(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-15
(45)【発行日】2024-11-25
(54)【発明の名称】センサシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241118BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
G06F3/041 550
G06F3/03 400Z
G06F3/041 560
G06F3/041 512
(21)【出願番号】P 2021025946
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2021510147の分割
【原出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019229210
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】久野 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133487(JP,A)
【文献】特開2012-173914(JP,A)
【文献】特開昭64-031221(JP,A)
【文献】特開2010-277126(JP,A)
【文献】特開2010-002946(JP,A)
【文献】特開2017-207915(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162167(WO,A1)
【文献】特開2020-154836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセンサ電極群及び該第1のセンサ電極群に接続される第1の集積回路と、
第2のセンサ電極群及び該第2のセンサ電極群に接続される第2の集積回路とを含み、
前記第1の集積回路及び前記第2の集積回路は、ペンを検出するためのペン検出動作を行うペン検出動作区間と、指を検出するためのタッチ検出動作を行うタッチ検出動作区間とを、同じタイミングで交互に繰り返すよう構成され、
前記第1の集積回路が前記第1のセンサ電極群を介して送信する第1のアップリンク信号と、前記第2の集積回路が前記第2のセンサ電極群を介して送信する第2のアップリンク信号とが1つの
前記ペン検出動作区間内の互いに重複しない時間にそれぞれ送信されることとなるよう前記第1及び第2の集積回路を制御する、
センサシステム。
【請求項2】
前記第1及び第2の集積回路に接続されるホストプロセッサをさらに含み、
前記ホストプロセッサにより、前記第1のアップリンク信号と前記第2のアップリンク信号とが1つの
前記ペン検出動作区間内の互いに重複しない時間にそれぞれ送信されることとなるよう前記第1及び第2の集積回路を制御する、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の集積回路が相互に通信を行うことにより、前記第1のアップリンク信号と前記第2のアップリンク信号とが1つの
前記ペン検出動作区間内の互いに重複しない時間にそれぞれ送信されることとなるよう前記第1及び第2の集積回路を制御する、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記第1の集積回路は、前記第1のアップリンク信号を送信している期間以外は受信動作を行わないよう、前記第1のアップリンク信号を受信したスタイラスを制御する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記第1の集積回路は、前記第1のアップリンク信号の送信間隔を前記スタイラスに通知することにより、前記第1のアップリンク信号を送信している期間以外は受信動作を行わないよう前記スタイラスを制御する、
請求項4に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサシステムに関し、特に、デュアルスクリーンモデルのためのセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2つの画面を有するタイプの電子機器の開発が進んでいる。以下、この種の電子機器を「デュアルスクリーンモデル」と称する。デュアルスクリーンモデルの開発に伴い、2つの画面のそれぞれにおいて、スタイラスによる入力(以下、「ペン入力」と称する)及び、指による入力(以下、「タッチ入力」と称する)を利用可能にする技術の開発も進められている。
【0003】
特許文献1には、そのような技術の一例が開示されている。特許文献1に示されるように、デュアルスクリーンモデル内には、第1の画面用の集積回路及びセンサ電極群と、第2の画面用の集積回路及びセンサ電極群と、各集積回路に接続されるホストプロセッサとを含むセンサシステムが設けられ、このセンサシステムによってペン入力及びタッチ入力が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スタイラスには、画面から送出されるアップリンク信号を受信し、受信したアップリンク信号に応じて動作するように構成されるものがある。この種のスタイラスをデュアルスクリーンモデルで利用できるようにするには、2つの画面のそれぞれから送出されるアップリンク信号の干渉を防止する必要がある。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、デュアルスクリーンモデルに設けられる2つの画面のそれぞれから送出されるアップリンク信号の干渉を防止することのできるセンサシステムを提供することにある。
【0007】
また、デュアルスクリーンモデルでペン入力を利用する場合、一方の画面でスタイラスの利用を開始した後、ペン先が他方の画面に移動したときにも、連続して使えることが好ましい。
【0008】
したがって、本発明の目的の他の1つは、デュアルスクリーンモデルを構成する2つの画面の間での連続的なスタイラスの使用を可能にするセンサシステムを提供することにある。
【0009】
