージング管理領域にあると判定された場合に、インバータ周波数を上昇させるとともに、IGV開度を減少させるための制御指令を生成する。ここで、IGV開度を減少させるとの意味は、IGVを閉じる方向に制御するという意味であり、IGV開度を増加させるとの意味は、IGVを開く方向に制御するという意味である。
一例として、制御指令生成部34は、インバータ周波数を所定量増加させるための制御指令と、IGV開度を所定開度減少させるための制御指令とを生成する。
【0054】
次に、上述した制御装置10によって実行されるサージング管理制御処理について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。このサージング管理制御処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0055】
以下に示すサージング管理制御処理は、例えば、制御装置10が備える記憶部に格納されたサージング管理制御プログラムをCPUがメインメモリに読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより実行される。
なお、以下に示すサージング管理制御処理の他、制御装置10は、要求負荷を満足するための圧縮機3の回転数制御、IGV開度制御、膨張弁開度制御、ホットバイパス弁開度制御等を行っている。なお、これらの制御については、公知の制御を採用すればよく、ここでの説明は省略する。そして、以下に示すサージング管理制御処理は、要求負荷を満足するような制御等を行っている際に、圧縮機3がサージングを起こしそうな状態であるか否かを所定の時間間隔で管理(監視)し、サージングや旋回失速が生じないように冷凍機1を制御するものである。
【0056】
まず、運転中のマッハ数である運転マッハ数に対応するサージング管理用特性を取得する(SA1)。続いて、圧縮機の運転点を算出する(SA2)。次に、圧縮機の運転点がサージング管理領域内であるか否かを判定する(SA3)。この結果、圧縮機の運転点がサージング管理領域内でない場合には(SA3:NO)、そのまま処理を終了する。一方、圧縮機の運転点がサージング管理領域内である場合には(SA3:YES)、インバータ周波数を所定量増加させる制御指令を生成するとともに(SA4)、IGV開度を所定量減少させる制御指令を生成し(SA5)、本処理を終了する。
【0057】
次に、本実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について図5を参照して説明する。図5において、ラインL1は、異なるマッハ数で同じベーン開度に対応したサージング発生ポイントを結んだ線を示しており、ラインL2は異なるIGV開度における絞り特性を示している。図5に示すように、IGV開度を閉じる方向に制御するほど、ラインL2は、流量変数が減少する方向へ移動する。
例えば、特性取得部31によって運転中のマッハ数に対応するサージング管理用特性として、図5に示す特性SUR_0が得られたとする。このとき、運転点演算部32によって演算された運転点が図5における運転点αであった場合には、運転点αは特性SUR_0上にほぼ位置しているため、判定部33によって、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定される。この場合、制御指令生成部34によってインバータ11の周波数を増加させる制御指令が生成されるとともに、IGV開度を所定量減少させる制御指令が生成される。
【0058】
上記制御が行われることにより、インバータ11の周波数が上昇すると、運転マッハ数は大きくなるので、サージング管理用特性は、特性SUR_0から上方へ移動し、例えば、特性SUR_1で表される特性となる。この場合、IGV開度を制御しなければ、インバータ周波数が上昇することにより、運転点はαからα´へ移動することとなる。しかしながら、本実施形態に係るサージング管理制御では、インバータ周波数を増加させるのとともに、IGV開度を減少させる。IGV開度を減少させると、図5に示すように、サージング管理特性をSUR_1の状態に保ちながら、運転点α´を運転点αへ近づけることが可能となる。
そして、上述したインバータ周波数を上昇させる制御とIGV開度を減少させる制御とを同時に行うことにより、運転点の変化を抑制しながら、サージング管理用特性を上方に移動させることにより、サージング管理特性を運転点から遠ざけることができ、サージング管理領域から外れた安定領域での運転を実現することができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて図面を参照して説明する。以下、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0060】
図6は、本実施形態に係るサージング管理制御部30aの機能ブロック図である。図6に示されるように、サージング管理制御部30aは、特性取得部31、運転点演算部32、判定部33a、及び制御指令生成部34aを備えている。
【0061】
判定部33aは、第1判定部41及び第2判定部42を備えている。
第1判定部41は、例えば、運転中の流量変数値が、サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下であるかを判定する。より具体的には、第1判定部41は、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性から運転中の圧力変数に対応する流量変数のサージング点を演算し、この流量変数値に所定の余裕度(例えば、0.01)を加算することにより、流量変数閾値を演算する。そして、運転中の流量変数値がこの流量変数閾値以下であるか否かを判定する。
【0062】
第2判定部42は、インバータ周波数が下限値であるか否かを判定する。具体的には、第2判定部42は、運転中の圧力変数値が、サージング管理用特性に基づいて決定される圧力変数閾値以上であるかを判定する。より具体的には、第2判定部42は、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性から運転中の流量変数値に対応する圧力変数のサージング点を演算し、サージング点における圧力変数値から所定の余裕度(例えば、0.01)を差し引くことにより、圧力変数閾値を演算する。そして、運転中の圧力変数値がこの圧力変数閾値以上であるか否かを判定する。
【0063】