また、デュアルスクリーンモデルでタッチ入力を利用する場合、ユーザが2つの画面の両方に同時に接触すると、一方の集積回路が送出している指タッチ検出用信号が他方の集積回路により受信されてしまうおそれがある。このような受信は集積回路及びホストプロセッサの誤動作の原因となるので、回避する必要がある。
【0010】
したがって、本発明の目的のさらに他の1つは、一方の集積回路が送出している指タッチ検出用信号が他方の集積回路により受信されてしまうことを防止できるセンサシステムを提供することにある。
【0011】
また、従来はデュアルスクリーンモデル内の2つの集積回路が互いに同期せずに動作していたため、各集積回路から供給される位置データの順序をホストプロセッサが誤って処理してしまい、描画結果に影響する場合があった。
【0012】
したがって、本発明の目的のさらに他の1つは、各集積回路から供給される位置データの順序をホストプロセッサにより正しく処理することのできるセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面によるセンサシステムは、第1のセンサ電極群及び該第1のセンサ電極群に接続される第1の集積回路と、第2のセンサ電極群及び該第2のセンサ電極群に接続される第2の集積回路とを含み、前記第1の集積回路が前記第1のセンサ電極群を介して送信する第1のアップリンク信号と、前記第2の集積回路が前記第2のセンサ電極群を介して送信する第2のアップリンク信号とが同じ時間に送信されないよう前記第1及び第2の集積回路を制御する、センサシステムである。
【0014】
本発明の第2の側面によるセンサシステムは、第1のセンサ電極群及び該第1のセンサ電極群に接続される第1の集積回路と、第2のセンサ電極群及び該第2のセンサ電極群に接続される第2の集積回路とを含み、前記第1の集積回路は、スタイラスとペアリングした場合、該ペアリングにかかるペアリング情報を前記第2の集積回路と共有する、センサシステムである。
【0015】
本発明の第3の側面によるセンサシステムは、第1のセンサ電極群及び該第1のセンサ電極群に接続される第1の集積回路と、第2のセンサ電極群及び該第2のセンサ電極群に接続される第2の集積回路とを含み、前記第1及び第2の集積回路の一方がタッチ入力の検出動作を行っている場合、前記第1及び第2の集積回路の他方によるタッチ入力の検出動作を制限する、センサシステムである。
【0016】
本発明の第4の側面によるセンサシステムは、第1のセンサ電極群及び第2のセンサ電極群と、前記第1のセンサ電極群に第1の指タッチ検出用信号を供給することによりタッチ入力の検出動作を行う第1の集積回路と、前記第2のセンサ電極群に第2の指タッチ検出用信号を供給することによりタッチ入力の検出動作を行う第2の集積回路とを含み、前記第1及び第2の指タッチ検出用信号は、パルス区間のエッジの時間的な位置が互いに異なることとなるように構成されたパルス信号である、センサシステムである。
【0017】
本発明の第5の側面によるセンサシステムは、第1のセンサ電極群及び該第1のセンサ電極群に接続される第1の集積回路と、第2のセンサ電極群及び該第2のセンサ電極群に接続される第2の集積回路とを含み、前記第1及び第2の集積回路は、互いに同期した状態でタッチ入力の検出動作を行う、センサシステムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の側面によれば、第1及び第2のアップリンク信号が同じ時間には送信されなくなるので、デュアルスクリーンモデルに設けられる2つの画面のそれぞれから送出されるアップリンク信号の干渉を防止することが可能になる。
【0019】
本発明の第2の側面によれば、第1及び第2の集積回路の間でペアリング情報が共有されるので、デュアルスクリーンモデルを構成する2つの画面の間での連続的なスタイラスの使用が可能になる。
【0020】
本発明の第3の側面によれば、一方の集積回路がタッチ入力の検出動作を行っている間、他方の集積回路によるタッチ入力の検出動作が制限されるので、一方の集積回路が送出している指タッチ検出用信号が他方の集積回路により受信されてしまうことを防止できる。
【0021】
本発明の第4の側面によれば、第1の指タッチ検出用信号と第2の指タッチ検出用信号でパルス区間のエッジの時間的な位置が互いに異なるので、一方の集積回路が送出している指タッチ検出用信号が他方の集積回路により受信されてしまうことを防止できる。
【0022】
本発明の第5の側面によれば、第1及び第2の集積回路が互いに同期した状態でタッチ入力の検出動作を行うので、ホストプロセッサは、各集積回路から供給される位置データの順序を正しく処理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による電子機器1の外観を示す図である。
【
図2】電子機器1に備えられるセンサシステム3の構成を示す図である。
【
図3】第1の集積回路13及び第2の集積回路23の動作の概要を示すタイミング図である。
【
図5】(a)(b)はそれぞれ、指タッチ検出用信号FDSを構成する信号s
1~s
Kの具体的な波形の例を示す図である。
【
図6】第1の集積回路13、第2の集積回路23、及びスタイラスPのそれぞれにより送受信される信号のタイミング図である。
【
図7】ユーザが手Hを第2のパネル面21上に置いた状態で、第1のパネル面11上で指Fを摺動させている状態を示す図である。
【
図8】タッチ検出動作TDの制限の一例を示す図である。
【
図9】(a)(b)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態による指タッチ検出用信号FDSの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態による電子機器1の外観を示す図である。同図には、電子機器1による検出の対象となるスタイラスP及び指Fについても図示している。また、
図2は、スタイラスP及び指Fを検出するために電子機器1内に設けられるセンサシステム3の構成を示す図である。
【0026】
図1に示すように、電子機器1は、連結部2によって連結された第1の筐体10及び第2の筐体20を有して構成される。連結部2はヒンジ及びフレキシブル基板を含んで構成されており、第1の筐体10は、図示した破線矢印Aに示すように、連結部2を中心として360°回動可能に構成される。フレキシブル基板は第1の筐体10及び第2の筐体20の相対的な位置に応じた角度で変形するように構成された基板であり、その中には、第1の筐体10内の配線と第2の筐体20内の配線とを接続するための配線が配置される。
【0027】
第1の筐体10には第1のパネル面11が設けられ、第2の筐体20には第2のパネル面21が設けられる。これら第1のパネル面11及び第2のパネル面21それぞれの表面は平坦であり、ユーザは、第1のパネル面11及び第2のパネル面21の表面でスタイラスPのペン先及び指Fを摺動させることができる。また、第1のパネル面11及び第2のパネル面21はそれぞれ、第1の筐体10を180°の位置にセットした場合に同じ方向を向くように、各筐体の表面に配置される。さらに、第1のパネル面11及び第2のパネル面21はともに長方形であり、第1の筐体10を180°の位置にセットした場合に、それぞれの長辺方向が第1のパネル面11及び第2のパネル面21の整列方向と直交するように配置される。
【0028】
ここで、第1のパネル面11及び第2のパネル面21はそれぞれ、ディスプレイの表示面を兼ねていてもよいし、兼ねていなくてもよい。第1のパネル面11及び第2のパネル面21とディスプレイの表示面とを兼ねるための具体的な方式としては、ディスプレイ内の画素を駆動するための電極の一部(例えば、液晶ディスプレイの共通電極)を後述するセンサ電極群の一部(例えば、後述する複数のセンサ電極12x又は複数のセンサ電極22x)としても利用するインセル方式、ディスプレイ内に後述するセンサ電極群を設けるものの、ディスプレイ内の画素を駆動するための電極とは別にセンサ電極群を設けるオンセル方式、ディスプレイパネル上に後述するセンサ電極群を配置するアウトセル方式など、各種の方式を採用することが可能である。第1のパネル面11及び第2のパネル面21の両方をディスプレイの表示面と兼用する場合、電子機器1は上述したデュアルスクリーンモデルとなる。
【0029】
次に
図2を参照すると、センサシステム3は、第1のセンサ電極群12x,12y、第1の集積回路13、第1の引き出し配線14x,14y、第2のセンサ電極群22x,22y、第2の集積回路23、第2の引き出し配線24x,24y、及びホストプロセッサ30を有して構成される。このうち第1のセンサ電極群12x,12y、第1の集積回路13、及び第1の引き出し配線14x,14yは第1の筐体10内に配置され、第2のセンサ電極群22x,22y、第2の集積回路23、第2の引き出し配線24x,24y、及びホストプロセッサ30は第2の筐体20内に配置される。なお、ホストプロセッサ30を第2の筐体20内に配置しているのは一例に過ぎず、第1の筐体10内に配置しても構わない。
【0030】
図2に示すように、第1の集積回路13及び第2の集積回路23は、配線31によって相互に接続される。また、第1の集積回路13及び第2の集積回路23は、それぞれ配線32,33によってホストプロセッサ30に接続される。このうち配線31,32の一部は、上述したフレキシブル基板内に延設される。なお、
図2では配線31~33をそれぞれ1本の線により描いているが、実際にはそれぞれが複数の配線の集合である。
【0031】
第1のセンサ電極群12x,12yは、
図1にも示すように第1のパネル面11の内側に配置される。同様に、第2のセンサ電極群22x,22yは第2のパネル面21の内側に配置される。第1のセンサ電極群12x,12yは、それぞれ第1のパネル面11の長辺方向に沿って延在し、第1のパネル面11の短辺方向に沿って等間隔で配置される複数のセンサ電極12xと、それぞれ第1のパネル面11の短辺方向に沿って延在し、第1のパネル面11の長辺方向に沿って等間隔で配置される複数のセンサ電極12yとを含んで構成される。また、第2のセンサ電極群22x,22yは、それぞれ第2のパネル面21の長辺方向に沿って延在し、第2のパネル面21の短辺方向に沿って等間隔で配置される複数のセンサ電極22xと、それぞれ第2のパネル面21の短辺方向に沿って延在し、第2のパネル面21の長辺方向に沿って等間隔で配置される複数のセンサ電極22yとを含んで構成される。
【0032】
第1の集積回路13は、センサ電極12xごとに設けられた第1の引き出し配線14xにより各センサ電極12xに接続されるとともに、センサ電極12yごとに設けられた第1の引き出し配線14yにより各センサ電極12yに接続される。同様に、第2の集積回路23は、センサ電極22xごとに設けられた第2の引き出し配線24xにより各センサ電極22xに接続されるとともに、センサ電極22yごとに設けられた第2の引き出し配線24yにより各センサ電極22yに接続される。
【0033】
第1の集積回路13は、第1のパネル面11上に存在するスタイラスP及び指Fを検出する機能と、検出したスタイラスP又は指Fの第1のパネル面11内における位置を導出し、導出した位置を示す位置データをホストプロセッサ30に供給する機能と、第1のセンサ電極群12x,12yを介してスタイラスPとの間で双方向に信号の送受信を行う機能とを有して構成される。同様に、第2の集積回路23は、第2のパネル面21上に存在するスタイラスP及び指Fを検出する機能と、検出したスタイラスP又は指Fの第2のパネル面11内における位置を導出し、導出した位置を示す位置データをホストプロセッサ30に供給する機能と、第2のセンサ電極群22x,22yを介してスタイラスPとの間で双方向に信号の送受信を行う機能とを有して構成される。第1の集積回路13及び第2の集積回路23は、ホストプロセッサ30の制御により、又は、配線31を介して相互に通信を行うことにより、これらの機能を互いに同期した状態で実行するよう構成される。
【0034】