制御指令生成部34aは、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、サージングや旋回失速が発生しないように、冷凍機1を制御する。例えば、制御指令生成部34aは、第1判定部41によって、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であると判定され、第2判定部42によって、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であると判定された場合に、IGV開度を所定量(例えば、+2%)増加させる制御指令を生成するとともに、HGBP弁開度を増加させる制御指令を生成する。このとき、HGBP弁の弁開度指令値は、IGV開度を変更することにより発揮される能力変化分を吸収する弁開度とされる。詳細は、後述する。
【0064】
次に、上述した制御装置によって実行されるサージング管理制御処理について図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。このサージング管理制御処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0065】
まず、運転中のマッハ数である運転マッハ数に対応するサージング管理用特性を取得する(SB1)。続いて、圧縮機の運転点を算出する(SB2)。次に、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であるか否かを判定する(SB3)。この結果、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下でない場合には(SB3:NO)、そのまま処理を終了する。一方、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下である場合には(SB3:YES)、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であるか否かを判定する(SB4)。この結果、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上でない場合には(SB4:NO)、そのまま処理を終了する。一方、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上である場合には(SB4:YES)、IGV開度を増加させる制御指令を生成するとともに(SB5)、HGBP弁開度を増加させる制御指令を生成し(SB6)、本処理を終了する。
【0066】
次に、本実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について図8を参照して説明する。例えば、特性取得部31によって運転中のマッハ数に対応するサージング管理用特性として、図8に示す特性SUR_0が得られたとする。このとき、運転点演算部32によって演算された運転点が図8における運転点βであった場合には、運転点βは特性SUR_0上にほぼ位置しているため、第1判定部41によって、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であり、第2判定部42によって、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であると判定される。この場合、制御指令生成部34aによってIGV開度を増加させる制御指令が生成されるとともに、HGBP弁開度を増加させる制御指令が生成される。
【0067】
上記制御が行われることにより、IGV開度が開く方向に制御されると、運転点はβからβ´へ移動する。これにより、運転点β´は、サージング管理用特性SUR_0から離れる方向に移動するので、安定した運転領域に移動することとなる。一方、IGV開度を増加させることにより、運転点はIGV開度を変化させる前と異なる運転点になってしまう。しかしながら、IGV開度に対応してHGBP弁開度を増加させることにより、IGV開度の変化による冷凍機1の能力増加分をHGBP弁開度の調整によって吸収することができる。
そして、上述したIGV開度を増加させる制御とHGBP弁開度を増加させる制御とを同時に行うことにより、冷凍機1が発揮する能力を維持しながら、サージング管理領域外へと運転点を移動させることができ、サージング管理用特性から離れた安定領域での運転を実現することができる。
【0068】
ここで、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1判定部41及び第2判定部42の判定結果に基づいて、制御指令生成部34aがIGV開度及びHGBP弁開度の制御指令を生成することとしたが、この例に限定されない。例えば、上述した第1実施形態と同様に、運転点演算部32によって演算された圧縮機の運転点が、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内である場合に、IGV開度及びHGBP弁開度を増加させる制御指令を生成することとしてもよい。
【0069】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて図面を参照して説明する。
以下、第2実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0070】
図9は、本実施形態に係るサージング管理制御部30bの機能ブロック図である。図9に示されるように、サージング管理制御部30bは、特性取得部31、運転点演算部32、判定部33b、及び制御指令生成部34bを備えている。
【0071】
判定部33bは、第1判定部41及び第2判定部43を備えている。
第2判定部43は、インバータ周波数が下限値であるか否かを判定する。具体的には、第2判定部43は、インバータ周波数を運転中の制御値から仮想的に所定量減少させたときの運転マッハ数における圧力変数のサージング点を演算し、この圧力変数値から所定の余裕度(例えば、0.01)を差し引くことにより、圧力変数閾値を演算する。そして、運転中の圧力変数値がこの圧力変数閾値以上であるか否かを判定する。このように、本実施形態では、第2判定部43が用いる判定基準が上述した第2実施形態における第2判定部42と異なる。
【0072】
制御指令生成部34bは、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、サージングや旋回失速が発生しないように、冷凍機1を制御する。例えば、制御指令生成部34bは、第1判定部41によって、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であると判定され、第2判定部43によって、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であると判定された場合に、インバータ周波数を所定量(例えば、1[Hz])減少させる制御指令、IGV開度を所定量(例えば、+2%)増加させる制御指令、及びHGBP弁開度を増加させる制御指令を生成する。このとき、HGBP弁の弁開度指令値は、上述した第2実施形態と同様に、IGV開度を変化することにより発揮される能力変化分を吸収する弁開度とされる。詳細は後述する。