以下の説明では、第1の集積回路13がスタイラスPに対して送信する信号を第1のアップリンク信号US1と称し、第2の集積回路23がスタイラスPに対して送信する信号を第2のアップリンク信号US2と称する。なお、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2を区別する必要がない場合には、これらを総称してアップリンク信号USという場合がある。また、スタイラスPが送信する信号をダウンリンク信号DSと称する。
【0035】
図1に示す領域US1aは、第1のアップリンク信号US1の到達可能範囲である。また、
図1に示す領域US2aは、第2のアップリンク信号US2の到達可能範囲である。
図1の記載から明らかなように、第1の筐体10と第2の筐体20のなす角度によっては、領域US1aと領域US2aとが重複することになる。この重複領域内にあるスタイラスPは、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2の両方を受信することができる。したがって、電子機器1においては、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2の干渉を防止する必要がある。
【0036】
図2に戻り、ホストプロセッサ30は、図示しないメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、電子機器1のオペレーティングシステム及び各種のアプリケーションを実行する電子機器1の中央処理装置である。ホストプロセッサ30は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23を介し、スタイラスPによるペン入力又は指Fによるタッチ入力を受け付け、オペレーティングシステム又はアプリケーションに供給する役割も果たす。ペン入力又はタッチ入力を受けて動作するアプリケーションには、例えば描画用のアプリケーションが含まれる。この種のアプリケーションでは、ペン入力又はタッチ入力に基づいて、ストロークデータの生成及び描画が行われる。
【0037】
図3は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の動作の概要を示すタイミング図である。同図に示すように、第1の集積回路13及び第2の集積回路23はそれぞれ、スタイラスPを検出するためのペン検出動作PDと、指Fを検出するためのタッチ検出動作TDとを、同じタイミングで交互に繰り返し実行するよう構成される。
【0038】
以下、ペン検出動作PD及びタッチ検出動作TDそれぞれの概要を説明する。なお、以下では第1の集積回路13を例に取って説明するが、第2の集積回路23についても同様である。
【0039】
初めに、ペン検出動作PDについて説明する。ペン検出動作PDが行われる区間は、
図3に示すように、アップリンク信号USの送受信区間P1と、ダウンリンク信号DSの送受信区間P2とを含んで構成される。このうちダウンリンク信号DSの送受信区間P2は、複数の時間スロットTS1~TSnに分割されており、複数のスタイラスPが時分割多重によってダウンリンク信号DSを送信可能に構成される。図示していないが、時分割多重に加えて、或いは、時分割多重に代えて、周波数分割多重や直交周波数分割多重などの他の多重方式を利用することとしてもよい。以下では、時分割多重及び周波数分割多重を利用する場合を例に取って説明を続ける。
【0040】
第1の集積回路13は、アップリンク信号USの送受信区間P1を利用して、新たに検出したスタイラスPに対して割り当てる予定のローカルペンID、時間スロット、及び周波数を特定するペアリング情報を含む第1のアップリンク信号US1を周期的に送信するよう構成される。この第1のアップリンク信号US1を受信したスタイラスPは、まだいずれの集積回路ともペアリングしていない場合、第1のアップリンク信号US1により示される時間スロット及び周波数を用いて、自身のメモリ内に記憶しているペンIDを含むダウンリンク信号DSを送信するとともに、第1のアップリンク信号US1に含まれていたペアリング情報を自身のメモリ内に記憶する。
【0041】
ここで、送受信区間P2内の各時間スロットには予め番号が割り振られており、第1の集積回路13は、この番号を特定することにより時間スロットを特定するよう構成される。スタイラスPは、第1のアップリンク信号US1の受信タイミングに基づいて各時間スロットの時間的な位置を決定したうえで、ペアリング情報により割り当てられた時間スロットでダウンリンク信号DSを送信するよう構成される。
図3には、ペアリング情報により時間スロットTS2,TS4,TSnが割り当てられた場合の例を図示している。
【0042】
ダウンリンク信号DSを受信した第1の集積回路13は、受信したペンIDを、上記ペアリング情報と対応付けて自身のメモリ内に記憶する。ここまでの処理により、第1の集積回路13とスタイラスPのペアリングが完了する。その後、第1の集積回路13は、必要に応じてローカルペンID及びコマンドを含む第1のアップリンク信号US1を送信することにより、ペアリングしたスタイラスPに対して送信すべきデータを指示する。
【0043】
スタイラスPは、ダウンリンク信号DSとして、バースト信号である位置信号と、第1のアップリンク信号US1により指示されたデータにより所定の搬送波信号を変調してなるデータ信号とを送信するよう構成される。第1の集積回路13は、各センサ電極12x,12yにおける位置信号の受信強度に基づいてスタイラスPの位置を導出するとともに、データ信号を受信して復調することにより、スタイラスPが送信したデータを取得する。そして、導出した位置を示す位置データ及びスタイラスPから取得したデータをホストプロセッサ30に出力する。
【0044】
次に、タッチ検出動作TDについて説明する。
図4は、タッチ検出動作TDの原理を示す図である。簡単のため、同図には4本のセンサ電極12xのみを示しているが、実際にはより多くのセンサ電極12xが配置される。以下、センサ電極12xの本数がK本であるとして説明を続ける。
【0045】
タッチ検出動作TDを行う場合の第1の集積回路13は、各センサ電極12xに対して指タッチ検出用信号FDSを供給する。
図4に示すように、指タッチ検出用信号FDSは例えば、それぞれK個の「1」又は「-1」で表されるパルスからなるK個の信号s
1~s
Kによって構成される。信号s
1~s
Kそれぞれのn番目(n=1~K)のパルスはパルス群p
nを構成し、1つのパルス群p
nを構成する各パルスは、各センサ電極12xにパラレルに入力される。
【0046】
以下、センサ電極12xの本数が4本(すなわち、K=4)であるとして説明を行うが、センサ電極12xの本数が3本以下又は5本以上である場合についても同様である。センサ電極12xの本数が4本である場合、信号s
1~s
Kはそれぞれ、4個の「1」又は「-1」で表されるパルスによって構成される。具体的には、
図4に示すように、信号s
1が「1,1,1,1」、信号s
2が「1,1,-1,-1」、信号s
3が「1,-1,-1,1」、信号s
4が「1-1,1,-1」によりそれぞれ構成される。
【0047】
第1の集積回路13は、シフトレジスタ13a及び相関器13bを含んで構成される。シフトレジスタ13aはFIFO形式の記憶部であり、センサ電極12xの本数と同数(すなわち、K個)のデータを格納可能に構成される。シフトレジスタ13aに新たにデータを格納する際には、K回前に格納されたデータが消去される。第1の集積回路13は、1つのセンサ電極12yを選択し、パルス群p1~p4を順次各センサ電極12xに入力する、という動作を各センサ電極12yについて繰り返す。これにより、選択中のセンサ電極12yには、それぞれパルス群p1~p4に対応する4つのレベルL1~L4が順次現れることになる。第1の集積回路13は、こうしてセンサ電極12yに現れるレベルL1~L4を順次取得し、その都度、シフトレジスタ13aに格納する。
【0048】
レベルL
1~L
4の具体的な内容について、
図4に示したセンサ電極12y
1が選択されている場合を例に取って詳しく説明する。以下の説明では、センサ電極12y
1と4本のセンサ電極12x
1~12x
4のそれぞれとの間に形成されるキャパシタンスを、それぞれC
11~C
41とする。
【0049】
まずパルス群p
1に対応してシフトレジスタ13aに格納されるレベルL
1は、キャパシタンスのベクトル(C
11,C
21,C
31,C
41)と、パルス群p
1を示すベクトル(1,1,1,1)との内積となる。この内積は、
図4にも示すように、C
11+C
21+C
31+C
41と計算される。同様に、パルス群p
2に対応してシフトレジスタ13aに格納されるレベルL
2は、キャパシタンスのベクトル(C
11,C
21,C
31,C
41)と、パルス群p
1を示すベクトル(1,1,-1,-1)との内積となってC
11+C
21-C
31-C
41と計算され、パルス群p
3に対応してシフトレジスタ13aに格納されるレベルL
3は、キャパシタンスのベクトル(C
11,C
21,C
31,C
41)と、パルス群p
3を示すベクトル(1,-1,-1,1)との内積となってC
11-C
21-C
31+C
41と計算され、パルス群p
4に対応してシフトレジスタ13aに格納されるレベルL
4は、キャパシタンスのベクトル(C
11,C
21,C
31,C
41)と、パルス群p
4を示すベクトル(1,-1,1,-1)との内積となってC
11-C
21+C
31-C
41と計算される。
【0050】
第1の集積回路13は、相関器13bを用い、4個のパルス群p
1~p
4のそれぞれについて、シフトレジスタ13aに蓄積したレベルL
1~L
4との相関値T
1~T
4を順次算出する。こうして算出される相関値T
1~T
4の具体的な内容は、
図4にも示すように、それぞれ4C
11,4C
21,4C
31,4C
41となる。すなわち、相関値T
1~T
4には、それぞれセンサ電極12x
1~12x
4と、センサ電極12y
1との交点に形成されるキャパシタンスの変化が反映されることになる。したがって第1の集積回路13は、各センサ電極12yについて算出される相関値T
1~T
4を参照することにより、指Fの位置を検出することが可能になる。具体的には、キャパシタンスの変化が所定値以上である第1のパネル面11内の領域を決定し、例えばその中心位置を指Fの位置として検出すればよい。第1の集積回路13は、こうして検出した位置を示す位置データについても、ホストプロセッサ30に出力するよう構成される。
【0051】
図5(a)(b)はそれぞれ、指タッチ検出用信号FDSを構成する信号s
1~s
Kの具体的な波形の例を示す図である。
図5(a)に示す第1の例による信号s
1~s
Kは、相対的に高い電圧により「1」を表し、相対的に低い電圧により「-1」を表す信号により構成される。一方、
図5(b)に示す第2の例による信号s
1~s
Kは、第1の例による信号s
1~s
Kをマンチェスター符号化することによって得られる信号により構成される。具体的には、電圧のハイ・ローにより「1」又は「-1」を表す前半部分と、中間の電圧を有する後半部分とにより、1つの値を表す信号となる。以下では、
図5(a)(b)に示すように、電圧に「1」又は「-1」の値が反映されている区間を1パルス区間PSと称する場合がある。
【0052】
次に、本発明の特徴部分にかかるセンサシステム3の構成について、
図6~
図8を参照しながら詳しく説明する。
【0053】
図6は、第1の集積回路13、第2の集積回路23、及びスタイラスPのそれぞれにより送受信される信号のタイミング図である。同図には、第1の集積回路13とスタイラスPとがペアリング済みである状態を示している。
【0054】
図6に示すように、本実施の形態によるセンサシステム3は、第1の集積回路13が第1のセンサ電極群12x,12yを介して送信する第1のアップリンク信号US1と、前記第2の集積回路23が第2のセンサ電極群22x,22yを介して送信する第2のアップリンク信号US2とが同じ時間に送信されないよう第1の集積回路13及び第2の集積回路23を制御する。具体的には、ホストプロセッサ30により、第1のアップリンク信号US1と第2のアップリンク信号US2とが同じ時間に送信されないよう第1の集積回路13及び第2の集積回路23を制御することとしてもよいし、第1の集積回路13及び第2の集積回路23が相互に通信を行うことにより、第1のアップリンク信号US1と第2のアップリンク信号US2とが同じ時間に送信されないよう第1の集積回路13及び第2の集積回路23を制御することとしてもよい。