【0073】
次に、上述した制御装置によって実行されるサージング管理制御処理について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態に係るサージング管理制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。このサージング管理制御処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0074】
まず、運転中のマッハ数である運転マッハ数に対応するサージング管理用特性を取得する(SC1)。続いて、圧縮機の運転点を算出する(SC2)。次に、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であるか否かを判定する(SC3)。この結果、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下でない場合には(SC3:NO)、そのまま処理を終了する。一方、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下である場合には(SC3:YES)、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であるか否かを判定する(SC4)。この結果、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上でない場合には(SC4:NO)、そのまま処理を終了する。一方、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上である場合には(SC4:YES)、インバータ周波数を所定量低下させる制御指令を生成し(SC5)、IGV開度を増加させる制御指令を生成し(SC6)、更にHGBP弁開度を増加させる制御指令(SC7)を生成して本処理を終了する。
【0075】
次に、本実施形態に係るサージング管理制御処理の作用について図11を参照して説明する。例えば、特性取得部31によって運転中のマッハ数に対応するサージング管理用特性として、図11に示す特性SUR_1が得られたとする。このとき、運転点演算部32によって演算された運転点が図11における運転点γであった場合には、運転点γは特性SUR_1上にほぼ位置しているため、第1判定部41によって、運転中の流量変数値が流量変数閾値以下であると判定される。また、第2判定部43によって、運転中の圧力変数値が圧力変数閾値以上であると判定された場合には、制御指令生成部34bによってインバータ周波数を低下させる制御指令が生成される。この制御が行われることにより、運転マッハ数の低下により、サージング管理用特性はSUR_1から下方に移動するとともに(例えば、サージング管理用特性SUR_0へ移動)、これに伴い運転点も移動し、例えば、運転点γ´の位置となる。
【0076】
そして、制御指令生成部34bによって、IGV開度を増加させる制御指令が生成されるとともに、HGBP弁開度を増加させる制御指令が生成される。IGV弁が開く方向に制御されると、運転点はγ´からγ´´へ移動する。これにより、運転点γ´´は、サージング管理用特性SUR_0から離れる方向に移動するので、安定した運転領域に移動することとなる。一方、IGV開度を増加させることにより、運転点はIGV開度を変化させる前と異なる運転点になってしまう。しかしながら、IGV開度に対応してHGBP弁開度を増加させることにより、IGV開度の変化による冷凍機1の能力増加分をHGBP弁開度の調整によって吸収することが可能となる。
そして、上述したインバータ周波数を低下させる制御と、IGV開度を増加させる制御と、HGBP弁開度を増加させる制御とを同時に行うことにより、冷凍機1が発揮する能力を維持しながら、サージング管理領域外へと運転点を移動させることができ、安定領域での運転を実現することができる。
【0077】
ここで、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1判定部41及び第2判定部43の判定結果に基づいて、制御指令生成部34bが圧縮機の運転点と運転中のサージング管理用特性との関係に応じてインバータ周波数、IGV開度、及びHGBP弁開度の制御指令を生成することとしたが、この例に限定されない。例えば、上述した第1実施形態と同様に、運転点演算部32によって演算された圧縮機の運転点が、特性取得部31によって取得されたサージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内である場合に、インバータ周波数を低下させる制御指令を生成するとともに、IGV開度及びHGBP弁開度を増加させる制御指令を生成することとしてもよい。
【0078】
なお、上述した各実施形態では、低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bを備える圧縮機3を一つの圧縮機としてみなして、サージング管理を行う場合を例示したが、この例に限定されない。例えば、段毎、換言すると、低段側圧縮機3a、高段側圧縮機3bのそれぞれについて、サージング管理を行うこととしてもよい。この場合、例えば、段毎に運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得し、各段におけるサージング管理用特性と各段の運転点との関係に応じて、冷凍機の制御指令を生成する。また、この場合において、全ての段において、運転点がサージング管理領域内にあると判定された場合に、全ての段について、運転点がサージング管理領域から外れるように、冷凍機の制御指令を生成することとしてもよい。このように制御することにより、例えば、低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bの両方について運転点がサージング管理領域内と判定されるまで、上述したようなサージング管理に基づくインバータ周波数の制御、IGV開度の制御、HGBP弁開度の制御は行われないこととなる。これにより、サージング管理に基づく制御を可能な限り遅らせることができ、それまで現在の運転条件を維持することが可能となる。
【0079】
また、低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bのうち、どちらか一方がサージングに入りにくい特性になっている場合には、サージングに入りにくい方の圧縮機のみに基づいてサージング管理を行うこととしてもよい。例えば、低段側圧縮機3aに比べて高段側圧縮機3bの方がサージングに入りにくい特性になっている場合、高段側圧縮機3bの運転点がサージング管理領域内と判定された場合に、低段側圧縮機3a及び高段側圧縮機3bについてサージング管理に基づく制御を行うこととしてもよい。
【0080】