【0055】
このような処理の結果として、
図6の例においては、第1のアップリンク信号US1がペン検出動作PDを行う区間の先頭から時間長T1の期間内に送信されている一方で、第2のアップリンク信号US2は、ペン検出動作PDの先頭から、時間長T1より長い時間長T2(>T1)の時間が経過した後に送信されている。このようにすることで、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2が同じ時間には送信されなくなるので、第1のパネル面11及び第2のパネル面21のそれぞれから送出されるアップリンク信号USの干渉を防止することが可能になる。
【0056】
また、第1の集積回路13はさらに、第1のアップリンク信号US1を送信している期間以外は受信動作(
図6では「R」と記している)を行わないよう、ペアリング中のスタイラスPを制御する。具体的には、第1の集積回路13からスタイラスPに対し、ペアリング時に、図示したアップリンク信号USの送信間隔の時間長INTを通知しておき、スタイラスPは、アップリンク信号USを受信した後、通知された時間長INTだけ受信動作を停止するように動作する。こうすることによって、第1の集積回路13とペアリング中のスタイラスPが、第2の集積回路23によって送信されたアップリンク信号USを受信してしまうことを防止できる。
【0057】
第2の集積回路23についても同様であるが、第2の集積回路23は、ペアリング時にさらに、図示した時間長T3(第2のアップリンク信号US2の送信終了からタッチ検出動作TDが開始されるまでの時間長)及び時間長T4(タッチ検出動作TDを行う区間の時間長)をスタイラスPに通知することが好ましい。こうすることでスタイラスPは、第2のアップリンク信号US2の受信タイミングに基づき、タッチ検出動作TDを行う区間を除いて、ダウンリンク信号DSを送信するための各時間スロットの時間的位置を決定することが可能になる。
【0058】
また、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方は、スタイラスPとペアリングした場合、該ペアリングにかかるペアリング情報を第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方と共有するよう構成される。この共有は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方がペアリング情報をホストプロセッサ30に送信し、ホストプロセッサ30がこのペアリング情報を第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方に送信することにより実行されることとしてもよいし、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が、直接、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方にペアリング情報を送信することによって実行されることとしてもよい。このようにすることで、スタイラスPが第1のパネル面11及び第2のパネル面21の間を移動したときに改めてペアリングを行う必要がなくなるので、第1のパネル面11及び第2のパネル面21の間での連続的なスタイラスPの使用が可能になる。
【0059】
また、本実施の形態によるセンサシステム3は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方がタッチ検出動作TDを行っている場合、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方によるタッチ検出動作TDを制限するよう構成される。以下、この点について、
図7を参照しながら詳しく説明する。
【0060】
図7は、ユーザが手Hを第2のパネル面21上に置いた状態で、第1のパネル面11上で指Fを摺動させている状態を示す図である。ユーザがこのような動作をすると、図示した第1のパネル面11内の領域A1(指Fの接触領域)においてセンサ電極12x,12yと手Hの間に静電結合が発生するだけでなく、図示した第2のパネル面21内の領域A2(手の平の接触領域)においても、センサ電極22x,22yと手Hの間に静電結合が発生することになる。その結果、第2の集積回路23が送出している指タッチ検出用信号FDSが、図示した経路Bを通って、第1の集積回路13により受信されてしまうことになる。このような受信は第1の集積回路13及びホストプロセッサ30の誤動作の原因となるので、回避する必要がある。
【0061】
そこで本実施の形態によるセンサシステム3は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方がタッチ検出動作TDを行っている場合、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方によるタッチ検出動作TDを制限するよう構成される。この制限は、ホストプロセッサ30が、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方から指Fの座標が供給されている場合に、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方によるタッチ検出動作TDを制限することにより実行されることとしてもよいし、第1の集積回路13及び第2の集積回路23のうち指Fを検出中の一方が他方に対してその旨を通知することにより実行されることとしてもよい。このようにすることで、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されてしまうことを防止可能となる。
【0062】
なお、第1の集積回路13及び第2の集積回路23又はホストプロセッサ30は、タッチが検出されている領域(
図7に示した領域A1,A2)の面積を検出し、検出した面積に基づいて、タッチ検出動作TDの制限対象となる集積回路を選択することが好ましい。一般的に、指先の接触により検出される面積は手の平の接触により検出される面積よりも小さくなるので、このように集積回路を選択することで、指Fによるタッチ入力を優先することが可能になる。
【0063】
また、具体的なタッチ検出動作TDの制限は、一例では、選択した集積回路によるタッチ検出動作TDを完全に停止することによって行えばよい。また、他の一例では、例えば選択した集積回路が第2の集積回路23である場合であれば、第1のセンサ電極群12x,12yに近い一部のセンサ電極22x(
図7に示した領域C内のセンサ電極22x)を用いずにタッチ検出動作TDを行うよう第2の集積回路23を制御することによって行えばよい。
【0064】
図8は、タッチ検出動作TDの制限のさらに他の一例を示す図である。この例では、第1の集積回路13がタッチ検出動作TDを行っている場合には第2の集積回路23はタッチ検出動作TDを行わず、第2の集積回路23がタッチ検出動作TDを行っている場合には第1の集積回路13はタッチ検出動作TDを行わない。この動作を実現するため、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方は、タッチ検出動作TDの開始タイミング及び終了タイミングを、直接、又は、ホストプロセッサ30経由で、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方に対して通知することが好ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によるセンサシステム3によれば、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2が同じ時間には送信されなくなるので、第1のパネル面11及び第2のパネル面21のそれぞれから送出されるアップリンク信号USの干渉を防止することが可能になる。
【0066】
また、本実施の形態によるセンサシステム3によれば、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の間でペアリング情報が共有されるので、第1のパネル面11及び第2のパネル面21の間での連続的なスタイラスPの使用が可能になる。
【0067】
また、本実施の形態によるセンサシステム3によれば、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方がタッチ検出動作TDを行っている間、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方によるタッチ検出動作TDが制限されるので、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されてしまうことを防止できる。
【0068】
さらに、本実施の形態によるセンサシステム3によれば、第1の集積回路13及び第2の集積回路23が互いに同期した状態でタッチ検出動作TDを行うので、ホストプロセッサ30は、第1の集積回路13及び第2の集積回路23のそれぞれから供給される指Fの位置データの順序を正しく処理することが可能になる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、
図7を参照して説明した課題の解決方法の点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様である。そこで以下では、第1の実施の形態との相違点に着目して説明を続ける。
【0070】
図9(a)(b)はそれぞれ、本実施の形態による指タッチ検出用信号FDSの波形を示す図である。
図9(a)は、
図5(a)に示した波形の信号により指タッチ検出用信号FDSを構成する場合を示し、
図9(b)は、
図5(b)に示した波形の信号により指タッチ検出用信号FDSを構成する場合を示している。
【0071】
第1の集積回路13及び第2の集積回路23はそれぞれ、各パルス区間PSのエッジ(始期)で信号の変化を検出することにより、指タッチ検出用信号FDSの受信を行うよう構成される。そこで本実施の形態では、第1の集積回路13が各センサ電極12xに供給する指タッチ検出用信号FDS(以下、第1の指タッチ検出用信号FDSと称する)と、第2の集積回路23が各センサ電極22xに供給する指タッチ検出用信号FDS(以下、第2の指タッチ検出用信号FDSと称する)とでパルス区間PSのエッジの時間的な位置が互いに異なることとなるように、第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSのそれぞれを構成する。
【0072】
典型的な例では、第1の指タッチ検出用信号FDSと、第2の指タッチ検出用信号FDSとを、互いに異なる位相のパルス信号により構成すればよい。例えば、
図9(a)(b)に示すように、上述した1パルス区間PSの半分の時間PS/2だけ位相が異なるように、第1の指タッチ検出用信号FDS及び第2の指タッチ検出用信号FDSを構成すればよい。こうすることにより、第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSとで、パルス区間PSのエッジの時間的な位置(
図9(a)(b)に黒三角で示したタイミング)を互いに異ならせることができる。
【0073】
このように、第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSとでパルス区間PSのエッジの時間的な位置が互いに異なることとなるように第1の指タッチ検出用信号FDS及び第2の指タッチ検出用信号FDSを構成することで、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が信号の変化の検出動作を行うタイミングでは、他方に対応する信号は必ず無変化の状態となる。したがって、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されてしまうことを防止することができる。
【0074】