また、上述した各実施形態では、2段圧縮式の冷凍機を例示して説明したが、例えば、単段圧縮の圧縮機を採用した場合には、特性取得部31は、以下の演算式を用いてサージング管理特性を取得してもよい。なお、以下の演算式は一例であり、この演算式に限定されない。
以下の(8)、(9)式は、一例としての単段圧縮の場合のサージング管理特性の演算式である。
【0081】
【数4】
【0082】
上記(8)式において、Ωsurは、運転中のマッハ数(以下「運転マッハ数」という。)における圧力変数のサージング点、a10,a11,a12,a13は所定の定数である。θsurは、運転マッハ数における流量変数のサージング点であり、以下の(9)式で表される。
【0083】
【数5】
【0084】
上記(9)式において、b10,b11,b12,b13,b14は所定の定数である。Moは、運転マッハ数であり、上記(3)式で表される。
【0085】
以上、本開示の冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムについて実施形態を用いて説明したが、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができる。また、上記実施形態で説明したサージング管理制御処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0086】
以上説明した各実施形態に記載の冷凍機の制御装置、制御方法、及び制御プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0087】
本開示に係る冷凍機の制御装置(10)は、吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼(13)を有する圧縮機(3)と、凝縮器(5)と、蒸発器(9)とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機(1)の制御装置であって、マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する特性取得部(31)と、サージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、冷凍機の制御指令を生成する制御指令生成部(34、34a、34b)とを備える。
【0088】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得するので、運転点に応じたサージング管理用特性を動的に得ることができる。そして、取得したサージング管理用特性と運転中の運転との関係に応じて冷凍機の制御を行うので、サージングを回避しながら運転効率を向上させることが可能となる。
また、圧縮機特性は、通常、無次元数を用いて制御されている。このため、本開示に係る冷凍機の制御装置のように、無次元数である「マッハ数」を用いてサージング管理特性を得ることにより、圧縮機の制御との親和性を高くすることが可能となる。また、「マッハ数」を利用することにより、演算処理等を簡素化できる等の利点も得られる。
【0089】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、特性取得部は、マッハ数をパラメータとして含むとともに圧力変数と流量変数との関係を示す関数で表される演算式と、運転中のマッハ数とを用いて、サージング管理用特性を演算してもよい。
【0090】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、演算式を用いて運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を得るので、処理負担の軽減及びデータ量を少なくすることができる。
【0091】
本開示に係る冷凍機の制御装置は、圧縮機の運転点がサージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部(33)を備え、制御指令生成部(34)は、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定された場合に、圧縮機のインバータ周波数を増加させる制御指令及び入口案内翼の開度を減少させる制御指令を生成することとしてもよい。
【0092】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、運転点を維持しながらサージングを回避することが可能となる。
【0093】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、判定部(33)は、運転中の流量変数値が、サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定してもよい。
【0094】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、現在の運転点がサージング領域内にあるか否かを容易に判定することが可能となる。
【0095】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、冷凍機は、圧縮機から吐出された冷媒を圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管(16)と、バイパス管(16)に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁(8)とを備えていてもよい。また、冷凍機の制御装置は、圧縮機の運転点がサージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部(33a)を備えていてもよい。また、制御装置の制御指令生成部(34a)は、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定された場合に、入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及びバイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成してもよい。
【0096】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、冷凍機が発揮する能力を維持しながら、サージングを回避することが可能となる。