なお、第1の指タッチ検出用信号FDS及び第2の指タッチ検出用信号FDSの位相に代え、これらの周波数(すなわち、パルス区間PSの時間長)を互いに異ならせることとしてもよい。このようにしても、完全ではないものの実質的に(すなわち、ほとんどのタイミングにおいて)、第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSとでパルス区間PSのエッジの時間的な位置を互いに異ならせることができる。
【0075】
また、第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSとで立ち上がり及び立ち下がりの時間長が互いに異なることとなるように第1の指タッチ検出用信号FDSと第2の指タッチ検出用信号FDSのそれぞれを構成するとともに、例えば特定の周波数の信号のみを通すバンドパスフィルタを用いて、第1の集積回路13及び第2の集積回路23のそれぞれを特定の周波数の指タッチ検出用信号FDSのみを受信するように構成することとしてもよい。このようにしても、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されてしまうことを防止することが可能になる。
【0076】
また、上述した信号s1~sKのビット長が長くなっても構わない場合には、第1の集積回路13が送信する信号s1~sKと、第2の集積回路23が送信する信号s1~sKとのすべてを、互いに直交する符号列により構成することとしてもよい。こうすれば、第1の集積回路13及び第2の集積回路23はそれぞれ、予め記憶している直交符号列との相関を算出することにより各信号を区別して受信することができるので、上記と同様に、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されてしまうことを防止することが可能になる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0078】
例えば、第1の集積回路13及び第2の集積回路23のそれぞれから、同じタイミングで同じ内容のアップリンク信号USを送信することとしてもよい。つまり、第1の集積回路13及び第2の集積回路23を一体として運用することとしてもよい。こうすることによっても、第1のパネル面11及び第2のパネル面21のそれぞれから送出されるアップリンク信号USの干渉を防止することが可能になる。この場合においても、タッチ検出動作TDについては、上述したようにして、第1の集積回路13及び第2の集積回路23の一方が送出している指タッチ検出用信号FDSが第1の集積回路13及び第2の集積回路23の他方により受信されることのないようにすることが好ましい。
【0079】
なお、第1のパネル面11及び第2のパネル面21の両方を上述したインセル方式のタッチディスプレイにより構成する場合において、上記のように第1の集積回路13及び第2の集積回路23のそれぞれから同じタイミングで同じ内容のアップリンク信号USを送信することとする場合には、画面の書き換えタイミングを示す垂直同期信号VSyncを同期させることが好ましい。すなわち、インセル方式のタッチディスプレイでは、センサシステム3は、画素の駆動動作が行われないブランク期間にのみペン検出動作PD及びタッチ検出動作TDを行うことができる。したがって、第1のパネル面11及び第2のパネル面21のそれぞれから同じタイミングでアップリンク信号USを送信するためには、第1のパネル面11及び第2のパネル面21の間で、ブランク期間の時間的な位置が一致している必要がある。上記のように垂直同期信号VSyncを同期させれば、ブランク期間の時間的な位置を一致させることが可能になる。
【0080】
また、第1のアップリンク信号US1と第2のアップリンク信号US2とを、互いに直交する符号列を用いて変調した信号により構成してもよい。こうすることで、スタイラスPは、予め記憶している直交符号列との相関を算出することにより第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2を区別して受信することができるので、上記と同様に、第1のパネル面11及び第2のパネル面21のそれぞれから送出されるアップリンク信号USの干渉を防止することが可能になる。なお、この場合のスタイラスPは、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2の両方が受信された場合、いずれか一方を選択して、選択した一方に対応する集積回路との間でペアリングを実施することが好ましい。例えば、第1のアップリンク信号US1及び第2のアップリンク信号US2のうち受信強度の強い一方を選択すればよい。
【符号の説明】
【0081】
1 電子機器
2 連結部
3 センサシステム
10 第1の筐体
11 第1のパネル面
12x,12y 第1のセンサ電極群
13 第1の集積回路
13a シフトレジスタ
13b 相関器
14x,14y 第1の引き出し配線
20 第2の筐体
21 第2のパネル面
22x,22y 第2のセンサ電極群
23 第2の集積回路
24x,24y 第2の引き出し配線
30 ホストプロセッサ
31~33 配線
A1 指Fの接触領域
A2 手の平の接触領域
DS ダウンリンク信号
F 指
FDS 指タッチ検出用信号
H 手
INT アップリンク信号USの送信間隔の時間長
P スタイラス
P1 アップリンク信号USの送受信区間
P2 ダウンリンク信号DSの送受信区間
p1~p4 パルス群
PD ペン検出動作
PS パルス区間
s1~sK 信号
T1 第1のアップリンク信号US1の送信期間の時間長
T1~T4 相関値
T2 ペン検出動作PDの先頭から第2のアップリンク信号US2の送信が開始されるまでの時間長
T3 第2のアップリンク信号US2の送信終了からタッチ検出動作TDが開始されるまでの時間長
T4 タッチ検出動作TDを行う区間の時間長
TD タッチ検出動作
TS1~TSn 時間スロット
US アップリンク信号
US1 第1のアップリンク信号
US1a 第1のアップリンク信号US1の到達可能範囲
US2 第2のアップリンク信号
US2a 第2のアップリンク信号US2の到達可能範囲