【0097】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、判定部(33a)は、運転中の流量変数値が、サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定する第1判定部(41)と、圧縮機のインバータ周波数が下限値であるか否かを判定する第2判定部(42)とを備えていてもよい。また、制御指令生成部(34a)は、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあり、かつ、インバータ周波数が下限値である場合に、入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及び前記バイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成することとしてもよい。
【0098】
本開示に係る冷凍機の制御装置(10)によれば、冷凍機が発揮する能力を維持しながら、サージングを回避することが可能となる。
【0099】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、冷凍機は、圧縮機から吐出された冷媒を圧縮機の吸気側にバイパスさせるバイパス管と、バイパス管に設けられるとともに、冷媒流量を調整するためのバイパス弁とを備え、圧縮機の運転点がサージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあるか否かを判定する判定部(33b)を備え、制御指令生成部(34b)は、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定された場合に、圧縮機のインバータ周波数を低下させるための制御指令、入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令及びバイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成してもよい。
【0100】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、冷凍機が発揮する能力を維持しながら、サージングを回避することが可能となる。
【0101】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、判定部(33b)は、運転中の流量変数値が、サージング管理用特性に基づいて決定される流量変数閾値以下である場合に、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあると判定する第1判定部(41)と、圧縮機のインバータ周波数が下限値であるか否かを判定する第2判定部(43)とを備え、制御指令生成部(34b)は、圧縮機の運転点がサージング管理領域内にあり、かつ、インバータ周波数が下限値である場合に、圧縮機のインバータ周波数を低下させるための制御指令、入口案内翼の開度を開く方向に制御するための制御指令、及びバイパス弁を開く方向に制御するための制御指令を生成してもよい。
【0102】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、冷凍機が発揮する能力を維持しながら、サージングを回避することが可能となる。
【0103】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、前記圧縮機は、軸線回りに回転する複数段の羽根車を備える多段圧縮機であり、前記特性取得部は、段毎に、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得し、前記制御指令生成部は、各段における前記サージング管理用特性と各段の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成することとしてもよい。
【0104】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、段毎にサージング管理を行うことが可能となり、細やかな制御が可能となる。
【0105】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、前記制御指令生成部は、全ての段について、前記運転点が前記サージング管理用特性に基づいて設定されるサージング管理領域内にあると判定された場合に、全ての段について、前記運転点が前記サージング管理領域から外れるように、前記冷凍機の制御指令を生成することとしてもよい。
【0106】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、例えば、全ての段において運転点がサージング管理領域内と判定されるまで、サージング管理制御、換言すると、サージングを避けるための制御は行われない。これにより、多段圧縮機全体を一つの圧縮機としてみなしてサージング管理制御を行う場合に比べて、サージングを避けるための制御を可能な限り遅らせることができ、それまで現在の運転条件を維持することが可能となる。
【0107】
本開示に係る冷凍機の制御装置において、前記圧縮機は、軸線回りに回転する複数段の羽根車を備える多段圧縮機であり、前記特性取得部は、前記多段圧縮機の運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得し、前記制御指令生成部は、前記多段圧縮機における前記サージング管理用特性と運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成することとしてもよい。
【0108】
本開示に係る冷凍機の制御装置によれば、多段圧縮機全体を一つの圧縮機としてみなしてサージング管理制御が行われる。これにより、段毎にサージング管理制御を行う場合に比べて、サージングをより確実に回避することができるとともに、演算負担を軽減することが可能となる。
【0109】
本開示に係る冷凍機は、上記制御装置を備える。
【0110】
本開示に係る冷凍機の制御方法は、吸込冷媒の流量を調整するための入口案内翼を有する圧縮機と、凝縮器と、蒸発器とが設けられた冷媒配管を備える冷凍機の制御方法であって、マッハ数とサージング管理用特性とが関連付けられた情報を用いて、運転中のマッハ数に応じたサージング管理用特性を取得する工程と、前記サージング管理用特性と圧縮機の運転点との関係に応じて、前記冷凍機の制御指令を生成する工程とをコンピュータが実行する。
【0111】
本開示の制御プログラムは、コンピュータを上記制御装置として機能させる。
【符号の説明】
【0112】
3 圧縮機
5 凝縮器
8 ホットガスバイパス弁(バイパス弁)
9 蒸発器
10 制御装置
11 インバータ
16 ホットガスバイパス管(バイパス管)
30,30a,30b サージング管理制御部
31 特性取得部
32 運転点演算部
33,33a,33b 判定部
34,34a,34b 制御指令生成部
41 第1判定部
42,43 第2判定部
図1
図2
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図5
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図11